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ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所4

1 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/11/20(金) 23:27:35 ID:693oI4r6
ここはストライクウィッチーズ百合スレ避難所本スレです。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所3
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12483/1241054950/

●Janeで避難所を見る場合
・板一覧を右クリックして「新規カテゴリを追加」をクリック(板一覧が無い場合は「表示」→「板ツリー」→「板全体」で表示できる)
・カテゴリ名を入力してOKをクリックする(例:「したらば」)
・作成したカテゴリにカーソルを合わせて右クリックし、「ここに板を追加」をクリック
・板名を入力してOKをクリックする(例:「百合避難所」)
・URLに「http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12483/」を入力してOKをクリックする。

2 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2009/11/20(金) 23:28:59 ID:693oI4r6
規制について
★改行規制
避難所スレについて、投稿本文の文字制限は4096byte(全て全角文字の場合は2048文字)、
投稿本文の最大行数は100です。

★連投規制
今のところありません。

★スレの容量
管理人が500KB超えに気付いた時点でスレストを掛けます。

3 名前:名無しさん:2009/11/20(金) 23:57:51 ID:c5Cejnew
>>1-2
乙です!

4 名前:名無しさん:2009/11/21(土) 00:10:19 ID:OTwm5kBw
>>1-2
乙です! いつもお世話になってます。

5 名前:親子以上恋人未満?1/2:2009/11/21(土) 10:57:45 ID:HfOMpwBY
お久しぶりです、前スレッドの>>382ことesNTV3r0です
色々なシチュを考えて下さりありがとうございました。
今回、>>388様の『身体を寄せあう』でシャッキーニを書いてみました。楽しんでいただければ幸いです。

今夜は、一段と冷える。
シーツを頭まで被り、さらにはジャージに身を包んでいるのに、あたしはぶるぶると震えながらベッドに横たわっている。
「くうぅ……寒ぃ……」
口に出すとますます寒くなる気がするが、言い出さずにはいられない。さっさと寝てしまえば良いのだけれど、こんな夜に限って目が冴える。
けれど、あたしが眠れない理由は寒さだけではない。
ここ最近あたしは、ルッキーニのことで頭を悩ませているのだった。
あたしはルッキーニのことが好きだ。
いや、もっとはっきりと言おう、あたしはルッキーニの恋人になりたい。
ルッキーニにそんな思いを寄せるようになったのはいつからだろう。初めは、ただ気の合う年下の同僚だったのに。
それなのに、いつの間にかあたしは彼女の艶やかな黒髪とか、綺麗な肌とか、快活な性格とかにどうしようもなく心をかき乱されていたのだ。
だが、この想いは報われないだろう。
女同士、だからじゃない。ウィッチ同士が心を通わせ、そして恋人になることはそんなに珍しいことじゃない。
報われぬ理由はとても単純。あたしのルッキーニに対する好意と、ルッキーニのあたしに対する好意は別のものだから。
ルッキーニにとって、あたしは母親のようなものだ。そうでなくとも友達の域をでないだろう。あたしと恋人になるなんて思っても無い筈だ。あたし自身始めから分かっていたし、それでいいとこうなるまでは思っていた。
いっそ思い切って告白してしまえばいいのだろうが、生憎あたしにそんな勇気はありゃしない。エイラをヘタレだと馬鹿にしていたけれど、いざとなるとアイツの気持ちが良く分かる。
どうしたものか――そんな事を思ってベッドの上で悶々としている間にも閉め切った窓から、ドアから、そこら中から冷気が忍び込んでくる。宮藤の持っていた『ユタンポ』だったか、アレでも借りればよかったなと今更あたしは後悔した。
――とん、とん。
そんな風にしていた時、常に冷気を発しているドアをノックする音が。
一体誰だ? こんな時間に。
「んん〜、今開ける」
シーツを体に巻きつけて、ドアを開けに行く。その向こうに居るのが誰なのかはなんとなく想像がついた。
「ウニャ……シャーリィ……」
深夜の来客者は、やはりルッキーニだった。お気に入りの毛布を抱えて、あたしを見ている姿が最高に愛らしい。
「……ごめん、起こしちゃった?」
心底すまなそうにルッキーニは澄んだ瞳をこちらに向ける。あたしはたったそれだけのことにどきどきしながら、大きく首を横に振った。
「いやいやいや! あたしも寒さで眠れなくってさ……それより何でここに?」
実際はルッキーニの事で悩んでいたからだけど、勿論それは秘密にしておく。寒さと言うのも嘘と言う訳ではないし。
「秘密基地で寝てたんだけど……外、すっごく寒くて……眠れないの……」
確かにこの寒さの中、外で眠るなんて出来る訳がない。基地に戻って来たのは当然だろうな。あたしはルッキーニの話を聞きながら頷いた。
「だからね、シャーリー……一緒に寝よ? そしたら二人ともあったかいし、きっとよく眠れるよ」
「え?」
なんて、言った? 一緒に寝る? 彼女に他意はない、ある訳がない。本当に一緒に寝るだけだと分かっていても。あたしはその言葉だけでくらくらした。
「ウジュ〜……ダメ?」
「そんな訳……ッ」
心臓が激しくビートを刻む。体中がカッカと熱い。一足先にあったかくなってきた。
「そうだな! そいつは素敵で、いい考えじゃないかッ!」
声が妙に上ずっている。動揺しすぎだぞ、あたし。
「うん。じゃあ寝よ? シャーリー」
そう言ってルッキーニはベッドへ歩いていって、ころりと横になった。あたしもそれに続き、再びベッドに身を横たえる。
すると、すかさずルッキーニはこちらにその小さな体を寄せてきて、そのままあたしの胸に顔をうずめてきた。
「えへへ……ぱふぱふ〜」
ああ、もうこのまま死んでも悔いは無い。全身の血が沸騰しそう。
「シャーリーの体あったか〜い……」
「ルッキーニも、な」
あたしはさりげなくルッキーニの身体に腕をまわす。その抱き心地のよさにあたしはうっとりした。

6 名前:親子以上恋人未満?2/2:2009/11/21(土) 10:58:27 ID:HfOMpwBY
「どうだ? 眠れそうか?」
「うん、もう寒くないもん! ところでさ、シャーリー。マーマがこんなこと言ってたの、『同じベッドで寝るのは恋人か親子だけ』……なんだって」
「へぇ、それで?」 
「あたし達は……どっちなのかな?」
その問にあたしは背後から襲われたような気になった。それはまさしくあたし達の関係の核心をつく問いかけではないか。
「……ルッキーニは、どう思ってるんだ?」
あたしの選択は、選択を避けるという卑怯なものだった。
答えることも怖かったし、なによりもまずはルッキーニを気持ちを知りたい。これは、腕の中の愛しい人があたしの事をどう思っているのかを知る絶好の好機だ。
「あたしね、シャーリーのこと、マーマみたいに思ってるよ」
……終った。
失恋とは、あっけない、ものだな。
胸に形容しがたい痛みが。
見えないナイフでさされてしまったかのよう。
「そうか、そうなの……か」
短く、それだけを言った。落胆を気取られないように。零れてきそうな涙が零れないように。
「でもシャーリーはマーマみたいだけど、マーマじゃないの」
あたしは無言だった。なにか言おうとしたら、泣いてしまう気がする。。
「マーマと違って、一緒に居たら胸がどきどきして……それからすごく苦しくて、切なくなるの……」
それは……都合良く解釈していいのか? ルッキーニ?
「だからさ、うまくいえないけどシャーリーはあたしのトクベツな人なんだ。恋人か親子かは、よくわかんない。だからシャーリーに聞いてみたかったの」
「マーマじゃ、ないんだな……」
「ないよ、
どうやら可能性はまだあるらしい。
いや、そもそも、あたしのソレは始めから可能性がどうだとかいう問題じゃない。
ソレは音速を目指すことと同じ。たとえ可能性がほんのごく僅かなものでも、臆する事なく挑戦しなくてはならないんだ。
もう、眠れなくなるまで悩むのは、やめよう。そんなのあたしらしくない。
腹をくくれシャーロット・E・イェーガー。やると決めたなら、今、やるんだ。
「……ルッキーニ。聞いてほしいことがあるんだ」
長い長い沈黙の後、あたしはゆっくりと言葉を出していく。体が緊張に震え、汗が額に浮く。
「あたしもさ、ルッキーニの考えると胸がどきどきしたしたりさ、苦しくなったりするんだ」
ルッキーニは返事をせず黙っている。
「それは、きっと。少なくともあたしは、その理由がルッキーニが好きだからなんだって、思うんだ」
言ったぞ。
少々もたついたが、ついに言った!
あとはルッキーニの返事を待つばかりである。
「ルッキーニ?」
おかしいな、返事がない。
「返事は……?」
言いながら視線を落としていくと、そこには既に穏やかな彼女の寝顔があった。
「そりゃないぜ……ルッキーニ」
全力で空振ってしまった……原因は告白までに間をとりすぎてしまったことか。起こしてまで、言い直す気力はもう無い。
「まぁ、いいかぁ」
返事を聞き損ねたことにあたしはずっこけながらも、ちょっぴり安心してため息をつく。
今夜はもう充分よくやった。勇気が続くなら、明日であっても出来る筈。
そうしてあたしは愛しい人が凍えないよう、今までよりほんの少しだけ強く抱きしめて目を閉じたのであった。
≪了≫

以上です。
もう少し明るい感じでも良かったかもしれませんね……。
もっと良い作品が書けるよう頑張りたいです。
お付き合いいただきありがとうございました。

7 名前:名無しさん:2009/11/21(土) 15:18:34 ID:KkYoBt/E
>>6
早速の投下GJ!
悶々とするシャーリーイイヨイイヨー
雰囲気と描写で楽しませて貰いました。
続きがあればぜひ!

8 名前:名無しさん:2009/11/21(土) 19:11:50 ID:70kY8D9c
>>6
GJです
シャーリーの悶々をよそにすぐ寝ちゃうルッキーニのお子様ぶりが和んだ。

9 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2009/11/22(日) 01:46:01 ID:N/rGH4pA
ども、ご無沙汰しておりました。

一本馬鹿っぽいの書いたので投下ー。
いつもと違って行間がたくさん+台詞ばっかりで、テンポ悪いと感じなければ
だいぶ読みやすいと思います。テンポ悪いと感じたらごめんなさい。

[軍人らしく。] オールキャラ
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/like_the_army.txt

ああ、なんかバリバリのバトルアクション系が書きたいです。
がそんな技量もネタもありません。

ネタがあればためしにでも書いてみるんですが、あいにく暖めてるネタは
SSにするにはちょっと難ありなのばっかりでして……うーむ。
といいつつ、ここで投下する用のSSが三〜四本以上書き途中で止まってる件について……

>>6
ぐっじょぶですの!
個人的にシャッキーニは特にときめかないんですが、でもこう、
読んでてほんわかしました。こういうのもありかなー、と。
寝る前にいいもん読ませてもらいましたー。

10 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2009/11/22(日) 01:46:35 ID:N/rGH4pA
ぶっ、長すぎて省略されちった

ごめんなさい……

11 名前:名無しさん:2009/11/22(日) 09:59:24 ID:9N.KNUUM
無事非難
なんだ荒らしでもいたのか?

12 名前:名無しさん:2009/11/22(日) 10:26:23 ID:kvH48qvo
>>10
GJ!
エーリカそういう意味だったのね。カワユス

バトルアクションは臆せず書いてみれば良いと思うよ!
最初は誰でも慣れないのは当たり前。
あのエーリカだって最初の出撃はボロボロだった……と言ってみる。
期待してます。

13 名前:名無しさん:2009/11/22(日) 18:46:12 ID:a478nIn.
なんかひさびさにラッシュっぽいw
流れにのってアメリーヌ3レスほどいきます。


 少しずつ遠ざかっていく。
 ペリーヌさんが501に転属されて少しして、わたしも新しい転属先が決まった。
 もちろん同じ501になんてことはなく、行き先はアフリカだった。
 手紙が届くのにいったいどれくらい日数がかかるのだろう……?
 最初に頭にやってきたのはそんな疑問だった。
 アフリカ――あの人と同じブリタニアでも、祖国ガリアでもない、縁もゆかりもない土地。
 わたしにはそれこそ地の果てにさえ思えた。
 どうしてアフリカなんだろう?
 これが今のままであれば、たとえ部隊は違っていても、ペリーヌさんと同じブリタニアの空で、
 一緒に戦っているんだと思うことができた。
 それはただの気分、気の持ちようでしかないけれど。
 でもそう思うことでやっと、頼りない平静をわたしはたもつことができるのだった。
 本当だったらアフリカへなんて行きたくなかった。
 けれど行きたくないなんて、そんなのただのわがままでしかない。
 もちろん一度くだされた命が覆るなんてあるはずもなく、わたしは黙ってそれに従うしかない。

 ペリーヌさんに手紙出そうかなと思ったけれど、できなかった。
 アフリカからちゃんと届くかも心もとなくて、だったら今のうちに書いておこうと思ったのに。
 何度も書こうとしたけれど、なんて書いていいのかわからなかった。
 ようやくいざ書き出してみると、今度はペンが止まらなくなってしまう。
 吐き出すように文字をつづった。便箋に何枚も。
 心細いです。本当はいきたくなんてありません。ペリーヌさんに会いたいです――
 不安で不安で、身が引き裂かれてしまいそうで、それを全部ぶちまけるかのように。
 そんなのはただの泣き言、甘えだ。
 こんな手紙、あの人になんて見せられるはずがない。
 会いたいですなんて言って、ペリーヌさんを困らせるだけだ。
 たとえ会ったとしても、だからどうだというんだろう。なにが変わるわけでないのに。
 じゃあどうして、わたしは会いたいなんて思ってしまったんだろう?
 どんな顔したらいいかなんてわからなのに、じゃあわたしはなにを期待しているのだろう。
 ペリーヌさんに会ってしまったら、わたしはまた泣いてしまう。だだをこねてしまうかもしれない。
 そしてペリーヌさんはさらに困った顔をして、呆れて、わたしのことを嫌ってしまう。
 ぞっとするほど怖かった。
 いや、もっと怖いのは、はたして本当に会ってくれるかだった。
 別にわたしとあの人はそんな気安い間柄でもない。
 憧憬、思慕。それは一方通行の想い。
 それを自覚すると胸がざわめきたってくる。この感じ、わたしの苦手なあれに似ている。
 そのたびにわたしは心の宝石箱からあの言葉を取り出してくる。

