ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所3
- 1 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/04/30(木) 10:29:10 ID:YCzptoGk
- ここはストライクウィッチーズ百合スレ避難所本スレです。
●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所2
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12483/1239126523/
●Janeで避難所を見る場合
・板一覧を右クリックして「新規カテゴリを追加」をクリック(板一覧が無い場合は「表示」→「板ツリー」→「板全体」で表示できる)
・カテゴリ名を入力してOKをクリックする(例:「したらば」)
・作成したカテゴリにカーソルを合わせて右クリックし、「ここに板を追加」をクリック
・板名を入力してOKをクリックする(例:「百合避難所」)
・URLに「http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12483/」を入力してOKをクリックする。
- 2 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/04/30(木) 10:30:42 ID:YCzptoGk
- Q.○○書いたんですけど投下してもいいですか?
A.どうぞ是非投下してください
条件は「ストライクウィッチーズ」関連であること、
「百合」であることの二つのみです。
ジャンル、エロの有無、本編にないカップリングなどに関係なく、このスレの住人はおいしく頂いております。
妄想だとか落書きだとか気にせずとにかく投下してみましょう。
但し、投下する作品が以下のジャンルを含む場合の注意事項。
ふたなり、男出没、グロテスク、スカトロ、SM、鬱展開・ED
「男出没」、「グロ」、「スカ」、「SM」、「鬱展開・ED」は先にキーワードを明記する、又はtxtで上げることを推奨します。
キーワードは1行だけでもOKです。
例:※この作品にはスカトロ、SM要素が含まれます。
「ふたなり」はtxtで上げることを推奨します。
アップロード参考URL:http://www.axfc.net/uploader/
あまりに過激すぎるモノなどは、個人の裁量に任せてtxtであげてもらえたら理想的です。
ただし、SS専用スレではないので20レスを超えるような長編は事前に断りがあると吉です。
sage推奨です。メール欄に半角でsageと入力して下さい。
- 3 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/04/30(木) 10:32:51 ID:YCzptoGk
- 規制について
★改行規制
避難所スレについて、投稿本文の文字制限は4096byte(全て全角文字の場合は2048文字)、
投稿本文の最大行数は100です。
★連投規制
今のところありません。
★スレの容量
管理人が500KB超えに気付いた時点でスレストを掛けます。
- 4 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/04/30(木) 10:34:10 ID:YCzptoGk
- ──リレーSSの手引き──
★基本ルール
○始める時は、リレーSSであることを宣言する。
○続ける人は宣言は不要だが、一行目に継承元の安価をつける。
○ただし、結末を書く場合は「次で終わっていいですか?」と訊いておく。
○継承先は指定できない。誰かが早い者勝ちで続きを書く。
○ただし自分自身の続きは書かない。最低2人は挟んでから。
○2レス以上にまたがらない。1レスでクールに。
○重複したら先に書いた方を優先する。
○作者名は名前欄に入れる。名無し希望は未入力でも可。
○リレー進行中は他のリレーは開始しない。
○もちろん普通のSSは、リレーの状況に関わらずどんどん投下してください。
★本文と書式
○語り手や文調はできるだけ継承する。唐突な視点変更は避ける。
○誤解を招きやすいため、科白にはキャラの名前をつける。(例:芳佳「おっぱい」)
○後に文が続く事を意識して、できるだけ色々な取り方ができる終わり方にする。
○「駄文失礼〜」「お目汚し〜」等の前書きやあとがきはナンセンスなので付けない。
★心構えと方針
○無理して面白くしようとしない。ナチュラルに妄想を爆発させるべし。
○不本意なカプの流れになっても泣かない。むしろ目覚めるべし。
○展開を強要したり口を挟まない。流れに身を委ねるべし。
○なかなか続きが来なくても焦らない。気長に有志を待つべし。
○多少の誤字脱字、設定違反、日本語おかしい文章には目を瞑る。スルーすべし。
○参加者はみな平等。新兵もエースもリレー主も一切特権はない。仲良くすべし。
○男はいらねえんだよ!ふたなりネタも自重すべし。
- 5 名前:名無しさん:2009/04/30(木) 13:02:53 ID:Xr3b34oQ
- >>1
乙
もう500k超えたのか。
数値が表示されないから分かりにくいな。
- 6 名前:名無しさん:2009/04/30(木) 17:41:11 ID:YyFYEZ5k
- >>1乙
>>5
そんなあなたに つJane
- 7 名前:名無しさん:2009/05/01(金) 21:09:15 ID:YdjBcDy2
- >>1
乙
俺は前スレ>>485に期待している
- 8 名前:名無しさん:2009/05/01(金) 22:32:02 ID:4nPHaep6
- 直接の関係は無いけど
ttp://www.showanavi.jp/archive/1949.php
SS書くとき、何かの参考になれば。
- 9 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 12:05:31 ID:/xgfTM0w
- 二期ではサーニャ→エイラを見てみたいもんです
- 10 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 13:25:15 ID:fts7Qo6Y
- なんで3に入ったとたん過疎りだしたんだ?
- 11 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 13:58:48 ID:gTq3v63.
- スレの沈静化とアニメ終了からの時間経過
ゲームでたら活発化すると信じたい
- 12 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 14:04:32 ID:pvJeCyRE
- 本スレの方が落ち着いてきたからそちらに戻ったんでは?
後、GWで皆さん帰省中なのかもしれませんね〜
- 13 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 16:52:38 ID:unG3zYw6
- >>10
あとは避難所の対策スレも参考程度にご覧下さいな。
しかし最近ネタが無くてねえ。
もうすぐ「母の日」って言う話だからミーナさんをと思ったんだけどキュッとされそうだし……。
まあ、ぼちぼち……おや、誰かきt
- 14 名前:旦那様は魔女1/2:2009/05/05(火) 17:32:03 ID:dL0I5QF.
- 一ヶ月半ぶりでしょうか? esNTV3r0でございます。
本スレで投稿中のSSに割り込むのは気が引けるのでこちらで投稿させて頂きます。
誰も覚えていないと思いますが、保管庫942の続きと言うか繋がりのあるSSをば……
少佐×芳佳となります。短いですが……
夕食とか、その他色々の雑事も終わり、残るは明日に備えて寝るのみと言う時分。
私はミーティングルームのソファに腰かけていた。
心臓が今までにないくらい激しく拍動している、隣に坂本さんが座っているからである。
忙しいのにわざわざ私のお願いを聞いて、待ってくれていた――と言うことだけで胸が一杯になるが、ここからが本番。
かねてから夢想していたことを、今から実現させるのだ。
「宮藤、私に頼みがあるとのことだが……?」
坂本さんはその凛々しい顔を私に向ける、それだけで顔が赤くなるのを感じる。
「はいッ! あの――」
断られた時の覚悟はできているけれど、それでもやはり緊張する。
私は息を吸い込み、その『頼み』を口にした。
「さ、坂本さんッ! 私を……『芳佳』って呼んでくれませんか?」
ああ……言ってしまった。
坂本さんはあまり驚いた様子も無く、ただ私をじっと見ている。
私は返事までの時間が永遠に来ないような錯覚を感じた。
「何故だ、宮藤と呼ばれるのは不満か?」
不満だ。
もっと、もっともっと親しげに呼んでほしい。
あなたの素敵な笑顔を私だけに向けてくれたらどんなに良いか。
部下と上官の関係以上のものが私は、求めている。
そして、その暁には決して触れることの叶わない坂本さんの胸を、胸を……!
「どうした?」
これはいけない、少し別世界に行っていた……。
当然トリップしている場合ではない、ここで説得できれば晴れて芳佳、と呼んでもらえる。
私は頭を振って自分を奮い立たせた。
「はいッ! そのですね、部隊じゃ私以外の人は大抵坂本さんにファーストネームで呼ばれてるじゃないですか?」
「ふむ」
悪くない反応だと思う。
私は話を続ける。
「何と言うか……それを聞いてると私だけ仲間外れにされているような気分になってしまって、だから――」
「自分も姓じゃなくて名で呼んでもらいたい訳か」
坂本さんは考え込むような顔でこちらを見ている。
無理が、あったかな? 坂本さんの顔を見る限りあったのだろう。
苦くて重いものが私の貧相な胸を締め付ける。もしかすると嫌われてしまったかもしれない。
- 15 名前:旦那様は魔女2/2:2009/05/05(火) 17:33:24 ID:dL0I5QF.
- 「やっぱり、駄目ですよね……こんなこと」
「違う、お前達にはわけ隔てなく接しているつもりだったんだが、そんな風に思われていたとはな」
「坂本さんの気にすることじゃありません! 私が勝手に思っただけですから……」
もう沢山だ。早くこの場から消えてしまいたい、これ以上一緒にいたら私は泣いてしまうだろう。
「馬鹿者、気にするに決まっているだろう」
しかし、坂本さんは意外な事を言った。
気にするとはどういうことか、私に気を使うことなんか無いのに。
「嫌な思いをさせてすまなかったな、みや――おっと……芳佳」
なんてことだ。今、坂本さんが、他ならぬ坂本さんが私のことを芳佳と!?
「えッ!? いいんですか!?」
「はっはっは、構わんぞ! たしかに皆のことは殆ど名でよんでるからな!」
「ありがとうございますッ!」
強烈な高揚感が体に満ちて、なんだかふわふわした気持ちになる。多分初めて空を飛んだ時以上。
その時もすぐ傍に坂本さんが一緒に居てくれたのことを思い出した。
「さて、他に用もないようだな。私はそろそろ戻るぞ、芳佳」
坂本さんがソファから立つ。つられて私も立ちあがった。
「ど、どうぞッ。 坂本さん!」
さっきから声が上ずってしまっている。芳佳と呼ばれるだけでここまで距離感が縮まるとは思わなかった。
今日は嬉しくて眠れそうもない。
「そうだ芳佳、私も美緒でいいぞ」
私の頭上に雷が落ちた。
「はい!? ああ、その……流石にそれは……不遜と言うかなんと言うか」
上手くしゃべることが出来ない。
芳佳と呼んでもらえた段階で私の頭の中はオーバーヒートしているのに、坂本さんはなんてことを言うのだろう!
「お前だってミーナのことを『ヴィルケさん』なんて呼んでいないだろう? 元々お前の言ったことだ」
確かにそうではあるが……ええい、こうなった以上もう一回覚悟を決めろ、宮藤芳佳!
「み……お……さん」
「何を恥ずかしがっている! もっとはっきりと言ってみろ!」
「美緒さん!」
もし旦那様を呼ぶならこんな感じなのだろうか? 旦那様は少佐――なんて甘美な響きだろう!
「そうだッ! それでいいぞ芳佳ッ!」
私は必要以上に強い力で背中を叩かれた。当然痛みなんて感じない。
幸せで胸一杯だ。それは狭苦しい私の胸を膨らませ、気分だけならリーネちゃん並にしている。
「む、もうこんな時間か……明日も訓練に励めよ芳佳!」
「はいッ! 美緒さんッ!」
また『美緒さん』といってしまった。顔がにやけるのを必死に隠しながら私はさか――否、美緒さんを見送った。
それにしても、もし美緒さんが旦那様だったらどんなにいいだろう。
毎日出迎え、炊事や風呂焚きをし、そしてそして夜には、夜には……美緒さんが私の胸を……!
私は美緒さんに娶られた時の日々を想像しミーティングルームにて独り、陶酔の境地へと旅立っていったのだった。
× × ×
私たち二人の呼び方を聞いて部隊――と言うか特定の二人に一波乱起きるのは、また別のお話である。
了
続ける自信がありません……。
私の拙作にお付き合いいただきありがとうごさいました。
- 16 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 22:34:30 ID:gTq3v63.
- >>15
GJ
芳緒好きにはたまらんぜ…
- 17 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 23:12:25 ID:ycCTLc/o
- GJ.
やっぱりもっさんが漢すぎる。大和撫子なのにw
>>10
さっき本スレを見てきたんだが、そっちには人がいる感じ。
GWで人が減っているのに加えて、残った人も本スレに戻り始めてるから、
避難所が過疎って見えてるかと。
- 18 名前:名無しさん:2009/05/05(火) 23:54:18 ID:1IxZlaj2
- >>15
GJ! 美佳好きにはたまりませんなあ。
やっぱり少佐はオトコマエですわ。
そこがまた素敵なんですがw
出来たら続きをお願いします。出来たらでいいんで。
- 19 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 00:38:02 ID:y.ZJt8yk
- こんばんは。LWqeWTRGです。
さて、前回投下させてもらいました間接キスの続きです。
3レスです。
- 20 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 00:39:07 ID:y.ZJt8yk
- はむ…やっぱり自分のよりエイラのスプーンのが美味しい。
なんでかな。
ふふ、そりゃあ大好きな人との間接キスがスパイスになってるからだよね。
私、こんなにしあわせでいいのかしら…。
でも…ひとつ問題が…。
「ねぇエイラ」
「なっ、ナンダ!?」
「食べないの?」
エイラったら私が使い始めてから一口も食べてないし…。
これじゃだんだん私のになっちゃうじゃない。
どうしましょう。
「いっ、イヤもうおなかいっぱいなのカナ〜って…」
「……おなか鳴ってるよ?」
積極性をもって、ってさっき言ったばかりなのに…。
「うぅ…。だってサーニャと間接…キスだなんて…」
「はぁ…。そんなに私とじゃいやなのかしら…」
「ちっ、違っ! イヤなんじゃなくテ心の準備ってもんが…」
なんでもかんでも心の準備ばっかし。
それを信じて待っていたらずっと準備してるじゃない。
それじゃだめ。
人生っていうのはいつも準備不足の連続だってどこかの魔女さんの言葉もあるわよ?
「じゃあこうしよう」
「え? ナ、なに?」
「エイラが自分で食べれないなら私が食べさせてあげる」
「はぁ!? イヤマテマテマテ!」
「はぁい、エイラあーんして〜」
- 21 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 00:40:08 ID:y.ZJt8yk
- こうでもしないと本当に先に進めないんだもん。
間接キスくらい普通にしてもらえるようにならないと大人のキスなんてできやしないし。
「だから…サーニャ? あの…私…」
「あーんして、エイラ」
「えぅ…」
「あーん…」
「……」
なんかもう怒ってもいいぐらいよね。
私だって怒るんだから。
赤くなって恥ずかしがってる顔も可愛いからって許されることじゃないわ。
「エイラ、いい加減に食べて」
「でも…」
「お願い」
「う…。本当に食べなきゃ…ダメカナ?」
「だめだよ」
だめに決まってるじゃない。
私から逃げられるとでも思ったの?
「わ、わかっ…た…。頑張ル…」
「うん、エイラいい子。はい、あーん」
「あ、あー…」
ふぅ、これでやっと目的達成かな。長かった…。
まったく、エイラにはもうちょっと自信持ってもらいたい…。いくら大好きアピールしても反応が無いんだもん。
恥ずかしがったりするのはいいんだけどね。
ふふ、ぷるぷる震えてかわいー。
「あー…、…や、やっぱりダメ! ゴメンサーニャ!」
な…。
まさかそこまで嫌がるとは思わなかったわ…。
エイラ、あなたは悪い子。
悪い子にはお仕置きをしなくちゃ…。
- 22 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 00:41:05 ID:y.ZJt8yk
- 「ゴメン…、ゴメンサーニャ…。間接キスでも…私ハ…」
「もういいわ、エイラ。できないんじゃしょうがないもの」
「ゴメンナ…」
「だから私が代わりを用意してあげるね」
「え? それって新しいスプーンってことカ…?」
いいえ。
スプーンなんて必要ない。
直接エイラに食べさせてあげる…。
「なっ!? まてサーニャ! それは本当に待ってクレ!」
「……」
いやよ…。
間接がいやなら直接…。当然でしょう?
どうせいつかやるつもりだったのよ。
それが早まっただけ…。
「サーニャ? サーニャ!? オイ――ッ!!」
いただきます。
そして、
ごちそうさま。
END
―――――――
以上です。
タイトルは「変化球は曲がらない」です。
では失礼しました。
- 23 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 01:42:53 ID:9AicQk1U
- >>14
GJ!!
もっさんマジかっこいいよ
是非とも続きを書いて下さい
>>22
さぁーにゃぁぁぁぁぁぁ
間接がダメなら直接ってwww
ぷるぷる震えるエイラも可愛いいよ〜
GJ!!ありがとう
このあとがかなり気になる
- 24 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 05:14:12 ID:laIMvQds
- >>22
GJ
積極的なサーニャは大好物
- 25 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 11:55:24 ID:5Cj/8yV.
- >>22
GJ! ニヤニヤが止まらないw
アグレッシブなサーニャさんととことんアレなエイラさんおいしいです。
- 26 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 17:41:25 ID:.o4iycA.
- >>22
GJ! サーニャイラの手本のような積極性にニヤニヤが止まりません。
- 27 名前:悲劇的ビフォーアフター 1/7:2009/05/06(水) 17:54:04 ID:4QC1sxdc
- みなも。
私は水面が好きだ。 水中から水面を見上げる、その時。
人はもっとも天国に近付けるような気がする。
思えば人という生き物は、いつでも、誰しもが、本能的に浮上という行為を求めているのではないだろうか。
安らぎに満たされた海中。 でも、ひとたび顔を上げてしまえば、そこには、あまりにも美しく輝き揺らぐ水面があるのだ。
神性との邂逅。 真なるものへの惑溺。 抗う事すら許されない、根源的な感傷。
きっと人はそれに触れた時、水面の向こう側に何が待ち受けているのかも知らず、誰しもが水上を目指してしまうのだろう。
浮上という行為がもたらすもの。 それが己の分際に合うのかどうか、考えてもみずに。
「そうよ。 だから美味しいものを食べるという行為を、我慢する必要なんて無いの。 それが浮上だもの。 分かってくれるわよね?」
「ぜんぜん分かんない。」
「そんな事を言わなければ自分を納得させられないのか?」
幸福に浸りながらひとりごちる私を、冷たくあしらう友人たち。 リーネさんのビュッフェは毎度毎度パーティのような絢爛さ。
今日も食べ過ぎてしまったかしら……。 最近、とみにデスクワークが多くなってきたせいかもしれないけれど。
多分、きっと、絶対に気のせいなのだけど。 少しだけ、お腹がポヨポヨしてきたような気がするのよね。
まぁ、でも、気にしすぎね。 なんと言っても魔力溢れるウィッチだもの。 そう簡単にボディラインが崩れるはずもないわ。
あぁ幸せ。 そんな事を考えながらのんびりとベッドに転がっていると、フラウがひっついてきた。
あら、甘えたさんね。 にこにこ笑うフラウに、こちらも笑顔になる。 はずだった。 フラウの手が私のお腹に置かれる。
「大きくなれよー。」
ぶほっ! トゥルーデが盛大に噴き出した。 フラウの手は、すりすりと私のお腹を撫でている。
私の体から凄まじい殺気が漏れ出しているのが分かる。 ……こ、こらえるのよ、ミーナ。 フラウのいつものお茶目じゃないの。
横を向いてプルプル震えているトゥルーデ。 流石ね。 滅多な反応は道連れに繋がると分かっているんだもの……。
「ふふ。 くすぐったいわ、フラウ。 どうしたの?」
「別に、なんとなく。 ちょっと東洋の武術の真似したくなって。 そりゃ。 円の軌道。」
ぐぷしゅっ。 我慢の様相も空しく、トゥルーデから異音が漏れる。 山なりの軌跡を描くフラウの小さな手。 ……おほほ。
東洋の武術、ね。 「気」でベッドが鳴動しだしたのもそのせいね。 フラウったら、本当にブレーキの壊れたタイタニックなんだから。
「ねぇ、どういう意味だかよく分からないわ、フラウ。 私、もう少し詳しく聞きたいな。」
「ううん。 別に意味は無いよ? ミーナって、なんかお母さんみたいだなって。 特にここら辺。 ……あっ。 ……動いた……。」
……。 夜の宿舎に明るい笑い声が重なり合う。 トゥルーデはあえなくフラウの道連れとなった。
- 28 名前:悲劇的ビフォーアフター 2/7:2009/05/06(水) 17:54:37 ID:4QC1sxdc
- 「はぁ……。」
「おっはよ! どうしたリーネ? 朝っぱらから溜息ついてちゃ、ラッキーが逃げていっちゃうぞ!」
「シャーリーさん。 あ、あのですね。 最近、私、むっ。 胸が小さくなっちゃって……。」
「は? なんだ、そんな事か。 そりゃ毎日こんだけ訓練してればなぁ。 ま、いいじゃん。 あんた、大きな胸嫌がってたっしょ?」
「そ、そうなんですけど! ……その、芳佳ちゃんが。 近頃、よそよそしいような気がして。」
「それって胸が萎んできたせいかも、と。 う、うーん。 それは無い!と断言できないのが悲しい所だねぇ……。」
「あら、丁度良かった。 そんな時にはダイエットよ、リーネさん。」
私の声にビクリと跳び上がる二人。 気配を殺して接近するだけでこの反応。 二人とも、まだまだね。
「び、ビックリした! ……あの、ミーナ中佐。 せっかくですけど私、痩せたいんじゃなくて、太りたいんです……。」
「はぁ!!??」
「ひぃ!!」
い、いけないわミーナ。 思わずイラッとしてしまったわ。 怯えた感じのリーネさんに、笑顔を浮かべて語りかける。
「ねぇリーネさん。 胸が1センチ縮んでも、お腹が2センチ小さくなれば、結果的に前よりグラマーになるわよね。
シャーリーさんのスタイルなんて、いい見本じゃないかしら? 体のためにも、単純に肉をつければいいわけではないと思うの。」
「ま、あたしは腹に肉がつかない体質だから、悩んだ事無いけどね……ウプス!?」
死角からズビシと水平チョップを叩き込む。 何事かとキョロキョロしてるシャーリーさんを尻目に、いよいよ本題に入る。
「そこでね。 私、空き時間でダイエット教室をやろうと思うの。 いくら軍人といっても、女の子だもの。
戦いだけでなく、将来女性として困らないような知識を覚えてもらうのも、務めだと思うのよね。 二人とも、どうかしら?」
「ダイエット教室……ですか。 そう言えば、お姉ちゃんもそんなの始めたとか何とか……。」
「ふーん。 確かに大切なコンセプトって気がしますね。」
……ふ、ふ、ふ。 掴みは好感触だわ。 「ダイエット教室でいつの間にかシェイプアップ大作戦」のね!
全ては、美緒にバレずに痩せるため。 美緒に、こんなお腹を見せるわけには、絶対にいかない。
でも一人でダイエットなんてしてたら、遅かれ早かれバレてしまう。 その時の反応がどれだけお寒いかは、容易に想像できるわ。
そんな理由で美緒に笑われるなんて……私には、耐えられない。 木を隠すなら森。 インストラクターは私。
みんなでダイエットする事で、本当に痩せたがっているのは誰か、カムフラージュしたまま痩せられるという寸法よ!
「ダイエット? ふ。 わたくしの体、無駄なんて一切ありませんけれど……皆様方と違って。 うぐっ!?」
「ダイエットぉ〜? 私、ちっとも太ってないゾ。 ……い、いや、でも、そういうサークル活動的なのも面白いかもナ。 ウン。」
リーネさん、シャーリーさんに加えて、ペリーヌさん、エイラさんも快く勧誘に乗ってくれた。
やっぱり武力は外交の欠くべからざるカードなのね……いつになったら人は言葉だけで分かり合えるようになるのかしら。
約一名、メガネの人がぐったりしているけれど、面子は揃った。 私はここに501統合ダイエット教室の発足を宣言します!
- 29 名前:悲劇的ビフォーアフター 3/7:2009/05/06(水) 17:55:08 ID:4QC1sxdc
- 「はーい! 皆さん、準備はできましたかー? エクササイズを始めますよー。」
「うーい。」
「こ、これピチピチです……恥ずかしいよぉ。」
「できましたー。」
「な、なぜ私はここにいるんですの? 記憶が……。」
アブダクションされたかのようなペリーヌさんの言葉が笑いを誘う。 レオタードにポニーテール。
全員の格好が揃うと、さぁ、みんなでダイエットするぞ、と俄然やる気も湧いてくるというもの。
「ストレッチ等の基礎作りは日頃からやってますから、今日はシェイプアップを目的とした運動をやってみましょう!」
「はーい!」
ワン。 ツー。 ワン。 ツー。 音響から流れるリズミカルな音楽に合わせて、手本を踊る。
一糸乱れずついてくる隊員達。 流石は世界に誇る精鋭部隊だけはあるわね。 みんな余裕でプログラムをこなしているわ。
でも、ダイエットは甘くないのよ。 ここから先の動きについてこれるかしら? ぴぴー。 ……あれ。
「え、もう終わりですか? なんだか、全然運動になった気がしないです。」
「中途半端な運動は、逆に体を太くしてしまうのではないかしら……。」
日頃から体を鍛えている私達は、あっさりとメニューを終えてしまった。 こ、こんなはずじゃ! 慌てて他のテープを漁る。
「行き当たりばったりダナー、隊長。 冷静に考えて、私らにダイナミックなトレーニングは効果が薄い気がするぞ。」
「普段から今以上に激しく動いてるもんなぁ。 これ企画倒れですよ、中佐。」
ずーん。 浮かれていた気持ちが沈みこむ。 まさか、ウィッチが痩せるという事が、これほどハードルの高い事だったなんて。
普段のトレーニングをこなしていても痩せられないなら、どうやって痩せればいいというの?
あまりに落ち込む私を見かねたのか、みんなが慌ててフォローしてくる。
「ちゃ、着眼点を変えてみませんか? 静的なエクササイズの方が、普段使ってない筋肉を使っていいんじゃないですかね?」
「う、うんうん! 何でしたっけ? 東洋の……ヨーガ! あれ、お姉ちゃんがお薦めしてました!」
「何か面白いスポーツの特徴を取り込むのもいいかもしれないぞ。 私、ボクササイズっての一回やってみたかったんダヨ!」
「歌ってダイエットなんてものも聞きますわよね。 中佐にピッタリではありませんこと?」
み、みんな……! 感涙で前が見えない。 持つべきものは可愛い部下だわ。
一人の時は浮かばなかったアイデアが次々と寄せられてきて、今再び私の目の前は明るく拓けはじめていた。
「ありがとう……そうね。 一回きりの失敗で諦めちゃ、501統合ダイエット教室の名が泣くわ。 みんな。 ついてきてくれる?」
「イエス・サー!!」
がしぃ。 重ね合わされる手と手。 一つになる心。 私達はアイデアを片っ端から試してみる事にしたのだった。
- 30 名前:悲劇的ビフォーアフター 4/7:2009/05/06(水) 17:55:37 ID:4QC1sxdc
- 「ふぇ〜、これがボクシングのグラブなんですね。 実物、初めてみました!」
「フックパンチ? これがお腹に効くみたいだね。」
まずはボクササイズから。 Tシャツとハーフパンツに着替え、整備スタッフにグラブも見せてもらって、気分は満点。
ダンスのステップから、フックパンチ! うん。 確かにこれは、お腹が締まりそう。 それに、結構面白いわ。
「ンー。 なぁーんか漫然とやってても飽きるなぁー。 なぁペリーヌ。 昼飯賭けて勝負しよーゼ!」
「はぁ? 嫌に決まってましてよ! ガリア貴族の私を、育ちの悪いスオミと一緒にしないでくだしゅぶっ!?」
きゃあ! 言い終わらない内に、エイラさんのボディブローが、ペリーヌさんのお腹にどすっとヒット。 あーあ。
「おー、いい手応え。 鍛えてるな、ツンツンメガネ! これ繰り返してたら、鋼の腹筋になるんじゃないくゎぶっ!?」
「……ほほほ。 あれで私をノックアウトしたつもりでして? 決闘よ! エイラ・イルマタル・ユーティライネン!」
「ちょ、ちょっと! あなたたち、女の子同士なんだから顔は叩かない事! いいわね?」
ぽかすかと殴り合いが始まる。 あれだけ接近していると予知のハンデも無いようで、互角に小競り合う二人。 はぁ……。
「困った連中ですね。 でも、確かに実戦の方が効果的ってのは、一理あるかも。 中佐。 あたしらも、いっときます?」
「え?」
返事をするよりも早く、シャーリーさんのボディブローが飛んできた。 ちょ、ちょっと待って! ぽよっ。 ……。
「す、すみません中佐! その、てっきりペリーヌみたいに、ガッチリ受け止めてもらえるのかなって……。」
「ぼ、ボクシングなんて野蛮ですよ! ヨーガやりましょう! ヨーガ!」
しくしくしく。 どすっ、ではなく、ぽよっ。 改めて現実に泣き濡れる私を気遣って、ボクササイズはあえなく中止となった。
「弓のポーズ!」
「船のポーズ!」
ぐぐぐぐ。 みししっ。 ぷるぷるぷる。 う、うぐぐ。 辛いわ! ヨーガって、思ってたよりずっとハードなのね……。
「こ、これまでの運動みたいに反動を使えないから、き、きついな……。」
「は、話しかけないでくださる? それどころじゃありませんの……。」
「ヨーガはですね、精神性も大切らしいです。 体をほぐすだけではなく、その先にある心の平静が重要という事ですね。」
「うおおお! リーネすげエーー!」
え? ぶほっ! リーネさんの方を見ると、左足を頭の後ろに回して、足指で右耳を掴んでいる。 凄い! 凄すぎるわ!
「私、体は柔らかいですからー。 コツさえ掴めば簡単ですよ? ミーナ中佐も是非どうぞ!」
え? ごき。 ちょっ。 ぐき。 そん!? 吊る! いいえ! 裂ける! 裂けるわ!! ぽぎゃーーー!!!
……無理。 これは無理。 痩せるより先に体が壊れるだろうと満場一致した私たちは、何の未練も無くヨーガを諦めた。
- 31 名前:悲劇的ビフォーアフター 5/7:2009/05/06(水) 17:56:07 ID:4QC1sxdc
- 「ミーナは大きくなったら何になりたい?」
私? 私はねぇ……お父さんやお母さんが喜んでくれるような歌をいっぱい歌うの……って。 あれ。 あなた、は。
ぼんやりとした意識の中、聞こえたそれ。 あぁ。 なんて懐かしい声。 絶対に忘れるはずがない。 大切な、私の記憶。
「そんな、夢みたい。 あなたとこうしてまた逢えるなんて、えっと……クル……クル…………クルなんとか。」
「忘れてるじゃん!!!」
あ、あれ。 おかしいわね。 嘘じゃないのよ。 あなたとの思い出、とても大切にしてるのよ。
でも、クルトだったかしら? クルフだったかしら? なぜだか、あなたの名前がハッキリしないのよね……。
「ねぇ。 君は今、無理なダイエットをしているみたいだね。 おやめよ、ミーナ。 女の子は、自然なままが一番いいよ。」
「……相変わらず、優しいのね。 だからこそ分かるわ。 あなたの時は止まったまま。 一緒には、歩めない、って。
私ね。 大切な人が、できたの。 その人の前で、目を伏せるような人間になりたくない。
自然な私であるために、できる事をやりたいの。 二度と。 あの時、ああしておけばよかったなんて、後悔しないために。」
「……そうか、ミーナ。 強くなったんだね。 それが少しだけ悲しくて……誇らしいよ。」
「そんな、クルなんとか。 今適当に考えた理由に、あまり感心されても困るわ。 もう行かなくちゃ。 さよなら……。」
「適当なのぉ!!?」
くすり。 フッと意識が戻った。 軽く身じろぎ。 どうやら疲労でダイエット活動中に寝てしまっていたみたい。
ちらりと周りを窺えば、エイラさんの熱唱に合わせて、みんながリズムを刻んでいる。 歌ってダイエットの真っ最中ね。
すぐにでも輪に入ろうと思うのだけれど、なんだか身が入らない。 夢の余韻が残っていた。
大きくなったら……か。 あの頃は無邪気だったわね。 アイドルになりたいの?なんて聞かれたりもしたっけな。 ふふ。
私だって音楽を志した者の端くれ。 ワールドワイドな劇場で賞賛されるのを夢見た事が無いと言えば嘘になる。
アイドルかぁ……。 ……。 エイラさんの歌が終わり、私の番が来た。 憧れの、実現。 うん。 きっと、できるわ。 今の私なら。
「キラッ☆」
指を目に当てて、かわい子ぶったポーズでウィンク。 ギュルルル。 私の瞳から放たれた煌きが、談話室の壁を直撃する。
ドガァァァンンン!!!! 爆撃を想定して設計されたはずのその壁は、私のウィンク一撃で跡形も無く爆散した。
「ウオオオッ! スゲー!!」
「これが501統合戦闘航空団を束ねる魔女の実力かぁーー!!」
「ちょっと!! 失礼じゃないの!!!!」
予想外の事態に叫ばずにはいられない。 私はアイドルっぽくウィンクしたのよ!
もっとこう、可愛い星が飛ぶみたいなエフェクトとかあるでしょ! なんで錐揉み状の怪光線が出るのよ!
壁も壁よ! 女の子の流し目を受けて爆発四散するなんてどういうつもり? もっと気を遣いなさいよ!!!!
- 32 名前:悲劇的ビフォーアフター 6/7:2009/05/06(水) 17:56:37 ID:4QC1sxdc
- ……談話室がオープンテラスになってしまったわ。 一分前まで壁だった場所から外を眺めながら、少しずつ平常心をかき集める。
冷静に考えてみたら、これどう考えても夢よね。 異常事態すぎるもの。 そうよ。 夢よ。 白昼夢よ!
「ゴートゥDMC!」 ※ディートリンデさん・マジ・クール
「ゴートゥDMC!」
「お願いだから夢と思わせてぇーー!!」
これまでに無い尊敬の眼差しで熱狂するシャーリーさんとエイラさん。
違うの! 私がしたかったのはこんな音楽じゃないのよぉー! 狂乱のさなか、開いた穴から宮藤さんがひょっこり顔を出した。
「あら宮藤さん。 嫌よね私ったら。 いくら夢とはいえ、自分で前線基地を破壊しちゃうなんて……。」
「そぉい!」
「あふん!!??」
いきなり横っ面を張り飛ばされた。 い、痛い! ガチビンタだわコレ!
「いたた……ぶった手が痛い。 夢じゃないんだ、これ。」
「ちょっと! 確かめるなら自分の頬をつねってちょうだい! ムチウチになるかと思ったわよ!!」
「気持ち、分かります。 でもここで私達が争ってもしょうがないじゃないですか。 この怒りはネウロイにぶつけましょう!!」
「なに勝手な事ばかり言ってるのよ!! ぶったのはあなたでしょ!!!」
「落ち着けヨ、隊長。 DMC、いい映画じゃないカ。 いきものがかりも絶賛してたゾ。」
「 だ か ら D M C っ て 何 よ !!! 」
「なんだこれは。 一体何の騒ぎだ?」
美緒! 野外教練だったのだろうか。 宮藤さんの横から、今もっとも顔を合わせたくない人がひょっこり顔を出した。
「み、美緒。 違うの。 あのね、これは……。」
何か言い訳をしたいのだけれど、しどろもどろになってしまう。 それはそうよね。 間違いなく私が壁を壊したんだもの。
……。 ど、どうしたのかしら。 意外にも、美緒は怒鳴り散らすでもなく、じっと私の事を見つめている。
「な、なに、美緒? 私の顔に何か付いて……。」
むにっ。 おもむろに。 ごく自然に伸ばされた美緒の手が、私の脇腹のお肉をつまんだ。 ……。 …………。
むに、むに。 何を言うでもなく、美緒の手が私の脇腹を弄ぶ。 無言の時間が過ぎる。
……ふ、ふふ。 終わった。 全てが終わったわ。 この世から旅立つ時が来たのよ、ミーナ。 さよなら、501のみんな。
さよなら、生きとし生けるもの。 後の事はお願いね、トゥルーデ。 美緒。 愛していたわ……。
気絶しそうになりながら、コンマ一秒の間に遺言まで考えてしまった私、なのだけど。 すりすり。 ふにっ。 ……?
美緒は特に何をコメントするでもなく、私の両脇腹をさすり続けていた。 え……ちょ、ちょっと。 何? どうしたの、美緒?
- 33 名前:悲劇的ビフォーアフター 7/7:2009/05/06(水) 17:57:08 ID:4QC1sxdc
- ……その、ね。 女の子の脇腹って、敏感でしょ? 私は特に、人一倍。 こんな風に触られてたら、その……こ、困るの!
ショック状態から抜けてきた私は、自分が置かれた状況が、とても心もとなく恥ずかしいものに感じられて、思わず美緒に訴えた。
「み、美緒! その……何? あ、あのね、あまりそんな風にされるとね、その……。 みっ、みんな見てるからっ!」
「え? ……はっ。 わ、私は何を? ……い、いや、その。 すまん!!!!!」
我に返ったように手を離す美緒。 真っ赤になって、つい美緒から隠すように、自分の体を抱き締める私。
むー、と恥ずかしさへの抗議を込めて見つめていると、美緒が居心地悪そうに呟いた。
「その……なんだ。 ダイエット教室をしてると聞いたんだが、ミーナ。 ……絞って、しまうのか?」
「え?」
「いや……あのな。 わ、私は、だな。 今の、ミーナが、その……一番。 魅力的だと、思う。 ……のだが。」
へ。 え。 ……えっ? 耳まで赤くなるのが分かる。 えっ。 えっ、今っ、美緒っ。 ……えーーーっ!?
「さっ。 坂本少佐!? そんな!!!?」
「ふふ。 少佐、ふくよかな人がタイプだったんだ。 よかった、ミーナ中佐。 ねっ。 よかったねっ、芳佳ちゃん。」
「……じーっ……。 えぇ。 そっスね。 ビショップさん。」
「…………。」
宮藤さんがリーネさんの胸を見つめながら何か言ってるけれど、私の耳には入らない。 だって。 もう美緒しか見えないんだもの……。
……。 ふぁ。 小さな欠伸が漏れる。 左。 右。 ……エイラ、いない。 綺麗に畳まれた服だけが、私を待っていた。
首をゆっくり回す。 服を着ながら、エイラどこかなって、ぼんやり考える。 別に用事は無いのだけれど。
寝起きにエイラがいないと、不思議と空虚な気分になる。 とて、とて。 廊下を歩いて、エイラを探す。
?? 賑やかな声が聞こえる。 談話室の方だわ。 エイラも、いるかな。 とてとて。 とてとてとて。 とて。 ……到着。
……。 なに、これ。
「ミーナ……。」
「美緒……。」
「うわぁぁぁぁん! 芳佳ちゃんのばかぁぁぁぁ!」
「しょ、少佐! わたくし、少佐のためならこのぐらい……うぷっ。」
「ゴートゥDMC!! ゴートゥDMC!!」
なぜか壁がなくなっていて、丸見えの芝生。 物凄い勢いでご飯をかきこむリーネさんとペリーヌさん。
延々とミーナ中佐の脇腹をなでなでしている坂本少佐。 何かを叫びながらトランスしているシャーリーさんとエイラ。
……。 分からない。 分からなくていい。 私は、この基地に来て初めて、談話室の防火シャッターを閉めた。
おしまい
- 34 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 19:53:38 ID:uJzGVNS6
- 面白いけど訳わからんw
- 35 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 21:39:02 ID:JaDyU3pc
- ミーナさん良かったですね。
女性なら誰もが気になる事ですもんね。
途中からのカオスが面白かったです。
- 36 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 21:45:16 ID:I5cIVPU2
- >>33
今期最高に吹いたwwww
グッジョブとしかいいようがない、乙!
ttp://maps.google.co.jp/maps/ms?msa=0&msid=113904026104915731127.000461db9889e1a48b80d
あとぐぐるマップ見てたらこんなのがあって吹いた
どこの誰だかわからないが説明ともにグッジョブせざるを得ない
- 37 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 21:49:23 ID:jjZpb7gc
- 以前本スレに張った奴だな
- 38 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 22:08:20 ID:v3SwwGFM
- >>33
エイラ「やはりミナウザーさんがファッキンガム宮殿孕ませてビッグベンが出来たってのは本当だったのカ…」
シャーリー「しかしビッグベンがあんなに感じるなんて…完全に女の顔になってたな」
- 39 名前:名無しさん:2009/05/06(水) 23:35:57 ID:TFiHqIhI
- >>33 ミルクティー返せwww
グリム童話も好きだったんだけど、はっちゃけたミーナさんは好きだw 武力外交てw
ビショップさんとクルなんとかさんはイキロw
- 40 名前:名無しさん:2009/05/07(木) 01:37:26 ID:u.y.S9HA
- >>33
普通のSSかと思ってたら「キラッ☆」以降がwwwwww
腹筋がぶっこわれるってのはこういうことかww
いや、面白かったです。GJ!!
>>36
>ぐぐるマップ
これはGJ. コメントも丁寧でSS書くときに役立ちそうです。
- 41 名前:名無しさん:2009/05/07(木) 08:14:58 ID:MwHkHt2o
- >>33
なんというカオスwww
最初の方は素晴らしい文章だな〜と思ってたらコレだよwww
だがGJ!!
ミーナさんはハッピーエンドだったけど…リーネちゃん;;
宮藤の豹変ぶりにフイタww
- 42 名前:名無しさん:2009/05/07(木) 23:43:02 ID:Aa5TcN5Y
- ゴートゥDMC!ゴートゥDMC!
- 43 名前:トゥルーデ撃墜部隊:2009/05/08(金) 02:10:04 ID:o9jzwOb6
- お久しぶりです。
秘め歌シリーズできたので投下します。
秘め歌5のトリオより、芳ペリーネです。お姉ちゃん視点でいきます
- 44 名前:トライアングル・スクランブル:2009/05/08(金) 02:10:55 ID:o9jzwOb6
- 姉というのは、常に妹が元気でいるかどうか気にかけていなくてはいけない。
「お姉ちゃんって頼りになるね!」と尊敬される存在でなくてはならない。私はそう考えている。
ある朝、ウィッチーズ隊での妹である宮藤がしきりにため息を吐いていた。何か悩みがあるのだろうか。
何にしろ、このままでは訓練にも身が入らないだろう。
私はその朝食後すぐに宮藤を部屋へ連れていった。
…これがきっかけで、妹たちのスクランブルに巻き込まれる事も知らずに。
ベッドに座って不思議そうにする宮藤に、なるべく優しく話しかける。
「何か心配事か悩みがあるんじゃないのか、宮藤」
「へ…バルクホルンさん、なんでわかるんですか?」
「私は姉だからな、当然だ」
「さすがお姉ちゃんですね!」
ふふふ、そうだろう。
宮藤の一言で私はすっかり気分が高揚した。
「でも、ちょっと落ちついては話せない事なんです〜…」
「なんなら私の胸を触りながらでも話せ。落ちつくだろう」
「はう、ではお言葉に甘えて…」
宮藤の両手が私の胸を掴む。しばらくふにふにと揉んだ後、宮藤は幸せそうに息を吐いた。
「はぁ…あのですね…」
頬を紅潮させたままの宮藤が、ぼそっと呟いた。
「…好きな人が出来たみたいで…」
- 45 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:12:04 ID:o9jzwOb6
その言葉に姉として少なからず衝撃を受けたが、なんとなく想像はついていた。
思春期の少女の悩みといえば、まぁまず恋愛事だろう。
「何か、いっつも意地悪ばっかり言ってくるんですけど、たまにお礼言ってくれたり褒めてくれる時とか、真っ赤になってるのが可愛くって…」
もじもじしながらも胸からは手を離さずに話す宮藤。
内容からすると、相手は……
…私の予想では、いつも宮藤と一緒にいる某人物が相手だと思っていたのだが…それはやはり大きな胸が好きなだけなのか?乙女心というものはよくわからん…
「考えただけでドキドキしちゃうんですけど…女の子同士だし、この気持ちが知られちゃったら引かれちゃうかなぁって…」
「…それはないと思うぞ、安心しろ」
「え…ほんとですか?」
ヨーロッパは扶桑より恋愛の自由は進んでいるし、何よりその相手だって同性の坂本少佐に…
……そうだ、そこがネックだ。彼女は少佐に夢中になっている。鈍感な宮藤が気付いているのかはわからないが…
しかし、宮藤がアタックする事によって何か変わるかもしれないし、ここは勇気づけてやるのが立派な姉というものだ。
「宮藤、諦めるな。人が人を想う気持ちに性別も階級も関係ない。当たって砕けるつもりでアプローチすれば、結果はどうあれ後悔はしない筈だ」
- 46 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:13:21 ID:o9jzwOb6
「…お姉ちゃん…!!」
宮藤が拳をぎゅっと――つまり私の胸をぎゅっと――握った。
その目には強い決意が色めいている。
「私…私、頑張ります!」
「うむ、お姉ちゃんは応援しているぞ!」
「はい!宮藤芳佳、いきますっ!」
宮藤はガッツポーズを取ると、部屋を出ていった。
宮……芳佳、大きくなったなぁ。お姉ちゃんは少し切ないよ…
―――
「バルクホルン大尉…少しだけお時間をいただいてもよろしいですか?」
昼食後。
私の部屋を、宮藤の意中の相手(だと思われる)ペリーヌが訪ねてきた。
「かまわないが…どうしたんだ?」
「あの、少し悩み事があって…宮藤さんが悩みなら大尉に相談したらいいと声をかけてくれたのですけど」
おお…宮藤、ちゃんとアプローチをかけたようだな。さすがは私の妹だ。
「あんな豆狸に心配されるなんて…よほど呆けていたのですわ、私としたことが…」
……ま、まぁ、結果はこれから付いてくるかもしれないな。頑張れ芳佳。
「それで…悩みというのはなんだ」
「あ…あの、その」
ペリーヌは顔を赤らめ、上擦った声で言った。
「す、少し…気になる人がいて…」
…これは。
もし少佐の事だったら、改めて私に相談する必要もないだろう。
宮藤の恋路に一筋の光が射したのではないだろうか。
- 47 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:14:29 ID:o9jzwOb6
「まだまだひよっ子の癖に綺麗事ばかり言っていて、弱々しくって…でもそんな所が放っておけないというか、いつも気にかけるようになってしまって…」
…しかし、この内容からすると、宮藤のような違うような。
「私にはない素直でまっすぐな所に、何故か胸がきゅっとしてしまうんですの…特に宮藤さんや故郷に対しては、普段控え目な性格なのに熱くなったりして、それがまた素敵で…」
あぁ…宮藤の名前が出てしまった。
これは間違いない、宮藤の想い人だと勘違いしていた某人物だ。しかし意外だ、ペリーヌと彼女はあまり馬が合わないのかと思っていたのだが。やはり乙女心というものは複雑だ。
「こんなのって…変、でしょうか?大尉」
「い、いや!変なものか!」
どうしよう。宮藤に応援すると言った以上、ペリーヌが別の人物を好いているというのは喜ばしい事ではない。
しかし…ペリーヌの不安そうな、子猫のような目を見ていると、やはり元気づけてやりたくなる。
少しタイプは違うが彼女だって妹だ。姉が妹を贔屓してどうする!
「いいか、ペリーヌ。お前の気持ちは全く変ではない。純粋にその相手が好き…なのだろう?」
「や、やっぱりそうなのでしょうか…でも、私その人にはいつも以上に素直になれなくて…」
- 48 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:15:46 ID:o9jzwOb6
ペリーヌは完全に恋する乙女だ。こうなると尚更応援したくなる。
芳佳、すまない!
「お前は本当は心優しい少女だ。相手も少なからずそれをわかっている筈だ。自分に苛ついたりせずにしっかり相手と向き合って、想いを伝えていくんだ」
「…大尉…!」
不安気だったペリーヌの表情が明るいものに変わった。
「わかりましたわ…ありがとうございます、大尉!」
「よし、頑張れ!」
「はい!いきますわよ、ペリーヌ・クロステルマン!」
ペリーヌもまたガッツポーズを残し、部屋を出ていった。
…何だか嫌な予感もするが、とりあえず姉として妹たちの恋路を見守ろうと思う。
―――
「あの、バルクホルンさん…ちょっと聞いてもらいたい事があるんです…」
夕食後。
今度はペリーヌの意中の相手(だと思われる)リーネが私の部屋へやってきた。
「どうした?」
「あ、あの…ちょっと悩みがあって今日の訓練がいつも以上にちゃんと出来なくて…心配事があるならバルクホルンさんが聞いてくれるってペリーヌさんが教えてくれたんです」
うん…ペリーヌもちゃんと優しく接しているようだな。
「悩みというのはなんだ」
なんとなくわかる気がするが一応尋ねる。
リーネはいつも以上にもじもじしながら呟いた。
「あの…私、好きな人がいて…」
- 49 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:16:59 ID:o9jzwOb6
やはりそうか。
しかもリーネの場合、相手も想像がつく。
「私より後にウィッチーズに入って、訓練でも私とおんなじくらいしかできないのにいつも前向きで、そこが羨ましくて一時期冷たくしちゃって…」
もう答えを言っているようなものだ。リーネより新人のウィッチは一人しかいない。
リーネと彼女が最初はギクシャクしていたのも知っている。
「でもそんな私にずっと優しくしてくれて、お友達になってくれて…今では、いつもは可愛いのに戦いの時は凛々しくって惚れ惚れしちゃうんです…」
頬に手を当て、はぁ、とため息を吐くリーネ。誰がどう見てもその相手に夢中な事がわかる。
「その人の事が気になって夜も眠れないんです…これって重症ですよね…?」
「え…う、うむ…」
困った。完全に三角関係じゃないか。どうしたものか。
しかし、リーネも私にとっては妹だ。本当の姉と離れていて心細いのだろう。
やはり私が元気づけてやらねばなるまい。
「それだけ気になるというのは、その分相手への想いが強いということだろう。何も恥じる事はない」
「ほんとですか…?」
甘えるような眼差し。思わずぎゅっと抱き締めたくなるような愛らしさだ。
芳佳、ペリーヌ。妹は平等に愛す。それが立派な姉だ!
- 50 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:18:20 ID:o9jzwOb6
「リーネ。お前は素直で優しいし、家事も得意だ。お嫁さんにしたいキャラNo.1だ。その癒しのオーラで、相手を自分に夢中にさせればいい」
「バルクホルンさん…!」
ぱっと顔を輝かせるリーネ。
「やります!私…頑張ります!」
「その意気だリーネ!」
「はい!いくのよ…いきましょう、リネット・ビショップ!」
またも妹はガッツポーズを取り部屋を出ていった。
まさかこんなに完全なトライアングルになっているとは思わなかった。
勢いで全員焚き付けてしまったが、大丈夫だろうか…
―――
翌朝。
「ペリーヌさんリーネちゃん、あーん」
「…ん、まぁ料理の腕だけは褒めて差し上げましてよ」
「ペリーヌさん、口の周りにご飯付いてますよ。あ、芳佳ちゃんも」
例の三人は、なんだか以前より仲睦まじくなっていた。
「なんだか仲良いわね、あの三人」
「はっはっは、良い事ではないか」
佐官の二人は微笑ましく三人を見ている。
と、突然三人はいつものような喧嘩を始めた。
「だから納豆は止しなさいって言っているでしょう!」
「わぁーん、ペリーヌさんが怒ったぁ」
「お、落ちついてください〜」
ペリーヌに怒鳴られ嬉しそうな宮藤。
リーネにいさめられ嬉しそうなペリーヌ。
宮藤に抱きつかれ嬉しそうなリーネ。
なんだか奇妙な三角形になってしまっているようだが、当の本人たちは幸せそうだ。
それならまぁいいか、と、可愛い妹たちのスクランブルの真実を知る私は、これからも彼女たちを見守っていこうと決めた。
それが姉というものだ。
- 51 名前:トゥルーデ撃墜部隊:2009/05/08(金) 02:18:48 ID:o9jzwOb6
- おわりです。ちょっとわけわかんなくなってしまった…
- 52 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 02:40:51 ID:7LfSp74g
- なんか3人が可愛いというか、面白いというか。GJ!
お姉ちゃんのお姉ちゃんぶりもいい感じで笑った。
- 53 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 09:33:43 ID:bX2V5.fQ
- >>51
これはいいお姉ちゃん、そして三角関係GJ!!
てっきり壮絶な痴話戦争が始まるのかと思ったらなんか幸せそうでワロタ
芳ペリの秘めるポテンシャルは侮れないものがありますなあ
- 54 名前:名無しさん:2009/05/08(金) 20:04:49 ID:FsvFa3bw
- >>51
とても可愛いお話GJです。
この3人って色々微妙な組み合わせで難しそう
だけど、最後の3人のやり取りはすごく自然で
良いです。
- 55 名前:Panthera 1/7:2009/05/10(日) 01:18:31 ID:s3IBA4QI
- 「こんばんは皆の衆。 見て見て! どう? 可愛い?」
夕食後のラウンジ。 みんなでくつろいでいると、エーリカがとてとてと駆け込んできた。
読んでいた小説から顔を上げてそちらを見やる。 エーリカは、ちょうど私の目の前でくるりと優雅に一回転した。
「これからの軍服には可愛さも必要だよ! というわけで、ファッションリーダーたる私が先陣を切ってみましたー。」
ひら、ひら、ふわり。 特徴的な動きに思わず目が奪われる。 薄布がエーリカの動きに合わせて舞い上がる。
裾は膝上15センチ。 細やかなプリーツは僅かな動きでひらひら揺れて、思わず目で追ってしまう。
ホワイト・ペールイエロー・ライトブルー。 淡い色彩のギンガムチェックは、雨上がりの空を思わせる清々しさだ。
ベルト! 普通ならば既婚女性のみが履くそれを、エーリカはズボンの上に重ね着していた。
呆気にとられた頭に思考能力が戻ってくる。 なんだこれは。 一体こいつの脳味噌には何が詰まってるんだ。 ウニか。
制服は国民の血税で支給されているんだぞ。 わけの分からんアレンジを施すな! 思わず叱責が口をつく。
「ベルトって……お前は既婚者か!? 軍服に可愛さを求めてどうする。 ネウロイが見惚れてくれるわけでもないだろう!」
「ふーんだ。 やってもいない内から知った風な事言わないでよね。 トゥルーデに若者の気持ちは分かんないよ!」
「お前と二つしか違わんわ!!!」
べーと舌を出すエーリカ。 軍服に機能性以上のものなど要らん! プライベートで好きなだけ着飾れ! プライベートで!!
「可愛い!! 私は滅茶苦茶可愛いと思いますっ!!」
「なー。 可愛いよなー。 さすが宮藤はどこかの誰かさんとは大違いだね!」
「サーニャとはまた違った感じダナー。」
無邪気かつコケティッシュ。 エーリカそのものといった感じのその服は、確かによく似合っていた。
軍服である必要はまるでないがな! 本当にこいつは毎日毎日よくもまぁ、次から次へと奇行を思いつくものだ。
嘆息して宮藤たちと盛り上がる様を遠巻きに見やる。 と。 その時だった。
ちらり。
ドキン!!!! なっ!? なっ。 なっ。 なーーーっ!!?
なんだ、今の感覚は!? ベルトの裾から、ほんの僅かにエーリカのズボンが覗いた。 その瞬間。
私の心臓が、まるで別の生き物かのように跳ね上がった。
こっ。 これは? 一体どうしたというんだ。 さんざん見慣れたエーリカのズボンが、ちょっぴり見えただけじゃないか。
それなのに。 苦しい。 苦しいんだ。
どき、どき。 どき、どき。 胸が得体の知れない高揚感に満たされる。 一言で表すなら。 ときめき。
- 56 名前:Panthera 2/7:2009/05/10(日) 01:19:08 ID:s3IBA4QI
- 「なんだよー、見んなよー。 トゥルーデにとってはどうでもいい事なんでしょー!」
「べ、別に見ていない! そんな事よりだな。 恥ずかしくないのかエーリカ! ズボンがちらちら見えてるじゃないか!!」
「え? どゆこと? ズボンくらい、いっつも見てるじゃん。 変なトゥルーデ!」
エーリカがくすくすと笑う。 !!? あ。 う。 ああぁ。 どうした事だろう。 かっ……。 可愛いっ!
何気なく微笑んだだけのその笑顔が、物凄く可愛い。 なんでだ。 なんでこんなにエーリカが可愛く見えるんだ。
毎日見ていたはずのズボンが、こんなに見てはいけないものに思えるのは何故なんだ。
みんなが私と同じようにベルトの裾を注視するのが、こんなにも気に入らないのは何故なんだっっ!!
ひら、ひら。 ちらっ。
ひら、ひら、ひら。 ちらっ。
だっ。 駄目だ。 ベルトの裾から、僅かにライムがかった白が覗く。 それだけで、胸が高鳴り、締め付けられる。
一体どうしたと言うんだ。 ベルトを履いた。 それだけなんだぞ。 他はいつものエーリカじゃないか。
こんなに輝いて見えるなんて。 こんなに愛くるしく見えるなんて。 傍からも分かったのだろうか。 宮藤がふふ、と笑って言った。
「もう、バルクホルンさんったらすっごい夢中。 可愛いって認めたらいいじゃないですか。 素直になりましょうよ!」
「なっ。 だだ、誰が誰を可愛いと思ってるだと!? 別に夢中じゃない! 変な事を言うな、宮藤!!」
「素直じゃないなぁ。 私だって、ズボンが好きなわけじゃないですよ? 履いてる人の魅力に気付いたと言うか……この角度!」
そう言うと宮藤はググッと腰を屈めて、やおらベルトの中を覗き込むような角度をとった。 頭に血が上る。
「こっ、こらぁ!! そういう事はやめろ!!!!!」
「うひゃっ!!? す、すいません!!!!」
自分でも驚くほどの大声だった。 私に集まる視線。 くっ。 駄目だ、駄目だ駄目だ! これだけは言っておかなくては!
「エーリカ! そんな風にズボンをチラチラ見せるのは止めろ。 はしたないぞ! もっとしとやかに動け。 慎みを持て!!!」
「え? なんで? ついさっきまで、ズボンが丸々見えてたじゃん。 隠れてるぶん慎みはアップしてるよ?」
「なんででもだ! 気になって仕方ないんだ。 そんな様を誰にでも見せるんじゃない。 私以外には見せるんじゃない!!」
心中の思いを一気に吐き出して、少しだけ気持ちが楽になった。 エーリカはあまりに無防備すぎる。
私ならともかく、そこいらの人間をこんな気持ちにさせるような行為をさせておくなんて、心配で仕方がないじゃないか!
「へっ、えっ、えっ? ……う、うん。 トゥルーデがそう言うなら……そうする。」
ほんの少しの間ぽかんとしてから、赤くなって顔を伏せるエーリカ。
柄にもなくモジモジしているが、ようやく私の気持ちに共感してもらえたのだろうか。
背中に妙な視線を感じるが、頑として無視する。 私はこれまでに無い保護意識のようなものが湧いてくるのを感じていた。
- 57 名前:Panthera 3/7:2009/05/10(日) 01:19:41 ID:s3IBA4QI
- 「屋根の塗り直しかぁー。 なぁに描いちゃおっかなー。」
「花柄とかにされても困るわよ、フラウ。 まぁ、たまには日曜大工も楽しいわよね。」
梯子を立て掛けながら笑うエーリカ。 ミーナはやる気まんまんで率先して梯子を登っていった。
屋根のペンキ塗装。 初めての経験だな。 これが一般家屋なら業者を呼べばいいが、軍の施設となると話は別になる。
いつもは作業員たちがやってくれるのだが、彼らのスケジュールはぱつぱつだ。
休ませたいというミーナの意向は充分すぎるほど分かる。 長々と考えていてふと我に返ると、隣にはまだエーリカがいた。
「なんだ、エーリカ。 まだ登ってなかったのか。」
「……トゥルーデが先に登ってよ。」
少し怒ったような顔のエーリカが放った台詞で、思わず顔に血が上る。 なっ、なんだ! どういう事だそれは!
手がベルトの裾を押さえているのが腹立たしい。 きっ、貴様! 私が下から覗くとでも言いたいのか!
最近ずっとこの調子だ。 最初の頃は、ズボンを見られたって恥ずかしくないと言っていた癖に!
……いや。 エーリカのせいにするのは、フェアではない、な。 もう半月になる。
半月もの間、私の瞳は私の意に反して……本意だったのかもしれないが……ひらめくエーリカのベルトを追い続けてきたのだ。
そして恥ずべき事に、ベルトの裾から覗くズボンに、私の心はときめいていたのだ。
しかし、それを言葉にして認めてしまう事は、何か人として大事なものを失うような気がして憚られるのだった。
「そういうのを自意識過剰と言うんだ! くだらん事を気にする暇があったら、さっさと登ってミーナを手伝ってやったらどうだ!」
「悪いけどね、トゥルーデに言われても説得力が無いよ! そんなに食い入るように見られたら、流石に気になるの!」
「だっ、誰が食い入るように見てると言うんだ! 誰が!!」
「トゥルーデだよ! ここ最近、ずっと!」
「ぐっ。 そんなに見られるのが嫌なら、そもそもベルトなんて履かなければいいだろう! なぜそうしないんだ!!」
「そっ、それは。 だって。 ……トゥルーデが、気に入ってるみたい、だから。」
えっ。 エーリカの言葉に思考が停止する。 居心地の悪い沈黙。 何か言わなければ。 なのに。 何も言葉が浮かんでこない。
最近はいつもこうだ。 まるで熱に浮かされたみたいに、私の思考が止まってしまう。
「ちょっとー、何言い争ってるの? 一人でこの面積は無理よ。 手伝ってくれないかしら。」
頭上からミーナの声がして何とか気を取り直す。 そうだ。 ミーナを手伝わなければ。 頭を上げてぎょっとする。
「ミーナ! 何やってるんだ! 危ないぞ!!」
「大丈夫よ。 最近はデスクワークばかりだし丁度いいわ。 こう見えても、私結構こういう仕事得意なのよ?」
ミーナはとっかかりも碌に無い斜面を上機嫌で塗装していた。 危なっかしいでは済まない。 今すぐ落ちたって不思議じゃない!
何を考えているんだ。 お前は中佐なんだぞ。 そんなのは私に任せてくれれば……。
喉から出かけたその言葉を、すんでの所で飲み込む。 言えない。 言う資格が無い。 私は、ベルトの事で頭が一杯だったのだから。
- 58 名前:Panthera 4/7:2009/05/10(日) 01:20:11 ID:s3IBA4QI
- なぜミーナがあの作業を始める前に気付かなかったんだ。 ベルトなんかより、ずっと重要な事じゃないか。
いつだってミーナを支えていようと、その規律を自分に課していたはずなのに。 失態、だ。
「ちょ、ちょっとミーナ! それ以上左に動いちゃ駄目だよ! 止まってて!」
「でもねぇ、あとちょっとであの段差の下が塗れるのよ。 もうちょっ……きゃあ!!?」
「ミーナ!!!!!!!!」
ずるっ。 ぐらり。 どしゃっ。 私たちの見ている前で、ミーナは屋根から落下した。
「大袈裟よ、あなたたち。 そんなにしょげこまれると、自分がどれだけ恥ずかしいミスをしたのかと思っちゃうわ。」
肩を落とす私とエーリカの手をそっと包むミーナ。 幸い、ミーナの怪我は大事には至らなかった。
「でも今日は安静にですよ、中佐。 もうくっついてますけど、腕、折れてたんですからね。」
りんごを剥きながら宮藤が言う。 ずきりと胸が痛む。 骨折。 我々は何をしていた? 私は何をしていたんだ。
後ろめたさ。 なぜ、気付いた時にすぐ駆け出さなかった? なぜ、私の心はあれほど鈍っていた?
分かっていた。 エーリカ。 最近の私の頭の中はエーリカの事ばかりだった。 今の服装に変わってから、ずっと。
何してるんだ私は。 何のためにここにいる? 誰かを救うためではなかったか。 宮藤にそれを教わったのではなかったか。
「もう、本当に平気なのよ。 いつもだったらあなたが明るいムードにしてくれるんだけどな、フラウ。
うん。 私が軽率だったわ。 ふふ。 でも、私なら大丈夫。 これでもね、悪い事ばかりじゃないの……あっ。」
コンコン。 ノックの音と同時に、そそくさと髪を撫で付けるミーナ。 少しだけ開いた扉から坂本少佐が顔を覗かせた。
「ミーナ、具合はどうだ? ちゃんと何も考えずに休んでいるか?」
「えぇ。 あなたこそ大丈夫? ちょこちょこ見舞いに来てくれるのは嬉しいけど、仕事は疎かになっていないかしら。」
「心配無用だ。 ん? りんご、か。 よし。 口を開けろ、ミーナ。 まだ手に無理させてはいかんからな。」
「え? ええぇ? え、その……。 ……ありがとう、美緒。 あーん。」
な、なんだ。 付き合いの長い私だ。 言葉は控えめでも、ミーナがそわそわと喜んでいるのが見てとれる。
どうやら本当に、この状況に喜びを感じているようだ。 考えてみれば、ミーナが世話してもらう側になる事なんて無かったからな。
たまには誰かに思いっきり甘えるのもいいかもしれない。 少佐のように頼れる人なら、まさにうってつけだろう。
少しだけ気が軽くなった。 邪魔しないよう、宮藤とエーリカに目配せして、我々は病室を後にした。
夕食後、エーリカが部屋に訪ねてきた。 話の内容も分かっていた。 夕食を食べている時から。
いや、本当は。 もっと前から分かっていた。 エーリカが来なければ、私から訪ねていこうとさえ思っていた。
分かっていた。 分かっていたのに、やめられなかった。 そのふざけあいを、やめるべき時が来たのだ。
- 59 名前:Panthera 5/7:2009/05/10(日) 01:20:42 ID:s3IBA4QI
- 「私ね。 この格好、やめるよ。」
「……ミーナの事は気に病むな。 我々にできる事は、無かった。」
「かもね。 でも、考えちゃうんだ。 以前の私なら。 以前のトゥルーデなら、気付けたんじゃないかって。
ミーナに怪我させなくて、済んだんじゃないかな、って。 最近の私たち、さ。 熱があったんだよね、きっと。」
胸がちくちくする。 自分から言うべきだった。 こんなに言い辛い事を、言わせてしまっている。
「私ね。 嬉しかったんだ。 トゥルーデが、こんなに私の事を見てくれるなんて、今まで無かったから。
でも、本当は、分かってた。 これは私の魅力じゃないって。 あくまで、このベルトのおかげなんだって。
小道具でズルして、惑わせてるだけなんだって。 分かってたんだけどね、あは、あはは。 ……分かってた、のに。」
……こんな顔させたくない、のに。 否定できない。 事実から目を背けていられる時間は、終わったのだ。
その通りだ。 このベルトのせいだ。 このベルトが見せる、無垢で儚げなはためきに、私は胸をときめかせていたのだ。
胸が痛い。 そんなに自分を責めないでくれ。 私だって、この熱に浮かされていたかったんだ。
この熱が、あまりに心地良くて。 ミーナを傷つけて、エーリカを傷つけて、そんな事になるまで手放せないほど。
うなされていたかったんだ。 ひた隠しにしていたこの病を、いつまでもこじらせていたかったんだ。
「いっつもさ。 終わってから気付くんだよね、私。 でも、きっとすぐ忘れる。 夜を越えれば。 明日になれば。
眠りが、全部洗い流してくれる。 それが私のいいところ。 だから、さ。 そんな顔しないでよ、トゥルーデ。 ね。」
ジッパーを下げる細い指。 私は、なんて、どうしようもない。 こんな時まで。 隙間から覗く白に、クラクラしてる。
ふぁさ、とベルトが地面に落ちる。 無言で見つめあう。 ……おかしい。 おかしいな。
もうベルトは無いのに。 心臓がうるさいくらいに打ち続けている。 達観したような顔で、そっと抱きついてくるエーリカ。
「ドキドキしてるね、トゥルーデ。 ふふ。 こんなベルトくらいで、おっかしーんだ。 ……ね。
今だけ、こうさせて。 もうこれで、おしまいだから。 せめて、このドキドキが消えるまで。 聞いてたいんだ。
ちょっとの間だったけど、トゥルーデは私に夢中だったんだぞ、って。 覚えていたいんだ……。」
抱き締めずにはいられなかった。 少し驚いた顔をしてから。 エーリカは、ぐい、と私の首に額を押し付けた。
ドキドキ、ちくたく。 ドキドキ、ちくたく。 ドキドキ……。 何分経ったろう。 確かにもう、エーリカはベルトをしていない。
分かっている。 流石にもう、気付いてしまった。 もうベルトは無い。 今も私はこの通り。 つまり。 つまりだな。
「……え、えっとぉー、その……お、収まんないね。 ドキドキ。 ど、どしたの? トゥルーデ?」
まったく。 まったく! どの顔さげてそんな事を聞くんだ、お前は?
でも嬉しかった。 エーリカの顔から、さみしそうな色が消えた。 それが無性に嬉しかった。
宮藤が言ったんだったか。 ズボンが好きなわけじゃなくて、履いている人が好きなんだろうって。
きっと今まで気付かなかったエーリカの価値に気付いたんだろうって。 それは、まさに的中だったのだ。
きっかけは確かにベルトだった。 けれど。 ベルトは終着点ではなかったのだ。
- 60 名前:Panthera 6/7:2009/05/10(日) 01:21:12 ID:s3IBA4QI
- 「……最近、トゥルーデが優しすぎて。 あんまり居心地良すぎたから。 あんまり幸せだったから。
ベルト履かなくなったら、どうなっちゃうんだろうって。 今まで通り暮らしてけるのかなって。 そればかり考えてた。」
「ああ。 私も考えていた。 ベルトなんて、ただの布なのにな。 ふふ。 きっと、熱のせいだ。」
「……うん。 熱のせいだね。 えへへ。」
あまりに目を近づけすぎると、何を見ているのか、分からなくなるように。 私たちの距離は近すぎたんだ。
だからきっと、ベルトのひらめきの向こう側に、見えなくなっていたエーリカのかたちが透けて。 私は心奪われていたんだ。
バタバタばたーん! エーリカの頬に手をやって顔を近づけたのと同時くらいに、部屋の扉が唐突に開いた。 いや。 壊れた。
重なり合うように雪崩れ込んできたのは、501の隊員たち。 えーっと……。 何事だ?
「こ、こんばんは、バルクホルンさん、ハルトマンさん! ふー、暑い熱い! こ、今夜はなんだか暑いですね!」
「何言ってるのお馬鹿! あ、いえ。 ほほほ。 嫌ですわ。 このドアったら、たてつけが悪くって……。」
「まったくだなぁ。 それじゃ我々はここら辺で修理屋でも呼んでくるとしましょうか。 な!」
一目散に逃げ出す面々。 覗かれてた事を理解して、不心得者たちを追い掛け回しだしたのは、およそ一分ほど固まってからだった。
「なんだよー。 私たちなりに心配してたんだぞ。 晩飯ん時も、なぁんか空気が重かったからさぁ。」
リーネが淹れてくれたお茶をすすりながら、ミーティングルームでくつろぐ私たち。
まだ頬が熱い。 まったく、油断も隙も無い連中だ。 恥ずかしい所を一部始終見られてしまったじゃないか。
「うぅ、ごめんなさい……でも丸く収まってよかったですね。」
「まぁ、私がただのベルトに執着するはずもなかった。 冷静に考えてみれば、自明の理だったな。」
「それはどうカナ!?」
む? 自信満々のていで現れたのはエイラ。 何か異論でもあるのか?
「にひっ。 あれだけベルトをガン見しといて、そんなの信じられねーよット。 これを見てもまだそんな事が言えるかナ!」
そう言ってエイラに手を引かれて出てきたのは……宮藤、なのだが。 いつもと違う、その姿。
今日の宮藤は、紺色のベルトを履いていたのだ。 そして何とも無節操な事に。 それを見た私の胸は高鳴っていた。
「ちょ、ちょっとエイラさん! 芳佳ちゃんに何してるんですか! 変な事して大尉を惑わせないでください!!」
「フフーン。 やだネ! 大尉に悪戯するチャンスなんてそう無いダロって! ほれ宮藤! 回れ回れ! チラッといったれ!」
「え、えーっ。 いいのかなぁ……。」
くそっ。 よりにもよって、宮藤をチョイスするとは! エイラめ、後で覚えていろよ……。
横を見ると、エーリカが不安げな顔で私を見つめている。 しっかりしろ、ゲルトルート。 こんな顔させてなるものか。
何も心配要らないぞ、フラウ。 これは試練だ。 この茶番に終止符を打つため、神が与えた試練なのだ!