『アメリー、あなたは足手まといなんかじゃないわ』

 とても穏やかな、やさしい声だった。
 かつて501へ行ってしまうペリーヌさんが、わたしにかけてくれた言葉。

『頑張っているじゃない』

 ほんのちょっとだけど、ペリーヌさんに認めてもらえた。
 飛び上がって天に昇れるほど、とってもとってもとってもとっても嬉しかった。
 これはわたしにとって生涯の宝物だ。
 ちゃんと頑張っていれば、わたしとあの人はたしかにつながっていると思えるから。
 けれど、こうも思う。
 頑張って、頑張って、じゃあその先にいったいなにがあるというのだろう?
 どんなに追いかけても、懸命にジャンプしても、けして届かないものがあることをわたしは知っている。
 大きくって、まぶしくって、そう――まるで太陽みたい。
 あんなに大きく見えるのに、じゃあどうしてわたしの手には届かないのだろう?
 いつか聞いたことのある、鳥の翼を蝋で背中にくっつけて飛んだ男の話を思い出す。
 言いつけを守らず高く飛んだがために、太陽の熱で蝋が溶かされ、翼はもがれて海へと墜ちていく。

14 名前:名無しさん:2009/11/22(日) 18:47:46 ID:a478nIn.
 また、心のどこかがざわざわする。時折それが声になってささやいてくる。
 あの人はわたしのこと、忘れたりしてないだろうか――
 それはわたしにとって何度目となる死刑宣告だ。
 思えばいつもそうだった。
 家族も、祖国も、本当ならわたしにあったはずのものは、わたしの前から消えていく。
 残されるのはただひとりぼっちのわたしだけ。
 声を枯らして泣き叫んでも、それが届くことはない。

 考えこんでいると急速に目頭が熱くなってきて、大粒の涙をわたしはこぼした。
 書きかけの便箋を濡らしてしまい、あわてて拭おうとしたせいでインクの瓶をこぼしてしまった。
 なにやってるんだろう。こんなみっともない手紙、ペリーヌさんに見せられるはずがない。
 どうしてわたしっていつもこうなんだ。
 ぐずで、のろまで、意気地無しで、どうしようもなく泣き虫。

 身仕度や送別のパーティーで、逃げるように日は過ぎていった。
 騒々しいのは嫌いじゃない。余計なことを考えなくて済むのはありがたかったから。
 手紙は結局、なくしてしまって出せなかった。
 捨てる手間が省けたと思えば、それでよかったのかもしれない。

 そして出発の当日。
 部隊のみんなが見送りに来てくれた。皮肉なことに天気はいい。
 元気で。またな。しっかりやれよ。
 仲間たちから口々に言葉をかけられる。
 わたしはせいいっぱいおじぎをしてそれに答えた。
 今までありがとうございました。いってきます。さようなら。
 じんわりと涙が浮かんでくる。やがて声を出してわたしは泣き出した。
 からかわれたり意地悪を言われることもあるけれど、みんなのことが好きだった。
 おいおい、涙はちゃんと取っておけよ。中隊長は言った。

 出港を告げる汽笛が鳴った。
 まだいいんじゃないかと引き止められたけど、わたしは断った。別れがつらくなるから。
 振り返ることはなかった。名残惜しむようにわたしは船へと歩みを進めていって。
 声が、した。

「アメリー!!」

 叫び声。わたしの名前を呼んでいる。
 振り返らずとも誰だかわかった。
 間違えるなんてあるはずがない。あなたを思わない日はなかったから。
「ペ……クロステルマン少尉!」
 自分の目を疑った。夢でも見てるのかと思った。
 一番会いたい人。その人がこっちに、わたしの元へと走ってくる。
 ペリーヌさんは肩で息をして、
「今は中尉ですわ。それに――言ったでしょう、ペリーヌって呼んでって」
「わっ忘れてなんていません! その……ペリーヌさん。えっとえっとえっと……」
 ごめんなさい。違う。
 会いたかったです。そういうことじゃなくて。
 どうしてあなたが――
「ノーブレス・オブリージュですわ。こんなもの送られてきたんじゃ、来ないわけにはいかないでしょ」
 そう言ってペリーヌさんはそれを掲げてみせた。
 わたしの書いた、でも出せなかった手紙。
 部屋の整理でなくしたと思ってたのに、じゃあどうして今、ペリーヌさんの手にそれがあるんだろう。
 中隊長や他のみんながペリーヌさんの後ろでニヤリと笑ったのが見えた。
 涙はちゃんと取っておけよ。中隊長の言葉を思い出した。
 わたしは悟った。この人たちときたら、最後の最後になんてことしてくれたんだろう。
 見られたくなんてなかったのに。
 情けない。恥ずかしい。穴があったら入りたい。
 いたたまれなくて、こんなところにずっといたらわたし、死んでしまいそうになる。
「あの……」
 声が震えてうまく出てくれない。
 あふれそうなほど言いたいことがあったはずなのに、わたしはすっかり言葉をなくしてしまっていた。
 ペリーヌさんはそんなわたしを見かねて、眉を下げる。
 こんな顔をさせたかったんじゃないのに。
 ――じゃあどうして、会いたいなんて思ったんだろう。
 わたし、ひき止めて欲しかったの?
「あなた、少し背が伸びたんじゃなくて」
 間を持て余したペリーヌさんは言った。
「そ、そうでしょうか――ペリーヌさんはお変わりないようでなによりです」
「どういう意味かしらね」
 と、ペリーヌさんは苦い顔をして笑った。
 それにつられてわたしも笑った。みんなも笑った。

15 名前:名無しさん:2009/11/22(日) 18:49:04 ID:a478nIn.
「あのう。前にペリーヌさんが501に行った時のこと覚えてますか」
「ええ」
「その時、わたしに言ってくれたことは」
「ちゃんと覚えてましてよ」
「足手まといじゃないって、頑張ってるって……本当にそう思いますか?」
「ええ。だから頑張ってらっしゃい」
 重たい雲の向こうから光が差した気がした。
 その言葉だけで、わたしの心にたちまち雨は止んでしまった。
 わたしってばどこまで単純なんだろう。なんだって頑張れそうな気がしてしまう。
 ようやくわかった。どうしてペリーヌさんに会いたいって思ったのか。
 引き止めて欲しかったのではない。わたしはずっと背中を押して欲しかったんだ。
 言って欲しかった言葉は“いくな”じゃない。
 そうじゃなくて“いってらっしゃい”だ。

 汽笛がまた鳴った。
「あの……ペリーヌさん。最後にひとつだけ、お願いしてもいいですか……?」
「なにかしら?」
「ぎゅって……してもらってもいいですか?」
 ひゅーひゅーとみんなが囃し立ててきた。
 ペリーヌさんは一度大きくため息をつくと、
「しょうがありませんわね」
 やれやれと両手を広げてくれた。
 わたしは沈みこませるようにそっと、その人に身をあずけた。
 ああ、やっぱり。思った通りだ。
 あったかくて、やわらかくて、いい匂いがする。
 ひだまりみたい――

 あなたはいつだってわたしの目にまぶしい。
 ならばわたしはひまわりであろう。
 向き合うように見上げて咲くひまわりに。
 それがどんな場所であろうと、まっすぐ背伸びして、あなたの光を全身に浴びる。



以上です。
アメリー誕生日おめでとう!誕生日関係ないけど。
タイトルは「ひまわり」です。OsqVefuYでした。

16 名前:名無しさん:2009/11/22(日) 22:08:51 ID:N/rGH4pA
>>15
GJ!
心がとってもあったまりました。
アメリーヌはどれをとってもほかほかしますね。

>>12
まあ、一応過去には書いてるんですが……こう、自分だけ
盛り上がってるような気がして第三者が読んで面白いのかなぁと
疑問に思うことしきり。
でも今日ネタが降ってきたのでぼちぼち書いてみようと思いますb

17 名前:教えて、貴女と扶桑遊戯 1/3:2009/11/23(月) 01:35:20 ID:f/h0ThzE
「あれ、皆さん何をやっているんです?」
「あ、芳佳ちゃん」
「宮藤か。ちょうどいい所に来てくれた」
「どうしたんですか、バルクホルンさん」
「これなんだが……」
「これって……コマ、ですよね?」
「ほら、トゥルーデ! 私の方が正しかった!」
「ぬ、むぅ……」
「あの、リーネちゃん?」
「あ、えっとね。これ、扶桑からの支援物資の中に紛れ込んでたらしいの。それで、坂本少佐に詳しいお話を聞こうと思ったんだけど」
「そういえば坂本さん、今日は街の方へ行くって」
「うん、それで今皆で話てたの」
「そうなんだ」
「そうか! 宮藤、このコマと言うものには何か別に呼び名があるんじゃないか?」
「え? 別の呼び方、ですか?」
「カールスラントの堅物は諦めも悪いなぁ」
「ぐ…だ、だが、そう言うリベリアンこそ間違ってただろうが!」
「さてね? まだ宮藤から答えは聞いてないし」
「む。…それで、どうなんだ宮藤」
「あ、いえ……とくになかったと思います」
「あ、あれ? オダイ・カーンってコレの事じゃないのか?」
「ヨイーデ・ワナイカも違うのか?」
「…………」
「あ、あの、芳佳ちゃんが絶句してます」
「……どっちも…違うみたいだなリベリアン」
「みたい…だね。あ、あはは……」
「ほら、シャーリー見て見て!マキビーシ!」
「ちょ、ル、ルッキーニちゃん! それはおはじき! 使い方違うよ!」
「ハジキ!?」
「どうしてペリーヌさんが反応したんですか!?」
「あ、あら? ハジキは扶桑の炸裂弾か何かではなかったかしら…?」
「いえ、初耳です。……これは、おはじき、といって机上で遊ぶ…そうですね、ビリヤード……みたいなモノ、です」
「ルッキーニ、まだこれあるの?」
「宮藤、こっちのオダイ…じゃなかった、コマはどうやって遊ぶんだ?」
「シャーリーさんも、結構負けず嫌いですよね」
「あはは……あー、宮藤も言うようになったなぁ」
「あはは、すみません……あ、えっと、これはですね……あの、ヒモが一緒にありませんでしたか?」
「これか?」
「ありがとうございます、バルクホルンさん。ここにヒモの端をこうやって……」
「へぇ……」
「ほぅ……」
「ぐるぐるぐるりん…っと、これで準備完了です」
「それをどうするんだ?」
「えっと……あ、ちょうどいいものが」
「……鍋の蓋?」

18 名前:教えて、貴女と扶桑遊戯 2/3:2009/11/23(月) 01:36:09 ID:f/h0ThzE
「この前取っ手が壊れちゃったんですよ。これを裏返して下にタオル敷いて……っと。では、行きますよ……えぃやっ」
「うおおっ!!」
「なんとっ!!」
「こうやって遊ぶ物です。ちなみに複数人で遊ぶ場合は、同時に投げ入れて先に止まったり外に出たら負けです」
「なかなか面白そうだな!」
「ふむ、投げ入れる力加減も必要みたいだな」
「また、何か難しく考えるー。堅物はやらないのかい?」
「あ、待て!誰もやらないなんて言ってない!」
「ウニャー!!?」
「ルッキーニちゃん?」
「ふふん、これで私の三連勝ですわね」
「い、意外と強いね、ペリーヌ」
「うー、もう一回!今度は私が赤色のおはじきでやるっ!」
「はいはい。ハルトマン中尉は、どうなさいます?」
「ん? 私はリーネと交代するよん。では、リネット軍曹、奮戦に期待する。なんちゃって。……あ、トゥルーデ、負けてやんの〜」
「リーネちゃん、おはじきのやり方は見てた?」
「えと、こうやって指で弾くように……だったよね?」
「ああ、ほら。ルッキーニさんは少し力を入れ過ぎなのです。少しだけ肩の力を抜いてみなさいな」
「む? ん〜……えいやっ……やたっ!」
「ふふ、お上手ですわ」
「………えい」
「ウジュ!?」
「な!?」
「……うわぁ、リーネちゃん。なんて正確な狙撃を……」
「くぅ、ま、まだ負けた訳ではありませんわよ!?」
「先手必勝〜っ……あ」
「ですから、ルッキーニさんは力の入れ過ぎです」
「くすくす」
「ふふ……あれ、どうしたんですか、ハルトマンさん」
「ミヤフジ。これって」
「これはけん玉ですね」
「いや、えっと……ああやって遊ぶ物なの?」
「はい?」
………カチ……カチャ………トスッ
「サーニャがさっきから黙々とやってるんだけど……」
「す、凄い。普通は、この木の部分を持って玉を乗せる遊び、なんですけど……」
「玉の方を持って出来るもんなんだ……いや、また器用だね、サーニャは。……それに比べて」
「はい?」
「……エイラさぁ」
「……え、エイラ…さん…?」
「ん? なんだヨ。二人とも」
「……エイラ、さっきからずっとソレばっかり」
「う……ご、ゴメン、サーニャ。……ちょっと懐かしくてサ」
「あれ、エイラさん。それ、遊んだ事あるんですか?」
「ああ。ちょっと、ナ。スオムスのとある中隊に扶桑の奴がいて……まぁ、色々あって、貸して貰ってた事があるんダ」
「ふーん、それ面白いの?」

19 名前:教えて、貴女と扶桑遊戯 3/3:2009/11/23(月) 01:37:26 ID:f/h0ThzE
「別に面白い事なんてねーヨ。一人でもくもくとサイコロふってコマ進めるだけなんだゾ?」
「……あの、まさか……その時もお一人で遊んでたんですか?」
「……は? 遊びってなんの事だヨ」
「……え?」
「エイラさぁ、いや私も詳しくは知らないけど、使い方違うんじゃない?」
「………エ゛?」
「ぐすっ……エ、エイラさん…ずっと…お一人で……ッ」
「……あー、エイラ……その、ごめん」
「エイラ……、エイラは一人じゃないよ。今は、皆がいるからっ!」
「ちょ、な!? ま、待テ! ちが、なんかサーニャもお前らも何か勘違いしてるゾ!!」
「エイラ……」
「エイラさん……」
「……まったく、水臭いですわ」
「エイラぁ……元気だせ?」
「………ルッキーニの言う通りだ、エイラ」
「な!? そ、そんな目で私を見んなァー!!!!!!!」
 

 
「まったく、美緒は……」
「はっはっはっ。まぁ少しくらいいいだろ?」
「買い物に付き合えだなんて言い出したかと思ったら、ボードゲームのコマに使えそうな小物探しだなんて。本当にいきなりなんだから」
「いや、な。ほら、たまには隊全員で遊びに興じるのも一興……ん?」
「あら、なんだか騒がしいわね? どうかしたのかしら」
「ふむ……とりあえず行ってみるか」
『そ、そんな目で私を見んなァー!!!!!!!』
「おい、一体どうし…………いや、どうしたんだ、この状況は?」
「トゥルーデ? フラウまで、貴女たちどうして涙ぐんでいるの!?」
「み、ミーナ…少佐ッ…う、くぅっ……」
「ミーナお願い! 何も聞かずに皆で遊んで!!」
「坂本さん! エイラ…さん…ぐす、…ずっと…一人で……ふぇ……」
「……なんなんだ、一体」
「……まぁ、美緒の予定通り、なのかしら?」
「と、とりあえずだ。ミーナと全員分のコマを買ってきたから、な?」
「ああ、もう!! あンの、味方落としのエロ狸ー!!!!!!!!!」
 
みっちゃん、ブリタニアでは今日もそんな一日を送ってます。
隊の皆で、泣いたり、怒ったり、笑ったりの毎日。
扶桑に戻ったら、お土産話がたくさんあるんだ。
だから――
 
「……こうなったら、一人延々と部屋に篭って研究し尽くしたあの日々にかけて!! 絶対に勝ってやんだかんナぁああああ!!!」
 
ボードゲームは皆で遊ぼうね。
 
 
 
おわーり

20 名前:名無しさん:2009/11/23(月) 01:41:00 ID:f/h0ThzE
久方ぶりのラッシュと聞いて参戦させてもらいm…ごめんなさい、調子にのりました。
 
読む前ですが、新作SSGJ!と読ませて頂きます。
 
以上CRwGA7CAでした。

21 名前:名無しさん:2009/11/23(月) 02:28:36 ID:02fxxcXs
>>19
GJすぐるwww
ヨイーデ・ワナイカつぼったwwww
というか双六ぐらい付き合ってやれよハルカwwww

22 名前:名無しさん:2009/11/23(月) 22:11:32 ID:sM5Ok6h6
GJdesu

23 名前:名無しさん:2009/11/23(月) 22:15:41 ID:UbKc2Scc
>>15
GJ! ほのぼのしてて良いですな〜
アメリーヌイイヨイイヨー

>>19
GJ! ハルカヒドスw
色々な意味で和んだw

24 名前:名無しさん:2009/11/24(火) 11:14:24 ID:/ZZYxT2.
職人の皆様GJ! 早速拝見してニヤニヤさせて頂いております。
久々の新作ラッシュ、ステキですわ。

>>16さん
具体的に戦闘の描写が……と言うなら、
例えば「いらん子」シリーズを参考にしてみるとか
もしくはたくさん出ている(実際の)空戦記を読んでみるとか、如何でしょう。
ともかく、書かないよりも書いていった方が慣れてうまくなると思うし
何よりもSSが増えて読む方としては嬉しいです!
いや、こんなエラソウナ事言えた身分じゃないんですけども。失礼しました。

25 名前:名無しさん:2009/11/26(木) 22:40:50 ID:TDeZnLac
ところでDSは

26 名前:名無しさん:2009/11/26(木) 23:39:48 ID:0qMi2oJk
こんばんは。LWqeWTRGです。
DS版出ましたねー。エイラーニャがあるといいなぁ。
さて、久しぶりに投下させてもらおうと思います。
エイラーニャで2レスです。


「あの、えっと……、さ、さーにゃ…?」

「……」
「ぇう……」
「……すぅ…」

どうしよう……。動けない……。
今朝もサーニャが私の部屋に来ることはわかってた。わかってたけどさぁ……。
なにも抱きつかなくてもいいだろー?
……いや、それくらいならまだなんとかなった。
問題なのは……!

「むにゃ、ぇいら……」


ほんの数cm先にサーニャの顔があることだ……!



………はっ!
だめだ見とれてる場合じゃない…!
つか頭をがっちりホールドは反則だろ! ムリダナ! 耐えられないって!
ネコペンギンのやつ、いつもこんなことされてたのかよ……。
くそぅ、うらやましぃ……。

ってそんなこと言ってる場合じゃなかった…。
このままだといつか……しちゃったり…。
くうぅぅ……。

動けない…。
いや、動きたくない…。
けど死にそう。


あああどうすればいいんだぁぁ!

27 名前:名無しさん:2009/11/26(木) 23:41:20 ID:0qMi2oJk
いや、ちょっと待てよ……。
これはもしかしたらチャンスなのかもしれない。
チャンスというか、試練なのかも。ヘタレ脱却の。
ここでサーニャをぎゅっと抱きしめられるか。
それとも恥ずかしがってじたばたするだけか。
そこが問題なのではなかろうかー!

ようし、やるぞー! 私はやるんだ!
待ってろサーニャ、今抱きしめてやるかんなー!

そーっと、そーっと……。
ぎゅ……。

「んぅ……」
「うわぁ!」

か、カウンターとはなかなかやるじゃないかサーニャ……。
危うくぶつかるとこだったぞ……。く、くち……が。
………。

だああもう! 逃げちゃダメだってのにぃ…。
もう1回だ!

そーっと……。
ぎゅ……。


……。

……できた?
や、やったぞサーニャ! 私できたんだ!

「そうね、おめでとう」
「ありがとうサーニャ! ……へ?」
「ちゅ……」

!?

「これからは逃げちゃいやよ…」
「え!? ちょ、サーニャいつから起きて…」
「ずぅっと」
「寝たふり!?」
「エイラ、かわいかった」
「ぅええ!?」
「うふふ。おやすみ、エイラ…」
「な、え? サーニャ!」

く、くぅぅ……。
今日だけだかんなー!!


END

28 名前:名無しさん:2009/11/26(木) 23:42:47 ID:0qMi2oJk
以上です。
もとからあまり書けてたほうじゃないですが、久しぶりすぎてもっと……。
改めてエースの凄さを知りました……。

タイトルは「ヘタレの試練…?」です。
抱きつき癖…とか……。

それでは、失礼します。

29 名前:名無しさん:2009/11/27(金) 00:27:38 ID:ZIWqQa3Y
>>28
GJ!
エイラのアレっぷりとサーニャの一枚上手なとこが良いですね。
読んでニヤニヤしっぱなしです、ご馳走様でした。

30 名前:名無しさん:2009/11/27(金) 21:04:53 ID:xst1UUBk
おまけのドラマCD面白いなぁ。配役が一部(ryけどw
学園ものは夢がひろがリングだね。
それはそうと学園ウィッチーズの続きはマダー?

31 名前:名無しさん:2009/11/27(金) 21:54:13 ID:QlJErC8A
皆さんはDSのゲーム何処まで進んでますかね?
第1話やった限りでは……なかなか?

32 名前:名無しさん:2009/11/27(金) 22:20:05 ID:xst1UUBk
1周目クリアしたよノシ
ジュンジュン×芳佳、ありだと思います

33 名前:名無しさん:2009/11/28(土) 02:00:28 ID:ajAVkF7Q
やっぱり扶桑の魔女は全員タラシ属性があるわ・・・

34 名前:名無しさん:2009/11/28(土) 12:10:56 ID:gAoju60.
フミカネHPに新キャラキター

35 名前:名無しさん:2009/11/28(土) 16:05:39 ID:ffAuMVBU
ルッキーニちゃんに一気に3人もお姉さん出来ちゃったのか
とりあえずルチアナさんからはR.O.Dのマー姉的なものを感じた

36 名前:名無しさん:2009/11/29(日) 21:43:43 ID:y1lWXbyU
フェルナンディア・マルヴェッツィ
>カールスラント急降下爆撃隊のもとで戦術を学んだのち

ルチアナ・マッツェイ
>フェルナンディアに、強引に戦闘部隊に勧誘され、断り切れず

マルチナ・クレスピ
>フェルナンディアとはケンカ友達のような関係。ルチアナになつく。

40年にはルーデルは第二急降下爆撃航空団司令になってるから
多分フェルナンディアはルーデルとも面識あるよな。

俺は今マルチナ→ルチアナ→フェルナンディア→ルーデルという壮大な一方通行を見た。

37 名前:名無しさん:2009/11/30(月) 00:12:02 ID:T5O2IfgE
>>36
さあ早速SS書きの作業に戻……と言いたいところだが
DSをやっているので手が回らない。

しかし一気に3人かー。何か色々想像し甲斐があって
これだけでもよし、他と絡ませても良し、面白い、実に面白い。

38 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/01(火) 23:15:12 ID:BFlt4CKI
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
先日発売されたDS版ウィッチーズをやっていたら突然電波が降ってきたので一本。。

DS版の第3話位の進行度での出来事? を想定してます。
ちなみに、内容事態はゲームやってなくても全然大丈夫です。
ではどうぞ。

39 名前:call me:2009/12/01(火) 23:19:36 ID:BFlt4CKI
 醇子がやって来てからの501は色々な意味で賑やかだ。
「ホント、扶桑の魔女って……」
「どうしたミーナ、何か問題でも有ったか?」
「いえ。……と言うか貴方に聞くだけ野暮ね、美緒」
「?? 何の事だ?」

「ねーねージュンジュン、あそぼーよ!」
「え、でもこれからやる事有るし……」
「そんなの後でいいじゃん! ねえシャーリー?」
「おいおい、あんまり竹井大尉を困らせるんじゃないぞ」
「えーでもー」
 食堂での夕食後、賑やかに団らんする一同。醇子もすっかり501に馴染み、「研修生」とは思えぬ感じである。
 そんなかしましい一同を見て、微笑む芳佳。
「竹井さん、人気ですね〜」
 芳佳が目をやる先では、シャーリーとルッキーニに遊ばれる醇子の姿が有った。
「ねージュンジュン、あそぼー」
 母親におねだりする子供みたいに絡みついていたルッキーニが、ふと芳佳の視線に気付いた。
「芳佳ぁ? どーかしたの?」
「え? ううん、何でもないよ。楽しそうだなって」
「芳佳もあたし達と一緒に遊ぶ?」
「ゴメン、後でね。私、これから厨房で片付けしないと」
「ふーん、つまんないのー。ねージュンジュン、芳佳つまんなーい」
 ルッキーニはまた醇子に絡み付いた。無碍に出来ず苦笑いする醇子、それを見てニヤニヤするシャーリー。
 芳佳は席を立ち、厨房に向かった。食事の後片付けの為だ。

「ねえ、芳佳ちゃん」
「え? リーネちゃん、どうかした?」
 厨房で二人並んで食器洗いをする。それまでずっと無言だったリーネが突然、芳佳の方を向いた。
 芳佳はリーネの素振りには気付かず、目の前の食器洗いに専念していた。
「あ、そこのお皿取ってくれる? ……リーネちゃん?」
「芳佳ちゃん」
「お皿……」
「お皿なんて良いの、芳佳ちゃん」
「えっ」
 リーネは洗剤で泡だらけになっている芳佳の手を取った。芳佳はびっくりしてリーネを見た。
「リーネちゃん、どうしたの、突然」
「芳佳ちゃん。私は、ルッキーニちゃんとは違うよ?」
「え? いきなり何の事?」
「私が芳佳ちゃんをどうして『芳佳ちゃん』て呼ぶか、分かる?」
「どうしてって……友達、だから?」
「わかってない」
 リーネは芳佳を厨房の奥に引き込むと、ぎゅっと抱きしめた。
 何も出来ず、言葉も出せない芳佳。
「私は、ルッキーニちゃんみたいに『呼びやすいから』とか、そう言う単純な理由じゃないの」
「リーネちゃん」
「私の、一番大事な人だから。分かる? 芳佳ちゃん」
「リーネちゃん」
「芳佳ちゃんも、私を呼んでくれる理由がそうだったら、嬉しい」
「も、勿論だよ、リーネちゃん」
「ホント? 嬉しい」
 誰にも見えない厨房の奥で、リーネは芳佳を抱きしめたまま、ぎゅっときつく濃いキスをした。
 熱い吐息が漏れる。頬が紅に染まり、二人は何度もお互いの感触を確かめた。
「リーネ、ちゃん」
「芳佳ちゃん」
 ぼおっとした顔でリーネを見る芳佳。リーネの瞳は潤んでいる。
「ごめんね芳佳ちゃん」
「私こそ、なんか、ゴメン。分かって無くて」
「良いの。私、なんか重いかな?」
「そんな事、無い、と思う。私の大好きなリーネちゃんだから」
「嬉しい。……芳佳ちゃん」
 リーネに絡み付かれ、唇を塞がれ、数え切れない位に口吻を重ね……
 やがて誰も居なくなった食堂の横、厨房の奥で、ふたりだけの逢瀬が繰り返される。

end

40 名前:名無しさん:2009/12/01(火) 23:20:54 ID:BFlt4CKI
以上です。

……なんて電波だ/(^o^)\

ジュンジュンはいい人だと思います。ええ。
実はまだ全然ゲーム進んでないんですけどもw

ではまた〜。

41 名前:名無しさん:2009/12/02(水) 17:10:48 ID:euZjfe1A
GJ! 最高の芳リーネ分補給させてもらいました。さすがです。

ゲーム買ってないけど、このスレ見てたらやってみたくなってきた……。
シュミレーション苦手な人でも楽しめますか?