- 61 名前:Panthera 7/7:2009/05/10(日) 01:22:46 ID:s3IBA4QI
- 「さてさて、鬼が出るか、蛇が出るか? 何が出るかはお楽しみっト! それじゃ宮藤! レッツビギン!!」
「じゃ、じゃあ……いきます!」
きゅっ。 くるっ。 ふわり。 宮藤のくるぶしが綺麗なアクセルを描き、その場で回転する。
裾が浮き上がり宮藤の足があらわになっていく。 どきどきどき。 くっ。 流石は宮藤! かなりの破壊力だ。
理性が悲鳴をあげるような感覚。 耐えろ、私……! やがてベルトはふわりとリミットラインまで舞い上がり。
ちらり。 運命の、刻。 見えた。 宮藤のズボンが、見えた。 ……見えたの、だが。
ひゅるるる。 それは一瞬の事。 私は、自分の中で急激にボルテージが下がっていくのを感じた。 見えた。 確かに見えた。
宮藤の……いつもの、紺色のズボンが。 紺色。 ……紺色。 ……紺色、か……。 …………ふーん。
プシュウゥゥ。 ピタッ。 オール・グリーン。 西部戦線異状なし。 その光景は、全くもってまるで感動をもたらさず。
私の心臓は完全に平静を取り戻した。 何の動揺もなくなった私は、エイラに向けて言い放った。
「愚問だったな、エイラ。 そのベルトは確かに宮藤に似合っている。 が! それだけだ。
特別なものは何も感じない。 これでハッキリした。 私が惹かれたのはベルトではない。 エーリカそのものだ!」
「トゥルーデ!!」
「ウォウ!! ……フッ。 負けたヨ、大尉…………。 これで私の悪戯は94戦94敗か……。」
エーリカをひしっと抱きしめて、勝利の余韻を噛み締める。 あぁ。 なんと素晴らしい勝利だろう。
宮藤といえど、私の心を惑わす事はできなかった。 それはつまり紛れもなく、この気持ちは本物なのだという証明だったのだから。
「……なにか、物凄く紙一重だったような気が……。」
「え、何が、リーネちゃん? 私、すごく感動しちゃった! 真実の愛ってあるんだね!」
「えへへへへー。 私は最初っからトゥルーデのこと信じてたもーん。」
「当然の結果になっただけだ。 あまり言われると恥ずかしいだろう。 ふふ。」
「し、真実の愛、かなぁ……。 まっ。 いっか……。」
「おめでとう、トゥルーデ、フラウ。 私も負けてられない、かな。」
慈しみに満ちたミーナの笑顔。 ん? 負けてられない、とは? 視線の先を追うと、そこには坂本少佐。
あぁ。 あぁ、あぁ。 そういう事か! 私ときたら、まったく鈍いものだ。 改めて、微笑ましい気持ちで坂本少佐を見やる。
…………ん? なんだろう。 そこで私は違和感に気付いた。 何かおかしい。 少佐は何かに心奪われているようだった。
なんだ? またも視線をトレースしてみる。 ペリーヌ。 意外と言えば意外。 ペリーヌを見ているのか?
いや。 違う。 これは、まさか。 ……少佐が食い入るように見つめていたのは、ペリーヌのタイツに開いた小さな伝線だった。
……。 それは、ちょっとしたきっかけなんだ。 どうしようもなく振り回されてしまう、その感情に気付く、きっかけ。
例えばそれは、ヒラヒラしたベルトであるとか。 穴の開いたタイツであるとか!
思わず、はぁ、と溜息が出る。 哀れなるミーナ。 果たして私にしてやれる事があるだろうか? さしあたって、できる事。
……衣類の片付け、かな。 この腕の中のお嬢さんまで、気まぐれにタイツを履くなどと言い出さないように!
おしまい
- 62 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 05:52:01 ID:rOwpHB1I
- >>61
あんた・・・GJ過ぎるだろ
まさかストパンでチラリズムを拝めるとはw
- 63 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 08:11:00 ID:nNhASUms
- >>61
GJだー!
ベルトのはためきに振り回されるゲルトさんがお馬鹿でかわいいww
ベルトのおかげなんだって言っちゃうフラウのピュアさもいとおしいよー。ゲルトさん男前でよかった。
…ええ話やとうるっとしたところで最後の伝線でとどめ刺されましたww 少佐……w
- 64 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 10:55:13 ID:llKKoMVA
- >>61
なにこの ドキッ☆フェチだらけのストライクウィッチーズ〜チラリもあるよ〜 ・・・・
宮藤のズボンが紺色で本当によかった・・・。しかしもっさんマニアックだなーw
あとタイトル自重wwかっこよさげに書けばいいってもんじゃないwww
何はともあれGJ!
- 65 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 14:35:48 ID:22skLp5w
- エーリカとウルスラでSS投下します。
一応、保管庫の0997の関連ですが、別に読んでなくても全然おkです。
2レスの予定。
日曜日の朝のことだ。
床になにかを盛大にぶちまけた音で私は目を覚ました。
時計を見ると、6時を少し回ったところだった。
なんだというのだろう? 今日くらい、ゆっくり寝ていたかったのに。
あの人は夜勤で家にはいないし、泥棒としたら時間はずれだろう。
とすれば、残りは一人しかいない。
ともかく私は、音のしたキッチンへと向かった。
――けれど、そこにいたのは二人だった。
ウルスラ、それにエーリカ。
先月、7歳になったばかりの、双子の娘たち。
そうだった。私の娘は二人いたのだ。
忘れていたのではない。一人を見当に入れていなかったのだ。
いつもなにをしても一向に起きない、ねぼすけのエーリカの方を。
それが、こんな朝っぱらから目を覚ましているということ自体、私には驚きだった。
この子だけではない。ウルスラにしたっていつもなら寝ている時間だ。
それに今日は日曜日なのだ。学校は休みなのに。
「母様、もう起きちゃったの!?」
「姉様がうるさくするから……」
「だって――」
二人はそのまま、口げんかでも始めてしまいそうだ。
そんな二人の足元には、ひっくり返った鍋と、その中身であったらしい食材がこぼれている。
「なにしてるの?」
訊かずともその有り様を見れば、なんとなく二人がやろうとしていたことはわかる。
けれど、頭がそれを拒否していた。
そんな私にかまうことなく、二人は声を合わせて答えた。
「「朝ごはんつくってる」」
ああ、そう。そうよね。見ればわかるわよね。
私は窓の外を確認した。晴れている。
なのに、なんだというのかしら? この子たちは。
とにかく。散らかしてくれた床を片づけないといけない。
「なにやってるの、まったく」
私は二人の方へと歩みよろうとして――けれど、それは途中で遮られた。
「だめ」
ウルスラが私の腰のあたりに手を回して、立ちふさがってきたのだ。
「今日一日、母様はゆっくりして」
たかだか7歳の力だ。振りほどいてしまうことはたやすい。
けれど私は、そうすることができなかった。
「どうしたの?」
「今日はMuttertagって日だって、学校の先生がいってた」
今の学校はなんてことを教えてくれるのか。そうか、今日はそんな日だったわけね。
だから朝ごはんを作っているのか。私のかわりに。
「だから、母様はなにもしないで」
「でも……」
「しんぱいないから」
まるで自分に言い聞かせるよう、ウルスラは言った。
私のため(なんと甘美な響きだろう)に娘たちがなにかをしてくれる。それは素直に嬉しいことだ。
その気持ちだけでもう、私の胸はいっぱいになる。
でも、この子たちにそんなことさせて、本当に大丈夫なのだろうか――
無理だわ。間違いなく。
ただ事で済むわけがない。確信にかぎりなく近い予感がする。
だってこの子たちはこんなこと、生まれてこの方やったことないんだもの。
それでも、今度はエーリカが言ってきた。
「へーきだって。私たちにまかせて」
まかせてと言われてもねえ……。
こういうのをなんと言うのか、私の頭にある言葉が遮った。
――けれど、それを口にはしなかった。
「わかったわ。……けど、本当に大丈夫なの?」
二人は顔を見合わせて少しの時間考え込み、そして言った。
「「がんばる」」
- 66 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 14:37:05 ID:22skLp5w
- やはり懸念のとおり、大丈夫なんかではけっしてなかった。
けれど言葉のとおり、二人とも本当に頑張ってくれている。
私は食卓の椅子に座り、じっと二人を見守っていた。
そわそわする。とても気が気じゃなかった。
包丁で手を切ってしまったら……、火なんか使って火傷してしまったら……。
不安が不安を呼び、すっかり私の全身は暗い気持ちに支配されていた。
何度声をあげ、どれほどもうやめてと言いかけそうになったことか。
ゆっくりなんて、できるわけがなかった。
「母様、できたよ。ちょっとおそくなったけど」
エーリカはそう言って、食卓に皿を並べていく。ウルスラもそれを手伝う。
もちろん、かかった時間はちょっとどころではない。
並べられていく“それら”に目を落として、いささか私は苦渋を浮かべてしまった。
スクランブルエッグ……のつもりなのだろう。もはやそれは、消し炭と言った方が近い。
他にも不気味な色をしたスープに、見てくれの悪いサラダ。まともなのは買ってあったパンだけだ。
「ささ、食べて食べて」「母様、食べて」
4つの瞳が私に向けられ、口々に言ってくる。
この子たちときたら、こんなものを人に食べろというのか。
私はそれを残さず食べた。
もちろん、それだけでは終わらなかった。
掃除に洗濯、食器洗いに庭の草むしりもしてくれた。
私はすっかり任せることにした。
この際だ、めいいっぱいこき使ってやろう。そんな気に変わっていた。
何一つとしてまともにできないけれど、それは本人たちだってようくわかっていたはずのことだ。
それでも彼女たちは言ってくれたのだ。
私たちにまかせて、と。がんばる、と。
それはすべて、私のことを思ってのことだもの……結果はともかくとして。
顔がほころんでしまって、なにをやらかしてくれても、これじゃ怒るに怒れない。
逆に仕事を増やしてくれちゃって……。
明日のことを思うと頭が痛い。やはり、受け取るのは気持ちだけでよかっただろうか。
後悔がないでもないけど、やはりそれは些細なものでしかない。
年に1回くらい、こんな日があったっていいと、そう思うことにする。
どれだけ手を焼いても、それは私にはなんの苦にもならない。むしろ私は、それを望みさえする。
つくづく実感せずにはいられない。
ああ、やっぱり、この子たちを愛している。私ってとんだ親馬鹿だわ、と。
一仕事終えた二人はといえば、寄り添うようにソファーに腰掛け、ぐっすりと眠ってしまっている。
やれやれ。今日はまだ半分以上残っているというのに。
まあ、慣れないことをして疲れたんだものね。今日は早起きだったのだし。
やっぱりその言葉のとおりだった。
“ありがた迷惑”。
だからこそ、眠れる愛しい娘たちに毛布をかけて、その言葉を伝えた。
「ありがとう、二人とも」
食卓に飾られた花が目に映る。
赤いカーネーション。
数日で枯れてしまうその花を思うと、ふいに物寂しい気持ちに襲われた。
そんなことわかりきっているのに。なのに、なぜなのだろう?
仕方ないと割り切れたら楽なんだけど。
それと同じに、この子たちだっていつかは大人になっていく。それもまた、私を物寂しくさせた。
けれど、心の灯火は消えることはない。
この思い出は心の中で永遠に生き続ける。
だから私は今日この日のことを、新しい5月をむかえるたびに思い出すに違いない。
以上です。
母の日なので母の日ネタ。
(母の日は国ごとに違うらしいですが、日本とドイツは同じみたいです)
タイトルは「ハルトママンの日」です。OsqVefuYでした。
- 67 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 15:30:57 ID:FjnE8ncw
- >>66
GJ!ハルトマン親子和んだ。いつもステキなSSゴチです。
- 68 名前:ちゃかい 1/2:2009/05/10(日) 18:51:11 ID:OSPM/7Vs
- エーリカの眠気交じりの顔に、にんまりと意地の悪い天使のような笑みが浮かんだ。窓か
ら、ペリーヌが一人で午後のティータイムを楽しんでいるのを見つけたからだ。
ペリーヌは何だかんだで一人でお茶会をすることは少ない。結果的に人が集まってくるか
らだ。お菓子を持ってきたり、各々が各々の飲みたいものを持ってきたりして、ちょっとし
たお茶会にはやがわりする。
文句を言いながらもちゃんと人数分用意するし、いつでもその用意ができることは判って
いた。
エーリカは割と気まぐれに現れた。ペリーヌからすればふらりといつもやってくる、とそ
んな印象があった。
だがその実情はバルクホルンやミーナが居ないから探したら辿り着いただとか、暇してい
るときに見つけただとか、今日のようにちょっと一人で居るところを見つけただとか、そん
なところだ。
「ああーっと、喉かわいたなー」
エーリカはペリーヌのティータイムの場所までやってくると、ひょいと椅子に座っていか
にもわざとらしくそう呟いた。
「……水でも飲まれてはいかがですの?」
唐突に現れたエーリカの、あまりのわざとらしさにペリーヌは眉をひそめ、つっけんどん
に返す。
「私もペリーヌの紅茶飲みたいなー」
ペリーヌはいかにも何かを堪えるかのように眉をしかめて目を閉じ、少しの間黙り込む。
やがて葛藤が終わったのか、普段どおりの態度で口を開いた。
「……仕方ありませんわね」
「今日だけだかんなー、ってやつ?」
「全くその通りですわ」
と、ペリーヌも返したものの、エーリカに紅茶を提供するのも既に何度目になるか数えて
いない。エイラとサーニャの間でのそのやり取りが慣例化している部分まで一緒だった。
もっとも、ペリーヌとてエーリカの性格は困ったものだとは思っていたが、エーリカとお
茶をすること自体は、ペリーヌはそこまで嫌いではない。エーリカはウィッチとしては優秀
だったし、普段の生活態度に惑わされて本質まで見えなくなってしまうほどペリーヌも愚か
ではなかった。そしてエーリカもペリーヌが見るべき部分は見ていると知っているから、ど
うしても嫌いにはなれない。
ペリーヌはエーリカの紅茶を用意して、再び自分の分を飲む。
滅多にないことではあったが、ペリーヌがエーリカと飲むことになった際は会話がないこ
とが多かった。エーリカが思いつきでからかってくることはあるが、普段の賑やかなお茶会
とは違う、静かなお茶会も嫌いではない。
ペリーヌは本を読んだり、頭上に在り続ける自分たちの蒼い戦場に想いをはわせる。そう
しているうちにふと、エーリカは何をしているのだろうと気になって、ちらりと横目で盗み
見た。
- 69 名前:ちゃかい 2/2:2009/05/10(日) 18:51:35 ID:OSPM/7Vs
- ほう、とため息をつきそうになってペリーヌは慌てて息を呑む。
とても言えない。静かに、いかにも美味そうに紅茶を飲むエーリカの横顔に見惚れたなど。
エーリカも何か思うところがあるのだろうか。普段のふわふわした部分が表情から一切抜け
落ちており、その横顔はかわいらしいというより凛々しさを感じさせる。
そこでエーリカがふとペリーヌの視線に気がついて顔を上げ、目が合う。
硬直したまま慌てたのはペリーヌだった。顔がじわじわと赤く染まってゆき、自然さとは
かけ離れた勢いで視線をそらす。
エーリカは一瞬あっけに取られたが、
「いやあ」普段どおりの悪ガキのような笑みを浮かべて言う。
「性格はおいといても、ツンツンメガネさんの淹れる紅茶は美味いねえ」
「んなっ……!」
ペリーヌはつい今の今まで抱いていた感情を全て吹き飛ばし、脊髄反射のようにエーリカ
を見て言い返す。
「まったく貴女と言う人は……!」
怒るペリーヌを見て、エーリカが何を考えているかと言うことはペリーヌには知る由もな
かったし、恐らく知ったらまた別の意味で絶句するに違いなかった。
かわいいなあ。エーリカは我ながら安っぽいとも思うちょっとしたからかいに、律儀に乗
ってきてくれるこの仲間に、そんな感想を抱いていた。
一人の少女が背負うにはありえないくらい重い理由を背負い、それを背負いながらも自分
で在るために気丈に、精一杯背伸びした状態でい続けているのだ。
いつか溜め込んだものが大きくなりすぎて潰れてしまわないように、こういう些細なとこ
ろで少しづつ発散させるべきだとエーリカは思っていた。絶対に口に出す気はなかったが、
そう思っていた。いつも怒っているから、加減どころがちょっと判らなかったりするところ
はあるのだが。
ペリーヌの文句をのらりくらりと交わしながら、一息ついたところで、
「ま、悪くなかったよ。ご馳走様」
そう言ってエーリカが立ち上がる。ペリーヌはふん、とエーリカの感想などどうでもいい
と言わんばかりにそっぽを向く。
だがエーリカは首を傾げて、次の言葉があるんだろ? とばかりに待っている。すぐに根
負けしたのは、やはりペリーヌだった。
「……、……また気が向いたら振舞って差し上げますわ」
エーリカはいつものように「こっちも気が向いたらねー」と返そうとしたが、ふと思いつ
きで言葉を変えた。
「うん。また来る」
ペリーヌは、1の次に2がくると言ったような、決まりきった順番が崩されたような戸惑
った顔を浮かべた。
「え、ええ……お待ちしてます、わ……?」
思わず素で答えてしまった自分に気がつき、ペリーヌの顔が一瞬で紅く染まる。 エーリ
カはそんなペリーヌを見て思う。お待ちしてますなんて言ったら何を言われるか知れたもの
ではない。そんなことを今は考えているのだろうか。
「うん、じゃあね」
やっぱり、かわいいやつだなあ。そう思いながらエーリカは踵を返した。
- 70 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 18:53:30 ID:OSPM/7Vs
- 本スレで見たペーリカが良かったのでひっそりかいてみた!
お邪魔しました!
悲劇的ビフォーアフターのキラッ☆が頭から離れません…
- 71 名前:名無しさん:2009/05/10(日) 21:17:15 ID:GgDxgosA
- >>61
チラリズムGJ!
>>66
ハルトマン姉妹かわいいなぁ
>>70
ペーリカいいなぁ。
- 72 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/05/10(日) 22:45:43 ID:LWUY3qoE
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は「母の日」と言う事を思い出しました。
それにちなんでと言うか、ひとつ書いてみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズと言う事でよしなに。
- 73 名前:milk and honey 01/04:2009/05/10(日) 22:46:11 ID:LWUY3qoE
- 雲一つなく澄みきったブリタニアの大空。
緩やかに流れる風を劈き、舞い降りるストライカー。特徴的な、耳に残る轟音。
エーテルの噴流が淀みなく流れ、ぎりぎりまでタキシングした後、ゆっくりと格納装置に収まった。
慣れた感じでストライカーを脱ぎ、携行していた武器を預け、服の乱れを整えると、待っていたミーナに敬礼した。
「カールスラント空軍131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツ曹長、只今到着しました!」
「いらっしゃい。501へようこそ。歓迎します、レンナルツさん」
「ありがとうございます」
敬礼を解いて、ヘルマは少し顔を赤くして言った。
「すいません。三度も押しかけてしまって」
「良いのよ。ここもたまには刺激が必要だから」
意味深な言葉を呟き、ふふっと笑うミーナ。レンナルツの肩を持つと、ハンガーからミーティングルームへと誘う。
その様子は、二人だけ見ればまるでミッションスクールの新入生と先輩、と言った風に見えなくもない。
「今日はレンナルツさんの為に、リーネさんと宮藤さんが色々なお菓子を用意して待っているわ」
「ほ、ホントですか?」
前に飲んだ甘〜いミルクティー、そして数々のお菓子を思い浮かべて顔がほころぶヘルマ。
「さ、行きましょう。皆待ってるわ」
「はい。ありがとうございます! ……ってあれは?」
「どうかしたかしら?」
ヘルマは格納装置に納められた無骨なストライカーに目が行った。重厚で独特のカラーリング。
「あのストライカーは……Bf110-G4」
「ええ。今日はシュナウファー大尉も来てるのよ」
「わあ、あの凄い夜戦エースもいらっしゃるんですか? 来て良かったです!」
「後でみんなでお話ししましょうね」
ミーティングルームで待っていたものは、まず最初にルッキーニの微妙な視線。
そして満面の笑みでやって来たシャーリー。
「いやー久し振りだなヘルマ。成長したか?」
「は、はい? 何の事ですか?」
「胸だよ胸。この前さんざ……」
「そ、その話はいいです!」
顔を真っ赤にして言葉を遮るヘルマ。
「まあいいや。今日こそ、ジェットストライカー履かせてくれるんだったよな?」
「だからそれは無理ですって! 他国のウィッチを……」
「堅い事言いなさんな! 今すぐあたしに履かせてくれ! 頼む!」
「だからダメですってば」
「あたしの頼み聞いてくれ。一生に一度のお願いだ!」
「貴方の人生は何度有るんですか」
「堅いなあ。そこを何とか」
「ダメです」
「あたしの頼み聞いてくれたら、あたしがヘルマの頼み何でも聞くぞ」
「……えっ」
一瞬、どきりとしてしまうヘルマ。シャーリーの顔を見る。
「だぁめ! シャーリーで遊ばないで!」
我慢の限界を超えたのか、二人の間に割り込むルッキーニ。
「私は遊んでなんかいません。そもそも今回こそ、シャーリー大尉とスピード対決を……」
「あー、それなあ」
残念そうに呟くシャーリー。ルッキーニも何故か急に暗くなってしまった。
「どうかしたのですか?」
ヘルマはきょとんとして聞いてみた。
ハンガーに連れ戻され、その片隅で目にしたものは……控えめに言って「分解」……悪く言うならば「ぶっ壊れた」
シャーリーのストライカー。飛ぶ事は勿論、組み立て直す事も不可能に思える程酷い。飛ぶ前から墜落している印象だ。
「整備してる途中にさ。ちょっと、ひっくり返したって言うか……」
「ひっくり返してストライカーがこんな有様になるんですか?」
「なるんだなあ、これが」
「シャーリー……」
ルッキーニがシャーリーに身体を持たれ掛け、済まなさそうに呟いた。
「まさか……」
「良いんだよルッキーニ。ヘルマ、これはあたしのストライカーだ。あたしの責任だ」
「はあ」
「悪いんだけどさ、スピード対決は当分持ち越しだな。あたしも楽しみにしてたんだ。でも、本国から予備機が届くのも
ちょっと先になりそうだし。今回は無理だ」
「そうですか。残念です」
「あたしも残念だよ。最速仕様のセットアップして、チューン繰り返してたからさ……」
「そうですか」
「と言う訳でヘルマ、お前のストライカーを貸してくれ」
「さらっと言わないで下さい。繰り返しになりますが、無理です」
「そこを何とか」
「だから無理ですって」
「貴方達、またハンガーに戻って何やってるの。お茶とお菓子の用意が出来たから、いらっしゃい?」
様子を見に来たミーナが呆れ半分で笑う。一行はぞろぞろとハンガーを後にした。
- 74 名前:milk and honey 02/04:2009/05/10(日) 22:47:43 ID:LWUY3qoE
- 「シュナウファー大尉、お久しぶりです!」
一足早くミーティングルームでお茶を楽しんでいたハイデマリーを見つけ、ヘルマは声を掛けた。
「あら、レンナルツ曹長。また会うとは奇遇ね」
穏やかな返事のハイデマリー。
「私、今回はMe262のテスト飛行で来たのですが、シュナウファー大尉はどんなご用件で?」
運ばれて来たミルクティーに砂糖を入れ、笑顔で頂くヘルマ。
「私は……ネウロイの報告とか」
言葉を選ぶハイデマリー。
「なるほど。お忙しいんですね」
「貴方もじゃない?」
「いいえとんでもない」
そんなやり取りを聞いていたトゥルーデは、ヘルマに言った。
「聞けヘルマ。シュナウファーは、本当はな……」
「ちょっとバルクホルン! 変な事言わないでよ?」
「分かった分かった」
ハイデマリーに釘を刺され、苦笑するトゥルーデ。
「でも、ペリーヌが501(ウチ)から迎えに飛んでったのは事実だよね〜」
トゥルーデの横でにやにやしているエーリカ。
「護衛ですわ」
さらっと言うペリーヌ。ハイデマリーの横ですましてお茶を飲んでいる。
「でも、迎えに行った日は結局帰って来なかったんだよね〜」
むせるペリーヌ。
「誤解を招く様な表現はおやめなさい!」
「じゃあストレートに……」
「もっとやめて、ハルトマン」
「こらエーリカ、やめんか。皆困るだろう」
「そうかな?」
ハイデマリーとペリーヌを見て、にやにや顔のエーリカ。呆れ半分のトゥルーデ。
そんなカールスラント組プラスガリアのウィッチを、あらあら、と言った表情で眺めるミーナ。
「どうしたミーナ? 賑やかで良いじゃないか。楽しそうだぞ?」
ミーナの横に腰を下ろした美緒が問い掛ける。
「まあね。これで戦いが無かったらと、何度も思うわ」
「そのうち、きっとそうなるさ。だからせめて今はゆっくりしろ。私もついている」
「美緒……」
横のソファーでは、芳佳とリーネがお茶とお菓子を堪能しつつ、肩を並べて何かの雑誌を読んでいる。
ブリタニアで発行されているものらしい。
「世界の『母の日』特集だって、芳佳ちゃん」
ぴくり、とミーナの頬が動いた気がしたが、恐らく気のせいだろうと美緒は心の中で片付けた。
「すごいねリーネちゃん。国によってお祝いする日が違うんだね」
ページをめくる。贈り物や祝い方も国や地域によって違うらしい。
「ブリタニアは、もう終わっちゃったけどね」
「リーネちゃんはお母さんに何か贈ったの?」
「ウチの地元のお花屋さんに頼んで、お母さんの好きなお花を」
「えらいねリーネちゃん。お母さん思いなんだ」
「家族だから」
「私もお母さんに何か贈りたいけど……ちょっと無理かな」
寂しそうに笑う芳佳。ちょっと心配そうに見つめるリーネの気を紛らわそうと、芳佳はページをめくった。
「見て、リーネちゃん。色々有るよ。……リベリオンでは白いカーネーションなんだ。へえ〜」
「お、宮藤。あたしの国に興味あるのかい?」
シャーリーがルッキーニを抱きかかえて、芳佳の横に座った。
「シャーリーさんの国では、白いカーネーションなんですね」
「母の日の贈り物かい? まあ、シンボルみたいなもんさ。後は適当にメッセージカード渡したり、庭でバーベキューやったり……」
「リベリアンは結局バーベキューに行き着くのか。どんだけバーベキュー好きなんだ」
呆れ半分でからかうトゥルーデ。
「バーベキューをバカにするなよ? あれはホントに美味いんだぞ? それにみんなでやるのが楽しくて……」
シャーリーが反論する。
「ああ。確かに一人でやるのは苦痛だし、一種の修行みたいだしな。分かる」
「そういや、前に一緒に準備したっけか」
「確かにあれは苦行だ。リベリアンがおかしくなるのも分かる」
「だろ? でも美味いんだよな〜」
いつの間にかバーベキュー談義になってしまうシャーリーとトゥルーデ。その横で、雑誌を読む芳佳とリーネ。
「へえ、贈り物にハチミツだって。変わってるね、リーネちゃん」
「ハチミツ? それなら……」
台所の一角を指さすリーネ。大量に置かれた木箱が有った。中には、丁寧に箱詰めされた瓶が並んでいる。
「リーネちゃん、あれは何?」
「ハチミツだよ。私の実家から贈られて来たの」
「ブルーベリーの次はハチミツカ〜。リーネの家は農家ナノカ?」
眠そうなサーニャとお茶を飲んでいたエイラが、リーネに言う。
「養蜂業ではないけど……色々贈ってくれるの」
「ハチミツ……」
サーニャがぽつりと呟く。
「あとで一瓶開けヨウ。お茶に入れたら甘くて美味しいゾ?」
エイラの提案。
「紅茶に入れたら黒くなりますよ?」
リーネがストップを掛ける。
「何デ?」
「……何ででしょう?」
- 75 名前:milk and honey 03/04:2009/05/10(日) 22:48:15 ID:LWUY3qoE
- 「甘くて美味しければ何でもイイヨ。ブリタニアのミルクティーにハチミツなんて合うんじゃないカ?」
「風邪ひいたとき、ミルクティーにハチミツ入れると良いって、お母さんから聞いた事あります」
エイラの提案に答えるリーネ。
「でも、何でハチミツなんだろうね、リーネちゃん」
首を傾げる芳佳。
「さあ……。芳佳ちゃんは知ってる?」
「私も分からないよ?」
「知っていますか宮藤軍曹?」
ヘルマが芳佳とリーネの間に割り込んで来た。きょとんとする芳佳とリーネを前に、ヘルマは胸を張って説明する。
「ハチミツは古代より神聖とされてきたもので、神話にも出てくるんですよ。味も勿論良いですが、栄養豊富で、
新婚カップルはハチミツ酒を飲んで精を付けた事から、『ハネムーン』の語源ともされているのです」
ヘルマの言葉を聞いた隊員達が、皆、反応する。表情が皆それぞれ、一瞬変わる。
「新婚……カップル……」
「精を付ける……」
「栄養……」
(なるほど、イイ事言うねレンナルツ。そう言うプレイもアリだね)
口の端を歪め、顎に手をやるエーリカ。
「エーリカ。今何を考えた?」
ちょっとした異変も見逃さないトゥルーデはエーリカに向かって言った。
「別に〜。リーネ、後であのハチミツの瓶、幾つか頂戴ね」
「ええ、どうぞ。沢山有りますから」
「ありがとー。楽しみだね、トゥルーデ」
「やっぱりそっちか」
「そっちって何です、お姉さま?」
「何でも無い。と言うかお姉さまは止めろ、ヘルマ」
ヘルマの問い掛けに無理矢理かしこまった顔を作るトゥルーデ。
シャーリーにべったりのルッキーニが、シャーリーの頬をつんつんとつついた。
「シャーリー、ハチミツつけてなんか甘〜いお菓子食べた〜い」
「後でリーネと宮藤に言ってホットケーキでも焼いてもらうか。バターとハチミツたっぷりで、うまいぞ〜」
「イエェー 楽しみだね〜」
盛り上がる二人。
「……ハイディ、後で」
「ハチミツのトーストでも食べる、ペリーヌ?」
二人は顔を見合わせ、同時に頬を赤らめた。
(ハチミツを食べてサーニャとあんな事や……ああアァァ)
一方でひとり妄想が止まらないエイラ。
「エイラ、ハチミツ食べたい……」
「わわ、分かったゾサーニャ! リーネ、私達にもハチミツクレ!」
サーニャにぽつりと言われ、妙にテンションが上がるエイラ。
「じゃあ、私とみ……坂本少佐の分も貰っておこうかしら」
ミーナがさりげなく瓶を手にしている。
「ええ、どうぞ」
ミーナにハチミツの瓶を幾つか渡したところで、ふと芳佳と目が合った。
「リーネちゃん……」
「芳佳ちゃん」
目が合い、顔を赤らめる二人。
「ちょ、ちょっと皆さん!」
ヘルマが立ち上がり、声を荒げた。
「な、なんてうらやま、いや、いやらしい! 私にもやらせ、いややめなさい!」
一同を叱り飛ばすも、全然効果無し。
そんなヘルマに向かって、エーリカが言った。
「レンナルツ、声が裏返ってるよ」
「むきー!」
「残念、これは私のトゥルーデだからね。渡さないよ?」
「いっいつからハルトマン中尉のものに!?」
「ほら。証拠」
指輪を見せつけられる。
「これもどう? 私達似合ってるかな?」
服の中からそっと、お揃いのネックレスを見せる。
「ハルトマン中尉がいじめるんです。助けてお姉ちゃん」
ヘルマに泣きつかれ困惑するトゥルーデ。
「う。……いや、どうしろと」
「レンナルツさっき言ってたよね。ハチミツは栄養が有るって。501(ここ)は甘いもの好き多いし、別に良いんじゃないの?」
にやっと笑うエーリカ。
- 76 名前:milk and honey 04/04:2009/05/10(日) 22:49:25 ID:LWUY3qoE
- ヘルマはめげずにエーリカを睨んで言った。
「おかしいです! 明らかに! 何か本来の目的以外の事に使おうとしてませんか?」
「そんな事無いよ」
エーリカがしれっと答える。
「本当に?」
「だって、ハチミツは栄養あるんでしょ?」
「そりゃもう」
「私達、ウィッチだもん。栄養つけておかないと戦えないよね?」
「確かに」
「なら、別に食べても飲んでも塗っても舐めても垂らしても問題無いよね」
「途中から用途がおかしいです! てか皆さん瓶を持って何処行くんですか!」
一組、また一組とハチミツの瓶を持ってミーティングルームから姿を消すウィッチ達。
「ま〜ったくしょうがないなあレンナルツは」
エーリカは一人取り残されたヘルマの顔を見た。
「ヘルマ」
トゥルーデがヘルマの傍らに立つ。その様子を見たエーリカはぽんと手を叩いた。
「そうだ、良いこと思い付いた」
「……とりあえず言ってみろ、エーリカ」
トゥルーデがエーリカを見た。
「怒らない?」
「発言内容による」
「じゃあ言わない」
「なら怒らないから言え」
「うーんとね。レンナルツ、私達の子供って事で」
「はあ?」
「何ぃ!? それはどう言う事だ!?」
突然の発言に驚くヘルマとトゥルーデ。
「そう言うプレイも面白いかな〜って思ってさ。それなら皆で幸せになれると思うよ」
「ちょ、ちょっと待って下さい! 私が子供ってどう言う事ですか? プレイって何ですか?」
「そのまんまだけど?」
「えっ?」
「よし、大体分かった。行くかヘルマ」
吹っ切れたのか、よいしょとヘルマをおんぶするトゥルーデ。エーリカはひょいとトゥルーデに抱きついた。
トゥルーデは脚を踏ん張り、エーリカをお姫様抱っこする。
「二人だと、微妙にバランスが……」
「さあ、行こう。楽しいよ」
「エーリカ、お前」
「なあに、トゥルーデ?」
「楽しければ何でも良いのか」
「仕方ないよ。今日は特別って事で」
「そうか」
「なんか、納得いかないんですけど」
おんぶされたヘルマが呟く。
「レンナルツ、覚悟しなよ?」
ふふふ、とトゥルーデの胸元で笑うエーリカを見て、ヘルマは妙な寒気を感じた。
end
----
以上です。
この部隊はもうだめだ/(^o^)\
という感じでひとつ。
母の日の起源についてはgoogle先生やwikipedia先生に聞いてみました。
あと、WWⅡ当時に若い女性向けの雑誌が有ったかどうかは分かりませんが、
その辺はまあ適当にノリで……流して頂ければ。
「母の日にハチミツを送る」と言う事については……
先日たまたま目にした「母の日ギフト」カタログに有ったからで、深い意味は無いです。
今回はタイトルも特に深い意味は無いです〜(なげやり
ではまた〜。
- 77 名前:名無しさん:2009/05/11(月) 19:12:27 ID:8IXCSw/k
- GJ!食べ物で遊んではいけませんw
2ちゃんの方と分散して過疎り気味?
- 78 名前:名無しさん:2009/05/11(月) 19:27:44 ID:ppVmzEtQ
- >>6
そんな便利なものがあったんだな。
2ちゃんねるはそんなに使うわけじゃないけど、ちょくちょく使ってみる事にするよ。
>>77
最近は荒らしらしい荒らしも見なくなったし、今は本スレの方が人が多い気がする。
ところでここって古いスレ(避難所1・避難所2)はログ入りしないんだろうか?
- 79 名前:名無しさん:2009/05/11(月) 20:37:20 ID:vfGimFS.
- 誰か今週の咲見た人いる?
眼鏡の人の声がモロにエイラだったwww
- 80 名前:名無しさん:2009/05/11(月) 21:15:01 ID:O7Pksvo.
- >>76
501のみんなは研究熱心ですねw
はちみつは後が大変だからロー○ョンを薦めます。
- 81 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 01:31:06 ID:ttPkexbY
- 深夜にこんばんは。LWqeWTRGです。
ふとおりてきた妄想を書いてしまいました。…徹夜明けの頭で……。
なのでめちゃくちゃなことになってますがご容赦ください…。
>>22の続きで「変化球の行方」、3レスです。
- 82 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 01:32:11 ID:ttPkexbY
- ……口いっぱいに広がる、エイラの味…。いい…。
ごめんね。芳佳ちゃん、リーネさん。ご飯美味しかったです。
あとみんなもびっくりさせちゃってごめんなさい。急いで部屋に引っ込んだから許してね。
でもこれが私たちの食べ方。今決まった。
そしてエイラ…。いい加減暴れるのをやめなさい。
抑えながらキスするのけっこう大変なんだから。
あぁむしろ抑えてほしいのか。…では揉ませていただきます。
そだ。いいこと思いついた。
こうすればよかったのよ。
「よいしょっ、と」
「ちょ! さ、ささ、ささささ…!」
名前ぐらいちゃんと呼んでよ…。
別にいいでしょ。膝にまたがって座るくらい。口移しよりは簡単、簡単。
これでもっとくっつけるしもっとキスもできるね。
「あ、あああの! し、しししし死にそうなので、も、もう勘弁してくらしゃい!」
「や」
「頼むからあああああ!!」
「い、や、よん」
そんな頼みを聞くはずもなく。
はぁい、次はポテトサラダよー。…ちゅ…ちゅぱ……。
美味しいね。さすが芳佳ちゃんとリーネさん。
エイラも美味しいよ? うふふふふ…。
あぁ、こぼしちゃだめじゃない。
ぺろ……ちゅ…。はい、きれいになったよ。
- 83 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 01:33:04 ID:ttPkexbY
- 「う、ああ…ああああ……」
「大丈夫?」
「だ、だい、じょうぶ…なワケあるかあああ……!」
元気じゃない。平気平気。
かわいいよ、エイラ。少し涙目なのがまたかわいい。
「も、もうゆる…」
絶対に許さないわ。
今思い出したけどこれはお仕置きなの。私の気のすむまでします。
「そ、そんな…サーニャぁ…。私…そろそろ我慢の限界が…」
よしよし、なんだかんだ言いながら私がすべり落ちないようにだっこしてくれてるのね。
いい子ねエイラ。いい子にはご褒美あげる。
「いっ、いらないっ! どうせまた私に――!」
正解。
とびっきりのキスをしてあげる……。
頭を抱き寄せ唇を押しつけて。中をたくさん味わってあげる。
ここでもエイラは縮こまっちゃってるからどうにか引き出し吸い上げて私の中に入れ、深く交わらせてみる。
ふふ。いい気持ち。
エイラも気持ちいいのね。だんだんとろんとしてきたみたい。
ああかわいい。もっといじめたい…。
このままずっとキスしてようか。
ね。エイラ。
「さ、さー…にゃ…」
「なぁに?」
「もう…しらねーぞ…」
「え?」
なにが? 魔力だして本気で暴れちゃいやよ?
これからが…―――ッ!?
- 84 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 01:34:06 ID:ttPkexbY
- 「…っ! ふぁ…ちゅ…、え…えい…ら…ぁ…」
あれ、な、なに、これ?
私がエイラに…キスされてるの?
ちょ、ちょっとエイラ…、激し…。
「しらねー、つったろ…!」
「ま、待ってエイラ――くちゅ…!」
なんで急に私が攻められて…。
んんっ、ちょっと、そ、そこは…!
「さーにゃの…せいだかんな…」
「わ、私の…? …ふあっ!」
「…ずっと逃げちゃってたけど、さーにゃとこんなことしてみたいって思ってた」
「エイラ…、あんっ」
「ここまでされちゃ我慢できねーよ。だから、もうしらない」
我慢って、そんな…。
はぅ…、そこ…そんな風に触っちゃ…だめぇ……。
「さーにゃかわいい…。もっといじめてみたい…」
ひぁ…、や、あぁん…。
まって、まってよ…エイラぁ…。私…、わたし…っ!
「待たない。…覚悟はしとけよ?」
ん、はぁ…、えい…ら…。
だめ…、わたし、止まらなく…なっちゃう。
「もうとまんないって」
うぅ…、だったら…して…。
わたしを…めちゃくちゃに…してぇ……。
「ひひひ、りょーかい」
あああっ! えいら、えいらえいらえいら…!
もっと、もっと強く…!
「うん、いくぞさーにゃ」
END
- 85 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 01:35:39 ID:ttPkexbY
- 以上、すいませんでした。
エイラさんの逆襲となりましたが、これってどうなんだ。
いきなり覚醒…。覚醒後はとことん冷静…。
そしてちゃんと締めろと…。
なんというか本当にすいません調子乗りすぎました…。
それでは失礼します。
- 86 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 02:35:34 ID:FGv3WsX.
- >>85
GJ! 一転攻勢にでるエイラさんが素敵というか
妙にオトコマエ……我慢してたのねw;
やっぱりエイラーニャは良いなあと。
- 87 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 12:00:42 ID:1H6swxuk
- >>85
アグレッシブなエイラもいいですね。追い詰められてからというのも。
とにかく面白かったGJ!
- 88 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 14:27:21 ID:sINNb5Gc
- >>85
自分のなかでなにかがはじけた…
エイラさんといえばへたれ攻めのイメージだったけど、これは良いですね!
またことが終わったあとのふたりとか書いてくれると嬉しいですwGJ!
- 89 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 22:41:50 ID:/4zFFwRI
- >>85
GJ!
なんだかんだ言いながらサーニャがすべり落ちないようにだっこするエイラが大好きだ!
- 90 名前:どんとこい"lazy" 1/2:2009/05/12(火) 22:43:44 ID:.Hq3mPQ6
- そよそよ。 開け放した窓から、優しいそよ風が吹き込んでくる。
ふわふわと浮き上がるレースのカーテンが、早すぎる初夏の陽射しを和らげてくれる。
「ここをこうして、こうやって……。 あー。 ちょっとウーシュ。 まだ動いちゃ駄目だってば。」
読んでいる本から目を離さずに、ウルスラがこくりと頷く。 お行儀良く揃った膝。 その右足だけをぴょこりと持ち上げてる私。
「でーきた! やった! かんぺき! 自信作! 見て見てウーシュ! 可愛いね!」
「……ありがとう、姉さま。」
表情は変わってないけれど、私には伝わる。 ううん。 よく見れば、ほっぺがほんのり染まっている。
ニコニコしながら隣に腰掛けて、ぴたっと足をつける。 ウルスラも本から視線を外して、足元に落とした。
お揃いのペディキュア。 ウルスラの方がちょっぴり出来がいい気がするのは、もちろん私の足を実験台にしたから。
二人で顔を見合わせてにっこり。 星の砂のような綺麗なラメ。 二人の足を並べると、穏やかな潮騒が聞こえてきそう。
「台所借りるぞ、ハルトマン。 スイカを貰ってきた。」
中々の出来映えに悦に入っていると、お邪魔しまーすも言わないで、トゥルーデが上がりこんできた。
いつもの事。 ひょこひょこ台所までついていく。 たん、たん。 慣れた手つきでスイカを切り出す様を、ぼんやりと見やる。
「スイカなんて珍しいねぇー。 わ! しかも四角い! ますます珍しいですな。 誰から貰ったの?」
「宮藤だ。 みんなで食べてくれ、だとさ。」
「さっすが宮藤。 気がきくね! ところでさ、トゥルーデ。 ほりほり。 私、いつもとどっか違ってると思わない?」
「ん? どっか違ってるか? えーと……。 あ。 ……シャツを裏表に着ていない?」
「なわけあるか!!! 普段から着てないよ!」
「お邪魔しまーす。」
まったくもー! ちっとも気付かないニブちんにイライラしていると、ちゃんとご挨拶のできるニブちんジュニアがやってきた。
「クリス、ちゃーす。 あれあれあれ? なんというセクシーギャル! そのキャミ、新しく買った?」
「エーリカさん、ちゃーす。 えへへ。 週末に、芳佳ちゃんとアウトレット行ってきたから。 一足早くサマーガールでっす!」
サンダルを脱ぎながら、伸ばしてポニーに結った髪の毛をかきあげるクリス。 おぉ!
なんだその仕草! 色っぽいぞ!! 年下の癖に、生意気な奴めー。
玄関先で靴を履いたり脱いだりする時って、その人の女の子らしさがモロに出るよねー。 私も可愛く靴を脱ぐ練習しよっかな?
「あ。 そのネイルかわいー。 これから足、見られまくる季節ですもんね。 抜かりなしなんだぁ、エーリカさん。」
おぉう。 めざとい! めざといね! やっぱりクリスはよく気が付くいい子だねー。 お姉ちゃんとは大違いだよ!
「クリスにもやったげよっか……とと。 ごめん。 せっかくのお揃いを人に分けるの?ってウーシュがむくれてるから、また今度ね。」
「……別にむくれてません。」
「ウルスラさんのやきもち妬きー。」
ポーチをぽーいとソファの上に放り投げると、カーペットの上に大の字になってくつろぐクリス。
ムスッとしながら、足先でクリスをぐりぐりするウルスラ。 ニコニコそれを眺めてると、トゥルーデがお皿を持ってやってきた。
- 91 名前:どんとこい"lazy" 2/2:2009/05/12(火) 22:44:23 ID:.Hq3mPQ6
- 「スイカ切ったぞ。 四角いわ、種は無いわ、妙ちきりんな感じだがな。」
しゃく、しゃく。 窓際に四人並んで腰掛けて、スイカをかじる。 うーん。 確かに甘いし、汁気たっぷりなんだけど。
いつもはあんなに煩わしい種なのに、無いと何だか物足りない。 これが宮藤の言う「フゼイ」かな?
誰よりも早く食べ終えて、ごろりーんと床に寝っ転がる。 庭の青葉でちょうど木陰。 木漏れ日、眩しい。 涼しぃ〜。
「あーあ、そろそろ中間テストか。 ウィッチだった頃は、試験勉強なんてしなくてよかったのになぁ。」
「戦いよりはテストの方がずっといいだろう。 ふ。 とは言っても、テストの度にウルスラと比較されるんじゃ、堪らないか。」
「そうだよ! 双子って損だよねぇー。 幸せは二人で分かち合いましょう。 苦労は一人でしょいこみましょう! だもん!」
「……そんな台詞は、自分だけで宿題を終えられるようになってから言って。」
うぎゅ。 い、言うじゃない。 さっきの事、根に持ってるな? エーリカお姉さまの偉大さを思い知らせてやる必要があるねー。
ウルスラをからかって敬語を剥ぎ取る遊びを始めようとしたら、んぐ。 クリスがお腹の上に乗っかってきた。
「私も芳佳ちゃんも中の中なんですよねー。 一夜漬けなんて、とても無理。 こつこつやらないと、危ないし。
エーリカさん、本気になったら凄いんだし? 一緒にお勉強会やりましょうよ! そのまま、お泊り会になってもいいし。」
にっこり。 おおぉ。 優しい。 本当にクリスは優しいね! 出来の悪い姉をニコニコ支える……これぞ理想の妹だよ!
「いいなー。 やっぱりクリスいいなー。 ね、トゥルーデ。 クリス、私のお嫁にしてもいい? この子、家庭の必需品だよ!」
「誰がやるか!! ダメだダメだ! 特にお前だけは絶・対・ダメ! クリスは誰にもや・ら・ん・ぞ!!!!」
「えぇー。 私、エーリカさんのお嫁になりたいなぁー。」
二人でけらけらと笑う。 憮然とそっぽを向くトゥルーデのへの字口に感じる、あたたかな感情。 そっと手を重ねて、にっこり言う。
「しょーがないなー。 クリスが駄目だって言うなら、トゥルーデで我慢したげよう。 トゥルーデ。 幸せにしてね?」
「……片付けてくる。」
あっはっはっ、怒っちゃった。 ふふふと笑ってたら、あれ。 腰を上げて、歩き出そうとした、そのほんの一瞬。
きゅ。 トゥルーデが、周りには分からないくらいの加減で、私の手を握り返してきた。
ちらりと私の目を見たトゥルーデは、ふん、と鼻を鳴らして台所へと消えていった。 ……ぷっ。 ふふ。 あはははは。
じゃれてくるクリスの髪の毛をくしゃくしゃとしながら、声をたてて笑う。
難しい奴! 参ったねぇ、ウーシュ。 どうやら私、お嫁の貰い手にだけは、困らないみたいだよー。
そんな事を考えながらウルスラを見たら、これが双子の魔力というものでありましょうか。 ぽつり、ばっさり。
「姉さまは、どこにもお嫁にやりません。 ……世間様に、迷惑ですから。」
それきり、本を取って背を向けるウルスラ。 ぽかんとそれを見る私とクリス。 ……あのさぁ、後ろからでも丸分かりだよ。
耳が真っ赤。 目が字を追ってない。 ……本当にまぁ、この子も、トゥルーデも。 く。 くくく。
クリスが先に笑い出して。 つられて私も大きな波が来た。
あぁ、なんと平和な昼下がり。 戦いの日々も今はむかし。 そよ風が髪の毛を優しく撫でる。
若葉のような私たち。 明日になれば、忘れるような。 どってことない日の午後なのでした。
おしまい
- 92 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 22:55:36 ID:UUwqTnyE
- >>85
ドSサーニャと思いきや反転攻勢のエイラとは・・・GJ!!!
- 93 名前:名無しさん:2009/05/12(火) 22:59:42 ID:UUwqTnyE
- >>91
エーリカがハーレムだと!?
- 94 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 00:11:25 ID:AxoTfx6Q
- >>91
…GJ……
カールスラント組のこういうのが読みたかったんだあああああ
- 95 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 00:45:23 ID:j2xTmS8U
- >>76
なんかもうホントあなたって人はwGJ!
ついにヘルマまで餌食になってしまうのか……
とりあえず、食べ物は大切にね★
>>78
したらばはログが相当溜まらない限りdat落ちはしないから平気だよ
>>85
ちょおおおおいああ!何という超展開GJ!!
しかし何だその、ここまで来るとなんか妙にエロいなw
>>91
いいじゃまいかGJ
ゆっくり時間が流れてる感じがいいなあ、そして家庭の必需品ワロタ
- 96 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 06:40:02 ID:xwiK/fhQ
- >>91
エーリカへの愛情表現にニヤニヤしました!
ウルスラがぐりぐりしたりクリスが乗っかってきたりって言う動作にも萌える。平和でだるだるで、いいなぁ
- 97 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 18:24:58 ID:PZtjWOPM
- じぃじぇぇぇぇぇぇぇ〜
これが読みたかった!!
この4人で書いて下さいと米を結構前にしたが……
無反応だったので諦めかけてたよ〜
ありがとうございます!
最高でした!!
この4人がストウィで一番好き。
ほんとGJ!!
- 98 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 18:27:02 ID:PZtjWOPM
- おっと、興奮のあまり安価を忘れてましたorz
>>91様
GJでした!!
- 99 名前:トゥルーデ撃墜部隊:2009/05/13(水) 21:18:11 ID:84BtAr6g
- >>91
なんて可愛いカールスラントの少女たち!
おませさんなクリスが可愛すぎます!
こんな可愛い話のあとになんですがえろいエーゲル投下w
- 100 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:18:41 ID:84BtAr6g
- 「エーリカ・ハルトマン中尉」
「…はい」
怖い。めっちゃ怖い。
私は今、執務室に呼ばれていた。その真ん中の机から、小さいネウロイなら倒せるんじゃないかと思う程の眼光で見据えてくるのは、隊長であるミーナだ。
あまりの迫力に冷や汗かきながら、自分が何をしでかしてしまったのか思い出す。
寝坊か?いやそれはいつもの事だし。ご飯のつまみ食い?…はルッキーニのが酷いし。部屋の片付け?…はトゥルーデが叱り役だし。
他に何かしたっけ。何言われるんだろ。
「今日から10日間、あなたに禁欲を命じます」
「……へっ?」
「つまり、トゥルーデ…バルクホルン大尉との性的接触を禁止します」
「えぇぇーっ!!」
思わず声を上げてしまった。
だってだってトゥルーデとヤっちゃいけないってなんだそれ!
「なんでそんなんミーナに言われなきゃなんないのさ!」
「…なんでかわからない?」
ミーナがにこっと笑ったので、私はちょっと身構えた。
「ここ最近、毎晩毎晩してるでしょう?あなたはいつも眠そうだしトゥルーデも疲れ気味みたいだし。おまけに時々、ドアをちゃんと閉めてない時もあって声が漏れてたりして…年端もいかない子もいるのに教育に悪いでしょう」
- 101 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:19:53 ID:84BtAr6g
- う…。毎晩楽しんでるのバレてたのか。
てゆうかドア開いてたってのがヤバい。トゥルーデにバレたらめっちゃ怒られるよ。
「大体、私だって我慢してるのに…」
「え?」
「…なんでもないわ。それより、わかった?10日間禁欲よ」
「…はぁーい…」
従っておかないと後が怖いし、私は力無く返事した。
あーぁ、10日もトゥルーデに触れないのかぁ。トゥルーデ不足で死んじゃうよ、私。
―――
禁欲を命じられて5日目…
私はなるべく、トゥルーデの近くにいないようにしていた。
だって側にいたら色々したくなっちゃうんだもん。胸揉んだりとかちゅーしたりとか抱きついたりとか胸揉んだりとか揉んだりとか。
当然そんな事したら我慢きかなくなっちゃうし。
今日も、私はトゥルーデから離れた席でご飯を食べていた。
「なぁハルトマン、堅物と喧嘩でもした?」
私の隣からシャーリーがそう聞いてきた。
「してないよ。隊長命令なの」
「は?」
「トゥルーデに欲情するな、って無理難題を吹っ掛けられてます」
シャーリーにだけ聞こえるように言ったら、彼女は吹き出した。
「あはは、そりゃあ大変だ。まぁ確かにあんたたち最近お盛んだったもんな」
- 102 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:20:52 ID:84BtAr6g
う〜ん…シャーリーにまでバレてるのか。
「でも、欲情するなはキツいね〜。アイツ、結構フェロモン垂れ流してんもん」
「そうそう…ってトゥルーデをそんな目でみんな」
「お、どっかのヘタレみたい」
シャーリーはくすくす笑いながら、席を立ってトゥルーデの方へ歩いていった。
「お〜い堅物〜」
「うわっ!な、なっ、何をする!」
「乳マッサージをちょっとね〜」
「馬鹿者!離せ、こらっ…」
…おいシャーリー。禁欲中だってわかってながら私の目の前で色良し張り良しを堪能するとは。
後で覚えてろよ。
「ごちそうさまー」
ご飯を食べきって立ち上がった。
ちらっとトゥルーデと目が合ったけど、私はそのまま食堂を出た。
「あ゛ーっ、もーダメだ〜」
自室に帰り、ベッドに倒れ込んで一人言。
ほんとにもうダメだ、トゥルーデ不足の禁断症状が出始めてる。
さわりたいだきしめたいちゅーしたいっ!!
手足をバタバタさせたら、ベッドに乗っかってた何か固い物に腕をぶつけた。痛い…
「…ん?」
腕を擦ってたら、こんこんとドアを叩く音が。
「どーぞ〜」
返事したら少し置いてドアが開いた。入ってきたのは…
「トゥ、トゥルーデ!?」
- 103 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:21:54 ID:84BtAr6g
いつもの仏頂面のトゥルーデは、部屋に入るなりドアをばたんと締めて鍵をかけた。
密室だ。なんかやらしい響き。その密室にトゥルーデと二人きり。
キツいよ、これ。
トゥルーデはそのままずかずかと…足元の荷物はちゃんと避けながら、ベッドに向かってきた。
「なに、トゥルーデ…」
「エーリカ」
ベッドに手をついて、トゥルーデは私に詰め寄ってきた。
ちょっとちょっと。そんな近付かれたらヤバいんですけど。
心の中で焦ってると、トゥルーデは少し悲しそうな顔をした。
「何か…私に怒ってるのか?」
「え?」
「…最近、避けられている気がして…」
「あ…ぁ、そのー…」
欲情しないように避けてます、なんて言ったら絶対怒られるよなー。
「理由だけでも言ってくれ」
「えっと…怒ってるとかじゃないんだけど〜…」
「じゃあ何だ?…私が、嫌いになったのか?」
「そんなワケないじゃん!」
思いがけない言葉に、思わずトゥルーデの肩を掴んでしまった。
「違うの、嫌いになんかなんないよ。ちょっと訳有りで…」
なんて言おうか迷ってると、トゥルーデが頬を染めて微笑んだ。
「そうか…嫌いになったんじゃ、ないのか」
………。ダメだ、可愛い。もう限界。
- 104 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:22:59 ID:84BtAr6g
「トゥルーデ…!」
今まで我慢していた分を込めて、トゥルーデをおもいっきり抱き締めた。
「エーリカ…?」
「ダメ、無理。トゥルーデ好き、大好きだよ」
「え、ちょ…んっ…」
戸惑うトゥルーデをベッドに引きずり込み、その唇を私は夢中で貪った。
「ん…は、ふ…」
舌を絡めながら、両手で体を撫で回す。
あぁ、柔らかい。
「エーリカ、待っ…」
「待てないっ」
脱がせるのももどかしくて、軍服とシャツを一気に首までたくしあげた。下着をずらして柔らかい乳房に頬擦りする。
「ひゃ…ん……っ、あぁっ…」
くすぐったそうな声は、胸の先端にしゃぶりついた途端甘い喘ぎに変わった。
「ん…トゥルーデ…」
「エー…リカぁ、あ…」
柔らかさを充分堪能してから、体を下にずらした。
引き締まったお腹に何度か口付け、ズボンを脱がせる。
「あ…」
トゥルーデの、すごい。
もしかしてトゥルーデも我慢してたのかな。
そう思ったら、愛しさが倍増した。
「トゥルーデぇ…」
甘ったるい声を出しながら、蜜が溢れるそこにそっと口付ける。
甘酸っぱいトゥルーデの味。久しぶりのその味に酔ってしまいそう。
「あ、ぁん…エーリカぁ…」
- 105 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:24:01 ID:84BtAr6g
零れないように丁寧に舐めて啜っていると、トゥルーデがねだるように腰を揺らした。
「うん、トゥルーデ」
顔を上げ、濡れきったそこに指をゆっくり挿れていった。
「ふぁ…あぁッ…」
「トゥルーデ…気持ちいい?」
「ん、っ…あ、ぅ…」
こくこく頷きながら私にしがみつくトゥルーデは、ほんとに可愛くって。
「エ、…リカぁっ…ああぁんっ…!」
「トゥルーデ…!」
びくんと震えたトゥルーデと一緒に、私も絶頂を迎えたような気がした。
「はぁ…エーリカ…」
「トゥルーデ、もっと…」
「んっ…」
一度入ったスイッチは簡単に止まるはずなく。
私とトゥルーデは、何度も何度もお互いを求め合った。
―――
「禁欲を命じられた?」
「うん、そう」
いつの間にか二人とも裸の状態で寝転んだまま、私はトゥルーデに経緯を話した。
「リベリアンに、お前が何か怒ってるみたいだと聞いたんだが…くそあいつめ、でたらめを言いおって…」
「シャーリーが?」
それはちょっと感謝しないと。
これから一ヶ月ご飯からめぼしいオカズをかすめてやろうと思ってたけど、一週間にしといてやるか。胸触ったのは現行犯だし。
「それより問題は、命令違反しちゃった事だな〜」
- 106 名前:名無しさん:2009/05/13(水) 21:25:19 ID:84BtAr6g
そう言うと、トゥルーデも頷いた。
「後で自己申告に行くぞ。勿論私も行く」
「えーやだー!期間延びるかもじゃん!」
「申告しないで後でバレた方が罪が重くなるぞ」
「うぅ…」
また一週間とか延びたらどうしよう…今度こそ耐えらんないよ…
私たちは少し休んでから、執務室に向かった。
「ん?」
「どしたの?」
「先客がいるようだ」
見ると、執務室へ入っていく少佐の姿が見えた。
「少し待つか」
「うん」
少佐の用が終わるまで外で待ってようと、壁に寄りかかっていたら。
「ミーナ、聞いたぞ。ハルトマンに禁欲を命じたらしいな」
「…えぇ、そうだけど」
微かに二人の会話が漏れてきた。内容が内容なだけに、耳をすまして会話を聞く。
「どうしてまたそんな事を命じたんだ?」
「…やりすぎは戦いに支障が出るでしょう」
「本当にそれが理由か?」
ガタッ、と小さな音。
「羨ましかったんじゃないのか?」
「な…何言ってるの、美緒…」
「お前は気張り過ぎだ。もっと私に可愛がられに来い。でないと私も限界だ」
「え、…ぁ、美緒っ…」
そして聞こえる、ミーナの甘い声。
「……申告しなくてもいいんじゃない」
「…そうかもしれないな」
私たちは静かにそこを離れる事にした。
次の日、私の禁欲命令は解除されましたとさ。
まぁ、要は欲求不満は危険って事で。
我慢が限界になるとみんな狼になっちゃうのを、うちの狼さんは知らなかったって話でした。
- 107 名前:トゥルーデ撃墜部隊:2009/05/13(水) 21:26:10 ID:84BtAr6g
- おしまいです。
トゥルーデの中の人がブログで「ムリダナ」と発言していたことに萌えた撃墜部隊でした
- 108 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 03:26:29 ID:kp.p9Gso
- >>107
やっぱりなミーナさんにワロタw
エーゲル良いですわあ。GJ。
- 109 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 04:00:34 ID:ypg4qaNY
- 私の身体を包み込む様に風が踊る。
肌を撫でる柔らかな感触。
決して掴む事の出来ない不可視の存在。
私の操る事の出来る、壮大で不可思議な友達。
「……珍しいなハルトマン、何をしている?」
「……少佐?」
春は過ぎたけれど夏にはまだ早いそんな季節。
珍しく、というか年に数回あるかと言うくらいに早く目の覚めた私は、ふらふらと海から吹く潮風にその身を委ねていた。
自分でもわからない、何かモヤモヤとしたけだるい感覚。
風に当たって気晴らしでも、と思ったのだが、この潮風達はどうにも私をからかうばかりだ。
特に気にしている訳でもないけれど、髪が風に踊らされてぐしゃぐしゃだ。
「……なんか目が覚めちゃって」
「……そうか」
朝練帰りなのだろうか、額に汗を光らせた坂本少佐は、私の言葉に返事をしつつ、何故か眼帯を外した。
魔眼で睨み見る先は……ガリア。
って、これはもしかして
「…少佐ぁ……私もしかして遠回しに馬鹿にされてる?」
「あー、いやぁ…その、スマン」
以前冗談で「部屋掃除してくる」って言った時に、トゥルーデが「明日は嵐が来るのか!?」って気象観測所に問い詰めてたけど……。
私が早起きしたらネウロイの大襲来ですか。
あー、エーリカちゃんショックー。
「いやぁ、悪かった。……少し思い詰めてる様に見えたからな」
「……少佐には……そう…見えたの?」
「ああ」
そうなのかな……。
うー、あんまり深く悩むのは私のキャラじゃない。
だけど、何か溜飲の落ちない気分。
私は知らず顔をしかめていた。
「ハルトマン。扶桑には柳と言う木があるんだが」
「……ヤナギ?」
いきなりだね、少佐。
私が訝し気な顔を向けると、少佐は笑いながらまぁ聞け、と話を続けた。
「柳は幹も枝も細い木なんだが、どんな風が吹こうともそのしなやかな強靭さを持って優雅に受け流す」
「……あれ。なんか、耳が痛い?」
「さて?私は柳の話をしただけだが?」
意地の悪そうな笑みを浮かべる坂本少佐。
少佐も結構こんな冗談言うんだ。
……冗談、だよね…今の?
唸る私を余所に、少佐は気持ち良さそうに目を閉じる。
「……いい風だ」
「悪戯好きな風なのに?」
右から左からくすぐったり撫でたりと、私を弄ぶ緩いそよ風。
それなのに、なんで少佐はいい風なんて言うのだろう。
私の話を聞いているのかいないのか、少佐の独白にも似た話が続いた。
- 110 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 04:01:27 ID:ypg4qaNY
- 「陽は暑いくらい照っていて、雲一つ見当たらない快晴。けれど、吹く風はヒンヤリと冷たくて、汗ばむ事もなく、ただただ心地良い」
少佐の話すソレは、昨日の天気なのだとふと気が付いた。
確かに昨日は昼寝をするにも散歩をするにも最適、ってか最高だったけど。
「そんな日には、ふと思ってしまう。ネウロイも関係ない。戦いも、ウィッチとしての役目も忘れて、気の向くまま、風の導くままにこの空をどこまでも飛んで行きたい、とな」
朝焼けに燃える空を眺めながら、呟く様にそう話す坂本少佐は、どこかとても寂しそうで、思わず私は言葉に詰まる。
普段から時には朗らかに、時には厳しく私達を見守ってくれている少佐のちょっとした心の本音。
なんと言うか、責任感…とでも言えばいいのだろうか。
頭の後ろでしっかりと縛った少佐の髪が、風に煽られてゆらゆらと踊る。
……あーっ、こうなんかアンニュイな空気はエーリカちゃんのキャラに合わないっ!
むん、と気合いを一つ。
私は立ち上がると少佐にビシッと指を突き付けて言ってやった。
「じゃ、今度ミヤフジにお弁当でも作ってもらってピクニックに行こう!」
「……ああ。それもいいな」
少佐はパチクリと瞬いた後、ふっと笑って肩の力を抜いた。
……って言うか、肩竦められた?
少佐は踵を返して二、三歩程歩いた後、思い出した様に口を開いた。
「……先程、柳の話をしたが……」
「少しはミーナやトゥルーデの話を聞いてやれ、でしょー」
「そうではないさ」
あれ、違うんだ?
腰に当てた手がズルリと滑り落ちた。
少佐は少しだけ顔を上げると、後ろからではわからないものの、どこか楽しそうに話しだした。
「柳は幹も枝も細いと言ったが、幾らしなやかさがあったとしても、そんな木が強風に耐え切れるものではない。では、何故柳は木としてその土地に在り続けられると思う?」
それは問い掛けと言うよりも謎掛けか。
いきなり、また小難しい事を言われたものだから、思わず私はうぅむ、と唸りながら考えてしまった。
頭を使うのはウルスラとかトゥルーデの役目なのにぃ!
とりあえず、今はそれよりも¨ヤナギ¨だ。
枝と幹……ええと、風に耐え切れないって事は……風で飛んでかないって事?
折れるのは論外だよね、なら……
「…………根っこ……だったり?」
「ほぅ、その通りだ」
- 111 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 04:01:59 ID:ypg4qaNY
- やったね!エーリカちゃん大正解!!
少佐は少し以外だったのか、驚いた様な口調をもって、くるりとこちらに向き直った。
「柳が柳としてそこに在り続けられるのは、偏に地にしっかりと根を下ろしているからだ。揺らぐ事のない確固たる足場があればこそ、柳はいかなる風にも耐え、またその風を受け流せる」
「つまり足場が悪かったら一緒に飛ばされるって事?」
私の言葉に少佐の目がキラリと光った気がした。
言ってからしまった、と思うのは仕方ないよね?
つい揚げ足というか余計な事を言っちゃうこのエーリカちゃんのお口め!メッ!
「そうだ。……だが、ハルトマン。お前の足場はどうだ?ちゃんと地に足を着けているか?」
少佐の言葉に私はえ…、と呆けた様な声を漏らしてしまった。
そんな私に少佐は微笑みながら諭す様に言葉を続ける。
「お前が悩みを相談すべき相手は風ではなく私達だ。私だって悩みも不安も恐怖とて感じる。だが、己の足元…自分自身さえ見誤なければ私達は前に、明日に進む事が出来る」
知らず唾を飲み込む私。
以前トゥルーデが坂本少佐は素晴らしい人だ、と褒めてはいたけれど、私にはイマイチ実感が湧かなかった。
それはそうだ。
少佐は、立ち止まったり道を見失ったりした人を導くウィッチなんだ!
「……さて、そろそろ限界だな。ハルトマン、一度部屋に戻れ」
「……へ?なんで?」
このまま、もう少し少佐と話しをしてみたいと思ってたのに。
それに……限界?
またくるりと私に背を向けた少佐は、肩を軽く竦めると基地を指差した。
……正確には、とある部屋を。
よくよく耳を澄ませば、なんだか泣き声にも悲鳴にも似た叫び声が聞こえてきた。
『フラウッ!!返事をしろフラウッ!!!どこに埋まってるんだ!?フラァアアアアアウッ!!!!』
『ト、トゥルーデ落ち着いて!!?』
……窓の中では、何故か私の服やらベッドやらが引っ切り無しに宙を舞っている様に見える。
と言うかあの声はトゥルーデとミーナ、だよね?
……何事!?
「お前が起きている、と言う選択肢がないからだろうな」
「………えー」
困った様な顔で、早く行って安心させてやれ、とため息を落とす少佐。
見上げれば、だんだんと窓から見える私の私物の舞いが激しくなってきた。
……これは急がないと色々とマズイ?
- 112 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 04:02:23 ID:ypg4qaNY
- 「もー、トゥルーデはー!!少佐、ありがとう!!」
「気にするな。あぁ、ハルトマン!話しの流れからさっきは違うと言ったが、二人の話しも少しはキチンと聞いてやれ」
「ちぇ、分かりましたーっ!」
私の部屋を激しくシェイクしてくれちゃってる愛しい私の戦友達の元へと、私は駆け出した。
そうだ、変に一人で悩むなんて私らしくない。
それに少佐の言った事はやっぱり正しかった。
駆け出した私を後押しするかの様に、優しく背中を押してくれる潮風。
……うん、本当に気持ちの良い風だね、少佐。
『フゥーラァーウゥーッ!!!!!!』
『ちょ、トゥルーデ!?床下には絶対いないから落ち着きなさい!!』
……なんか、私の部屋どうなってるんだろう。
まぁ、そんなの後で考えればいいよね?
エーリカ・ハルトマン、今日も気楽に楽しく元気に行っきまーす!!
おーわり
- 113 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 04:05:44 ID:ypg4qaNY
- そんなこんなで遅れながら避難所三スレ目おめでとうございます、CRwGA7CAでした。
- 114 名前:名無しさん:2009/05/14(木) 05:28:39 ID:kp.p9Gso
- >>113
GJ!もっさんかっこええなあ。カールスラント組も相変わらずだw
あと貴方の文章は何処か柔らかさが有って好きです。次も期待してます。
- 115 名前:名無しさん:2009/05/15(金) 02:41:58 ID:1nnNZJXg
- >>113
GJ!面白かった!
もっさんかっこいい!
もっさんエーリカは結構珍しい組み合わせだと思う。
それを違和感なく書けるのはすごい。
- 116 名前:名無しさん:2009/05/16(土) 14:01:06 ID:ZR/28CC.
- 「今日は何しようかなぁ」
「芳佳ちゃん、芳佳ちゃん!」
「リーネちゃん?」
「ほら、あれ見て!サーニャちゃん凄いんだよ!」
「え……うわぁ!!何、サーニャちゃんトランポリンでもしてるの!?」
「あはは、違うよ〜。あれはローラースケートだよ」
「ローラースケート…って、あんなに高く飛び上がれるの?」
「大きなU字型の斜面を勢いをつけて滑ったり跳んだりするんだよ」
「へぇ……なんか意外な組み合わせ」
「ふふっ。その横で、ついさっきまでペリーヌさんがスケートボードしてたんだよ?これは靴じゃなくてタイヤのついた板で滑るの」
「ペリーヌさんが?」
「今はルッキーニちゃんに何か教えてるみたい」
「……何気にペリーヌさんて、面倒見いいよね」
「それは失礼だよ、芳佳ちゃんたら」
「えへへ。あ、他の皆は何してるのかな?」
「え、と…シャーリーさんはボート。ほら、テトラポッドの向こう辺りに」
「……もしかして、あれ凄い速度なんじゃ……それにボートに引っ張られてたのって」
「うん、坂本少佐。バランスを取る訓練に調度いいって、簡単なイカダを作って引っ張って貰ってるんだって」
「……………なんで坂本さん、座ってるだけなのに振り落とされないんだろう」
「凄いよねー。あ、今交差したヨットに乗ってるのがミーナ中佐だね」
「……なんかすっごく似合ってると言うか」
「芳佳ちゃんは、ヨット乗れるの?」
「私!?無理無理無理!リーネちゃんは?」
「勿論私も無理だよ!」
「勿論なんだ!?」
「うん。それでね、後はバルクホルンさんが……あ、来た!」
「え……空…?………うわぁっ!」
「グライダー…だったかな?風力だけで飛ばす飛行機なんだって」
「あ、手振ってるよ、リーネちゃん!…バルクホルンさーんっ!!!」
「……行っちゃったね……ある程度飛んだら、向こうの原っぱに着地するんだって」
「皆色々出来るんだぁ……」
「…あれ?ミヤフジ、リーネ。何してんの?」
「あ、ハルトマン中尉」
「ハルトマンさんは何か皆さんみたいに乗らないんですか?」
「うん?私さっきまでバギーに乗って山登ったり降りたりしてたんだー。一旦休憩ー」
「バギー…ですか?」
「うーん。なんかすっごく大きなタイヤのついた車、かなぁ?」
「そのまんまだねー。あ、そうだ二人ともエイラのキックボード見た!?」
「あれ、エイラさんキックボードしてるんですか?」
- 117 名前:名無しさん:2009/05/16(土) 14:01:35 ID:ZR/28CC.