42 名前:名無しさん:2009/12/02(水) 21:23:27 ID:/of16bn.
>>40
これは良い芳リネGJ!

>>41
俺もほとんどゲームしないけど楽しめてるから大丈夫だと思う。
難度もそんなに高くないし。
(ただエーゲルシャッキーニはラスボス強すぎるので攻略は後回しにした方が良いかも)

43 名前:名無しさん:2009/12/02(水) 22:19:51 ID:TtOaUEwc
>>42
普段ゲームはやってもRTSはやらん人だけど貴方のコメのおかげで
購入後最初はエーゲル目指すことにした

はっはっは、私の愚痴の言葉の数々を心して待っているがいい!(還れ

44 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2009/12/03(木) 01:03:55 ID:UcjEYwR2
>>40
GJです〜。
基本的に元のカップリングは大体維持されてるのがDSのいいところかもw

>>DS
ゲームは弱すぎるキャラを育ててるだけで幸せになれたりしますね。
5週目ともなると99式20mm抱えても速度550くらい出せるほどたくましくなりますがw
あと、ユニット選択で移動防御、対象に隣接の時、相手をかばう時あるよね。
一度しかみてないんだけど、なんかいいシチュだよねw

45 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/03(木) 01:31:12 ID:7pKIq1CU
>>41
ルートや装備によっては難易度激しく下がったり
逆に無理ゲーになったりとか……そんな噂を聞きました。
ご心配なら、携帯ゲー板に確かスレが有ったと思うので
そちらや攻略wikiもご参考になられては如何でしょう?

>>44 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
そうそう、それです>元のカップリングは大体維持
何か、ちょっとした安心感みたいなの有りますよね。
やってて思いました。


さて改めてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
先日発売されたDS版ウィッチーズを……やってませんね!
まだ4話突入時で止まってます(汗
で、そうこうしてるうちにまた電波が降ってきたので一本。
DS版にちなんで、ジュンジュンが501に滞在してるって設定で。
ではどうぞ。

46 名前:first love:2009/12/03(木) 01:32:43 ID:7pKIq1CU
 夕食後、時間を掛けて書類整理を終えた醇子はふらりと食堂へと向かう。
 誰も居らず消灯された食堂を抜けてそのまま厨房に向かい、水を飲もうとコップに手を伸ばす。
 ふと気配を感じ振り返ると、そこには同郷のウィッチが立っていた。
「あら、さかも……美緒じゃない」
「こら、下の名前で呼ぶなと」
「良いじゃない、こう言う時くらい。美緒こそどうしたの?」
「多分お前と同じだ、醇子」
 美緒はそう言うと戸棚を開け、扶桑海軍のマークが刻まれた湯飲みを取り出した。
「扶桑の湯飲み、まだ使ってるのね」
「馴染んでるからな」
「私も。……あいにく、ここには無いけどね」
 醇子に言われて、美緒は自分の湯飲みを見、差し出した。
「なら私のを使うと良い」
「美緒はどうするの?」
「醇子の後で使うさ」
「あら、それって」
「特に意味はない」
「そうかしら」
「あのなあ」
 醇子は手の中で湯飲みを玩んでいたが、美緒の表情を見た後、冷蔵庫を開け、よく冷やされたポットから水を注ぎ、
ゆっくりと時間を掛けて、味わった。
 ふう、と一息ついて、微笑む醇子。
「ありがと、美緒」
「礼には及ばんさ」
 美緒も慣れた様子で水を注ぐと、構わずぐいと飲み干した。
 そしてふっと微笑むと、湯飲みを見て呟いた。
「懐かしいな」
 醇子は、美緒の顔を見、微笑んだ。
「思い出したの? リバウでの事」
「ああ」
「ちょっと前の事の筈なのに……なんでこんな昔みたいに思うのかしらね」
「さあな」
 素っ気ない返事。それともあえてそう努めて言っているのか。
 醇子はそっと美緒に寄り添った。
「ねえ、美緒」
「醇子……いや、これ以上は」
「そうね。そうよね、やっぱり」
 わざと一歩、大仰に身を引く醇子。
「お互いの為だ。私達には……」
「そうなんだけど……でも、たまには、壊してみたくなる事って、無い?」
 無言の美緒。
 いつになく煮え切らない態度を見て、醇子は自嘲気味に笑った。
「私達、もう戻れないものね。あの頃には」
「ああ」
 そのまま、二人は何をする訳でもなく、じっと時を過ごした。
 昔話に花を咲かせる訳でもなく、身を寄せ合う訳でもなく。
 動くのは、時計の針、美緒の手元で玩ばれる湯飲みだけ。

 やがて醇子は、無理矢理に笑顔を作った。
「ごめんね、思い出させて」
「いや、別に。私もすまないと思う」
「その気持ちだけで十分よ」
「そうか」
「でもあの時の気持ち……せめて……」
 言いかけた時、人の気配を察する醇子。
 ふっと口元に笑みを浮かべた後、表情を引き締め、びしっと敬礼してみせる。
「では失礼します、坂本少佐」
「ああ」
 醇子はそれきり何も言わず、立ち去った。途中ですれ違う人影と会釈を交わし、自室へと戻った。

 入れ替わりにやって来たのはミーナ。湯飲みを持ったまま壁に寄り掛かる美緒を見つけ、近付いた。
「美緒、どうしたの?」
「いや、水を飲みに来た。で、たまたま竹井とすれ違った。それだけの事さ」
「本当?」
「嘘は言わんさ」
「でも何か隠そうとしてる?」
 ミーナは美緒の手から湯飲みを奪い、脇に置くと、改めて美緒の手をぎゅっと握った。
「まさか魔力を?」
 ぎょっとした美緒を見て、ミーナは微笑んだ。
「どうかしら」
 ミーナは湯飲みを手に取ると、水を注ぎ、きゅっと呷った。
 美緒はそんなミーナを見て、何故か安堵し、溜め息を付いた。

end

47 名前:名無しさん:2009/12/03(木) 01:33:39 ID:7pKIq1CU
以上です。
再来週発売の某氏の某曲からヒントを得て書いてみました。
ジュンジュンともっさんも何か有った感じがするんですが、
ミーナさんの手前、とか色々有るんだろうなと思ってみたり。
ええ、妄想です。

ではまた〜。

48 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/03(木) 01:40:50 ID:7pKIq1CU
間をおかずにたびたびmxTTnzhmでございます。
とりあえず並行して書いてたSSを連続投下します。
保管庫No.981「music hour」のシリーズです。
ではどうぞ。

49 名前:just communication 01/02:2009/12/03(木) 01:42:24 ID:7pKIq1CU
ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
今夜はサーニャと二人で静かにまったりと進行するゾ。ゲスト? ……ちょっと考えさせてクレ。
あれから「出たい」って人が何人も出て来て困っ……イヤ、何でもナイ。

「でも、人が多い方が、楽しいと思う。番組の刺激にもなるし」

いや確かにそうなんだけド、本来は私とサーニャの番組ダシ、
私とサーニャの二人でするのも良いじゃないカ……って何デ顔赤くしてるんだヨ?

「エイラの、エッチ」

ななな何でそうなるンダヨ!? サーニャ最近ちょっとおかしいゾ?

「じゃあ、基地に帰ったら……」

分かったヨ! 分かったからその目は止めてくれサーニャ。何か震えが止まらないゾ……。
さて、今日もお便り来てるゾ。気分転換がてら早速読ませて貰うゾ。
まず一通目。ラジオネーム「小悪魔」さん。

『私の素敵な旦那様……まあヨメでもいいんだけど、私のフィアンセはお金に全然興味が無いんです。
ぜ〜んぶ妹さんの治療費に注ぎ込んで、後は知らんぷり。
ウィッチ引退後の事とか考えて、もう少しお金に関心て言うか興味を持って欲しいなって思んだけど
「私は戦い以外で難しい事は分からんし、隊に居る限り生活に支障は無い。金の事? 妹の治療費以外はお前に任せる」
とか言うんです。
エイラさん、そんな彼女にもう少しお金に興味を持ってもらうにはどうしたらいいでしょう?』

フム、ならズバリ言わせて貰うぞ。

無理ダナ。

察するニ、お金に興味が無いんじゃなくて「すぐ金に走る奴は嫌い」みたいナ……
もしかしたら苦手って訳じゃなくて嫌いって事じゃないカナ?
例えバ、階級昇進する事とか勲章一杯貰う事が全てじゃなイ、
高給取りになるとかエラくなる事が全てじゃなイ……みたいニ、
「小悪魔」さんの彼女サンはあんま野心が無い人なんじゃナイカナ?
そう言う人には何を言っても無理ダナ。
だかラ、いざとなったら「小悪魔」さんか他の誰かがしっかりお金の管理をしなきゃナ〜。
頑張れ「小悪魔」さん。

「でも、ヘンにお金増やそうとか考えなければ良いけど……」

サーニャの言う通りダナ。ヘンに欲出してギャンブルとかやっちゃ元も子もないカラナ。

50 名前:just communication 02/02:2009/12/03(木) 01:44:59 ID:7pKIq1CU
今日最後のお便り。ラジオネーム「扶桑料理大好きっ娘」さん。

『私には大切なひとが居ます。でもとっても恐がりで、お化けや幽霊が怖いと言って
何か有るともう全然ダメなんです。あまりにも怖がるのでちょっと困ってます。
エイラさん、どうしたらいいんでしょうか?』

ズバリ、言ってもいいかナ?

放っトケ!

そのうち怖くなくなるゾ。それまで……

「エイラ、それじゃ解決になってない」

そうカ? じゃあ、いつお化けが怖くなくなるか特別に教えてヤロウ。
ズバリ言うぞ。

それハ、人間が怖くなる時ダ!

人は怖いゾ〜。なんたって……

「エイラ……」

サーニャ、何でそんな顔してるんダ? すんごい怖いンデスケド……。

「それとも、エイラは……」

誤解ダゾ、サーニャ。後でゆっくり話し合おウ……。
とりあえず、人間って怖いゾ〜。欲深いし嫉妬深いし、もしかしたら「扶桑料理大好きっ娘」さんのカノジョも……

「エイラ」

ハイ……。この辺にしときマス。

ではお時間となりましタ、今夜はこの辺で。
最後に、「サーニャのうた」を聴きながらお別れデス。

end

----

以上です。
ラジオのシリーズは書いてて楽しいです。
次のゲスト誰にしようかとか考えてるんですが……、
なかなか決まらなくて。
その前にDS版ゲームやるべきですかね?(汗

ではまた〜。

51 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/03(木) 03:14:39 ID:7pKIq1CU
こんばんは。三度mxTTnzhmでございます。
夜空を見上げたら雲の隙間から覗く月がとっても綺麗だったので、
ふと思い付いたばかばかしい話をひとつ(ぇ
ではどうぞ。

52 名前:misty moon 01/02:2009/12/03(木) 03:15:21 ID:7pKIq1CU
   夜。美しい満月が海面を照らす。
   部屋の窓際で月をぼおっと眺めていた芳佳は、リーネの肩を抱き、言った。
  「ねえ、リーネちゃん」
  「どうしたの、芳佳ちゃん」
  「私ね、隠してた事有るの。ゴメンね」
  「何? 怒らないから言って」
  「ホント?」
  「芳佳ちゃんの事、もっと知りたいから」
  「じゃあ、言うよ。驚かないでね」
  「うん」
  「私……、私、実はね」
   ごくりと唾を飲み込む。
  「私ね。実は、吸血鬼なの」
   芳佳は意を決して、言った。リーネを前に、言葉を続ける。
  「リーネちゃんの血を吸わないと、私生きて行けないの。だからお願い」
   だが意外にも、恐がりの筈のリーネはきょとんとしている。
  「芳佳ちゃん。ホントなの?」
  「見て」
   芳佳は口を開けて見せた。
  「わあ、綺麗な八重歯だね」
  「でしょ? 虫歯も無くて……って違うよ! 私吸血鬼なんだから!」
   ノリツッコミしてしまう芳佳。
  「開き直られても。……でも、芳佳ちゃんは芳佳ちゃん、でしょ?」
  「勿論。でも、私、吸血鬼なんだよ」
  「それで、私の血……。どうして私の血なの?」
  「リーネちゃんだから。そう言えば、リーネちゃん怖がりなのに、私見ても驚かないね」
  「だって、芳佳ちゃんだもの」
  「じゃあ、ちょうだい? リーネちゃんの肌、綺麗」
  「ああ、芳佳ちゃんの唇が、肌に吸い付いてくる……」
  「ちょっとくすぐったいよ?」
  「ああんっ……。やっぱり、ダメ、芳佳ちゃん」
  「痛みは一瞬。あとはとっても気持ちよくなれるから」
  「芳佳ちゃん、ケモノの目になってる」
  「私、吸血鬼だもの。では、いただきます〜」
   かぷっと牙を肌に当てる。
  「あうっ……あ。はああ。……何か、芳佳ちゃん、凄い、あああっ……」
  「リーネちゃんの悲鳴も、可愛い。もう少し、頂戴?」
  「言いながら吸ってる……はあっ……。よ、芳佳ちゃん。私もうダメ……耐えられない」
  「リーネちゃん?」
   リーネは我慢出来ず芳佳の首筋に牙を立てた。
  「はうっ! ……リーネちゃん、もしかして」
  「そう、私も実は……」
  「そうだったんだ。だから、何か……」
   お互いの血を舐る行為に没頭する。
  「坂本さんに見つかったら、私達、絶対にばれるね」
  「大丈夫だよ、芳佳ちゃん」
  「どうして?」
  「だって、私達魔女(ウィッチ)だよ? 二人一緒なら、絶対大丈夫」
  「ホントに?」
  「信じて」
  「分かった。信じるよ、リーネちゃん」
  「嬉しい、芳佳ちゃん」
   二人は肩を寄せ合い、微笑んだ。