- 「リーネちゃん知らなかったの?」
「うん、ずっと姿が見えなかったから」
「今はルッキーニと一緒に基地周囲を回ってるよ」
「ルッキーニちゃんもキックボードを?」
「んにゃ。ルッキーニはスケボーの練習ついで。エイラはそれの見守りついで、って感じ?」
「そうなんですか……。でも、ハルトマンさん、エイラさんのキックボードがどうかしたんですか?」
「んー、ふっふっふー。ミヤフジもリーネも見て驚くなよー?」
「驚く?」
「あ、芳佳ちゃん。エイラさんとルッキーニちゃん来たよ!」
「あ、本…当……だ………」
「………エ…エイラ…さん……?」
「あれ、芳佳とリーネとハルトマンだー。三人とも何してるのー?」
「ん?何を狐に摘まれたみたいな顔してんダ、リーネと宮藤は」
「な、な?凄いだろ?こんな芸当はエイラにしか出来ないって」
「な、なんだヨ、いきなり……」
「エイラさん……」
「それは、いくらなんでも……」
「っく、わはははははははっ!!!」
「…エイラー、うん、やっぱりがんばれー」
「ええい!だからお前ラ、なんだってんだヨ!!」
「「それはキックボードじゃなくて台車!!!」」
「うわはははははははははっ!!」
「きゃはははははははははっ!!」
「た、タイヤ多い方がいいだロ!?ってか、ワタシヲソンナメデミンナーッ!!!!!!」
おわーり
- 118 名前:名無しさん:2009/05/16(土) 17:21:28 ID:si6eRGrU
- >>117
エイラさん・・・
- 119 名前:名無しさん:2009/05/16(土) 22:31:13 ID:wkZgoe5c
- >>117
何故かバックトゥザフューチャーを思い出したw
エイラさん……。
- 120 名前:名無しさん:2009/05/18(月) 02:40:53 ID:ClyAdkZM
- >>117
エイラさん・・・可愛いです。
- 121 名前:名無しさん:2009/05/18(月) 03:27:03 ID:kXXVYRbw
- 明るい陽の光が海へと沈み、暗い闇夜の世界が音もなく空いっぱいに満ち広がる。
普段ならば、これからが私の生活時間なのだけれど、今日はちょっと咳をしただけなのに、心配性のエイラに部屋で休んでいる様に手配をされてしまった。
苦笑いのミーナ中佐に自室待機を命じられて、私は力無くベッドへと横になった。
かすかな音もなく、静寂だけがそっと忍び寄る私の部屋。
今日だけだかんナ、と言いつつも私を受け入れてくれるエイラは今は夜空の中。
この温か味のない孤独に、私はいつまで経っても慣れる事が出来ないでいた。
可笑しな話なのかもしれない。
唯一の年下であるルッキーニちゃんですら、ちゃんと一人で眠れるのに。
エイラと言う温かな居場所を知ってしまった私は、そこから抜け出す事を拒んでいるのだ。
「エイラ……」
呟いたのは、狂おしい程に愛しい貴女の名前。
いくら目を閉じていても、この暗い部屋に貴女の声が聞こえる事はないのに。
どうしようもなく優しくて、どうしようもないくらい意気地もなくて、でも、どうしようもないくらい私は貴女に惹かれている。
私がそっと伸ばした手に、貴女はいつも気付かない。
優しくて、温かくて。
でも、鈍くて、鈍感で、朴念仁で、ヘタレで、手も繋いでくれないし、私だって頑張ってアプローチしてるのに無反応だし……って。
……改めて考えたら、エイラはやっぱり意地悪だ。
うん、エイラが悪いんだ。
こうやって普段から私を甘やかせる癖に、私が一番して欲しい事はしてくれないんだから。
だから……
「……今日は、いいよね…?」
部屋は暗いし、一人だし、エイラはいないし。
なら、仕方ない。
私だって、ちょっとは頑張ったよね?
一人で眠れる様に努力はした。
我慢もした。
でも、限界だからいいよね?
「………ん、しょ…」
ここで取り出したのは、いつかエイラに貰ったネコペンギンのぬいぐるみ。
大切な大切な、私の宝物。
だけど、このネコペンギンは少し前にちょっとした事件を経て、真・ネコペンギンとなったのだ。
芳佳ちゃんとリーネちゃん協力の元、私の宝物は家宝へとジョブチェンジ。
……エイラには秘密で内緒の、私だけの宝物が完成したのだ。
私はネコペンギンの背中を撫でる様に探る。
すると、ネコペンギンの頭の近くで、固い金属がチャリ…と私の指に触れた。
私はソレを掴むとゆっくりと背中の方へと下ろしてゆく。
- 122 名前:名無しさん:2009/05/18(月) 03:27:29 ID:kXXVYRbw
- そう。
真・ネコペンギンには背中にファスナーが追加されたのだ。
勿論ファスナーだけが付いている訳じゃなくて、むしろ本番はここからだ。
一番下までファスナーを下ろすと、うにゅりん、と開いたファスナーの中を外に、ネコペンギンを内側になるようにひっくり返した。
そして、私はネコペンギンの中から現れたソレを見ただけで、頬が緩むのがわかった。
ボタンで現れたつぶらな瞳。
糸で造られた緩く微笑む口。
頬に付いた小さなワンポイントがより一層の可愛らしさを引き立たせる。
私はゆっくりとファスナーを閉じると、ぎゅぅっと抱きしめた。
「…………エイラッ」
芳佳ちゃんとリーネちゃんが作ってくれたのは、デフォルメされた二等身エイラ。
エイラに見つかったら、きっとまたオロオロしてヘタレてしまう。
だからこのエイラは私の秘密。
エイラが意地悪した時だけ、エイラの代わりに思い切りに甘えるのだ。
「……んふふ〜…」
ふかふかのぬいぐるみエイラに、私は頬擦りをした。
時々エイラにネコペンギン状態で持って貰っていたので、微かにエイラの匂いがする。
私はきっと、どうしようもないくらい単純で、子供なのだと思う。
だって、もうさっきまで怖いだのなんだの言っていた暗闇も気分も、旅立ってしまって無くなった。
「………んっ……おやすみ、エイラ……」
きっと今日は、とっても幸せな夢が見れるに違いない。
私はいつまでもぬいぐるみエイラと戯れていたい気持ちを我慢して、その代わりと言ってはなんだけど、抱き抱える様にして目を閉じた。
いつかエイラ本人にしたい、おやすみの口付けをして。
数分も立たぬ内に、私は夢の世界へと旅立った。
その晩、サーニャは何故か501人のちっちゃなエイラ達とぬいぐるみの国を歩く夢を見たとか、見なかったとか。
そして翌朝、幸せそうに眠ったサーニャとサーニャに抱きしめられるデフォルメされた自分のぬいぐるみを見て、呆然としていたエイラがいたそうだが、それはまた別のお話。
おーわり
- 123 名前:名無しさん:2009/05/18(月) 03:31:01 ID:kXXVYRbw
- 以上CRwGA7CAでした。
何故かあんまり話題にならなかったポスターネタ
タイトルは「リバーシブルエイラ」で一つ
- 124 名前:名無しさん:2009/05/18(月) 04:00:20 ID:OvZ41Vac
- >>123
やわらかな感じのする素敵なSSですね。
幸せそうなサーニャの寝姿が目に浮びます。
(ついでに翌朝、呆然としているエイラも)
しかし、ネコペンギンの中という発想はなかったw
- 125 名前:名無しさん:2009/05/18(月) 20:56:51 ID:vWoH8etk
- >>123
まるでファイナルフォームライドだwww
- 126 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 13:17:44 ID:lu8af2b2
- >>123
斬新すぎるw てかホントにファイナルフォームライドw
実は特ヲタが潜んでいますね?
何にせよGJ! まるで絵本の挿絵みたいなサーニャの描写がステキです。
- 127 名前:エイラの挺身:2009/05/19(火) 14:15:21 ID:Wf/7YNMY
「ん?どうした?」
「相談があるんだけど・・・」
「相談?」
「うん、話を聞いてくれる?」
「いいぞ。とりあえず座れよ」
エイラは机の上に広げたタロットカードを片づけながら、もう一方の椅子を突然の訪問者
であるサーニャに指し示した。
ただ、顔では平静を装っているものの、内心ではサーニャの相談ごととは一体何かとドギ
マギしていた。
(ま、まさか恋の相談とかじゃないよな・・・。す、好きな人ができたとか・・・)
「で、相談って何だ?」
エイラはさし向ったサーニャに尋ねる。
「えっと・・・」
「・・・」
サーニャの口から次の言葉が発せられようとする瞬間が、エイラにはひどく長く感じられ
た。
「ハルトマンさんのお誕生日のことなんだけど・・・」
「ハルトマン中尉?」
「うん。プレゼントをどうしようかと思って」
「・・・よかったぁ」
「え?」
「ああ、な、何でもない・・・」
エイラは、サーニャの相談内容を聞いて、とりあえず胸をなで下ろした。
「でも、中尉へのプレゼントかぁ・・・ケーキかなんかいいんじゃないのか?」
「ケーキは芳佳ちゃんとリーネちゃんが作るって言ってたから・・・」
「そうかぁ・・・確かにケーキばっかりもらってもなぁ」
(私だったらサーニャの作るケーキだったら三つでも四つでも食べれるけどな)
「普段ハルトマン中尉と話をしている時に、欲しいものとかの話題は無かったのか?」
「・・・それが、ハルトマンさんと話したこと・・・あんまり覚えてないの」
「・・・前に五時間もしゃべってたのにか!?」
「・・・うん」
「ああ、ゴメン・・・」
エイラの言葉にシュンとするサーニャを、エイラは慌ててフォローした。
「べ、別にそんなに気にすることじゃないよ、楽しい時間ってあっという間に過ぎちゃう
もんだろ?そんなに早く時間が過ぎてんだから。その時話していた内容を思い出せなく
たって仕方がないよ」
「そうかな?」
「そうだよ〜。なぁ、どんなことでもいいよ、何か覚えていることは無いのか?」
「え〜と・・・そうだ!」
「何?」
エイラは思わず体を乗り出す。
「確か・・・もっとお休みが欲しいって」
「う〜ん、流石にそれはムリダナ・・・」
「・・・そうね」
その後も二人はエーリカへのプレゼントについての相談を進めた。
服・花・アクセサリー・ジャガイモの詰め合わせ・化粧品・牛乳・本・レコード・・・
と、二人で色々と提案していったものの、これというものは思いつかなかった。
「う〜ん、もう“おめでとう”って言葉だけでいいんじゃないか? なんか、せっかくあ
げても、あの部屋の中に埋もれちゃいそうだしさぁ・・・」
そう言いながら、エイラは机の上に突っ伏した。
「でも・・・、いつも私の話し相手になってくれるのに、何もあげないのって・・・」
サーニャはそう言いながら、自分の手を胸の辺りでキュッとにぎる。
その表情はどこか寂しげだった。
(ハルトマン中尉も幸せだよなぁ、サーニャからこんなに思われるなんて・・・)
エイラはなんとなくエーリカのことがうらやましくなり、ちょっと気に食わないなとは感
じたものの、サーニャの寂しげな表情を見ていると、何とかしてやりたいという気持ちが
ふつふつと湧いてきた。
「あ〜もう!」
エイラは突然頭を掻きだした。
「エイラ?」
「私が一肌脱ぐよ!」
「何するの?」
「まぁ、任せとけって」
そう言うとエイラは、自分の胸をトンと叩いた。
- 128 名前:エイラの挺身:2009/05/19(火) 14:15:57 ID:Wf/7YNMY
「エーイラ!」
ひょい!
抱きつくはずだった相手に回避されたエーリカは盛大な音を立てながら床を転がった。
「大丈夫か?」
「痛ててて・・・もう!避けなくたっていいじゃん!」
「ごめん、ごめん、ついくせで」
そう言って口をすぼめるエーリカにエイラは苦笑いをしながら答えた。
「で、何か用か?」
「そうそう、トゥルーデから聞いたよ。誕生日プレゼントありがとう!」
そう言ってエーリカは満面の笑みを浮かべる。
「まぁ、トゥルーデは、こんなこと、こいつをますます怠惰にしていくだけだ! 本来な
ら認めんぞ!って言ってたけどね。ここにしわ寄せてさ」
そう言って、自分の眉間を指差す。
「でも、ミーナも構わないと言ってるし、お前への好意だといういうのなら仕方がないな
って渋々認めてたよ。だけど、本当にいいの? 二週間も私のシフトをエイラが代わる
なんて」
「ま、別に大したことじゃないって。それよりも、お礼だったら、私よりもサーニャにし
てくれよ。ハルトマン中尉にプレゼントをあげようって言いだしたのはサーニャなんだ
し。それに、私がハルトマン中尉の代わりに仕事をするのだって、サーニャのためであ
って、別にハルトマン中尉のためってわけでも〜」
「・・・それってツンデレ?」
「は? なんだよいきなり」
指を振りながら説明をしていたエイラは、エーリカの発言に思わず目が丸くなる。
「ううん、なんでもない。それよりも、本当にありがとう」
「おめでとな」
見つめ合う二人の間で静かに時が流れる。
「じゃ、私はもう行くよ。やらなきゃいけないこともあるし」
「何だ?」
「サーニャが起きるまで二度寝〜」
言うが早いか、エーリカは一目散に駆けだした。
「・・・へ?」
エイラは走り去るエーリカの後ろ姿を見て、思わず額に手をやった。
- 129 名前:エイラの挺身:2009/05/19(火) 14:19:24 ID:Wf/7YNMY
―1週間後
「エイラさん、お疲れ様!」
昼食の時間。エイラが食堂のテーブルに着くと、芳佳の元気な声が響いてきた。
「それにしても大変じゃないですか?ハルトマンさんの分の隊務までエイラさんがこなす
なんて」
芳佳は席に着いたエイラにそう問いかける。
「いや、ほとんどは待機だからさ、そこまで大変じゃな・・・?」
そう言うエイラの鼻腔に嗅ぎ覚えはあるものの、基地ではあまり経験の無い匂いが届くの
を感じた。
「あれ? この匂いは・・・」
「ああ、サーニャちゃんがボルシチ・・・でしたっけ? を作ったんです」
「サーニャが?」
「はい、エイラさんばっかり頑張ってくれてるから、せめて栄養のあるものでも食べて欲
しいって」
「私のために! ・・・べ、別に、そんな気使わなくていいのに」
口ではそう言うものの内心ではサーニャが自分のために手料理を作ってくれたことがなに
より嬉しかった。
「じゃあ、食べないんですか?」
「は! 何言ってんだよ、食べる食べる、食べるに決まってんだろ!」
「はっ、はい!」
芳佳は慌てて厨房へと戻っていく。
(まぁ・・・これも役得でいいよな・・・)
エイラはテーブルの上に肘をつき、手のひらの上に顔を乗せると、サーニャの手料理が運
ばれてくるのを今か今かと待ちわびるのだった。
- 130 名前:エイラの挺身:2009/05/19(火) 14:20:49 ID:Wf/7YNMY
―2週間後
「ねえねえトゥルーデ、これどういうこと!」
エーリカは廊下でバルクホルンの姿を見つけると、慌てて駆け寄ってその肩を掴み、勢い込んで尋ねた。
「何のことだ?」
「これのこと!」
とぼけるバルクホルンの眼前にエーリカは、いましがたバルクホルン自身がエーリカの部
屋に置いていった給与袋をつきつける。
「いつもの半分しかなかったんだけど、どうして!」
この訴えに対してバルクホルンは、腰の両側面に手を当てると。
「当たり前だ! 昔から言うだろ? 働かざる者食うべからずと! 二週間も隊務に携
わっていなかったのだから、こうなるに決まっている!」
「そんな〜、ひどいよ〜返せ! 返せ! 人のお給料返せ〜!」
そう言いながらエーリカはバルクホルンの周りをピョンピョンと跳ねまわる。
「半分もあれば普通の生活を送るには十分すぎるだろ」
と、バルクホルンはエーリカの抗議に聞く耳を持とうとはしない。
「そんなぁ〜、トゥルーデみたく無味乾燥な生活をしてるわけじゃあるまいしさ〜。もう
こうなったらストだよ! スト!」
言うが早いかエーリカは駆けだした。
「おっ、おい! ストって何する気だ!」
バルクホルンは走り去ろうとするエーリカの背中に慌てて問いかける。
「トゥルーデがもう半分をくれるまで、部屋でふて寝〜」
「・・・それじゃあ、普段と大して変らんだろ!」
バルクホルンの指摘が廊下中に響き渡る。そうして、バルクホルンはポツンと廊下に佇み、
ポケットの中にあるエーリカの給与の残りが入った袋をいつ渡したらいいのかと、一人思
案に暮れるのであった。
fin
- 131 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 14:23:33 ID:Wf/7YNMY
- こんにちわ、DXUGy60Mです。
一月前に、エーリカ誕生日記念に書いたものの、エーリカが全然活躍して
いなかったために引っ込めたSSを一ケ月遅れで投下してみました。
最後まで読んでくれた方がいたら幸いに思います。
- 132 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 22:47:34 ID:2TaqglMA
- 避難所と本スレ両方とかGJにもほどがあんだろw
- 133 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:14:01 ID:4saAFJyg
- >>131
GJです!エイラとエーリカもいいですね!
>>123に便乗してぬいぐるみエイラネタ一本行きます
- 134 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:15:59 ID:4saAFJyg
- なんだよこれ…なんなんだよ!?
ハルトマン中尉がにやにやしながら私を見下ろしている、私は身動きが取れない。
こいつ…何しやがった!?
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ぐっもーにおはよっ、きょーおーにおはよーっ」
少し蒸し暑いある日の昼時。
私はリーネからもらった特製フルーツジュースを片手に
そろそろ起きるであろうサーニャの元に向かっていた。
サーニャはリーネのジュースを気に入っていたみたいだからきっと喜ぶぞ
そんなサーニャを考えただけで鼻歌が出てしまうのは同然ってもんだ。
少しでも早くサーニャの所に行こうと早足で階段を上っていた時
降りてくるハルトマン中尉と目が合った。
「おっはよーエイラー」
「オハヨー中尉、もう昼だゾ?今まで寝てたのかヨ?」
「ちょっと部屋で捜し物をね。そうだエイラ!喉渇いてない?これ飲みなよ」
中尉が差し出したのは一本のビン。
中身はオレンジジュースみたいな色をしていて、ビンに光が反射していてすごく綺麗だ。
「なんだコレ?リーネのジュースじゃないよナ?」
「ハルトマン家に代々伝わる特製ジュースでーす。自慢だけど美味しいよ」
ない胸をふふんと張って堂々と自慢してきた。
さっきフルーツジュース飲んだから喉は渇いてないんだけど、ビンの装飾のせいか妙に惹かれる。
蓋まで開けて差し出されちゃったし、私は遠慮なく頂く事にした。
「どう?美味しいでしょ?」
「オー!これうまいゾ!オレンジかと思ったけどなんか飲んだ事な…い…あじ……で…?」
中身の半分を一気に飲んだ私は体の異常にすぐに気がついた。
頭がふわふわする、力が入らない…
手に持っていたサーニャに渡すジュースだけは落とすまいとしたけど指先の感覚がなくなる。
手から落ちたコップをハルトマン中尉がキャッチしてくれるのを見ると同時に、私は背中から廊下に倒れた。
「……ふふふっ」
ハルトマン中尉が笑っている…頭から倒れたからそれなりの痛みを覚悟していたけど
感じたのは廊下とは思えない柔らかさで、痛みはなかった。
しかも倒れた時の音がバタンとかそんな固い感じではなく、ぽふっというなんだか間の抜けた音
(なんダ…何が起きたんダ…?)
起き上がろうとしてるのに頭のてっぺんから足の先までどこも動かない、声も出せない
体はこんな状態なのに意識だけははっきりしてきて、気分が悪くもないしどこも痛くなかった。
「へーっ、こんな感じになるんだ。なかなか可愛いじゃん」
訳のわからない事を言いながら私は頭をむんずと掴まれ、そのまま片手で持ち上げられた。
(待て待て!!なんで中尉が魔力も使ってないのに片手で私を持ち上げてんだヨ!?)
「何がなんだかわからない?エイラはねー、今こんなんだよー」
(…!?!?!?)
私はそのまま窓ガラスに近づけられ、反射した自分の姿を見た
…………ぬいぐるみ…!?
ガラスにうつる自分は目がボタンになっていて、口元は笑みを作っている
ずんぐりむっくりしたぬいぐるみだった。…指ないし…だからコップを落としたのか
掴まれている頭の様子と倒れた時の音を考えると今の自分は多分やたらふかふかなんだろう
って違う!!
- 135 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:16:19 ID:4saAFJyg
- (何しやがる!戻せよバカー!!)
自分では全力で叫んでいるのに声が出ない、殴ろうにも手が動かせない……ム、ムカツク…!!
「トゥルーデに飲ませる前に実験させてもらったよ、ごめんね!適当に元に戻ると思うから」
(適当ってなんだヨ!すぐに戻せヨ!!)
「…あ、ハルトマンさん」
……後ろから声が聞こえた…振り向く事はできないけど誰かは当然わかる…た、助けてー!サーニャー!!
「おはよ、サーニャ。喉でも渇いた?」
「あ…エ、エイラがいないから…どこかなって。……?それ、なんですか?」
「これ?拾ったんだ、欲しかったらあげるよ」
頭を掴まれたまま、ずいっとサーニャに突き付けられた。きょとんとしたサーニャはやっぱり凄く可愛い…
顔が熱くなってきたような気がしたから目を反らしたいけど、頭動かせないし目をつぶろうにも瞼がないからムリだナ!
「……欲しいです」
(サーニャ!?)
「いいよー、ついでにリーネのフルーツジュースも飲みなよ」
サーニャがこんなにはっきりと何かを欲しがるのなんて始めて聞いた
ハルトマン中尉から私とジュースを受け取ったサーニャは来た道を戻って、部屋に行くみたいだった
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
サーニャの部屋に連れていかれ、ちゃんと座るような形でベットのネコペンギンの横に置かれる。
今の私の大きさはこいつと同じ位らしい。不細工だけど、なんだか今なら友達になれる気がするぞ
「……ふぅっ」
ジュースを飲み終えたサーニャは改めて私に目を向けた。
ベットに座って私を脇の所から持ち上げ、膝の上に乗せられる。そんなに見ないでくれよ…
「これ…エイラ…だよね?誰が作ったのかしら?
リーネさんなら作れそうだけど、なんで芳佳ちゃんじゃなくてエイラなんだろう
もしかしてリーネさんはエイラを?…ハルトマンさんは拾ったって言ってたし
返さなきゃだめよね」
(やめろサーニャ返すな!私はリーネ作のぬいぐるみじゃない!気付いてくれよ!!)
「…もう少しだけ、持っててもいいかな?
あ、すごい…ポーチに小さいタロットも入ってる。可愛い」
(タロットまで小さくなってんのかよ!?元に戻るんだろーな!?)
サーニャは私を隅々まで撫で回して、その度に「可愛い」とか「柔らかい」とか言ってくる。
こんなの今日だけだかんな!明日には元に戻ってるんだからな!!
- 136 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:17:57 ID:4saAFJyg
- 「…えいっ」
(うわぁああっ!?)
ついに私は抱き癖のあるサーニャにぎゅーっと抱きしめられてしまった
そのままサーニャは横になったので、触れたこともないサーニャの成長途中の胸に顔を押し付けられる格好になる
はははははははは鼻血が出そうだ………いや、今は綿が出そうって言えばいいのか…?
「ん…っ、えいらぁ…」
(離して!サーニャ離してくれよ!お願いだからぁぁぁあっ!)
「ちょっとだけ話し相手になってくれる?あなたのモデルのエイラはね
絶対こんな風に抱きしめさせてくれないの。抱きしめてもくれない」
サーニャはぬいぐるみと思い込んでいる私に話を始めた。
内容は…その…主に私の事で…聞いちゃいけないってわかってるんだけど
「エイラはね、私のヒーローなの。優しくて誰よりも素敵で…他にもね」
耳を塞ぐ事ができない私はサーニャの言葉をずっと聞くしかなくて
嬉しくて恥ずかしいその内容に頭が沸騰しそうだった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
「ん〜〜…………」
(…やっと起きたカ)
話しながらうとうとと眠ってしまったサーニャは一時間くらいで目を覚ました。
私はまだぬいぐるみのまま、なんとかしてハルトマン中尉のところに行って元に戻してもらわないと
「これ、返さないと…お願いしたら同じの作ってもらえないかな」
(サーニャ…リーネじゃなくてハルトマン中尉のところに連れてってくれよ)
- 137 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:18:14 ID:4saAFJyg
- 試しに声を出そうとしてみるが、やっぱりサーニャには届いていないみたいで名残惜しそうに私の頭を撫でている。
と、ふとサーニャの手が止まった。
何かを考えるような表情から微笑みに変わり、私の体がサーニャの笑顔に引き寄せられた
ちゅっ
(………………は?)
「おはようのキス。いつか…本当のエイラにもしたいな」
キスされた……キスされた!?
目を閉じれないからサーニャのアップの顔が近づいて、くっついて、離れた所までばっちり見てしまった…
体が熱い……顔から火を噴きそうだ…なんか煙が出てるような気までしてきて………
ぽんっ
「うわっ!!」
「きゃぁっ!?」
体が…動く!!
倒れそうになる体をなんとか両手で支える。支えた両手にはちゃんと指がある!
「も、戻ったのカ!?や、やった!」
声も聞こえる。やっぱり元に戻ったんだ!
早く自分の姿を確認したい、鏡を…!
「エ、エイラ………?」
下からサーニャの声が聞こえる。
…………下?
恐る恐る下を見ると、サーニャが真っ赤な顔で私を見上げていた。
元々私が膝に乗っている状態で戻ってしまったから、誰かが見たら私がサーニャを押し倒しているようにしか見えなくて…
自分達の状況を理解した私は……
「う…うわ……ご、ごめんーーーーーー!!!!」
今まで動けなかった分もまとめて全速力で逃げるしかなかった。
そのころ
「トゥルーデー、喉渇いてない?」
fin
- 138 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:20:43 ID:4saAFJyg
- おしまいです、エイラぬいぐるみ凄く欲しいです。
読んで下さった方ありがとうございました
P/zSb9mc
- 139 名前:名無しさん:2009/05/19(火) 23:51:53 ID:2TaqglMA
- そのあとのサーニャんの反応を詳しく
- 140 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:11:29 ID:mK8rO6gM
- チリン、チリーン……
淡い透き通った音色が耳をくすぐる。
薄い青色のガラスから響くその音色に、私とリーネちゃんはしばしの間、目を閉じて聴き入っていた。
「……不思議な音だね、芳佳ちゃん。綺麗で、涼しくて……」
「うん。リーネちゃんみたいにお母さん達に仕送りしたら、代わりに送ってきてくれたの」
チリーン……
ブリタニアの夏は扶桑よりはどこか涼しいけれど、それでもこういった物は気分なんだと私は思う。
窓から差し込む夕日もほとんど沈み、まだ薄暗い夜空が広がっている。
開け放した窓からは涼し気な緩い風が部屋へと入ってくる。
窓枠から吊した風鈴は風と一緒に緩やかに踊っている。
「ええと、芳佳ちゃん……フウリン…で合ってたかな?」
「うん。扶桑では夏に縁側に吊すんだ」
「エンガワ…?」
「あ、えっとね。扶桑の家って……」
ブリタニアと扶桑の家の違い等をリーネちゃんと話す。
なんて事のない話しから最近の訓練の事、リーネちゃんと話す事は後から後から湧いて出る様に溢れるてくる。
そして、今日も他愛のない談話に花を咲かせて一日が終わる。
……そう思っていた時間もありました、はい。
耕耘機とシャーリーさんは急には止まれない様に、きっとこういった流れも止められないのだろう、と後に私は思った。
そう、突然窓の下から何かが煙の尾を引いて飛んで来て、物の見事に風鈴に直撃したのだ。
その突然の様子に言葉も無く、呆然と窓を見る私とリーネちゃん。
…リーン……チリーン……
とりあえず頑丈なのが扶桑クオリティ。
風鈴はなんとか無事な様であったが、一体何が起こったのだろうか。
しばしの後、パチクリと目を瞬いてリーネちゃんと見つめ合う。
その瞬間、バァン!と勢いよく部屋のドアが開け放たれた。
……隣のリーネちゃんの部屋のドアが。
『さぁ!……あれ、いない』
ドタドタと私の部屋の前に走って来た足音がピタリと止まった。
とりあえずドアを見つめる私とリーネちゃん。
静まり返る部屋。
何故か異様な威圧感を放つ部屋のドア。
が、一向にドアが開く様子がない。
さっきの声はおそらくシャーリーさんの声だと思うのだが、どうかしたのだろうか。
私はリーネちゃんと目配せをしてそっとドアへと近付いた。
その時
パァン!!
「わひゃああああ〜〜〜っ!!!!」
「きゃぁああああ〜〜〜っ!!!!」
- 141 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:11:50 ID:mK8rO6gM
- 突然背後から風船を割るような破裂音が響き渡った。
あまりにも突然なその音に、私達は思わずお互いに抱き着きながら叫んでしまう。
見れば、私達の叫び声に驚いたのか、耳を塞いでいるルッキーニちゃんがそこにいた。
足元には先程の炸裂音の音源であろう、破れたビニール袋が打ち捨ててあった。
「うぅ〜、芳佳、リーネ、叫び過ぎ〜」
「あ、え…ご、ごめんなさい……」
「ル、ルッキーニちゃん…一体何処から入ったの!?」
あれ、私達が被害者なんじゃ…と思わず謝ってしまったリーネちゃんを見て思ったけれども、それよりも問題はこっちだ。
どこかに抜け道でもあるのだろうか……
そう思っていると、ルッキーニちゃんはニィ、と笑って窓を指差した。
「余裕だね」
「まったくだ」
よじ登って来たのか、上から下りてきたのかはわからないけれど、それよりもポンと背後から肩に置かれた手に、私とリーネちゃんは驚いて固まった。
慌てて振り返ると、いつドアを開けたのか、シャーリーさんが素晴らしい笑顔でそこにいた。
「さぁ!花火をするぞ!!」
「……………え?」
「…………はい?」
さぁ、行くぞー、と意気揚々なシャーリーさんとルッキーニちゃんに引きずられながら、私達はその場を後にしたのであった。
◇
基地裏にある浜辺に連れて来られた私とリーネちゃん。
そこでは、他の皆が思い思いに夏を満喫している様に見えた。
その時は、確かに。
そう、それが一見そう見えただけであったとしても。
浜辺に着くやいなや、ルッキーニちゃんは駆け出すと、まとめて置いてある花火数本を両手に握りしめ、その全てに火を着けた。
「じゃっじゃじゃーん!シャーリー、ほらほら、しゅごーっ!!」
「あっはっはっ!綺麗だなルッキーニ!だけど、そのまま走ってくるなぁーっ!!」
勢いよく閃光を散らす花火を振り回しながら、シャーリーさんを追い掛けるルッキーニちゃん。
一方のシャーリーさんもいつ手にしたのか、煙玉を次々と走りながら落としていく。
色とりどりの粉塵が立ち込める浜辺。
しかし、そんな騒ぎもなんのその。
別の場所ではハルトマンさんとペリーヌさんが、何やらお互いの足元にネズミ花火を投げ込んでいた。
「……って、ハルトマンさん、ペリーヌさんも、一体何やってるんですか!?危ないですよ!?」
「あら、宮藤さん…リーネさんも…っと!姑息ですわねハルトマン中尉!」
- 142 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:12:08 ID:mK8rO6gM
- 「あっさりいなした癖にっぉ!?そっちこそえげつない所に投げ込むねっ!」
チラリとペリーヌさんがこちらを見たけれども、すぐにまた二人の危ない世界に入ってしまった。
ペリーヌさんが目を逸らした隙にネズミ花火を投げ込むハルトマンさん。
それを軽く爪先でターンする様に躱しながら、ハルトマンさんの今まさに下ろそうとする足元に投げ込むペリーヌさん。
やってることはしょうもないのに、そこには確かに私には入り込めない二人だけの世界が広がっていた。
だが、それにしても
「危ない遊びだね、リーネちゃん」
「わー……懐かしいな」
「……へ?」
……なんですと?
今リーネちゃんはなんと言ったのか。
見れば本当に懐かしいのか、胸の前で手を合わせながら目を輝かせているリーネちゃんがそこにはいた。
「ほら、二人の足元に丸が幾つも書いてあるのわかる?」
「え……あ、本当だ」
リーネちゃんが言うには、要は相手を円の外側に追い出すゲームらしい。
実の所はソフトボールを使うらしいのだけれど、そこはブリタニアサマーマジック。
手身近な物で激闘を繰り広げるにまで至るのだから夏って大変だと思う。
時折飛んでくる煙玉を避けながら、ペリーヌさん達を見ていたのだけれども、ふと、視界の端に何故か竹を担いでいるバルクホルンさんを見つけた。
……な、何本持ってるんだろ…あれ。
「少佐、これくらいで大丈夫ですか?」
「ああ、最初の分は切っておいたが下準備を先にし終えてしまうか」
リーネちゃんに断って様子を見にバルクホルンさんの後を追ってみると、そこには何やら刀で竹を切り揃える坂元さんと、それを所々削るバルクホルンさんがいた。
少し離れた所で、ミーナさんが小難しい顔をして二人の様子を見ていたので話しを聞いてみることにした。
「ミーナさん、坂元さん達は何をしてるんですか?」
「あら、宮藤さん……ええと…どう説明したらいいかしらね……」
困った様に私を見て微笑むミーナさん。
が、相当悩んでいるのか、眉間に微妙にシワが寄っていてなんとも言い難い面付きであった。
「……宮藤さんの方が詳しいかしら。宮藤さんは、キャンプファイヤーって、知ってる?」
「あ、知ってますよ。学校の遠足で遭難した時に、狼煙ついでに皆でやるんですよー」
懐かしい全学年合同遠足。
- 143 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:12:40 ID:mK8rO6gM
- 道無き道をコンパスと山岳地図を片手に進む、二泊三日(予定)の自然と触れ合うフリーダムフェスティバル。
熊の軍団と遭遇した時は覚悟を決めたっけ。
みっちゃんがいてくれなかったら熊と戦う事になってたな。
そんなこんなを、気付けばどこか遠い目をして思い出していた。
「な、中々サバイバルな遠足ね……。まぁいいわ、そんな話しを美緒とトゥルーデがしてたんだけど、どうにも盛り上がっちゃって……」
「それで、実際に造ろうと?……あれ、でも」
振り返れば切る分は終わったのか、坂元さんが、バルクホルンさんの削り終えた竹を次々と汲み上げていく。
二人とも怖い位に無言。
ただ、もくもくと各が作業を熟していた。
「……あれって、竹でするものでしたっけ」
「やっぱりそうよね。この間やった、流し素麺の時に貰ってきた竹が大量に余ってたから、だそうなのだけど……」
ああ…と、そんな事もしたっけ。
あれは確か、坂本さんの一言から始まったのだけれど……
「……流しましたねぇ」
「……流したわねぇ」
私素麺を茹でる係り、リーネちゃん水流す係り、ミーナさん素麺流す係り、他の皆は食べる係り。
そんなノリで終わった流し素麺大会は、最後に私達三人で下流に設置しておいた桶に流れ着いた素麺を突いて終わったのであった。
「…………はぁ」
「…………はぁ」
どちらからともなく、力の無いため息を零した。
その後、組み上がった頃にまた来ます、と私は踵を返した。
というのも、先程からとっても気になっている事が一つあったからだ。
極力気にしないようにしていたのだけれど、もう限界。
先程から時折聞こえてくる、エイラさんの怪しげな笑いが気になって仕方ないのだ。
キョロキョロと辺りを見渡すと、岩場の隅の方でこちらに背を向けしゃがみ込むエイラさんを見つけた。
「エイラさん、さっきから…うわぉ……」
エイラさんの肩越しに覗き込んだそこではウニュウニュと延びる怪しげな物体。
延びきったソレも大量に屯ろしている凄まじく怪しげな空間がそこには広がっていた。
エイラさんは私に気付かない程に夢中なのか、フフフ…と、どこか虚ろな目をして、そのヘビ花火を見つめていた。
一体何個あるのか、次から次へと一定の間隔をもって量産されるヘビ花火。
なんと言うか、エイラさんも色々と憑かれて…もとい、疲れているのかな、と思った。
- 144 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:12:58 ID:mK8rO6gM
- 「……芳佳ちゃん、さっきは大丈夫だった?」
「あ、サーニャちゃん。…大丈夫って?」
エイラさんのいる岩場の後ろからサーニャちゃんがひょっこりと現れる。
小首を傾げるサーニャちゃんだけれど、さっきって何かあったかな?
「ルッキーニちゃんが、芳佳達も呼んで来るね、ってロケット花火を一つ持っていったから」
「……ああ、あれ…ロケット花火だったんだ」
そういえば、のんびりとリーネちゃんと納涼を満喫してた事が遥か昔の事に思えてしまう。
涼やかに鳴る風鈴を直撃したのが、一発のロケット花火だったなんて。
……凄い命中率だね、ルッキーニちゃん。
ロマーニャのエース恐るべし。
悪戯だと、普段見える以上に真の実力を窺い知る事の出来るルッキーニちゃんとエイラさん。
とすると、やっぱりルッキーニちゃんはあの壁を登ってきたのだろうか……。
と、そこまで考えた時、サーニャちゃんが少しキョロキョロと辺りを見回していることに気が付いた。
そういえばさっきから右手に何かを持っているけど、もしかして……
「あの、サーニャちゃん……それは?」
「え……これは、導火線。芳佳ちゃん、火種…持ってる?」
導火線…?
一体なんのだろう……。
目を凝らして見れば、岩場の向こうへと続いているその線に妙な不安を覚える。
それでもサーニャちゃんだし、あんまり不安は…ない、かな。
とりあえずサーニャちゃんの希望通り、火種は無いかと探してみると、すぐ近くに、というか足元にエイラさんがいることを思い出した。
「エイラさん、そのマッチ少し借りますね」
「…ぁ………」
「…………ごめんなさい」
未だ薄く笑いながらヘビ花火にのめり込んでいるエイラさんの手から、スルリとマッチを抜き取ったのだが、なんと言うかとても哀愁の漂う顔で見られてしまった。
子を奪われた母狐というか、どうするアイ〇ル的な。
とりあえず、ごめんなさい。
何故か理由はわからないけれども、謝るしかないでしょう!?
何と言うか……ギャップ萌え?
普段、不敵な笑みを浮かべる事の多いエイラさんが、少し潤んだ不安げな瞳を揺らしてこっちを見るのだ。
こう、上目使いで、保護欲というかむしれ逆に被虐心をくすぐる、そんな感じの破壊力上等な顔。
マッチをエイラさんに返して、私はサーニャちゃんの希望である火種を探す事にした。
- 145 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:13:16 ID:mK8rO6gM
- …あとついでに、エイラさんのその表情に驚きを隠せないのか、目を丸くしているサーニャちゃんの鼻血を止める為のティッシュ等もあれば。
花火が山の如く大量に用意されている場所のそばに数本のロウソクが転がっていたので、それを借りることにした。
……本当に山の様に積んであるなぁ。
その近くには水の張ったタライがいくつか用意してあり、燃え尽きた花火が無造作に沈められていた。
その時、私の目の前を花火であろう物体が通り過ぎて、タライの水の中へと沈んだ。
発射位置を探そうと顔を上げると、もう一本花火が飛んで来て、やはり綺麗な弧を描いて水の中に沈んでいった。
「おぅい!?まだ持ってるのかよ、ルッキーニ!?」
「シャ、シャーリーこそ、けほっ、煙玉持ち過ぎーっ!!」
「じゃあ花火の火を付けてない状態で追い掛けれーっ!!」
「なんとなく、やだーっ、わぷっ!!」
未だ走り続けていたシャーリーさんとルッキーニちゃん。
どうやらルッキーニちゃんが、燃え尽きた花火をその場に捨てないで、キチンと水に沈めているらしい。
……何と言う命中率…。
ロマーニャのエース恐るべしリターンズ。
花火の山の側を通り過ぎる時に、シャーリーさんは煙玉を掻っ攫って胸の谷間に、ルッキーニちゃんは勢いの強そうな花火をズボンに挿して、スピードダウンする事もなくまた走り去って行った。
……………。
後でシャーリーさんの煙玉を奪いに…げふん、貰いに行こう。
どうにかして自分で取らないと……。
まぁ、今は先にサーニャちゃんにロウソクを届けないとね。
危うく当初の目的を忘れそうだった私は、ロウソクに火を点け再び岩場へと戻った。
「………フフフ……」
「……………」
岩場へと戻ると、先程と少し様子が異なっていた。
と言うのも、ヘビ花火を見つめるエイラさんは変わらないのだけれど、サーニャちゃんがエイラさんの後ろに立ち、両手を広げてわなわなと震えていた。
……おそらく今サーニャちゃんの中では「楽しんでるエイラを邪魔しちゃダメ…だよね…?」と悩む天使サーニャちゃんと、「さっきの顔もう一度見たくないの?抱きしめたりしたくない?」と誘惑する悪魔サーニャちゃんが激しいバトルを繰り広げているに違いない。
……悪魔サーニャちゃん優勢だなぁ。
とにかくサーニャちゃんにロウソクを渡さないとね。
「サーニャちゃん。ロウソク持ってきたよ」
- 146 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:13:45 ID:mK8rO6gM
- 「……芳佳ちゃん…………………うん、ありがとう」
何かとっても悩んだねサーニャちゃん。
サーニャちゃんは私からロウソクを受け取ると、近くの岩に垂れ下げていた導火線に火を点けた。
バチバチと燃えながら岩場の向こうへと消える導火線。
打ち上げ花火でもするのかな、とその様子を眺めていた次の瞬間!
私は、ああ、サーニャちゃんも結構色々と溜まってるものがあるんだなぁ、と変な実感が湧いたのであった。
『シャーリーッ!!いい加減待ってよーっ!!』
『無茶言う…なぁ!?ル、ルッキーニ、後ろ、後ろーっ!!!』
『へ………ギニャー!!なんか追い掛けながら飛んでくるーっ!?』
『はぁ…はぁ…往生際……悪い…ですわね……ハルトマン…中尉……はぁ…』
『そっち…こそ……はぁ…はぁ…やるじゃ…………ってぇ、ペ、ペリーヌ、後ろ!!』
『ペリーヌさん!ハルトマンさん!!』
『なんです…のォ!?ちょ、危な…ええぃ、猪口際ですわ!!この程度避け切って見せましてよ!?』
『ほっ、やっ、おっ、とりゃーっ!』
『わぁっ!お二人共、凄いです!!』
『……ふぅ、中々形になって来たな、バルクホルン』
『そうですね…?……少佐』
『ああ。……ミーナ、私とバルクホルンの後ろに。……来るぞ』
『…あらあら……後片付けが大変ね……はぁ』
「……フフフフフフ………」
「うふふふふふふふふ……」
「うわぁ……なんか色々大変な事に……」
なんと言えばいいのだろうか。
サーニャちゃんに渡してしまったロウソクの火から点火された、導火線カウントダウン。
ゼロになった瞬間に発射されたのは、百は裕に越えたであろうロケット花火の一斉射。
岩場の向こうでこれの準備してたんだね、サーニャちゃん。
と言うか、一体何発用意していたのかしばらくの後に第二、第三と発射されるロケット花火群。
その様子を眺め、にっこり…ではなく、ニヤリとエイラさんのソレと変わらぬ笑みを浮かべているサーニャちゃん。
……確かサーニャちゃんのフリーガーハマーは、装弾数九発だったっけ。
ハッピートリガーサーニャンを横目に、ロケット花火群の飛んで行った惨劇場を見つめる。
浜辺で追い掛けっこをしていたシャーリーさんとルッキーニちゃんは、追尾機能でも搭載しているのかきっちりと背後を追い掛けてくるロケット花火から全力で逃げ走っている。
- 147 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:14:16 ID:mK8rO6gM
- 先程から場所が全く移動していないので、未だ熱いバトルを繰り広げていたであろうペリーヌさんとハルトマンさんは、イナバウアーと言うか、マトリックス的な動きを持って飛び迫るロケット花火を避け仰せていた。
それを横で応援しながらはしゃいでいるリーネちゃんには、一発も掠りもしない辺り何と言うか、リーネちゃんだなぁ、と思う。
所変わって、坂本さんとバルクホルンさんは激闘を繰り広げていた。
飛来するロケット花火を一刀の元に切り捨てながら乱舞する坂本さん。
バルクホルンさんは少し細い竹をゲルト…じゃないゲル〇グよろしく回転させては、次々と叩き落としている。
その後ろで困った顔をしているミーナさんだが、少し辺りを見回してからしゃがんで何かを拾った。
そうして立ち上がると右手の親指が何かを弾いた。
すると、坂本さんとバルクホルンさんの間を抜けたロケット花火が弾かれた様に撃墜された。
小石を親指で弾いて飛ばしてるんだ!
流石ミーナさん、他のウィッチに出来ない事を平然とやってのける!
そこに痺れる以下略ぅ!
そんなこんなで、綺麗だった砂浜は、至る所にロケット花火が突き刺さってたり、煙玉が転がってたり、ネズミ花火が散乱していたり、ヘビ花火が群をなしてたむろしていたりと、中々にして混沌が極まっていた。
息を切らせて、寄り添う様に座り込んでいるシャーリーさんとルッキーニちゃん。
最終的には足が絡まったのか、ひっくり返っているペリーヌさんとハルトマンさん。
その傍でせっせと花火を拾い集めるリーネちゃん。
そうだね、とりあえず掃除から始めないとね。
私もリーネちゃんに習って花火を拾い集める事にした。
そう、決して背後で怪しげに高らかに笑うエイラさんとサーニャちゃんを見たくないとか言う訳じゃないんです!
…それはそうと…流石にもう飛んでこないよね?
結局、その考えはなんとか杞憂に終わった。
「よぅし、完成だ!」
「やりましたね、少佐!」
数分後、一通りの花火回収を終えた私達の耳に、そんな話し声が聞こえてきた。
声のした方を見れば……なんかすっごい物体の前で、坂本さんとバルクホルンさんが固く握手を交わしていた。
「……ミーナさん……なんでこれ、組み木が外と中の二重構造なんですか?」
「……不思議ねぇ……」
- 148 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:14:39 ID:mK8rO6gM
- 組み木の前で二人並んで、完成したというこの物体を見上げる私とミーナさん。
その視界の隅で、せっせと動き回るハルトマンさんとルッキーニちゃん。
「さぁ、点火するぞ。……サーニャ」
「はい、どうぞ」
一通りバルクホルンさんと完成の喜びを分かち合い終えたのか、坂本さんが気合い十分に声を上げた。
そして、普段のテンションに戻ったサーニャちゃんが、坂本さんに何かを手渡す。
そう、それは……導 火 線 !
「………宮藤さん、離れましょうか」
「え…………はい、そうですね」
すすす、とその場を離れるミーナさんの視線の先を追うと、サーニャちゃんの手にある導火線。
ずい〜っと、地を這う導火線を追うと……私の真横、つまり組み木の中へと繋がっていた。
……い、いつの間に。
「よし、それでは……点火!!」
「点火!!」
全員がそれとなく離れると、坂本さんとバルクホルンさんによる点火式が執り行われた。
……キャンプファイヤーってこんなのだったかな?
火の点いた導火線は、勢いよく火花を散らしながら組み木へと突き進む。
そして、二重に組まれた組み木の中へと消えた。
ドンッ!……ヒュルルル…………ドッカァン!!
消えた導火線の代わりとばかりに、何故か夜空へと舞い上がったのは、なんと打ち上げ花火……なんと怒涛の30連発。
「サァアニャーッ!!」
「エェイラーッ!!!」
次々と打ち上がる花火を眺めつつ、なんとか自分を取り戻した様子のエイラさんとサーニャちゃんが花火に向かって声を上げる。
……たまやとかぎやは人の名前じゃなかったんだけどな……。
「ル、ルッキーニ……お前……」
「にひひ〜、どぉ?キレーでしょー」
人間とは、ウィッチとは、ただ上を見上げて生きるだけじゃ駄目なんだと私は思う。
ほら、こうして前を見れば、そこには地上で咲く大輪の花火が……
「……扶桑のキャンプファイヤーって過激なんだね、芳佳ちゃん!」
「違っ…ご、誤解だよ!リーネちゃん、これは違うからね!?」
どうやら、ルッキーニちゃんが残っていた未使用花火のほとんどを、あの組んだ竹の隙間へとセッティングをしていた模様。
竹と竹の隙間から噴き漏れる色鮮やかな煌めき。
そして崩れ落ちる坂本さんとバルクホルンさん。
「……フラウ、貴女も何かしていたわね?」
「あ、ミーナ酷ーい」
- 149 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:14:56 ID:mK8rO6gM
- 眉間を揉みほぐしながら、ミーナさんがハルトマンさんに問いかける。
ハルトマンさんは心外だと言わんばかりに頬を膨らませた。
「私はただ、台所にあったじゃがいもと栗を……」
…あれ?
今、何か聞こえたのは聞き間違いだよね?
悲しいけれど、これって現実なのよね。
数秒後、ミーナさんの悲鳴にも似た激が飛んだ。
「……総員、退避!!」
竹の隙間から一体どれだけの量を放り込んだのか、焼き栗が群れをなして襲い掛かってきたのは、それから間もなくの事だった。
◇
爆竹。
それは容易に作り上げる事の出来る危険物。
……皆さん、危険なので竹は燃やしちゃダメですよ?
そして、爆散しながら閃光を散らす、大輪の炸裂花火。
私達は岩陰で、見なかった事にして締めにと、小さな閃光花火を楽しんだのであった。
チリーン……
風に乗って、微かに風鈴の音が聞こえた。
嗚呼、今日はなんかドッと疲れたよリーネちゃん。
花火と風鈴とリーネちゃん。
三者の微かな笑い声が、緩く穏やかに浜辺に響き渡った。
おーわり
- 150 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 03:18:43 ID:mK8rO6gM
- 以上季節感スルーなCRwGA7CAでした。
ぬいぐるみエイラ……作れないかなぁ……無理そうだなぁ…
- 151 名前:名無しさん:2009/05/20(水) 05:07:06 ID:VhaPrV9Q
- >>131
>>138
>>150
まとめて申し訳ないけど乙! いきなりSS増えてびびったw
皆様良作GJ!
- 152 名前:名無しさん:2009/05/24(日) 21:09:04 ID:xPmRZLSw
- どうもesNTV3r0です。
ペリーヌ&ルッキーニなSSを投下させていただきます。規制をくらったのでこちらで
特に百合百合しているわけでもありませんが……3レスとなります。
滑走路から、いつも少佐が訓練なさっている所を見る。
少佐はもとより誰も居ない。既に訓練は終わっているのだから当たり前なのだけれど。
「何を……やっているのかしら、わたくし」
わたくしはそう呟き、持っている手紙を見た。
恋文――である。無論、少佐宛ての。
書き上げたまでは良いものの渡す勇気がわたくしには無い。
501が解散するまでには渡したいのだけれど、もしも拒絶されたら――と思うと尻込みしてしまう。
嗚呼、情けない。わたくしはうじうじと悩むなんか大嫌いだと言うのに。
溜息をついて空を見上げると、そこには灰色の雲が厚く立ち込めていた。
ますます気分が沈む。もっとも晴れていたからと言って自分まで晴れやかな気分になることはないだろうが。
そもそもどうして、十中八九誰も居ないことはわかっていたにも拘らずこんな所にわたくしは来てしまったのか。
多分、渡そうとする行為だけで自分を満足させたかったのだ。
臆病なわたくしには、それ位しか出来ないから。
そして、たとえ偶然少佐がいらっしゃったとしても、遠巻きにそのお姿を見るだけで、逆に少佐がわたくしを見つけて話しかけてこられるのを待つのだろう。
臆病なわたくしには、それが精一杯だから。
湿った風がぼんやりと立ちつくしているわたくしの髪を揺らす。妙に、冷たく感じた。
……帰ろう。ここにいても意味がない。
ゆっくりと基地へと踵を返した瞬間だった。
突然の強風があろうことかわたくしの手紙を攫い、向こうへと吹き飛ばした。
「ああッ!」
思わず悲鳴じみた声が出る。文面が文面だけに他人に拾われると目も当てられない。
人気のない場所に飛んで行ったのは不幸中の幸いだが、いつ拾われるか分かったものではない……急いで取りに向かわなくては!
× × ×
「確かこの辺りですわよね」
いつも少佐が忌々しい豆狸と訓練をされている場所から少し行った、ささやかな林のような場所。
恐らくここに手紙はある。一刻も早く見つけ出さないと。
木々を分け入って、進んでいく。慎重に地面を見回すこと数分……あった!
一際大きな木の根本、そこに手紙は落ちていた。これで最悪の事態は回避出来る。
わたくしは小走りで手紙の元へ行き、拾い上げた。
「良かった……」
しかし安心するに早かった。よく見てみると紙質が違う、大きさも違う、つまりはわたくしの手紙とは違う手紙と言う事だ。
「嘘でしょう!? なんなのよッ!」
紛らわしい! どうしてこんな所に手紙が!? 意味が分からない!
大いに憤慨し、腹立ちまぎれにその手紙を破り捨てようとした正にその時。
「手紙、返して」
「え!?」
咄嗟に上を向くとそこには木の枝に敷かれた毛布とその上に寝そべるルッキーニさんの姿があった。
「早く、返してよ……ペリーヌ」
どうやらここを寝床にしていたらしい。さっきのみっともなく騒いでいる様子を見られたかと思うと顔から火が出る。
「ま、まったく驚かせますわねッ! 返してさし上げますから降りてはいかが?」
「ん……」
身軽に木から飛び下りる彼女。その顔を見て、小さく息を飲む。
――泣いていたのか。
普段は喧しいまでに快活な彼女の表情は暗く沈み、その眼はうっすらと涙が浮かんでいる。
「どうか、なさったの?」
出来るかぎりの気遣いをこめて、尋ねる。
「ペリーヌには……カンケー無い、あっち行ってよ……!」
それに応えること無くルッキーニさんは礼も言わずに、わたくしからひったくったと言ってもいい位、手紙を乱暴に取った。
ただ心配しているだけなのに――そっけない彼女の態度にわたくしは軽い怒りを覚える。
わたくしは仏頂面で彼女から視線を外した。もう、こんな所に用は無い。早く手紙を探さなければ。
「あらあら! これは失礼しましたわねッ!」
きつい口調でルッキーニさんに別れを告げる。
何故かは知らないが独りで好きにすればいい、わたくしには関係無いのだから。
- 153 名前:名無しさん:2009/05/24(日) 21:09:31 ID:xPmRZLSw
- 「……待ってよ」
軽やかではない足取りで数歩進んだ時、後ろから声をかけられた。
ルッキーニさんに、呼び止められたのである。
「今度は何かしら?」
「やっぱり……やっぱり、しばらく一緒にいて?」
わたくし、あっちに行けと言われたばかりでしてよ――喉まで出ていた棘のある言葉をわたくしは飲み込んだ。
ルッキーニさんは小さくて、華奢な肩を震わせて泣き出していた。
見る見るうちに顔が涙やら鼻水やらでくしゃくしゃになっていく。
……これを放っておくほどわたくしだって薄情じゃない。
なによりも泣きやんでいた筈の彼女を再び泣かせたのはきつい言葉を投げかけてしまったわたくしに他ならない。
湧き上がる罪悪感、大人気ない態度をとった自分への羞恥心が燻っていた怒りの火を鎮めていった。
「構いません、わ」
それだけを言った。
「ありがとペリーヌ……あと、あっち行けなんて言ってごめん……」
彼女に謝られては世話が無い。慌てて自分も返答する。
「わたくしもその……狭量でしたわ、ごめんなさい」
「うん」
わたくしはルッキーニさんの側まで来た。彼女は何も言わず木の根元に座り、わたくしもそれに続いた。
ルッキーニさんは依然として膝を抱えて泣いている。涙を拭いもしないので、どんどん酷い顔になっていく。
駄目だ。もう、見ていられない。わたくしはポケットからハンカチを取り出し、嗚咽するルッキーニさんに差し出した。
「顔、拭いたほうがよろしくてよ?」
ルッキーニさんは何も言わず、素直に言われるままその顔を拭いた。
これで少しはマシになった。すぐ元に戻りそうだが。
それにしても未だに泣いている理由も、わたくしが一緒にいなければならない理由もルッキーニさんは教えてくれない。
傷ついた彼女の隣にはわたくしなんかより、シャーリーさんの方がふさわしいだろう。
ひょっとしてシャーリーさんと喧嘩でもしたのだろうか? ……だとすればこの状況も納得できる。
「……ロマーニャから、手紙が来たの」
涙の理由を推察していたら、唐突にルッキーニさんが口を開いた。
「わたくしの拾った手紙ね」
ルッキーニさんはこくりと頷く。
「マーマからの、手紙だった。最近は大変なことも多いとか、でも精一杯やっていってるとか、書いてあった」
「そう……」
故郷からの手紙――。わたくしの故郷から手紙が届くことはもう、無い。
「もうロマーニャに帰ろうだなんて思わないって決めたのに、急に帰りたくなって寂しくなって……」
「501に居るのは嫌かしら?」
私の問いかけにルッキーニさんは大きく首を振った。
「そんなことないよ! みんな優しいし、ネウロイはやっつけないといけないもん!」
「なら、みんなの所で泣けばいいの。独りで泣いても……一層悲しくなるだけですわ」
溢れる涙は自分の手で拭っても、また溢れるだけ。ガリアを、家族を喪った時わたくしはそれを知った。
「駄目だよペリーヌ……。シャーリーには見せたくないもん、泣いてるとこなんて」
シャーリーさんの所に居ないのはその所為か。
彼女なら、きっとルッキーニさんのことを理解し、包み込んでくれるだろうに。
無理をして背伸びなんてしなくてもいいのだけれど。
だが、わたくしにはルッキーニさんの気持ちがわかる気がした。
わたくしも、後から後悔するようなつまらない意地ばかり張っているから。
- 154 名前:名無しさん:2009/05/24(日) 21:09:58 ID:xPmRZLSw
- それに彼女がそのつもりならわたくしにも考えがある。
「ちょっと失礼するわよ……」
わたくしはルッキーニさんとの距離を詰めて、彼女の肩をぎこちなく抱いた。
思った以上に小さい体に、衝撃が走るのを感じた。急な行動に驚いているのだろう。
「ニャッ!? 何さペリーヌ!?」
「みんなの所に行くつもりがないのでしょう? だから……わ、わたくしがそばに居てあげますわッ!」
もう少し落ち着いた声を出すつもりが、無意味に大きな、叫ぶような声になってしまった。
慣れないことをするものじゃないと、わたくしは痛感した。
「どうして?」
「泣いている貴方を放っておけないからですわ! 心底嫌なら消えますけど!?」
声のトーンがどうしても下げられない、緊張で頭の中が真っ白になりそうだ。
「嫌じゃないけど……」
「じゃあ問題ありませんわね」
「う、うん」
ルッキーニさんはそう言ってわたくしに体を預けた。
密着した彼女の体温や息使いを感じるのはこそばゆいような恥ずかしいような不思議な感覚で、自然と肩にまわした腕の力も強くなる。
実のところ、わたくしの暴挙に驚いたからなのかは判らないが、もう彼女は泣きやんでいた。
泣きやんではいたものの、わたくしはうまく頭が回転しなかったし、ルッキーニさんも黙って大人しくしていた為にわたくし達はそのままの体勢でいた。
「もう……大丈夫」
しばらくして、おもむろにルッキーニさんは立ちあがった。
白状してしまえば、彼女の温もりはかなり心地よかったので、名残惜しかった。
「本当?」
わたくしは残念な思いを押し隠して、彼女に聞く。
「うん、ありがと。意外と……優しいんだね、ペリーヌ」
優しい。ここに来て初めて言われた言葉だ。頬が上気するのを感じる。
こんなに優しいなんて言葉が嬉しく感じるなんて初めての経験だった。
「意外とは失礼ですわね、わたくしはいつだって優しいわ」
顔を見られないように、ぷいと横を向いて答えた。
「ニャハハ、そうだね!」
大輪の花が咲いた――そんな比喩が良く似合うルッキーニさんの笑顔を見て、わたくしは彼女が本当にもう大丈夫なのだと思った。
「じゃあ帰ろっかペリーヌ!」
「ええ、ルッキーニさん」
笑顔のまま差しのべられた彼女の手をわたくしも笑顔で握る。
そうして、わたくしはルッキーニさんと手を繋いで帰った。
……少佐への手紙をすっかり忘れて。
了
以上です。
SSは書くのが本当に難しい……こんなんで大丈夫かな。
拙作にお付き合いいただき本当にありがとうございました。
- 155 名前:名無しさん:2009/05/24(日) 22:56:48 ID:OSkVyjnw
- >>154
GJ!いい話でしたよ。不器用だけど優しいペリは大好きだ
…でも少佐への手紙は早く回収するんだ!拾う人によってはとんでもないことにwww
- 156 名前:名無しさん:2009/05/24(日) 23:58:51 ID:/NaXgBIM
- >>154
優しいペリーヌいいですね。GJ!
さてこんばんは。「変化球」で初めて微エロがついてちょっとドキドキしてしまったLWqeWTRGです。
本スレでエイラーニャ物語進行中のようですのでこちらに。
最近はリーネイラやら芳イラなどサーニャさん以外が盛り上がっているようですがやっぱり自分はエイラーニャ。
4レスです。
- 157 名前:名無しさん:2009/05/24(日) 23:59:46 ID:/NaXgBIM
- 「なッ、エイラさん…!?」
ついにヘタレを克服したんですの? 克服できたんですの?
「あの、サーニャさん…? これは…」
「あ…ペリーヌさん」
「エイラさんにこの…、膝枕だなんてそんな度胸があったんですの?」
にわかには信じがたい光景ですが…、いいえやはり信じられませんわ!
膝枕は膝枕でも、サーニャさんの方を向くなんてエイラさんにはぜっ…たいに無理ですわ!
「ううん、これは私が勝手に…」
ですわよね、やはりエイラさんはエイラさんでした。
せいぜい寝返りがいいとこですわ。
「膝枕してエイラをこっち向けたの…」
「貴女からしないと膝枕なんて到底無理ですわ…ね…、こっちに向けた?」
膝枕だけではなくて? 何故ですの?
「こうしてるとエイラが甘えてくれるかなぁ、って。それに私もお母さんになったみたいで…」
こっ、この子は…。天然で相手を困らせてますわね…。
エイラさんも大変ですこと。まぁヘタレだから大変なんでしょうけど。
「う、うん……」
「ひゃ…あ…」
でも身動きされてそんな反応してるようじゃまだまだですわね。
ってエイラさんどこに手を置いて!
睡眠中はヘタレでも自由に動けるんですのね…。
- 158 名前:名無しさん:2009/05/25(月) 00:00:43 ID:t1o8nSuw
- 「あ、エイラ…だめ…」
「まぶし…い…」
なっ、ベルトの中に顔を…!?
なんてことを!
「エイラの…えっち…」
うわぁなんか凄いですわ…。
寝てるからとはいえ、こんなことしていたと本人が知ったらどうなるんでしょう。
興味が湧きましたわ。知的好奇心です。
「エイラさん! 貴女なにをしてるかわか――!」
「しーっ! ペリーヌさん、いいの。私嬉しいから…」
ああもう! 嬉しいのはその方がヘタレでこういうのが新鮮に感じられるからでしょうに…。
それに嬉しいじゃなくて興奮…。いやだ、わたくしったら何を…。
とにかくっ! 少しは攻めたほうがよろしくてよ?
ま、まあ私が言えることではありませんけど…。
「うん、ありがとうペリーヌさん…」
「お礼なんかいりませんわ。どちらにしてもそろそろお夕食の時間ですから起こしてさしあげなさい」
「あ、はい…」
まったくこの子は…。
「エイラ、もうすぐごはんだから起きて」
「ん…ぅん……わかっタ…。ふ…あぁ……ぁむ」
「ひゃ…あぁん…」
欠伸に…。なんか見てるこっちが恥ずかしかったですわ…。
ほんっとにこの方たちは…。
……。そうね、面白いことを考えましたわ。
- 159 名前:名無しさん:2009/05/25(月) 00:01:54 ID:t1o8nSuw
- 「サーニャさん、エイラさんの頭をおさえてごらんなさい」
「え? わかり…ました…。えいっ」
ベルトの上からおさえますか…。
まあいいですわ。そっちのほうが効果ありそうですし。
「ン? そういやなんだコレ? うりゃ」
「あっ! エイラぁ…やめ…」
もう逃げられませんわね。いろいろと。
ご愁傷様、エイラさん。
「…サーニャの声? …まさか、コレは…!」
「やっ、だめ、あんまり変に触っちゃ…」
「サーニャの…膝枕? ―――ッ!!!」
「あぁっ、んっ! う、動かないでぇ!」
おほほほ! 成功ですわ!
ヘタレなエイラさんに強制膝枕は嬉しいことでしょう。
サーニャさんもしっかりおさえつけて余計動きに敏感に…。
我ながらうまくいきすぎた気がしますが…。でも面白いから良しとしましょう。
…おや?
「はぁっ、はぁっ、…エイラ?」
「………」
「…気を失ったようですわね」
ちょっとやりすぎたかしら…。
「エイラさん、起きなさいエイラさん」
「エイラ…」
「う、うぅ…サーニャが、サーニャがぁ…」
「エイラ、私は大丈夫だから起きて、ね。ほら、おはようのちゅ」
!!!?
こ の 子 は 本 物 の 小 悪 魔 で す わ ! !
- 160 名前:名無しさん:2009/05/25(月) 00:03:10 ID:t1o8nSuw
- 半分くらいは自分のせいで気絶させたような相手にキ、キキキ、キスですって!?
あぁエイラさん…再び気絶…。
無理もないですわね…。
普通の方でも耐えられそうな気はしませんわ。
「エイラ? ねぇ、起きて。エイラったら」
自分のしたことわかってるのかしら…。
それにそんなにギュッと抱きかかえていたら一生起きれませんわよ?
魔性の女、サーニャ・リトヴャク…。
彼女が相手ではエイラさんのヘタレは一生治らないでしょうね。
サーニャさん……恐ろしい子!
END
―――――
以上です。
小悪魔の意味が違ってる感があるけど気にしない。
久しぶりに48手より「第7手 膝枕・顔の向きが逆」でした。
では失礼します。
- 161 名前:名無しさん:2009/05/25(月) 00:27:17 ID:jHwXw0KY
- >>160
GJ!!
さぁにゃ絶対わざとだろwww
エイラさんしあわかわいそうwww
ペリーヌ視点って結構珍しくて素晴らしかったです!
- 162 名前:名無しさん:2009/05/26(火) 20:06:50 ID:KpJhtFcA
- すんごい遅レスだけど勘弁。
ようやく読破。
>>131
やっぱりこのコンビは安定感ありますね。
エイラさん……。とにかくGJ!
>>138
トゥルーデがその後どうなったのか続きを……
いやエイラーニャのその後も気になる! GJ!
>>150
夏ですねえ。何だかすごい目に浮かびます。
鬱積してるサーニャ、後で大変な事になりそうでw GJ!
>>154
飛んでいった手紙は何処へ? つまり続きがあるって事ですね?
期待してますGJ!
>>160
ペリーヌ視点が珍しい。悪魔の囁きにもワロタ
魔性の女サーニャ、次は何をw 楽しみですGJ!
やっぱりこのスレの職人はレベル高杉! 最後にもう一度皆様GJ!
- 163 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:25:09 ID:qgMIZ.do
- 魔女の大鍋。
それは混乱や大騒ぎといった慌ただしい様子の例えでもある。
これは、とある扶桑の魔女の持ち込んだ鍋に関するお話。
◇
和気あいあいと楽しい食事風景でお馴染みの夕食時。
夜間哨戒前に起きてくるサーニャも交ざり、501隊において急を要するミーティングを除けば、隊員全員が顔を揃える一番の機会であったりする。
日々交代で食事を作ったりしているのだが、今晩のメニューは料理の得意な宮藤特製の扶桑の鍋ということもあり、テーブルでは普段以上に賑わいを見せていた。
「そういえばリーネ、今日は宮藤を手伝わなくていいのか?」
他愛ない話も一通り花を咲かせた後、ふと美緒がリーネに尋ねた。
「あ、はい。今日の料理はあまり手が掛からないから、って」
リーネは楽しみですねー、と朗らかに笑う。
ちなみに本人は無意識なのだが、リーネは手持ち無沙になると何の気無しに手を使って何かを行おうとする。
おかげで隣に座るペリーヌの髪先が次々と縦巻きロールに変わり果てているのだが、未だペリーヌは気付かない。
そんな様子を視界の端で眺めながら、テーブルに突っ伏したエーリカがからかう様に口を開く。
「えー、じゃあ、今日のミヤフジの料理は手抜きなのー?」
「む、それが本当ならば聞き捨てならないな。少し様子を……うぉっ」
エーリカの言葉をそのままの意味で取ったのか、裏的な意味があったのかは分からないが、席を立とうとしたゲルトルートの足をエーリカが即座に払い、強制的な着席を促した。
いきなり何をする、と睨むゲルトルートと知らない、とそっぽを向くエーリカ。
あらあら、と微笑ましく二人の様子を見ていたミーナは、ふと、普段とは違うとある隊員の様子に気が付いた。
「ルッキーニさん、どうかしたのかしら…?」
「ああ、大丈夫ですよ、ミーナ中佐」
見れば、何やらウニュウニュと極力テーブルから遠ざかる様にシャーリーにしがみついている。
時折、様子を見てはルッキーニを宥めていたシャーリーは、頬を掻きながら事情を説明した。
「いや、ルッキーニがガスコンロ初めて見る、って色々弄ろうとしてたから止めようとしたんですけど……」
「……けど?」
「…あー、その止める直前にスイッチ捻っちゃったみたいで前髪が…その…」
「なんかね、火がね、いきなりシュボーッ、って……うぅっ、怖かったよぉー」
ウジュー、と潤んだ瞳を上げるルッキーニ。
- 164 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:25:45 ID:qgMIZ.do
- なるほど、見れば前髪数本がチリチリに焦げていた。
話した事で思い出したのか、すぐにまたシャーリーの腰の辺りにしがみついて顔を沈めた。
その様子にかける言葉が見当たらないのか、苦笑いを浮かべるしかないミーナだった。
その時、ルッキーニの様を横目で流し見ていたペリーヌは、こっそりそろそろとドアに近付く人影に気付いた。
「…あら、エイラさん?」
「…ぅ」
いかにもバツの悪そうな顔でエイラが振り返る。
その前には寝起きのサーニャが少しふらつきながら立っている。
なんだ、と少し騒がしくなった周囲に気付いたのかサーニャが目を擦りながら振り返った。
「……あれ、エイラ…どこかいくの…?」
「…ぅぅ」
「え、エイラさん!まさか、未来予知の能力でっ…!?」
突然リーネが怒った様に叫ぶ。
何を思ってそう言ったのかは不明だが、エイラは耳も尻尾も出てはいない。
あまりにも突然かつ突飛な発想に一瞬だが時が止まり、リーネの後ろにちっちゃいリーネが点を残して通り過ぎて行った気がした一同だった。
が、もし本当ならば規則違反。
ミーナや美緒達もまさか、とエイラを見る。
けれども当のエイラは、鳩が豆鉄砲をくらった様な顔でリーネを見ていた。
「り、リーネ…あの……」
「嫌いな食べ物が出るからって、酷いです!好き嫌いはいけないんですよ!!」
「……あー?いや、そういう訳じゃなくて……」
お前、私をなんだと思ってんだ…、とがっくりと肩を落とすエイラ。
周囲一同も、浮かしかけた腰がずり落ちる様に椅子へと沈んだ。
その様子を見て流石に恥ずかしくなったのか、リーネもごめんなさい、と小さく縮こまりながら椅子に座った。
「……はぁ、それで、エイラさん?一体どうなさいまして?」
程よく気も緩んだが、逃がしませんわよ、とペリーヌが追撃をかける。
読まれた、と密かに数歩程歩みを進めていたエイラはまたうぐ、と動きを止めた。
そして嘆息を一つ、口元に人差し指を当てると小さく呟いた。
「……耳、澄ましてみればわかる」
チラリと見たエイラの視線の先にあるのは厨房。
訝しがりながらもとりあえず耳を澄ましてみると、確かに何か聞こえてくる。
そう、確かに何人かには嫌に聞き覚えのあるそのメロディーが。
『ぐつぐつ、にゃーにゃー。にゃーにゃー、ぐつぐつ。ぐつぐつ、にゃーにゃー♪』
歌、か…?
誰ともなく呟いた声が聞こえたのもつかの間。
- 165 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:25:58 ID:qgMIZ.do
- リーネとペリーヌがまさか、と震えて怯え、勘が働いたのか何故かルッキーニまでもが凍りついた。
エイラはしっかりとサーニャの耳を塞いでいる。
「え、と…何の歌だこれは。何か、とてつもなく縁起の悪そうというか、歌詞が危険な気がするのだが……」
ゲルトルートは額を押さえながら顔をあげた。
なんと言うか、脳内でのリフレイン率が激しいのだ。
ゲルトルートは振り払うように二度三度と被りを振った。
「……宮藤が知ってる、って事は扶桑の歌ですかね、少佐」
「…流石に私も知らんな」
その様子を見てシャーリーが言葉を引き継ぐ。
話を振られた美緒は、お手上げ、と肩を竦めた。
「……リーネ、ペリーヌ。アレってさ、この前のアレ、だよね…?」
久しく見たことのない様な引き攣った顔でエーリカが二人を見る。
当の二人はビクゥ、と端から見て分かる程に全身の毛が逆立った。
二人は俯いたままお互いを見合い、どんよりと重たい息を吐いた。
「……実は」
眼鏡を手で押さえながら、ペリーヌがその¨出来事¨の説明をした。
……………。
………。
…。
「……あー、なんだ…つまり、今、宮藤が作っている料理が、もしかしたら、以前お前達と話をしていた「猫鍋」かもしれない、と。そういう事だな?」
「……そうですわ、坂元少佐」
静まり返る食堂。
改めて見れば、皆多少なりとも顔が引き攣っている。
更に見渡せば、先程のペリーヌの説明に乗じてエイラとサーニャの姿も消えていた。
常識的に考えればありえない、とは思うものの、何を隠そう相手はあの宮藤芳佳。
まさかを現実にするウルトラガールだ。
「……仕方ない。そうは言っても確証はないんだ。少し様子を見に行こうか」
美緒はミーナに目配せをした。
ミーナはそれを受け、重々しく頷くとカッと目を見開いて命令を飛ばした。
「バルクホルン大尉、リネット軍曹の両名は至急に台所へと赴き、問題の勢力及び情報の収集を行いなさい。また、問題の……」
「いやいやいやいや、まてまてまて。あの…ミーナ?」
思わずいつもの様に承諾してしまいそうになったゲルトルートだが、慌てた様にミーナに尋ねる。
「どうしたの、トゥルーデ?」
「何故に、私とリネット?」
至極真っ当な質問。
その質問にミーナは暗い影を背中に背負い、俯きながら呟く様に答えた。
「…………ない…」
「……え?」
- 166 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:26:12 ID:qgMIZ.do
- ぼそりと答えたミーナの言葉に首を傾げるゲルトルート。
するとミーナはキッと顔を上げて叫ぶ様にして吠えた。
「仕方ないじゃない!!私達だって…私達だって料理上手なら!!!」
「……あれ中佐、「達」ってあたしらも入ってるんですか?」
さりげなく周囲を巻き込むついでに大事なことなので二回以下略的に宣言する
ミーナ。
ふと気付いたシャーリーの突っ込みを軽くスルーして睨み合いを続けるミーナとゲルトルート。
しかし、ちょうどその瞬間
「すみません、お待たせしました〜!」
芳佳が笑顔で土鍋を持って現れた。
その時、一瞬にしてピタリと時が止まった様に思えたと、とある501隊員は後に語る。
更にごくり、と全員が息を飲む音が確かに聞こえたそうな。
「失礼しますねー…よっ、しょ」
三台あるガスコンロに一つずつその問題の土鍋をセットしてゆく芳佳。
ただの土鍋が、この時程存在感溢れる存在だったことは他に無いのではなかろうか。
無言で土鍋の蓋を見つめる一同。
えもいわれぬ緊張感の漂う空間がそこにはあった。
そんな中、多少口を引き攣らせながらエーリカが口火を切った。
「……でも、本当に猫鍋だっ…むぐ!?」
瞬間にゲルトルートに口を押さえられるエーリカ。
えもいわれぬ緊張感再び。
さりげなく全員の視線が芳佳へと集まる。
芳佳は厨房へと向かっていた足を止め、ゆっくりと振り返った。
「猫鍋…?」
その目は、怪しく光った気がした。
ゆらゆらと揺らめきながら食卓へと舞い戻る芳佳。
少し下がった頭は前髪を垂らし、芳佳の目を見えなくする。
芳佳はピタリ、と食卓前で立ち止まると
「……猫鍋って……なんですか?」
首を傾げて尋ねた。
なんだっけ、と考え込む芳佳は本当に分からない様だった。
「……芳佳ちゃん、今日のお鍋って何鍋なの?」
やっぱり考え過ぎだったか、と力の抜けた一同。
芳佳はリーネの問いに少し自慢気に答えた。
「今日のお鍋は扶桑の郷土鍋だよ、リーネちゃん」
そういいながら芳佳は鍋の蓋をずらして横に立て掛ける。
そして、その鍋の中には――
「………あれ?」
「……これって」
「トウフ…だったっけか?」
エーリカ、ペリーヌ、シャーリーと次々と鍋を覗き込むウィッチ達。
そこにはシャーリーの言う通り、半透明なダシの中に浮かぶ白く薄く光沢を放つ豆腐達が所狭しと浮かんでいた。
- 167 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:26:24 ID:qgMIZ.do
- というか豆腐しか浮かんではいなかった。
「宮藤、今日の夕食は湯豆腐なのか?」
「まさか、ここからが本番ですよ〜」
美緒の問い掛けに、芳佳はにこにことした様子で台所へと戻ると、食堂へと籠を抱え持って現れた。
「わ、芳佳ちゃん、手伝――」
両手に抱える程のその籠の大きさに、リーネが手伝おうと近付いたのだが、リーネはその場に踏み止まる事となった。
と言うのも
ババババババババババッ!!!!
籠の中から木霊する謎の音。
何か。
そう、何かが跳ね回っている音だろう。
どこぞの音速を超えたウィッチのストライカー音より心臓に悪い。
そして芳佳に一番近くに座っていた美緒は、そっと籠の蓋を開け中を覗き込んだ。
「……おい宮藤」
「はい、坂本さん」
極力冷静に蓋を閉める美緒。
なんと言うことはない。
見てはいけないものを見ただけだ。
「……これは?」
「ドジョウです」
ドジョウ…?、と周囲で声が上がるが今はそれどころじゃない。
何しろ数十センチ四方の籠の中にはびっちりとドジョウの軍勢だ。
いつぞやのキューブネウロイの方がまだ可愛いげがあるというものだ。
しかも
「………生きてるが」
「仕様です」
ぴしゃりと返して下さる芳佳大先生。
戦わなくちゃ、現実と。
三十六計逃げるにしかず。
しかし、背後ではリーネが固まっていて美緒は逃げられない。
「……おい、宮藤」
「はい、坂本さん」
つい先程も聞いた気のするやりとり。
しかし先程と違い、美緒は短く呼吸をすると、はっきりと聞いた。
「今日は……何鍋なんだ?」
ごくり、と誰かが唾を飲む音が聞こえた。
緊張の走る食堂の中で、芳佳は普段と変わらない笑顔で、にこやかに宣言して下さいました。
「はい、ドジョウ鍋です」
- 168 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:26:51 ID:qgMIZ.do
- ◇
そしてこの日、また一つ扶桑と言う国の伝説が間違った方向に轟いた。
そして、煮え立つ鍋に笑顔でドジョウをほうり込んでゆく芳佳に、軽く戦慄を覚えた一同であった。
この後の事については、多くは語るまい。
ただ、はっきり言える事は、ミーナと美緒は最終的にはしっかりと完食し、エイラは夜間哨戒から帰って来た時に、自身の部屋の前にエイラさんへ、とメモ付きで鎮座する土鍋を前に固まりついていた、と言う事だけである。
食わず嫌いはいけません。
嫌いなものは嫌いだけどね。
おわーり
- 169 名前:名無しさん:2009/05/28(木) 02:28:58 ID:qgMIZ.do
- 以上CRwGA7CAでした。
タイトルは「魔女の大鍋」で
このまま落ち着くなら6月からは本スレに戻っても怖くないかな……
- 170 名前:名無しさん:2009/05/29(金) 00:00:07 ID:AdnbG1cM
- >>169
GJ! まさかのドジョウ鍋、そりゃトラウマものでしょうよw
芳佳も平然とやりそうだから困るw
- 171 名前:名無しさん:2009/05/29(金) 18:09:34 ID:KHT46AUs
- >>169
『ぐつぐつ、にゃーにゃー。にゃーにゃー、ぐつぐつ。ぐつぐつ、にゃーにゃー♪』
怖い唄ですねw読んでいる側もどんな鍋が出てくるのかビクビクでした。
それにしても宮藤は何でも出来るなー。最終的には田植えとかしちゃいそう。
- 172 名前:名無しさん:2009/05/30(土) 10:11:04 ID:dEWcDB8I
- ドジョウ鍋は精力が付くからミーナともっさんの夜は一段と激しいものに・・・
- 173 名前:名無しさん:2009/05/31(日) 11:31:44 ID:KjPZGsKk
- >>169
GJ! なんとなく牧歌的だけど怖いw
さすが扶桑料理の専門家ですね。面白かったです。
>>171
コミック版では確か田植えしてたような>芳佳
- 174 名前:保管庫 ◆YFbTwHJXPs:2009/05/31(日) 23:01:13 ID:blWfIm2g
- どうも、保管庫管理人です。
業務連絡ですが、感想フォームの実装に際して鯖が移転となりました。
次スレ以降テンプレの変更よろしくお願いします。
新保管庫:
ttp://lilystrikewitches.rejec.net
SS本文の最後に「コメントを見る・書く」というリンクがあり、そこから投稿できるようになっています。
また、トップの作品一覧の項に通信室というページが新設され、最近投稿されたコメントなどを確認することが出来ます。
とりあえずサンプルとして自分の拙作に脚注など入れておいたので、こんな感じで過去作に気軽に書き込めるところが出来たということで。
もちろん新しい作品にはスレ上でのGJ推奨ですが。
あとdion規制で書き込めないので誰か本スレにURLだけでいいので張っといてくださると助かります。
業務連絡終わり。
- 175 名前:名無しさん:2009/06/01(月) 02:59:49 ID:wlrqdxa.
- >>174
こちらにもわざわざ乙です!
早速寄らせて貰いますね。
- 176 名前:名無しさん:2009/06/03(水) 00:55:15 ID:eZgZyZtg
- もっペリ投下します。10話の部屋にいっしょにいるところの話。
4レスの予定。
はじめて会ったときは寂しそうに映って見えた。
それがいつから、そんなふうに見えなくなったのだろう。
私たちはまだ、互いのことをよく知らない。
「お話ししなければならないことがあります」
ざあざあざあざあと窓の外で雨の音が次第に強まるなか、
ともすればかき消されてしまいそうな、それでも懸命にうちにあるものを絞り出そうとする声で、
ペリーヌはそう切り出した。
なんだ、と返すと、ペリーヌはしゅんと視線をうつ向けた。
足が小刻みに震えている。
今から叱られようとしている子どもでも見ているかのようだった。
なにか打ち明けようとしているのがわかった。それをひどく恐れていることも。
けれどその内容まで、私にはわからなかった。
長い沈黙。
雨の音がいっそう際立つ。
どうしたんだと耐えきれず言おうとしたところで、「実は――」
重く閉ざしたペリーヌの口がようやく開く。
「このことはわたくしの責任でもあるのです」
そうしてペリーヌは語り出した。
自分が宮藤に決闘を申し込んだこと。
その最中に警報が鳴って、単機先行しようとする宮藤を止められなかったこと。
「だから、宮藤さんを責めるなとは申しませんが――」
ペリーヌは深々と頭を下げる。
宮藤をかばっているつもりなのか。皮肉や憎まれ口をまじえながら。
なんだかそれが、私にはおかしかった。
「ああ、わかっている」
宮藤のせいなどではない。もちろんペリーヌのせいでも。
「これはただ、私がふがいなかっただけだ」
「いえ、わたくしはそう言いたいわけではなく……」
「否定するな。そう言われると、私がつらい」
このことは全部、私のわがままなんだから。
ふがいない。そのとおりだと思う。
遅かれ早かれ、こうなることはわかっていた。ミーナにだって言われたことだ。
覚悟はしていた。ただ、思ったよりも早かったが。
今回は生きながらえたが、おそらく次はないだろう。
次は、命はない。
『それでも飛ぶのね』
ミーナの声が蘇ってきた。
ああそうだ。それでも私は飛ぶことをやめない。やめたくない。
我ながら愚かだと思う。
しかしそれがいけないことだとは私には思えないのだから、なおさらたちが悪い。
まあ、別にかまわないだろう。きっともう、いくらもないのだから。
- 177 名前:名無しさん:2009/06/03(水) 00:57:04 ID:eZgZyZtg
- 「だから、頭を上げてくれないか」
「そういうわけには」
「ほら、早く」
「はい……」
しぶしぶ、不服そうに、ようやくペリーヌは頭を持ち上げた。
その顔は強ばっている。
「しかし――」
と、ペリーヌは人差し指を立て、せきを切ったように、
「だいたい少佐はあの子に甘すぎるんです。
今まで世界を守ろうと戦ってきたのはわたくしたちです。
なのにあの子ったら、突然やって来て、少佐に怪我までさせて。
少佐が無事だったからよかったものの……。
たしかに、あの子は少佐のために頑張りました。全力で魔法を使って。でもっ――」
なんなんだそれは――
「ペリーヌ!」
とても聞いていられなかった。身が引き裂かれそうだった。
だから、思わず叫んでいた。
しまった、と思った。
叫び声に硬直したペリーヌを、手で招き寄せる。
ペリーヌはベッドのすぐ傍らで、両膝を床についた。
そしてまた、頭をかしげる。
こいつ、そんなに叱られたいのか――まあちょうどいい。
ペリーヌの頭に手をやり、撫でた。
ふわり。
手のひらがくすぐられる。気持ちいい手触りだった。
「ペリーヌもつきっきりで看病してくれたそうだな。本当に感謝している」
ありのままを伝えると、ペリーヌはへっ、と声を出して顔をあげ、そして笑った。
なんだ。ずっと泣いたり怒ったりだったのに。そんな顔もできるんじゃないか。
ありがとう、と私は言った。
「だから、宮藤のことを許してやってくれないか」
そう言うと、ペリーヌの表情は変わった。眉がつり上がる。
でもそれは嫌悪などではない。
「また少佐はあの子の肩を――」
そうしてペリーヌはまた宮藤のことを言う。皮肉や憎まれ口をまじえながら。
そこで気づいてしまった。
おそらく本人は気づいていないのだろう。
ペリーヌの話しぶりを見ていて、頭のなかで引っかかっていた。ずっと不思議だった。
なぁ、ペリーヌ。お前はこんなにおしゃべりだったか?
私の前ではどういうわけか口下手になってしまうお前が。
なのにどうして宮藤のことだと、そんなに喋りたがるんだ。
無言でじっと、私はペリーヌを見つめていた。
そんなことに構わず、ペリーヌは話すのをやめない。
それはとても楽しそうで。
なんだかおかしくなってきて、私は笑ってしまった。くすくすという笑い。
「どうかしましたか?」
「宮藤の話をしているお前が、あまりに普段と違うものだから」
私にはそんな顔見せたりしないくせに。
なにを考えているのだろう、そんなことが頭によぎった。
「そ、そうでしょうか」
「ああ。いきいきしている」
「そっ、それはその……あの子がわたくしのペースを乱してしまうからです」
ぶんぶんと手のひらを振りまわし手のひらをペリーヌは否定する。
「そうか?」
「そうです。そうに決まってますわ」
本当にそうなのか?
気になって、でもそれ以上訊くことはしなかった。
その代わりにか、よかった、と一言、口からこぼれて出た。
- 178 名前:名無しさん:2009/06/03(水) 00:59:12 ID:eZgZyZtg
- 「よくありませんわ」
「いや、私がよかったんだ」
そうなのだと思う。
胸にずっとつかえていたものが、ようやく取れた。だから、よかった。
「ペリーヌ。お前は私といるといつもよそよそしいから。
いつもというわけでなく、私の前でだけ。
だから、お前がそうやって宮藤のことを話したり、宮藤といっしょにいるのを見ていると、
その……なんと言ったらいいんだろうな」
言いよどむ。
うれしい――違う。なごましい――違う。ほほえましい――違う。
どれも本当のことで、けれどこの気持ちの芯の部分には達していない。
念入りに言葉を吟味していって、ようやくぽつりとつぶやくように言った。
「うらやましかったのかもしれないな」
言い終えて、たまらず苦笑した。
なにを言っているのだろう、私は。
でもそれが、最も似つかわしいような気がする。
うらやましい――お前にそうやって言われる宮藤のことが。
こんな気持ち、ペリーヌにはわかるだろうか。わかりっこないだろうな。
案の定、ペリーヌにぽかんとした顔をされてしまった。
「うらやましい、ですか?」
頼むから復唱しないでくれ。
ああ、とぶっきらぼうに私は答えた。
「すまない。忘れてくれないか」
「はあ。少佐がそうおっしゃるのでしたら」
「…………」
「少佐?」
ペリーヌは小首をかしげて私を見てくる。私は顔をそらした。
「やっぱり今のはなしだ。忘れてくれの方だ」
はあ、と鈍くペリーヌはうなずいた。それを確認して私は、
「そのかわり――」
と、ペリーヌの手を取り、ぐいと引っ張った。
ペリーヌの体は軽く持ち上がった。
柔らかくて華奢な体躯。それがベッドに上半身だけ起こした私の上に来る。
「な、なにをっ!?」
「なにをされたい?」
へっ? とペリーヌはとぼけた声を出すと、その顔がみるみる真っ赤に染まっていく。
ペリーヌは口のなかでもごもごとなにかをつぶやくが、なにを言ってるかわからない。
さらに私が手を引くと、ペリーヌはバランスを崩し、仰向けに寝っ転がる。
こうなっては俎板の鯉だ。
そうして無用心になったペリーヌの腹を、すう、と上から下に指先で撫でた。
「ちょっ、しょうさっ、なにをなさいますのっ……?」
その問いかけに、私は行動で答えた。
私は左手を制服の下の隙間からつっこんだ。ペリーヌの直の肌に触れた。
そして爪を立てた指先をせせこましく動かして、腹をくすぐってやった。
きゃん、とペリーヌは鳴いた。
こそばす。
そうしたら、私の前でも笑ってくれるか。いきいきと。私に向けて。
もっとそういう顔を、私にも見せてくれないか。
じたばたともがき出すペリーヌを私は力づくで押さえつけ、次いで無防備な脇腹へと指を移動させていく。
ひゃっ、とまたペリーヌは鳴いた。
私は空いた右手でペリーヌの制服のボタンを下からはずしていく。
そしてとうとう脇の下だ。
「そっ、そこだけは……」
笑い声まじりになんとか、ペリーヌは懇願してくる。
「ほう。そうかそうか」
が、やめてなんかやらない。
ペリーヌはさらにだらしない笑い声をあげる。
それはどうして、こんなに私の心をかき乱してくるだ。
くそう。
心のなかで声が出る。
くそっ、くそっ、くそっ……。
- 179 名前:名無しさん:2009/06/03(水) 01:00:33 ID:eZgZyZtg
- 「なにやってるの?」
声がした。私でも、ペリーヌでもない。
その主はハルトマンだった。ドアがおそらくノックもなしに開けられて、その前に突っ立っている。
嫌なところを見られてしまったな……。
すっかり夢中になっていて、存在すら気づかなかった。
私はくすぐる手を止めた。ああ。せっかくいいところだったんだがな……。
「こ、これは、えっと、つまり……」
しどろもどろにペリーヌはなにか取り繕おうとするが、なにを言いたいかわかるわけない。
だから代わりに、私が訊いた。
「そっちこそ、なにかあったのか?」
「ブリーフィングルームに集合。なんかあったみたい」
「そうか」
一体なんだと言うんだろう。なにやら嫌な予感がする。
「まあ、ゆっくりしてて」
それだけ言ってハルトマンは行ってしまった。
ゆっくり……いや、そういうわけにもいかないだろう。
「行ってこい」
と私は言って、手をほどいた。
ペリーヌはベッドから起き上がって乱れた服を直し、
「それでは行ってまいります」
そう言い残すと私に背を向け、ドアの方へと駆けていった。
その背中に向かって、私は一言、声をかけた。
こんな言葉、使ったのはまだずっと幼かったとき以来だ。
どうしてこんなことを言ってしまったのだろう?
――いってきますって言われたからだな。だから、つい。
「いってらっしゃい」
以上です。
もっさん→ペリーヌってあんまりないよな(そもそももっペリ自体、近頃……)と思って書きました。
なんかいろいろおかしくなってしまいました。すいません。
タイトルは「みえない」です。OsqVefuYでした。
あと関係ないけど、ペリーヌの中の人お誕生日おめでとうございました。
- 180 名前:名無しさん:2009/06/03(水) 17:25:27 ID:OYm9Foi6
- >>179
GJ!
しんみり和んだ
ペリーヌと仲良くしたいもっさんとか最高だじぇ
- 181 名前:名無しさん:2009/06/03(水) 23:36:41 ID:Ii0VyLMo
- もっさん→ペリーヌとか最高じゃないか!GJ!
10話のもっぺリ具合は大好きだじぇ
- 182 名前:名無しさん:2009/06/04(木) 02:03:17 ID:RMkJ9i7M
- >>179
GJ! イイハナシダナー
さりげに妬いてるもっさんとかイイ感じですわー
もっペリごちそうさまでした。
- 183 名前:名無しさん:2009/06/04(木) 23:52:36 ID:STSr6kzU
- もっぺりがトシ相応の少女のようでかわいい〜〜なぁ〜〜〜
- 184 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/06/11(木) 00:06:25 ID:83I5LJoA
- こんばんは&1ヶ月ぶりです。mxTTnzhmでございます。
あっちは何やら規制中なんでこっちお借りしますね。
今日はリーネの誕生日と言う事で、急遽短いのを書いてみました。
ではどうぞ。
- 185 名前:milk tea:2009/06/11(木) 00:09:02 ID:83I5LJoA
- 食堂に素敵な香りが漂う。
「出来たよ、芳佳ちゃん」
リーネが持ってきたティーポット。
テーブルに置かれたティーカップにそっと注がれるのは、セピア色にも似たミルクティー。
「良い匂い」
芳佳がミルクティーを見て、ふと呟く。
「普通はお湯で淹れるんだけど、牛乳に茶葉を入れて、そのまま煮出して淹れるんだよ」
リーネが説明する。
「へえ。どう違うの?」
「飲んでみて」
芳佳は勧められるがまま、そっと口をつけた。
食後や午後のひとときに飲む普通のミルクティーと違い、牛乳のコクが前面に出た濃厚な味わい。
紅茶もひときわ強く自我を主張して、決して牛乳の味に負けていない。
でも、どちらが喧嘩している訳でもなく、飲む人を優しく包み込む様に、温かく柔らか。
「おいしい、リーネちゃん」
「良かった。気に入って貰えて」
「ありがとう」
ほっと一息いれる芳佳。そんな彼女を見て微笑むリーネ。
「これ、少し入れるともっと美味しくなるよ」
「ハチミツ?」
「そう。ホントは寝る前に飲むと落ち着くから良いって話だけど」
「ありがとう」
芳佳はスプーンでハチミツをすくうと、ミルクティーに垂らした。つつと糸の様に流れ落ち、茶色の中に溶けて消えていく。
芳佳はそっとかき混ぜ、口にした。
「甘くて美味しい」
「良かった」
「リーネちゃんも飲もうよ。一緒に」
「うん」
食堂の片隅、二人だけで味わうミルクティー。腰掛け、肩を寄せ合い、静かに味わう。
「今日は大変だったね」
芳佳はリーネに話し掛けた。
「そうだね」
「せっかくのリーネちゃんの誕生日祝いなんだから、もうちょっとみんな……」
「まあまあ、芳佳ちゃん」
苦笑するリーネ。
「色々大変だったけど、でも、私はそれでも良いの。何だか皆楽しそうだったし」
「確かに、最後はみんな楽しそうだったね。そう言えば、ペリーヌさん意外だったよね。私ちょっと感心しちゃった」
「芳佳ちゃんたら。ペリーヌさんはああ見えて優しい人だよ?」
「そうなの? まあ、いいけど」
ちょっと不満そうな芳佳は、ミルクティーを一口飲んだ。リーネも一緒に飲み、芳佳に言った。
「それにね。芳佳ちゃんからお祝いして貰えただけでも、私は満足だから」
「リーネちゃん」
微笑むリーネ。一緒に芳佳も穏やかな笑みを見せた。
その笑顔に紅が少し差し……ふたりはそっと顔を近付け、口吻を交わす。
少し長めのキスを終え、唇が離れた。
「お誕生日、おめでとう。リーネちゃん」
芳佳は改めて言った。
「ありがとう、芳佳ちゃん」
リーネはとびっきりの笑顔で、芳佳を見た。
二人の後ろ……洗い場には、山積みになった誕生祝いパーティーの皿やらコップなど、片付けものが溜まっていた。
そう、今は二人で片付けの途中の、休息の時間。
二人だけの台所。先程までの喧噪もなく、静寂が支配する。
ゆったりと立ち上るミルクティーの湯気が、ふたりをそっと包み、やがて消える。
まだまだ片付けるもの、洗うものは沢山ある。でも、今の二人ならあっという間に終わるだろう。
その時間すら、ふたり一緒に居られるだけで楽しいに違いない。
事実……ふたりはもう一度お互いを味わう行為に耽っていた。
片付けがいつ終わるかは、二人だけが知っている。
end
----
以上です。
ホントは「Tea with milk」が正しい英語表現なんですが、
まあ良いかなとか思って。こまけえことは(ry
さて、リーネお誕生日おめでとう!
全員で祝う場面とかペリーヌが何をしたか……
などは皆様のご想像にお任せしますと言う事で。
ではまた〜。
- 186 名前:名無しさん:2009/06/11(木) 00:51:15 ID:iXALiFRc
- >>184
GJ & お久しぶりです!
ペリーヌが何をしたかは想像できませんが、リーネちゃんのために前々からコツコツ準備してそうなイメージがありますね
- 187 名前:名無しさん:2009/06/11(木) 22:30:11 ID:Wx.DizG2
- リネ芳投下します。4レスの予定。
新人さんが入隊する。
夕食の食卓はその話題で持ちきりだった。
といってもその反応はさまざまで、歓迎ムード一色というわけでもない。
なんだかずっとピリピリしている人も、積極的に会話に入ってこようとはしない人もいる。
でもやっぱり、それは興味の裏返しらしく、みんながそれぞれいつもとは違う。
強い風が吹く前の、凪の状態。
誰もがどこか、そわそわして見える。
私の時もこんなだったのかな――私はぼんやり、そんなことを考えていた。
坂本少佐が扶桑までいってスカウトしてきた11人目の隊員さん。
まだ出会わぬ新しい仲間の到着を、そうして私たちは待っていた。
「で、どうなんダ? おっきかったのカ?」
「遠かったしわかんない」
食い入るように訊いてくるエイラさんに、ルッキーニちゃんはふるふると首を横に振る。
ちぇっ、とエイラさんは舌打ちして、
「ま、今度は負けないけどナ」
と、うりゃうりゃといった具合に空気をわしづかみ。
「べーだ。あたしだって負けないんだかんね」
ルッキーニちゃんも対抗して、うりゃうりゃと空気をわしづかみ。さらに頬ずり。
ああ……おんなじだ。私にしたのとおんなじことをするつもりなんだ。
「………………」
そうして白熱していく二人を眺めていると、同じくそうする人が一人。
サーニャちゃんだ。
冷ややかな視線を向けられていることに、はたしてエイラさんは気づいて……いないんだろうな。
「ごちそうさま」
ペリーヌさんはそう言って口をぬぐうと、さっさと立ち上がった。
さっきからどうも機嫌が悪いらしい。
もしかしてお口に合わなかったのかな。でも残さずちゃんと食べてくれてるし……。
ペリーヌさんは始終話しかけづらいオーラを放っていて、いっそう私には訊けそうになかった。
「どこ行くの?」
と、それにかまわず訊ねたのはシャーリーさんだ。
「まもなく少佐がお帰りになる時間ですので」
そっけなくペリーヌさんは答えると、行ってしまった。お出迎えに行ったのかな。
シャーリーさんはやれやれと肩をすくめ、
「おい堅物。お前も少しは話しに加われよ」
「私は別に……」
「またまたぁ、興味あるくせに」
「ここは最前線だ。即戦力だけが必要とされている」
バルクホルンさんはむすっとしてそれだけ言い返す。
「げ、つまんねーヤツ」
シャーリーさんは言って捨てると、すぐに話題を変えてしまった。
最前線。即戦力。
その何気なく言われた言葉が私にのしかかってくる。重く、深く。
でもそれは、全部本当のことだ。
自分の不甲斐なさにいらだちがつのってくる。
一向になにも役に立てなくて、初戦果なんてまだまだ。
私より年下のルッキーニちゃんやサーニャちゃんだって、ちゃんと部隊の役に立ってるというのに。
なのに、私ときたら……
それはとても申し訳のないことだ。
申し訳ない。
そんなこと口に出してもなんにもならないってわかっているのに。
ごめんなさい、ごめんなさい……
頭のなかで、そう繰り返される。
その言葉が取り憑いたように、一向に離れていってはくれない。
- 188 名前:名無しさん:2009/06/11(木) 22:31:35 ID:Wx.DizG2
- 「どうかした?」
その声に、私ははっと我に帰った。
ハルトマン中尉だった。
私に話しかけてるんだとわかるまで、しばらくかかった。
まだほとんど、会話らしい会話をしたことがない。だから話しかけてられるなんて思ってもなかった。
どんな人かあ……考えをめぐらせて、
「すごい人だと思います」
と私は答えていた。
すごい人。それは素直な感想だった。
バルクホルン大尉たちが駆けつけるまで、その人は坂本少佐と二人でネウロイと戦っていたんだという。
きっとすごい魔法が使えたりするんだろう。
そんな人が入ってくれるなら、私たちにとってとてもありがたいことだ。
でも――
もし、本当にすごくできる人だったら?
私のなかのいけない部分が、そう訊いてくる。
すごくできる人だったら、そうしたら私はどうなっちゃうんだろう?
そうした考えに囚われながらも、私は喋り続けていた。ついさっき聞いた話をそのまま繰り返して。
喋っていないと間が持たない。共に無言の時間には、とても耐えられそうになかったから。
でもその声が、だんだんとくぐもっていく。
ちゃんと喋らないと。そう思っても、声がうまく出てくれない。
「じゃなくって――」
ハルトマン中尉に遮られる。私は内心、ほっとした。
「じゃあさ、リーネはどんな人だったらいいと思う?」
そう訊かれた。予想ではなくて、希望ってことなんだろうか。
そんなふうには考えてみなかった。そんな余裕、なかったから。
「やさしい人……だったらいいな」
自然とそう、私の口から出てきた。
やさしい人。それでとっても仲良しになって。
いっしょになっておしゃべりをしたり、遊んだり、お料理をしたりして。
そんな人だったら、きっとすごく楽しいんだろうな。本当にそんな人だったらいいな。
そんなことを考えていると、ハルトマン中尉はなんだか嬉しそうに私の顔を覗きこんでくる。
「どうか、しました?」
おそるおそる訊いてみると、ううん、なんでも、とはぐらかされてしまった。
「ねぇ、リーネ。うまく言えないけどさ」
ハルトマン中尉はそう前置きをして、
「なんかまわりがまっくらでさ、わけわかんなくって、もうイヤだーってなってもね、
でもそういう時にさ、ふらっと出会えちゃったりするもんだから。
そういうの全部ナシにしてくれるような、そういう人に」
「そういう人?」
「うん、そういう人。そういう人にはきっと出会える。そういうものだから」
そう言うハルトマン中尉のまなざしの先には、私の姿はない。
別の人のことを見ている。ハルトマン中尉にとっての、そういう人を。
ハルトマン中尉の瞳にはあの人はどんなふうに映っているんだろう?
ふいに、私たちは目と目が合った。
「――ごめん。やっぱうまく言えない」
ハルトマン中尉は照れくさそうに笑ってから、そう言った。
「これから来る子がさ、リーネにとってそういう人だったらいいね」
- 189 名前:名無しさん:2009/06/11(木) 22:32:55 ID:Wx.DizG2
- 「ではそろそろ行きましょう」
ミーナ中佐のその一言で、私たちは席から腰を上げた。
そうしてみんな、ぞろぞろと食堂を後にしていく。
私もそれに続こうとしていたところ、
「リーネさん、ちょっといいかしら」
と、ミーナ中佐に呼び止められた。
みんながどんどん行ってしまうなか、私はその場で立ち止まった。
なんだろう……?
「これからやって来る新人がね、あなたと同じで14歳だっていうの」
と言われたので、私は、15ですと訂正した。
「そうだったかしら?」
「はい。このあいだ……」
答えながら、私は顔をうつむけていた。
言ってくれればよかったのに。ミーナ中佐の目が、そう言っているようだったから。
だって訊かれなかったからと、頭のなかでそう言い訳して――ううん、それだけじゃない。
言えなかったのはたぶん、こんなままの私が年を取ってしまうことが、なんだかすごく嫌だったから。
それは、ただその場で足踏みを続けているようで。
そのことを否応なく自覚してしまいそうで。
そうやって無為に毎日をすり減らしていくことが、どうしようもなく怖かったから。
「じゃあリーネさんがお姉さんになるのね」
ミーナ中佐はあまり気にしたそぶりもなく、そう言った。
たしかに私が1つ年上だけど、そういうことになるんだろうか。
「リーネさん。あなたがこの基地に来た日のこと覚えてる?」
「はい……」
「どんな気持ちだったかしら?」
「不安でした。とっても」
そしてそれは、今でも完全にぬぐえてはいない。
そうね、とミーナ中佐はうなずいて、
「今から来る子も同じように思ってると思うの。――じゃあ行きましょうか」
言い終えるとミーナ中佐は背中を向けて、そうして歩き出す。
私はその背に向かって言った。はい、と力強く。
そうして私も歩き出した。
不思議だった。なんだか今は、わくわくしている。
大丈夫。だから、できる気がする。
これから私は、とびきりの笑顔でその人のことを出迎えよう。
- 190 名前:名無しさん:2009/06/11(木) 22:33:55 ID:Wx.DizG2
- ――それは私が芳佳ちゃんと出会う、その少し前の話。
今ではそれから、もう十年が過ぎようとしている。
世界は目まぐるしく変わった。
私個人にとっても、部隊が解散したり、ガリアの復興のお手伝いをしたり……
他にもいろいろなことがあったけれど、それでもなんとかやってこれた。
辛いことも、投げ出してしまいたくなることも、たしかにあった。
でもそのたびに芳佳ちゃんがいっしょにいてくれて、いない時でも芳佳ちゃんのことを思うことで、
そうやって私は前へと進んでいける。
暗い気持ちなんて全部ナシにしてくれるような、そういう人。
ハルトマン中尉の言おうとしていたこと、今の私ならたしかに理解できる。
「リーネちゃん、起きてる?」
どうしたんだろう? こんな夜中に。
同じベッドの傍らで眠る私に、芳佳ちゃんは耳元でささやきかけてくる。
「うん、起きてるよ」
「あのね、一番に言いたくって」
芳佳ちゃんは私へと顔を近づけてくる。そうして、おでことおでこをぶつけ合った。
「お誕生日おめでとう」
うん、と私はうなずいて、ありがとう、と言った。
――ねぇ、芳佳ちゃん。
ゆっくりでも、小さな足取りでも、その一歩一歩をたしかに踏みしめて、
そうやってこれからも、二人並んで、手と手を取って、いっしょに歩いていけたらいいね。
私は芳佳ちゃんの手を取り、指をからめた。
電気を消しているのなんて関係ない。視界にはもう、その人しか入ってこない。
いつまでもずっとずっと大好きな芳佳ちゃん。
私にとっての、そういう人――
以上です。
というわけでリーネ誕生日おめ!こんな日くらい規制どうにかしてくれと愚痴りつつ。
タイトルは「そういう人」です。OsqVefuYでした。
- 191 名前:名無しさん:2009/06/11(木) 23:56:53 ID:K9/tPqGU
- >>184->>187
GJ!ほんわかしててとてもよかったです
そしてリーネちゃん誕生日おめでとう!二期ではペリーヌと一緒に
扶桑へ押しかけ女房編が見たい
- 192 名前:名無しさん:2009/06/12(金) 00:00:08 ID:XFUSe18c
- >>184
お久しぶりです。甘い芳リーネご馳走様です。
ペリーヌが何したのか気になりますねー。何かプレゼントかな?
>>190
GJです。ハルトマンって何気に鋭い人物ですよね。さらっと核心
突きそう。10年後、20年後、芳佳とリーネには幸せになって欲しいです。
リーネ誕生日おめでとう。
- 193 名前:名無しさん:2009/06/12(金) 01:00:26 ID:m4G13Twg
- >>184
お久しぶりです。さすが、優しい雰囲気の芳リーネですね。
誕生パーティーの片付け途中の1シーンというのも二人の関係を
うまく表現していると思います。
>>190
なんか、体じゅうの力がふわっと抜けていくようないい作品ですね。
すごくいい意味で甘々なところもGJです。
それに、エーリカがすごくいい味を出してます。
- 194 名前:Ein Foto 1/6 ◆bLOSf2.kGc:2009/06/13(土) 10:36:18 ID:W5MDjeM.
- エーリカとゲルトルートで投下します。
「あれ? 中尉じゃないか。こんなとこで何やってんだ?」
のんびりとした独特の口調。
振り向かなくても誰だか分かる。
「サーニャなら見なかったよ」
先手を打ってこれからなされるであろう質問を封じる。
「そっかぁ、どこ行ったんだろな」
がっくりとエイラは肩を落とす。
すぐに立ち去るかと思ったが、「ちょっと休憩だな」などと言って私の横に腰をおろした。
そこは彼女の指定席。
501基地にあるこの屋外オープンカフェでは、ときどきお茶会が開かれる。
決められているわけではないけれど、座るのはいつも同じ場所。
私の隣りはいつもトゥルーデ。
嫌だな。思い出しちゃった。
ぜんぜん忘れてなかったけどさ。
そんな気持ちを見透かしたのか、エイラが単刀直入に訊いてくる。
「大尉と何かあったのか?」
「ないよ」
明るく答えたつもりなのに、声がこわばる。
気づかれたかな?
自分とサーニャのことには疎いくせに、他人のこととなるとエイラは妙に鋭いから。
- 195 名前:Ein Foto 2/6 ◆bLOSf2.kGc:2009/06/13(土) 10:38:08 ID:W5MDjeM.
- 今から2時間前。
起床ラッパとともに私の目覚ましがドアを開いた。
「起きろ!ハルトマン!!」
そこから延々説教を受けつつ、カーテンを開けられ、毛布を剥ぎ取られ、軽くほっぺをつねられて
ようやく私は起きる気になった。
すっきりとしない、ぼやけた視界がだんだんはっきりする。
その中心はもちろんトゥルーデがいた。
それだけで幸せな気持ちになる。
「おはよう」
「ぜんぜん早くないぞ!もう1時間も経ったじゃないか!貴様それでもカールスラント軍人か!!」
「うん、たぶんね」
「何だ?! そのたぶんってのは」
「あれだけ営倉入りをくり返してたら、いつくびになってもおかしくないかな〜なんて」
にゃははとおどけて笑う。
だけどトゥルーデは急に真面目な顔になって
「軍が貴様のような才能のあるやつを手放すはずがないだろ。それにフラウがいなくなったら私は誰に背中を預ければ…」
だんだん声が小さくなって、しまいには口の中でごにょごにょと飲み込まれてしまう。
でも言いたいことは大体分かったよ。
要は私が必要ってことだよね?????
私は嬉しくなってトゥルーデに抱きついた。
トゥルーデはすぐに身体を引いたけど、がっちりとつかまえて胸に顔をうずめる。
ふかふかと柔らかいのに自然と顔を押し返してくるこの弾力!
「色よし 張りよし バルクホルン〜♪」
ついそう口ずさむと「変な歌うたうな!」と一喝された。
やっぱからかうと楽しいな、トゥルーデは。
「その腐りきった性根を叩きなおしてやる!」
トゥルーデは無理やり私を引き離した。
と同時に紙のようなものが一枚はらりと床に落ちる。
私はそれを素早く拾い上げた。
見覚えのある写真。
宮藤とサーニャの誕生日にみんなで撮ったものだ。
だけど一部が加工されている。
トゥルーデの愛してやまない妹クリスがそこにいた。
ちなみにクリスは目下入院療養中で、言うまでもなく誕生日会には参加していない。
あからさまに別の写真から切り取られたクリスは、よりにもよって私の顔の上に重ねられていた……。
- 196 名前:Ein Foto 3/6 ◆bLOSf2.kGc:2009/06/13(土) 10:39:46 ID:W5MDjeM.
- それで私は部屋を飛び出してしまった。
普段どおり「これだからシスコンは」とかなんとか言ってごまかしてしまえば良かったのに。
でも、できなかった。
胸の奥の奥がずきずきと痛む。うっかりすると泣いてしまいそうだ。
性根が腐ってるのはどっちだよ。
そんなにクリスがいいなら、いつも似てるからってかまいたがる宮藤の上に貼ればいいじゃないか。
私が必要なのは戦闘中だけ? それとも存在自体邪魔なの?
そこへ通りがかったのがエイラだった。
その後もエイラは黙って私の側にいてくれた。
誰かが近くにいるだけで、こんなにも安心できるものなんだ。
悲しさは少しも薄れなかったけれど、ようやく落ち着くことができた。
あのまま独りでいたら、もっと落ち込んでいただろうから。
お礼を言おうと、私は深呼吸してエイラを見た。
エイラは眩しそうに目を細めて空を見上げている。
色素の薄い赤味がかった髪と白い肌。
思わず息をのむ。
「あんま…じろじろ見んなよな」
そうたしなめられて我に返るまで、私はエイラに見惚れていた。
その間トゥルーデのことは頭から消えていた。
完璧な芸術品でも眺めるように私はその美しさに酔っていた。
だけどそんなことおかまいなしに、エイラは突然「サーニャアアアアアアアア」と叫んだ。
永遠に損なわれないかと思われた美があっさりと瓦解する。
「サーニャ、どこに行ったんだぁあああああああああ」
やっぱりエイラはこうじゃないとね。
きれいなことを気づかせないくらいのヘタレぶり。
私がふきだすと、つられてエイラも笑う。
それにしてもちょっと姿を消すだけで、こんなに探してもらえるサーニャが羨ましい。
トゥルーデなんて追いかけてもこなかった。
ってまた思い出しちゃった……。
私が吐いたため息を払拭するかのようにエイラが陽気に言った。
「そういえばさー、おもしろい話があるんだな」
「おもしろい話?」
「きのうルッキーニと2人で大尉にいたずらしてやったんだ。大尉ってほら、自分と妹のツーショット写真、
何枚も現像して持ってるだろ?
肌身離さず持ち歩いてるから、すぐぼろぼろになるとか言い訳して」
よりにもよってトゥルーデとクリスの話か。
空気が読めるんだか読めないんだか。
「だからさ、そのうちの1枚をちょっと拝借して、妹の顔だけ切り抜いてさ」
ん?
「サーニャの」
もしや…。
「あ、あと宮藤もだったな」
まさか……。
「2人のバースデイパーティーの時に」
よもや………。
「撮った写真の」
「私の顔の上に貼った?」
「そうそう!こそっと上着のポケットに戻しておいたんだけど…あれ?
中尉が知ってるってことは、もうバレてる?」
エイラは目をぱちくりさせながら私を覗き込んだ。
- 197 名前:Ein Foto 4/6 ◆bLOSf2.kGc:2009/06/13(土) 10:41:00 ID:W5MDjeM.
- 頭を抱えて足をばたばたと動かす。
冷静に考えてみれば、あの堅物トゥルーデがそんなバカなことするはずがない。
そんないたずらをするとしたら、エイラかルッキーニか……私くらいなものだ。
や、やられた。
私の思わぬ反応に驚いたエイラが肩を揺さぶる。
「どうしたんだ? 腹でも痛いのか? 落ちてるもんでも食ったのか??」
次どんな顔でトゥルーデに会えばいいのだろう。あんなことぐらいで傷ついて逃げ出すなんて。
トゥルーデはどう思ったのかな? 呆れてたんじゃないだろうか。
それもこれもみーーーんなエイラとルッキーニのせいだ!
怒りの矛先が決定すると私は急に強気になった。
怒らせると怖いんだぞ!!
それぞれに最も効果的な罰を与えてやる!!!
ここにいないルッキーニは後回し。
沈んでいる私を励ましてくれた恩はあれど、もともとの原因は今目の前にいるエイラにある!
絶好のタイミングで敵のウィークポイントとなる人物がこちらに歩いて来るのを発見する。
空中戦と同様、攻撃の段取りを瞬時に組み立てる。
「な、何だよ。その嫌な目つきは…」
作戦開始。
サーニャからよく見えるように、立ち上がってエイラの正面へ回り込む。
私の行動が読めないエイラは不思議そうに首を傾げた。
この角度ならばっちりだ。私は指をすーーっと動かしながら言った。
「あ、サーニャだ」
「サーニャ!!!」
途端にエイラは警戒を解き、目を輝かせて、私の指差すを方角を見る。
名づけて“サーニャの目の前でほっぺにチュウ作戦”。
これで相当のダメージを与えられるはずだ。
まんまと横を向いたエイラの頬に私はそっと顔を寄せた。
が、大切なことを忘れていた。
エイラには先読み能力があったのだ。
あともう少しというところで、私の企みに気づいたターゲットは慌ててこちらに顔を戻した。
で、
私とエイラは不覚にも本当にキスしてしまった。
- 198 名前:Ein Foto 5/6 ◆bLOSf2.kGc:2009/06/13(土) 10:41:41 ID:W5MDjeM.
- 両手で口を押さえ言葉にならない悲鳴をあげるエイラ。
あ〜らら。もしかして初めてだった? まさかね。
私はだいぶ前に寝ているトゥルーデに勝手にしちゃったからいいけど。
「そんな動揺している暇ないんじゃないの〜?」
意地悪くだんだん小さくなるサーニャを顎でしゃくる。
「違うんだ!サーーーーーーーニャーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
半泣きになりながら全速力で追いかけて行くエイラ。
計画通りにはいかなかったけど、復讐成功★
にんまりしながらエイラの背中に手を振る。
「貴様というやつは…」
真っ黒な影が私の上に落ちた。
いつの間にかトゥルーデが私の後ろで、こぶしを握り締めている。
「心配してきてみれば、よくも抜け抜けと接吻など…」
冷たい目で私を見おろしながら、トゥルーデは乱暴にテーブルの上に写真を叩きつけた。
クリスがきれいに剥がされている。
私がそれを見たことを確認すると、もう用はないとばかりに踵を返した。
「待って」
呼び止めたが無視される。
「待ってってば!」
トゥルーデは振り向かない。私は大声で叫んだ。
「いつから見てたの?」
やっと足が止まった。
ゆっくりと振り向いたその表情は予想とは大幅に違っている。
怒っているというよりは悲しそうだった。
まるで、少し前の私みたいに。
私はかけよってトゥルーデの腕をつかんで言った。
「あれは事故だから」
経緯を説明しようと、もう一度口を開く前に、上着の袖でぐいっと唇をぬぐわれる。
「フラウは奇襲が得意だからな」
薄く、そしてなぜか自嘲気味な笑みを浮かべながらトゥルーデが言う。
「寝込みを襲ったり、隙をついたり」
「ストップ!ストップ!!!寝込みって、もしかしてトゥルーデ、あの時起きてたの?」
「カールスラント軍人たるもの、いついかなる時も敵襲に備えているものだ」
は、恥ずかしすぎる。
穴があったら地球の裏側まで掘って逃げ出したい!!
実際、その場を離れようとしたのに「今度は逃がさないぞ」とトゥルーデにがっちり押さえ込まれる。
「エイラはともかくサーニャまで傷つけるのはよくない」
言われてみれば確かにその通りだった。後でちゃんと謝らなきゃ。
それまでにエイラが何とかしてくれますように!
はかない希望をヘタレにたくしていると、トゥルーデが私の顎をくいっと持ち上げた。
「今度から襲うのは私だけにしておけ」
聞き間違いかと耳を疑っているうちに腰に手を回され、トゥルーデの顔がどんどん近づいてくる。
キスされる
と思った瞬間、私は顔を背けていた。
恐る恐る目を開けると、トゥルーデが泣きそうな表情で「私とするのは嫌なのか?」と問うた。
あ、この展開はまずい。このままじゃトゥルーデが誤解してしまう。
こんな小さなことにこだわるところなんて見せたくないけど、トゥルーデを傷つけるよりはよっぽどマシ。
私は覚悟を決めた。
- 199 名前:Ein Foto 6/6 ◆bLOSf2.kGc:2009/06/13(土) 10:43:02 ID:W5MDjeM.
- 「だって、だってこのままだとエイラとトゥルーデが間接キスしちゃう」
私の言葉にトゥルーデは一瞬ぽかんとした後、盛大にふきだした。
だから言いたくなかったのに。
「そんなこと気にしてたのか。バカだな。それにさっきちゃんと拭いただろ?」
トゥルーデは優しい手つきで私の髪を撫でる。
バカでいいもん。
そんなことでも気になっちゃうくらい好きってことだよ。
言ってやんないけどね。
「余計なことは考えるな」
とトゥルーデは私の頬を両手で包み込みながら言った。
うん。そうする。
素直に目を閉じると、唇がゆっくりと重ねられる。
やわらかくて、少し冷たくて、でも気持ちよくて。
エイラとはぜんぜん違う。
胸がトゥルーデに伝わっちゃうんじゃないかってくらい高鳴っている。
幸せすぎると泣きたくなるんだね。 どうしてかな?
だけどそんな感情の整合性なんて考えられるほどの思考力は残ってなかった。真っ白。
唇が離れるとトゥルーデは照れ隠しなのか、すぐに目を逸らした。
耳まで赤いよ、トゥルーデ。
こんなトゥルーデを見れたんだから、ルッキーニへの罰は帳消しにしてあげよう。
エイラには悪いけど、ね。
以上です。どうもありがとうございました!
- 200 名前:名無しさん:2009/06/13(土) 15:26:17 ID:yKs0RExM
- >>199
GJ! こういうエーゲル読みたかった!
エイラとサーニャのその後も気になるw
- 201 名前:名無しさん:2009/06/13(土) 22:46:30 ID:MpIqVOKA
- GJ! やはりエーリカはかわいい。
自業自得とはいえエイラさんのポジションもおいしいぜw
- 202 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:41:52 ID:kRsFIaac
- 突如降ってきた電波投下します。
6レスの予定。
◆◆◆第1回ストライクウィッチーズドラフト会議◆◆◆
〜ルール〜
1.1巡目は入札抽選。
1―1.自由獲得枠・希望枠はなし。
1―2.抽選に外れたキャラは再度入札抽選を行う。
1―3.全参加キャラの指名キャラが確定するまで続けられる。
2.2巡目はウェーバー、3巡目は逆ウェーバー方式。
3.基本的にすべての女性キャラを指名できる。
3―1.ただし、3巡目までで終了とする。それ以上の指名は不可。
3―2.また、ドラフトの指名側のキャラは指名することはできない。
3―3.また、1キャラが指名するキャラの国籍はすべて違っていなければならない(国籍制限)。
4.指名を希望するキャラは事前に嫁志望届を提出しておく必要がある。
※なおウェーバーの順番は、保管庫に納められているSSの本数(6月16日時点)の逆順である。
巡|⇔|Closter.|Lucchini|Wilcke..|Miyafuji|Barkhorn|Juutilainen
―|―|――――|――――|――――|――――|――――|―――――
①|抽|××××|××××|××××|××××|××××|××××
外|抽|××××|××××|××××|××××|××××|××××
②|→|××××|××××|××××|××××|××××|××××
③|←|××××|××××|××××|××××|××××|××××
〜主な上位指名が予想されるキャラ〜
・坂本美緒(扶桑皇国)
扶桑の猛きサムライにして天然ジゴロ。惚れさせた女は数知れず。競合が予想される。
・リネット・ビショップ(ブリタニア連邦)
愛らしい容姿に豊かなバスト、家事全般もこなすというお嫁さんにしたいキャラ。
・エーリカ・ハルトマン(帝政カールスラント)
奔放な性格に天真爛漫な笑顔はまさに小悪魔。
・シャーロット・E・イェーガー(リベリオン合衆国)
グラマラス・シャーリーの異名を持つナイスバディだけでなく、その包容力も魅力。
・サーニャ・V・リトヴャク(オラーシャ帝国)
オラーシャの誇る可憐なリーリヤ。隠れファンも多いとか。
・山川美千子(扶桑皇国)
宮藤軍曹の幼なじみで、学校では合唱部に所属。
・クリスティアーネ・バルクホルン(帝政カールスラント)
バルクホルン大尉のよくできた妹。病弱っ娘属性アリ?
- 203 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:43:13 ID:kRsFIaac
- 〜1巡目〜
ペリーヌ・クロステルマン中尉
1位《坂本美緒》 扶桑皇国 海軍
フランチェスカ・ルッキーニ少尉
1位《シャーロット・E・イェーガー》 リベリオン合衆国 陸軍
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐
1位《坂本美緒》 扶桑皇国 海軍
宮藤芳佳軍曹
1位《シャーロット・E・イェーガー》 リベリオン合衆国 陸軍
ゲルトルート・バルクホルン大尉
1位《宮藤芳佳》 扶桑皇国 海軍
エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉
1位《サーニャ・V・リトヴャク》 オラーシャ帝国 陸軍
巡|⇔|Closter.|Lucchini|Wilcke..|Miyafuji|Barkhorn|Juutilainen
―|―|――――|――――|――――|――――|――――|―――――
①|抽|坂本美緒|C.Yeager |坂本美緒|C.Yeager|Yoshika.|Litvyak
外|抽|××××|××××|××××|××××|××××|××××
②|→|××××|××××|××××|××××|××××|××××
③|←|××××|××××|××××|××××|××××|××××
指名が重複した《坂本美緒》と《シャーロット・E・イェーガー》の抽選が行われた。
その結果、《坂本美緒》はミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ、
《シャーロット・E・イェーガー》はフランチェスカ・ルッキーニが交渉権を獲得した。
抽選に外れたペリーヌ・クロステルマン、宮藤芳佳は再度入札をすることになった。
【速報】
荒れに荒れたドラフト会議の幕開けとなった。
予想どおり坂本少佐はヴィルケ中佐とクロステルマン中尉の競合となり、
抽選の結果、ヴィルケ中佐が指名権を獲得した。
一方、宮藤軍曹はイェーガー大尉を強硬指名。
これには1位指名が予想されていたリネット・ビショップ軍曹をはじめ、
山川美千子さんからも非難の声があがった。
なおルッキーニ少尉もイェーガー大尉を指名しており、
抽選の結果、イェーガー大尉の指名権はルッキーニ少尉が交渉権を獲得した。
宮藤軍曹にとってはなんとも散々な結果となってしまったが、
当人は「(リーネちゃんに)切り替えていく」と早くも次を見据え、
「リーネちゃん最高や! シャーリーさんなんか最初からいらんかったんや!」と息巻いてみせた。
また、バルクホルン大尉は宮藤軍曹を指名するが、規約違反(第3条第2項)のため無効となり、
お手つきのため1巡目の指名権はなくなった。
大尉は「(宮藤が指名できないとは)知らなかった」とコメントし、
さらに「(宮藤を指名しちゃ)いかんのか?」と逆ギレしてみせた。
そうした中、ユーティライネン少尉はきっちりとリトヴャク中尉を単独指名。
2ちゃんねるの実況スレでは「エイラGJ!」「サーニャ一本釣りktkr」と歓喜のレスが書き込まれた。
- 204 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:44:39 ID:kRsFIaac
- ペリーヌ・クロステルマン中尉
外れ1位《リネット・ビショップ》 ブリタニア連邦 空軍
宮藤芳佳軍曹
外れ1位《リネット・ビショップ》 ブリタニア連邦 空軍
巡|⇔|Closter.|Lucchini|Wilcke..|Miyafuji|Barkhorn|Juutilainen
―|―|――――|――――|――――|――――|――――|―――――
①|抽|坂本美緒|C.Yeager |坂本美緒|C.Yeager|Yoshika.|Litvyak
外|抽|Lynette.|××××|××××|Lynette.|××××|××××
②|→|××××|××××|××××|××××|××××|××××
③|←|××××|××××|××××|××××|××××|××××
指名が重複した《リネット・ビショップ》の抽選が行われた。
その結果、ペリーヌ・クロステルマンが交渉権を獲得した。
抽選に外れた宮藤芳佳は再度入札をすることになった。
宮藤芳佳軍曹
外れ外れ1位《ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ》 帝政カールスラント 空軍
巡|⇔|Closter.|Lucchini|Wilcke..|Miyafuji|Barkhorn|Juutilainen
―|―|――――|――――|――――|――――|――――|―――――
①|抽|坂本美緒|C.Yeager |坂本美緒|C.Yeager|Yoshika.|Litvyak
外|抽|Lynette.|××××|××××|Lynette.|××××|××××
外|抽|××××|××××|××××|Wilcke..|××××|××××
②|→|××××|××××|××××|××××|××××|××××
③|←|××××|××××|××××|××××|××××|××××
【速報】
またもや波乱の展開となった。
クロステルマン中尉と宮藤軍曹は共にリネット・ビショップ軍曹を指名。
抽選の結果、交渉権を獲得したのはクロステルマン中尉だった。
これに対しリネット軍曹は「辛いです。芳佳ちゃんが好きだから」と涙ながらに語り、
「来年の指名を待ってます」と早くもクロステルマン中尉への嫁入りを拒否、
クロステルマン中尉にとっても涙々の外れ1位指名となってしまった。
このあまりの事態に2ちゃんねるの実況板では「ペリンゴwwwww」「ペリーンwwwww」
「GGペリーヌwwwww」などのスレが乱立し、サーバーが飛ぶ羽目になってしまった。
また、レズ・百合萌え板には「今のペリーヌよりも悲惨なものを挙げて慰めるスレ」が立った。
抽選に外れた宮藤軍曹はヴィルケ中佐を指名するが、規約違反(第3条第2項)のため無効となり、
お手つきのため1巡目の指名権はなくなった。
- 205 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:45:57 ID:kRsFIaac
- 〜2巡目〜
ペリーヌ・クロステルマン中尉
2位《ハイデマリー・W・シュナウファー》 帝政カールスラント 空軍
フランチェスカ・ルッキーニ少尉
2位《ジュゼッピーナ・チュインニ》 ロマーニャ公国 空軍
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐
2位《なし》 ※選択終了
宮藤芳佳軍曹
2位《坂本美緒》 扶桑皇国 海軍
ゲルトルート・バルクホルン大尉
2位《クリスティアーネ・バルクホルン》 帝政カールスラント 一般
エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉
2位《エルマ・レイヴォネン》 スオムス 空軍
巡|⇔|Closter. |Lucchini|Wilcke..|Miyafuji|Barkhorn|Juutilainen
―|―|―――― |――――|――――|――――|――――|―――――
①|抽|坂本美緒 |C.Yeager|坂本美緒|C.Yeager|Yoshika.|Litvyak
外|抽|Lynette. |××××|××××|Lynette.|××××|××××
外|抽|×××× |××××|××××|Wilcke..|××××|××××
②|→|Schnaufer|G.Cenni.|××××|坂本美緒|Chris...|Leivonen
③|←|×××× |××××|××××|××××|××××|××××
【速報】
ここでバルクホルン大尉は実妹のクリスティアーネさんを指名するも、
「ふざけるな!という順位。そういう指名をするのは、私をいらないということでしょう」と
クリスティアーネさんは憤慨し、妹入り拒否は濃厚となった。
これには関係者からも「そら(あんな1位指名を見た後じゃ)そう(拒否するのも当然)よ」と言われた。
また、ルッキーニ少尉はチュインニ准尉、ユーティライネン少尉はレイヴォネン中尉と、
同郷のウィッチをそれぞれ指名。
クロステルマン中尉はシュナウファー大尉を指名した。
また、宮藤軍曹は坂本少佐を指名するが、少佐は既にヴィルケ中佐が交渉権を獲得しているため無効となり、
お手つきのため2巡目の指名権はなくなった。
そんな中、ヴィルケ中佐は早くも選択終了を宣言。
これは坂本少佐さえいれば他に何もいらないという意思表示なのだろうか。
- 206 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:46:59 ID:kRsFIaac
- 〜3巡目〜
エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉
3位《ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン》 スオムス 空軍
ゲルトルート・バルクホルン大尉
3位《エーリカ・ハルトマン》 帝政カールスラント 空軍
宮藤芳佳軍曹
3位《ゲルトルート・バルクホルン》 帝政カールスラント 空軍
ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐
3位《なし》 ※選択終了
フランチェスカ・ルッキーニ少尉
3位《ハンナ・ユスティアーナ・マルセイユ》 帝政カールスラント 空軍
ペリーヌ・クロステルマン中尉
3位《諏訪天姫》 扶桑皇国 陸軍
巡|⇔|Closter. |Lucchini |Wilcke..|Miyafuji|Barkhorn|Juutilainen
―|―|―――― |―――― |――――|――――|――――|―――――
①|抽|坂本美緒 |C.Yeager |坂本美緒|C.Yeager|Yoshika.|Litvyak
外|抽|Lynette. |×××× |××××|Lynette.|××××|××××
外|抽|×××× |×××× |××××|Wilcke..|××××|××××
②|→|Schnaufer|G.Cenni. |××××|坂本美緒|Chris...|Leivonen
③|←|諏訪天姫 |Marseille|××××|Gertrud.|Erika...|Katajainen
【速報】
ここまで順調に指名を続けてきたユーティライネン少尉はカタヤイネン曹長を指名。
しかし、少尉は2巡目にレイヴォネン中尉との交渉権を獲得していたため、
国籍制限(第3条第3項)によりカタヤイネン曹長の指名は無効ということになってしまった。
この思わぬ誤算にユーティライネン少尉は「(模擬ドラフトは)やってネーヨ」と語り、
気持ちを落ち着けるためか、その手にはミルク味の飴を持っていた。
一方、カタヤイネン曹長は「辛いです。イッルが好きだから」と涙ながらに語った。
また、ルッキーニ少尉はマルセイユ中尉を、クロステルマン中尉は諏訪天姫を指名した。
宮藤軍曹はバルクホルン大尉を指名するが、規約違反(第3条第2項)のため無効となり、
お手つきのため3巡目の指名権はなくなった。
ここまで散々だったバルクホルン大尉はここでエーリカ・ハルトマン中尉を指名。
中尉は「指名してくれるなら何位でも構わない。大切なのはこれから」とコメントを寄せた。
これで最終となる3巡目の指名も終了。
第1回ストライクウィッチーズドラフト会議は幕を閉じた。
【続報】
会議前は上位指名が予想されながらも、結局指名のなかった山川美千子さんの会見が行われた。
山川さんは「辛いです。芳佳ちゃんが好きだから」と涙ながらに語り、
「(来年に)切り替えていく」と決意を新たにした。
またリネット・ビショップ軍曹に対して「私の方が芳佳ちゃんを愛している」と口撃してみせた。
以上です。
一番可哀想なのは誰だろとか考えていただければ幸いです。
タイトルは「どらふと!」です。OsqVefuYでした。
- 207 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:49:25 ID:kRsFIaac
- 〜おまけ〜
まだいた! 未提出ウィッチ!
坂本少佐の未提出問題は氷山の一角に過ぎなかった。
この度、ユーティライネン少尉が2位指名したレイヴォネン中尉も嫁志望届を未提出だったことが発覚し、
このためレイヴォネン中尉の嫁入りはなくなった。
これによって、国籍制限のため嫁入りのかなわなかったカタヤイネン曹長に再び嫁入りの可能性が出てきた。
この一連の騒動についてレイヴォネン中尉は、「うっかりしていた」と事実を認め、
カタヤイネン曹長に対して「よかったね。おめでとう」と祝福のコメントを寄せた。
(スポーツ紙の記事より抜粋)
- 208 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 01:59:31 ID:sR62ns6w
- >>206
リアルタイムで見てました。GJです!
一番可哀想なのは…脳内がおっぱいのみでルールすら覚えられない芳佳でしょうねw
- 209 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 10:48:15 ID:yz713/tE
- >>206
クソワロタ GJ!
野球のドラフト会議知ってるともっと面白いw
知らなくても十分面白いけど。
ペリーヌは基本眼鏡娘ばっかりじゃねーかとかみっちゃんカワイソスとか
突っ込みどころが多すぎてもうねw
また書いて下さい待ってます。
- 210 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 15:29:26 ID:xBx/hVrg
- OsqVefuYです。
>>202の表があまりに見苦しかったので修正してろだに上げました(まだ多少ズレてますが……)。
http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/9844
パスは半角でswです。内容的な修正はありません。
保管庫の管理人様、入れるときはこっちでお願いします。
- 211 名前:名無しさん:2009/06/17(水) 22:33:51 ID:YwSlQY8A
- >>206
GJ! まさかのドラフトネタw
芳佳は何をやってるんだw あとお姉ちゃんw
- 212 名前:名無しさん:2009/06/18(木) 18:17:54 ID:2YUKpqeo
- 酷いよ、芳佳ちゃん・・・
- 213 名前:名無しさん:2009/06/18(木) 20:10:36 ID:0Lmb7LGg
- >>206
こういうの好きやわ(笑)
貴方の想像力にGJ
…でもこれSSじゃないよね(汗)
- 214 名前:名無しさん:2009/06/19(金) 23:40:42 ID:erf5ijy2
- >>213
俺もよく忘れるがSSスレじゃないんだぜw
- 215 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/06/25(木) 18:06:39 ID:2vUQq7Lg
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
相変わらず規制中とい(ry
さて、今回は「オトコマエ」な少佐? を書いてみようかと。
少々ベクトルが違う気もしますがどうぞ。
- 216 名前:hold me tonight 01/03:2009/06/25(木) 18:07:41 ID:2vUQq7Lg
- しとしとと雨が降る基地周辺。午後になっても雨はやまず、基地には気怠い雰気が漂っていた。
そんな501に、扶桑海軍から荷物が届いた。各種補給物資に混じり、芳佳や美緒各個人宛てのもの
……家族からの手紙や、軍からの支給品など……がまとめて送られて来たのだ。
芳佳と美緒は数々の荷物のうち私物関係のものをより分けてミーティングルームまで持って行くと、
よいせと箱の封を解き、中身を確認し始めた。横では二人の為にリーネが紅茶を淹れ、様子をにこにこと眺めている。
「あ、みっちゃんとお母さんから手紙だ!」
「良かったな宮藤。でも読むのは後だ。まずは他の中身も全て確認するんだぞ」
「はい」
ごそごそと二人それぞれ中身を漁っていくうちに、美緒の顔色が変わる。そして一言。
「違う」
と呟いた。
「どうしたんです、坂本さん?」
怪訝そうに美緒の顔を覗き込む芳佳。リーネもつられて様子を見る。
美緒は答えの代わりと言わんばかりに、芳佳に折り目も綺麗な軍服のセットを寄越した。
「軍服ですねえ……ってあれ? これ、男性用じゃないですか」
広げて驚く芳佳、溜め息をつく美緒。
「ああ。何処をどう間違えたのか……我々の女性用が入って無いとは、どう言う事だ」
「困りましたね。坂本さんの服、今回の補給に合わせてあらかた洗ってますよ。外はこの雨だし、いつ乾くか……」
「うーむ……となると、乾いてるのは私が今着ているのだけか」
顎に手をやり唸る美緒を見て、芳佳が提案した。
「なら、替えの服が届くまで、せめて今干してる服が乾くまで、送られて来た私の服着るのどうです?」
「宮藤の、か?」
「はい、どうぞ。まだ着てない新品ですよ。私は前のがまだ替えありますし」
芳佳は自分用の箱から、真新しいセーラー服の上着を差し出した。
「良いのか、宮藤」
「私は大丈夫ですけど……」
「けど? 何だ?」
「坂本さん、士官なのにこれで良いのかなって。私のは士官用じゃないし」
「この際急場しのぎだ、構わん。何か公式な用件が有る訳でもないしな。ましてや空では誰も見ていない」
美緒はとりあえず芳佳から服を借りると、セーラー服を試着してみた。
「ちょっときついな」
「私、体型小柄ですから。坂本さんの方が背もあるし、胸も有るし」
「胸とかはどうでもいい」
「胸……」
言葉に反応してしまうリーネ。
腰に手をやり、部屋の片隅に有った鏡をちらりちらりと見、自分の姿を確認する美緒。
「これを着るのは、随分と久しぶり……と言うか、殆ど記憶に無いな」
「でもすごく似合ってますよ、坂本さん」
「そうか?」
「ええ、私もそう思います」
同意するリーネ。
- 217 名前:hold me tonight 02/03:2009/06/25(木) 18:08:12 ID:2vUQq7Lg
- そんな三人の様子を見て何か面白そうだと思ったのか、いつの間にか暇を持て余す隊員達が集まってきた。
「ウキャー 少佐、芳佳とおそろい〜。降格?」
「違うだろルッキーニ。でも少佐、どうしたんですか宮藤の服なんか着て」
ニヤニヤ顔のルッキーニと、興味ありげなシャーリー。
「扶桑海軍からの支給品に手違いが有ってな。とりあえず着る服が無いと言う次第だ」
ちょっと困った顔をする美緒。
「ならあたしの服、貸しましょうか?」
「いや、一応扶桑海軍の服の方が良い」
「なるほど」
ルッキーニの肩を持ち、ほほうと納得するシャーリー。
「ウニャー 少佐のセーラー服って何か新鮮」
「ルッキーニさん! 貴方少佐を何て疚しい目で見てるのです!?」
「そう言うペリーヌは何でハンカチで鼻押さえてるんダヨ」
「た、たまたまですわ」
詰まり気味の声で返事するペリーヌを見てニヤリと笑うエイラ。
エイラにもたれた格好のサーニャは美緒を見て不思議そうな顔をしていた。
「ズボンはどうします?」
芳佳の問い掛けに、美緒はううむと唸った。
「男物か……これを履けと言われてもな」
「少佐、試しに履いてみたらどうです? 男物」
「既にズボンは履いているが? この上に? 二重にか?」
「まあまあとりあえず。せっかくだし」
「せっかくだから〜男モノを選ぶぜ〜」
「お、おい……」
ノリノリのシャーリーとルッキーニに言われ、渋々男物のズボンを履いてみる美緒。
上はセーラー服、下は男物のすらっとした長めのズボンの美緒。
一同は、ほお、と溜め息混じりに美緒を見つめた。
「な、何だ皆、その反応は」
たじろぐ美緒。
「少佐、オトコマエー」
ルッキーニが目を丸くする。
「確かに、妙に似合ってるなあ。カッコいいですよ、少佐」
納得するシャーリー。
「少佐は何を着てもお美しいと言う事ですわ!」
「ペリーヌ必死ダナ」
「でも、なんか凛々しいね、エイラ」
「確かニナ」
「少佐、ステキですね」
隊員達は美緒を褒め称えた。だが困惑を隠せない美緒。
そんな中、ルッキーニは美緒をじーっと見て、ふと呟いた。
「でも何かオトコマエで、かわいさが足りないよね」
「確かにちょっとそんな気も」
同意するシャーリー。
「お前ら……軍服に可愛さを求めてどうする?」
呆れる美緒。
「そうだ良いこと思い付いた。少佐、ちょっと良いですか? ちょっとだけ」
美緒の背後に回り、髪縛りを解くシャーリー。
「お、おい、何を……」
戸惑う美緒。
「エイラとサーニャも手伝え」
「イイヨ」
「……こう?」
隊員達に寄ってたかってあれこれされてしまう美緒。あわわ、と様子を眺めるだけの芳佳とリーネ。
何か言いたげだが、言うに言えないペリーヌ。
- 218 名前:hold me tonight 03/03:2009/06/25(木) 18:09:04 ID:2vUQq7Lg
- 数分後、長い髪をさらりと流し、軽く髪飾りをあしらった「水兵」風の美緒が出来上がった。
普段結んでいる黒髪は思ったよりも長く艶が有り、純白の制服を「凛々しい」ものから
「美しい」ものへと変化させるちからが有る。
ルッキーニ達が添えた髪飾りも、美緒本来の大和撫子的な美貌を一層引き立たせている。
鏡を見て、怒り一割呆れ九割が混ざった顔をした後、美緒はうなだれた。
「な、何だこれは……どうしろと」
「坂本さん、素敵です! 似合ってますよ! これぞ連合軍第501統合戦闘航空団の華です!」
目を輝かせる芳佳。リーネも横でうんうんと大きく頷いた。
「そう言われてもな」
「これなら扶桑海の巴御前にも決して負けませんよ」
「何の勝負だ、何の」
「『扶桑海の巴御前』? ああ、宮藤の部屋にあった扶桑人形の人カ?」
エイラの問いに大きく頷く芳佳。
「確かニ、負けてナイナ」
「少佐、素敵です」
ぽつりと呟くサーニャ。シャーリーとルッキーニは大勝利と言わんばかりに美緒の周囲をぐるぐる回り、にやにやと姿を眺めている。
「少佐に何てコトを……そのお姿、素敵ですわ」
何故かむせび泣くペリーヌ。
「じゃあやっぱり、ズボンはどうします? この際……」
換えのズボンを手に、芳佳は美緒に問い掛けた。そこへ、誰かがやって来た。
「あらこんな所に。さかも……」
トゥルーデとエーリカを連れてやって来たのは、ミーナ。
美緒の姿を一目見るなり、ミーナの顔色が変わる。小脇に抱えていた書類が、ばさばさと床に落ちる。
「ど、どうした、ミーナ」
ぎょっとする美緒。
「坂本少佐、それに宮藤さん。何なのこれは。説明なさい」
物凄い剣幕でミーナに詰め寄られ、狼狽える芳佳と美緒。
「え? ええっと、何処から説明したら良いんでしょう?」
「ああ、その、扶桑海軍から荷物が届いたんだが、手違いで……」
「手違いでこんな姿にっ!!!」
ミーナは片手で口を……よく見ると鼻を押さえている様に見えた……塞ぐと、もう片方の手で美緒の腕をひったくり、
そのまま何処かへと連れ去った。
後には、中途半端に散らかった美緒と芳佳の私物、服など、そして呆気に取られる一同が残された。
「おい、ミーナ……」
トゥルーデが呆気に取られる。エーリカは何故かにやっとしている。
「どうしたんだ、ミーナ中佐」
「まさか、中佐」
「ミーナ隊長……」
何となく二人が何処へ行き、何をし出すか想像出来た一同は、はあと溜め息をつき、後片付けを始めた。
end
----
タイトルは……「抱きしめて〜」を適当に意訳。
某トシちゃんの名曲ですね(古っ!