53 名前:misty moon 02/02:2009/12/03(木) 03:16:05 ID:7pKIq1CU
 がば、と身を起こす芳佳。
「リーネちゃん! 私達……あ、あれ?」
 辺りを見回す。リーネの部屋でいつの間にか寝てしまったらしい。
ベッドの上、芳佳の横で、浅い眠りのリーネがうぅん、と寝返りを打った。
はだけたパジャマから見える素肌が艶めかしい。
「あれは、夢?」
 芳佳は自分の歯に指を当て、首筋を触った。
 何も、無い。いつもと変わらない。何も変わらない。そう、何も。
「夢、だよね。まさか、私達が吸血鬼だなんて、ねえ」
 何かの拍子に、ヘンな夢を見たんだ、芳佳はそう呟いた。
 リーネちゃんには黙っておこう、言ったらまた怖がるかも知れないから。
 苦笑いして窓の外をふと見た。
 月が昇っている。満月だ。海面から霞が掛かっている様で、うっすらとベージュに染まる月は、
いつもより大きく、鈍く輝き、芳佳達を包み込む。
 そのまま飲み込まれそうになり、芳佳は口をぽかんと開けたまま、月に見入った。
 ぼんやりと、夜空を、芳佳とリーネふたりを照らす月、そして夜空。
 時を忘れ、芳佳はただただ、見つめた。

 芳佳は、ふと背後に佇む人影に気付いた。
「貴方と私の、夜が、来る」
 聞き慣れたその声に、芳佳は身がよだつ思いになる。
 悲鳴を上げる間も無く、芳佳はその身を抱かれ、ベッドに倒れ込んだ。

end

----

以上です。

月って妙なちからと言うか、不思議な力を持っているなと思います。
またいつか、月を話に絡めたSSを書いてみたいなと。

ではまた〜。

54 名前:名無しさん:2009/12/05(土) 10:13:27 ID:SUZ5z4ac
GJです!
ジュンジュンともっさんは何かしらあったはず
本人たちは普通と思っていることでも、周りからしてみたら・・・

55 名前:名無しさん:2009/12/06(日) 00:50:02 ID:qK0QNUJY
パロディはロダに上げたほうがいいのでしょうか??
一応、そうしてみたのですが

ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/61296
Pass:sw
タイトル:サフィズムの舷窓〜Un as

誕生日と全く関係ないです、すみません

56 名前:名無しさん:2009/12/06(日) 17:08:34 ID:wwgUy/hM
>>55
また懐かしいものをw GJ!
これ、続きが有るんですかね?
あったらぜひ。

57 名前:ねこぺん:2009/12/06(日) 19:35:52 ID:DKv4AWZI
お久しぶりです
今日はびゅーりんの誕生日なのでびゅーりんで。誕生日物ではありませんがw

ttp://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/61483 パス:SW

楽しんで頂けたら幸いです。それではまた

>>55
ともちゃんw
続きがすごく気になりますね……期待してます!

58 名前:名無しさん:2009/12/06(日) 20:40:00 ID:zDkBHIOc
>>55
智子はこういうドタバタが良く似合うなw ハルカへの追求フイタGJw
折檻でも返り討ちでも続きが読みたいです。

>>57
ビューリング×サーニャとは新しいと思いながら、とても雰囲気のあるお話で良かったです。
ウィーン繋がりでしたもんね。
ライバルさんを語る二人が良かったし、サーニャにはドキドキさせられました。GJです!

59 名前:名無しさん:2009/12/06(日) 21:12:37 ID:wwgUy/hM
>>57
お久しぶりGJ!
サーニャの艶やかさにGJ!
上質なSSをいつもありがとうございます。

60 名前:名無しさん:2009/12/08(火) 14:00:16 ID:Ddky0wnM
>>55
そういえばそんなゲームも有ったなあ……懐かしいGJ

>>57
貴方の文章は何と言うか、うつくしい。気品が漂うと言うか。
うまく言い表せないが、とにかく見事なSSにGJ

61 名前:名無しさん:2009/12/08(火) 23:14:03 ID:gZFlyvjI
本スレにひさしぶりにSSが来てるよん。

62 名前:名無しさん:2009/12/09(水) 17:06:05 ID:FvKexEq2
さんざ既出かも知れないが、ふと考えてみた事が有る。

お姉ちゃんはいつから芳佳に固執する様になったのか
と言うか「お姉ちゃん病」になったのか。

公式の鑑賞会を見るに、お姉ちゃんは7話の時点でもうアレなのだが
……冷静に考えてみると、7話で
「これは証拠物件だ」とか言って芳佳のズボン取り上げて視姦だなんて
レベル高いなあと思った。間違いなく変態だ。

63 名前:名無しさん:2009/12/09(水) 17:16:21 ID:Y0O.xGOc
だってあれ証拠物件でもなんでもないもんな

64 名前:名無しさん:2009/12/09(水) 17:28:01 ID:dfNAz1j2
回を増すごとに芳佳愛が白熱していってるよね
最終回もそうだし、秘め声CDに至っては近くにクリスがいるにも関わらず妹宣言しちゃってるし
それだけに本編でその辺のエピソードがあんまり描写されてないのが残念だな

65 名前:名無しさん:2009/12/10(木) 00:28:16 ID:d1qGH0bs
>>62
しかもその後「私のを貸してやろう、遠慮するな」と
芳佳に自分のズボンを履かせようと
レベル高杉

66 名前:名無しさん:2009/12/11(金) 00:15:13 ID:3/6HEMeA
「あぁ、もう私の知ってるトゥルーデじゃない……」
 
呆れと諦めの混じった声でボソリと呟くフラウ。
私はそんな彼女を力無く見守る。
私達の半歩前を走るその原因。
彼女……トゥルーデは、未だ何やら熱弁を語りながら時折私達に同意を求めてくるのだから仕方ない。
とは言え、そんなトゥルーデに呆れる事の¨出来る¨事を、私は密かながらも嬉しく思う。
小さな幸せは、唐突に訪れるものなのだから。
 

 
思い返すのは、第501統合航空戦闘団をブリタニアに設立するに至ったあの撤退戦。
大切な幼馴染みを私は失い、大切な妹を彼女は失いかけた。
大切な人が、目覚めるか分からない昏睡ながらも生きているトゥルーデ。
永遠に再開の有り得ない私。
果たして戦火の続く中では、どちらが幸いなのだろうか。
いつ目覚めるか分からないながらも生きている、という希望にすがる事の危うさと恐怖感。
人間はどうしても欲が出てしまうものだから、人は皆¨if¨を、生きているからこそ考えてしまう。
だからこそトゥルーデは「守れなかった」クリスに顔を合わせ様としない。
正確には、合わせる事を恐れていた。
目覚めるとも分からない無限にも思える恐怖の日々。
目覚めた時に「守れなかった」自分が何を言えるのか、してやれるのかが分からないのだろう。
そもそも目覚めるかすら分からない。
しかしながらクリスは生きている。
生きているのだ。
私からすれば、羨ましい事この上ない。
妬ましい、とすら言えるかもしれない。
本来ならば、この様な感情を向けてしまう事を私は恥じるだろう。
けれども、あの日、あの時、あの瞬間、私はその想いが爆ぜた。
誰も頼らず、己が身を省みず、単身で無茶をして墜ちたあの日。
目の前で、私の目の前で重力に身を捕われるのを見たあの時。
理性と感情の板挟みにより、駆け付ける事の出来なかったあの瞬間。
端的に言ってしまえば、一度の失敗で自分を見失っている大馬鹿、と私は言い切るだろう。
何しろ、私は失ってしまっているのだから。
彼女はまだ、失っていないのだから。
けれども今まで、私の声はトゥルーデの中には届かなかった。
それはきっと私と彼女が近すぎたから。
失いかけた私と、失った彼女にもなりえたから。
だからそれは同情に過ぎず、私の言葉はトゥルーデの心にはまだ届かなかった。
あの日、美緒が扶桑から一人のウィッチを連れて来るまでは。

67 名前:名無しさん:2009/12/11(金) 00:15:38 ID:3/6HEMeA
墜ちたトゥルーデを助け、トゥルーデの身に再び希望と力を与えてくれた、一人のウィッチに会うまでは。
 

 
トゥルーデが始めて宮藤さんの事を見た時は、基地での顔合わせの時。
扶桑艦隊の助けに向かった際には、よく見ていなかったのだと言う。
顔を合わせた際、私は確かにトゥルーデが一瞬目を見開き、唾を飲み込んだのを見た。
その後は小さく歯を噛み、平常心を保とうとしていたのが、私には分かった。
現に私ですら、一瞬宮藤さんの姿を見た時に息を飲んだのだ。
トゥルーデが動揺しない方がおかしいと言うもの。
けれども私は、ある意味で恐怖感を覚えていた。
もし、宮藤さんが墜ちたりしたら……。
しかし私は、それと同時に、善くも悪くも期待も募らせていた。
つい先日まで民間人だった宮藤さんの、こちらの考えを越えた行動の数々。
もしかしたら、トゥルーデの心の氷を溶かしてはくれないだろうか。
そんな淡い期待があったのだ。
とは言え、期待のホープは素晴らしいくらいに問題も起こしてくれた。
命令無視に始まり、阻塞気球の全機破砕、ルッキーニ少尉が原因だったとは言え、人格が変わっただの、単独行動かつ独断行動するわ、果ては上官を負傷させて、止めは脱走だ。
……改めて思えば、とんでもない問題児な訳だが。
それでも、その真摯な想いは、トゥルーデの心を解きほぐしたのだ。
私に出来なかった事を、彼女はしてしまったのだ。
 
「諦めたくない」
 
一言。
そんな、たった一言を、宮藤さんは守り抜いたのだ。
信じ続けたのだ。
その想いは、トゥルーデに再び、以前の様な活気を取り戻した。
私達がかつて失いかけた、ゲルトルート・バルクホルンと言う一人のウィッチを完全に復活させたのだ。
始めこそ、感情を持て余していた様子であったが、そんなトゥルーデを見て、私は心底嬉しかったのだ。
そう、嬉し¨かった¨のだ。
……いや、私の知っていたゲルトルート・バルクホルンと言う人物は、生粋のカールスラント軍人であった。
規律厳守で、部下の面倒見もよく、上官への進言も怯まない。
そんな、しっかりとした、お堅いながらも優しさを持った人物のハズであった。
……のだが。

68 名前:名無しさん:2009/12/11(金) 00:16:34 ID:3/6HEMeA
「……すなまい宮藤、私が信じてやらなかったばかりに。姉…いや、お姉ちゃ……じゃなくて、えぇと……そう! 先輩ウィッチとしてもっとしっかりきっちり付きっきりで話をするべきだったのに。……だろう? ミーナ」
 
こんなに姉馬鹿なキャラになるなんて、夢にも思わなかった。
何か色々と開放された反動なのだろうか。
私はなんとなく、トゥルーデの原隊のウィッチ達に合わせる顔がない気がする。
 
「あぁ……はいはい、そうね」
 
返事をしつつも、ほのかに口元が引き攣るのが分かる。
ストライカー収納庫まで、後何mあるのだろうか。
フラウに同意を求めたトゥルーデに、もう勘弁してくれ、とフラウが視線を私に寄越す。
そんな、取り留めのないこの瞬間を、私はただ、大切に思う。
今はただ、呆れと諦めと嬉しさが、どうしようもなく私の中で渦巻いているのだから。
 
 
 
おわり
 
バルクホルンな流れに便乗させて頂きますCRwGA7CAです。
タイトルは「独白」です。
けっこう意味不かも。
では、失礼致します。

69 名前:名無しさん:2009/12/11(金) 00:46:41 ID:XNkfw0m2
>>68
GJ! ミーナさん視点の「お姉ちゃん」ですね。
確かに芳佳は問題児だけど、お姉ちゃんも(ry
ミーナさんの優しさが伝わります。改めてGJ

70 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/11(金) 20:05:38 ID:AWTOY1zU
>>55
GJ! 元ネタのゲームは存じませんが面白かった!
続きに期待してます。

>>57 ねこぺん様
お久しぶりですGJ!
いつも素敵なSSに脱帽です。

>>68 CRwGA7CA様
GJ! ミーナさん視点で見たお姉ちゃん良いですね。
本編を思い出しました。ミーナさんはやっぱり501の母だわ〜。


改めてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.450「ring」シリーズ続編です。
このシリーズはまだまだ続くよ! と言う事でどうぞ。