書くときにたまたま聞いていただけで意味は無いです。
今回は「男装の麗人」と言うか、何を着てもサマになる
オトコマエな少佐で遊んでみよ〜、と
そんなコンセプトで書いてみました。
一応分類上は「四十八手・裏お題」の「男装」になりますかね……。
フミカネ氏の新キャラもいずれ書いてみたいですね。
ではまた〜。
- 219 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 07:45:05 ID:/T7HZER6
- >>218
GJ! 絵(or写真?)がないのが本当に悔やまれるレベルの作品です。
ところで、残された男性用士官服はやっぱり(無理矢理)着させられたんでしょうね、
ミーナに。
>>213
この板は百合でウィッチに萌えられれば形式は問わないものだと理解してる。
それが正しいかどうかはよくわからないけど。
- 220 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:26:05 ID:pNdU47BU
- 今月の百舌谷さんでエイラーニャがネタにされてたので、
じゃあ逆に百舌谷さんをパロってしまおうとした結果、
なんかすっかり別物になってしまったものを、まあとにかく投下します。
ヤンデレ有り。8レスの予定。
「今日はみなさんにビックニュースがあります」
と、教壇にのぼったミーナ先生が朝の挨拶をはじめた。
私はいつものように机に頬杖をついて、顔は向けず、耳だけそれに傾ける。
あー、かったるい。
なんで朝の会なんてあるんダロ。授業じゃないならその分遅れて来させてくれればいいのに。
もちろん、そんなこと言えず、ましてや遅刻なんてできるはずないけど。ミーナ先生はおっかないからだ。
だから私は時間ギリギリに登校して、ちゃんと席につくようにしている。
一番後ろの、一番窓側。そこが私の席だ。心から気に入っている。
そこから窓の外をぼーっと眺めていた。
嫌味なくらい天気がいいので、はあ、とため息が出た。
潤いがない。
とにかく退屈で、窮屈で、つまらない。
このところ、そんなことばっか考えてる。考えずにはいられない。イヤになる。
そうやって時間だけは過ぎていく。ホント、イヤになる。
もうこの代わり映えのしない毎日に、いい加減飽き飽きしていた。
けど、抜け出せない。きっかけもない。あー、なにかすごい事件とか起こればいいのに。
そして、そんな私のことなど構うことなく、先生の話は続くのだ。
「実は、私たち5年1組に新しい仲間が加わることになりました」
わあーっ、と教室中から歓声があがった。前の席のシャーリーは特にうるさい。
もちろん私は黙ったままだ。
転校生なんて別に珍しいことじゃない。だからビッグニュースでもなんでもないじゃないカ。
なのに、なんでみんなは驚くんだ。まったく、コドモって無邪気でイイヨナー。
「それじゃあ入ってきて」
というミーナ先生の言葉に、教室の前の扉の開く音がこたえた。
みんなはまた、歓声をあげた。
私はみんなのような、そういう声は出さない。転校生の1人くらい、そんなに興味ないし。
かといって、私も別に興味がゼロってわけでもない。
頬杖をついたまま、入ってきたその子をボーッと眺めていた。
ああ、可愛い子ダナーって。
黒い制服に黒いズボンという服装とは反対に、顔とか肌は雪のように白い。
髪は肩より上で揃えられてて、その色もやっぱり白。
背は低め。華奢で、頼りないカンジ。
なんというか、儚げな第一印象だった。
降ってきた雪に手のひらを出してみると、溶けて水になってしまうみたいな。
……なに考えてんダ、私は。
「オラーシャからやって来たサーニャ――」
ソイツが教壇の真ん中につくと、ミーナ先生が紹介をはじめる。
――けど、ソイツは先生の前を通りすぎてしまった。すっすっと歩き続けている。
窓際まで来てつきあたる。すると、カクン、と直角に曲がり、こっちの方に向いた。
目と目が合った。
そしてまた、すっすっと歩き出した。こっちに向けて。私の方に、どんどん近づいてくる。
ソイツは私の目の前まで来て、ようやく止まった。
ええと、サーニャ、さん……だっけ?
私のすぐ目の前に立ちふさがって、じっと私を見てくる。
まさか転校早々、私のことシメる気なのカ? でも私、別にこの学校の番長とかじゃないし。
もじもじと体をくねらせて、私になにか言おうとしている。
その唇に、つい注視してしまう。息を呑んで、じっと喋り出すのを待った。
そして、言われた。
「好きです」
って。
…………………………はい?
- 221 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:27:31 ID:pNdU47BU
- 「好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き
好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き好き……」
同じ溝を回り続けるレコードみたいに、サーニャって子が繰り返し言ってくる。
何度も何度も何度も何度も、私に向けて。
だんだんそれが、なにかの呪文か、念仏か、はたまた某アニメの主題歌の歌詞に聞こえてくる。
耳がゲシュタルト崩壊しそうだ。
私の耳に言葉たちが取り憑いてくる。このまま離れなくなってしまいそうで、なんだか背筋がぞっとした。
と、とにかく、私からなにか言わないと。じゃないと、この連呼はやみそうにない。
えっと、
「名前……」
「あっ、ごめんなさい。そういえば自己紹介がまだだったよね。
わたしの名前はサーニャ・V・リトビャク。
でも実はこれって本当の名前じゃなくって、本名はアレクサンドラ・ウラジミーロブナ・リトビャクっていうの。
どう? 長ったらしいよね。だからね、サーニャって呼んで、サーニャって。
ねぇ、ちゃんと覚えてくれた? サーニャだよ。さ・あ・にゃ。
絶対に忘れないでね。あっ――でも、たしか先生がもう言ってたよね。
ねぇ、それってどういうこと?
……もしかして、わたしの名前、忘れちゃってたの!?
ひどい! すっごくひどい! ひどすぎる! どうしてそんなひどいことができるの!?
それとも……先生の話を聞いてなかったの? そうだよね。それならいいけど、それってあんまりよくない。
もしかしてあんまり先生の話を聞かないタイプ? 先生の話はちゃんと聞いてないと――」
「じゃなくってサ、」
放っておくと際限なく喋り続けそうだったので、私はサーニャの言葉を遮った。
なんなんダ、オマエ?
それとあとサ、先生の話を聞いてないのはオマエの方ダロ?
先生は教室の後ろで喋りちらす私たちにかまわず、話を続けたままだ。
実は彼女は――とかなんとか。
先生は私たちを止める気配はないっぽいので、私は話を続けた。
「私の名前も知らないダロ、オマエ」
そう。だってコイツは、今転校してきたところなのに。私とは初対面なのに。
なのに好きとか、それってワケわかんネーヨ。
それに、好きですなんて言葉、そう簡単に口にするものでもない。
「そ、そういえばそうだったね……」
サーニャは雷に打たれたみたいになる。漫画的そういうエフェクト。
けど、それも一瞬のことで、
「ねぇねぇ、あなたの名前はなんて言うの?」
次の瞬間にはくわっと顔を近づけてきて、そう訊いてきた。
オイ、近けーヨ。
2つの碧い瞳がまばたきもせずじっと見開かれて、私のことを食い入るように見てくる。
きらきらしている。
……あんまりジロジロ見ンナ……見ないでクレ。
私は顔を背けて、ぼそりとつぶやいた。
「エイラ」
「エイラ! すてき! すっごく、いい名前! きれいな響き!
ねぇ、エイラって呼んでいい? いいよね? いいでしょ?
エイラ。
言っちゃった。ねぇエイラ、今わたし、エイラの名前を呼んだよ、エイラ。
どうだった? 発音とかおかしくなかった? 大丈夫だった?
それでねそれでね、わたしの名前はサーニャ・V・リトビャクっていうの」
いや、それもう聞いたし。
――それが私とサーニャの出会いだった。
- 222 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:28:54 ID:pNdU47BU
- 「すっかり気に入られてしまったわね」
なにがおかしいのか、ミーナ先生は口元を手で隠しながらくすくすと笑って、
「それじゃあ、サーニャさんの面倒はエイラさんが見てくれるかしら。
サーニャさん、わからないことがあったら全部私じゃなくてエイラさんに訊くのよ」
とか言いやがった。
はい、わかりました、とサーニャも了承。
ま、待ってクレ! なんで私がわざわざそんなことを――
「ミーナ、ちょっと待ってくれ」
と、ぴいんと手を上げて言うのが1人。相変わらず、律儀なヤツダナ。
私じゃない。学級委員のバルクホルンだ。
発言するのにわざわざ手を上げるのは、うちのクラスじゃコイツとあと数人くらいなものだ。
なんで学級委員なんてしてるのかといえば、そんなのやりたがってたのがコイツ1人しかいなかったからだ。
「なにかしら、バルクホルン。あと、私のことはちゃんと先生と呼びなさい」
「了解した、ミーナ。それでさっきの話なんだが、そういうことはエイラ1人では大変だろう。
1人より2人いた方がいい、というか、私がいればエイラはいらない。そういうシュチュは1対1がいい。
だからとにかく、そういうことはクラスみんなの姉である学級委員の私の役割ではないかと思」
「じゃあエイラさん、お願いできるかしら」
「マジ?」
と、私は人差し指で自分を差す。
ええ、とミーナ先生はうなずいた。
「な、なんで!?」
私が思わず立ち上がって訊くと、ミーナ先生は言った。
「サーニャさんはね、いわゆる“ヤンデレ”なの」
「ヤ、ヤンデレ……?」
「そう、ヤ・ン・デ・レ。ついさっき話したでしょう」
聞いてネーヨ。だってコイツ(サーニャ)がなんかいろいろしてくんだから。
頭の中で言い訳する私のことなどお構いなしに、ミーナ先生は、
「もっともこの呼び方って俗称で、本当は、
『ヨーゼフ・ヤンデレ博士型双極性パーソナリティ障害』というのが正しい呼び方なの。
好意を寄せた相手にあたかも病んでいるほど激しいデレを見せる症状ね。
別にこれはヤンママみたいに、ヤンキーということはありません。
ここ、次のテストに出すから、ちゃんとノートに取っておくように」
先生のその言葉に、斜め前のペリーヌは言われたとおりノートにシャーペンを走らせている。
流石、メガネなだけはある。
私にそんなことしてるゆとりなどなく(ゆとり教育はどこ行った?)、
「そ、それでどうして私がやんダヨ?」
「だってサーニャさんはあなたにすっかりご執心のようだったから」
「うっ……」
話の流れで薄々わかっていたけど、いざ人から指摘されると、それってなんだか恥ずかしい。
いま私、絶対顔真っ赤だ。
「じゃあサーニャさんをお願いね」
ミーナ先生は話を切り上げようとするので、
「だが断るッ!」
と、私は断固として拒否(当たり前だ)。
あんっ? と、ミーナ先生は心底不服そうに眉間にシワを寄せて私をにらんだ。
そんな顔ばっかしてるとシワが増えるゾ。こんなこと、口が割けても言えないけど(後が怖いから)。
でも、言う時は言わなきゃいけない。
「だっ、だけど、」
「どうかしたの? もしかして、私の決定に文句があるとでも?」
「あるに決まってるダロ!」
「生徒(ひと)は先生(かみ)に従いなさい」
「暴言ダッ! オイ、聞いたカ、みんな! 今、口を滑らせたゾ! さらっとひどいこと言われたゾ!」
「だまりなさいっ!!!!」
ミーナ先生の目がギロリとした。その眼光にいすくめられる。
ううっ……ひるむナ、私。
「…………でも、朝の会の決めごとは多数決っていうのが決まってるから、その、」
「あら、そうだったわね」
と、ミーナ先生は手のひらをあわせて、
「じゃあエイラさんがいいと思う人は手を挙げて」
ミーナ先生ははーいと真っ先に手を挙げた。
それにつられるように、ぞろぞろと手が挙がっていく。
シャーリーも。ペリーヌも。坂本先生(副担任だ)や他のみんなも。
ルッキーニは両手を挙げている。
メンドくさそうにハルトマンも(じゃあ挙げんナ!)。
サーニャもすっかりクラスの一員みたく(いやすでに一員なのか)しっかりと挙手。
手を挙げてないのは私とバルクホルンだけだ。
一目瞭然。数えるまでもない。
「というわけで、エイラさんに決まりましたー」
語尾を伸ばすムカつく言い方をミーナ先生はする。
この時、私は思い知らされた。民主主義は数の暴力なんだって。
私はへなへなと崩れるように自分の席にお尻をつけた。
ミーナ先生は満足そうに微笑みながら、
「それではエイラさんお願いね。あと、バルクホルンは廊下に立ってなさい」
- 223 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:32:26 ID:pNdU47BU
- 案の定と言うべきか、サーニャは私の隣の席になった。
コイツ、目悪かったりしないのカナ。だったら前の席にさせてもらえるのに。
いやミーナ先生のことだから、その時は私も道連れダヨナ……。
「よろしくね、エイラ」
席についたサーニャは笑いかけてきた。
「………………」
私はそれにそっぽを向いた。
授業のはじまりを知らせるチャイムが鳴った。
1時間目は算数だった。
「ねぇ、エイラ」
「………………」
シカトシカト。もう授業はじまるのに、喋りかけてくるナヨナ。
「エイラ? 聞こえなかったの、エイラ? ねぇ、エイラってば!」
「………………」
「どうかしたの、エイラ。わたしの声が聞こえてないの?
も、もしかして……耳垢がたまってるの? たまりまくりなの?
だったら今からわたしが耳そうじを――」
「聞こえてるヨッ!」
私はくわっとサーニャの方に首を向け、叫んでいた。
サーニャはびくっと体を震わせると、よかったと短く言って胸を撫で下ろした。
「……どうかしたのカ?」 気を取り直して私が訊くと、サーニャは恥ずかしそうにもじもじとして、
「実は、その、教科書……」
「教科書?」
そっか、転校してきたばっかで、まだ教科書がないんダナ。見せてくれってことカ。
そんなのハルトマン(サーニャのもう一方の隣の席だ)に……って、アイツ、教科書ないしナ。
「……見せてやってもいいけど」
「本当っ?」
サーニャは晴れやかな顔をする。ころころ表情の変わるヤツだ。
ガッ、ガッ、とサーニャは自分の机を引きずって、私の机に引っつけてきた。
私は2つの机の境界に教科書を開いた。サーニャがそれを珍しそうに覗きこむ。
私の右肩と、サーニャの左肩とがぶつかった。
――のも一瞬のことで、私は反射的にそれから離れた。
「どうかしたの、エイラ」
「な、なんでもない」
ヨナ……たぶん。
なんだったんダ、今の……?
- 224 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:33:26 ID:pNdU47BU
- 「それでは50ページの問題1を90秒で解答しなさい」
というミーナ先生の言葉に、私は問題文とにらめっこした。
宮藤さんはシャーリーさんとペリーヌさんの胸をあわせて12回揉みしだきました。
そのバストの合計は1128センチでした。
では、宮藤さんは2人の胸をそれぞれ何回揉みしだいたでしょう。
ただしシャーリーさんのバストは94センチ、ペリーヌさんのバストは72センチとします。
文章題でちょっとややこしいけど、つるかめ算の問題だ。これなら解ける。
私が今から問題に取りかかろうとしてたのに、
「この問題、間違いがあります」
と、ペリーヌが立ち上がって発言した。
間違い? ていうか、ペリーヌはもう解けたのカ?
「わたくしはこれほどまで貧乳ではありません! こんなの、名誉毀損もいいところですわ!」
そこに食いつくのカヨ、オイ。
ウソつけーぺったんこのくせにー、とルッキーニがはやし立てた。
本当です! それに、あなたにだけは言われたくありませんわ、とペリーヌも応戦。
まあいつもの光景だ。
「ペリーヌさんとルッキーニさん、廊下に立ってなさい」
そのやり取りにミーナ先生は機嫌を悪くするのもいつものことで。
――って、見とれてる場合じゃない。問題解かなきゃ。
そう思って再び、ノートに向かおうとしたら、
「ねぇ、エイラ」
と、サーニャが私の服の袖をくいくいと引っぱってきた。
「これってどうやるの?」
サーニャは首をかしげている。
なんダヨ、こんなのもわからないのカ?
――ま、教えてやってもいいけどサ。実はこれでも、私はこないだのテストで2位だったりするのだ。
「いいカ、よく見てろヨ」
と、私は個人授業を始めた。なんだか自分がちょっと偉くなった気分。
「とりあえず、全部がつるだったら……って考えるんダ。とりあえずナ。
つるはシャーリーダナ、たぶん。
それで合計の1128センチをシャーリーのバストの94センチで割るんダ。
1128÷94=……」
くれぐれも計算間違いしないように、でも遅くなりすぎず、私は筆算した。
計算が終わった。
12余り0。
アレッ? いきなり答えが出たゾ。つるかめ算なのに。
この宮藤ってヤツ、シャーリーの胸しか揉みしだいてないのカ。
ナルホド。じゃあ別に、ペリーヌの胸が何センチでも構わなかったんダナ。
「シャーリーが12回、ペリーヌが0回ダナ」
「すごい! もう解けちゃったの!? エイラって頭もいいのね!」
サーニャは賞賛の眼差しを私に向けてくる。
「ま、まあナ……」
悪い気分はしなかった。
けっけど、あんまりジロジロ見ンナヨナ。
こんくらいの問題、私にかかればどってことないんだから。
- 225 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:35:04 ID:pNdU47BU
- だんだんと、私はサーニャに慣れてしまっていた。
ヤンデレってなんダそれって感じだったし、世話を焼くなんてメンドくさいってたしかに思ってた。
けど次第に、そういう気持ちはなくなっていった。
コイツはすごく変わっるけど、でも悪いヤツじゃない。馴れ馴れしいけど。
最初は変に作ってた壁も、実はそんなのいらないのかもしれない。
そういうふうにサーニャのことを思いはじめていた。
2時間目の理科、3時間目の社会、4時間目の国語と過ぎていった。
そう、それまではよかったんだ。
問題が起きたのは給食の時間だった――
配膳がすべて終わって、みんなが自分の席に戻ってきた。
同じ班のシャーリーとペリーヌも、机をくっつけっこしてくる。
そしてみんなで手をあわせて、声をあわせていただきますと言った。
さて、食事だ。
「なーエイラ。牛乳早飲みしようぜ」
と、シャーリー。なんでコイツはいつもテンション高いんだ。
まあ、いいけど。
おうヨ、と私は応じた。
うちの学校の牛乳は背丈をチビにした牛乳パックに入っている。
まるで家の形だ。四角い土台に三角の屋根が乗ってる。
普通はそれに付属のストローを刺して飲むんだけど、私やシャーリーはそんなことしない。
じゃあどうするかっていえば、牛乳パックの口を開いてそこから飲むのだ。
私たち2人はパックの口に唇をあわせ、でもまだ水平にしたまま。
ペリーヌがイヤイヤ合図を出す。3、2、1――
スタート!
一斉に傾ける。緩やか過ぎず、急すぎず。
牛乳が口の中に流れ込んでくる。
早飲みはいかに効率よく喉に流し込めるかが勝負のポイントだ。その適切な角度を私は心得ている。
「エイラ、頑張って!」
と、サーニャも応援してくれている。
「勝って、エイラ! 負けないで、エイラ! ぎったんぎったんにしちゃって、エイラ!
エイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラエイラッ!」
……オイ、いい加減にしろヨナ。
思わず吹き出しそうになったので、私は一度こらえてからスピードを落とした。
「ああっ、このままじゃエイラが負けて、ううん、エイラに限ってそんなこと……でも……そ、そうだっ!」
サーニャは私のおでこをえいと押さえつけた。
なっ、なにすんダヨ、サーニャ!? 私の首が急速に角度を変える。牛乳パックも――
垂直ぅ!
これはもう流し込むじゃない。落とすとか降らすだ。
耐えきれない。気管に詰まる。喉元の一部分が溺れたみたいになる。
そして、逆流。
うぶはっ!
と、私は牛乳を盛大かつ広範囲に噴き出したしまった。
「どっ、どうしたの、エイラ?」
「ひっ……ひやっ……」
ゴホッゴホッと何度も咳き込みながら、私はなんとかそれだけ言った。
「どうしたの、エイラ? さっきからご機嫌ナナメだよ、エイラ。すねてるの、エイラ。
わたし、そんなエイラは好きじゃないよ、エイラ。ううん、そういうエイラも大好きだよ、エイラ。
なんだか可愛いよ、エイラ。エイラかわいいよエイラ」
黙ってくれないカナ。うずうずしているサーニャを無視して、私は食事を続けた。
――と、
「ねぇ、エイラ」
サーニャはいきなり、私の口に指を突っ込んできた。
今日のメニューのナポリタンをおみやげにして。私はそれを加えた。
するとサーニャはナポリタンのもう一方の先っぽを、はむと口に含んだ。
はむはむはむはむ……少しずつナポリタンがサーニャの口に飲み込まれていく。
なにをするつもりか、わかった。
私は噛みちぎっていた。けど、そんなの関係ない。
はむはむはむはむ……
サーニャの顔が、唇が、一直線に私へと迫ってくる。
来ンナ、来ンナ、来ンナ、来ナイデ……!
咄嗟に私は身を引こうとして、バランスを崩して椅子から転げ落ちていた。
その先には壁。
脳が揺れた。後頭部をモロだった。
痛いとかじゃない。衝撃だった。変なふうに首が曲がった。
血、出たカナ? わかんない。
サーニャが大声で悲鳴をあげる。私の名前を読んでいる。
けどそれも、やがて耳に届かなくなっていった。
サーニャの潤んだ瞳が倒れる私を覗き込んでくる。それが最後。
意識はそこで事切れた。
- 226 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:36:53 ID:pNdU47BU
- まぶたの薄い隙間から焼けつくような光が入ってくる。
慣らしながらようやく明けると、懐かしい顔があった。
私はベッドに寝てて、その女も向かいあって隣に寝ていた。1つのベッドの半分以上を占領して。
「あら、もう起きちゃったの、子猫ちゃん?」
身の毛もよだつ、保健室のアホネン先生だ。
この学校屈指の変人で、数々の一人都市伝説があったりするんだけど、長くなるので割愛。
まあ要するに、ろくな人じゃないってことだけは確かだ。
「起きたけどサ、」
頭は鮮明に働くようになってきて、状況はだいたいわかった。
頭を打って意識をなくした私をクラスの誰かがここまで運んできてくれたんだ。
そう、保健室まで。
かすかに消毒用アルコールの臭いがしてきた。鼻がつんとする。
私は上半身だけ持ち上げて、未だベッドに寝転ぶアホネン先生に訊いた。
「なんで先生まで一緒になって寝てるんダ?」
「役得よ、や・く・と・くっ」
なんだか「とく」という言葉がにごって「毒」と連想させる響きだった。
「ま、まさかっ……!」
私は身体中をまさぐってみた。
なんだか耳のあたりがもぞもぞするので手をやってみると、頭に包帯が巻かれていた。
他には――――よかった、異常はないらしい。
「あらあら、命の恩人に向かってそういう態度だなんて。それって失礼じゃなくって」
その言葉とは裏腹に、アホネン先生は別に心外ってわけでもなさげだった。
「感謝はまあ、する。けど、もっと普通にしてくれヨナ」
「普通? それって、わたくしにとっての普通かしら? 本当ならそうしちゃいたかったんだけれど……」
「な、なんダヨ?」
うふふ、とアホネン先生は笑った。
「あなたの寝顔があんまりにも可愛らしくって」
「ザケンナッ!」
私はベッドから飛び降り、地面に着地した。
やっぱり私、どうにもこの人は苦手だ。なんかいつも自分のペースを乱される。
「もう行ってしまうなんて。つれない子ね。まだこっちには、お話したいことがあってよ」
知るカ! 私、行くからナ!
「エイラさん、落ち着いてよく聞きなさい」
と、アホネン先生は呼び止めた。さっきとは打って変わって、なんだかそう、まともな声で。
それが無性に引っかかった。悪い予感が沸々としたけど。
しふしぶ、私は振り返った。
アホネン先生は起き上って白衣を正すと、似合わない真面目な顔つきになった。
「実はね、治療のついでに、ちょっと脳みそを調べさせてさしあげたの」
「人が寝てる時になにしてくれてんダ!」
「人の話を聞かない子ね――そうしたら、脳にちょっと厄介な障害が見つかったのよ。あなたは……」
とそこで、アホネン先生は言いづらそうに言葉をつぐんだ。
静かな間が少し。
ごくん、と私は唾を呑み込んだ。
「なんダ?」
おそるおそる私が訊くと、アホネン先生はそう答えた。
「いわゆる“ヘタレ”よ」
- 227 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:38:40 ID:pNdU47BU
- …………へっ、へたれっ!?
なにを言い出すんダ、この女は。
でもそういえば、今日やって来た転校生はヤンデレだった。なら、そんなビョーキもあるのかもしれない。
いや、あったとしてもだ。
私がそれだって本当に言えるだろうか。そんなずない。
私がその、なんだ……ヘタレだなんて。そんなの濡れ衣もいいところだ。そうダロ?
なのにアホネン先生ってば、そんな神妙な顔して失礼なこと言うのはやめろヨナ。
「あなたはヘタレなのよ」
また言われた!
なんダヨ、ヘタレヘタレって。
アホネン先生のことだから、きっと私をからかっているんだ。そうに違いない。
アホネン先生の体が小刻みに震えている。やがて、おっほっほっほっ、と高笑いをはじめた。
真剣な顔をしてたのは、笑うのを必死で堪えていたせいらしい。
「わっ、笑うナッ!」
「あらら、失礼――このヘタレっていうのは俗称でしてね、
『ヨーゼフ・ヘタレ博士型双極性パーソナリティ障害』というのが本来の名称なの」
なんかもっともらしい学名が出てきた。ヤバい。私はこういうのに弱い。
アホネン先生は高笑いを再開した。
私は耳をふさぐ。でも、聞こえてくる。私のこと笑ってる。スオムス生まれのくせにって。
真実を知った上で、そのことを面白がっている。それはそういう表情だった。
嘘は言っていない……と思う。
でも、それが嘘じゃないとしたら、本当ってことになってしまう。
それってつまり――
私=ヘタレ。
アリエナイ。
そんな話、あるカ? ないダロ?
だってこれでも私は、クラスでは不思議ちゃんキャラで通ってるのに。
だったら、そんなことがあっていいはずない。
私がヘタレだなんて、そんなこと……
とても信じられない。
いや、信じたくない。
飄々としてて、掴み所がなくって、えっととにかく……そう、クールな、そういう私なのに。なのに。
ヘタレ。
なんて間抜けな響きなんだ。そんな汚名をかけられたなんて我慢ならない。
いや、だけど、だけど……
いくら自問自答してみても、ラチが開かなかった。
「……本当なのカ?」
一度、ちゃんと気持ちを落ち着かせて、そう訊いた。
「ええ、そうよ」
「治せないのカ? 治してくれヨ! 今すぐ!」
私はアホネン先生の二の腕に掴みかかってすがった。
「もちろん完治というわけにはいかないけれど……」
「なんダ? あるのカ? 私、どうしたらいいんダ?」
「恋をしなさい」
と、アホネン先生は言った。
「こ、恋……?」
「そうよ。あなたはもう5年生。1人くらい、そういう相手がいるんじゃなくって?」
たしかに、私の頭に1人、浮かぶ人がいた。
いやいや、これは恋とかいうののはずないし。
それを振り払うように、私はブンブン頭を横に振った。
「イネーヨ」
「本当かしら?」
「そんなヤツ、いるわけネーダロ。なぁ、他に方法はないのカ?」
アホネン先生はなおも視線で追及してくるので、私は話題を変えた。
そうね、とアホネン先生は短く考えこんでからふふふと微笑んで、
「それじゃあ、すこぉしばかり荒治療になるけれど……」
「あるんじゃネーカ。そっちで頼む!」
「今からわたくしの“いもうと”として……」
「やっぱ今のナシ!」
私は襲いかかってこようとするアホネン先生を突き飛ばして、出入口へ急いだ。
恋だって……?
なんダヨ、ソレ。くだんネー。
ヘタレだって言われて――
たぶん、それは本当で――
そんな私が、誰かに恋をするだって?
万一ヘタレだったとして、そんな私を好きになってくれる女が、果たして地球上にいるだろうか。
いるわけない。
だったら、これは一生治ることはないんダ……
扉を引いても開かない。なんで鍵かけてるんダヨ。
私の貞操はかなり危ないところだったんダナ。知らず知らず綱渡りしてたらしい。
鍵を開けて、ガンッ、とヤケクソに扉を解放。
と、そこには私を待ってた人がいた。訊いてないけど、間違いない。
向こう側の壁にもたれかかっている。私を見ると笑顔になった。くやしいけど、可愛い。
いや、それよりも――
なぜだろう。いま一番顔を合わせたくない相手だって思った。
サーニャだった。
- 228 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 12:41:17 ID:pNdU47BU
- 私は今、1人になりたかったのに……
サーニャは私の元に駆けよってこようとする。
それに私はとっさに両手のひらを出して、ストップのポーズをする。
一定の距離と取ると、
「なんでオマエ、ここにいるんダヨ!?」
金切り声でそう叫んでしまっていた。
わざわざ訊かなくたってわかることだった。
エイラ、大丈夫だった? エイラ、まだ痛む? エイラ、もう治った?
そんなことを繰り返し言われた。いや、私がケガしたのオマエのせいだし。
「とにかくもう大丈夫だから! 私のことはそっとしといてクレ! 用事ないんダロ? どっか行ケ!」
きつい言い方になってしまった。言葉を選んでる余裕はなかった。
もう頼むから、私を1人にしてくれヨ……
が、サーニャはその場にとどまったまま、動かない。
「あるよ。実はとっても大切な話があったの」
そしてサーニャはそう言った。
夕日に染まる学校の廊下。遠くでカラスが鳴いている。
下校時間はとうにすぎているのだろう。私たちの他に人気はなかった。
「ねぇ、エイラ。わたしね、エイラのことが好き」
うん、知ってる。
よくわからないけど、コイツって私のことが本当に好きなんだってことはわかる。
――ううん、やっぱり違う。
私がヘタレだって知らないから、サーニャは好きとかそんなこと言えるんだ。
「それがどうかしたのカ?」
と、声を落ち着かせて、そう訊いた。
「それでね、わたしまだ、エイラの気持ち聞いてないなって」
気持ち、だって?
たしかに言ってない。今日会ったばっかだし。振り回されてばっかだったし。
私ってサーニャのことを、どう思ってるのか……
いろいろ浮かんだ。ウザいし、わけわかんネーし、ケガまでさせるし。
だけど……ううん、やっぱなんでもない。
「だからね、」
と、サーニャは続けた。
「好きって言って」
ドクン、と私の心臓が強く脈打った。
「な、なんでダヨ?」
「言って。お願い」
サーニャは黙り込んでしまった。
私の言葉を待っている。
その姿は寂しげで、今にも泣き出してしまいそうだった。
言わなきゃ、泣かれる。確信だった。
だから、言おう――と決めた。
泣かせたくはなかった。それに、言わなきゃ収拾がつきそうにないから。
別にこの場限りだし、どうとも思ってない。
嘘つくことになるけど、それでいい。言ってしまえばいいんだ。簡単じゃないカ。
私は好きだって言おうとした。
なのに――口からは出てこない。
一向に。うんともすんとも。しゃべり方を忘れてしまったみたい。
どうしてこんなに、心臓がバックンバックンするんだ。
全身から汗が出てくる。体がガタガタと震えてきた。
どうして私、こんなふうになっちゃうんダヨ。なあ!
それって、私がヘタレだから……?
いや、それよりも。
なんでそんなにコイツのこと、私は意識しているダ?
私って実は、コイツのことが――
そんなはずない。私は別に、サーニャのことなんてなんとも思ってないんだから。
だったら言えるはずだ。
ほら、言えヨ、私。たった一言ダロ。さあ、早く。言え、言ってシマエ。
す、す、す――
「スマン」
私はそう言うと、サーニャに背を向けて走り出していた。
どうして私は逃げてるんダ?
わけわかんネーヨ。走り出したい気分。全力失踪中だけど。
――と、
「ねぇ、どうしたの、エイラ。待って!」
後ろからサーニャが追っかけてくる。私はスピードを落とさず振り返った。
その目には涙を浮かべている。
泣かせてしまった。そんなつもり、なかったのに……
それでも私は走り続けた。
言ったダロ、さっき。スマンって。悪いと思ってるのは本当なんだ。
でも、人のことまで考えてる余裕ないんダヨ、今は。
「ゴメン、ゴメン、ゴメンッ……!」
私は声のかぎり叫んだ。
私まで泣き出してしまいそうだった。
「ねぇ、エイラ! 待って!」
サーニャはダイブしてきて、私の腰に腕を巻きつけた。
「うわっ!」
私はつんのめった。
バランスを失う。たて直せない。スローモーションが始まった。
今日二度目。今度は前。
――ごんっ、と頭を地面に打った。
そうしてまた、次第に薄れゆく意識の中、思った。
これから私は、
じゃなくて。
これから私たちは、一体どうなってしまうんダ?
以上です。1レス増えましたすいません。
続くかもしれないし、続かないかもしれません。
タイトルは「サーニャさん逆上せる」です。「ぎゃくじょうする」じゃなくて「のぼせる」。
- 229 名前:名無しさん:2009/06/26(金) 13:18:43 ID:wU23XDNQ
- >>228
元ネタ未読だがこのサーニャはwww
是非続きも!
- 230 名前:名無しさん:2009/06/27(土) 09:53:26 ID:uKCyU6aI
- >>228
なんぞこれwwめっちゃ笑いました。GJ!!12余りゼロひでぇww
しかし病んデレサーニャたまりませんなあ。大好きです。続きも期待していいのかな?
- 231 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 20:51:37 ID:.CyxjwjY
- エイラーニャ一本投下します。
保管庫のNO1062の後の話なので、知らない方には申し訳ないです。
4レス位使わせていただきます。
- 232 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 20:52:05 ID:.CyxjwjY
- 「エイ…ラ……」
「大丈夫だよサーニャ…力、抜いて?」
ベッドに仰向けになった私の視界にうつるのは、軍服とシャツの前をはだけたエイラと
彼女の部屋の天井…
カーテンの隙間から入る月明かりに照らされた髪と肌はあまりにも綺麗で
小さい頃に見た絵本に登場する女神様みたいだった。
ボタンを外す音が部屋に響く。
エイラの手が私のシャツのボタンをゆっくりと外していく。
瞳は私に向けられ、まっすぐすぎる熱い眼差しに思わず視線を反らす。
「サーニャ、私を見てくれ。私だけを見てくれ…愛してる」
耳元で囁かれ思わず体が縮こまる。エイラの唇はそのまま下に移動して、吐息が首にかかった。
ボタンは最後まで外され、細い指がついにズボンにかかり………
コンコンッ
「っ!!!」
「サーニャちゃーん、時間大丈夫?」
ノックの音と芳佳ちゃんの声で私は目を覚ました。見えるのは見慣れた自分の部屋の天井で、エイラはどこにもいない。
……今の…夢…?わ、私…なんて夢見てるの…!!
一気に顔と体が熱くなった。時計を見ると、夜間哨戒に出なければいけない時間だ。
さっきのエイラの事があってから今までの記憶がない…正確には、その記憶の部分には
さっきまでの夢が入り込んでしまっている。
……多分、エイラが慌てて部屋から飛び出した後、私は告白を聞かれていた事にびっくりし過ぎて意識を手放したのだろう。
わからなかったとはいえ、どれだけ私がエイラを好きかを告白し続け、
キスまでした後のあの夢は刺激が強すぎるよぉ…
「お邪魔しまーす。サーニャちゃん具合悪いの?哨戒代わろうか?」
いつまでも返事をしない私を心配して芳佳ちゃんが遠慮がちにドアを開ける。
「顔が赤い」っておでこに手をあててくれる芳佳ちゃんには悪いけど…赤いのは熱があるからじゃないと思う。
哨戒には自分が出ると伝えて、部屋から去ろうとする背中に思わず声をかける。
「芳佳ちゃん、あの…エイラは?」
名前を出すだけで顔が熱い…また心配させないように、顔を見られないよう俯き気味に聞いてみた。
「多分ハルトマンさんのところじゃないかな?さっきすごい剣幕で
『あの悪魔はどこダ!!』って聞かれたよ?なんか今日はよく誰かの居場所聞かれるなー、何かあったの?」
やっぱりハルトマンさんなんだ…
私も正確に説明出来ないからしどろもどろになりながらごまかして
エイラに会うこともなく夜の空に向かった。
- 233 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 20:52:32 ID:.CyxjwjY
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
サーニャが飛び立ったその頃…
「ハーールーートーーマーーン!!!!!!!」
勢い等ではなく、本当にドアを蹴り破ってエイラがハルトマンの部屋に乗り込んでいた。
ただでさえ汚い部屋に倒れたドアは埃を撒き散らし、さらにめちゃくちゃになる。
「やっほーエイラー、元に戻ってんじゃん。やっぱり一日もたなかったか」
「この鬼!悪魔!!サーニャに嫌われただろーガ!どーしてくれんだよオマエー!」
サーニャからの告白もキスもすっかり忘れ、むしろそのあとの自分が押し倒したような
あの状態の方がこのヘタレのエイラにとっては重要らしい。
嫌われるも何もすぐに逃げ出したくせにエイラはハルトマンにつかみ掛かる。
「そんな叫ばないでようるさいなー、じゃあほらこれ。
これを飲めば今日一日の記憶はすっかり真っ白何事もありませんでしたーってなるよ」
「信じるわけないだろーがこのバカー!!二度と引っ掛かるカー!」
差し出されたビンを取り上げ、叩き割ろうと壁に振りかぶったエイラの耳にぽつりと
「いいのかなー?」
ハルトマンの落ち着いた呟きが聞こえた。
その声に少し冷静になったエイラは動きを止める。怒りたっぷりの視線を向けると、
ハルトマンはいつもと代わらない笑顔だった。
「考えてもみなよ、人をぬいぐるみにするなんて有り得ない飲み物を作るハルトマン一家だよ?
記憶をなくす飲み物作れたって普通じゃん、実際ぬいぐるみになったエイラが
そのビン割っちゃっていいのー?」
エイラは言葉に詰まった。
本人が思い込んでいるだけだが、今のエイラにとって1番重要なのは嫌われたサーニャと仲直りする事。
このままではなんと言って仲直りすればいいかわからない…あまりに胡散臭いが
この飲み物は本当に記憶を無くしてくれるかもしれない、さっきのは確かに自分をぬいぐるみにしたのだ。
サーニャでいっぱいの頭には冷静な判断力というものはなかった。
そうだ、最初から何もなかった事にすればいい…エイラは体をハルトマンに向け、真面目な口調で聞いた。
「……本当なんだナ?」
「私は嘘はつかないよ。サーニャの分とほら、二人分。今までと同じに戻れるよ」
二つのビンを見つめ、決意を固めたエイラはビンを開けた。
先にサーニャが飲んで何か起きてはならないので、エイラは一気に中身を飲んだ。
- 234 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 20:52:54 ID:.CyxjwjY
- −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
日も昇りはじめた早朝、哨戒も終わって基地が見えて来た。
「………はぁ……」
いつもなら欠伸が出るポイントで出たのはため息。
なんてエイラに言おう…おもいっきり告白してしまい、それから時間が随分たってしまったから
どんな顔をしていいかわからない、なんて言えばいいかわからない。
「今日はエイラの部屋いけないよね…自分の部屋で寝よう」
酷く後ろ向きな考えだとはわかっているけど、自分からエイラの所に行く勇気はなかった。
ストライカーを外し、自分の部屋に向かう途中でどうしても通るエイラの部屋…
なんとなくドアプレートを見ないようにそっと通りすぎようとした時、カチャっとドアが開いた。
「さーにゃ!おかえりー」
「エ、エイラ!?なんで起きてるの!?」
「なんでって…さーにゃをまってたからにきまってんダろー?サ、ねよねよ」
「えっ?ちょ……」
強引にエイラに腕を掴まれ、そのまま部屋に引きずりこまれた。
特に変わった様子はなく、それどころがとても機嫌がよさそう。その上…
「よいしょ…っト」
「きゃ…っ!」
ドアをしめた途端、魔力を介抱したエイラにお姫様だっこをされてそのままベッドに運ばれる。
私を離さないでベッドに腰掛けたエイラは、そのままぎゅーっと私を抱きしめてくる。
「んー…さーにゃかわいい…いいにおいだしあったかいんだナー」
「な…っ、エイ……、えぇっ…?」
もう何がなんだかわからない、私の口からは言葉になっていない音が途切れ途切れに出るだけ。
ずっとずっと夢にまで見た状態なのに、突然過ぎて受け入れられない…
失礼だけど、エイラが尻尾をぱたぱた降りながらいきなりこんな事してくれる訳……ん…?
- 235 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 20:53:17 ID:.CyxjwjY
- 「さーにゃー?なんでくんくんしてるんダー?
ワタシはブルーベリーでもシュールストレミングでもないゾー」
「……エイラ…お酒飲んだ?」
「おさけはのんでないー…」
そんなはずない、エイラの軍服の襟の小さなシミから強いアルコールの匂いがする。
……エイラってお酒弱かったんだ、飲んでるところなんて見た事ないから知らなかった。
酔ってるとわかるとなんか全てが納得できた…エイラは普段こんな事しないもんね
「どうしてお酒なんか…いっぱい飲んじゃったの?すごく酔ってる」
「だからおさけはのんでないってバ、のんだのはジュースだヨ」
「ジュース?どんなの飲んだの?」
「ハルトマンからもらったきれーなビン…うまかった…さーにゃのもあるゾ」
そう言ってエイラは私に綺麗なビンをくれた。開けて香りを確かめてみると…やっぱりお酒みたい。
何があったかわからないけど、ぬいぐるみにされた直後にお酒飲まされるなんて…
私を抱きしめながらほお擦りする様子もあって、ちょっと……あの…
…おばかさんに見える…ごめんね、エイラ
「エイラもう寝よう?私、お水とってくるから」
「やだー、さーにゃといるー、このままねるゾー」
体を離そうとした私をぎゅーっと抱きしめ、エイラはいやいやと首を振る。
う、うわぁ…可愛い…こんなに緩んだ表情見れるなんてちょっとラッキーかも。
寝るなら大丈夫かな?と思い、私はどこにもいかないからとエイラにベッドに入るように促す。
「えへへー、さぁにゃー…ぎゅってしてねていいかー?」
「う、うん…は、早く寝よう!?」
エイラに抱きしめられて寝るなんて幸せすぎてどーにかなりそう…
…たまにお酒飲ませてもいいかな?
エイラは軍服とシャツのボタンを外し、眠る準備をしている。
私も服を脱ごうとベルトを外してシャツに手をかけると、遮るように前からエイラの手がボタンを外し出す。
「え、えいらっ!?」
「てつだうゾ、はやくぬいではやくねよう」
自分はまだボタンを外しただけなのに、エイラは私の服を脱がし始めた。
寝ぼけてる時に服を着せてもらった事はあるけど、脱がされるのははじめてで
一瞬で今朝の夢を思い出した私は思わず体をひいてしまい
シャツを掴んでいたエイラと一緒にベッドに背中から倒れた
「………っ!!」
私にエイラのような未来予知の力はないのに、目の前の光景は今朝の夢と何一つかわらない。
ベッドに仰向けになった私の視界にうつるのは、軍服とシャツの前をはだけたエイラと
彼女の部屋の天井…
カーテンの隙間から入る光は夢と違って朝日だが、照らされた髪と肌はあまりにも綺麗で
小さい頃に見た絵本に登場する女神様みたいだった。
(夢と……同じ…)
ボタンを外す音が部屋に響く。
エイラの手が私のシャツのボタンをゆっくりと外していく…
その後はなんだった?エイラの口から出た言葉はなんだった?
エイラの顔が私に近づき、耳元で囁かれるであろう言葉を待つのに思わず体が縮こまる。
聞こえた言葉は……
「………………くー………」
寝息だった。
「〜〜〜〜〜〜っ!!!!!」
声にならない叫びと共に、私はエイラの下から抜け出して枕を掴み、幸せそうな寝顔に力の限りたたき付けた。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
翌日のエイラは二日酔いで頭が痛い、昨日の朝から夜までの事をまったくと覚えていないと首を傾げていた。
………エイラなんかもう知らないっ!!
おしまい
- 236 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 20:55:36 ID:.CyxjwjY
- 終わりです、酔ったサーニャはいくつか見た事あるのですが、エイラはあまりないかなと
思って書いたら続き物になってました。
読んでくださった方ありがとうございます。
P/zSb9mc
- 237 名前:名無しさん:2009/06/30(火) 22:22:44 ID:RwB6R1sA
- >>236
GJ!
なんだ、これ。すごく萌えるんですけどっ!?
- 238 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:03:17 ID:qxuqDERQ
- 突如降ってきた電波投下します。激しく人を選ぶネタで申し訳ないです。
6レスの予定。
オールスターのスタメンwwwwwwww
1 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:22:56.84 ID:CEYeaGer
ちょwwwミーナ中佐wwwww
2 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:23:19.57 ID:Lucchini
kwsk
3 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:23:19.86 ID:LyNEchan
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
4 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:23:19.95 ID:ymkw3ti5
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
5 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:25:03.17 ID:kangohu9
1フランチェスカ・ルッキーニ(妹)
2エイラ・イルマタル・ユーティライネン(妹)
3クリスティアーネ・バルクホルン(妹)
4宮藤芳佳(妹)
5サーニャ・V・リトビャク(妹)
6ヘルマ・レンナルツ(妹)
7ウルスラ・ハルトマン(妹)
8リネット・ビショップ(妹)
9ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ(婆) ←
Pペリーヌ・クロステルマン
6 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:25:25.25 ID:HeTrEILa
>>5
wwwwwwwww
7 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:25:30.19 ID:MiYosika
ちょwwwww
8 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:25:34.67 ID:Lucchini
>>5
婆wwww
9 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:25:42.02 ID:oraSanyA
>>5
ババアwwwwww
10 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:26:03.39 ID:PerrineH
>>5
マリーゴールドのハーブティー吹いたwww
11 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:26:39.00 ID:ursulaHr
>>5
それより6番は間違い?
ウーシュの姉は姉様だけ。
12 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:26:39.00 ID:ELiCazbr
なにこれ
エーリカ嫌われてるの?
13 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:27:04.80 ID:CHRItriS
そんなことより4番がクリスじゃない件
14 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:27:49.32 ID:
>>13
メジャーでは最強打者を3番に置くのが主流。なにもおかしなことはないが?
だいたいスタメン発表されただけでいちいち騒ぎすぎだろ貴様ら。
15 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:29:11.71 ID:CEYeaGer
そもそもあの堅物が監督な時点でこうなるとは思ってたよ
>>14
本人乙
16 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:30:40.19 ID:PerrineH
とはいえミーナ中佐に関しては妥当ですわね。
やはり坂本少佐に相応しいのはペリーヌさんの方だと確信しましたわ。
17 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:31:23.67 ID:Lucchini
>>16
おはP
- 239 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:04:45 ID:qxuqDERQ
- バルクホルンの姉の方刺し殺す
1 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:39:58.38 ID:31731831
刺殺狙う
盗塁しやがったら絶対刺す
2 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:40:14.83 ID:RenNsuKe
これはアウト
3 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:40:14.86 ID:ymkw3ti5
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
4 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:40:15.02 ID:LyNEchan
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
5 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:40:19.82 ID:oraSanyA
記念カキコ
6 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:40:38.74 ID:kangohu9
>>1
刺殺がつくのは捕手じゃなくて遊撃手(二盗の場合)
やっちゃったね、あーあ
7 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:40:55.03 ID:MiYosika
>>1
通報しました
8 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:41:32.44 ID:tarumiya
自分は樽宮
9 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:41:59.54 ID:LMa0vNen
>>1
>>8
通報しました。
10 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:42:06.57 ID:0NeEChan
残念だが当然、ミーナらしい最期と言える。
11 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:42:24.54 ID:PerrineH
あの方ってどうも苦手だったんですわよね。
本当に逮捕されるなら私的にもとても助かりますわ。
12 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:42:40.63 ID:Lucchini
>>11
おはP
13 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 17:44:44.44 ID:0NeEChan
こんな時間に誰か来たようだ。
試合前に一体誰だ?
- 240 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:06:17 ID:qxuqDERQ
- MVPを予想するスレ
1 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:05.32 ID:RenNsuKe
本命 ペリ犬
対抗 レンすけ
大穴 豆狸
2 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:19.72 ID:31731831
おはP
3 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:20.99 ID:LyNEchan
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
4 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:21.01 ID:ymkw3ti5
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
5 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:43.92 ID:CEYeaGer
>>1
おはP
6 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:50.46 ID:hizikata
これはおはP
7 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:38:53.71 ID:oraSanyA
はいはい、おはPおはP
8 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:39:05.33 ID:Lucchini
いやこれはおはPに見せかけたおはレン
マジレスするとこんなとこ
本命 ルッキーニ(2安打1盗塁1ファインプレー)
対抗 芳佳(2安打2打点1失策)
大穴 サーニャ(1二塁打1打点)
9 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:39:45.79 ID:PerrineH
>>8
おはF。
MVPは普通にペリーヌ。常識的に考えて。
10 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:40:13.03 ID:Lucchini
>>9
おはP
11 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:40:58.81 ID:sakamoto
ところで今更だがおはPって何だ?
12 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:41:31.54 ID:PerrineH
P=パーフェクト
13 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:41:36.79 ID:Lucchini
ペッタンコのPだよ
14 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:42:32.22 ID:ELiCazbr
どうでもいいけど柿ピーのピーってなに?
15 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:43:02.22 ID:ursulaHr
>>14
ピーナッツのピー。
16 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 19:43:30.17 ID:oraSanyA
そんなこと言ってる間に逆転されてしまった件
- 241 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:07:51 ID:qxuqDERQ
- 頭に夜のと付けるとエッチになる件について
1 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:05:23.60 ID:oraSanyA
夜のフリーガーハマー
2 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:05:55.04 ID:mAr0niEe
↓以下嫌いなウィッチ
3 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:05:59.16 ID:ymkw3ti5
2なら夜の芳佳ちゃんは私の嫁
4 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:06:00.71 ID:LyNEchan
2なら夜の芳佳ちゃんも私の嫁
5 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:06:15.46 ID:CEYerGer
>>1
確かに
夜の最速記録更新
6 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:06:18.90 ID:HeTrEILa
サウナの後は夜の水浴びに限るんだ
7 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:06:53.30 ID:Hydemary
夜の2 hundred over
8 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:07:52.46 ID:ameliePL
夜のトライアングル・スクランブル
9 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:08:11.51 ID:TKIjunk0
夜のfalcon eyes
10 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:08:41.46 ID:31731831
夜のリリー・マルレーン
11 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:10:07.72 ID:Lucchini
夜のおはP
12 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:12:02.72 ID:oraSanyA
夜のノイエ・カールスラント
13 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:12:56.72 ID:oraSanyA
夜のダイナモ作戦
14 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:13:44.89 ID:oraSanyA
夜のオストマルク陥落
15 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:14:47.01 ID:oraSanyA
>>14
ハゲワロスw
16 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:14:49.57 ID:sakamoto
夜の君を忘れない
- 242 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:08:50 ID:qxuqDERQ
- 【速報】ペリーヌ、ハイタッチをスルーされる
1 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:04.39 ID:HeTrEILa
ペリンゴwwwwwww
2 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:18.56 ID:MiYosika
さかもっさんwwwww
3 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:20.64 ID:sugihito
もっさんヒドスwwwwwww
4 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:21.09 ID:LyNEchan
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
5 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:21.13 ID:ymkw3ti5
2なら芳佳ちゃんは私の嫁
6 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:30.58 ID:ameliePL
ペリーヌさんかわいいそうです(´;ω;`)
7 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:42.73 ID:CHRItriS
数秒間その場に立ち止まって顔面硬直させてたのが超泣けた
誰かキャプうpして
8 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:11:47.12 ID:PerrineH
くだらないことでスレ立てすぎ。
鯖負担も考えたら如何?
9 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:12:01.79 ID:Lucchini
>>8
おはP
10 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:12:24.84 ID:oraSanyA
ペリーヌ「鯖負担も考えたら如何?(メガネクイッ」
11 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:12:40.14 ID:kangohu9
>>7
ttp://uploda.lily/jlab-dat/sw/32098.jpg
12 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:12:59.78 ID:sugihito
>>11
wwwwwww
13 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:13:22.16 ID:mi82Ji16
いい表情してるなw
つか、もっさんはさっきからケータイで何してるんだ?
14 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:13:57.64 ID:Lucchini
2ちゃんやってたりしてw
15 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:14:40.83 ID:CEYerGer
あるあ……ねー……あるあるwww
つかもっさん以外にもベンチでケータイいじってる奴大杉
まさか他の奴らも2ちゃんやってるんじゃないだろうな?
やってる奴は怒らないから素直に挙手してみろ
ノ
16 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:15:09.81 ID:CHRItriS
ノ
17 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:15:12.43 ID:oraSanyA
ノ
18 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:15:14.34 ID:HeTrEILa
ノ
19 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:15:20.38 ID:31731831
ノ
20 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:15:37.31 ID:MiYosika
ノシ
21 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:16:02.14 ID:PerrineH
まったくあなたたちときたら、揃いも揃ってなんなんですの?
ノ
22 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 20:16:03.26 ID:sakamoto
おまえら2ちゃん好きすぎだろ
少しは試合に集中しろたわけ
ノ
- 243 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:10:19 ID:qxuqDERQ
- 今年のオールスターも終わってしまったお(´・ω・`)
1 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 21:58:32.63 ID:ymkw3ti5
1回も2ゲットできなかったお(´・ω・`)
2 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 21:59:17.36 ID:LyNEchan
私も無理だったお(´・ω・`)
3 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 21:59:00.07 ID:Hydemary
>>2
出来てる
4 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 21:59:05.83 ID:PerrineH
ハイタッチをスルーされましたお(´・ω・`)
>>2
出来てますわよ。
5 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 21:59:23.84 ID:LyNEchan
マジだwwwww
美千子ざまあwwwwwww
6 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:00:00.00 ID:ELiCazbr
あんまり妹とおしゃべりできなかったお(´・ω・`)
7 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:00:00.00 ID:ursulaHr
もっと姉様とおしゃべりしたかったお(´・ω・`)
8 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:00:17.42 ID:RenNsuKe
なんだか私だけ場違いじゃなかったかお(´・ω・`)
せっかくMVP取ったのにお(´・ω・`)
9 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:00:23.85 ID:Lucchini
カノが真中中央の140キロ直球を二ゴロ併殺しちゃったお(´・ω・`)
10 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:01:19.53 ID:CEYerGer
>>9
もう許してあげてくれお(´・ω・`)
>>6-7
秒数すげえwwwww
11 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:01:17.16 ID:oraSanyA
わざと自演したのにスルーされたお(´・ω・`)
12 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:01:49.13 ID:MiYosika
肉体的援助でアウトになったお(´・ω・`)
13 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:02:16.52 ID:HeTrEILa
どさくさに宮藤に胸を揉まれたお(´・ω・`)
14 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:02:16.52 ID:CHRItriS
お姉ちゃんが大変なことになってしまったお(´・ω・`)
15 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:07:38.38 ID:31731831
自分の手を汚してしまったお(´・ω・`)
16 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:08:42.07 ID:sakamoto
よくわからないうちに終わってしまったお(´・ω・`)
17 :名無しじゃないから恥ずかしくないもん!:1944/07/25(土) 22:10:53.49 ID:0NeEChan
危うくドーバーの海底に沈められるところだったお(´・ω・`)
以上です。ごめんなさい。
オールスターはベンチでの会話をニヤニヤ妄想するのが好きです。
タイトルは「おーるすたー!」です。OsqVefuYでした。
あと保管庫の管理人様へ。
>>176-179が抜けてるっぽいので、ついでに入れといてくれれば幸いです。
- 244 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 19:55:44 ID:/rHUYWmQ
- こういうのは書き込みテストスレの方がウケはいいかも
- 245 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 20:20:32 ID:nf/ML9LU
- でもわろた
- 246 名前:名無しさん:2009/07/26(日) 20:55:28 ID:WuI4lgcE
- 良くこれだけネタが出てくるしw
個人的なMVPはサーニャの自演wGJ!
- 247 名前:名無しさん:2009/07/27(月) 03:14:32 ID:bpvfquvI
- >>243
ワロタ
これはGJと言わざるを得ないw
- 248 名前:名無しさん:2009/07/28(火) 00:36:39 ID:cvjjn20o
- >>243
ID:LucchiniがおはPしすぎで萌えるww
- 249 名前:名無しさん:2009/08/02(日) 03:02:55 ID:esLudqjg
- >>243
GJ(笑)
オールスターネタでここまでやるとはすげぇ
- 250 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:44:10 ID:KiXTlVNI
- 間あきましたが>>228の続き投下します。
ヤンデレ有り。変なの出没有り。9レスの予定。
気がつくと私は、知らない部屋のベッドで寝ていた。
どこダ、ココ……?
ぐるり部屋を見回そうとすると首筋に痛みが走った。それでもなんとか全景を確認する。
殺風景な部屋だった。ダブルベッドがぽつんとあって、それでもうおしまい。
カーテンは閉めきられているので部屋は暗くて、今が昼か夜かもわからない。
なんで私、こんなところにいるんダロ?
おかしい。だってついさっきまで私は学校の廊下で……サッサッサーニャと、
…………………………。
思い出したくない記憶が脳裏に浮かびあがってきて、それを振り払おうと寝返りを打とうとした。
しかし、できない。
手も足も動かない。まるで金縛りにあったみたいだった。
いや、違う。手首が縄できつく固結びされてるんだ。足首も。なんで今まで気づかなかったんダロ?
おかしい。なんで私、こんなとこに――
と、そんな私を見下ろしている人間がいることに気づいた。
カチンと視線と視線ががぶつかると、そいつは微笑みかけてきた。
サーニャだった。
にじんだような照明のオレンジが、その顔を浮かびあがらせる。
いつの間に現れたんだ、オマエ?
……わからない。ぜんぜんさっぱり。気づいたらそこにいた。私の枕元のすぐそばに。
なんとなく、宇宙人がさらってきた人間を観察してるときの、そういうシュチュを連想した。
見下ろすサーニャと、仰向けに無防備な私。まさにそういう状況だった。
サーニャは口元をほころばせて、
「ふふっ。エイラって可愛い」
「かかかっ可愛くなんてネーヨ!」
「ううん、やっぱりエイラは可愛い。そうやって照れちゃうところがまた可愛くって好き」
「なっ……!」
ななななにを言ってんダヨ、オマエ。わっわけわかんネー。
す、好きとかそんなこと、なんでそんなに軽々と言えるんダヨ。なあ?
「エイラってば耳まで真っ赤」
「そ、そんなはずないダロ!」
「あっ、さらに赤くなった」
違う違う違う。これっぽっちも赤くなんてなってない。顔が熱いのも私の気のせい。
「そっそっそんなことよりっ! どうして私はこんななってんダヨ!?」
「こんなって……?」
「とぼけんナヨ! なんでベッドに縛りつけられてるのかって訊いんダ! オマエがやったんダロ!?」
「うん、そうよ」
認めやがった。あっさりと。認められてしまった。
「だってそうしないとエイラは逃げちゃうもの」
グサリ。
と、本当に胸に刺さるようだった。淡々とした言葉が冷たく響いた。
「どうしてエイラは言ってくれなかったの? どうして逃げたりしたの? ねぇ、どうして?」
「そそそれは――」
それは私が、
言いよどんでしまった。いや、そもそもこんなこと、誰にも言えるわけないことだった。
特にサーニャになんて、絶対、どんなことがあっても、口が避けても言えないことだ。
長い長い沈黙だった。時間の感覚を忘れそうなくらいに。
勘弁して、勘弁して……心の中で何百回そう念じ続けただろう。
「――まあ、いいわ」
耐えかねて先に口を開いたのはサーニャだった。
その言葉に私は胸を撫でおろした――のもつかの間、
「だって今からエイラが言ってくれるんだもの」
「なっ、なにをっ!?」
「えっ? エイラはこれから、わたしに『好き』って言ってくれるんでしょう?
何千回も何万回もわたしに向けて言ってくれるんでしょう? 『大好き』って。『愛してる』って」
な、なんだ、コイツ。なに決めつけてるんダ?
頭おかしいんじゃ……いやそうだった、コイツってヤンデレだったんだ。
い、言わなきゃなにされるかわかったもんじゃない。
この場はとりあえず、言っとかなきゃ。嘘でもなんでもいいから。
私は言った。
「……………………」
- 251 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:45:40 ID:KiXTlVNI
- ううん、言えなかった。
口元がぎこちなく震えるばかりで、なんにも。たった一言のはずなのに。
まるで呪いにかけられて声をなくしてしまったみたいだった。
なんで私、コイツといるとこんなふうになっちゃうんダ?
いつもそうだ(会ったばっかだけど)。いつもいつもいつも。コイツは私をおかしくさせてしまう。
こんなことはじめてだった。なんでなのか、わからない。自分のことのはずなのに、全然わからない。
「どうしたの、エイラ? ………………言ってくれないの?
ううん、そんなはずないわよね。だってエイラはわたしのこと大好きなんだもの」
だっ、だから決めつけんのヤメロヨナ!
サーニャはそんな私の心の叫びなんて軽々と無視して、
「それにね、今日はこんなものを用意してきたの」
と、それを顔の前に掲げてみせる。
う、動いてるっ……!
黒いうにょうにょしたものがボウル山盛り。いっ、一体何百匹集めたらこんなことになるんダ……?
――いや、それよりも。
そんなもの、どこから出して来たんダ?
取り出したとかじゃなく、出現したって感じ。さっきまでなかったはずなのに。
おかしい。やっぱこれ、絶対おかしい――
「それじゃあルールを説明するわね。
エイラはわたしに向かって『好き』って言ってね。『愛してる』でもかまわないわ。
言ってくれるたびにわたしはエイラにご褒美をあげる。
――でも。
もし、よ。もし万が一、他の言葉を言ってしまったり、なにもしゃべってくれなかったりしたら……
その時は、わたしはエイラにお仕置きをしなければならないことになってしまうわ」
「お、お仕置き……?」
「ええ。これを使うのよ」
と、サーニャは指先でそいつを1匹、つまみ上げてみせた。
ぴくん、とその黒いのは跳ねた。
「ひっ……!」
思わず声が出てしまった。
「どうかしたの、エイラ? もうゲームは始まっているのに」
「どうかしたに決まってるダロ! なんに使うっていうん…………へっ?」
今、なんてった? たしか、ゲームが始まったとかなんとか……
「言ってくれなかったね。しかもそのあとにもなにか言ってたよね……
本当はわたしだってこんなことはしたくないんだけど……でも、ルールだから仕方ないよね?
そのいけない口には、こいつをねじりこんであげなくっちゃ」
私は頭が真っ白になった。
ようやく思考が戻ってくると、次は顔を真っ青にする番だった。そういう顔になってたんだと思う。
- 252 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:47:39 ID:KiXTlVNI
- 「悲しいよ、エイラ……わたしだってこんなことしたくない……」
なっ、ならやめてくれヨ!
イヤなんダロ? ナ?
だってそれ、生きてるし! おもいっきりうにょうにょしてるし!
ぶんぶんぶんぶん、私は首を振った。そのまま頭がどっかに飛んでいってしまいそうな勢いで。
けど、サーニャはそいつをつかんだ手を私の前に差し出してきて――ン?
「ちょっ、待て。なんで2匹なんダ?」
「あっ」
と、サーニャはボウルに手をやって、またにもう1匹つまむ。
「いや、増やせって言ってるんじゃなくてサ」
と私が言うと、サーニャはさらにもう1匹。
「………………」
ようやくここで理解した。私はなにも言えないんだ。“好き”って言葉以外には。
「ほら、エイラ。あーんして」
私のすぐ口の前へとやってくる、サーニャの手。
練乳の棒アイスのような白の指先とはあまりに異質な、黒いうにょうにょ。
口なんて開けれるわけ――いや、そういえばサーニャだって本当はしたくなって言ってたじゃないか。
そもそもいくらヤンデレだって、そんな外道を働く真似、嫌なのは当たり前なんだ。良心的に。
サーニャのSはつまりそういうSではないはず……ダヨナ? そうであってくれ。
だったら、
「なぁ、サーニャ。今までのことはホントにゴメン。私が悪かった。謝るからサ。
――だから、そういうのはやめにしないカ? サーニャだってそんなことしたくないって言ってたダロ?」
落ち着いて説得すればきっと大丈夫、なはず。
「うん……大好きなエイラにこんなことしたくない……いいえ……でも、」
そう言うサーニャの頬には滝のようにぼろぼろと涙が伝っている。
「じゃあもうやめヨ? だってそんなもん口に入れたら、春になったらすごいことになっちゃうダロ……!」
「大丈夫よ、エイラ。だってわたしはエイラのことを愛してるもの。――それにね、」
一拍の間があった。
サーニャは頬を赤らめ、もじもじと体をくねらせている。
「な、なんダヨ……?」
「わたしはエイラのことをすっごくすっごく愛してるもの」
「同じじゃネーカヨ! なぁ、それはもうわかったから、」
「なのにエイラはどうして好きって言ってくれないの? ええと、4匹追加で8匹ね……」
「つっ、続いてたのカヨ!」
「9匹……」
「今のはツッコミだからノーカン!」
「10匹……」
サーニャはボウルからうにょうにょをわしづかみした。
真っ白い指の間から溢れだし、のたうち回る真っ黒いそいつら。シュールなコントラストだった。
その手から1匹、私の口元に運んでこようとした途中でこぼれ落ちた。
私の額の上へだった。
今、にゅるってした……。おでこ、ひんやりした……。
感覚は奇妙にリアルだった。ぶわっと全身から脂汗が吹き出した。
泣きそうだった。ウソ。私はとっくに泣いていた。
「まっ待って!」
「また1匹追加……」
「今から言うから! 11回――じゃない、12回続けて言うから、だったらオッケーダヨナ?」
と言うと、サーニャは表情を一転、目をキラキラさせて、
「えっ、1ダースも続けて? そんなこと言われると迷ってしまうわ」
サーニャは私の口をじぃっと見つめて、耳を澄ませる。
オッケーなのカ? ダヨナ?
助かった。言わなきゃヤバいけど。
――いや、言えばいいんだ。簡単ダロ、たったの一言なんだから。
ほら、す――
言え、言え、言え、言え。
すすすすすっ――
「ストロベリーシェイクSweet」
「…………なにを言っているの、エイラ?」
「いや、これは、その、つまり……」
「もういい」
とサーニャは言い切ると、手にしたボウルを高々と掲げた。そして、私の顔の直上へ持ってきて――
これからなにが起こるのか考えたくなかった。なのにわかってしまった。
ひっくり返す。
何百といううにょうにょのにゅるにゅるが私の顔に降りそそぐのだ。
やめてクレ。そんなことしないで。
力のかぎりめいいっぱい、私は叫んだ。
「ヤメロォ、サーニャア! オタマジャクシは勘弁して!」
- 253 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:50:27 ID:KiXTlVNI
- ――そこで私は飛び起きた。
ゆ、夢でよかった……。
ずいぶん長い夢を見てた気がするけど、長くなりすぎた気がするけど、でもよかった……。
そうだ。ずっとおかしいと思ってたのに、なんで気づかなかったんダロ?
なんで私はこんな夢みたんダ? あまりに不可解すぎて自分で自分がわけわかんねぇ。
これって夢分析的にどうなんダ? 入院した方がいいのカ?
ぐっしょりと寝汗をかいていた。あんな夢見たあとじゃ当然か。体がべとべとする。
飛び起きたのは見慣れない場所だった。狭くて、薄暗い。
けど、知ってる顔が視線の正面に1人。
「ふぁっ、ふぉきた」
と、ソイツは能天気に言ってくる。同じクラスのルッキーニだ。
ルッキーニは凍らせたチューペットをガリガリ噛みながら、
「ふあっふぃふぁらふっごいふなされてふぁよ?」
「いや、なに言ってるかわかんねーし」
私は笑った。あんなのの後だけに、ちょっと安心した。
天才児のくせに頭は悪いという困ったヤツだけど、こんなとこ、私は嫌いじゃない。
「どこダ、ココ?」
気になることはいくつもあったけど、とりあえず私はそう訊いた。
「ふぁふぁしのふぃちふぁよ」
「だからわかんねーって」
そう返したものの、私はなんとなくその場所がどこか勘づいていた。
通称“ルッキーニの巣”。
学校のいたるところにこうやって秘密基地を作ってるらしい(私は来たのは始めてだけど)。
何人も入れるほどの広さはなく、天井は低くてまっすぐ立ったら頭をぶつけてしまう。
きっと廊下で倒れてる私をここまで運んでくれたんダナ。感謝しないと。
「ありがとナ」
「ふふん、ふぁこんでふぃたのふぁふぁーにゃだから」
と、ルッキーニは私の方を指差す。いや、私の向こうカ?
「だから食べながらしゃべるのやめろヨ……ナッ!?
私はどもって舌を噛みかけた。
振り返ったその先にいたのはサーニャだった。正座してる。
電流が全身を走った。さっき見た夢でされたことがドドドッとフラッシュバックする。
私は腰を抜かしたみたいにお尻を地面につけて、じりじりと後ずさり。
が、すぐに背中がルッキーニにぶつかった。
「ななななんでオマエがここに!?」
「サーニャが運んできてくれたって言ったじゃん」
と、ルッキーニ。さっきのでわかれって方が無理ダロ。
「エイラ、どうかしたの? 寝ていてもすごくうなされてたみたいだし……。悪い夢でも見たの?」
「あっ、ああ。そんなトコ」
私はあいまいにうなずいた。
言うのはやめておこう。夢のなかでサーニャにオタ……ううん、やっぱ考えるのもやめよう。
「それってわたしの夢?」
「なっなんで!?」
「だって寝言でわたしの名前を叫んでたから」
う……聞かれてたのか……。恥ずかしい……。
まさか他にもなにか言ってたりしないヨナ……もしそうだったら死ぬしかない。
「ねぇ、どんな夢だった? 悲しい夢?」
「よ、よく覚えてないんダ」
「そう……たしか、オ」
「思い出させんナ!」
思わずそう叫んでしまうと、サーニャは肩をびくんと震わせる。
酷い言い方、してしまったかも……。
「ごめんなさい」
と、サーニャはそれだけ言った。
そして、みんな無言。
私も、サーニャも、ルッキーニも(なにかしゃべってくれ)。
気まずい。息がつまる。私たちの間だけ気圧が低いんじゃないのか。そんな錯覚がした。
後ろからルッキーニの視線を感じる。とん、と背中をこずかれた。
なにか言わないと。えっと、
「「あの、」」
- 254 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:53:29 ID:KiXTlVNI
- ハッピーアイスクリーム。
「な、なんダ、サーニャ?」
「う、ううん、エイラから言って」
「えっ? えっと、」
アレッ? 私、なにを言おうとしてたんだっけ?
私は汗をぬぐった。
狭い場所に3人もいるせいで、ハンパなく蒸れている。まるでサウナだ。
――と、おでこだけがひんやりしてることに気づいた。
ぬぐってみる。なんだかぬるっとした。デ・ジャヴってヤツを感じた。
手のひらを見てみると、それはピンク色の汁みたいだった。
「……なんだこれ?」
「ああ、エイラのおでこを冷やしてたの」
と、サーニャは手を掲げてみせる。
その手にはチューペットのもう半分が持たれていた。ほとんど溶けかけでジュースみたいになっていた。
「あたしがあげたんだけど、サーニャは食べずに我慢してたんだよ」
と、ルッキーニはつけ加えた。
だからあんな夢見たのカ? よくわからない。いや、いい加減このことは忘れよう。
「そうカ……ありがとナ」
とりあえず、お礼は言っておく(元はといえばコイツのせいなんだけど)。
「じゃあ、サーニャの番ナ。さっき言おうとしてた――」
「おーい、こんな時間までなにやっとるか」
と、声。サーニャじゃない。予期せぬ方向から。
坂本先生だった。
巣の入り口から顔を出して、その片目で私たちをギロリ。
「もうすぐ下校時刻……お。なんだ、サーニャもいたのか。ちょうど用事があったんだ」
ン? なんかあるのカ?
サーニャの方に目をやると、わからないと首の動きが返ってきた。
「渡したいものがあるから、ちょっとこれから来てくれないか」
「は、はい」
「あとエイラとルッキーニはさっさと帰れ。近頃は不審者が多いらしいからな」
「「はーい」」
と、声をあわせて生返事。
入り口をくぐるルッキーニの背中に、私も続いた。そのまた後ろからサーニャも。
と、私が入り口をくぐろうとしたところで、ぽすんと背中にのしかかってくるものがあった。
サーニャがよろけたのだ。
とっさに私は手を伸ばしていた。
振り向きざまにサーニャの倒れる方向に入りこみ、ふんばる。頑張ってふんばる。
「ご、ごめんなさい……足がしびれて」
そういえば長い時間足を曲げて座ってたっけ……っていやこの状況は!
「オ、オイ! 気をつけろヨナ!」
「ありがとう、エイラ」
サーニャはそのままの姿勢で上目づかいに私を見てくる。
顔を。目を。口を。
オイ、オマエ、顔近けー……ってカ、近づいてるし!
なんだ、と坂本先生がいぶかしげる。
にひひ、とルッキーニの笑い声がする。
そして私は、くらっとめまいが一気に襲ってきて、盛大に仰向けにこけた。
- 255 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:55:17 ID:KiXTlVNI
- 「エイラ……しよ?」
なっ、なにをダヨ!?
サーニャは寝転ぶ私に乗っかってきて、マウントポジション。
ハアハアと息を乱すその口元にはよだれが光っている。
ダメだ。逃げられない。体がぜんぜん、言うことをきかない。
だっ誰か……
私は視線で助けを求めた。
ルッキーニはひゅーひゅーと口笛を鳴らしてくる。いつの時代のリアクションだ。
ダメ、次。坂本先生は、
「不純異性交遊は校則で禁止されて」
珍しく冴えたこと言った! じゃあこのままサーニャを止めてくれヨ!
「どっちも女じゃん」
が、ルッキーニがすかさずツツコんだ。
「そうだった。なら問題ないな」
「あるダロ! 用事が!」
「む、そうだった」
坂本先生は私たちの間に手を差しこんで、サーニャを引きはがした。
ばたばたとサーニャは抵抗するも、体格の差もあってすぐにそれも鎮まった。
サーニャは次第に息を整えて、落ち着きを取り戻すと――私に向かって頭を下げた。
「ご、ごめんなさい。わたしったらまた発作を……」
発作なのカ、それ?
いや、そうなのかもしれない。だってサーニャはヤンデレだから。
「……もういいから。頭、上げろヨ」
「だけど、」
「ほら、早く」
サーニャはようやく頭を持ちあげた。
でも、申し訳なさそうなのは変わらなくて、眉は下がりっぱなしで、今にも泣き出しそうだった。
なにか言わなきゃと思うのに、なんにも浮かんではこなかった。
気のきいたことも、優しい言葉もかけてやれない自分に、なぜだか無性に腹が立った。
「私はもう帰るけど、サーニャはこれから先生と用事があるんダロ?」
結局、こんなことしか言えなくって、サーニャはそれに力なくうなずいた。
「じゃあ、さよなら」
最後にそう言うと、サーニャはくぐもった声で、うん、さよならと返した。
せいいっぱい笑おうとしてたのに、その表情は苦しんでいるようにしか見えなかった。
それが目に焼きついて、頭のなかをちかちかする。ちっとも離れてくれそうにない。
- 256 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:56:43 ID:KiXTlVNI
- 私は1人、ランドセルを取りに5年1組の教室に戻った。
下校時刻のとっくに過ぎた教室には、当たり前だけど誰もいなかった。
いや、正しくは1人いたんだけど。
ハルトマンだ。机に突っ伏してすやすや寝息をたてている。
こんな時間までなにやってんダ?
起こそうかと思ったけど、コイツってば絶対起きないし……放っておくことにした。
帰ろう。ランドセルを背負いそう思い立ったところでふと、学級文庫の本棚が目にとまった。
その視線を一度、ハルトマンへと向けた。
やっぱり寝ていることを確認すると、棚から国語辞典を手に取った。
ページをめくってみる。“へ”のところでその手を止める。
声には出さず読んでみた。
ヘタレ(名)
①根性がないこと。臆病であること。実力や力量がないこと。また、その人。
(扶桑語の動詞「へたる」が名詞化したもの。関西弁から広まった)
②ヨーゼフ・ヘタレ博士型双極性パーソナリティ障害の俗称。
らしい。
そう書かれているから、たぶん間違いない。
それにぼんやりと目を落とし、私は深々とため息をついた。
私ってそれらしい。②の方。ヨーゼフ・ヘタレなんちゃらかんちゃら。
アホネン先生が脳みそを勝手に検査した結果、そんな病気だかが判明したとか言ってた。
本当かどうか、私にはわからないんだけど……。
そんなことないって自分では思うんだけど……。
ちょっと調べてみたけど、国語辞典くらいじゃそんなことわかりそうにない。
もういいやと投げやりに辞典を閉じて、
――っと、なんダ?
“ヘスティア”という項に蛍光ペンが引かれていた。
聞いたことのない言葉だ。説明を読んでみた。
ヘスティア(名)
ギリシャ神話の十二神の一。
炉の意。炉の女神。
へぇ。でも、なんでこんな言葉に線が引かれてるんダ?
さらに炉の字のところには、赤ペンでぐるぐる丸が囲ってある。
誰ダヨ、こんなことしたヤツは……
「なにしてんの?」
「なにって……ひぃっ!!!?」
気づかぬうちに背後を取られていたことに、思わず声をあらげて反応してしまう。
「なっなんダヨ、シャーリー! びっくりさせんナヨ!」
「ははっ、ごめんごめん」
悪びれもせずそう言うシャーリー。私は辞書のページをこっそり閉じた。
「それより頭はもういいのか?」
「あ頭……?」
「給食の時、壁に打ったやつ」
「あっ、ああ。もう大丈夫だから」
代わりにもっと面倒なことになったんだけどナ。そんなこと、言えっこないけど。
そいつはよかった、とシャーリーは私の頭をぽんぽん叩いて、
「みんな心配してたんだぞ。特にサーニャなんて、」
「サーニャが?」
「ああ。ぼろぼろ泣きながら、死なないで、死なないでって」
そういえば、そんな記憶がぼんやりとある。もう遠い昔のようだけど。
「――まあ、お前が無事でよかったよかった。本当に死ななくてさ」
シャーリーはまた、頭をぽんぽん。
やめろヨ……実はまだ、結構痛むんダゾ……。
「私、もう帰るゾ。オマエは帰らなくていいのカ」
「ああ。ルッキーニと一緒に帰る約束してるんだけど、どこ探してもいないんだ」
「ルッキーニ? だったらさっき別れたばっかだ。もう帰ってるゾ」
「なにぃ!?」
「今から追っかければ間に合う――」
かも、と言い終わるより前に、シャーリーはランドセルを手にし、ドアへとダッシュ。
流石に速い。ものの数秒でいなくなってしまった。
かと思ったら、すぐ戻ってきた。
腿あげをしながらシャーリーは、私に向かって、
「じゃあ、エイラ。また明日」
まさかそれ言うために戻ってきたのカ? おかしなヤツダナ。
「ああ、また明日ナ」
- 257 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:58:08 ID:KiXTlVNI
- さて、私も帰ろうカナ。
思い立って、ランドセルを背負い直して――っと、辞書をちゃんと本棚に戻さなきゃ。
やっぱ学級文庫程度じゃナ。もっとちゃんとした本があったら……。
いや、本なら別の場所に、もっとたくさんあるじゃないか。
善は急げ、ダヨナ。私は図書室に行ってみることにした。
学校の図書室だから漫画は劇画しか置いてないので、私はあんまり利用することはない。
けどそこなら、きっとなにかの本があるはずだ。
図書室の扉は開いていた。
下校時刻のとっくに過ぎていたので、当たり前だけど誰も……いや、1人いた。
ハルトマンだ。
うちのクラスのハルトマンじゃなくて、その双子の妹の方。
メガネをかけてなければ、私には姉のハルトマンと見分けがつかないだろう。
たしか名前はウルスラ。クラスはいらん子組だったと思う。
いらん子組というのは5年7組のことで、なぜだかそう呼ばれている。
いらん子組の教室には仲のいいヤツがいるのでよく行くけど、あんまりコイツの印象はない。
なんか、隅っこでいつも本ばかり読んでるから。
そういう今も、貸し出しカウンターに座ってなにか分厚い本を読んでいる。
そこにいるってことは図書委員なのカ?
私が部屋に入ると一瞬顔をあげてこっちを見たけど、すぐにまた視線を本に戻した。
暗がりで本なんて読んでたら目が悪くなるゾ。いや、もう悪いのか。メガネだし。
ま、いいや。目的だけ済まして今度こそさっさと帰ろ。
私は本棚をふらふらと物色した。
が、困ったことに一向に見つけられそうにない。
だってあまりに本が多いから。図書室に来ることはほとんどないから。
劇画ならどこにあるかわかるけど、探してる本はもちろんそういうのじゃないし。
――と、そんな私のところにふらっとハルトマン(妹)はやって来て、
「………………」
「な、なんダ?」
こんな私を見かねて、手を貸してくれるとかか。
じゃなかった。
なんだ、読んでた本を戻しに来ただけか。
ていうか、なにかしゃべれヨナ。姉もそうだけど、妹の方もよくわかんないヤツだ。
「なに読んでたんダ?」
と訊くと、ハルトマン(妹)は無言のまま手にした本の表紙を私に見せた。
タイトルは『教養小説の崩壊と再生』。小説ってことはお話なのカナ。
「どういう話なんダ、それ」
「読めばわかる」
やっと口を開いたかと思えば、返ってきたのはそっけなくそれだけ。
カチンときた。
「なあ、どういう話なんダ? 教えてくれヨ、ネタバレにならない程度で」
しつこく食いさがると、仕方ないなという目でハルトマン(妹)は私を見てきて、
「過剰な自意識。自己防衛と闘争。正当化とあるいは妥協。全能性の喪失。イニシエーション」
なんか難しいこと言われている。ぜんぜん意味がわからないけど。でも、なんだかカッコいい。
もしかしてコイツ、私より頭がいいのかも。私、こないだの国語のテストで75点だったのに。
「……それで、どういう話なんダ?」
「………………」
と、ハルトマン(妹)は本棚へと戻しかけていた本を私に差し出した。
いいから読めってことカ? 私が受け取ると、ハルトマン(妹)はまたカウンターへと戻って行った。
パラパラとページをめくってみる。紙は焼けてるし、古くさい臭いがした。
難しい言葉がページ全体にあふれ返ってて、正直なところ、ちんぷんかんぷん。
これじゃあわかる言葉を探す方が――あった。紐の栞が挟まってるページだった。
“ヨーゼフ・ヘタレ博士型双極性パーソナリティ障害”の文字が。
これぞまさしく私の探してた本じゃないのカ(たぶん)。
幸運にも私はわりとあっさり見つけてしまえた。ゲームならSEが鳴りわたるそういう場面だ。
さっそく借りて帰って……いや、そういえばさっきまでハルトマン(妹)が読んでたんだった。
万が一にも私がヘタレかもしれないなんてことが知られるのもまずいしナ……。
あ、そうだ。ぜんぜん関係ない本を一緒に借りればいんじゃないか。
私は適当にその辺から2冊を抜き出して、目当ての本の上と下に挟んで、カウンターに持って行った。
が、ハルトマン(妹)の姿はなかった。
代わりに『貸し出しの手続き』ってプリントが置かれていた。
「アイツ、帰っちゃったのカ? まあ、ちょうどいいや」
私はささっとカードにクラスと名前を書き、セルフで手続きを済ませた。
ランドセルに本3冊を突っこみ、背負い直すと、それはえらくずっしりとした重さになっていた。
- 258 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 20:59:44 ID:KiXTlVNI
- さて、今度こそ帰ろう。
いくら夏は日が長いからって、下校時刻はとうに過ぎてもう延長15回裏くらいだ。
そういえば放課後がこんなに長いことを、私は初めて知ったかもしれない。いつも真っ先に帰るから。
誰もいない学校の廊下はなんとも不思議な感じがした。
1人取り残されたような不安感と、思いきり叫び出したくなる優越感。
「あら、エイラさん。まだ学校にいたの?」
と、そんなもの一気にぶち壊しての、背後から声。
どすん、とさらには衝撃。
「どうしたの、エイラ? 帰ったんじゃなかったの、エイラ? わたしのこと待っててくれたの、エイラ?
ねぇ、一緒に下校してくれる? いいかな? いいよね? いいでしょう?」
サーニャだった。私の後ろから抱きついたまま、際限なく繰り返してくる。
「ちょうどよかったわね、サーニャさん。女の子の1人下校は私としても心配だったし」
と、これはミーナ先生。あらあらうふふ、と私たちを見てくる。
「ま、待てヨ。誰もまだ一緒に帰るとかそんなこと……」
「帰らないともいってないでしょ? それじゃあ、お願いね。このところ不審者も多いらしいし」
そんなわけで、私はサーニャと2人、下校することになった。
「オマエん家、どっち?」
校門を出たところで訊くと、サーニャはその方角を指差した。困ったことに、私ん家とは正反対。
「学校からどんくらい?」
「牛歩で半日くらい」
「普通に歩け! 登下校で1日終わっちゃうダロ!」
私はチラリ振り返って学校の方を確認した。ミーナ先生が私に向けて手を振ってきた。
先生の言いつけだ、反故するなんてことできるはずない(後が怖いから)。
はあ、と心のなかで深くため息をついて、
「送ってってやるから。さっさと行くゾ」
私は道ばたの石ころを蹴って歩いた。そのすぐ後ろをサーニャはついてくる。
そういえば、と私は思い出した。
サーニャが言いかけてたことあったヨナ。結局、聞けなかったけど。一体、なんだったんダロ?
いやそもそも、私ってサーニャのことほとんどなにも知らないヨナ。これも今さらだけどそういえばだ。
黙ったままでも気まずかったので、私は訊こうと決めて――でもそうしなかった。
甘い歌声が聞こえてきたから。
機嫌がいいのか、サーニャが歌っている。
「いい歌ダナ」
私は振り返って、そんなこと言っていた。素直な感想だった。
「そ、そう?」
サーニャの顔が赤く染まっている。それは夕日に染められたせいだけじゃない。
ああ、と私はうなずいた。
「この歌わね、」
とサーニャは言いかけ、けれどその言葉はそこで呑みこまれてしまった。
どうかしたのカ、と訊こうとした私も、すぐに異変に気づいた。
うーうー、と調子っぱずれのサイレンみたいな鳴き声がした。
道の向こうに、誰かいた。
気色悪いヤツがこっちにくる。いや、それが人なのかどうかわからない。
全身真っ黒で、とんがってて、全体的に細長い。何者なのか見当が……ううん、そうだった。
ミーナ先生も、坂本先生も言ってたじゃないカ。不審者が多いとかなんとか。
コイツがその不審者なんだ。
サーニャはその変質者から隠れるように、私の背に体をひっつけてきた。
胸の感触が……って今はそういう場合じゃない。落ち着け、鼓動。
――と、サーニャがぶるぶると震えているのが背中越しに伝わってきた。
「なんてことないって。だって2対1だから」
私は言った。自分でもどういう理屈かわからない。ただの強がりだった。
小さくうんとサーニャはうなずいた。
「でも、どうするの?」
「逃げるゾ」
三十六計なんとやら。今は武器もないんだ。戦うより賢い選択だろう。
最悪、どっちかが助かればいい。できればそれは私で。
「いいカ? 道を引き返すから、私についてこい」
小声でそう告げ、サーニャがうなずくのを確認すると、私は合図を出した。
いち、にの、さんっ!
すってんころりん。
- 259 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 21:01:34 ID:KiXTlVNI
- って豪快にすっ転ぶサーニャ。
いきなり。しょっぱなで。
なんだ、オマエってどじっ娘属性なのカ、訊いてないゾ。
そうしてる間にも不審者は速度を増して接近している。うーうーうーうー、耳ざわりな鳴き声をさせながら。
私は数歩進んだところで立ち止まってしまった。時間にして数秒のロス。
どうする? サーニャは立ち上がりそうにない。ケガしてるのかも。
サーニャを助けになんて戻ったら、私まで危険な目にあってしまうかもしれない。それはごめんだ。
ゴメンナ、サーニャ。だって私はただの無力な5年生だし。
仕方ないダロ、悪く思わないでくれヨ、緊急事態なんだから。
なあ!
私はサーニャを置いて逃げ――るなんてこと、あっていいはずないダロ。
「なにやってんダヨ、早く立て」
私はサーニャに駆け寄った。
「エイラ、逃げて。狙われてるのはわたしだから」
ハア? なに言ってんダ? わけわかんねえ。
なんだそれ。自己犠牲カヨ。くだらねー。
そんなこと言って、心のなかじゃ怖がってるくせに。
ガタガタぶるぶる震えてるくせに。
だったらそんなこと口にスンナ、バカ。
「ほら、早く!」
私はサーニャの手を奪い去るように握った。
自然とすんなり手をつなげたので、逆にびっくりした。
強く引っぱる。立ち上がる。サーニャは腰をあげ、ふらふらと私にしたがう。
「ついてコイ」
ぎゅっと、つないだ手に力をこめる。けして離れてしまうことがないように。
方向転換、私は駆け出した。
しっかりとサーニャがついてきていることを確認し、さらに速度をあげる。
それからどれくらい走っただろう。考えてる余裕はなかった。
ひとけのない夕闇の道を、私はサーニャの手を引いて。
息があがる。苦しい。満足に息ができない。酸素が欲しい。
口をめいいっぱいひらいたのに、でも取りこめない。楽にならない。
でも足を止めるわけにはいかない。
ただ、前へ、前へ。
胸が熱い。全身が熱い。心臓が焼けつくようだ。
加速度的に上昇してく心拍数。私の鼓動、サーニャの鼓動。
右足と左足、どっちが前だかわかんなくなる。言うことをきかない。
それでも、私たちは走った。
気づいた時には私の家だった。
ちゃんと鍵とチェーンをかけ一安心すると、事切れたように私たちは玄関で大の字に寝ころがった。
なんだったんだ、さっきの……?
急にそのことが無性に気になりだして、怖くなった。
「なぁ、サーニャ……オイ、サーニャってば?」
返事はない。
「……なんだ、寝てるのカ」
あれだけ走ったあとだしナ。訊きたいことはあったけど、起こすのもかわいそうだ。
いつまでもお客さんをこんなところで寝かせとくわけにもいかないヨナ。
私はサーニャを自分の部屋まで運んでいき、ベッドに寝かせた。
それは私のベッドだというのに、まるで自分のみたく占領するサーニャ。
じきに寝息は静かな落ち着いたものに変わっていった。
「寝てると可愛いんだけどナ」
そんなこと、つぶやいていた。
おかしくなって笑いがこみ上げてくる。声を出さないように気をつけて私は笑った。
「 」
………………………………。
寝言だろうか。サーニャがささやいた。
たった一言。それきり。今はまた、すやすやと寝息をたてている。
気になりはしたけど、ただの聞き間違いだったのかもしれないし……。
きっと扶桑料理が好きなんダナ。私はそう思っておくことにした。
その転校生はヤンデレで、
私のことが好きで好きで、初対面でいきなり告白してきて、
私はたくさん振り回されて、酷い目にもあって――一緒にいて退屈なんて絶対しなくって、
迷惑なヤツで、ホントわけわかんないことだらけで、そしてその寝顔はどこか寂しげで。
私たちはまだ、お互いのことをよく知らない。
時折覗かせる悲しい顔を、その意味を、私は知らない。
でも、せっかく人がベッド貸してやってるんだ。だから――ナ?
だったら、寝てる時くらいはいい夢見ろヨナ。
私はそう言いながら、手にしたタオルケットをサーニャにかけてあげた。
「今日ダケダカンナー」
以上です。1レス増えましたすいません。
たぶんもう少し続きますが。
タイトルは「サーニャさん黄昏れる」です。読みは「たそがれる」。
- 260 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 21:17:00 ID:kSGbooTE
- おおお! やるときはやるエイラさんかっこいいな!
発作してるときもしてないときもサーニャかわいい。惚れろ惚れてしまえエイラw
GJ! でも炉の女神ってダレダヨ!w
- 261 名前:名無しさん:2009/08/09(日) 23:18:30 ID:5y5ird02
- うおお続きキター!!相変わらず調子いいなこいつら、そして最後にはへたれないエイラさん渋いですGJ!!
科白回しや些細な一言に仕込まれたネタが素晴らし過ぎて全体的にハイクオリティ過ぎる
しかしオタマジャクシ責めとは凄いセレクションだw
- 262 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/08/18(火) 19:26:54 ID:xEftIRWI
- こんばんは&お久しぶりです。mxTTnzhmでございます。
またまた避難所お借りしますね。理由は(ry
さて、今日は何の日〜、と言う事で急遽SSを書いてみました。
久々にSS書くのでおかしいとこ沢山あると思いますが何卒。
- 263 名前:pancake party 01/02:2009/08/18(火) 19:27:34 ID:xEftIRWI
- 夜間哨戒を終えストライカーを格納庫にしまうと、報告もそこそこに寝室へ。
サーニャはぼんやりと、その“寝室”を目指し、廊下を歩く。
ふと、誰かの部屋から甘い香りが漂って来た。疑問に思ったその瞬間、サーニャは腕をひかれ、部屋へと連れ込まれた。
「ニヒヒ つかまえた〜」
腕を掴んで笑っているのはルッキーニ。質素過ぎる部屋は芳佳の私室。そこに何故か多くの隊員がパジャマ姿でたむろしている。
「お帰りサーニャ。眠かったダロ?」
エイラもパジャマ姿でサーニャを出迎える。
「あれ、エイラ。何してるの」
「疲れたダロ? 座れヨ。宮藤もっと隅に行ケ、サーニャ座れないダロ?」
「ひどい、エイラさん」
「いよっ、お疲れ」
にこにこ顔でシャーリーがサーニャの肩を叩く。フライパンを手にしたシャーリーは、芳佳の部屋に持ち込んだ携帯コンロを使い、
手際良く次々とパンケーキを焼いていく。
「はい、どうぞ」
リーネがお皿を差し出した。蜂蜜と生クリームたっぷりのパンケーキだ。香ばしく甘い香りが、サーニャを優しく包み込む。
「ありがとう。……でも皆どうしたの?」
「今日は何の日〜?」
ルッキーニが問う。
「今日……」
ぼんやりとしたままサーニャが考えを巡らせているうちに、ルッキーニが笑顔で答えを言った。
「今日は、芳佳とサーニャの誕生日ぃ〜」
「あ……」
「おめでとう、サーニャちゃん」
「おめでとナ、サーニャ」
「ありがとう。芳佳ちゃんもおめでとう。……でも、何でパンケーキ?」
手にしたパンケーキをまじまじと見つめるサーニャに、笑顔でシャーリーが言った。
「これはあたしの国の事なんだけどさ。早朝からみんなでパジャマ姿でパンケーキ食べるパーティーが有るんだ。
誕生日祝いで何か良いイベント無いかって考えたんだけど、こういうのはどうかと思ってさ」
シャーリーがほいほいとパンケーキを焼きながら説明する。
普段のシャーリーの朝はのんびりしがちだが、こう言う特別な日は起き始めからテンション全開だ。
皆にパンケーキが行き渡った。
「ほいじゃ、宮藤にサーニャ、誕生日おめでとー!」
朝から威勢の良いシャーリーがパンケーキの皿を持って二人を祝う。
「おめでと〜」
「おめでとナ」
「おめでとう、二人とも」
「おめ〜」
「おめでとう、芳佳ちゃん、サーニャちゃん」
皆がそれぞれ二人を祝う。
「ありがとう、みんな」
「ありがとう……でも、眠い」
「悪いなサーニャ。寝る前に少しだけ付き合ってくれよ。甘いの食べたらきっとよく眠れるぞ」
「まったク、大尉は強引なんだヨ。サーニャかわいそうダゾ?」
ふわふわとしたサーニャを抱き寄せ、ちょっとすねて見せるエイラ。
「まあまあそう言いなさんな。特別な日くらい、少し良いだろ? 午後になったらでっかいケーキ用意してるし。なあ、リーネ?」
「え? は、はい!」
「さあ、食べて食べて」
パジャマ姿のまま、もくもくとパンケーキを食べる一同。
「おいしいね、リーネちゃん」
「うん、芳佳ちゃん」
「美味しい……でも眠い」
「が、我慢ダナサーニャ。もうちょっとの辛抱ダゾ」
「ガレットの方が良い気がしますわ」
文句を言いつつも実はまんざらでも無さそうなペリーヌ。
「おいし〜」
「だろルッキーニ? この粉の調合がまたポイントで……」
- 264 名前:pancake party 02/02:2009/08/18(火) 19:28:37 ID:xEftIRWI
- 「お前ら、何をやってるんだ!」
芳佳の部屋に怒鳴り込んで来たのは、トゥルーデ。きょとんとした一同を見回し、怒りと呆れが混ざった表情を作る。
「妙な匂いが漂って来たから何事かと思えば……」
「おお、そういや堅物に声掛けるの忘れてたわ。ほいよ」
用意していたパンケーキの皿を渡す。ほかほかのパンケーキを受け取ったトゥルーデは、怪訝そうな顔をした。
「何だこれは」
「パンケーキ」
「見れば分かる。お前ら、朝も早くからパジャマ姿のままで何だこれは?」
「パンケーキパーティー」
「何故宮藤の部屋で」
「宮藤とサーニャの誕生日だからに決まってるじゃないか」
「わざわざ携帯コンロまで持ち込んで……私室でやることか? 食堂でやれ食堂で」
「分かってないなあ、堅物は。これが良いんじゃないか。あたしの国のパーティーだ」
「あのなあ。バーベキューの次はこれか」
「ま、とにかく冷めないうちに食った食った」
「……」
トゥルーデはシャーリーから渡されたフォークとナイフでパンケーキを一口食べた。
「まあ、悪くない」
「素直に美味いって言えないのかね、堅物は」
「リベリアン、貴様……」
「とにかく二人を祝えよ。お祝いにも色々なかたちが有って良いんじゃない?」
「だからと言って、早朝から私室でパンケーキを焼くとは……しかもパジャマ姿で」
「まあまあ」
「すいません、お騒がせして」
芳佳がトゥルーデに謝る。シャーリー発案・実行なので芳佳が謝る必要は無かったのだが、トゥルーデの剣幕の前、何か言わずには居られなかった。
芳佳のすまなそうな顔を見るうち、トゥルーデはふうと溜め息をついた。
「誕生日か。……おめでとう、宮藤。サーニャも」
「ありがとうございます、バルクホルンさん!」
「あいがとうございます……」
「サーニャ寝そうじゃないか。大丈夫なのか」
思わず心配するトゥルーデ。
「何だったらハルトマン中尉も起こして来いよ。昨日声かけたんだけどやっぱりと言うか、全然起きる気配が無くてさ」
「あいつはまだ寝てる。当分起きないだろ」
「よく知ってるな」
ニヤニヤ顔のシャーリー。
「うるさい」
「ちょっと起こして来てくれよ」
「……分かった」
何故かパンケーキの皿を持ったまま、トゥルーデは部屋を出た。
「相変わらずだねえ、堅物は」
「ニヒャヒャ 予定通り〜」
笑うルッキーニ。
シャーリーは芳佳の部屋を見渡した。それぞれ、何だかんだ言いながらパンケーキを食べ、楽しくお喋りしている。
「シャーリーさん、美味しいです」
「良かったな宮藤。気に入って貰えて何よりだ。また今度やるか?」
「ええ、良いですね」
「たっのしいの大好き〜」
ルッキーニも珍しく朝から大はしゃぎだ。
「たまには、朝からこう言うのも、良いよな」
シャーリーはうんと頷いた後、背をもたれてきたルッキーニを抱いて、笑った。
end
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英国などでは「pancake day」と言う宗教的な日(儀式?)があるらしく、
また米国では「pancake party」(日本で言うホットケーキパーティー)が有る(らしい)、
と聞き、さらっと書いてみました。
アニメ本編では盛大に二人をお祝いしている(みたいな)ので……
何か別のお祝い(パーティーとかイベント)無いかな〜と考えた次第です。
「本来の『pancake party』は意味が違う」「起源が……」とかツッコミはご容赦をw
とにかく芳佳とサーニャの誕生日おめでとう記念にひとつ。
ではまた〜。
- 265 名前:名無しさん:2009/08/18(火) 23:52:21 ID:I7th74Vs
- >>264
お久しぶりGJです!
パンケーキパーティーってなんかいいですねー
ふわふわサーニャを抱っこしてすねてみせるエイラさんかわいいw
食べ終わってエイラさんにもたれて眠っちゃうさーにゃんまで妄想しました
- 266 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/08/19(水) 17:34:40 ID:xpeJeWDg
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
>>265様の妄想をちょっと膨らませてみました。
>>263-264「pancake party」の続きです。
- 267 名前:afterglow:2009/08/19(水) 17:35:27 ID:xpeJeWDg
- エイラの部屋に戻った後も、サーニャはぼんやりしたまま、上の空。
「ゴメンナ、サーニャ。眠かったダロ?」
「ううん、大丈夫」
「目が半分閉じかかってるゾ。ほら、ベッド。毛布はココ。こっちこっち、ホラ」
「ありがとう、エイラ」
サーニャは何故かパンケーキを皿ごと何枚か“お持ち帰り”していた。
もくもくと一枚食べ、首を傾げる。
「サーニャ、もう寝た方がイイゾ。パンケーキは後でまた食べれば良いシ」
サーニャはパンケーキの皿を傍らのテーブルに置くと、ベッドに腰掛けた。心配そうに見つめるエイラを見る。
「ねえ、エイラ」
「どうしタ?」
「楽しかった?」
「私カ? まあ……」
サーニャと並んでベッドに座るエイラ。途端にサーニャが体重を預けて来る。
ふわふわとした、それでいて柔らかな感覚……触り心地、香り、表情……を見て感じているうちにエイラは何とも言えない気分になる。
「エイラ?」
「あ、イヤ、何でもナイ。サーニャが楽しければ、私も楽しイ」
「そう。眠かったけど、楽しかった」
「良かったな、サーニャ」
「ありがとう、エイラ」
エイラにもたれかかり、次第に身体が斜めになる。
「ねえ、エイラ」
「サーニャ、どうしタ?」
「蜂蜜、ちょっと濃かったかも」
ちろっと舌を出すサーニャ。どきっとしながら、エイラは答えた。
「ルッキーニだナ。適当にべたべた塗ってたかラ……」
エイラの言葉は続かなかった。突然、サーニャに手を舐められたのだ。
「さささサーニャ?」
「ねえ、エイラ」
いつの間にか全体重を預けられ、ごろんとベッドに横たわる二人。
サーニャはそっとエイラの手と肩を掴むと、そのままエイラに迫った。
「エイラ、べーってしてみて」
「え、ナンデ?」
「ダメ?」
「……こ、こうカ?」
エイラがおずおずと出した舌を、サーニャが舐める。二人の舌が自然と絡まる。
余りの出来事に、エイラは硬直したまま。
サーニャは子猫みたいに、エイラの舌を舐め続けた。
間もなく、舌が絡み、口吻へと変わる。
サーニャに身体を覆われたままのエイラは為す術もなく、ただただサーニャを受け容れる他無かった。
「ねえ、エイラ」
「サーニャ、どうしてこんな事ヲ」
「舌にまとわりついた甘いの、直るかと思って」
「ええッ」
「甘かった?」
サーニャがエイラをそっと抱きしめ、頭を胸に抱いた。
「そ、そ、そりゃモウ」
「もうちょっとだけ、お願い。エイラ」
「さ、サーニャ……」
エイラは何か言いたかったが、サーニャの瞳を見、何も言葉に出来なくなり……ただただ、サーニャのなすがまま。
やがて時計の短針がひとつ進んだ頃、二人は抱き合ったまま、眠りに落ちていた。
部屋には蜂蜜とパンケーキの香りが微かに漂い、名残を惜しむかの様。
エイラはそっと目を開けた。サーニャは目を閉じ、小さく呼吸している。
「サーニャ」
ふっと沸き上がる感情。それらが混然となり、ひとつの言葉に完結した。
「誕生日、おめでとナ」
サーニャが微笑んだ気がした。聞こえているのかは分からない。でもエイラはそれで良かった。
エイラも目を閉じ、……自然と笑みを浮かべていた。
end
- 268 名前:名無しさん:2009/08/19(水) 17:36:17 ID:xpeJeWDg
- 以上です。
エイラーニャは奥が深いと言うか、既に完成されていると言うか、
多くの鍛え上げられたSS職人様方の手でバリエーション超豊富なので、
どこまでやっていいものか悩みましたが……、まあこれ位はと言う事で。
ではまた〜。
- 269 名前:名無しさん:2009/08/19(水) 20:56:49 ID:cMV2.4n6
- >>268
ちょ、なにやってんすかもう!
膨らませすぎwでももっとやれww
ベタベタ塗りまくったルッキーニとあなたに最高のGJ!
- 270 名前:名無しさん:2009/08/19(水) 22:50:11 ID:dPsMj7o6
- >>264&&>>268GJ!!
定番には定番たる理由がある、今回もナイス甘々!
唇に触れる前に舌を舐めるなんてサーニャさん激しいっすね
- 271 名前:名無しさん:2009/08/21(金) 16:51:28 ID:qgb2WY2o
- >>264,268
これは……さすがです。
サーニャに大人の色香さえ感じてしまうww
定番、定番といいながら、1150本あまりのSSのどれ一つとして
他と同じものがない、というところに職人様方の本気を感じますね。
- 272 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/08/26(水) 21:42:21 ID:7me33WLw
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日〜と言う事でひとつ書いてみました。
- 273 名前:take off 01/02:2009/08/26(水) 21:42:59 ID:7me33WLw
- 「どうしたんだ、ミーナ」
美緒は首を傾げて答えを待ったが、当の本人からは何の返事も無い。
たまにはどうかと朝食前、基地上空に揃って飛び立ち、ミーナと美緒の二人で模擬空戦をしたのだが、
ミーナの動きにいまひとつ精彩が無い。揃って帰投する際、ミーナの横に位置し、直接問い掛けてみたのだ。
「なあ、聞いてるかミーナ」
再度繰り返す美緒。
「あ、ええ。聞いてるわ。問題ないわ」
慌てて作り笑いをするミーナ。
「本当か。嘘は良くないぞ」
「えっ」
美緒はミーナの手を引き、ホバリング体勢に移った。ミーナもつられてその場に留まる。
ミーナは微笑んでいるが、何処か陰を感じる。
何かがおかしい。美緒の直感はそう告げていた。
「美緒こそ、どうしたの。急に止まって。何か問題でも?」
「ミーナ」
美緒は試しに眼帯をめくって魔眼を露出させミーナを見た。突然の事にぎょっとするミーナ。
「な、何のつもり?」
「何か隠してるな?」
美緒は眼帯を戻した後、真剣な眼差しでミーナを見つめた。
「貴方の魔眼、そんな力もあったかしら」
「うろたえているのが丸分かりだ」
うつむくミーナ。
「目をそらすな」
「だって……」
「何か悩みか? お互い佐官同士、何でも話してくれ。そんな堅い仲でもないだろう。
私はお前を全力でサポートする。それが501での私の仕事だ」
ミーナは美緒を見、言った。
「貴方よ、美緒」
「私? 私がどうかしたか」
「今日、誕生日よね」
「ん?」
首をかしげ、今日が何月何日何曜日かを思い出す。
「……言われてみれば、確かに今日は私の誕生日かも知れんな」
美緒は軽く笑って、ミーナに問い掛けた。
「でも、それがどうかしたか」
「だって」
ミーナはこらえきれなくなったのか、美緒に抱きついた。バランスを崩しかけ、思わず抱きしめる格好になる。
「貴方が歳を取れば、ウィッチとして……」
「またその事か、ミーナ」
美緒はふっと微笑んだ。
「確かに二十歳も超えて……正直いつまで飛べるか、私にも解らない。でもな、ミーナ」
顔を上げたミーナに、いつもと同じ笑みを見せる美緒。
「飛べる限り、私はウィッチであり続ける。私はウィッチを止めない」
「でも無理は……」
「大丈夫だ。心配するな」
「その自信は何処から来るのよ」
「お前さ」
「えっ」
「ミーナが私の事を心配してくれる。それだけで良いんだ」
「美緒」
「完全に魔力が切れたら、その時はその時で考える。でもまだ飛べるうちは」
ミーナをぎゅっと抱きしめる。
「こうして大空のもと、飛んでいる……」
不意にミーナからキスされ、言葉が途切れる。
- 274 名前:take off 02/02:2009/08/26(水) 21:43:34 ID:7me33WLw
- ゆっくりと唇を離し、美緒は言葉を続けた。
「……のも、悪くない」
「美緒ったら」
「お前には心配掛けてばかりですまん。それはいつも悪いと思っている。だが、許せ」
「許すも何も無いわよ」
「有難う」
ふたりはそっと、ホバリングから飛行へと体勢を変えた。
「誕生日おめでとう、美緒」
「年寄りのウィッチにとってはあまり嬉しくないがな」
「何にせよ、この世に生まれた日が巡ってくるのは、素敵な事だと思わない?」
「詩人だな、ミーナは」
美緒に言われ、ふっと笑うミーナ。
「ともかく、礼を言う。気遣ってくれて有難う」
美緒も笑顔でミーナに言う。
「さあ、戻りましょう。そろそろ朝食の時間よ」
「ああ」
「きっと、美緒の為に宮藤さんやリーネさん達がケーキを用意して待っているわ」
「やめてくれ。そんなガラでもない」
「お祝いは悪い事じゃないわ。皆も喜ぶわよ」
苦笑いする美緒。はたと気付いた。最初の疑問。ミーナの挙動がおかしかったのは、誕生日を思っての事なのかと。
気になって問うと、ミーナは頷いた。
「だって、色々考えちゃうでしょ」
「考え過ぎなんだミーナは。単純に私を祝ってくれれば良い」
「さっきと言ってる事違う気がするけど?」
「そうか? 気にするな」
豪快に笑い飛ばす美緒。
「もう、これだから……」
苦笑いするミーナ。
基地が見えてきた。滑走路上には隊員達が何人か見える。手を振り、応える。この後始まるであろうお祝いパーティーを想像し、美緒とミーナは二人顔を合せ、くすっと笑った。
end
----
もっさん誕生日おめでとう記念にひとつ。
咄嗟に書いたので短めに……
本当はあんな事やこんな事も考えていたのですが
それは(ご希望が有れば)また次回と言う事に……。
ではまた〜。
- 275 名前:名無しさん:2009/09/10(木) 01:26:39 ID:caNrd.U.
- 久しぶりに来たらSS投下されてた!
超亀レスで申し訳ないが……
>>274 mxttnzhmさん
超GJです!!
あなたの書くSSが大好きです♪
もっさんカッコよすぎ
- 276 名前:名無しさん:2009/09/13(日) 04:42:13 ID:n2PXvRAw
おはようございます。DXUGy60Mです。ちょっと季節外れなネタですけどSSを一本投下します。
最後まで読んでいただけたら幸いに思います。
- 277 名前:エイラの怖い話:2009/09/13(日) 04:45:34 ID:n2PXvRAw
「宮藤、ちょっと来てくれないか?」
「何エイラさん?」
「実はちょっと興味深い本を見つけたんだ」
月がだいぶ高くなった時間の出来事だった。。
エイラはそう言いながら、何やらいわくありげな本をテーブルの上に置いた。
「・・・何これ?」
かなり古い本らしい。表紙は黄ばみ、いくつか虫に喰われたような穴も見受けられる。
「この基地がかなり昔からあることは知っているだろ?」
「あっ、うん」
「実はここには昔ここで起きた悲劇的な事件が書かれているんだ」
「事件?」
芳佳はエイラが指さす本を改めてまじまじと見つめる。
「そう、それが起きたのは・・・」
芳佳の返事も何も聞かぬまま、エイラはとうとうと語りだした。
「二百年ぐらい前のことらしい。ここで火事が起こったんだ」
「火事?」
「そう、ほとんどボヤだったらしいけど、一人がその火事で死んだんだ」
「えっ、本当ですか・・・」
芳佳の顔は少し青くなる。自分が普段過ごしている場所でそんなことがあると知ったなら
当然の反応だろう。
「あぁ、二つの偶然が重なってな。一つは、煙がそいつのいた部屋に回ってきたこと。も
う一つは、火事の起こる数日前から扉の立て付けが悪くなって開きにくくなっていたみた
いなんだ。
その日、起きた火事はさっきも言ったとおりほとんどボヤだったらしい。ただ、それが逆
に仇になった。その時ここに住んでた奴らは、ボヤだ。大したことはないって考えたから、
全員の所在や安否を確認することは無かった。・・・本当は一人足りなかったのに。
そのせいで、煙に巻かれて苦しんでいる奴がいることにも気がつかなかったんだ。そいつ
が死んでいるのに気づいたのも、火事が収まってから数時間経ってかららしい。そいつ
の最期は・・・酷いものだったみたいだ。体に火傷の跡なんかはないけど、顔は苦しみに歪
み、特に手は目を覆いたくなるような状態だった」
「手?」
「助けを呼ぶために扉を必死で叩いたせいで、皮膚が擦り切れて、血で真っ赤に染まって
いたみたいなんだ」
芳佳は思わずその光景をイメージしてしまい、その映像を消し去るために慌てて頭を振っ
た。そして、
「なんか・・・かわいそうな話ですね」
そうつぶやいた。
「まぁ、二百年も前の話だけどな。でも、怖いのはこの後なんだ」
「えっ?続きがあるんですか?」
「あぁ、宮藤は一時期だけどこの部隊にカールスラントの奴がもう一人いたことは知って
るか?」
「えっと・・・詳しくは知らないけど」
「これは、そいつが経験した話なんだけど・・・」
そう言いながら、先程までは、腕を組みながら話をしていたエイラは急にグッと体を前に
乗り出した。
(あれっ?なんか雰囲気が変わって・・・)
心の中で宮藤はそう思ったものの、それを口にする前にエイラの話は再び始まっていた。
- 278 名前:エイラの怖い話:2009/09/13(日) 04:47:31 ID:n2PXvRAw
「それはある日のことだった。その日の隊務も無事終え、明日のためにそいつは静かに床
に着いた。すると・・・
トントン、トントン。
という音が聞こえた。最初は誰かがノックしてるのかな〜と思ったけど、ふいにその音
は止んだ。なんだ、気のせいかな〜と思って、また眠ろうとすると、
ダンダン。
・・・さっきより大きい音が聞こえる。
誰か用か〜。そいつは少し怒った声でそう言ったものの返事はない。
あれ〜、私疲れてんのかなぁ〜。そう思って、また目を閉じるものの・・・全く寝付けない。
しょうがないな〜、ホットミルクでも飲もうかな〜、な〜んて思って、ベッドから下り、
部屋を出て扉を・・・閉める。
と・・・バンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバンバン!!
力任せに扉を叩く音。誰もいないはずの部屋から。なんで?どうして?
でも、そんなことを考える暇もないくらいに、バンバンバンバンって音が続く。
だ、誰かいるのか。誰だ、誰だ!
勢いよく扉を開いて、そこから中を覗き込む・・・誰もいない。あの音もしない。
で、恐る恐る電灯を着けても・・・何もない。
とりあえずは助かったのか?と、小さく息を吐いて、部屋の入り、扉を閉めた瞬間!!
扉。血でできた手形でいっぱいになってたみたいだぞ・・・」
「・・・・・・そ、そんなことがこの基地であったんですか?」
芳佳は体中がどこかうすら寒くなっていくのを感じた。それは、話の途中のエイラのど
こか鼻にかかった効果音を聞くたびに、だんだんと強まってきていた。
「あぁ、この日以来こういったことがその部屋で何度も起きて、カールスラントの奴は
だんだんと神経を病んでいき、最後にはこの部隊を離れていくことになったんだ・・・。
おっと、そろそろ寝ないとな。お休みな宮藤」
「えっ、あっ、お、お休み・・・」
「あっ、そうそう忘れてた。その出来事あったのお前の部屋だぞ」
- 279 名前:エイラの怖い話:2009/09/13(日) 04:51:52 ID:n2PXvRAw
布団はしっかりとかけている。
だが、絶えず隙間風が入ってくるような寒さを感じた。
芳佳は天井を見据えたまま、必死に自分自身に暗示をかける。
「え、エイラさんの話だもん。どうせ嘘だよ、嘘」
ただ、時々扉に視線が移り、その度に体がブルッと震えるのを見るあたり、どうやら暗
示の効果は薄いらしい。それどころか、意識しないようにしようとするためにかえって、
変に意識をしてしまっていた。
「・・・えっ?・・・え〜!!」
ほんの数十分前。突然の幕引きと突然の告白に芳佳は思わず目を白黒させた。そして、
悠々と自分の部屋に向かおうとするエイラの袖を慌てて引っ張り、話が本当かどうか問
い詰めてみたものの、あからさまに無視をされ、結局そのまま部屋にへと戻られてしま
い、真相はわからずじまいだった。
そのため、布団の中でひたむきな努力を続けたものの、いつの間にか視線は扉に釘付け
になっていた。そして、扉が異様な気配を発し、だんだんと眼前に近づいていて来るよ
うな錯覚を覚えていった。
そう、扉が、だんだんと大きく、大きくなっていく。
そして、まるで、肌から染みでるように赤茶けた扉の表面が、鉄の香りを漂わす赤い血
で、幾重にも重なった赤い手形で彩られていく・・・。
「・・・もう駄目」
芳佳は布団を払いのけ、おもむろに立ち上がりると勢いよく部屋を飛び出した。
「へへっ、宮藤の慌てっぷり傑作だったな」
エイラはベッドの上で、一人自分の計画の成功に悦に入っていた。芳佳の慌てふためい
た顔を思い出して、また笑い声を洩らす。顔はお得意のあのニヤケ顔だ。
二百年前の事件もカールスラントのウィッチが遭遇したという怪現象も全て口からの出
任せである。芳佳に見せた古本も、それらとの関係など一切無いものだ。
「今夜はよく眠れそうだ」
ニヤケ顔はまだ消えないもの、エイラはだんだんとまどろみに落ちていこうとしていた。
だが、それは勢いよく叩かれた扉の音にあっさりと打ち砕かれた。
「えっ、さ、サーニャか?・・・あ〜時間的にそれはないか・・・」
と、自分の考えをあっさり打ち消しながら、エイラは起きなおり、半分閉じかけていた
瞳を必死に開いて突然の訪問者の正体を探ろうとする。ただ、今夜は訪問者の方から素
直に名乗ってくれた。
「あの宮藤だけど・・・」
「宮藤〜?」
エイラは、めんどくさそうにベッドから下り渋々扉を開いた。
「何だよ〜こんな時間に」
「あの・・・一緒に寝てくれない?」
「・・・は?」
芳佳の言葉に目が開いたエイラは、芳佳がしっかりと枕を持参していることに気が付いた。
「なんでだよ〜・・・あっ、さっきの話のせいか?」
「う、うん」
こんな状況は予期していなかったエイラは素直に、
「さっきの話は嘘だぞ、嘘。だから、さっさと自分の部屋で寝ろよ」
話の真相を白状すると、扉を閉めようとする。
しかし、芳佳は閉まろうとする扉に枕を挟み込んだ。
「嘘だってわかってても怖いの」
「・・・子どもじゃないんだからさ〜」
エイラはため息をつきながら、枕を押しのけようとする。ただ、
「お願い、今夜だけでいいから・・・」
芳佳の哀願する瞳を見ていると、まぁ元々の原因は自分なんだからと渋々折れた。
「・・・たっく、今夜だけだかんな」
「エイラさん・・・」
「・・・ん?」
「寝た?」
「・・・寝てたら返事しないだろ」
枕を二つ並べ、芳佳はまっすぐ天井を見ながら、エイラは芳佳に背を向けながらベッド
の上で横になる。
「なんか話でもしない」
「・・・さっさと寝ろよ。明日も早いんだろ?」
「んと・・・なんだか寝付けない」
「じゃあ、羊でも数えてろ、羊」
自分はもう眠りたいため、エイラの返答はいささかぶっきらぼうになる。
「ん・・・そうする」
「そうしてくれ・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・エイラさん」
「あぁ?」
「羊って一頭だっけ、一匹だっけ?」
「・・・どっちでもいい!」
エイラは、イラついた声を出しながら、芳佳から離れるように体を抱えるようにする。
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・あの・・・宮藤?」
エイラは少し強く言いすぎたかなと、体を反転させる。
「ちょっと強く・・・って・・・」
既に芳佳はスースーと寝息を立てていた。はぁと大きくため息をつき、しばらくするとエ
イラもまどろみの中にへと落ちていった。
- 280 名前:エイラの怖い話:2009/09/13(日) 04:53:46 ID:n2PXvRAw
「エイラさん朝だよ!」
「・・・ん?」
芳佳に揺り起こされ、エイラはかったるそうに目を開ける。
「じゃあ、私朝ごはんの支度があるから、一度部屋に戻るね」
「あぁ、そうだな」
エイラと芳佳は共にベッドを下りる。そして二人連れ立って、扉の前へと進む。
「それじゃ」
「ああ、じゃあな」
すっかり笑顔になり、手を振りながら勢いよく芳佳は駆けだしていき、エイラもその姿に
ピョコピョコと手を振る。
(あれ・・・私起きる必要なくないか?)
一瞬そう思ったものの、大きく欠伸をすると、
(まぁ、いいや二度寝だ。二度寝)
そう考えながら扉を閉めようとする。すると・・・
突然、身体を射すくめるような殺気、視線をエイラは感じた。戦場においてもこんな気
を感じたことほとんど無い。体がブルッと震える。心臓を氷の手で鷲掴みにされたような
感覚だ。エイラは廊下にへと出て、顔を絶えず動かして視線の宿主を必死に探す。
しかし、廊下に人影は一向に見当たらない。
エイラはこれ以上探しても仕方がないと思い、どこかげんなりとしながら部屋にへと戻り
扉を閉めた。
そして、ベッドにへと向かいながら、
(そういえば扶桑じゃ、幽霊よりも生きている人間の嫉妬の方が怖いって言うな・・・)
ぼんやりとそんな事を考えていた。
Fin
- 281 名前:名無しさん:2009/09/13(日) 11:14:00 ID:LJM1.2Bw
- GJ!
面白かった。
いたずら好きだけど自分の術に自分もはまってしまう感じだな、エイラは。
宮藤とエイラの組み合わせは珍しいな。
あまりない組み合わせで新鮮。
- 282 名前:名無しさん:2009/09/13(日) 12:04:29 ID:bw2vBXxY
- >>280
GJ! エイラ×芳佳イイネ!
エイラさんはその後に怖い事が待ってるんですねわかります。
- 283 名前:名無しさん:2009/09/13(日) 23:21:06 ID:fGCCg5ps
- オラーシャ人を怒らせると後が・・・・
- 284 名前:名無しさん:2009/09/20(日) 05:17:00 ID:qlpxATRU
- いまさらコメントつけて申し訳ないが……。
>>280
GJ! こういうのも因果応報っていうんですかね(笑)
嫉妬したサーニャとそれをなだめるエイラのやり取りも見てみたいです。
>>283
シベリアの永久凍土に埋められるわけですね、わかります。
- 285 名前:名無しさん:2009/09/20(日) 11:34:56 ID:3XU4lCE2
- ここってまだ機能してるんですか?
- 286 名前:名無しさん:2009/09/20(日) 12:47:45 ID:GEIYnIF6
- レスの日付見れば分かると思うけど……
機能はしてるんじゃないかな。
ただ本スレが避難する程の荒れ様は見せてないから、人は少ないかもだけど
- 287 名前:名無しさん:2009/09/25(金) 13:03:06 ID:QxnIhbdE
- test
- 288 名前:名無しさん:2009/09/25(金) 13:03:46 ID:QxnIhbdE
- うむ。こっちは書き込める。
夏コミ以降のオンリーとかで何か収穫あった?
- 289 名前:名無しさん:2009/09/25(金) 21:58:44 ID:onqjEeg.
- 同じく、行けなかったから火曜のイベントとか聞きたい。
- 290 名前:名無しさん:2009/09/26(土) 21:07:53 ID:cs3BZDL.
- しかし……本スレ荒れてるな……
- 291 名前:名無しさん:2009/09/26(土) 21:13:00 ID:YPmun48U
- 気にするな
- 292 名前:名無しさん:2009/09/26(土) 21:17:55 ID:ngV5BC1o
- 愚者一人で賢者三人分の働きをするとはよく言ったもんだよ
あの勢いをそのまま持ってかえればいいのに
二期は主役級の出演キャラ総数どんくらいまで上がるかな
流石に倍にはならんと思うけど……
- 293 名前:名無しさん:2009/09/26(土) 22:49:50 ID:ZrjV4hx6
- とりあえず、前スレ1000は良くやった!
- 294 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/09/26(土) 23:07:58 ID:FK//XWMk
- こんばんは。風邪(例の新型ではない)をひいたmxTTnzhmでございます。
風邪引いて寝てうなされてたらこんな夢(お姉ちゃん視点で)を見た……
と言う事でかたちにしてみました。
……いつもながら全然かたちになってませんが、まあどうぞ。
- 295 名前:sister ban 01/03:2009/09/26(土) 23:08:52 ID:FK//XWMk
- 執務室で下された突然の命令に、トゥルーデは顔色を変えた。
「どうしてだ、説明してくれミーナ!」
「どうしてもです。命令に背いた場合は……分かっているわね?」
「そんな……急に」
「異議は?」
「……」
「無いなら退出して宜しい」
501隊長のミーナからトゥルーデに下されたひとつの「命令」。それは「“お姉ちゃん”禁止令」だった。
最初ジョークかと思ったトゥルーデは鼻で笑ったが、ミーナの刺す様な視線を受けて押し黙った。
隊の規律に関わる、最先任尉官がそんな体たらくでどうする……理由は幾つか有ったが、
結論から言うと、どうやらミーナは本気らしい。
「大変な事になったね、トゥルーデ」
執務室を出たトゥルーデに声を掛けるエーリカ。
「ああ。しかしいきなり禁止と言われても……私にどうしろと」
とぼとぼと歩くトゥルーデの横につくエーリカ。
「普段通り、後はすこ〜し真面目な感じで良いんじゃない?」
エーリカの何気ない一言に、トゥルーデは取り乱した。
「ふ、普段通り? 真面目? 普段そんなに乱れてるか? この私が?」
「自覚無いんだ」
「自覚……」
エーリカにぽつりと言われ動揺するトゥルーデ。
「よっ、堅物。中佐に絞られたんだって? お姉ちゃん禁止だってな。お前が死なないか心配だよ」
いつの間に聞きつけたのか、シャーリーが二人の横に並んでニヤニヤ顔をトゥルーデに向ける。
「リベリアン……耳が早いな。使い魔がウサギだけにか?」
「一言多いよ。しかし、お姉ちゃん禁止ねえ……」
「何が言いたい」
「確かにアンタは“お姉ちゃん”だわな。ルッキーニ見る目がそうだもん」
「なっ!? 何故そこでルッキーニが出てくる」
「自覚無いんだ」
エーリカと同じセリフを言われ、言葉に詰まるトゥルーデ。
「ま、ルッキーニだけじゃないな。例えば代表例として宮藤だろ? お前が宮藤を見る目、ありゃ常軌を逸してるよな」
「な、何の事だ!?」
「またまた〜」
肘でつついてにやけるシャーリー。
「あとはサーニャだろ、リーネだろ……てか、隊員の大半を見る目が」
「そんな事は無い!」
「有るってば。第一この前、ロンドンであたしと……んがっんぐっ」
「ばばば馬鹿! それは言うな!」
慌ててシャーリーの口を塞ぐトゥルーデ。
「へえ、この前私に話した他に何か有るんだ?」
「違う、無い! 誤解するなエーリカ」
つまらなそうに、ぷいと横を向き何処かへと歩いていくエーリカ。
「さて、堅物で遊んだ事だし、あたしもルッキーニのとこ行くか」
「リベリアン、貴様あっ!」
怒鳴られたシャーリーは脱兎の如く駆け出した。
独り残されたトゥルーデは、立ち止まり下を向いて数分考え込んだ後、執務室をもう一度訪れる事にした。
- 296 名前:sister ban 02/03:2009/09/26(土) 23:10:02 ID:FK//XWMk
- 「あらトゥルーデ。どうしたのかしら」
笑顔のミーナ。だが先程のやり取りが有った手前、目が笑っていない。
「ミーナ、さっきの命令、考え直してくれないか? 私の何処がお姉ちゃんなんだ?
私のせいで隊の行動に支障が出るなら……でも」
「他に言いたい事は?」
「ミーナ、そんな顔するな! 私は、隊の皆の事を心配して、皆の心の支えに、だな」
「それが免罪符になるとでも? それが貴方の答え?」
「なっ」
「私の答えは……」
ミーナは拳銃を抜いた。トゥルーデは恐ろしくなって執務室から飛び出した。
裏庭の木陰で独りぼんやりと考えを巡らせる。
どうすれば良いのか。微風に揺れる木漏れ日はゆらゆらとトゥルーデの顔を優しく照らすが、
答えを導き出す手がかりにはならなかった。静かに時間だけが過ぎていく。
「珍しい。こんな所にバルクホルンが居るとはな」
美緒だった。扶桑刀を小脇に抱えているところから、素振りでもしに来たのだろうか。
「ああ、少佐」
「なんだ、ぼけっとして。お前らしくも無い。元気出せ!」
美緒の豪快な笑いもトゥルーデには届かない。
不意に笑いを止めた美緒は真面目な顔で言った。
「まあ、ミーナの言いたい事も分からんではないがな」
「少佐」
「お前は好きでお姉ちゃんをやっているだけだろう?」
「え?」
「繰り返させるな」
美緒の言葉に気圧されたのか、トゥルーデは咄嗟に思いつく答えを並べた。
「……ち、違う、それだけじゃない。私は隊の最先任尉官だし、隊の皆の事だ、私が面倒見なければ」
「隊にそんな規則有ったか? 義務だとでも言いたいのか?」
「ううっ……」
「そんな理屈付けて、姉妹ごっこか」
美緒はトゥルーデの胸倉を掴んで、なじった。トゥルーデは何も言い返せなかった。
「情けない」
美緒は呆れ、トゥルーデを突き放した。
「そんな堅苦しい。嫌なら辞めたらどうだ」
それだけ言うと、美緒は刀を肩に掛け、その場を立ち去った。
トゥルーデは、美緒の背中に目を向けた。
「好きで、お姉ちゃん……」
はっと気付く。
「坂本少佐、やはり貴方は凄い天然ジゴロだ。私は、やっと分かった」
三度、執務室に戻るトゥルーデ。ばたんと扉を閉める。
窓の外を見ていたミーナは振り返り、トゥルーデを険しい顔で見つめた。
一方、執務室に向かう只ならぬ様子のトゥルーデに気付いた何名かの隊員が、
そっと執務室の外に集まり、扉越しに中の会話を盗み聞きしていた。
ミーナはトゥルーデを見て、言った。
「トゥルーデ、やっとお姉ちゃんを辞める覚悟ができたの?」
「なあ、ミーナ」
トゥルーデはそっと机に手を付き、ふっと軽く息をつき、言葉を続けた。
「私は妹が好きだ」
怪訝そうな表情を作るミーナを前に、トゥルーデは吹っ切れた笑みを浮かべ、続けた。
「やっと気づいたよ。隊員達の為だとか、心の支えだとか、年下だとか……、そんなのは理屈だ。
私は妹が好きで、私がお姉ちゃんである事が好きなんだ。お前だって私の妹だぞミーナ。
妹のクリスだって、愛してるのはお姉ちゃんであるこの私だ」
黙って話を聞くミーナ。トゥルーデは真剣な目でミーナを見た。
「誰に与えられた使命でも義務でもない。だから……、だからこそ絶対にお姉ちゃんを辞める訳にはいかない!」
扉の向こう側で耳を傾ける一同の中に、美緒の姿も有った。
「使命ではないからこそ……。好きだから、お姉ちゃん……」
そっと呟く美緒。
「私は皆のお姉ちゃんなんだ。私はお姉ちゃんを辞めない」
言い切るトゥルーデ。抗命罪を覚悟の、最大限の勇気。それだけではない、自信にも等しい、
いやそれ以上の瞳の輝きを見せる。
ミーナはじっとトゥルーデを見ていたが、やがてふっと笑い、頷いた。
「それで良いわ、お姉ちゃん」
ミーナはトゥルーデに寄り添い、そっと抱きしめた。
「ミーナ、有難う」
刹那、扉が勢い良く開かれ、隊員達が転がり込んで来た。
「バルクホルンさん、凄い度胸です!」
「よく分からないけど、けど……うーん」
「大尉……何てあっさりとご自分の性癖を……しかも中佐まで」
「はっはっは、やったなバルクホルン! ミーナを説得するとは筋金入りだぞ!」
「トゥルーデってば……」
「でも自ら認めたって事ハ……サーニャが危なイ!」
「エイラ、貴方も」
「おウッ!?」
- 297 名前:sister ban 03/03:2009/09/26(土) 23:10:42 ID:FK//XWMk
- そんな執務室の様子を、窓越しに見やるシャーリーとルッキーニ。
「ウジャー 何か楽しそう」
「ま、解決したって事だろ。あの堅物も」
「シャーリー、楽しそう」
「そう見えるかい?」
「笑ってるよ」
「うん……まあ、どうだろ」
「ヘンなシャーリー。ところでさ」
「どした?」
「あたしの名前、なんだっけ? ど忘れしちゃった」
「はあ? お前は何を言ってるんだ」
end
---
以上です。
公式サイトの鑑賞会のお姉ちゃんとか、
先日のイベントで明らか(?)になった
ルッキーニ→シャーリー→トゥルーデ→ルッキーニ
の関係(?)とか、中の人が名前を……とか、その辺りをネタに。
あと暴走するお姉ちゃんの元ネタは某特撮の名シーンから。
分かる人だけにどうぞ。分かりにくいですが。
ではまた〜。
- 298 名前:名無しさん:2009/09/26(土) 23:23:18 ID:UsGdFlcc
- >>294
自分も風邪をひいてるがそんな面白そうな夢は見たことがない。
うらやましい。
- 299 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 10:56:51 ID:0niJqSEA
- お姉ちゃん変態すぎるw
- 300 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 11:00:23 ID:mspB17qI
- 開き直るなwww
風邪の中GJですwww
- 301 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 21:09:06 ID:KvovF.G2
- 本スレの自作自演がひどいな。
- 302 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 21:15:33 ID:QQOeoNnY
- キニシナーイ!
>>297
開き直ると強いな○○は!w
- 303 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 21:19:06 ID:4q2T50B.
- >>297
お姉ちゃん落ち着けwww でもかっこいい!
細かいネタもGJですw
- 304 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 22:40:53 ID:LzveLWUc
- 本スレ異常に進んでて見る気もおきないんだけど、何かあった?
- 305 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 22:48:47 ID:YZf0qMh6
- 見ればわかると言いたいが見る気がないなら見なくていいや状態
また当分は避難所生活推奨だな
- 306 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 22:48:47 ID:96IlBjxA
- いつもの子が無職になっただけだから気にしなくていいよ
- 307 名前:名無しさん:2009/09/27(日) 23:42:35 ID:KvovF.G2
- さて、もうすぐ武子さんの誕生日だけど、SSくるかな?
- 308 名前:名無しさん:2009/09/30(水) 22:16:28 ID:i6LTa/ig
- DS版のPV、フランカが竹井さんの胸揉みまくってるな
ほっぺた引っ張ったりしてるしちょっと期待できるやも
- 309 名前:名無しさん:2009/10/03(土) 02:13:10 ID:3K5frGcU
- >>280氏の素晴らしいSSを読んだ後に自分の妄想がオーバーヒートしてしまった結果
こんな事に…
SS投稿すんの初めてだから何か色々間違ってたらごめん。
エイラーニャで「後日談〜本当にあった怖い話〜」
- 310 名前:後日談〜本当にあった怖い話〜:2009/10/03(土) 02:14:38 ID:3K5frGcU
- (そういえば扶桑じゃ、幽霊よりも生きている人間の嫉妬の方が怖いって言うな・・・)
そんな事をぼんやりと考えながらベッドへと潜り込む。
夢と現実の間をさ迷い始めた頃、ギィと扉の開く音がした。
(サーニャか…また…寝ぼけて来たんだナ…ショーガナイナー…)
もうすぐ来るであろう振動に、無意識に身構えつつそんなことを思っていた。
ドサッ
「さー…にゃぁ…また、部屋間違エテ………ッ!?」
ソコには眠りに包まれているサーニャでは無く、無表情でベッドに腰掛けて見下ろす私の知らないサーニャが居た。
いや、正確には私はこのサーニャを知っていた。
以前人の体を触るのは良くないと怒られてから、サーニャが朝に弱いのを良い事に、毎朝隠れてリーネのおっぱい
を揉みしだいていたんだ。でもついにいつもより早く起きたサーニャに見つかってしまった。
その時の記憶は脳が思い出すことを拒否している んダケド…
この黒っぽい紫色のようなオーラを出すサーニャは危険だ、と、使い魔と言うか、第六感と言うか、未来予知
云々の話ではなく、本能 そう 本能が告げるんだ。この状態のサーニャに逆らってはいけない、と…
☆
- 311 名前:後日談〜本当にあった怖い話〜:2009/10/03(土) 02:15:17 ID:3K5frGcU
- 起きるにはまだ早いケド、小鳥達がさえずり朝日も差し込んで、まさに一日の始まりとも言うべき気持ちの良い朝!
だと言うのに…私は青ざめた顔でサーニャを見上げている。
扶桑の言葉で言うなら、蛇に睨まれた蛙 だっけか…。
ベッドに腰掛けたまま無言の圧力をかけて来るサーニャ。
耐え切れなくなった私は勇気を振り絞り、いつも通りを装って話しかけた。
「ササササササーニャ、かか帰ってたたのカ。ねっ寝ないのカッ?つつ、疲れてるダロ…?」
ヨシ、いつも通りダ。問題ナイ。
後はサーニャが「眠い…」と言ってくれれば万事オッケィなはず…
なんでこんなに怒ってるのか分らないけど、サーニャを寝かしつけてサウナにでも行こう。
こんなに怒っているサーニャを見てしまったら眠気なんて吹っ飛んでしまった。
「…エイラ」
「ハヒッ!!」
「おすわり」
(な、何言ってんダサーニャ…)
私はすでに半身を起こした状態で座っている。と言うか固まっている。それに恐らく変な顔してる。これ以上どう
座れば良いのか…
と自問自答してたらサーニャが口を開いた。
「聞こえなかった?…おすわり」
「ハ、ハイ…」
普通に座るだけでは駄目なのだろう。私は足を折りたたみ、「正座」と呼ばれる姿勢をした。
「これはどう言う事?」
「ナ、ナンノコトカナ…?」
正座したのがマズかったのか?それとも懲りずにリーネのおっぱい揉んでたのがバレたとか?自問自答を繰り返して
いたらサーニャが口を開いた。
「質問に質問で返すのは良くないわ、エイラ。私が夜間哨戒から帰って来たら、宮藤さんがあなたの部屋から出て
きた。この説明をしてくれないかしら?」
「エ…(さっきの、見られてたノカ!いや、でもミヤフジとは何もないんだシ…て言うかサーニャ、ミヤフジのこと
いつもは芳佳ちゃんって呼んデなかったカ…?)」
「エイラ?」
「あの、ソノ…(ミヤフジもミヤフジだ!あんな嘘の話に騙されテ、その上一人で眠れないッテ…リーネの所にでも行け
ば良かったンダ。そしたら私がコンナ目に合う事も無かったハズなのニ…!そもそもなんでサーニャは怒ってるンダ?
あー!もー!ワケワカンネーヨ!!)」
心の中で宮藤に責任転嫁していたら、慣れない体勢のせいか足が痺れてきた。それに気をとられてまた返事をかえせない
でいると
「…そう、言えないのね」
と俯き加減で目を閉じ、悲しげに言うサーニャ。心なしか瞳が潤んでいる。それに気付いた瞬間、ようやく言葉が出てきた。
足の痺れなんて、サーニャの涙と比べるまでもない。
「チッ、違うんダサーニャ!」
「もういい。エイラなんか知らないっ」
「待っテ、サーニャ!!」
☆
- 312 名前:後日談〜本当にあった怖い話〜:2009/10/03(土) 02:15:42 ID:3K5frGcU
- 思わず部屋を出て行こうとするサーニャの腕を掴んで引き寄せる。
足が痺れていたせいか、上手くバランスがとれずにドサッとベッドの上に倒れこんだ。
サーニャがベッドに顔面衝突するのを避ける為に、無意識で抱きとめていたらしい。我ながら良くやったと思う。
この状態で顔を見るのは恥ずかしいので、サーニャの頭を抱えたまま言葉を紡ぐ。
「あの、さ。ミヤフジとは本当に何にもないんダヨ。昨日の夜、ミヤフジに怖い話をしてからかったンダケド、
ミヤフジがソレを真に受けて怖がっちゃってサ。私の部屋に無理矢理押しかけて来たンダ。だから、本当に…」
「もういい」
「…エ?」
やっぱりまだ怒ってるのか…どうすれば機嫌をなおしてもらえるかアレコレ考えようとしていたら、胸元から
くぐもった声が響いてきた。
「エイラがそう言うならそれを信じる」
よかった。いつの間にかお姫様のご機嫌はとっくに治っていたみたいだ。泣いてるサーニャなんて見たくない。
サーニャには辛い過去がある分、笑っていて欲しい。
サーニャの笑顔の為なら、私は何だって出来るんだ。
…出来ればあの禍々しいオーラも二度と見たくない。
不意に笑みがこぼれた。
「…そっか。アリガトナ」
「でも、他の子を部屋に入れるなんて、もうしちゃ駄目よ、エイラ」
「でも今回はミヤフジが勝手に」
「返事は?」
「ハイ!スミマセンデシタ!!」
「ふふっ。よろしい。(それに、エイラの隣で寝ても良いのは私だけなんだから…)」
「ん?なんか言ったか?サーニャ」
「なんでもない。それよりも朝ごはん食べに行きましょう?」
「エッ、もうソンナ時間なのカ。そういえばハラヘッタナー」
「そうだ。エイラ。罰として今日は一日中手を繋いでてもらうからね」
「エェッ!ソンナァ…は、恥ずかしいジャンカァ…」
「…嫌?」
「ウッ…謹んでお受けシマス」
だから泣きそうにならないで。泣きたいのはこっちだぞ、ホントに…
そこでまだサーニャを抱きとめたままの状態だったことに気付いて、慌てふためく私。きっと顔真っ赤なんだろうなぁ
「はっ、早くメシ食いに行こーゼ!」
☆
- 313 名前:後日談〜本当にあった怖い話〜:2009/10/03(土) 02:16:14 ID:3K5frGcU
- 二人して部屋を出ると同時にサーニャが手を取ってきた。
嬉しいやら恥ずかしいやらで私はカチコチ。まるでロボットだ。
食堂には既に何人か居て私たちを好奇の目で見てきたけど、ここで振り払ったりしたらまたサーニャの機嫌が悪く
なりそうだからしない。と言うより、サーニャを振り払うなんてできない。
当のサーニャは凄く楽しそうで、さっきまでの怖いオーラはどこへやら。まぁ、機嫌直してくれたみたいだから
ヨシとしよう。本当に良かった良かった。
安心して席に着くと、厨房で料理をしているミヤフジと目が合った。なんだか嫌な予感がするぞ…
「あ、エイラさん。昨日はすみませんでした。私、結構(寝相が)激しかったでしょ?エイラさん(ベッドから落ちて)
腰とか痛めてなければ良いんですけど…」
「あ、あぁ。ナンテコトナイッ…デェエ゛ッ!!」
てっ…手が!私の手がぁっ!なんかゴリゴリ言ってる!!サーニャ!痛い!痛いって!魔力開放しないで!まじで痛い!
「…エイラ。さっきのお話の続きしましょう?」
「みッミヤフジ!テメェェ!!!」
「えっ!!何々?私本当の事しか言ってないよ?!」
「そう。本当の事しか言ってないのね…」
「いいからミヤフジッ!モウお前は喋るナァァ!!」
殆ど感覚の無くなった右手を引かれながら、ふとミヤフジの後方の黒い塊が目に入った。
黒すぎてネウロイかと思ったけど、冷静に考えてあれ多分リーネだな…
「ねえ芳佳ちゃん、私も後で話があるの。良いかな?」
「え?あ、うん。分かった。あとで部屋に行くね」
そんな会話が聞こえてきたような気がした。ミヤフジ、今日は部屋から出られないんだろうな…
リーネに比べたらサーニャは可愛いもんだな
引きずられながらも他人事の様に思い、サーニャの顔をチラと盗み見た。
………前言撤回。今日は私も部屋から出られないかもしれない…
明日の朝日が拝めるかも微妙な所だ。
明日、生きてミヤフジに会えたら取りあえず謝ろう。元はと言えば私の話が原因なんだから。
私はまだ自分の恐ろしい未来が分っていないであろうミヤフジに、悟りきった笑顔を向けながら引きずられていった…
end
- 314 名前:名無しさん:2009/10/03(土) 10:15:33 ID:AV.I2EIE
- >>309
GJ!
嫁には頭が上がらない二人だなw
さぁ、次は密室でお仕置きされてる所を詳細に書く作業に戻るんだ!!
- 315 名前:名無しさん:2009/10/03(土) 15:20:07 ID:PcU/mu2g
- >>313
ああ、遂に戦線が拡大してしまった……
続き待ってますGJ
- 316 名前:名無しさん:2009/10/03(土) 18:49:17 ID:WnRHsI9E
- >>313
リーネにサーニャ、恐ろしい子達!
続きをわっふるわっふる
- 317 名前:名無しさん:2009/10/04(日) 16:29:37 ID:lI/GBd2Y
- 娘type3号で501解散後のガリアの話が載るらしいけど
アメリー出てきたりするかな?