71 名前:cocktail 01/04:2009/12/11(金) 20:06:55 ID:AWTOY1zU
 夜も更け、月明かりに照らされる基地は、束の間の静寂に包まれていた。
 トゥルーデはそっと部屋から出ると、なるべく音がしないようじわりじわりと扉を閉め、厨房を目指した。
 喉が渇いたのだ。何か、軽く飲むものが欲しい。
 食堂を抜け厨房に近寄る。明かりが点けられ、誰かが厨房の中に居る。
 誰何すると、リーネがおずおずと顔を見せた。
「あ、バルクホルン大尉」
「リーネか。こんな時間に何をしている」
「すいません。すぐ戻ります」
 ほのかに漂う香り。それがウイスキーと蜂蜜のものである事をトゥルーデはすぐに理解した。
同時に、リーネが何をしていたのか察しを付け、穏やかに声を掛けた。
「どうした、眠れないのか?」
「はい」
 トゥルーデはリーネの居る厨房へと足を踏み入れた。
 リーネは何かを作ろうとしていたらしく、調理台の上にマグカップ、酒、蜂蜜の瓶、湯の入ったケトルが置かれている。
 ブリタニアのウイスキーと蜂蜜の瓶を手に取り、トゥルーデは意外な顔をして見せた。
「しかしリーネがウイスキーとは、珍しいな。この品々……カクテルか?」
「カクテルと言う程でも無いんですけど、ちょっとした飲み物を作ろうかと思って」
「そうか」
「宜しかったらバルクホルン大尉も如何ですか?」
「ウイスキーに蜂蜜か。よし、どんなものか教えて貰おう」
「はい、喜んで」

 リーネは用意してあったマグカップにウイスキーを少量入れ、蜂蜜を垂らした。
 そこに沸騰させた後少し冷ました湯をゆっくり注ぎ、かき混ぜていく。
 ウイスキーの香ばしさと蜂蜜のまろやかな匂いが混ざり合い、ふんわりとした湯気が辺りに漂う。
「これで出来あがりです。簡単でしょう? 『ホット・ウイスキー・トゥディ』と言うんですよ」
「ほう。温かい飲み物なんだな」
「はい。ブリタニアでは昔からよくこうして飲んでいるんですよ。甘味は蜂蜜じゃなくて砂糖でも良いし、
香り付けにハーブやシナモン、柑橘類等を入れても良いんですけど、今日は簡単に蜂蜜だけです」
「なるほど」
「今のは作り方の試しなので、バルクホルン大尉の分、これからお作りしますね。バルクホルン大尉は、
ウイスキー濃いめが良いですか?」
「いや、今リーネが作ったものでいい。それを貰おう。寝る間際にあんまりきついアルコールもな」
「分かりました。どうぞ」
 マグカップを渡されるトゥルーデ。口元に運ぶ。湯気のアルコール分に少しむせると、リーネはくすっと笑った。
「大丈夫ですか?」
「コツを覚えれば問題無い」
 トゥルーデは一口二口飲んでみて感じた。
 とても甘く、優しい。まるでカラメルソースの様な……。
 以前、他のブリタニアのウィッチがやっていた乱暴な飲み方とは違う、と。
 そう感想を口にすると、リーネは微笑んだ。
「これ、私のお姉ちゃんから教わったんです。『眠れない時はこうすると良い』って。
蜂蜜入りのミルクティーもそうですけど」
 お姉ちゃん、と言う言葉に一瞬肩をぴくりとさせたトゥルーデだが、努めて冷静を装いリーネの話を聞いた。
「なるほど。リーネのお姉さん、か」
「はい」
「良いお姉さんを持ったな」
 リーネは照れ隠しか、片手で頬を押さえ、はにかんだ。
 トゥルーデはマグカップを両手で持ち、琥珀色の液体をじっと見つめた。
「確かに、これは良いかもな。身体が温まるし、喉にも良い」
 ぽつりと漏らすトゥルーデ。厨房に幾つか置いてある小さな腰掛けに軽く座った。
 リーネはそんなトゥルーデを見て、自分の分のホット・ウイスキー・トゥディを作ると、トゥルーデの横に腰掛けた。
「あの、バルクホルン大尉」
「ん? どうしたリーネ」
 もじもじしているリーネを見、トゥルーデは言った。
「別に怒ったりしないから、言ってみろ」
「あの……バルクホルン大尉、少し変わりましたね」
「変わった? 私が、か?」
「私が隊に入った頃は、多分私が同じ事していたら『任務に差し障る行為は慎め』と怒ったでしょう?」
「ん? ああ……」
 何か思い当たるフシがあるのか、トゥルーデは天井を見、苦笑いした。
「まあ、なんだ。……堅苦しい事は無しだ、リーネ。今くらいは階級無しで良い」
「分かりました、バルクホルンさん」
「それでいい、リーネ」

72 名前:cocktail 02/04:2009/12/11(金) 20:07:21 ID:AWTOY1zU
「ところで、バルクホルンさんはどうしてここに?」
「ちょっと喉が渇いた。そのついでにな」
「そうですか。……ハルトマン中尉は」
「あいつは、一度深い眠りに入るとなかなか起きなくてな。もっとも、今日は一日訓練だの任務だの大変だったから
起こすのも気の毒だと思って、部屋に寝かせたままだ」
「そうですか」
「リーネこそ、何故一人なんだ? 宮藤はどうした」
「芳佳ちゃんも、今日は色々有って、疲れてぐっすりなんです」
「そうか。確かに、無理に起こすのは良くない。ヘンに寝不足にでもなられたら、翌日の任務に差し障る」
「ですよね」
 微笑むリーネ。
「しかし、温かいウイスキーか。カールスラントにも温かいビールが有るが、これは甘くて良いな」
「蜂蜜、お好きなんですか?」
「いや、凄い好きと言う訳ではないぞ。どちらかと言えば好き、な程度だ」
「そうですか」
「蜂蜜は……。いや、何でもない」
 先日エーリカと蜂蜜を使って“とある事”をしたのを思い出し、ぷいと横を向く。
「栄養満点で、身体に良いんですよ?」
 リーネが笑って言う。
「まあ、な」
 これ以上何か言われたら、と思ったトゥルーデは、話題を変えようとリーネを見た。
「そう言えば、お前も随分と変わったな、リーネ」
「わ、私がですか? 例えばどんなところが?」
「一時期は随分と自信を無くして落ち込んでいたが、今では立派な……隊のエーススナイパーじゃないか」
「そんな、とんでもない」
「超遠距離からの狙撃は、流石の私でも無理だ。リーネには敵わん」
「そんな事言ったら、バルクホルンさんの撃墜スコア……」
「撃墜数か……まあ、それはそれだ。人にはそれぞれ得意分野が有る。
自分の得意な部分を伸ばしているリーネは頑張っている。私が言いたいのはそう言う事だ」
「ありがとうございます。でも、これも……」
「これも、宮藤のお陰か?」
「よ、芳佳ちゃん……はい」
 遠慮しがちにリーネは答えた。頬が紅い。
「芳佳ちゃんのお陰で、私、一歩前に進めたと思うんです。そして今では一番大切な……その」
 言いかけて顔を真っ赤にするリーネを見て、トゥルーデはふっと笑った。
「確かに、あいつが来てからリーネだけでなく隊の雰囲気が変わったのは事実だ。
まあ、無茶や突拍子も無い事をしでかす時も有るが……」
「芳佳ちゃん、バルクホルンさんを治療したんですよね?」
「ん? ああ。確かに、あいつには戦場で助けて貰った事がある」
「その時から、バルクホルンさんも変わったと思います」
「私も、か。まあ、色々有ったな」
 ちょっと前の事を思い出し、ウイスキーを一口含む。
「ハルトマン中尉も、マイペースに見えるけどすっごくバルクホルンさんの事、大切にしてるんだなって」
 突然のリーネの発言に、トゥルーデはむせた。
「エーリカがどうした」
「いえ。すみません」
「まあ、良いんだ。あいつは……」
 左手の指輪をそっと撫でるトゥルーデ。
「大切な、家族みたいなものだ。それ以上かもな」
 それだけ言うと、マグカップを呷った。

73 名前:cocktail 03/04:2009/12/11(金) 20:07:45 ID:AWTOY1zU
「リーネも、何か困った事が有ったら遠慮なく私を頼ると良い。姉だと思って」
「は、はい」
「お前には頼もしい実の姉が居るのは承知している。でもここ501は、皆家族みたいなものだ。ミーナもそう言ってる。
だから……」
「あの、バルクホルンさん」
「ん?」
「ちょっと顔、近いです」
「何っ?」
 ふと気付くと、リーネの肩を抱き寄せていた。
 ほのかに漂うリーネの香り。エーリカのそれとは違った、甘い芳香が微かにトゥルーデの鼻をくすぐる。
「あ、いやその、そんなつもりじゃなかったんだ。ただ……」
「ただ、何ですか?」
 上目遣いに見つめるリーネ。思わぬ仕草を目の前数センチで見たトゥルーデはごくりと唾を飲み込んだ。
 エーリカのそれとは違い、物凄い“物量”でトゥルーデを押しつける胸の膨らみ。流石隊で一二を争うだけ有る。
宮藤が夢中になるのも無理はないと、微妙に飛びかけている理性で考えを巡らせる。
 何か言いかけて、もう一度唾を飲み込むトゥルーデ。
「リーネ」
「はい」
「さっきのウイスキー、その……」
「バルクホルンさん」
「どうした?」
「見られてます。二人に」
「んっ!?」
 トゥルーデが振り向いた先には、いつ来ていたのか、シャツ一枚のエーリカ、寝間着姿の芳佳が
呆然とこちらを見ていた。
「トゥルーデ」
「リーネちゃん……」
 トゥルーデは仰天の余り混乱したのか、リーネを抱き寄せたままエーリカに弁解した。
「ちっ違うんだっ! エーリカ話を聞け! 私はただリーネにウイスキーをだな!」
「そ、そうなの芳佳ちゃん! ちょっとしたアクシデントで」
「アクシデントでキスとかしそうになるんだ。へぇ〜」
「リーネちゃん……ああ、私のリーネちゃんが」
「待て! 話を聞けと言うに!」
「芳佳ちゃん待って! 私芳佳ちゃんだけだから!」

74 名前:cocktail 04/04:2009/12/11(金) 20:08:29 ID:AWTOY1zU
 一騒ぎ収まり、食堂で改まってホット・ウイスキー・トゥディを飲む四人。
「温かいカクテルか〜。面白いね」
「甘くて美味しい」
「だろ? って私が作った訳じゃないが。ブリタニアではよく飲むものだそうだ」
「何かに味似てる気しない? お菓子っぽい何か」
「蜂蜜入れてますからね」
「リーネ、まだ蜂蜜有る? 有ったら一瓶頂戴」
「エーリカ、まさかまた……」
「楽しいから良いじゃん。後始末も二人でゆっくり、じっくりできるよ、トゥルーデ」
「うう……」
 エーリカに言われ、思い出して顔を赤くするトゥルーデ。
「また作ってね、リーネちゃん」
「ごめんね芳佳ちゃん。起こしたら可哀相と思って」
「良いの。たまたま起きただけだし」
「またまた。ミヤフジ、おろおろして探しに来たくせに」
「それはハルトマンさんだって……」
「へぇ〜」
「な、何ですかハルトマンさん、その笑みは」
「やめないかエーリカ。皆困ってるだろう」
「私が困った事はおいてけぼり?」
「……すまん」
「ま、夜に美味しいの飲めて楽しかったよ。ありがとね、リーネ。じゃあこれ連れて帰るから」
「私は『これ』扱いか」
「今夜位はそうしても良いと思うよ」
「エーリカ、悪かったから。勘弁してくれ」
 腕を引かれ、エーリカと共に部屋に戻るトゥルーデ。
 二人を見送ったリーネは、皆が使ったマグカップを片付けた。
「リーネちゃん、私達も戻ろう? カップは明日洗えば良いよ」
「そうだね」
「やっぱりみんなでお喋りとか、楽しいよね。……リーネちゃん、どうかした?」
 先程、間近に迫ったトゥルーデの唇が妙に艶の有った事を不意に思い出し……思わず俯くリーネ。
「お姉、ちゃん」
「へっ? バルクホルンさんが? リーネちゃん?」
「ううん、何でもないの、大丈夫だから、芳佳ちゃん」
 取り繕って笑うリーネ。芳佳はきょとんとした顔でリーネを眺めた。

end

----

以上です。
お姉ちゃんな流れに乗ってひとつ。

トゥルーデとリーネの組み合わせって
意外と少なかった様な気がして、ちょこっと書いてみました。
もうお姉ちゃんは隊の皆のお姉ちゃんになるといいよ! とか思ったり。

ちなみに「ホット・ウイスキー・トゥディ」は
実際にある温かいカクテルです。
簡単に出来るので、寒い夜にはお薦めです。
蜂蜜で作ると喉にも良く、温まりますよ〜。

ではまた〜。

75 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 03:13:54 ID:b6ChQGso
>>74
心がホコホコと温もります。GJ!
リーネとウイスキーは何と無く危ない香りの組み合わせ……

76 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 22:03:37 ID:grpJCAaI
なんか降ってきた電波投下します。フーダニットぽいの5レスほど。


 カタカタと窓がきしむ音がする。
 突然降り出した雨は見る間に強まり、電気の灯されていない部屋は薄暗いものに変じていた。
 その場に立ちすくむ各々の顔には、憂いとも憔悴ともとれる表情が浮かんでいる。
 だがそれは空模様のせいばかりではなく、彼女たちに降りかかったある事件のためだ。
 それはとても奇妙な事件であった。
 放置されたドライアイスのごとく、消えてしまったのだ。音もたてずに、忽然と。
 本来それがあるべきはずの場所には、痛ましい空白が残されるばかりである。
 どうしてこんなことになってしまったのだろう?
 その答えを求めるのは底知れぬ深淵を臨むようなものだ。
 疑念は暗闇にいもしない鬼を見出だすという。
 とすれば、これはまさに鬼の所業であった。
 しかし結論から言えば、彼女たちの中に犯人はいない。
 では、その鬼とはいったい何者なのだろう――?