- 318 名前:名無しさん:2009/10/04(日) 16:39:01 ID:lI/GBd2Y
- ごめん、もう発売してたのか。
アメリー出るみたいだし今すぐ買ってくる
- 319 名前:名無しさん:2009/10/04(日) 17:06:39 ID:iHErJ2ZA
- >>318
アメリーどころか、一杯出てる件w
- 320 名前:名無しさん:2009/10/04(日) 20:17:00 ID:3tqwwTvM
- ウィルマとアメリー以外のウィッチはどこかで既に出てた?
- 321 名前:名無しさん:2009/10/06(火) 02:02:15 ID:Z9T1rwcE
- 3K5frGcUです。
続き。と言うか、単体でも読めなくも無い感じ。
- 322 名前:名無しさん:2009/10/06(火) 02:02:58 ID:Z9T1rwcE
- 全く、この人ときたら。
本当に何も分ってないんだから。今回ばかりは許せない。私の居ない間に好き勝手なことをして。
私が居ない時を見計らってリーネさんの体を触ってる事だって知ってるんだから。
本当に一度、きついお仕置きが必要みたいね…
〜お仕置き〜
すっかり大人しくなったエイラを引きずり、彼女の部屋まで連れて行く。
エイラを床に正座させて、私はベッドへ。
さーにゃぁ…
そんな情けない声を出すものだから、なんだか少し腹が立った。
何も言わずにエイラを見下ろす。
「ウゥ…やっぱり怒ってるノカ…?」
上目遣いで私の顔色を伺ってくるエイラ。戦闘中の凛々しく引き締まった顔は面影もない。
「…そうね」
笑顔で簡潔にそう答えたら、エイラの顔がみるみる強張っていく。私そんなに怖い顔してるのかしら?
少しショックかもしれない。
「…ほ、本当に違うンダヨ、サーニャ!!誤解だっテ!ミヤフジの言い方が悪かったンダ。イヤ、元々
は私が悪いンだケド…でもさっきも言ったケド、誓って何もしてナイ!信じてクレ」
焦って捲し立てるように話すエイラ。
信じるも信じないも、私はエイラの事を誰よりも信頼している。
引っ込み思案な私でもエイラが居たからこそこの隊でやっていけたし、オラーシャに居た時の様に
寂しい思いもしていない。
たまにお父様やお母様の事を思って泣いたりするけど、抱きしめてくれるエイラに独りではないと改めて
実感させられる。
…何よりも私がエイラ以外の人のベッドに潜り込むなんて考えられない。
……それなのにこの人は
足が痺れてきたのか、プルプル震えているエイラを改めて見る。
「ねぇ…エイラ」
「な、何ダ?サーニャ」
「どうして私には触れてくれないの?」
「…え?」
「私、知ってるのよ…?」
エイラの震えが止まった。
「な、何ヲ…?」
エイラの頬を汗が伝う。
「聞きたいの?」
「……。」
足の痺れからくるものか、私が紡いだ言葉によるものか、はたまたその両方か。
エイラは滝のように汗を流しながら何か言おうと口をパクパクさせている。
少し苛め過ぎたかしら?
これくらいで参るようじゃ、今から考えているお仕置きには絶えられないかもしれないわね。
でも、今日の私は本当に怒っている。
エイラがヘタレても絶対に止めてあげないんだから。
- 323 名前:〜お仕置き〜:2009/10/06(火) 02:04:07 ID:Z9T1rwcE
- 「…足。」
「へ?」
「足、痺れたでしょう?ベッドに座ってもいいわよ」
「あ、あぁ…」
言われた通りに私の隣に座るエイラ。凄く動揺してるみたい。私の方をチラチラと見てきて、私
よりも年上なのに、その姿はまるで怒られている子供のよう。
実際、私は怒っているのだけれど。
隣に座るエイラの手を取り、私の胸に押し当てた。
「さっささささーにゃぁあ!?」
予想通りの反応。声も手も震えてる。それを無視して彼女に語りかける。
「私の体、震えるほど触りたくないの…?」
違う。
私は知っている。エイラは私の事を、本当に大切にしてくれる。私に触れないのも、きっと私を
傷付けたくないから。……ヘタレなのもあるかもしれないけど。
でも、私はエイラになら何時でも触れられていたい。支えられるだけじゃなくて、抱きしめられる
だけじゃなくて、もっともっと…
本当は芳佳ちゃんと何も無かったことぐらい分ってる。
許せないのは、一緒に寝た事。私の指定席を易々と差し出した事。
実際にはそうでない事は分っていても、エイラにとって私はその程度だと言われているようで悲しくて、
寂しくて。ついつい本人に八つ当たりしてしまったのだ。
言わばこれは、私の我侭。
「…!!サーニャ!大丈夫カ?どっか痛いノカ?!」
「どうして?」
「だってサーニャ、泣いてる…」
「…え?」
色々と思案していたら何時の間にか泣いていたようだ。
空いている手でエイラが拭ってくれる。ああもう、この人は…
自分の事よりも、私の事ばかりで。怒られていると言うのに、私が泣き出すと心配して震えなんてなくなって
オロオロして。
本当にもう、エイラなんか…
「ねえ、エイラ。私が泣いているのはエイラのせいなのよ」
「エェッ!ナ、ナンデ…」
「だから、ね。エイラ。キス…して?」
「エェッ!キッキス!?」
「してくれるまでこの手、放してあげない。これはお仕置きなんだから」
エイラの手は未だに私の胸にある。もちろん私がしっかり捕まえた状態で。
たっぷり5分。耳まで真っ赤にして唸り続けるエイラ。
出てくる言葉は2つに1つ。
でも今日は最後までゆるしてあげないんだから。だって私は怒っているんだもの。
「…ゥゥウゥ…」
「嫌、なの…?」
「ちっ違」
「じゃあ早くして」
急かすように目を瞑る。
「キョ、キョウダケ…ダカンナ…」
- 324 名前:〜お仕置き〜:2009/10/06(火) 02:04:33 ID:Z9T1rwcE
- 唇に柔らかい感触。少し震えてるところが可愛い。
約束通り手を放してあげる。その代わり、唇は放してあげない。
エイラの首に腕を回し、深いキス。
舌を割り入れ、硬直している彼女の舌を絡めとり、歯列をなぞる。
「ふぅっ…ん…さ…にゃ……んむっ…」
苦しいのか、顔を真っ赤にして私の服を掴むエイラ。そんな仕草も可愛いと思いながら尚も吸い上げる。
突然何か吹っ切れたのか、今度は彼女の方から舌を絡めてきた。
その以外な行動に驚いていると、そのままベッドへと押し倒される。
あ…ふかふか…
胸の鼓動は早いのに、悠長にそんな事を考える。
エイラに合わせて顔の角度を変え、差し込まれる彼女の舌を受け入れて堪能する。
「んんっ!…えい…らっ…ぷは……えいら………だい…す…き」
「っは……サー、ニャ……私も…モゥ………………ん?」
夜間哨戒明けで寝ていないのと酸欠で、私はそこで意識を手放した。
深い眠りに落ちる寸前
「そ、ソンナ……さ〜にゃぁ」
と、何とも情けないエイラの声を聞いたけど、これはお仕置きなんだから続きはまた今度。…と思ったけど
強気なエイラもかっこよかったから、惜しい事したかな…
でも、意気地無しのエイラに火をつける方法は分ったから、それは次回のお楽しみに取っておこう。
今は私の苦手とする太陽がてっぺんまで昇っていて、私はエイラの暖かい匂いに包まれて眠りに付く時間
なんだから…
fin
- 325 名前:名無しさん:2009/10/06(火) 18:35:46 ID:4UdV1xpo
- >>324
何という焦らしプレイ!? 大甘GJ!
さすがサーニャさんですね。エイラさんも相変わらずで安心しました。
で、リーネと芳佳はどうなりました?
wktkして正座して待っているんですが
- 326 名前:名無しさん:2009/10/06(火) 19:29:10 ID:ESCf1Ozw
- >>324
す、すげぇ。本当に書いてくるとは思わなかった。
しかも、甘いよ、チョコレートケーキに練乳とシロップかけたみたいに甘いよ!!
GJ!
- 327 名前:名無しさん:2009/10/07(水) 01:01:37 ID:rp3MRh2w
- >>324
GJすぎる
エイラーニャに萌えたのは久しぶりだ
ごちそうさまでした
- 328 名前:名無しさん:2009/10/09(金) 16:53:19 ID:vrOK0fQI
- >>324
一か月ぶりに来たけどいいもの見れた
GJ!
- 329 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 00:34:35 ID:pf7U3h7A
- 色々あって読めてなかった砂漠の虎後編、今日ようやく読めたんだけど
フレデリカ少佐以外どんどん百合ん百合んになってきてるな
稲垣軍曹に一目惚れしちゃうシャーロットについて誰も書いていないとはどういうことだ
ライーサ少尉とまで妙に仲良くなってるし、加東大尉も含めたらちょっとした稲垣ハーレムじゃないか
- 330 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 00:49:11 ID:R1IXHWtc
- >>329
>稲垣軍曹に一目惚れしちゃうシャーロット
砂漠の虎後編うっかり買い逃してからそのままにしてたけどそんな展開があるのか
明日買ってくる
- 331 名前:〜お仕置き〜リーネ編:2009/10/10(土) 01:53:25 ID:wWUq8xd6
- 3K5frGcUです。
芳リーネ編できました。
SS書いたの久しぶりだったけど、楽しく書かせてもらいました。ありがとう。
〜お仕置き〜リーネ編
- 332 名前:〜お仕置き〜:2009/10/10(土) 01:53:57 ID:wWUq8xd6
- あれ?エイラさんとサーニャちゃん、朝ごはんいらないのかな?
エイラさんが微笑んでるけど、目が笑ってない。
サーニャちゃん寝てなさそうだし、今から二度寝でもするのかな。
取りあえず二人分の朝食を別に取り分けておこう。
〜お仕置き〜リーネ編
朝食後の訓練も終わり、当番の洗濯物もすべて干した。
ネウロイも暫く来ないだろうし、午後は自由時間だ。何しようかな…
あ、そういえばリーネちゃんに呼ばれているんだっけ。
リーネちゃんの部屋に向かう途中、生気の無いエイラさんに会った。
「あれ?エイラさん、もう起きたんですか?サーニャちゃんは?」
「あぁ…ミヤフジか…サーニャはまだ寝てるヨ。しかしその様子だと…まだ、なんだナ…」
「??何の話ですか?て言うか、大丈夫ですか?!体調悪いなら医務室に行った方が…」
「アァ…いや、大丈夫ダ。取りあえず先に謝っとくヨ、今回は全部私の責任ダ。ゴメンナ………あ、でも
洗濯当番代わるのとかは勘弁ナ。私はモウ、色々と限界なんダ…」
そう言うとエイラさんはおぼつかない足取りでフラフラと去って行った。
本当に大丈夫かな…
エイラさんも心配だけど、リーネちゃんを大分待たせているから足早にその場を後にする。
体調管理も仕事の内だし、本人が大丈夫だと言うのなら大丈夫なんだろう。
気を取り直してリーネちゃんの部屋に向かった。
☆
- 333 名前:〜お仕置き〜:2009/10/10(土) 01:54:41 ID:wWUq8xd6
- コンコン
「リーネちゃん?私。芳佳だけど…」
「芳佳ちゃん?開いてるから入ってきて。今手が放せないの」
「わかった。お邪魔しまーす」
扉を開くと、リーネちゃんは私に背を向けてベッドの上で何かガチャガチャと作業をしていた。
まだお昼を過ぎた頃だから明るいはずなのに、なんだか部屋が薄暗い。
リーネちゃんの部屋、こんなに日差し悪かったっけ?
そんなことを思いながらリーネちゃんに近付く。
「リーネちゃん、ごめんね、大分待ったでしょ?」
「大丈夫。私もちょうど今終ったところだから」
笑顔で振り向くリーネちゃん。何の作業をしていたのか気になって、覗き込もうとしたその時、
ズイッと視界にリーネちゃんが入ってきた。
「ねぇ芳佳ちゃん。昨日、エイラさんと何してたの?」
「え…?一緒に寝ただけだよ…?」
「本当に?」
「う、うん…」
笑顔だけど何だか怖い。もしかしてリーネちゃん、怒ってる…?
「私何も知らないんだけど。どうして一緒に寝たのかなぁ…?」
「そ、それは…」
「…言えない?」
い、言えない。作り話に本気で怖がって、エイラさんの部屋に潜り込んだなんて。
今思うと子供じみてて恥ずかしい。
「ごっごめん!ちょっと恥ずかしい理由だから、また今度って事で…駄目、かなぁ?」
「恥ずかしい理由?」
「う、うん…ちょっと人には言えないような…」
苦笑しながら答えたら、急に視界が反転した。
それに続きガチャリ、ガチャリと金属質な音。
私の上にリーネちゃんが乗っかっている。お、おっぱいが…!目の前にっ!!
無意識に手を伸ばすけど、一定の所まで来ると金属音と共に自由が利かなくなった。
あれ、何で…?
よく見ると両手が手錠に繋がれている。それがベッドの両足に繋がっていて…
私は万歳をする姿勢で固定されて居た。
「リ、リーネちゃん?!これは一体…」
「芳佳ちゃんが言いたくないなら、言わなくても良いけど…私は気になるな……エイラさんと
ナニをしていたのか…」
リ、リーネちゃんの様子がおかしい!
- 334 名前:〜お仕置き〜:2009/10/10(土) 01:55:11 ID:wWUq8xd6
- やっと事態の異変に気付いたけど、時既に遅し。
私は逃げられずにベッドの上でもがくだけ。そんな私を、笑ってない笑顔で見下ろすリーネちゃん。
こ、怖い…
頬にリーネちゃんの手が触れる。それだけの事なのに、体が大げさに跳ねた。
「芳佳ちゃん、可愛い……ねぇ、エイラさんと何してたの…?」
「な、何もしてないよ!本当に、一緒に寝てただけだからっ……あっ」
頬に当てた手を首筋にやられて変な声がでた。恥ずかしい。
「本当に何もないの…?じゃあ今朝言ってた事は何?」
「けっ今朝?……はっ……あぁっ!…やっ嫌だ……リーネちゃっ」
首筋を触れるか触れないかの感覚でなぞられる。くすぐったいし、恥ずかしいしで多分真っ赤になってる。
「そう、今朝。覚えてない?芳佳ちゃん、エイラさんに激しいとか、腰は痛くないかとか、聞いてたじゃない」
私の首筋をゆるゆるとなぞりながら、そんな事を言ってくるリーネちゃん。
もしかして、勘違いしてる…?
「ちっ、違うの…っん…あれはエイラさんが…っあ」
「エイラさんが誘ってきたの?」
「違うっ…んぅ…最後まで…聞いてっ、はっ…わ、私の寝相でっ…エイラさんが…ベッドから落ちなかったか
心配だった…からっ…あはぁっ」
「…そう。じゃあエイラさんは関係ないのね……それじゃあどうして私の部屋に来なかったの?」
「そっ…れは…もう寝てると…思ってたからぁっ!」
「そう。私の事を思ってしてくれた事だったのね…優しいね、芳佳ちゃん。……でもやっぱり許せない」
ゆるせ…ない…?
にっこりと微笑むリーネちゃん。首筋から手を離されたけど、変な体力を使ってヘトヘトになった私は
その言葉も理解できずにうつろな目で彼女を見上げていた。
ふいに視界がリーネちゃんで一杯になった。
唇に柔らかい感触。あれ?もしかしなくてもこれは…
キス されていた。
「ふぅんっ……っは…リ…ネちゃっ…」
舌を入れられ、激しく犯される。事態が把握できない私が目を見開いたままでいると、
ふいにリーネちゃんと目が合った。それと同時にリーネちゃんの唾液が伝って私の口内に浸入してくる。
口を塞がれていて、呼吸が出来ない私はこくこくと喉を鳴らしてそれを飲むしかない。
「んっ!……んぅ…んむっ…………ぷはッ…はぁっはぁ…」
全て飲み終えると、やっと口を話してくれた。
「ふふっ。芳佳ちゃん全部飲んだんだね。偉い偉い」
嬉しそうに笑いながら言うリーネちゃん。
「っはぁ…リーネちゃん…どうしてこんな…」
「これはお仕置きなんだよ。芳佳ちゃん」
「お、お仕置き?」
「そう。きっとエイラさんはサーニャちゃんにお仕置きされてると思うよ」
「ど、どうしてお仕置きなんて…」
「あれ?芳佳ちゃん、まだ分ってなかったんだ…じゃあ分るまでお仕置きしちゃおうかな♪」
そう言うと今度は制服をたくし上げて、スーツの上からわき腹をなぞられる。
「ふっ……あぁっ!リーネちゃっ…変な声でちゃうっ…から…っは、やめ…」
「止めないよ?芳佳ちゃんが気付いてくれるまで」
その笑顔は、私が大好きなリーネちゃんの笑顔に違いないんだけど、ネウロイの瘴気のような物
を纏っていた。
☆
- 335 名前:〜お仕置き〜:2009/10/10(土) 01:55:33 ID:wWUq8xd6
- 結局、私が気付けたのは夕方頃。それも晩ご飯の準備があるからと、リーネちゃんがヒントを出して
くれてやっと気付いたのだった。
それまでに何回気を失いかけたか…
手錠を外して貰い、「芳佳ちゃんは疲れてるだろうから、今日は私一人で準備するね。少し寝てても構わないよ?」
と、軽やかにスキップしながら食堂に向かうリーネちゃんを見送り、エイラさんの言葉を思い出してため息を付いた。
いつまでもベッドの上でぐったりしてる訳にもいかない。
一人ですると言っても相当な量だから、私も手伝わないと。
そう思って立ち上がったけど、腰がだるくて上手く歩けない。
壁に手をついて歩いていたら後ろから声をかけられた。
「ミ、ミヤフジ…」
「…あ、エイラさん……」
「その様子だト、お前モ…」
「えぇ…まぁ…」
力なく笑ってみせる。
「ごめんナ。元はと言えば私があんな話をしたから…」
「だっ大丈夫ですよ!そんな顔しないで下さい!!私も軽率だったんだし!お互い様って事で」
「あぁ…そう言って貰えると助かるヨ…」
「え、えへへへ…」
「ハハ、ハハハ…」
「「……………はぁ……」」
リーネちゃんには言えないけど、エイラさんとは少し、いや、かなり分かり合える気がした。
fin
おまけ
夕方、食堂にて
トントントン…
「あ、サーニャちゃん、おはよう。今日は起きるの早いね」
「リーネさん、お早う御座います…昨日はエイラが色々とご迷惑かけたみたいで…ごめんなさい」
「大丈夫だよ。簡単に部屋に行っちゃった芳佳ちゃんも悪いんだから」
「エイラにはちゃんと言って聞かせましたから」
「うん。ありがとう。私も芳佳ちゃんに言っておいたから」
「そうですか…お互い、大変ですね……あ、手伝います」
「ありがとう。じゃあ、こっちのスープをお願いできるかな?」
「はい」
それをこっそり入り口から盗み見るエイラと芳佳
「何話してるんでしょうね…?」
「ワカンネェ…でも今行ったら絶対危ない気がスル」
「わ、私もそんな気がします…!」
「…ウジャー!いい匂〜い!!あれ?エイラとヨシカ。そんなところでナニしてんの?」
「「……っ!!!!!」」
おわる
- 336 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 03:24:54 ID:Pt/BdUeA
- >>335
GJ!!エイラと芳佳の受難は更に続くのかww
- 337 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 11:02:39 ID:qDHiALfU
- >>355
なんだか勢いで受けカップルが成立>さらにオシオキな流れがステキ
続きも期待しちゃいますよ^^
>>329
本スレで雑談は振ったけどまだSSは無いよね。
あの妹系な笑顔にはトゥルーデを100回撃墜しておつりが来るだけの威力があると思う。
アフリカに行った炉のシャーリーが真美タソハァハァになってルッキーニがやきもちを焼くとかもありそうだw
でもそれはそれとして今日はヘルマの誕生日なんだが、SSはこないかな?
(自分は忘れてて別のものかいてる
- 338 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 13:01:17 ID:nNTeqefY
- >>335
正座して待ってた甲斐があった!GJ!
リーネもサーニャも恐ろしい子!
>>337
そう言えば今日はヘルマの誕生日だったか。
すっかり忘れてた……。
- 339 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 14:13:16 ID:CQjlSl9U
- >>335 GJです
なんかホッとするね、こっちは
アフリカのssってまだ二本しかないのか
真美もだけど、マルケイ(カトマル?)も増えるといいな
- 340 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 15:11:07 ID:pf7U3h7A
- 蒼空の電撃戦の特典の絵柄が妙にミーナさん攻めな件
ttp://www.w-russell.jp/s-witch/images/teleca_03.jpg
ttp://www.w-russell.jp/s-witch/images/teleca_04.jpg
>>335GJ
しおしおになってる芳エイラを想像するとちょっと笑えるw
- 341 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/10/10(土) 18:42:24 ID:t8EGw6xE
- >>335 3K5frGcU様
GJ! サーニャとリーネ怖いけど面白い!
ぜひ続きが読みたいです!
>>340様
服装が違ったら何処かの学園みたいな……
ともかくミーナさんスキーにはたまらないですな。
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日と問われれば書かざるを得ないと言う事でひとつ。
急遽作ったので出来はアレですが、とりあえずどうぞ。
一応、保管庫No.0450「ring」シリーズ続編、
及び保管庫No.1037「milk and honey」の続きとなりますので宜しく。
- 342 名前:jealousy 01/02:2009/10/10(土) 18:43:37 ID:t8EGw6xE
- ハンガーに響く、元気一杯の声。
「どうもお邪魔します!」
「いらっしゃい。歓迎するわ、レンナルツさん」
早速渡された書類を片手に、にこりと笑うミーナ。
「ありがとうございます、ヴィルケ中佐」
微笑むヘルマを見、トゥルーデは溜め息を付いた。
「全く、毎度毎度お騒がせだな、ヘルマは」
「そうですか? 今回は私のせいじゃないですけど」
「基地への連絡が遅れたせいだと言いたげだな。基地のウィッチ全員で迎撃するところだったぞ」
トゥルーデの言う通り、『基地に高速で接近する未確認飛行物体を発見』と言う事で基地が緊張に包まれた。
だが数分後、所属原隊を通じてヘルマ来訪の連絡が(やや遅れて)届き、
『未確認飛行物体』がヘルマのジェットストライカーだと知った501のウィッチ一同は揃って拍子抜けした。
「それはそれで、皆さん総出のお出迎えで歓迎してくれるってことで」
「歓迎ねえ。超遠距離から狙撃されたりロケット砲撃ち込まれたり、挙句蜂の巣にされるんだけど」
嫌味たっぷりにヘルマの頭をごしごしこすりながらエーリカが言う。
「それは嫌ですけど、大丈夫です」
「何だその自信は」
「お姉ちゃんが守ってくれるって信じてますから。ね、お姉ちゃん♪」
「ああ、確かに私はお前を守るぞ、ヘルマ。さあ……」
「ああ、お姉ちゃん……」
その場できつく抱擁し、指を絡ませ、更に異次元へと向かうトゥルーデとヘルマ。
「ストップストップ!」
「はい、そこまで」
シャーリーとエーリカに引き剥がされる二人。
「あーん、いいとこだったのに」
「はっ、私は今何を……」
正気に返り自分の手をわなわなと見るトゥルーデ。
「皆の居る前でいきなりおっ始めるのは、流石にどうかと思うぞ、堅物さんよ」
「き、気のせいだリベリアン! 私は何もしていない! ……と思う。この通りちゃんと正気……いたたっ、何するんだエーリカ」
耳をつねられ、よろけるトゥルーデ。
「トゥルーデ、すぐ別の世界にトリップするよね」
「き、気のせいだ」
「へえ、気のせい、ねえ」
「怖い顔するなエーリカ」
「だって」
「あれ、嫉妬ですか? ハルトマン中尉」
むくれた顔のヘルマに言われ、ちらりと見返すエーリカ。
「アンタにだけは言われたくないよ、レンナルツ。さ、用事済んだらとっとと帰って」
「酷い! せっかくの機会なのに」
「何がせっかくなんだか」
「だって。私、今日誕生日で」
「……だから?」
「その記念すべき日に憧れの人に会えるなんて、ステキな事だと思いませんか?」
「レンナルツにだけは有り得ないね。さ、滑走路はあっち」
とっとと帰れと指差すエーリカを見てヘルマはトゥルーデに抱きついた。
「酷い! 助けてお姉ちゃん、ハルトマン中尉が冷たいんです」
「うーむ、誕生日か。おめでとうヘルマ。何かお祝いしてやらんとな」
「誕生日祝い? ウキャキャ、楽しそう」
「こらルッキーニ、また何かヘンな事考えただろ」
「べーつにー」
しばし考え込んだトゥルーデは、ハンガーの様子を見に来た芳佳とリーネを見つけ、声を掛けた。
「宮藤、リーネ! 何か祝うものは無いか? 例えばケーキとか……、あとケーキとか」
「祝う、ものですか?」
「ケーキばっかりですね」
「いきなり言われても、流石に準備が……お茶菓子ならすぐ準備できるんですけど」
「うーむ、そうか。私も、今は特になあ」
「あう」
がっかりするヘルマを見たミーナは、ふっと笑って言った。
「まあ、良いじゃない。ひとまずみんなでお茶にしましょう。レンナルツさんもゆっくりしていくと良いわ」
「ありがとうございます、ヴィルケ中佐」
- 343 名前:jealousy 02/02:2009/10/10(土) 18:44:44 ID:t8EGw6xE
- 楽しい午後のお茶会も終わり、ヘルマは帰り支度を始めた。
今回は日帰りと言う事で兵装の整備も慌しく、武器を担ぎ、ストライカーを履いて魔導エンジンの調子を確かめる。
ヘルマは見送りに来たトゥルーデを見て、言った。
「今日はお茶会楽しかったです。皆さんからお祝いしてもらったし」
「まあ、いつもと同じ午後の休憩だったけどな」
「私はそれでも良いです」
「また来ると良いさ。誕生日祝い、しっかり準備しておくからな。でも次来る時は、前もって言うんだぞ?」
「それは期待して良いって事ですね?」
「はいはいレンナルツ、落ち着いて。エーテル流乱れてるよ」
「おっとっと……じゃあ、これで」
「気を付けてな」
ヘルマはストライカーの格納装置から出てタキシングしながら、すすっとトゥルーデに近寄って来た。
「あの……」
「ん? どうした?」
そのまま近付き、距離がゼロに。トゥルーデの頬にそっと唇を当てると、ヘルマは弾けるばかりの笑顔を見せた。
「なっ! 何するんだ!」
「これ、私へのお祝いで、良いですよね?」
「あ、ああ……まあ」
「じゃあ、今日はこれで!」
笑顔のヘルマは手を振って離れていった。ゆっくりと滑走路に向かい、やがて速度を上げ離陸し、去っていった。
「……」
トゥルーデは頬を押さえ、しばし無言。そして何かを言おうとした矢先、エーリカに耳を引っ張られた。
「いたたっ、何だエーリカ! 今日はヤケに暴力的だな」
「トゥルーデに言われたくはないよ。全く、毎度毎度お騒がせだよあの子」
「まあ、たまには良いじゃないか」
「たまに? そのたびに私はどう言う気分になるか、分かってる?」
「すまない、エーリカ」
「たまに洒落にならないんだもん、トゥルーデ」
すねるエーリカをそっと抱き寄せ、額に軽くキスするトゥルーデ。
「エーリカ、私は……」
「分かってる。分かってるからこそだよ?」
上目遣いにトゥルーデを見るエーリカ。
「すまない」
「ま、自覚してるだけマシ、か」
エーリカはトゥルーデと軽くキスを交わし、ぎゅっと抱きしめる。
「今夜は分かってるよね? さ、行こうトゥルーデ」
にやりと笑うエーリカ。
「あ、ああ。ってあれ? 今日はヘルマの誕生日……」
ずりずりとエーリカに引きずられるうち、まあ良いかとうやむやになってしまうトゥルーデ。
そんな二人を見て、やれやれと溜め息を付く501の一同だった。
end
- 344 名前:名無しさん:2009/10/10(土) 18:45:08 ID:t8EGw6xE
- 以上です。
ヘルマの誕生日祝いの筈が、何だかウヤムヤに……。
とりあえず勘弁して下さい。
ではまた〜。
- 345 名前:名無しさん:2009/10/11(日) 09:53:31 ID:U34SBrTU
- >>344
なかなかほのぼのしてて和みました。こういう会話形式で進むのは
さっくり読めて好きです。ぐっじょぶ。
- 346 名前:名無しさん:2009/10/12(月) 18:43:40 ID:D2hyB.TQ
- なあ・・・いらん子の続きはいつ出るの・・・?
- 347 名前:名無しさん:2009/10/12(月) 23:12:44 ID:3cQ/ah1k
- >>344
唯一のヘルマおめでとうSS、楽しんで読ませてもらえました。
エーゲルカップリングも相変わらずなので安心感があります。
GJ
>>346
俺たちの2009の初春はまだ来ていないんだ。
ゆっくり待とうぜ。
- 348 名前:名無しさん:2009/10/12(月) 23:19:15 ID:SN6VMDuA
- まさかゲームの方が早く発売されることになるとは思わなかったなw
- 349 名前:名無しさん:2009/10/14(水) 00:12:07 ID:7CirgfGI
- >>344
楽しんで読ませていただきました。GJ!
あいかわらずお姉ちゃんはwww
焼きもちやいてるエーリカもかわいらしいです。
それに、レンすけもなかなか大胆ですよねw
>>346
新刊には新キャラ出るのかな。新キャラじゃなくて他所で登場してるキャラと絡んでくれても面白いんだけど。
- 350 名前:名無しさん:2009/10/14(水) 00:28:41 ID:k1yIRlOU
- http://www1.axfc.net/uploader/Img/so/62094
なんかできた
- 351 名前:名無しさん:2009/10/14(水) 02:07:16 ID:7CirgfGI
- >>350
これはすごいwww
二人ともかっこよすぎるww
せっかくだからDS版も作ってみては?
- 352 名前:名無しさん:2009/10/15(木) 18:34:13 ID:TNSocx.U
- >>350
イイネ(・∀・)
ところで「わたでき4」行けた人いる?
仕事で行けなかったんだが……行けた人羨ましいぜ
- 353 名前:350:2009/10/15(木) 18:56:07 ID:QLOv0Hn6
- 履歴書の趣味の欄に読書って書いといたんだ
今日面接試験で、「最近読んでる本で気に入ったのがあれば」
……乙女ノ巻しか読んでなかったからストライクウィッチーズって答えたよ……うわああああああああああん!!!!!
絶望的に恥ずかしかったんですけどwwwwww
- 354 名前:名無しさん:2009/10/15(木) 21:08:25 ID:fg.v7ccI
- >>353
そういうときのために、キャラの人間関係への考察を深める為にもモトネタ人物の著書を読んでおくんだ。
面接の時に大空のサムライとか答えて、「先人の経験に学ぶところも多いと思います」
とかスラスラいえたらかっこよくね?w
- 355 名前:名無しさん:2009/10/15(木) 23:04:47 ID:QLOv0Hn6
- >>354
だあああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!
大空のサムライ、兄貴に借りて全部読んだんだった……orzorzorz
言われるまで思い出せなかった……2泊3日のキャンプに持ち込んで、行きの
車の中から果ては夜更かししてまでひたすら読んでたのに……orz
あれでだいぶ当時の空戦について知った。けど、最後いきなり戦後に飛んだのは
ちょっとびっくりした覚えがw
- 356 名前:名無しさん:2009/10/16(金) 01:22:33 ID:B71c1DbY
- >>353
百合スレ兵の鑑wwwww
ただ、百合スレ的には乙女ノ巻じゃなくていらん子と答えてほしかったところだがwww
- 357 名前:350:2009/10/16(金) 16:12:53 ID:nkHo2yH.
- 内定きたー!
- 358 名前:名無しさん:2009/10/16(金) 21:57:09 ID:kzA7ROYQ
- おめ〜……っていうか何で内定きてるんダヨ。
ここまでのネタ振りから言って「やっぱダメだった」って言って慰めて貰う流れだろwww
ともあれオメデトナ。
個人的にはフィンランド空軍戦闘機隊がオススメなんで、初任給で買って読んでユーティライネンの魅力を再確認してやって欲しい。
- 359 名前:名無しさん:2009/10/17(土) 04:16:36 ID:GjYm5iIQ
- ゲルトのお姉ちゃん病の発症って公式の基地探訪が最初?
アニメではシスコンの枠に何とかおさまってた気がしたけど忘れてしまった
- 360 名前:名無しさん:2009/10/17(土) 06:26:52 ID:3PN652IA
- >>358
ありがとう、エイラさん!
でも私、誰とはいわないけどヘタレじゃな(ry
うそですごめんなさい。
ありがとうございます。就職試験直前、家出る30分前にストパンMAD作り始める
ぐらいほんとになにも対策しないで行ったんですが、自分の得意分野で適性が
あったんでとってもらえましたw
フィンランドか……了解であります少尉!ゞ
ちなみにMADのほうはニコにうpしときました。エーリカが暴走してるのが
あったらソレです。
- 361 名前:名無しさん:2009/10/18(日) 22:06:42 ID:ekkyBowg
- >>359
6話
肝油について、芳佳が持ってきたと思ってた間:
「栄養があるなら、味など関係ない」
もっさんが持ってきたと知ってから:
「まずい……」
7話
「なら、私のを貸してやろう」
8話
「いや、不規則機動中の敵機に当てるのはなかなか難しいんだ」
9話
「す、すみません、急いでいたもので……」
「なっ!? 何を言うか、私を誰だとッ……!」以降クリスと面会中ずっと
10話は芳佳をいじめてたから却下。
11話
「やっぱり宮藤のため?」
「うぇっ、あ、あぁっ、はぅっ!」
「つまり、だ。宮藤が、ry
「わ、私は違うぞっ、私はっ!!」
芳佳のストライカーユニット持ってきたり(まあ固有魔法のこともあるんだろうけど
芳佳にストライカーユニットはかせたり(場面が場面じゃなかったらレイプです、本当にry
最早お姉ちゃん病を超越して妹達にベタ惚れですね
だから実際6話ぐらいから初期症状? つか実は6話以降9話以外芳佳がらみのセリフあるのな
芳佳がらみ多すぎというか、付き合っちゃえよjk
ま、秘め声も相当ですけどね!
「妹が、もう一人できたような……ふむ、悪くないな」
「宮藤のほうこそどうだ、なにか困ったことは無いか? 助けが必要なときは、私を姉だと思ってry
クリスにまで可哀相な目で見られるトゥルーデまじかわゆす
- 362 名前:名無しさん:2009/10/20(火) 01:37:10 ID:e.GR2VBI
- ハロウィンネタってみんな書いてないけど御法度なの?
今プロット出来上がったんだが…
- 363 名前:名無しさん:2009/10/20(火) 03:06:54 ID:qkKex16s
- >>362
たまたまだと思うよ。
そういえばそろそろか。
自分も何か考えてみるかなぁ。
- 364 名前:名無しさん:2009/10/20(火) 03:19:10 ID:e.GR2VBI
- >>363
そうなんだ。
あまりにもそう言ったSSが無かったから、暗黙の了解なのかと思ってた。
これで安心して投下できる。有難う。
- 365 名前:名無しさん:2009/10/20(火) 17:17:30 ID:NCVA7PHc
- ハロウィンて月末じゃ……
- 366 名前:名無しさん:2009/10/20(火) 19:02:15 ID:IXKB7g1A
- んなこといったらクリスマス商戦はどうなっちゃうんだ!一ヶ月前からやってるぞ!
っというわけで気にしないでどうぞ
- 367 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/10/20(火) 22:44:26 ID:8jewGz7w
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
そろそろハロウィンが近いと言う事で、早速書いてみました。
ではどうぞ。
- 368 名前:trick blade 01/02:2009/10/20(火) 22:46:05 ID:8jewGz7w
- 「とりっく おあ とりーと!」
めいめいの衣装を着て練り歩く一同。
先頭を行くのはノリノリのルッキーニ。
後ろにはサーニャとリーネが、そして何故かペリーヌも同伴している。
「何ですの、この奇っ怪な儀式は」
「ハロウィン」
「私とシャーリーさんの国の行事ですよ」
「まったく……年中行事の多い部隊ですこと」
「ペリーヌさんも似合ってますよ、その魔女の格好」
「お、おやめなさい! どうせウィッチだからとかそう言う下らない……」
「みんなで楽しみましょうよ」
「よ〜し、まずはミーナ中佐から襲撃ぃ〜」
「「とりっく おあ とりーと!」」
執務室の扉を開けると、ミーナは一同を見て少々面食らった顔をしたが、すぐにいつもの笑顔になり
「あらあら、ハロウィンね?」
とすぐに理解し、用意してあった飴玉を皆に配った。
「はい、どうぞ」
「わーい、ありがとミーナ中佐!」
「ミーナ中佐、ハロウィンの事ご存じで?」
「シャーリーさんから聞いたのよ」
「やけに手際が良いと思ったら……」
「ほら、他の人の所にも行ってらっしゃい?」
笑顔で見送られ、一同は何故か出鼻をくじかれた感じになった。
「……次、どこ行く?」
「芳佳ちゃんの所に行こう」
「あの豆……たまには驚かすのも良いかもしれませんわね」
「よーし、ごーごー!」
「「とりっく おあ とりーと!」」
「うひゃっ? みんなどうしたの、そのカッコ?」
「とりっく おあ とりーと!」
「??」
「あー、芳佳知らないんだ、ハロウィン」
「ハロウィン? 何の行事ですか?」
「お菓子くれないといたずらしちゃうんだぞ〜ニヒヒ」
「お菓子? ええっと、今は無いから……台所に行けば何か」
「無いの? じゃあいたずらだ〜!」
とりあえず部屋に侵入し枕の位置を変えたり人形を逆さまにしたりと悪戯する一同。
「きゃーやめてー」
「ニヒャヒャ おもしろかった」
「次は何処行く?」
「う〜ん、シャーリーはハロウィン知ってるから……普通にお菓子貰って終わりそう」
「それは普通ですわね」
「じゃあ、手近なとこへ」
- 369 名前:trick blade 02/02:2009/10/20(火) 22:48:08 ID:8jewGz7w
- 「「とりっく おあ とりーと!」」
「おワ!? なんで皆して仮装行列?」
タロットカードを片手に暇を持て余していたエイラは仰天した。
「お菓子くれないといたずらしちゃうんだぞ〜ニヒヒ」
「お菓子? うーん……」
カードを一枚めくる。しばし考え込んだ後
「とりあえずコレやるヨ」
戸棚から飴玉を出し、皆にひとつずつ渡した。
「ヴェーダディゴデー」
早速口に入れたルッキーニが悶え苦しむ。
「私の国の銘菓『サルミ……」
喋ってる途中でサーニャにひっぱたかれるエイラ。はうっとよろけた所で、そのままエイラをベッドに押し倒すサーニャ。
「悪戯……しちゃうからね?」
「エ?エ? お菓子あげたゾ? てかちょっとサーニャ……」
エイラはサーニャに唇を塞がれ、しばしじたばたとした後、ぐったりとなった。
サーニャは背後に居た一同を見た。
視線が合った一同は、数歩後ずさり、サーニャとエイラ二人をそのままに、無言で部屋を出た。
「気を取り直して、次どこ行く?」
「坂本少佐のところなんて如何かしら?」
「少佐の部屋は……誰も入った事が無いかと」
リーネの意味深な一言で沈黙する一同。
「ハルトマン中尉の部屋は……ちょっと」
「じゃあ残るは……」
「「とりっく おあ とりーと!」」
「うわ? 何だお前ら?」
部屋で本を読んでいたトゥルーデは突然の襲撃に驚いた。
「お菓子くれないといたずらしちゃうんだぞ〜ニヒヒ」
「ふむ……」
しばし顎に手をやり一同を見回していたトゥルーデだが
「よし、トリックで頼む」
「えっ」
「えっ」
トゥルーデは椅子から立ち上がると、一同に向かってずいと一歩踏み出した。
「ならばお菓子をやるからイタズラさせろ」
「えっ」
「えっ」
「ちょっと、大尉?」
「バルクホルン大尉が……」
「みんな、逃げるぞぉ〜」
顔色を変えて我先に逃げ出すルッキーニ。
「お前ら待てぇ! お菓子をやるから待てぇ!」
「逃げろぉー!」
慌てふためき逃げ惑う一同を、切れ味鋭いダッシュで追い掛けるトゥルーデ。
「ほう、あれがハロウィンというものか。変わった行事だな」
「いやー、何か違うと思うんですけどね」
「てか、トゥルーデ止めないと」
興味深そうに騒ぎを眺める美緒、呆れるシャーリーとエーリカ。
ハロウィンの夜はまだ始まったばかり……。
end
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初めに瞬間的に思い付いたオチから逆算して書きました。
最近お姉ちゃんがオチ担当&ヤケに暴走気味だけど反省はしていない。
何故なら(ry
ではまた〜。
- 370 名前:名無しさん:2009/10/20(火) 22:57:35 ID:8jewGz7w
- >>369
×「ならばお菓子をやるからイタズラさせろ」
↓
○「ならばこのお姉ちゃんがお菓子をやるからイタズラさせろ」
大事な所が抜け落ちていたorz 猛省。
トゥルーデがただの変態になるとこだった……いや、もう十分アレですが。
- 371 名前:名無しさん:2009/10/21(水) 00:22:52 ID:q6YEMzuw
- >>369
あ〜先こされちゃったw
流石お姉ちゃん、ハロウィンを心得てらっしゃるw
あとサーニャ恐ろしい子!!GJです!
プロローグみたいなものしか出来てないけど、取りあえず投下します。
ハロウィンでドッキリ作戦!プロローグ
- 372 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!プロローグ:2009/10/21(水) 00:24:07 ID:q6YEMzuw
- 名乗り忘れた
3K5frGcUです。
夕方のブリーフィングルームにて。
芳佳、美緒、サーニャ、ペリーヌ、そしてエーリカの5人の魔女が何やら話している。
と言っても、作戦会議ではないので皆表情は穏やかに談笑していた。
ふとエーリカが思い出したように声をあげた
「あ、そういえばもうすぐハロウィン…だったっけ」
「はろ…うぃん?なんですの?それ」
「いや、あたしもウーシュに聞いた事だから詳しくは分らないんだけどさ…この時期になると死者の魂がこの
世に戻ってくるんだって」
「へぇ〜!扶桑で言うお盆みたいなものでしょうか?坂本さん」
「むぅ…話を聞く限りでは近いようだが…」
思案顔で答える美緒。そんな時、おずおずと小さな声でサーニャが話し始めた。
「元々は収穫祭って聞きましたけど…」
「え?サーニャ知ってるの?ハロウィンの事」
「少しだけ……エイラが持ってる本に書いてました。元々はある民族の収穫祭で、それが宗教的なものに変わ
ってハルトマンさんが仰ったハロウィンになったそうです」
自分以外にも知ってる人が居て少し興奮ぎみのエーリカ。話は盛り上がっていく。
「へぇ〜そうなんだ。確か…とりっくおあとりーと!だっけ?」
「そうです。10月31日に子供たちがオバケに仮装して、1件1件家を回るんです」
「回ってどうするの?」
「お菓子をくれないといたずらするぞぉ!って言って、お菓子を貰うんだって」
「ほぅ…扶桑のお盆にはない習慣だな。興味深い」
「…今は殆どお祭りのようなものみたいです。宗教的な物なので、受け入れられない地域も多少あるみたいで
すけど……」
その時、ルッキーニが入ってきた。ソファに座る芳佳の膝の上に元気良く座りながら、皆の話に興味津々の
様子。
「なになに〜?面白い話?あたしもまぜて〜」
「もちろん!今ね、はろうぃんについて、ハルトマンさんとサーニャちゃんから話を聞いてたんだ」
「はろうぃん?」
初めて聞く言葉に首をかしげながら続きを促すルッキーニ。
「ハロウィンになると、死者の魂がこの世に戻ってきて、子供たちは「お菓子をくれないといたずらするぞ!」
って言いながら家を回るんだって」
「うにゃー!お菓子!?やるやる!!あたしそれやるーっ!!シャーリーに言って、お菓子いーっぱい貰う
んだー!!」
お菓子と聞いて喜ぶルッキーニだが、次の芳佳の一言で落胆した
「あ、でも31日じゃないと駄目なんだっけ?」
「……ぇえー!!そんなのつまんなーい!!!」
落ち込むルッキーニ。しかしそれを見ていたエーリカがおもむろに言い放った一言で事態は急変する
「あたしもやってみよっかなー。別に、宗教とか考えずに軽い気持ちでいいんじゃない?ウチの隊、そこまで
宗教熱心な人見た事ないしさ。ここに居るみんなでやろうよ。残りの5人にドッキリを仕掛けるつもりでさ」
そう言ったエーリカの顔は、新しい遊びやいたずらを考えた子供のように無邪気だった。
- 373 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!プロローグ:2009/10/21(水) 00:26:09 ID:q6YEMzuw
「やるやるー!あたしシャーリー取ったぁー」
一番に乗ったのはやはりガッティーノだったが、あまりの勢いに美緒が待ったをかけた。
「おいおい、それは私もするのか?」
「勿論!ミーナにも息抜きが必要だよ!少佐だったら怒られないし♪」
当然のように言い放つエーリカだったが、この中で一番厄介な美緒を落としてしまえば話は早いと確信してい
た。それに美緒を味方につけてしまえば、怒られた時の罰も軽くなるかも知れない。
「な、なんだそれは!……うーん……確かに最近のミーナは仕事に追われているからなぁ…」
戦闘中は魔法を使い皆に指示を出し、帰還してからは書類に目を通したり、上への戦果報告をしたりと忙し
そうにするミーナ。
夜中には、執務室で机に突っ伏して寝息を立てている事が何度もあった。
「でしょでしょ?隊長の疲れを癒すのも副官の務めだって」
「そう…だな…よし。私も乗るぞ!たまには息抜きも必要だな。はっはっは」
美緒が乗った事で、もう1人も名乗りを上げる。
「さッ坂本少佐がするのでしたら、わたくしも是非ッ!」
「おっ!良いなペリーヌ。一緒にミーナを驚かしてやろう。はっはっは」
「はッハイ!!光栄ですわ!少佐にお供できるなんて…」
普段はツンツンしているペリーヌも、美緒が絡むとあっけない。こうして残るは二人になった。
内心ほくそ笑みながら質問する
「決まりだね。サーニャと宮藤はどうする?」
「私もやってみます。エイラはハロウィンの事知ってるかもしれないけど、それはそれで…」
「ははっ、そうだね。ま、エイラの扱いはサーニャが一番慣れてるだろうし…昨日夜間哨戒に行って今は寝て
るだろうから、寝起きってのも面白そうだね。て事で、サーニャはエイラ担当ね。後は宮藤だけだよ〜?」
その場に居る9割が話に乗ってしまい、1人NOとは言えなくなった芳佳。
上官である美緒も参加するのだから、大丈夫だろうと覚悟を決めた。
「やります!私も参加します!!」
こうして6人のウィッチの「ハロウィンでドッキリ作戦」が開始されたのである。
続く
殆ど自己満SSですが続きます。月末までになんとか全キャラ出せれば…
- 374 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/10/21(水) 02:50:31 ID:q6YEMzuw
- 3K5frGcUです。
カッとなって1つ目が出来たので投下します。
ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編
- 375 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/10/21(水) 02:50:57 ID:q6YEMzuw
- 言いだしっぺが最初にするのはセオリーだよね。
って事で、私が一番手に名乗りをあげた。最初に終らせてしまえば皆の驚く顔がゆっくり拝めるしね♪
そんなこんなで私は今、間に合わせの黒いマントを羽織ってトゥルーデの部屋の前に居る。
一応ドラキュラのつもりだけど、急だったからこんなものしかなかったんだ。
きっとトゥルーデはこの間目覚めたクリスに手紙でも書いてる所だろう。
よしっ!覚悟を決めて軽い深呼吸。
コンコン
「トゥルーデ、いる?」
「ハルトマンか?開いてるぞ、勝手に入ってくれ」
やっぱり居た。でも、これは相手に開けて貰わないと意味がない。
「トゥルーデが開けてよー!来訪者を招くのも部屋主の務めでしょー!」
「…はぁ、一体何を企んでいるんだー?どうせまたろくでもない事だろう?」
「そんな事ないよー!いいから早く開けてってばー」
中々鋭いけど、このプリティ天才美少女エーリカちゃんを侮ってはいけないよ、トルゥーデ。
「ねー!早くー!!お・ね・え・ちゃん♪」
「お姉ちゃんはやめろ!!今開けてやるから。全く、いつもは勝手に入って来るくせに…」
なんかブツブツ言いながら扉に近付いてくる。やば…これは説教モードに入っちゃったみたいだね…
でも取りあえず開けてくれるみたいだし、そうなれば電撃戦。早い者勝ちだよ!
…ガチャ
「なんだハルトマン。私は今手紙を書いている所なんだ。大体お前はいつも…」
「とりっくおあとりーと!!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうぞっ!!」
「……………はぁ?」
ぷぷっ。はぁ?だって。トゥルーデ今凄い変な顔してる。クリスにも見せてあげたいな。
笑いを堪えながらもう一度言ってみる
「だーかーらー!ハロウィンだって!!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうよ?」
「だからなんだ?そのハロウィンってのは。下らん遊びには付き合わんぞ」
呆れ返った様子のトゥルーデ。ドアを閉めそうになったから、思わず手を伸ばした。
「あっ!トゥルーデ、待ってよ!」
ドッ!
「ぐふぅっ!!」
「…あ、あれ?」
私の伸ばした手は見事にトゥルーデわき腹に入っていた。…あれ?なんで?
どうなったら私がトゥルーデにボディブロー決めれるの??
トゥルーデはお腹を抱えながらドアノブに手をついて呻いている。や、やばい。この状況は非常にマズい。
どうしよう。ひたすら謝っても、今のトゥルーデには逆効果かもしれない。こうなったら…
- 376 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/10/21(水) 02:51:33 ID:q6YEMzuw
2回目の覚悟を決めてトゥルーデに向き直る私。
なんとか回復したトゥルーデは怒りと痛みのせいか、プルプル震えてる。ごめんね、トゥルーデ。
「エーリカァ……貴様、そこへなおれ!!…今日と言う今日は許さっッがふぅっ!!」
2度目のボディブロー。結構本気出しちゃったけど、大丈夫…だよね。わが隊のエースだし。お姉ちゃんだし。
気絶してくれれば、ベッドまで運んで「夢でした」って事にしてコッソリ抜け出そうと考えていた。
でも私の期待も空しく、トルゥーデは気絶してくれなかった。
あ、あれ?もしかしなくても、プリティ天才美少女エーリカちゃん、大ピンチ!?
トゥルーデの私を睨む目が座ってる…これは流石にやばい…逃げないと!!
「あ、私食堂に用があったんだ!じゃあそう言う事で…」
くるりと踵を返して逃げようとしたけど間に合わなかった。
「まぁ待てエーリカ。…少し話をしようじゃないか」
マントの襟首をガッシリ掴まれて走り出せない。呆気なく部屋に引きずり込まれるプリティ美少女エーリカちゃん。
扉が閉まる瞬間、廊下の角に心配そうに成り行きを見守る寮機達が見えた。
ごめん、私先に堕ちるよ…でも、任務だけは遂行させてよね…
あとは…頼んだ…よ…
そう言う意味を込めて親指を立ててみる。ちゃんと伝わってれば良いけど…
悠長に考えてたらベッドの上に放り投げられた。
何をされるのか少しおびえながらトゥルーデを見あげるけど、やっぱり目が座ってる。
ちょっとやりすぎた…よね。1回目は事故でも、2回目は本気だったし。
「ご、ごめんねトルゥーデ。殴るつもりはなかったんだよ。ちょっとテンパっちゃって…」
「ハロウィンと言うのは、お菓子がなければいたずらされるのか…?」
言い訳をする前にトゥルーデから質問されたので素直に答える。
「え?うん。そうだよ。トリックオアトリートって言って、お菓子をもらえなかったらいたずらしてもいいんだ」
大分端折ったけど、大体あってると思う。
「…なるほどな。だから私はいたずらされたのか…」
「いや、アレはいたずらって言うか事故って言うか…とにかく殴ったのは事実だから謝るよ。ごめん」
ボディーブローをいたずらだと思うのは、流石トゥルーデと言った所かな。どこか抜けてるんだよね、この
お姉ちゃんは。
一応正直に謝ったし、これで許してくれればいいんだけど…
トゥルーデは何か考え込んでいる様子でなるほど、と小さく呟き、こちらを向いた。許してくれるのかな。
「ハロウィンか…面白い行事もあったもんだ。しかしいきなり殴るのはどうかと思うが」
「だから、あれは事故なんだって!」
「2回目もか?パンチにかなり体重が乗っていたぞ。本気で落としにかかっていたようにしか思えん」
うぅっ!痛い所を…
「だっ、だから謝ってんじゃん!ごめんってば!そろそろ許してよ〜」
お説教ぐらいなら聞いてあげるからさぁ。なんて火に油を注ぐような事言わないけど。
「ふむ。そうだな………いや、まだ許さん!」
「えぇ!!どうしたら許してくれるの?」
もしかして私の部屋の掃除とか?それだけは勘弁して欲しい。
- 377 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/10/21(水) 02:51:53 ID:q6YEMzuw
「…私もハロウィンに参加しよう」
「え?どう言う…」
言い終わる前にトゥルーデが私を押し倒してきた。
か、顔!近いよっ!!恥ずかしいから駄目だってば!!!
そう言ったつもりだったけど、声が出てなかったみたい。顔を真っ赤にしながら口だけパクパクしてて、
トゥルーデがそれを見てくすりと笑った。自分だって私に負けないぐらい真っ赤なくせに。
「トリックオアトリート、だ。エーリカ」
そう言って私のおでこに軽くキスを落とした。
…今日のトゥルーデはなんか変だ。私が殴ったのはお腹だし、どこかで頭でも打ってたのかもしれない。
そうじゃないと、こんなにキザったらしい事しないはずだし。
………何よりも、こんなにかっこよく見えるはずがない。
もしかしたら、私の方が頭打ってんのかな。
とにかく、やられっぱなしは癪だから顔を真っ赤にしながらも反撃する
「わ、私だってトリックオアトリート!!なんだからっ」
そう言ってトゥルーデのほっぺにキス。
「おいおい、それ言えるのは1回だけじゃないのか」
怒った顔を作ってるみたいだけど、真っ赤になりながら言ってたら全然怖くないよ。
「私は何回使ってもいいの!!トゥルーデは駄目だからねっ!」
「なんだそれ、ずるくないか?」
「ずるくない!トゥルーデのばか!」
「なっ!馬鹿とは酷い言われ様だな…よし、仕返しにトリックオアトリートだ!」
そう言って今度は私のほっぺにキス。
顔を真っ赤にしてらしくない事をするトゥルーデがおかしくて、つい吹き出してしまった。
それにつられてトゥルーデも笑う。
お互い顔を真っ赤にしながら、おでこをくっつけたままくすくす笑った。
いつもとちょっと違う事をするトゥルーデは変だけど
……………………やっぱりかっこよく見えた。
fin
- 378 名前:名無しさん:2009/10/21(水) 09:44:41 ID:w.p0SG5I
- ちょっwwwお姉ちゃんwww
GJです♪
- 379 名前:名無しさん:2009/10/21(水) 11:31:39 ID:s04qh0Fs
- >>377
連投乙&GJ!
お姉ちゃんがステキすぎるw
エーリカもかわいい!
- 380 名前:名無しさん:2009/10/21(水) 19:04:17 ID:yuvgcfeM
- >>377
連続投下GJ!
「エーリカ編」と言う事は全員分あるって事ですね?
正座してお待ちしてます。
- 381 名前:名無しさん:2009/10/22(木) 23:38:24 ID:OqzqIyk2
- 歌:エーリカ・ハルトマン
ハロウィンのうた
芳佳は、凝り過ぎ小さくて〜♪
シャーリー、そのままドテかぼちゃ〜♪
リーネの、ある意味芸術品〜♪
原形、留めろ、バルクホルン〜♪
寝ながら作るな、ルッキーニ〜♪
ミーナと少佐は・・・・・
モザイクかけて自重せよ〜♪
ペリーヌ、でかいの見た目だけ〜♪
二人の合作、愛の巣飾る♪
エイラとサーニャは別世界〜♪
パンプキンヘッドの歌のがいいかな?
- 382 名前:名無しさん:2009/10/22(木) 23:56:17 ID:EOaNzKhE
- 本スレがあんなんだし、SSでも投下してこちらを盛り上げて行きたいけど…いざ書いてみると筆が進まない…
誰か素敵なシチュを私に…!
- 383 名前:名無しさん:2009/10/23(金) 00:19:52 ID:jNBIOzpQ
- >>381
おっぱいの替え歌か、GJ
- 384 名前:名無しさん:2009/10/23(金) 15:35:38 ID:xO2P03hY
- >>381
なんか想像できるw 面白かった
>>382
時期的にハロウィンなんていかが? もうすぐハロウィンだし。
キーワード:仮装、トリックオアトリート
- 385 名前:名無しさん:2009/10/24(土) 19:22:51 ID:VmJFNv.I
- とにかく本スレに書き込むしか解決方法はないよ。
- 386 名前:名無しさん:2009/10/24(土) 21:42:52 ID:chozVWYw
- >>385
本スレはそっとしておいてあげて。
- 387 名前:名無しさん:2009/10/25(日) 13:17:33 ID:F3dz/Dgk
- >>382
ズボンネタはアニメ本編でやったから、衣装シャッフルとか……
これもなんか激しく既出な予感がするが。
もっさんの服着たがるミーナとペリーヌとか
芳佳他に自分の服を着せたがるお姉ちゃんとか……
ムリダナ(・x・)
- 388 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 15:20:29 ID:DPRRmiB2
- 聖地横須賀っていうか神奈川は規制中だorz
・寒くなってきたんで身を寄せ合ってみるとか。
・衣装シャッフルはまだまだ発掘する余地あると思うなぁ。
・季節的には紅葉とかもありか。ブリタニアがどうだか知らないが。
ちなみに自分は今ハロウィンねたで書いてるけど、相変わらずハロウィンまでに書き終わるかわかんないw
基本スタンスとしては本スレ投下したいけどそもそも規制だからなぁw
- 389 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 17:37:14 ID:WeM8SOP2
- 規制仲間みぃ〜つけた♥
- 390 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 22:03:41 ID:IUC4bE0M
- ハロウィン関係無いし、たった2レス分のプロローグを書いただけで力尽きたけど投下。
- 391 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 22:05:34 ID:IUC4bE0M
- 惚れっ娘サーニャ・プロローグ
サーニャは雲の上を飛んでいた。
ちりと水蒸気でできたそれは途切れることがなく
まるでヨーロッパの上空に白い絨毯を敷いているようだ。
その切れ目、空と雲の狭間から光が覗いている。
サーニャが欠伸をする度に光は大きくなっていき
三回目の欠伸をした時には既に東の空の全てを朝焼けに染めていた。
サーニャは目を細めて、口を可愛らしく開き左の手のひらに小さく息をもらす。
日の出は本来一日の始まりを告げるものであるが
サーニャにとっては眠気を催すものでしかないようだ。
真鍮色の光を浴びて、サーニャが右手に装備する鉄の箱、フリーガーハマーと
脚の漆黒のストライカーがきらきらと煌めいている。
そんななか、サーニャの思考はぼんやりと白い海を漂いつづけ
身体は欠伸の数を着実に更新し続けていた。
雲を抜けると、青い海が広がっていて、その先に基地が見えた。
滑走路を正面に迎えながら、サーニャは寝ぼけた思考をなんとか軍人のそれに切り替える。
ストライカーを斜めに突き出して、細心の注意をはらいながら着陸。地面に魔方陣を展開する。
路面を滑走しながら、今日の至って平穏だった夜間哨戒の報告を頭の中でまとめ上げる。
ハンガーにストライカーを格納してから、隊長室のミーナに簡単な報告を済ませた。
五分にも満たないその時間。内容など夜間哨戒の報告でしかないのだが
ミーナがいつも最後にかけてくれる、労いや感謝の言葉がサーニャにはとても嬉しい。
その任務の性質上、他の仲間と入れ違いになるサーニャには数少ない交遊の時間である。
なればこそ、サーニャはその時間がたまらなく好きだった。
廊下の上を、先程の言葉を心のなかで反芻しながらふわふわ進む。
時折、ふっと笑みを零したり、頬を上気させたりしている。
そして、いつものように部屋を間違えたのだった。
- 392 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 22:08:30 ID:IUC4bE0M
- 暖かい毛布に包まれて、横に身体を丸めたサーニャはすやすや寝息を吐いていた。
まるで彼女の使い魔である猫のように眠っている。
そんなサーニャの頭を優しく撫でている手がある。
サーニャはそれに対し、眉根を寄せて身を捩る。
そして、くぐもった声にならぬ声を発しながら目を開いた。
寝起きで不鮮明な視界の先には青色の裾と、そこから伸びる白いズボンの脚が見える。
「ごめんな、起こしちゃったか」
視線を上げるとそこには本当に申し訳なさそうな表情をつくるエイラがいた。
眉をハの字に曲げて、困ったような瞳をこちらに向けている。
既にエイラは手を引っ込めていて、サーニャはそれに気付くこともなく緩慢に上体を起こした。
ひんやりとした外気が触れて肌寒い。
サーニャは下着しか身に着けてないことに気付くと、不意に何かを探すように部屋を見渡す。
「ああ、服ならこれだ」
エイラはベッドの隅に置かれていた服とズボンとベルトを手渡した。
「ありがとう」
サーニャは礼を述べ、受け取った衣服を身に着ける。
ベッドから立ち上がり、最後にベルトを着けた。
すっかり目が覚めたところでエイラに声を掛けた。
「エイラ、今日の訓練は? 」
「ああ、休暇もらったんだ」
「そう……じゃあ私、報告書を書かなきゃいけないから」
そう言うとサーニャは部屋を後にした。
がちゃんと扉が閉まり、部屋に取り残されたエイラは
「待ってくれー、私も手伝うー」
慌ててサーニャの後を追いかけていった。
エイラは見ていたのだ。扉が閉まる瞬間、サーニャの頬が、赤く染まっていたことに。
(サーニャ! ミーナ中佐は誰にでも優しいぞー!)
心の中で諭しながら、エイラはあの出来事の数々を思い出していた。
サーニャが501の戦友達に、次々に心を奪われていった、あの日々のことを。
サーニャは少し優しくされると、簡単にその相手を好きになってしまう。惚れっ娘だった。
「サーニャー!」
今日も基地中にエイラの叫び声が響き渡る。
その音響のなか、誰彼なくこう思うのだった。
「今日も平和だ」
おわり
- 393 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 23:21:06 ID:id9hLDKQ
- >>392
GJ! 続き出来ればお願いします。
- 394 名前:名無しさん:2009/10/26(月) 23:57:30 ID:a0RcC6L6
- GJGJ
エイラが不安そうなのがいい
- 395 名前:名無しさん:2009/10/27(火) 00:02:13 ID:tZi/xAIg
- G J !
これでプロローグとな!?
後何日正座して待てばよろしいか?
- 396 名前:名無しさん:2009/10/28(水) 03:45:46 ID:yuEE.up2
- ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/49908
おひさしぶりです。ハロウィンの流れなので便乗してみました。パスはSW
リーネ×ペリーヌですが二人とも初めて書いたのでちょっと不安w
楽しんでいただけたら幸いです。ねこぺんでした。でわでわ
- 397 名前:名無しさん:2009/10/28(水) 13:04:08 ID:N2jCqpso
- >>396
お久しぶりですGJ!
ペリーネイイヨイイヨー
ほんわかしてて面白かったです
- 398 名前:名無しさん:2009/10/29(木) 01:36:31 ID:lG/3SOWw
- >>396
お久しぶりです〜GJ
ハロウィンネタキター
ウィルマとビューリングもナイスサポート!
- 399 名前:名無しさん:2009/10/30(金) 21:22:11 ID:2uqw9aU6
- ああ……今日はエイラのnimipäivä(ニミパイヴァ)だったっていうのに何も用意してなかった。
っつーかむしろハロウィンすら間に合わない予感orz
っていうか、保管庫の歴史資料館もたまには見るものダナ。
- 400 名前:名無しさん:2009/10/31(土) 14:05:57 ID:H3waGIYc
- 秘め話届いた
なにこれすっごく脳みそ溶けそうになるんですが(;´Д`)
- 401 名前:名無しさん:2009/10/31(土) 16:18:39 ID:qXdDPMio
- 俺も秘め話届いた
アメリーが可愛過ぎた
あと、ペリーヌが好きになった
- 402 名前:名無しさん:2009/10/31(土) 22:44:41 ID:g/eqs7rw
- 秘め話CD2到着完了!
相変わらずイイヨイイヨー(・∀・)
設定とか色々勉強になるし、これは次回も期待だ!
- 403 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!サーニャ編:2009/11/01(日) 03:17:33 ID:Cqd5s7Pg
- 3K5frGcUです。
お久しぶりです。急な海外出張で暫く身動き取れませんでした。
もうハロウィンも終ってしまったけど、ちまちま書き溜めたネタがあるのでこっそり
投下していこうかと思います。
- 404 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/11/01(日) 03:18:45 ID:Cqd5s7Pg
- エーリカがトゥルーデの部屋に引きずり込まれた後、芳佳たちはお互いの顔を見合わせていた。
「ど、どうしよう…バルクホルンさん、めちゃくちゃ怒ってるよね…」
芳佳ちゃんが最初の一言を発したのに続いて、各々が口を開く。
「あ…あんな大尉初めて見ましたわ…あれは流石にマズいんじゃないかしら…」
「しかし、ハルトマンにも余裕があったようだぞ。このままはろうぃんとやらを続けるのか?」
「でっでも、あとからハルトマンさんに怒られそうですよー!」
「…それを言ったらもう後戻りは出来ないかも知れないです…」
途方に暮れる4人。しかしルッキーニだけは相変わらず無邪気だった。
「でもでも!!中尉のパンチ凄かったねー!ぐふぅって言ってたよ大尉!」
呆気に取られる芳佳とペリーヌ。ルッキーニは1人楽しそうに話している。
「貴女ねぇ!!今はそんな話してる場合じゃ…」
「あぁ、うむ!それに関しては同感だな!普段はだらしないが、やはり我が隊のエースと言う所か。
見事なまでに急所である鳩尾を突いていたからな!お前も見習えよ、宮藤!!」
「はいっ!坂本さん!!」
「そっそそそそうですわ宮藤さん!さっさと精進してわたくし達の足を引っ張らないで下さいまし!!」
「ウジュジュジュー!ペリーヌおもしろーい♪……あれ?サーニャは?」
皆がワイワイやっているうちにサーニャの姿が消えていた。
「さぁ?どうせ居ても居なくても変わらないのだし、放っておいても宜しいんでなくて?」
「ペリーヌさん、それは酷いですよー」
「ペリーヌがそんな事言うから逃げちゃったんじゃないのー?」
「……っ!!そっ、そんな事……」
「おい、エイラの部屋の前に居るの、サーニャじゃないか?」
わざわざ魔眼で見ながら美緒が言った目線の先を追うと、そこには黒い三角帽を被ったサーニャがいた。
「ウジャー!次はサーニャの番かー!!どうなるんだろ。たっのしみー♪」
「結局、続くんですね…」
「はっはっは。こうなった以上は我々も最後まで付き合うしかないな、ペリーヌ!!」
「もっ勿論ですわ!少佐となら何処まででもお供いたしますわ!!」
☆
- 405 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/11/01(日) 03:19:24 ID:Cqd5s7Pg
- 皆が騒いでいるうちに部屋の前まで来ちゃった。
ハルトマンさんとは良くお話するし、1人だけ怒られるのは何だか可愛そう。それに、エイラの驚く顔も見て
みたいし…
私の変わりに行ってくれた夜間哨戒のせいでずっと寝ているエイラだけど、そろそろ夕方だし起きているはず。
ハルトマンさんがしたみたいに、小さく息を吸ってから扉を叩いた。
こんこん。
「エイラ、起きてる?」
「サーニャカ?ちょっと待ってナ、今あけるから」
予想通り、やっぱり起きていた。
扉を開けてくれたエイラの部屋を見ると、テーブルの上にタロットカードが散乱している。占いでもしていたのかな
「占い…してたの?」
「ん?ウン。今日の自分の運勢を見ていたんダ」
「そう。結果はどうだった?」
「ンー…何か予想外の事が起きるッテ。夕飯が扶桑の納豆と肝油だったりしてナ!」
冗談っぽく笑うエイラの顔が可愛くてかっこよくて、ちょっとドキドキしてしまった。
「もう、エイラったら。納豆は体に良いからちゃんと食べないと駄目だって、坂本少佐が言ってたわ…肝油は…
私も苦手だけど…」
微笑みながら言うと、「分ってるっテ。ニヒヒ」と笑いながら部屋に入れてくれた。
いつもと同じ部屋なのに、何だかドキドキするのは、気のせいじゃないだろう。
散らかったままのタロットを片付けながら、エイラが質問を投げかけてきた。
「なぁサーニャ、その帽子はナンダ?」
「あ、これ?これは…魔女…なの」
「何言ってンダ、サーニャ?魔女は私達だロー?」
「そ、そうだけど、違うの!これは…」
「あ、もしかしてハロウィンの衣装カ?」
「そう!今日はハロウィンでしょう?だから…」
言い当てられてしまって恥ずかしくなってきた私は、どんどん声が小さくなって赤面していく。
チラとエイラを見遣ると、何故かエイラの方も赤くなっていて、いたずらとかサーニャが私に…とか呟いている。
もしかしてバレてた?
エイラなら本を持っているし、知っていてもおかしくない。
仕方ないから覚悟をきめて、まだ赤い顔をエイラに向ける。
一瞬ビクッとしたけど、私の真摯な眼差しを受け止めてくれた。
これから話す言葉を相手も知っていると言うのは、結構恥ずかしい。
もう一度息を吸い込んで目を瞑って捲し立てるように言った。
- 406 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!エーリカ編:2009/11/01(日) 03:19:53 ID:Cqd5s7Pg
「おっおかしてくれなきゃイタズラしちゃうっ…から!」
…言った。エイラの反応を伺う為に薄目を開けて見る。
エイラは何故か真っ白になって、虚空を見つめたままさっきよりもブツブツ言っていた。
全部は聞き取れないけど、「私ガサーニャを…」とか「イタズラされるのも良いかモ」とか、よく分らない事を言っていた。
あれ?私ちゃんと言ってたと思うんだけど…
エイラの様子が明らかにおかしい。不安になってエイラの胸元まで近寄って見上げてみる。
大好きなエイラが私の一言でおかしくなってしまったのではないかと内心思っていたら、視界がぼやけてきた。
「……エイラ?」
ハッと気付いたエイラが私に向き直り
「ササササササーニャっ!ここういうのは順序って物があっテ…」
「順序?」
「そっソウ!サーニャにはマダ早いと思うンダ!!」
知らなかった。ハロウィンに順序や年齢規制があったなんて。俯いて思考を巡らせる。
だからエイラはあんなに驚いていたのか。私はまだ子供だから、ハロウィンには早すぎたんだ。
それじゃあ、お菓子も貰えないし、仮装行列にも参加できないの…?
そう思っていたら思わず口を動かしていたみたい。
「それじゃぁ……駄目………なのね…?」
「エ…?」
もう一度エイラの胸元から見上げて呟く。
「私じゃ…駄目…なんだ…」
言いながら悲しくなって涙があふれ出た。恥ずかしい。
ぐずぐずと泣いていたら、ふんわりとした感触。まるで暖かい毛布のような…
私の大好きな両手。
「そっソンナ事ないぞっ!!」
「え…?」
「サーニャは、その、たっ大切にしたいンダ。私自身がもっと強くなってサーニャを守れるようになってから、トカ
お父様とお母様に会うまではやっぱり奇麗な体のままデ…ッテ何言ってんダ、私!」
本当に何を言ってるのか分らないけど、とても大事な事だけは分った気がする。
にっこりと微笑んで、彼女の言葉の続きを促した。
「だ、ダカラ、今はコレで勘弁ナ。私がもっと強くなって、世界が平和になって、サーニャがご両親と会えたら…
つっつつつ続きはソレからだダ!」
そう言い終えた後、真っ赤になったエイラの顔が近付いてきた。
fin
- 407 名前:3K5frGcU:2009/11/01(日) 03:22:13 ID:Cqd5s7Pg
- あれ。題名がエーリカ編になってる
正しくはサーニャ編です。ややこしくてすんません。。
- 408 名前:名無しさん:2009/11/01(日) 11:00:59 ID:k9AOVFAg
- >>407
GJ!続き待ってた!
勘違いエイラさん面白いw
このまま続きも宜しくおねがいします。正座して待ってます。
- 409 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2009/11/01(日) 18:34:28 ID:GfqH8.3I
- どうも、普段本スレですが今回こっちで。
[記憶の中のバルクホルン] 芳佳&ゲルトルート&クリス
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/kioku.txt
一応名前なしのオリキャラありです。
こんなのもあったら面白いかなーなんて。
タイトルは乙女の巻っぽくしてみました。
- 410 名前:名無しさん:2009/11/01(日) 19:11:25 ID:pzTzOXJk
- 秘め話やべー
アメリーもペリーヌも可愛すぎるだろ…
エイラーニャは相変わらず別次元だなー
というかエイラさんは期待を裏切らないなw
- 411 名前:名無しさん:2009/11/01(日) 20:55:22 ID:5MFqW5Uc
- え、なにそれ?
エイラーニャあるの?
詳しく聞きたいなぁ
- 412 名前:名無しさん:2009/11/01(日) 21:04:44 ID:a4ygOIxo
- 秘め話注文し忘れてたんだぜ・・・
- 413 名前:名無しさん:2009/11/01(日) 22:14:11 ID:kDeCxJ2o
- >>411
エイラの人生相談にサーニャ登場で朝から怒ってた理由が判明
- 414 名前:名無しさん:2009/11/01(日) 22:54:04 ID:pzTzOXJk
- その理由が……もうね…
あとシャッキーニもよかったな
- 415 名前:名無しさん:2009/11/02(月) 17:10:26 ID:vS.wQM.w
- >>409
和やかで和んだ。GJ!
秘め話CDは面白いね。
エイラーニャはマジでガチなんだなあと。
- 416 名前:名無しさん:2009/11/02(月) 19:44:38 ID:oVWTVrAM
- 聞きたいよおおおおお
教えてくれええええええええええ
- 417 名前:名無しさん:2009/11/02(月) 23:05:41 ID:3PimZ0Jk
- まさか、公式でエイラの人生相談やるとは思わなかったな・・・。
- 418 名前:名無しさん:2009/11/03(火) 00:40:01 ID:ky.3r6lg
- >>417
ついでにラジオネタも。
- 419 名前:名無しさん:2009/11/03(火) 21:19:03 ID:QdHhGvAo
- え、なに
本スレサーバ落ちた?
- 420 名前:名無しさん:2009/11/04(水) 21:04:52 ID:awXyDyik
- こんばんは、DXUGy60Mです。3日遅れになってしまいましたが、ハロウィン
関連のSSを4レス程投下します。
最後まで読んで頂けたら幸いに思います。
- 421 名前:浮かれすぎの、ハロウィン・モーニング:2009/11/04(水) 21:09:01 ID:awXyDyik
「なんだろう・・・これ?」
サーニャは、自分の足に絡み付いてくる不可思議な靄のようなそれにジッと視線を注いで
いた。太陽が月と交代をする時間は日に日に遅くなり、以前なら燦々と降り注いでいたで
あろう光も今の廊下には、幾分か弱々しく自己を主張するのみであり、薄紫色のベールが
空には掛かっていた。
「煙?霧?」
夜間哨戒を終え、いつものように半寝ボケな眼を擦りながら、部屋へと向かっていたサー
ニャの足元に、それは突如として現れた。その白い、不可解な物体の出所をサーニャは目
で追っていき、そして驚愕した。振り向くと、自分が歩いて来た廊下は、白いその気体に
よって満たされ、あたかも白い壁が迫ってくるような有り様となっていたのだ。
「な・・・何?」
不安げに胸元に手をやりながら、サーニャは一歩退く。すると新たな怪現象が、サーニャを襲う。
音が聞こえるのだ。
今までに聞いたことの無い、だが人の不快心を煽るような音色だ。風の音ようであるが、そ
れは爽やかさとは無縁の、独特の湿り気を持っている。
「・・・めしや」
「えっ!」
次は声だ。
それは、どこか悲痛だがそれ以上に誰かへの怨念が込められたようなものである。
畳み掛けるような怪現象の連鎖に、サーニャは泣きそうな声を漏らす。魔力が十分に
あれば、魔導針を用いて相手の正体を探ることもできるが、夜間哨戒を終えたばかりの今
では、それもできない。サーニャは目視によって、その正体を確かめようとするが、恐怖
心によって視線はぶらされ、白い気体もその奥にいるであろう何かの正体も伺い知ること
はできない。だが、それでもその正体を見極めようと、キッと視線を向けた矢先である。
「・・・なければ、・・・をよこせ!!」
白い気体の中から体の芯にまでジンと響く声を伴って突如出現したそれに、サーニャは竦
み上がり、一歩下がると、反転。
あっけないほどの敗走が始まり、涙は目尻の横を流れていった。
- 422 名前:浮かれすぎの、ハロウィン・モーニング:2009/11/04(水) 21:20:37 ID:awXyDyik
彼女の朝焼けの中の来訪は決して珍しいものではなかったが、ドアを開くなり一直線にベ
ッドへ向かい、シーツをめくりながら勢いよく中に入ってきたことには、
「うわっ! どっ、どうしたんだよ、サーニャ!」
という驚きを隠せなかったが、どうやら尋常ならざる事態らしいことには、すぐに察しがついた。
「エイラ・・・エイラ・・・」
「どうしたんだ、何があったんだ?」
エイラは自分の身体にしがみついてくるサーニャの背中を優しく撫でながら、サーニャの
身に何があったのかを聞き出そうとする。ふと、自分の身体に、寝間着の隙間から露出す
る肌に温かな何かが落ちたのに気がついた。
「サーニャ? 泣いてんのか?」
エイラの優しげな言葉にサーニャの顔が上がる。その瞳には不安が宿り、瞳に収まりきら
ぬそれは、再び涙として溢れようとしていた。それに気がつくと、エイラはこれまで以上
にサーニャを強く抱きしめた。
「大丈夫だから・・・今は私がいるから」
そして身体を少し離すと、
「だから・・・もうこんなものはいらないだろ?」
そう言って親指でサーニャの涙をぬぐった。サーニャは少し気恥ずかしそうにしながら、
コクリとうなずいた。
「それで、何があったんだ?」
二人ベッドの上にちょこんと座りながら、エイラはサーニャに尋ねる。サーニャはたどた
どしげに、ついさっき自分の身に起きた怪現象について話していく。そして、
「・・・幽霊」
「幽霊?」
エイラの眉毛は八の字を描く。
「幽霊が・・・現れたのか?」
エイラはサーニャの言葉に不足する情報を付け足し、それに対してサーニャは「うん」と答えた。
「それで、幽霊ってどんな奴だった」
エイラは身を乗り出しながら、サーニャの新たな言葉を期待する。エイラの頭の中では、
今日が何の日であるか、誰が何をやらかしそうかの予想が大体つきはじめ、「絶対にとっち
めてやる」と心の中で誓った。ただ、それはサーニャの言葉に少しだけ揺らいだ。
「えっと・・・白い・・・扶桑の着物ってのを着てて」
「・・・キモノ?」
エイラは小首を傾げる。
「うん。それで、髪が長くて、色は・・・黒だった」
「髪が長くて・・・黒」
エイラの顔がだんだんと困惑の顔に変わっていく。
「あと・・・何か赤紫色の光が見えたわ」
「光ねぇ・・・あの人が?」
腕組みをしながらエイラは身体を後ろに反らす。自分でも自分の考えに納得がいかなかっ
たし、サーニャが幽霊の正体に気づいていないことも気がかりだったが、パニック状態だっ
たのでは仕方がなかったのかもしれないと思うことにした。
「・・・よし、行くぞ」
「えっ・・・どこへ?」
「魔導針は使えそうか?」
「・・・うん・・・少しなら」
サーニャの頭上に緑色の蛍光色を発するリヒテンシュタイン式魔導針が現れる。
「そうか、じゃあ探して欲しいのは・・・」
エイラはスタンとベッドから軽やかに飛び降り、サーニャの手を握りながら、目標の人物の名を告げた。
- 423 名前:浮かれすぎの、ハロウィン・モーニング:2009/11/04(水) 21:36:56 ID:awXyDyik
「なぁ、どうしたらいいだろうか」
「知らないわよ、私に言われても」
ベッドに腰掛けたキャミソール姿のミーナ中佐は坂本少佐からの相談をピシャリと撥ね付
ける。朝一番に白装束、つまりは死装束をまとって部屋に現れた時には、自決でもする気
なのかと気が気ではなかったが、
「その・・・今日はハロウィンなんだろ? それで、サーニャを驚かしてみたんだが、驚か
せ過ぎてしまってな・・・」
部屋を訪れたのがこんな理由だと知り、ミーナ中佐は頭を抱えた。
「だいたい、なんでこんな朝早くから仮装なんてしたの?」
「いや・・・出来はどんなものかと試してみたくてな・・・」
「わざわざ宮藤さんまで引き連れて?」
坂本少佐の後ろには、隠れるように宮藤が控えていた。
「あぁ、効果音とスモークを担当してもらったんだ」
「のんきに紹介することでもないでしょ・・・」
ミーナは呆れ顔を坂本少佐に向ける。
「しかし、出来が良すぎるというのも考えものだな」
「はぁ?」
「いや、まさかあんなに驚くとは」
「朝っぱらから幽霊が現れたら誰でも驚くに決まってるでしょ!! それに、ハロウィン
なんてブリタニアかリベリオンとロマーニャぐらいでしかやらないのよ?」
「そうなのか? てっきり、欧州ではどこの国でもやっているんだと思ったんだが。そう
かぁ、じゃあサーニャが驚くのも無理ないか・・・すまん」
「謝るのは私にじゃないでしょ。それに、たぶんもうすぐ来るわよあの子たち」
噂をすれば影のとおりか、ドアを叩く音が部屋に響き、
「隊長、坂本少佐が中にいんだろ。会わせてくれよ」
エイラの呼び掛けが聞こえる。
「もう完全にバレてるみたいね、じゃあほらっ」
ミーナ中佐はベッドから下りると、坂本少佐の背後にへと回ると、ドアに向かわせるため
にその背中を押す。
「おっ、おい、何て言ったらいいんだ!」
「素直にごめんなさいでいいでしょ、そんなに不安なら・・・」
ミーナ中佐は引き出しから何かを持ってきて坂本少佐に手渡した。
「これでも渡してあげたら」
「何だこれは?」
「ドロップよ。これを渡しながら・・・」
そして何事かを耳元で囁いた。素直に耳を傾けていた坂本少佐だったが、ミーナ中佐から
の助言に思わず狼狽する。
「そっ、そんなこと言えるわけ」
「別に本当に言わなくてもいいわよ。ほらっ、二人とも廊下で待ってるわよ、坂本少佐」
ミーナ中佐は強引に坂本少佐の背中を押し続け、「おっ、おいミーナ」という言葉とともに廊下に閉め出した。
そして一息をつくと、ふて寝をするかのようにベッドの上に再び横になった。
「あの・・・私はどうしたら・・・」
と、宮藤だけが、どうしたらいいのかとミーナ中佐の部屋で一人呆然とするのであった。
- 424 名前:浮かれすぎの、ハロウィン・モーニング:2009/11/04(水) 21:47:54 ID:awXyDyik
「おいっ、少佐ぁ。どうしてくれんだ、サーニャを泣かして〜」
最初は自分の考えに半信半疑だったエイラも、ミーナ中佐の部屋から出てきた坂本少佐の
姿を見て、俄然強気になったが、それに比例してサーニャの心配の種は次第に大きくなる。
確かにさっき見た幽霊の正体は坂本少佐のようだが、エイラがあまりにも失礼なことを口
走ってしまうのではないかと、気が気でないのだ。
「エイラ・・・もういいわ。私も驚き過ぎたんだから・・・」
「いいや、こんなイタズラをしといて、許せるわけないだろっ」
「エイラが言えることでもないわ・・・」
「うっ!!」
至極真っ当な意見だ。
「すまなかったサーニャ、私も少し浮かれすぎていたみたいだ。その、お詫びの品という
わけでもないのだが・・・」
坂本少佐は、小さな可愛らしい袋をサーニャに手渡した。
「あの・・・これは・・・」
サーニャはパチクリと目をしばたかせながら、坂本少佐を見る。
「あめ玉なんだが・・・」
「イタズラしたのをお菓子で許してもらう気か?」
エイラの眉が八の字になり、
「そんなハロウィン聞いたことないぞぉ」
と、呆れたような声を出す。確かにその通りだ。
ただ、サーニャは嬉しげな瞳でその可愛らしい袋を見つめる。
「あの・・・ありがとうございます」
サーニャは、はにかんだ笑顔を少佐に向ける。坂本少佐はその笑顔を見て安心したためか、
ふぅと一息をつき、エイラもそんな二人を見ながら「もういっか」という顔になった。
ここで幕引きとなれば良かったのだが、何故か坂本少佐はミーナ中佐から与えられた言葉
をここでつぶやいた。
「サーニャ」
「はい?」
「ん?」
「そのアメはただのアメじゃない。私の魔法でサーニャが落とした涙の粒を変えたものなんだ」
突然の坂本少佐の言葉に二人は顔を見合わせる。そして、何かをしゃべろうとするが、一
向に新たな言葉は生まれようとせず、妙な沈黙ばかりが流れる。そんな二人を見ながら、
坂本少佐は何故か得意気な顔をうかべるのであった。
Fin
- 425 名前:3K5frGcU:2009/11/05(木) 04:23:47 ID:wYHSx3LE
- >>424
GJ!やはり少佐はやる事が違うw
ハロウィンでドッキリ作戦!ルッキーニ編です。
最後までお付き合い頂ければ幸いです。。
- 426 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!ルッキーニ編:2009/11/05(木) 04:24:42 ID:wYHSx3LE
- にひひ…
次はあたしの番!!皆を見てるだけなんて、いい加減つまんないしね。
そう言ったらヨシカが順番代わってくれたんだ。
ハルトマン中尉とサーニャが戻って来ないけど皆何も言わないし、質問しても曖昧に笑うだけ。ペリーヌにいたっては
顔を真っ赤にして「不潔ですわ!」って怒るくらいだし。意味分んないよー!
……まぁいっか。
あたしも早くとりっくおあとりーとって言いたいなー!
あ、仮装するの忘れてたけど…まぁいっか!軽い足取りで扉の前に立つ。
誰の部屋かって?言わなくても分るでしょ?
大好きなマーマにそっくりだけど、その事を話したら何故か怒られて追いかけられたっけ。
本当は恥ずかしくてちゃんと言えなかっただけなんだけど…
マーマとは別の意味で大好きな……そう、あたしの大好きなシャーリーの部屋!!
シャーリーならきっとハロウィンの事知ってるだろうし、早くあの言葉を言ってお菓子を貰ってシャーリーと遊びたい。
以前中佐の部屋にノック無しで入ったらこっ酷く叱られたけど、あたしのシャーリーはそんな細かい事で
怒ったりしない。
だから、シャーリーの部屋に入る時はいつもノックなんてしないんだ。
驚くシャーリーの顔が見れる時もあるし、機械いじりに集中して気付いてくれないときもあるけど…
そんなときは気付いてくれるまで待ってるしかないんだけどね…
とにかく!あたしとシャーリーはそれだけ信頼し合ってるって事!!
ばんっ!
「シャーリィー!!とりっくおあとりー………と…?」
…居ない。どこにも居ない。ベッドにも机の下にも。
私が来ることをエイラみたいに察知して、逆に驚かせようと隠れてるのかと思ってたのに。
「……つーまぁんなぁーい!…もーっ!!!シャーリーのばかっ!ばかシャーリー!!」
そうやって騒いでいてもなだめてくれる人はここに居ない。
きっとハンガーでストライカーいじりでもしてるんだ…。
ストライカーをいじっている時のシャーリーは本当に楽しそうだから、遊んで欲しい なんて言えなくなる。
今日はまだ会ってもないのに………
きっとあたしと遊んでいるときよりも、ストライカーいじってる方が楽しいんだ。
シャーリーが自分よりもストライカーを優先しているように思えてきて、凄く嫌な気分になった。
音速を超えてからのシャーリーは、何かにつけてストライカーをいじっている。あたしはと言えばシャーリーの監視が
ある時以外はストライカーに近付く事すら禁止になってしまった。
今日だってそうだ。あたしを誘わないで1人でストライカーいじりなんかして。
もうストライカーと結婚しちゃえばいいんだ。バカウサギ!食べちゃうぞ!!
そんな事を思う自分が腹立たしくて、子供っぽいと自覚するけど認めたくなくて…
散々喚いた挙句、とうとうわけが分らなくなった。
- 427 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!ルッキーニ編:2009/11/05(木) 04:25:15 ID:wYHSx3LE
「うぅ〜…」
ぼすっ
勢い良く俯せに寝転がったシャーリーのベッド。
「…しゃーりーのばかやろぉ…」
そう言って勢い良く吸い込むと、大好きな人の匂いと共に心地良い眠気が差してきた。
そう言えば今日のシエスタがまだだったっけ…
いつも使っている毛布の代わりに、ベッドの上に投げ捨てられた赤いジャージに手を伸ばす。
本当ならあの毛布が一番良く眠れるんだけど、このジャージはシャーリーがオフの時に良く着ているジャージ
だから。シャーリーの匂いが染み付いている。
そんな訳で、あの毛布同様、もしかしたらそれ以上に心地良く眠れるんだ。
「うにゅ…」
赤いジャージを抱きしめ直して本能のままに眠りにつく。
少し高い窓から注ぐ光の帯は、それこそ音速に近い勢いであたしを夢の中へと誘った。
☆
遠くからでも分かる。
あれはきっとシャーリーだ。
ハンガーでストライカーをいじっている。
「シャーリー!トリックオアトリートだよー!お菓子をくれなきゃいたずらしちゃうよ〜!!」
シャーリーを見つけた嬉しさで手を振り走りながら叫ぶ。それに気付いたシャーリーが振り返って微笑んだ。
「あぁ、ルッキーニか。悪い、私結婚することにしたんだ。コイツと。」
そう言ってシャーリーが愛しそうに紹介したのは、彼女のストライカーユニットだった。
「えっ!どういう事シャーリー?ストライカーと結婚って…ちゃんと説明してよ!」
「悪いな、もう行かないと駄目なんだ。お前も元気でやれよ。じゃあな」
そう言ってどんどん遠くへ行ってしまうシャーリー。片手を挙げて微笑んだままで小さくなっていくシャーリー。
訳が分からないまま必死で追いかけた。
「ちょ、待って、まってよシャーリー!置いてかないで!待ってってば!!」
走って走って、必死になっても追いつかない所かどんどん引き離されていく。
置いていかれるのが嫌で、必死に手を伸ばすけど全然届かない。
真っ黒な何かが、あたしの体を取り込もうと追ってきた。
「シャーリィ!!シャーリー!や、やだ、助けて、しゃぁぁりぃぃ!!」
…懇親の力で叫ぶと、あたしを取り込もうとしていた黒い物は無くなって、代わりに暖かいものに頭を撫でられて
いるような感覚がした。
「…ニ、私はここにいるよ…」
…あ、そうか。これは夢なんだ。………よかったぁ…シャーリーがあたしの事放っといてどっか行っちゃう
なんてありえないもんね。
音速はシャーリーの夢なのに、それを軽視してストライカーと結婚しちゃえなんて酷いこと考えちゃった。
そんな悪い子は、怖い夢みても仕方ないよね。
とにかく目を開けよう。
そしたら、きっと私の大好きな人が目の前にいるはずだから。
- 428 名前:ハロウィンでドッキリ作戦!ルッキーニ編:2009/11/05(木) 04:25:51 ID:wYHSx3LE
☆
ストライカーの整備を終えて戻る途中、頭に三角の白い布を巻いた坂本少佐と、何故か魔力を解放したペリーヌ
に遭遇した。
「何て格好してるんですか少佐…」
「ム、シャーリーか。これはエドウィンと言ってな、菓子を貰う為にいたずらをすると言う遊びだ!はっはっは」
「しょ少佐!それではこの世に存在しないズボンメーカーになってしまいますわ!」
「…あー…もしかしてハロウィンのことですか?」
良く分かってなさそうな少佐に的確な突っ込みを淹れるペリーヌ。
この二人、案外良いコンビだったりしてな。中佐の前では絶対言えないけど…
「そう!それだ!!はっはっは!今からミーナを驚かしに行く所だ!そう言えば、ルッキーニがお前の所に
行っただろう?」
「いや、まだ来てませんよ。アイツこんなイベント好きそうだからお菓子用意して待ってたんですけどね」
苦笑いで答えると、驚いた様子の二人。最近ストライカーに集中していてルッキーニにかまってやれず、寂しい思いをさせていたのだ。
ハロウィンをきっかけに遊ぶ口実を作ろうと思い、実はこっそりお菓子用意していたけど、中々取りに来ないのでハロウィン自体を知らない
んだと思っていた。それならそうで教えてやれば良いとも思っていた。
そんな中、思いがけない言葉を聞いて唖然とした。
「そんな事ありませんわ!ルッキーニさんとは大分前に別れた所でしてよ」
「うむ。お前の部屋に向かったようだが…」
そんな…すれ違いだったのか…!
「えっ!!そいつはマズい!私、朝から今までハンガーに居たんですよ!」
「なら早く行ってやれ。お前なら大体どこにいるか見当がつくのだろう?」
「はいっ!失礼しまぁす!!」
言うが早いか、文字通り脱兎の如く駆け出して目的地へ向かう。
きっと、待ちくたびれて寝てしまっているか、下手したらハロウィンよろしくイタズラされているかもしれない。
1人にしたことを酷く怒っているだろう。
やっと着いた自室に静かに入る。
やはりベッドの上に居た。いつもの毛布変わりに私のジャージを抱いて寝ている。
安心したのと、寝顔が可愛らしくて、つい見入ってしまった。
不意に、彼女の顔が曇る。
「…まっ、て…」
悪い夢でも見ているのかと心配になって、顔を覗き込む。私のジャージをひしと掴み、小さな睫毛がふるふると震えていた。
「シャ、リ…ぃかな…で……やだ……い…」
「ルッキーニ、ルッキーニ!私はここにいるよ…早く目覚めておいで」
できるだけ優しく、髪をすいてやる。
あーあ…こんなに寝汗をかいて…
起きたらハロウィンよりも先に風呂だな。風邪でもひいたら大変だ。
そんな事を思いながら手を動かしていたら、彼女の瞼が呻き声とともにゆっくり開いていく。
…さぁ、我が眠り姫様のお目覚めだ。
見上げた彼女の顔が満面の笑みを作り上げ、私の名前を何度も叫びながら腕の中に飛び込んできた。
あんまりかまってやれなくてごめんな。大好きだよ、ルッキーニ。
fin
- 429 名前:名無しさん:2009/11/05(木) 22:01:39 ID:NtpIZLAY
- GJ!シャーリーはやっぱ良いお母さんだなあ
しかしエドウィンwwwwwww
吹いちまったじゃねーかwwwww
- 430 名前:名無しさん:2009/11/05(木) 23:08:31 ID:6kwngO4o
- >>424
GJ! もっさんカッコイイけど何かずれてるw
でもそれでこそもっさん! 面白かったです。
>>428
GJ! シャッキーニも鉄板ですね。
シャッキーニ二人のその後が気になるけど
他の仮装行列も気になる! 正座して待ってます。
- 431 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/11/06(金) 21:25:10 ID:ilOZqwBI
- ハロウィン途中まで書いたところで間に合いそうに無くて食ったばかりのバウムクーヘンをネタに一本となりました。
なんていうかルッキーニがおばかキャラ過ぎたかな〜とか思いつつもドラマCD2を聞く限りでは平気そうな気がしたので投下w
規制中なんで避難所を正しい方法で使用したいと思います〜。
●ブリタニア1944 シマシマの中心
「いい匂い〜美味しそ〜」
「実家の知り合いの、カールスラントから疎開してきたお菓子の職人が作った特製のバウムクーヘンです」
ばうむ……くーへん?
目の前にある円筒形のそれは一番外側の壁面に砂糖掛けされて木の年輪のように縞が入って中心にぽっかりと穴の開いている甘い匂いのする、多分ケーキ。
それをリーネが綺麗に切り分けていく。
「変わった形だね〜。前に食べた……ドーナツだっけ? あれに似てるかも」
「ドーナツとはちょっと違うかな。名前は木のケーキ、って言う意味みたいだよ」
「なんだか懐かしいなぁ。リーネ、私丸々1ラウンドでもいけるから切り分ける手間省いてもいいよ」
「何をいっとるかハルトマン。こういうものは皆で分けて食べるものだ。大体、この場にいないミーナの分も取り置かねば失礼だろう!」
「あ、バルクホルン大尉、それなんですけど……実は丸々1ロール分頂いてしまったんで、ご希望の方にはインチ単位のラウンドでお渡しします」
「やった! じゃあ私まーるいので欲しいっ!」
「こら、はしゃぐなハルトマン」
「じゃあじゃあアタシもっ! あとあとっ、シャーリーもきっといっぱい食べるから同じだけ切って〜。ハンガーに持ってく〜」
「はい、ハルトマンさん。……はい、じゃあこれがルッキーニちゃんとシャーリーさんの分」
「リーネありが㌧。感謝の気持ちにぱふぱふ〜」
「きゃっ! ルッキーニちゃんダメっ」
「ああっルッキーニちゃんずるいっ!」
「にゃっはは〜、じゃ〜シャーリーのところ行ってくるねっ」
「もうっ」
二つのお皿に乗っけたバウムクーヘンの輪っか。
両手が塞がってるって言うのはいいことだよね。
だってつまみ食いしちゃう心配が無いもんね〜。
っとと、誰か来た。
「お、ルッキーニ何持ってるんだ?」
「ルッキーニちゃん、おはよう」
「にゃー、エイラとサーニャ」
「お、なんだか美味しそうなもの持ってるじゃないか」
エイラが右手に持ったアタシの分のバウムクーヘンに手を伸ばしてくる。
「だめー、これはアタシとシャーリーの分なのっ」
「でもそんなにいっぱいあるなら一つまみぐらい」
「ダーメ! 丸いまま食べるのっ」
「何だよ欲張りだなぁ」
「欲張りじゃないもん。リーネがいっぱいくれたんだもん」
- 432 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/11/06(金) 21:25:28 ID:ilOZqwBI
- 「へー、そうなのか」
「食堂にいっぱいあるから欲しかったら向こうへ行ってよ」
「わかったわかった。それよりさ、ルッキーニ。お前、バウムクーヘンの中心の話知ってるか?」
「バウムクーヘンの、中心?」
「ああ、そうだ」
「はじめっから輪っかで出来てるんじゃないの? リーネの持ってた一本も丸まる真ん中が無かったよ」
「いいや、実は違うんだよ」
エイラがちょっと声のトーンを下げて話し始める。
「え、そうなの?」
「いいか、バウムクーヘンって言うのは中の方から丹念に重ねて焼いてを繰り返して作ってるんだ」
「うん」
「だから焼いたときの焦げ目が茶色に、そうでない部分が白く残ってこうやってシマシマになっていくんだな」
アタシの手の皿の上のバウムクーヘンの縞をなぞるようにしながら説明。
「ふーん」
「ま、そうやって重ねていくから中心に近いほど密度が高い……つまり美味しさが凝縮されて封じ込められているわけだ」
「ふむふむ」
じゃあ一番美味しいところは最後に残るように食べようかなぁ。
「で、だ」
「にゅっ」
「この中心にぽっかり明いてる穴。何で開いてるか知ってるか?」
さらに声を下げて、ちょっとひそひそ声で今度は丸い部分をなぞるように指を動かす。
「知らないよっ」
「こっから先は極秘事項だから、心して聞けよ」
「う、うにゅっ!」
ななななんだろう?
「実はなルッキーニ、一番中心の一番美味しい部分っていうのはこの世界を牛耳る特権階級の人々によって予め抜き取られてるんだよ」
「ええっ!?」
衝撃の真実だよっ!
「バウムクーヘンの命そのものとも言える其の中心核は、決して我々庶民の口には届かないようになっているって寸法さ」
「ひどいっ! アタシも一番美味しいところ食べたいよっ!!」
「うんうん、そうだよなぁ。わたしも食べたい。サーニャにも味合わせてやりたいが、残念ながらこの世の理って奴だからなぁ……」
いつの間にか立ったまま寝てるサーニャの肩を抱き寄せながらエイラが喋り続ける。
- 433 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/11/06(金) 21:25:42 ID:ilOZqwBI
- 「やーだ、絶対食べるっ!」
「うーん、もしかしたら貴族だったらバウムクーヘンの一番美味しい部分を持ってるかもしれないな」
「貴族!?」
「うん、例えばツンツンメガネとか……」
そうえいばペリ犬って……はくしゃく?とかなんとかいう貴族だったっけ。
「アタシ行ってくるっ!」
「おー、がんばれよー……にしししし」
エイラの声を背後に聞きながら、まずはハンガーを目指す。
「ねぇねぇシャーリー、これっ!」
「何だルッキーニ、そんなに急いで走りこんできて……お、バウムクーヘンじゃないか。こんなでっかいのを丸ごとなんて凄いな」
「リーネがくれたのっ!」
「おー、流石だな」
「でね、シャーリー……アタシ、とっけんかいきゅーに奪われたバウムクーヘンの一番美味しいところ、取り戻してくるねっ!」
「え!?」
「輪っかの中心もってすぐ戻るからまってて〜」
「あ、おいルッキーニッ! 中心ってバウムクーヘンは……」
二つのお皿を預けると、アタシはペリーヌの部屋まで一直線に駆け出した。
「ペリ犬ッ! かえせー!!!」
「なっ、ななななな何事ですのっ!?」
「一番美味しいところは何処だ〜!」
「いきなり何のお話ですのっ! ぜんぜん分かりませんわっ!」
「ネタは上がってるんだからとぼけても無駄だもんね〜……ここかな? それともこっち……んー、無いなぁ」
「ちょ、ちょっと! 人の部屋で一体何をなさいますのっ!」
「ホラホラ、早く出さないと全部ひっくり返すよっ。とっけんかいきゅーな貴族ザマなら持ってるはずなんだから」
「あああっそこは開けてはいけませんわっ!」
「むむっつまりここかっ! ……って、なんだー扶桑の服ジャン、ぽいっ」
「あああああっ! やめなさいこの泥棒猫っ!」
「出さないぺったん娘がいけないんだよーだ。ざーんねん」
「ええい、こうなりましたらっ!」
「わっトネールは禁止〜」
「問答無用っ!!」
やば〜、なんか空気がバチバチ言ってるぅ。
怒らせすぎちゃったか〜。
これは逃げるしかないねっ。
「ばっははーい」
「二度と来ないでくださいまし!」
- 434 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/11/06(金) 21:25:57 ID:ilOZqwBI
- よーし、追ってこないね。
散らかった部屋の片付けでもしてるかな?
んー、でもペリ犬のところには無いっぽかったなー、バウムクーヘンの中心。
後は誰かもってそうなの……あ、いたいたっ。
「ミーナたいちょー……ん、いないかな? いいや、勝手に探しちゃえ」
ここでもなーい。
こっちでもなーい。
そこでもなーい。
あっちでもなーい。
…………。
無いなぁ。
おっ! 厳重に隠してるのはっけーん!
きっとここにあるよー。
…………。
「 ま た 、 扶 桑 の 服 だ 」
うじゅー。
開いて……広げて……被って……どこからどう見ても触っても扶桑の服。
つまり、とっけんかいきゅーの共通点は、扶桑の服?
そっか!
「って言う事は後は少佐と芳佳だっ!」
「何が坂本少佐と宮藤軍曹なのかしら?」
「うんとねっ、あの二人のどっちかがきっとバウムクーヘンの真ん中を抜き取ってるとっけんかいきゅ……」
あれ、もしかしてこの声は?
ぎぎぎぎ、と首が軋みをあげるようにしながら振り返る。
そこにはバウムクーヘンの乗ったお皿を持ったイヤーな笑顔のミーナ隊長。
「で、それとこの部屋の惨状とその被ってる物にはどういった因果関係があるのかしら?」
「と、ととととととくにありましぇん」
ににににににげないと……。
こういう時のミーナ隊長はやばいよぉ。
バタン、ガチャ。
- 435 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/11/06(金) 21:26:13 ID:ilOZqwBI
- って! なんかドア閉めて鍵まで掛けてるしっ!!
「少しゆっくり、お話でもしましょうか」
ヒッ!
ここここれはっ!
アタシっ!
大ピンチっ!!!
…………。
「うう、散々な目にあったよ……」
「よっ、おかえりルッキーニ。タンコブなんか作ってどうしたんだ? 木から落ちたか?」
涙目でハンガーに戻ってくるとシャーリーがやさしく声をかけてくれた。
傍らには待ちきれなかったのか食べかけのバウムクーヘン。
- 436 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/11/06(金) 21:26:34 ID:ilOZqwBI
「ミーナ隊長にやられたー」
「何だ又悪戯でもしたのか? そういうのは相手選べよ」
「いたずらじゃないよっ。シャーリーの為にバウムクーヘンの一番オイシイ部分を持って来たかっただけだモン!」
「さっきも何か言ってたけど、バウムクーヘンの一番おいしい部分? 何だそれ?」
「んとね……」
事の経緯をイチから説明すると……。
「あはははははっ。ルッキーニそりゃお前エイラに担がれたんだよ」
「ええっ!?」
シャーリーに笑われたぁ……っていうかエイラにだまされたのっ?
「バウムクーヘンって言うのは確か筒に生地を貼り付けながら専用のオーブンで焼いていくんだ。だからはじめっから真ん中に筒の分の穴が開いてるのさ」
「ええええ〜! ホントっ!?」
「あたしがルッキーニに嘘つくかよ。あとでリーネにでも確認してみろ。それより、これホント美味しいぞ、お前も早く食べろって」
シャーリーが自分の分のバウムクーヘンをちょっとだけちぎってアタシの口に運んでくれた。
「え、あ、うにゅ……ぱく、もぐ、むにゅ、うにゅ……にゅは〜おいし〜」
「食べ終わってから考えような」
「んにゅ? 考える?」
「エイラへの悪戯返しの方法さっ」
「ウンッ」
ウィンクするシャーリーに頷くアタシ。
あーでも、美味しいもの食べておなかいっぱいになったら、まずは考えることよりもお昼寝かなぁ。
おきたらシャーリーと一緒にエイラをぎゃふんといわせるイタズラ考えちゃうもんねっ。
「じゃ、改めていただきまーす」
アタシは、まあるいおおきなバウムクーヘンにかぶりついた。
以上となります。
美味しいバウムクーヘンが食べたい今日この頃です。
それはそれとして、はやく規制解除されないかなぁ……。
- 437 名前:名無しさん:2009/11/07(土) 22:26:02 ID:UH5iE.Ok
- >>436
GJ! 色々和みました。
バウムクーヘン美味しいですよね。
それにしても、501に出てくるお茶とお菓子はどれも美味しそうですね。
本編もSSもしかり。
- 438 名前:3K5frGcU:2009/11/10(火) 02:24:12 ID:lky63SS6
- 仕事の合間合間に書いてるから、変なところあったらごめん。
ハロウィンでドッキリ作戦!芳佳編です。
ゴールが見えてきた。
- 439 名前:3K5frGcU:2009/11/10(火) 02:25:37 ID:lky63SS6
- 今日は一日お休みの日。
朝食の後片付けも終わったし、実家から送って貰った物を片付けよう。
片付けると言っても両手で抱えられる木箱が1つだから、すぐに終るだろうな。
それが終ったら一緒に送られてきたブルーベリーで新しいお菓子でも作ってみよう。
そう言えば、以前頼んでいた本が見つかったと言っていたっけ…
換気の為に窓を開けて…っと。
木箱を絨毯の上に置いてその前に座り込み、蓋を開ると同時にその本と対面した。
今すぐにでも読みたい衝動に駆られたけど、それをしてしまうといつまで経っても片付けが終らない事は経験上
重々承知していた。
我慢、我慢…後でゆっくり読んだ方がきっと楽しいよ。
そう自分に言い聞かせ、片付けを始めていたら不意にノックの音が響いた。
「はーい。どなたですか?」
「あ、あたし。芳佳だけど、ちょっと入っても良いかな?」
「芳佳ちゃん?勿論良いよ!どうぞ入って」
「うん、おじゃましまーす」
お休みの日に芳佳ちゃんが尋ねて来てくれることは珍しくない。
この前も扶桑のオハギと言うお菓子の作り方を教授して貰った所だし。
あの独特な材料と作り方はブリタニアには無いだろう。でも甘くてモチモチで、すっごく美味しかったなぁ。
そんな事を思いながら扉を開けて彼女を招き入れる。
いつもと違ってなんだか落ち着かない様子の彼女を変に思いながらもソファに案内して、
ちょっと待っててと告げて片付けていた箱から1冊の本を取り出した。
先程見つけた、新しいお菓子作りのレシピ集。
片付けが終ってからゆっくり1人で見るのも楽しいかも知れないけど、片付けが終って無くても芳佳ちゃんと
一緒に見る方が絶対何倍も楽しい。
私は呆気無く片付けることを放棄した。
「あ、ごめんね。もしかして片付けの途中だった?」
言いながら早くも立ち上がって部屋を出ようとする芳佳ちゃんに片手を振りながら答える。
「ん、大丈夫だよ。片付けなんていつでも出来るから。それよりこれ、一緒に見たいなぁと思って」
A4サイズ程の本を両手で掴みながら彼女に見せた。
出来上がりの写真やオーブンの細かい温度は勿論、ブリタニアのありとあらゆるお菓子のレシピが載っている
それは、結構重くて分厚い物だった。
だからこそ手に入れたかったのだけど。
「わぁ!それリーネちゃんがずっと探していた本だよね!?やっと見つけたんだぁ!見たい見たい!!」
無邪気にはしゃぐ芳佳ちゃん。やっぱり可愛いなぁ、なんて思いながら二人分の紅茶を注ぐ。
「芳佳ちゃん、アールグレイで良いかな?」
「うんっ!リーネちゃんの淹れてくれる物ならなんだって良いよ!だって美味しいんだもん!!」
それは芳佳ちゃんの為に淹れるから、特別美味しくなるようにしてるんだよ。
聞こえないぐらいの小声で呟いてみる。…やっぱり聞こえてないみたい。
本当は聞いて欲しいと思っているのか、彼女の驚く顔が見てみたいと思う私はどこか変なのだろうか。
二人分の紅茶とクッキーをソファ前のテーブルに持って行き、お礼の言葉を受けてから隣に座る。
「これもしかして昨日焼いてたクッキー?」
「うん。そうだよ。きっと芳佳ちゃんが来ると思っていたから、少し取っておいたの」
「そうなんだぁ。私の為に、有難う」
満面の笑み。あーもう、可愛いなぁ…
- 440 名前:3K5frGcU:2009/11/10(火) 02:26:16 ID:lky63SS6
大きなレシピ集を二人で見ながら、次はあれに挑戦しよう、とか、これは材料を集めるのが大変だ、とか
色々とお喋りをしていたけど、ふと気付いた事があった。
「あれ?そう言えば芳佳ちゃん、私に何か用事があるんじゃない?」
「えっ、ど…どうして?」
「だって入ってきた時の芳佳ちゃん、様子が少し変だったよ。私に用事があるんじゃないの?」
そう、何か言いにくいような事が。
「あ、やっぱりおかしかった?あ、あのね…」
「うん。何?」
相槌を打って先を促す。
なんでも聞いてあげるよ。大好きな芳佳ちゃんの為だもん。
「あ、あのね…その…と、トリックオアトリート!!…って知ってる?…よね?」
トリックオアトリート?どこかで聞いたことあるような……確か、ハロウィン…だったかな?
それがそのまま口をついて出たみたいで、芳佳ちゃんの驚いたような、がっかりしたような顔が間近にあった。
「や…やっぱり知ってたんだ…」
そう言って今まで見ていたレシピ集をぱたりと閉じて、何故かしょんぼりしてしまう。
「あ、でっでも話を聞いただけだから、詳しいことはわからないんだ!芳佳ちゃん、詳しいの?」
慌ててフォローを入れる。
知らなかったのは本当の事だし、芳佳ちゃんが何か考えているなら聞きたい。
「わ、私もそんなに詳しくは知らないんだけど…」
さっきまでのしょんぼり顔はどこへやら。
そう言って顔を赤くしながら嬉しそうにハロウィンについて語ってくれた。
「…と言う事なんだ!」
「へぇ…そうだったんだ。芳佳ちゃん詳しいんだね」
「う、うん。それでね、その、ハロウィンが…今日…だったりするんだ…」
「えぇっ!そうなの?……じゃあ、もしかして、その、お菓子を貰いに来たって、事?」
1つずつ確認しながら言葉を発した。変な汗が頬を伝う。
そう…なんだ。じゃあ、クッキーをあげた私は芳佳ちゃんに好きなイタズラをしてもかまわないって事…?
そう…そうだよね…だって私は芳佳ちゃんからお菓子を貰ってないし。
今朝なんて私以外の人たちと楽しそうにお喋りしていたし……
それならイタズラされても構わないって事…だよね……はっ!!…もしかして芳佳ちゃん、ワザと…?
私にイタズラされたいが為にワザとハロウィンなんて名目で尋ねて来たのかしら…
そっ…それならちゃんと答えてあげないと…
「そうなんだ!でも、リーネちゃんが知ってたらドッキリにならないし、知らなかったらどんなイタズラしようか
考えてなくて……聞く時はすっごく恥ずかしかったよぉ……って、リーネちゃん、大丈夫?さっきからブツブツ言ってるけど
私何か変な事言ったかな…?」
あれ?心の中で呟いていたつもりが、言葉になっていたみたい。
芳佳ちゃんが心配そうに顔を覗き込んでくる。
ああ…そんな顔もとろけるほどに可愛いんだから。きっと、もう私は………
心配する芳佳ちゃんに、大丈夫。と満面の笑みを向けてゆっくり立ち上がる。と
扉の鍵をかけ、芳佳ちゃんに向き直る。
「ど、どうしたの?リーネちゃん…鍵なんてかけ…て…………っ!!」
ハッと気付いたような素振りを見せ、青ざめた顔で震える芳佳ちゃん。
私のお気に入りベスト5に入る彼女の表情だ。
……でも、どうしたのかしら?
「どうしたの芳佳ちゃん?今日はハロウィンで、お菓子を貰わなきゃイタズラしても良い日。なんでしょう?」
そういって努めて明るく微笑みかけながら確認を取る。
返ってくる言葉は無く、ただただソファの隅で肘置きを掴みながら震える芳佳ちゃん。
自分から誘っておいて、その態度は無いんじゃないかと半ば呆れたけど、彼女が汗を流している事に気付いた。
それじゃあ、早く脱がないと風邪引いちゃうね。
魔力を開放し、一歩ずつ近付く。
ぎし、と床がなる度にびくりと肩が震えるのも可愛い。
抱き上げた拍子にひゃぁと、小さな悲鳴をあげる芳佳ちゃん。やっぱり可愛い。
ぎしりとベッドの上に優しく寝かせ、彼女の上に跨った。
開けた窓からそよそよと心地良い秋風が吹く。芳佳ちゃんがもぞもぞと動くから、シーツに皺が寄ってしまった。
でもそんなのは、今からする行為によってどうでも良くなる事だから。
怯えた瞳で見上げる芳佳ちゃんが、何か言おうと口をもごもごさせているけど聞いてあげない。
事の始まりを意味するキスを彼女のそれに重ね合わせたらようやく認めたのか、はたまた諦めたのか。
私のシャツをぎゅっと掴み、震える舌で答えてくれた。
かわいいかわいい、わたしの わたしだけの 芳佳ちゃん…
fin
- 441 名前:名無しさん:2009/11/11(水) 03:06:37 ID:vzqyGXyw
- >>440
GJ! リーネなにげに怖いw
ほのぼのなやり取りから
段々リーネさん黒くなっていくのがもうねw
次も有りますか? 正座して待ってます。
- 442 名前:名無しさん:2009/11/11(水) 09:23:40 ID:cfvfPf9Y
- >>438
GJ! これは良い芳ーネ
しかし仕事しろと言うべきかもっとやれと言うべきか迷うwww
- 443 名前:名無しさん:2009/11/14(土) 18:29:33 ID:5sHqF1Co
- なんなんだこの過疎りっぷりは
- 444 名前:名無しさん:2009/11/14(土) 21:07:02 ID:St5/q1nQ
- きっとみんなスケート行ったりで忙しいんだよ!
足の親指の皮が悲劇的なぐらいがっつりめくれてたりとか!
……え? 俺だけ?
- 445 名前:名無しさん:2009/11/14(土) 23:38:24 ID:I2mB9Ryo
- ゲームのプロを見たが、思わずにあにあしてしまったではないか
- 446 名前:名無しさん:2009/11/15(日) 17:03:44 ID:hvBrDo/M
- DSの方はもう少しか
- 447 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/11/15(日) 20:58:48 ID:oQP8KIhU
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
私としては結構珍しい組み合わせで行ってみます。
とりあえず保管庫No.450「ring」シリーズ外伝? と言う事で。
あと話の流れとしては保管庫No.1163「sister ban」の直前に起きた事になります。
ややこしいですが、よしなに。
- 448 名前:touch-and-go 01/05:2009/11/15(日) 20:59:25 ID:oQP8KIhU
- シャーリーの運転するジープに揺られ、脇に肘を置き溜め息をつくトゥルーデ。
「なあ堅物、あんた何度目よ」
「何がだ、リベリアン」
答えるのも面倒だと言わんばかりに溜め息をもう一度つく。
「それだよ。あんたさっきからずーっとそう『はあ』だの『ふう』だの溜め息ついてさ。
カールスラントじゃ何かそう言う風習つうか習慣でもあるのか?」
「無いに決まってる!」
「じゃあ何でさ?」
「何でとか聞くか?」
それっきり会話が途切れた。
やがて二人を乗せたジープはロンドン市街へと入り、舗装路になった事も有り、ジープの揺れは少しおさまった。
トゥルーデは市街地をひた走る車中から、周囲を見回した。
色々な種類の車が走り、人も多く、建物も割合被災を免れている。
「あたし達のお陰だよな」
シャーリーはふっと笑った。
「まあ、そう……言えるかもな」
「遠慮しなさんなウルトラエース。もうすぐ二百五十機超えだろ? やっぱ凄いよあんたは」
「何だ急に、気持ち悪い。リベリアンに言われると、何か悪い事の前触れの様な気もするぞ」
「ひっでえの。あたしはきちんと評価するコトは評価するぞ? ……なんだよその溜め息は」
「いや、何でもない」
シャーリーは建物の横に車を停めると、さっと降り立ち、ドアを閉めた。
「じゃ、少し待っててくれ。すぐ戻る」
「急げよ。待たせるなよ」
「へえへえ」
シャーリーはバッグを片手に、建物へと入っていった。そこはリベリオン合衆国空軍の連絡所。
トゥルーデはシャーリーの後ろ姿を目で追い、ふうと息をついた。
- 449 名前:touch-and-go 02/05:2009/11/15(日) 20:59:51 ID:oQP8KIhU
- トゥルーデの溜め息の原因は、半日前の朝食時にまで遡る。
「大体、だらしないんだお前達は!」
「何だと!? だらしないのはあんたらだって同じだろうが!?」
食事の席上、些細な事から喧嘩となったシャーリーとトゥルーデ。
シャーリーはルッキーニの監督不行届を、トゥルーデはエーリカの監督不行届を突っ込まれ、
お互い引くに引けなくなったのだ。最初は冗談半分で怒っていたがそのうちボルテージが上がり、
あわや取っ組み合いというところでミーナと美緒の水入り。周囲の引き方もハンパではなかった。
(どうすべきか)
トゥルーデは控えめに輝く指輪をさすり、ぽつりと呟いた。
ルッキーニの日々の素行……軍人としては許し難い部分も有るが、戦績については立派なものだ。
何より、まだ控えめに言っても幼い「少女」だ。それは確かにシャーリーの言う通りなのだが。
一方、エーリカのずぼらさと言うかだらしなさについても、一応上官に当たるトゥルーデとしては
何とかしないといけない立場なのだが……。
結論が出ない。
いや、とうに出ていると言うべきか。そもそも蒸し返したところで何も変わらない。
良くも悪くも、それが501なのだろう。
そして午後、ロンドンへのシャーリーの用事にトゥルーデが同行する事となった。
「同行」と言っても隊の「監視役」に近い。先日シャーリーが自機のストライカーを破損させたが、
その代替機の早急なる輸送をリベリオン本国軍に要請する“任務”。これをちゃんとこなせるかどうか。
ミーナはそう言った。出来て当たり前だとトゥルーデは思った。今更501から逃げ出す奴なんて居るものかと。
しかしミーナ……指揮官の命令とあらば、隊の最先任尉官として従うしかない。
「よ、待たせたな」
いつ戻ったのか、シャーリーがジープの運転席に座った。
「ん? ああ、戻ったのか」
「どうしたよ堅物? 今度は時間の感覚が無くなったのかい? 三十分も掛かったんだぞ」
「え? ああ、そうか」
「らしくないなあ。風邪でもひいたか?」
「ち、違う。で、用件は済んだのか」
「ああ。ストライカーの件、何とかなりそうだ」
「そうか。良かった」
「ありがとな。いつまでも地上待機って訳にもいかないしな」
「そうだぞ、リベリアン。お前がしっっ……ぐわ、いきなり車を急発進させるな! 舌噛むわ!」
「悪い悪い、急いでるんだ」
「スピード出し過ぎるなよ。飛ばすなよ?」
「大丈夫。流れに乗ればいいのさ」
「お前はスピードの事となると見境なくなるからな」
「流石にこの渋滞ではどうしようもないけどな」
「まあ、な」
混雑する通りに滞留する無数の車を見て、大尉ふたりは溜め息をついた。
- 450 名前:touch-and-go 03/05:2009/11/15(日) 21:00:18 ID:oQP8KIhU
- 「さてと」
シャーリーがトゥルーデを連れてやって来たのは、ロンドンでも名の知れた高級百貨店。「王室御用達」と看板にある。
「ここに何の用事が有るんだ、リベリアン」
「ルッキーニさ。ちょっと落ち込み気味だからさ。気分転換に服とか買ってやろうかと思って」
「なら本人を連れて来い! 私は関係無いだろ!」
「有るさ。501の上官だし、それに」
「それに?」
「あんた妹さん居たよな? あんたの言う自称『妹』じゃなくて」
「ああ。居るが? それがどうした……と言うか自称とかやめろ」
「妹さんの世話出来るなら、その知恵と言うかさ、ちょっと貸してくれよ」
「どう言う理屈だ、それは」
「まあ良いから」
シャーリーはにやっと笑うと、トゥルーデの腕をぐいと引っ張り、子供服売場へと向かった。
「どれが良いかな」
「どれと言われてもな」
「ルッキーニに合うのは無いかな?」
「ルッキーニのか……でも待てよ。私はよく『地味』だの『センスゼロ』とか言われるぞ」
「あんたのツレにだろ?」
「……」
エーリカの顔を思い出して表情が曇るトゥルーデ。シャーリーはトゥルーデを見て肩をぽんぽんと叩いた。
「別に良いんだって。あたし達で選んだって言えば良いんだし」
「何?」
ふっと沸く疑念。シャーリーの言う事は、どこかおかしくないか。トゥルーデが考えを巡らせているスキに
シャーリーはあちこちから色々なサイズの服を持って来ていた。
「あたしの考えだけど、あいつには意外に原色系の明るい色とか良いと思うんだ。これなんかいいんじゃね?」
「ふむ……確かに意外性が有って悪くないかもな」
服を見て軽く同意してみるトゥルーデ。
そこでシャーリーは試着室を借りると、トゥルーデを引っ張り込んだ。
「おい待て。何で私も一緒なんだ。着替えはひとりでやるもんだろ」
「まあ良いじゃない」
「……と言うか」
「ん?」
「何でルッキーニの服を選ぶのに、私とお前が試着室に居るんだ?」
「ルッキーニのはこっち。これはあたしのだ」
「そ、そうか……っておい!」
「大声出すなよ。迷惑だろ?」
「うう……」
シャーリーはトゥルーデの目の前で服を着替える。
狭い空間、シャーリーのさらっとした髪がトゥルーデの目の前で揺れ、顔をこする。揺れるのはたわわに実った胸も同じ。
「どうやったらそんなにでかくなるんだ」
「またビールでも飲むかい?」
「からかうな」
「お互い様さ。あんたも結構イイ線いってると思う」
「あのなあ」
トゥルーデの愚痴を無視したまま、シャーリーは瑠璃色のワンピースに着替えた。今ロンドンで流行っているものらしい。
シャーリーの「服」と言えば、地味な軍服か中途半端に派手な下着しか見た事のないトゥルーデにとって、
それはとても新鮮に見え、何故か鼓動が高まる。
「どうよ堅物? 似合ってる?」
「良いんじゃないか?」
「目を逸らして言われてもな。説得力無いぞ?」
目の前で手をひらひらされる。
「ああもう! 分かった。似合ってるよ。いいだろそれで」
「よし分かった。次はあんたのだ」
「はあ? 何故私が?」
「サービス。と言うか付き合って貰った礼だ」
「そんな礼は要らん。早くここから出せ」
「まあ良いから。人の好意を無にするのかい、カールスラントの軍人は」
「うぐっ……貸せ!」
シャーリーが手にしたワンピースをひったくると、後ろを向いて軍服をもそもそと脱ぎ、着替えた。
緋色の服は何故かシャーリーの着るワンピースと同じ作りで……トゥルーデはますます疑念が募った。
「何で私がリベリアンと一緒に、こんな狭い空間で……破廉恥な」
「全部聞こえてるよ」
「うるさいっ!」
- 451 名前:touch-and-go 04/05:2009/11/15(日) 21:00:48 ID:oQP8KIhU
- 「おろ?」
「こ、今度は何だ?」
「堅物、これ何よ」
「え? どれだ」
振り返るトゥルーデ。
「あんたがこっち向いても、背中についてるんだから見えないよ……おろ、ここにも有る」
シャーリーはブラの隙間から覗くトゥルーデの乳房を指して言った。
「これ、は……」
言うまでもない。エーリカと愛し合った痕。
「へえ。ここにも、ここにも有る。お盛んだねえ」
「きっ貴様! 引っ掛けたな!?」
「そんなつもりじゃなかったんだけど……」
「そう言う貴様こそ、何だ! よく見たら首筋にも、胸にも、そこかしこに……」
「ああ。これ。あんたと同じ理由だよ」
あっけらかんと言うシャーリー。
「きっ貴様ぁ! ルッキーニの歳を考えろ! 幾ら何でも……」
「それ言うならあんただってどうなのよ? ほら」
「う! 止めろ! 何をする!」
「こんなに顔真っ赤にしてさ。あたし見て、ちょっと欲情したとか?」
「馬鹿か!? するか!?」
「こんなにドキドキしてるのにさ」
同じ柄のワンピースを試着したまま、トゥルーデをそっと抱きしめるシャーリー。肌を通して、お互いの胸の高まりを感じる。
「リベリアン……貴様こそ」
「何故だろうね。あたしもあんたの姿間近で見てたら……」
「……」
トゥルーデから僅か数ミリの位置で喋るシャーリー。吐息が頬を掠める。
「似合ってるよ、あんたも」
ふふ、と笑うシャーリー。トゥルーデは言葉が出ない。
相手がエーリカなら何の問題も無いのに。と言うかエーリカ助けてくれ! トゥルーデは叫びたい気分になる。
でも、叫べない。まだそれだけの理性が残っているから。
「なあ」
シャーリーの呼び掛け。トゥルーデは顔を背け、目だけでシャーリーを見る。
そこに居るのは、いつもの楽天的、放任主義の彼女ではなかった。僅かに潤んだ瞳、少し開いた唇、長い髪……
ほのかに香る石鹸の匂い、全てがトゥルーデにとって“脅威”だった。
振り解くのは容易い筈だった。だが、出来ない。拒めない。
「や、やめろ」
トゥルーデはもぞもぞと動いた。シャーリーはがっちりと掴んだまま離さない。
「いいよなあ、この指輪」
不意に呟くシャーリー。
「な、何?」
「あたしもつけてみたいよ、お揃いの」
「そ、それはルッキーニと一緒の、って事だろう?」
何も答えないまま、抱く力を増してみるシャーリー。ぞくっとするトゥルーデに、追い打ちを掛ける。
「あたしの、お姉ちゃんになってみないか」
「!?」
驚いて振り返った弾みか、シャーリーの唇が軽く触れた。電撃にも似た衝撃。
「な、何を……」
言いかけたトゥルーデの唇に、シャーリーの人差し指が触れた。
「はい、そこまで」
「?」
「やっぱり堅物だな、あんたは。面白かったよ」
「な、な、な……謀ったなぁ!?」
その後、試着室が大いに荒れた事、幾つかの服に混じってお揃いのワンピースも購入対象に含まれるハメになった事は
言うまでもない。
- 452 名前:touch-and-go 05/05:2009/11/15(日) 21:01:24 ID:oQP8KIhU
- 「どうしたのトゥルーデ、浮かない顔して」
夕食時、エーリカの問い掛けに、曖昧な笑みで返すトゥルーデ。
「リベリアンにハメられた。お陰で要らんワンピースを買うハメになった」
「なっさけないなあ、トゥルーデ。そのワンピース見せてよ」
「ああ。行くか」
二人揃って部屋に戻る。テーブルの隅でルッキーニとお喋りしてるシャーリーをちらりと見る。
シャーリーもトゥルーデを見た。意味ありげな笑みを浮かべた。
表情が強張ったまま、トゥルーデはエーリカに腕を引っ張られ、食堂を出る。
「情けないよ、トゥルーデ」
ぽつりと言葉を繰り返すエーリカに、トゥルーデは心臓を掴まれた気分になる。
「すぐ顔に出るんだから。何が有ったか、大体想像付くよ」
「あ、あれは事故だ!」
「ま、トゥルーデらしいよね。それもまた好きだけど。あとで詳しく、聞かせてよね。詳しくだよ?」
「……分かった」
一方、ルッキーニはシャーリーの顔を見て、首を傾げた。
「ウニャ どうしたのシャーリ−? バルクホルン大尉の顔に何か付いてた?」
「いんや。あいつらしいなって」
「??」
シャーリーは一瞬目を落とし、心の中で呟いた。
(なるほど。確かに、ハルトマンがホレる訳だ)
「シャーリー? どしたの溜め息なんてついて。何かヤな事でも有った?」
「いいや、全然。堅物と一緒に居て疲れた」
「なにそれ」
きゃははと笑うルッキーニを抱えると、シャーリーは頭を振り、言った。
「とにかくルッキーニ、お前に服を買って来たぞ。早速着て、あたしに見せてくれよ」
end
----
(私としては)珍しくシャーゲルです。
これも先日のイベントで明らか(?)になった
ルッキーニ→シャーリー→トゥルーデ→ルッキーニ
の関係(?)とか、その辺りをヒントに書きました。
けど、ホントは「ring」シリーズとしてはお蔵入りにしたかった……
が、書いてしまったものはしょうがない(何
きっとお姉ちゃんはあの後エーリカにみっちり「教育」されるでしょうw
機会が有ったらそっちのネタも書きたいな、と。
ではまた〜。
- 453 名前:名無しさん:2009/11/16(月) 02:53:18 ID:S4FlKg8Y
- 大変よかった
- 454 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/11/18(水) 17:21:42 ID:Grx7vFI.
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.981「music hour」のシリーズと言う事で。
ちょい短めですが早速。
- 455 名前:higher self:2009/11/18(水) 17:23:13 ID:Grx7vFI.
- ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
「エイラ……、今の、前のコピペ?」
しっ仕方ないだロ! 冒頭の決まり台詞って言うカ、その、サーニャぁ……
「もう。続けましょう」
ありがとナ、サーニャ。そんな優しいサーニャが私はす……ス……ス……ウゥ。
「もう、何処までもヘタレなんだから」
ちちち違うゾ! 私はヘタレなんかじゃなイ!
「じゃあ、証明してみせてね?」
サーニャのステキな笑顔が何故か怖いんだナ……。
ともかく今日もお便り来てるゾ。何かすんごい久しぶりな気もするけど気のせいダナ。
ええっと……早速読むゾ。ラジオネーム「ブルーベリー大好きっ娘」さん。オッ、またこの子カ。
『こんばんは。私、実は何をしてもうまくいかなくて……
最近は友達も出来て、それはそれでとっても楽しくて嬉しいんですけど、
もっともっとしっかりしたウィッチにならないと、と思っています。
私の部隊の隊長は凄いしっかりしてるのに、と落ち込んだりしてしまいます。
私、どうしたら隊長みたいにしっかり出来ますか?』
フム……微妙に漠然とした質問なんだナ。文面から察するに「ブルーベリー大好きっ娘」さんハ、
その隊長さんみたいなしっかり者ウィッチになりたイ、と思ってるんダナ? ならズバリ言わせて貰うゾ。
その隊長さんの言動を丸パクリダ!
「エイラ、それって……」
まあ待テ、私の話をよく聞くンダ。
パクると言っても……文章の丸コピペとかはまた意味が違うから除くとしテ……、
所詮その人の行動を真似た所デ、絶対にその人になるなんて出来ないンダゾ。
例えばその人になりきったつもりでモ、何処かは必ず自分のままなんダナ。絶対に同じになんてならないんだゾ。
だけど続けてるうちニ、やがて自分なりのオリジナリティーを得るに至るんダ。
だから最初はどんどんパクレ! 模倣するんダ! マネして“イイとこ”を貰っちゃエ!
どっかのエラ〜イ人もこう言ってるゾ。「物事は何事も模倣から始まる」っテ。
だから「ブルーベリー大好きっ娘」さんも、その隊長さんを完パク……はアレかもだけド、
真似たり参考にしたりして、一歩前進を試みてはどうだろウ?
隊長さんのマネしてるうちに「隊長さん」じゃなくても「新・隊長さん」みたいな感じになると思うゾ。
「エイラ、今日はなんか実用的というか真剣ね」
ヒドイナ、私はいつだって真剣ダゾ?
「じゃあ、基地に帰ったら証明してね?」
だかラ、その笑みが怖いんダッテバ……。
では今夜はこの辺で。最後に「サーニャのうた」を聴きながらお別れデス。
end
- 456 名前:名無しさん:2009/11/18(水) 17:26:54 ID:Grx7vFI.
- 以上です。
実はタイトルは「Wire Self」にしたかったんですが
意味不明(?)になるので適当に。どうでも良い事ですね。
思い出しましたが、公式の秘め話CDでも
エイラとサーニャの(ラジオ?)コーナーっぽいものが出来て
何だか妙な汗が出たり……。意識し過ぎですね、すいません。
そう言えば……、保管庫様の記録を見る限りでは
私がSS投下開始してから今日でちょうど1年になるみたいです。
(「だから何だ」と言われればそれまでなんですがw)
今後も色々と妄想をかたちに出来たらと思いますので、どうぞよしなに。
いやー1年って早いですね〜って事で。
ではまた〜。
- 457 名前:名無しさん:2009/11/18(水) 18:09:11 ID:AblhCY4I
- >>456
続き待ってた。きっとあるって信じてた。
これすっごく好きです。
それにしてもすっごい自作自演ダナw
いつも素敵なSSをGJ!
- 458 名前:名無しさん:2009/11/18(水) 20:36:39 ID:wmqTPvsE
- 本スレが新スレに移行しましたー。よろしくー。
ストライクウィッチーズでレズ百合萌えpart29
http://babiru.bbspink.com/test/read.cgi/lesbian/1258543577/
- 459 名前:名無しさん:2009/11/18(水) 21:30:04 ID:7MrIgUEQ
- >>458
乙ッチーズ
だがテンプレの保管庫のURL古いままだぞ
そして>>456GJ
- 460 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/11/19(木) 22:28:23 ID:k650J.r6
- こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.981「music hour」のシリーズと言う事で。
>>457様のリク? にお応えしてもう一本書いてみました。
ではどうぞ。
- 461 名前:be together 01/05:2009/11/19(木) 22:30:23 ID:k650J.r6
- ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
そうそウ、今夜は勝手に付いてき…いやこっちの話! ステキなゲストをお招きしてるんだゾ!
今夜のスペシャルゲスト、501JSF「STRIKE WITCHES」隊長のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐デス! 拍手ゥ!
ぱちぱちぱちぱち〜
「こんばんは。突然お邪魔してごめんなさいね。でも、良いのかしら私が出て」
「人が多い方が、楽しいと思います。番組の刺激にもなるし」
「ありがとう、サーニャさん」
「いえ。ミーナ隊長の歌も皆聴きたがってると思います」
「嬉しいわ」
ホント、ありがとナンダナ、ミーナ中佐。
早速だけど今回の出演について、何か言いたい事とか伝えたい事とか、有るカナ?
「坂本少佐は私のですから」
「……」
いきなりの独占宣言なんだナ。ちょっと冷や汗出て来たゾ。
「ロマーニャの504JSFの方で何やら動きが……」
「美緒は私のですから」
ミーナ中佐も何度も言わなくて良いカラ! しかも何でそんな凛々しい顔で言うンダ?
「大切な事なので二回言いました」
ハア……まあ、いいやモウ。
- 462 名前:be together 02/05:2009/11/19(木) 22:31:35 ID:k650J.r6
- ともかく今日もお便り来てるゾ。気を取り直してと言うか、読ませて貰うゾ。
今夜はミーナ中佐も居るシ、みんなで色々話が出来ると思うゾ。
まず一通目。おッ、これは扶桑からのお便りっぽいナ。ラジオネーム「扶桑の魔女」さん。
『こんばんは。エイラさん聞いて下さいよ。
私の彼女、私の変化に全然気付いてくれないんです……。
髪型を変えても、彼女から貰ったハンカチを持ってても、何も言ってくれないんです。
私に興味がないの? とか思ってしまいます。 どうしたらもっと気付くようになってくれますか?
エイラさんはそんなことないですよね?』
私は勿論、観察眼バッチリだからナ。例えば人の胸……いやそれはともかく、サーニャの事なら何でも分かるゾ。
……サーニャ、顔赤いケド?
「エイラの、ばか」
ウッ……何か変な事言ったカ? このお便リ、ミーナ中佐はどう思うカナ?
「そうねぇ……努めて気付く様にしている、かしら。
部隊の指揮官だから、戦闘の支障にならぬ様、部下のコンディションとかメンタル面での問題には特に……」
ミーナ中佐、ちょっと違うンダナ。恋人の事についてなんだけド。
「あらごめんなさいね。恋人ねえ……結局は同じかしら。極力変化は見逃さない様に気を遣ってるわ」
流石はミーナ中佐。任務でもプライベートでも完璧ダナ。改めて尊敬しちゃうゾ。
「でも気付きにくい変化も有るでしょ? そこは難しいわよね」
ああそれ分かるミーナ中佐! 確かにそうダヨナ〜。
例えば「髪の毛切った」とか言われても1cmとかだと分からない事多いシ……
その時のフォローと言ったら……イヤ、何でもナイ。
「どうしたの、エイラさん、サーニャさん。二人して妙な雰囲気になってるけど」
全っ然大丈夫だからナ! 気のせい、気のせいダ!
「お気になさらず」
「あら……。まあ、さっきのお手紙だけど、もしかしたら相手の人が無頓着だったり、
ちょっと鈍かったりとか色々有るだろうから、
その辺は相手の性格を見極めて、自分の方で柔軟に対応していくのが良いんじゃないかしら」
フォローありがとナ、ミーナ中佐。
確かに、相手の性格によるものだとしたらちょっと難しいと思ウ。
「あとは、そう言うのを言うのが恥ずかしい年頃だったり。言いたくても言えない、みたいな感じかしら?」
なるほド。やっぱりミーナ中佐はスゴいナ、相手への配慮と言葉に重みが有るゾ。
「あ、あら? 貴方達と歳はそんなに変わらないと思うんだけど……ねぇ……ふう」
エ? トシの話はしてないゾ? ミーナ中佐いきなりどうしたンダ?
とととりあえず、ここで「サーニャのうた」ドウゾ〜。
- 463 名前:be together 03/05:2009/11/19(木) 22:32:06 ID:k650J.r6
- さて、一曲聴いて和んだところで次のお便り行くゾ。二通目、ラジオネーム「姉」さん。
なんか直球過ぎるけどまあイイヤ。
『この戦いが終わったら彼女と結婚する予定ですが、彼女の家族と上手くやっていく秘訣を教えて下さい』
ストレート過ぎる質問ダゾ。しかも微妙にフラグ……まあイイヤ。
ミーナ中佐は「姉」さんについて何かアドバイスあるカナ?
「いつも笑顔で、明るく振舞うといいわ。あと相手のご家族を思いやって馴染む事ね」
実に的確なアドバイスなんダナ。
私も同じ意見ダナ〜。やっぱり笑顔で明るくってのは、良いと思うゾ。
「私もそう思います」
サーニャもそう思ウ? そうダ、サーニャのご家族に会った時は私モ頑張るゾ!
「よろしくね」
笑顔がステキだナ〜、サーニャ。絶っ対に私がサーニャとご家族を再会させてあげるゾ。一緒にオラーシャ中を探そウ。
「嬉しい、エイラ」
「サーニャさんのご家族は遠くに疎開されてるそうだけど、きっと大丈夫よ」
ミーナ中佐もそう思ウ? 何か凄い安心感というかそんな気がするゾ。
- 464 名前:be together 04/05:2009/11/19(木) 22:33:12 ID:k650J.r6
- さて最後。ラジオネーム「超音速ウィッチ」さん。
『私には好きな人がいます。
でも、私から一度軽くほっぺにキスをしただけで、その後は何も無いんです! 何も!
彼女は「私はそんな軽い女じゃない!」って言ってるんですけど、
私は好きなんだし、キスくらいしてもいいですねよ?
エイラさん、どうしたらいいんでしょうか?』
これハ……相手と両思いなのかそれとも「超音速ウィッチ」さんの片思いなのかによって答えが違って来るゾ。
片思いだと激しくセクハラになる危険も有るシ……難しいナ。
「難しいと言うか、デリケートな問題ね」
ミーナ中佐もやっぱそう思ウ? ウーム、困ったナア。じゃあ、両方のケースを想定して答えていこウ。
「片思いなら、少しずつ焦らずいけば良いと思う」
サーニャの意見に賛成ダナ。片思いの場合、確かに相手の事考えずに先走り過ぎは良くないカモ。
では次に「相手とは両思い」と仮定して、ズバリ、言わせて貰うゾ。
「超音速ウィッチ」さん、触ればキス出来るゾ!
「えっ!? エイラ、どこを触るの?」
あそこに決まってるダロ? ……あ、あれ、何この空気? サーニャもミーナ中佐も何を想像してるンダ?
「エイラさん……」
ご、誤解してないカ、ふたりしテ?
「違うの?」
まさか私達、考えてる事が違ウ? じゃあどこ触るか「せーの!」で皆で言ってみヨウ。
せーの!
「口!」
「(検閲)!」
手!
……二人揃ってカゲキだナ。多分片方は放送出来ないと思うゾ。
てか二人とモ、口だのアソコだのに触ってどうやってキスするンダヨ?
手だよ手! 手を触れば良いんダヨ! 手を握っていけば自然とキスに行くと思う……んだけどナア。
……ナ、ナンダヨ?
ふたりして私をそんな目で見んナー!
「でもあれよね。それくらいの年頃って言うか、有るかもね。好き過ぎて触れられないってのがあるのよ。
「超音速ウィッチ」さんの相手がどうかは分からないけど、ね」
「ミーナ隊長、綺麗にまとめましたね」
まともな事言ったつもりなのに何だか私が惨めな気分ダゾ……。
- 465 名前:be together 05/05:2009/11/19(木) 22:34:03 ID:k650J.r6
- さて、そろそろ時間になったので、最後にゲストのミーナ中佐から一言頂きまス。
ミーナ中佐、どうゾ〜。
「各地の戦闘は激しさを増す一方だけど、皆さん、決して諦めないで。
いつか必ず希望は来ます。信じて、いつか平和が来るその時まで、頑張って。
あと、たまには息抜きも忘れずにね。このラジオが少しでも皆さんの息抜きになれば良いと思うわ。
エイラさん、サーニャさんも、頑張ってね」
すんごい有り難い励ましなんだナ。嬉しいし、頼もしいゾ、ミーナ中佐。
「あと、美緒は私のですから」
それは蛇足ダ! て言うか最後で台無しダァ〜!
「でも楽しかったです」
「私も楽しかったわ。ありがとう。また呼んでね♪」
こ、考慮しときマス……。
では今夜はこの辺で。
最後に、ゲストのミーナ中佐の「リリー・マルレーン」を聴きながらお別れデス。
end
----
以上です。
ラジオのトーク番組と言えばMC、リスナーのお便り、そしてゲスト!
って訳で早速書いてみました。
ゲストはもっさんでも良かったんだけど……
あの人のキャラだと全部持ってかれそうな気がしたんで
ここはミーナ中佐でひとつ穏やかに。微妙に穏やかではないですが。
穏やかでない理由は保管庫No.0983「radio echo」の中に有りますので
宜しければそちらの方もどうぞ。
ではまた〜。
- 466 名前:名無しさん:2009/11/20(金) 00:15:59 ID:sbnL38co
- おおおゲストだーw GJです!
さすがミーナさん、アドバイスが大人だw
そしてもちろん手を繋がれて上目づかいで見つめられるけどなんにも出来ないエイラさんですねわかります
- 467 名前:名無しさん:2009/11/20(金) 18:49:51 ID:n8pPFGrE
- >>465
さっそく続ききた。GJです。
検閲ワロタ。ゲストがいるとラジオは5割増くらいに面白くなるなぁ。
- 468 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/11/20(金) 23:34:33 ID:693oI4r6
- スレ容量が500KBになったので、ここはあと2,3日でスレストにします。
次スレはこちらです。
ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所4
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