「本当に見つからないの?」
 もう何度となくなされた質問をまた、芳佳は繰り返す。
 ルッキーニはそれにただ力なくうなずき、その事実を肯定する。
「おおかた、脱ぎ散らかしてどこかにやってしまったんでしょう。そうに決まってますわ」
 ペリーヌは皮肉を言ってのけるものの、その口ぶりにどこかいつものキレがなかった。
「そんなわけないじゃん。ペリーヌじゃあるまいし」
「なっ……! それを言うならわたくしではなく、ハルトマン中尉ではありませんの!」
「え、私? 今度は違うよ」
 エーリカは、ほら、とすそをたくし上げてみせる。
 それはたしかに彼女のものである、薄緑色をしたローレグであった。
「ハルトマンじゃないとすると誰だ? あたしも違うし」
 次いでシャーリーもたくしあげた。薄紫のローレグである。
「わたくしも違いますわ」
「私も違うナ」
「わたしも」
「私もです」
「私も違います」
 バラエティー豊かな白のローレグ×4に、濃紺の旧スク水っぽいの。
 なんて可愛いおし……あ、いや、げふんげふん。
「………………」
 その場にいるルッキーニを除く全員が、履いているのはたしかに自分の所有物であることを主張する。
 ルッキーニはただ、それを当惑顔で眺めているばかりだ。
 そんな彼女の下半身はむき出しで、衆目にあらわにさらされている。
 ないのだ。
 ズボンが。あの水色と白のシマシマが。

77 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 22:05:33 ID:grpJCAaI
「ひくちっ!」
 と、ルッキーニはくしゃみをした。
 下半身を冷やしたのだろう、ぷるぷるとあらわになったお尻を震わせる。
「ルッキーニちゃん、可哀想……」
「うん……」
 リーネのつぶやきに芳佳はこくりとうなずいた。
「しょうがないな――ほら」
 シャーリーは自分のズボンをもぞもぞと脱ぐと、それをルッキーニへと差し出した。
「でも、それじゃあシャーリーが」
「いいってことよ。このままじゃ、あたしの可愛いルッキーニが風邪を引いてしまう」
「シャ、シャーリー……」
 感激するルッキーニは、飛び込むようにシャーリーに抱きついた。
「おいおい。履いてからにしろって」
 そんなルッキーニの頭を、シャーリーはよしよしと撫でてやり、
「しかし弱ったなぁ。いい加減、返してくれないとあたしが風邪引いちゃうし……」
 そしてひとりごちた。
「――ちょっと待ってください。なんですの、『返して』って」
「まるで誰かが持っていったみたいな言い方するナヨ」
「あっ、ごめんごめん。つい口が滑った」
 悪びれるふうなどないが平謝りするシャーリー。
 しかし、こう考えが及ぶことは必然であった。
 どこにもないのだ。脱衣場をはじめ、ハンガーも、食堂も、ミーティングルームも。
 基地中のありとあらゆる部屋をひっくり返しても、あのシマシマの1本の線さえ見つけられないのだから。
 とすれば、もはや考えられるのは、誰かが持っているということだけ。
 そう、この中の誰かが。
「こんな時に限ってミーナ中佐や坂本少佐がいないなんて……」
 ふと、サーニャの口から出た言葉が、場に波紋を落とす。
 8人がみな、一様にそうした気持ちを抱いているのが見てとれた。
「あたしだってこんなこと言いたくないけどさ」
 きまりが悪そうに、シャーリーは口を開いた。
「いるんだろ? この中に犯人……」

 と、雷鳴があった。

「「きゃっ!!」」
 芳佳とリーネは互いを抱きしめ、ぶるぶると震えあった。
「きゃあ!」
「うわっ!?」
 サーニャはすがりつくようにエイラに抱きつき、むしろそのことにエイラはあわてふためき、たじろいだ。
「ひいっ…………な、なんでもありませんわ!」
 ペリーヌは近くにいたエーリカにとっさに抱きつこうとするものの、すんでのところで自制し、
「――ま、別にいいけど」
 エーリカは持て余した手を後ろ手に組んだ。

78 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 22:09:08 ID:grpJCAaI
 場が落ち着きを取り戻すまでにしばらくの時間を要した。
「でだ。この中の誰かが持って行ったとしか考えられないんだけど」
 シャーリーの言葉が冷たく響いた。
 みなは一向に肯定も否定も示さないものの、そのことが事態の重さを表していた。
「私は、この部隊にそんな人がいるなんて思いたくないです」
 芳佳が言うと、今度は互いに重くうなずきあった。
「でも、芳佳ちゃん。ついうっかり持ってたことに気づいてないだけかもしれないし」
「う、うん。そうだよね――あのう、誰か持ってたりしませんか?」 
「ちょっと、宮藤さん。あなた疑うつもりですの」
「そ、そんなつもりじゃ……。ただ、わざとじゃないけど、なぜかってこともあるかもしれないし」
「……まったく、しょうがありませんわね」
 やれやれと了承するペリーヌ。みなもそれに賛同した。
 そして全員、自分の衣服を探りだした。
 ポケットに入れたのをすっかり忘れてないか、間違ってズボンを二重に履いてしまってないか――
 しかし当然ながら、消失したシマシマズボンが再び現れることはなかった。

「出てきませんわね」
「まさかこんなに長期化するなんてな」
「ねぇ、返してよ。あたしのズボン」
 むー、とルッキーニは頬っぺたを膨らませて睨みをきかせる。
「そうだよ。返してやりなよ――ほら、宮藤」
 エーリカは芳佳のおしりをぽんっと叩いた。
「えっ!? 私じゃありません!」
「わかってるって。じゃなくて、宮藤が言いなよ。犯人はお前だって」
「……いや、こういうことはエイラさんの役割なんじゃ」
「え? 私!?」
「そうですよ。ほら、いつもみたく得意のタロットでズバーンと」
「いや、でもサ……」
「なんですか?」
「占うまでもないっていうカ……」
「ならなおさらじゃないですか。きっとあの人ですよ」
「じゃあオマエが言えヨ」
「みんなエイラさんのカッコイイところが見たいんですよ。ね、サーニャちゃん?」
「そうよ。エイラ、頑張って」
「サ、サーニャがそんなに言うならしょうがないナ」
 エイラはぽりぽりと指で頬を掻いた。
 面倒くさそうにタロットカードを取り出し、テーブルに並べていく。
 あー、とか、うー、とうなり声をあげて、時間をかけてタロットをめくる。
 視線は落ち着きなく、ちらちらと目配せをしてくる。
 そして、ようやく覚悟を決めたように、エイラは言った。
「犯人は………………ズボンの妖精ダナ」
 は?
 と、いくつもの声が重なった。
 何を言っているんだ、という顔をみな、エイラに向けた。
「えっとほら、リーネ。ブリタニアにいるんダロ? 枕元に置いといた歯を金貨に変える妖精」
「トゥーズフェアリーですか?」
「そう、ソレ! そのトゥーズフェアリーの親戚みたいのが現れて、ルッキーニのズボンを持ってったんダ!」
 声高にエイラは叫んだ。
 対照的に、うーん、となんとも微妙な反応を面々はする。
「な、なんダヨ!?」
「まあ、エイラさんがそう言うなら……」
「それで、どうすればいいの、エイラ?」
「みんなでソイツにお願いしてみるんダ。ルッキーニのズボンが返ってきますように、って」
 そういうこととなった。
 全員が隣同士で手をつなぎあい、輪になる。
「あと、その間はくれぐれも目を開けるナヨ」
 最後にエイラは言い加えると、みんなはうなずいた。

『ズボンの妖精さん、ズボンの妖精さん。どうかルッキーニちゃんのズボンを返してください』

 8人は声を合わせて、歌うように願い事を口に出した。
 言い交わしたとおり、目を開けている人は誰もいない。
 ――が。
 やはりシマシマ柄ズボンが返ってくることはなかった。

 こうして事件は迷宮入りとなったのだった。
 ルッキーニ当人にとってはなんとも悲しい結末となってしまったが、こればかりはやむを得ない。
 大丈夫、大切にするから。
 他のみんなにしても、このことはやがて忘却の彼方と消えることだろう。

79 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 22:10:56 ID:grpJCAaI
「ダメだったな」
「いつまでもなにしてるんですか」
「今、こっそり返すチャンスだったじゃん。バカなの?」
「私の苦労をムダにすんなヨナ」
「こんなに待っても返さないなんて……」
「ねー、もう言っちゃわない? 犯人はお前だー、って」
「しょうがないけど、それしかないと思う」
「ええ。もうそれしかありませんわね」
「………………」
 どういうことだ? 事件は終わったのではなかったか?
「なんだ? 反対もいるのか?」
「じゃあ多数決すればいいじゃん。賛成のひとー!」
 エーリカは言うと、勢いよく手をあげた。
 それに釣られるように、みんなはぞろぞろと挙手していく。
「じゃあ、反対のひとー!」
 挙手はなかった。
 賛成は8、反対は0。
 犯人探しの続行が決まってしまった。

 8人は一様に顔を見あわせた。
 黙ったままで、確認するようにうなずきあう。
 間隙があった。それは祈りにも似た時間だった。
 ごくり。
 と、誰かが固唾を呑む音が聞こえた。
 そして8人はすぅと手をあげ、その者を指差した。
 その差し示す方向はけして交差することなく、ある一点へと収束した。
 ――すなわち、私に。

80 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 22:12:30 ID:grpJCAaI
「………………」
 私はぶんぶんと首を横に振った。
 違う。私じゃない。
 いったいどこに隠したと言うんだ?
 ポケットは空だ。履いてもいない。
 人を疑うなんてこと、しちゃいけないだろう。持っているが。
 なのに、なんだと言うんだ、お前たちは?(やっぱりさっき反対に挙手するべきだった)。
「トゥルーデってば、ずっと顔色悪かったし」
「汗をダラダラかいてましたわ」
「さっきから一言も喋りませんし」
「口が異様に膨らんでました」
 16の瞳が私に降りそそぐ。
 銃弾よりも、ネウロイのビームよりも痛い視線が。
 耐えきれず、私はきびすを返して逃げ出した。
 が、その先には両手を広げてとうせんぼをするペリーヌ。
 方向転換――するとそこにはエーリカとエイラが待ち受けている。
 さらに反対側からはサーニャとリーネが回りこむ。なんだこの連携は。
「捕まえましたっ!」
 たまゆらの立ちすくみが仇となった。
 後ろから忍び寄っていた芳佳にとらえられ、胸を揉みしだかれた。
 さらに覆い被さるように、何重にも包囲網が私の体を拘束する。
「返してよ、あたしのズボンッ!」
 ルッキーニの手は私の口にねじこまれた。
 そして再び日の目を見る、水色と白のストライプ。
 終わった。なにもかもが終わってしまったのだ。

「おい、ド変態。なにか申し開きはあるか?」
 シャーリーは私の胸ぐらを掴むと、ドスのきいた声でそう言ってくる。
 だってしょうがないだろう? 鼻先に近づけてくんかくんかしていたら、急に人が来ちゃうんだから。
 だからとっさに隠したのだ。口の中に。
 ごめんなさいとか、魔が差したとか、つい出来心でとか、弁明の言葉が頭を駆け巡った。
 私は言った。
「これはズボンの妖精が……」
「そんなモンいるわけないダロ!」
 エイラのやけくそ気味の叫びが、むなしくむなしく部屋に響いたのだった。



以上です。
お姉ちゃんな流れにさらに便乗しました。ごめんなさい。
タイトルは「1は勘定に入れません あるいは、消えたシマシマ柄ズボンの謎」です。OsqVefuYでした。

81 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 22:35:34 ID:V5Sztx86
>>80
お姉ちゃんワロタ 変態すぎるw
推理小説っぽくドキドキしながら読みましたGJ!

82 名前:名無しさん:2009/12/12(土) 23:14:07 ID:syLwXe1U
>>80
だめだこのお姉ちゃん・・・早く何とかしないと

83 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/14(月) 22:14:45 ID:m4GJ6d6Q
>>80 OsqVefuY様
GJ! 途中までの謎な展開にドキドキしました
そしてお姉ちゃんw 訓練されすぎw


改めてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
>>71-74「cocktail」の続きというかifモノです。
>>75様のコメントに触発されて書きました。
ではどうぞ。

84 名前:risky 01/02:2009/12/14(月) 22:15:23 ID:m4GJ6d6Q
 あの夜から、リーネの様子がおかしい。
 些細な事でミスをしたり、お茶の淹れ方がいまいちだったり、訓練でも微妙な結果になったり。
「どうしたリーネ。今日はどうもいまひとつだな」
 射撃訓練で観測に使った魔眼をアイパッチで覆い、美緒がリーネに言った。
「いえ、全然。私はいつもと変わりません。いつもと同じ……本当なんです」
 ボーイズを片付けつつ、焦って弁明するリーネ。
だが、以前の様な劣等感や焦りから来るものではではなさそうだ。そう推測した美緒は、単刀直入に聞いた。
「何か問題でも有るのか、リーネ。何でも話してみろ」
「いえ、問題ないです。ホント、何でも、ないんです……」
 消え入りそうなリーネの声。心配そうにリーネを見ていた芳佳は彼女の横に座り、大丈夫と手を取った。
「リーネちゃん、たまたまだよ。たまには調子の良くない時も有るって。ですよね、坂本さん?」
 やれやれと溜め息をつくと、美緒は喝を入れるべく、ぴっと指さし声を張り上げた。
「よし。ではラスト、滑走路ランニング二十本だ! 行け!」
「は、はい!」
 慌てて走り出す二人。

 夜も暮れ、へとへとになって食堂に向かう芳佳とリーネ。
 入浴より先にまず食事の時間が先になってしまう程“訓練”と称したランニングが続いた為だ。
「つ、疲れた」
「大丈夫、芳佳ちゃん?」
「坂本さん、最後にあんな走らせるなんて……うう、足つりそう」
「ご飯食べた後、ゆっくりお風呂入ろう? あとはゆっくり休めば」
「そうだね」
 食堂では既に食事が始まっていた。
「あー来た来た。遅い〜芳佳とリーネ」
 二人を見てルッキーニが寄ってきた。
「あ、ごめんね。今からすぐ食事の支度……」
「忘れたのか? 今日は堅物が当番だぞ?」
 シャーリーが二人を止める。
「あれ? そうでしたっけ?」
「ほれ、二人の分」
 シャーリーが皿を差し出した。ふかしたジャガイモが山盛りになって、ほかほかと湯気を上げている。
「ジャガイモ……だけ」
「蒸し加減は完璧だ。安心して食べると良い」
 厨房から出て来たのはトゥルーデ。腰に手を当て、満足そうだ。
「バルクホルンさん、他には」
「ジャガイモは栄養満点だ。他には何も要らない」
 自信満々のトゥルーデはうんうんと自分の言葉に頷いている。
「スープとか、簡単なもの作りましょうか?」
 芳佳が提案するも、トゥルーデは二人の顔色を見て心配そうに言った。
「何だ、お前達くたくたじゃないか。食事の支度はもういいから、食べて寝ろ」
「は、はい」
 他の隊員達は……「またか」と言ううんざり感を通り越し、何かの境地に達したかの様に
黙々とジャガイモを食べている。
「リーネちゃん、食べよう。ありがとうございます、バルクホルンさん」
「たまの食事当番だ、これ位はな」
 リーネは何故かトゥルーデを見ようとしなかった。芳佳の陰に隠れて、こそこそと席に着いた。

 芳佳とリーネは無言で芋を食べた後、食器を厨房のキッチンカウンターに戻した。
 リーネは芳佳に「先に部屋で寝てて」と告げた。どうしたのと聞かれ「ちょっと用事が」とだけ告げ、
そそくさとその場から立ち去った。
「ほほゥ。宮藤、リーネに嫌われたナ」
 二人を見ていたエイラが、ニヤニヤしながらやって来て芳佳の肩をぽんぽんと叩いた。
「そ、そんなまさか! そんな事無いですよ!」
「リーネのあの仕草に表情、分かるゾ私にハ」
「分かるって何がですか? 教えて下さいよ!」
「宮藤はリーネの事全部知ってるみたいで知らないんだナ」
「エイラさん酷い!」
「エイラ……」
 後ろからサーニャにじと目で見られ、エイラはびくりと身体を震わせた。
「はうッ、サーニャ!? いや今のは冗談、冗談ダカンナ」
「芳佳ちゃん、気にしないで。エイラの言った事」
「あ、うん」
「行こう、エイラ」
「分かっタ、行こうサーニャ」
 二人は手を繋いで食堂から去った。
 何をするでもない芳佳は、リーネの言われた通り、自室へと戻った。

85 名前:risky 02/02:2009/12/14(月) 22:15:59 ID:m4GJ6d6Q
 厨房では、ひとり食器やら調理器具を洗い、後片付けをするトゥルーデの姿が有った。
 そこにこそっと近寄る一人のウィッチ。
「あの、バルクホルンさん」
「ん? 何だリーネか」
「ハルトマン中尉は?」
「奴は今、哨戒任務中だ。じきに帰って来る」
「どれ位で?」
「どれ位、か……。そうだな、何も無ければあと二時間程で帰って来ると思うが。奴に何か用か?」
「あの」
 リーネはうつむいたまま、右手でトゥルーデの服の裾を握った。左手には、瓶を持っている。
 只ならぬリーネの様子に、トゥルーデは皿洗いの手を止めた。
「どうした」
 振り向くトゥルーデ。リーネは顔を上げない。ちらりと彼女に目をやる。手にしている瓶は、この前飲んだ……
「ウイスキー、一緒に飲みませんか。二人っきりで」
 リーネがぽつりと呟いた。
「何か、悩み事でも有るのか?」
「バルクホルンさん」
 袖を掴む力が増す。
 思い詰めた様に見上げたリーネの目は潤んでいた。ぎょっとするトゥルーデ。
「リーネ?」
「一緒に、ウイスキー、飲みましょう?」
 リーネの声が震え、うわずっている。吐息を間近で感じる。
 ごくりと唾を飲み込むトゥルーデ。宮藤はどうした、とか、話なら聞くぞ、とか、
そう言う次元の話ではない事に気付く。
 洗剤で濡れた手が、少し震える。思わず皿をシンクに落としたが割れずにからんと音を立てて転がった。
 リーネは顔を近付け、お互いの唇が当たりそうな程の距離で、もう一度言った。
「ウイスキー、飲もう? お姉ちゃん」

end

----

オチが無い/(^o^)\
>>75様のコメントを見たらこんな電波が……。

この後二人がどうなったかは私にも分かりません。
多分お酒飲んでお話ししただけだと思います(><

ではまた〜。

86 名前:名無しさん:2009/12/15(火) 14:03:08 ID:GEgFn4yc
>>85
不覚にも萌えた……

87 名前:名無しさん:2009/12/15(火) 22:49:12 ID:22sFpFGM
>>85
これは・・・修羅場が見えるぞ

88 名前:名無しさん:2009/12/16(水) 23:26:07 ID:dIVw/o6g
>>87
それで芳佳がブチギレ&ヤンデレ化して「……屋上」とか言い出すんですね分かります

89 名前:<削除>:<削除>
<削除>

90 名前:変わらないもの①:2009/12/20(日) 21:50:47 ID:zE2oIV06
 着任してはや一週間、扶桑からやってきた竹井醇子は充実した日々を送っていた。
 ここ、第501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズ基地は、ブリタニアの古城をそのまま利用している。リバウ基地や横須賀基地に比べて迷子になりそうなほど広い。
 暗い廊下をひたひた歩む。白い軍服がぼんやりと浮かび上がるさまは幽玄というべきか。醇子は体が覚えている順路に従って進み、大きな扉をそっと押し開けた。なにげなく見やったダイニングの奥に、紫紅色に輝く縦長の瞳孔。
「わ、びっくりしたっ?! ―――なにしてるのよ美緒、明かりもつけずに」
 醇子は思わずのけぞり、跳ねあがった心臓を押さえる。驚きに胸がバクンバクン。
「なんだ、醇子か。お前こそどうしたんだ、まだ夜明け前だぞ」
 炊事場で火をあつかっていた坂本美緒は、夜目のきく魔眼を閉じてアイパッチを元にもどす。
「寝るのが早かったから目が覚めちゃった。誰かさんがシゴいてくれたおかげね、お風呂に入ったらすぐ眠くなって」
「はっはっは、早寝早起きとは感心感心! それもこれも厳しい訓練の賜物だな」
 含みのある物言いにも動じず、美緒はからから笑う。夜明け前という時間帯を考慮してか、その声のボリュームは格段に抑えられていた。
 あっさり流されてしまった醇子は肩で大きな溜め息をつく。
「そうやっていつも都合良くとるんだから。私はあのメニューでも大丈夫だけど、基礎体力がついていない子には酷よ」
 実戦を想定した組み替えチーム戦の終了後。
 湯船に沈み込む軍曹たちを発見したゲルトルートは仰天、子熊を案じる母熊のごとく二人を両脇に抱えて医務室へ駆けていった。
「宮藤とリーネのことか? あれくらいで音をあげるようなら軍隊ではやっていけんぞ。それに鉄は熱いうちに打てと言うだろう?」
「はいはい、そうでしたね坂本さん……」
 美緒に教練をうけていた新兵時代、いろいろと無茶な難題をふっかけられたなぁと醇子は遠い目。指導者として優秀なのは疑いようがないが、いささかスパルタ教育に傾倒しすぎているように思う。根性論では伸びない場合もあると苦言を呈するべきだろうか。
 話が途切れたそのとき、美緒の背後からシュンシュンと上がる蒸気。
「…お、そろそろだな。さて準備するか」
 そう言って、美緒は手近にあったオイルランプをともす。その柔らかな光源が巨大な釜を浮かび上がらせた。
「御飯を炊いてたの? じゃあ美緒はお腹が減って目が覚めたんだ」
 ただよう白米の香りは扶桑人の本能を刺激する。ついさっきまで食欲などトンとなかったのに不思議なものだ。
「いや、私は自主鍛錬があるから大体この時間には起きている。それをこなしている途中にふと食事当番のことを思い出してな」
 寝坊してくるだろう部下のために。
 訓練にあたっては厳しい美緒だが、日常生活ではこういったさりげない気配りをみせる。
「ああそれで……あの子たち、相当へばってたものね」
 さしでがましい口をきかなくて正解だったと、醇子は微笑む。
 昔からずっとそうだった。空戦技術が優れているというだけで、あれほど部下に慕われるわけがない。
「私にできるのは握り飯くらいだがな。さすがに料理の腕ではあの二人に遠く及ばん」
「ふふっ、そうね。それじゃあ、私はお味噌汁でもつくりましょうか」
 柔らかに微笑むと、美緒をまねて士官服の袖をまくる。壁にかかる芳佳の割烹着とリーネのエプロンを目に留め、その双方に手を伸ばした。
「本当か?! 醇子の味噌汁は美味いからなぁ。あれを久しぶりに味わえるとは楽しみだ」
 一段上がる声のトーン、黒い瞳がきらきら。
 醇子はやたらとプレッシャーをかけてくる上官を軽く睨む。ごくありふれた教科書どおりの作り方を称賛されても複雑だ。
「だから美緒は大げさだっていうの。持ち上げても何も出ないんだからね」
「言っておくが、おべっかじゃないぞ? 私が扶桑男児だったならお前を放っておかないんだがな、はーっはっは」
「…はいはい、その節はよろしくお願いします」
 なんの気なく口説き文句を放つ美緒に頭痛を感じ、手にした割烹着を押しつける。
 本人に自覚がないのが厄介だった。竹を割ったような性格や明朗快活な言動は愛すべき美点であるが、それは時と場合により多大なる誤解を招く。長いつき合いの醇子だって時々勘違いしてしまいそうになる。

91 名前:変わらないもの②:2009/12/20(日) 21:53:44 ID:zE2oIV06
「御飯とお味噌汁だけというのも寂しいわね。定番は焼き魚だけど」
 大鍋に湯を沸かし、出汁をとっている間に周囲を見回す。まだ食材の配給状況がつかめない。
 そんな僚友を見て取った美緒は、調理台の隅に置いてある木箱をのぞきこむ。
「塩漬けのものならここにあるぞ。この基地は海に面しているから魚介は豊富にとれる。必要だったらさばくが?」
 元々じっとしているのが苦手な性分。米をむらしている時間が手持ち無沙汰らしい。
 それをよくわかっている醇子は面倒な開き作業を任せることにした。
「ええ、お願い。そうそう、みんな好き嫌いはある?」
「ルッキーニとエイラは何でも食べるな。他は生魚や生卵、納豆はうけつけないようだ」
 危なげない手つきで魚を開きつつ答える美緒。刃物を使った作業は得意だ。
 根菜をザク切りにしていた醇子は耳にした情報に呆れる。
「それは好き嫌いっていうより生理的なものでしょう? こっちには生食の習慣なんてないんだし」
「まあな。だが宮藤はあれでなかなか頑固だ。扶桑食は健康に良いと、機会をみつけては皆にすすめている」
「へえ〜意外ねぇ。あっ、一度洗うから、開いたものはここへ」
 指定した場所に積みあげられていく魚の開きを冷たい水ですすいでは大皿に移す。戦闘隊長として部隊を率いる扶桑海軍士官、今はエプロンと割烹着をつけている二人は厨房においても見事な連携をみせた。
「しかしなんだな、醇子とこうしているとリバウにいた頃に戻ったようだ」
「そうね。あの頃はあなたがいて、扶桑から一緒だった仲間がいて、毎日の任務をこなすのに一生懸命で」
 生まれ授かった力を、はるか遠き異国の人々を守るために。
 着任してみれば次から次へと入ってくる救援要請。士気は高くても実戦経験のない隊員が大半で、めまぐるしく変わる地域の戦況に翻弄された。
「連合軍の後ろ盾があろうと私たちは所詮よそ者。最初はどんなに戦果をあげても認めてはもらえず……それでも辛抱して黙々と任務をこなし続けるうち、リバウ航空隊は世界に名だたる部隊となった。皆がくさることなく従務できたのは醇子のおかげだ。本当に感謝している」
 魚をさばく手を止めて、美緒は穏やかに告げる。
 ぎょっとした醇子は両手に持っていた魚をお手玉。挙句の果てに流しへ取り落とす。
「ちょ、ちょっと、私は特別なことはなにも」
「気づいていないならそれでいい。ただ―――私はお前の存在に随分助けられた。それを伝えておきたかった」
 度重なるブリタニアのウィッチ研究機関への出向。戦時下においてそんな無理を通せたのも、留守を任せられるしっかり者がいてこそだ。
「なによ、らしくない……お礼なんて言われても嬉しくないわ。美緒は美緒らしく、前だけ向いていればいいの! あなたの背中は私が、ううん、この501の皆が守るから!」
 なんだか必死な自分自身に、醇子は戸惑う。けれど、「伝えておきたかった」なんていう言い方は絶対におかしい。まるでもう会えなくなるみたいではないか。
 美緒は耳にした訴えにきょとんとすると、しっかと握られた手首をたどって隣をのぞきこむ。
「おいおい、なんて顔をしている。それでもリバウの貴婦人と称されたエースか?」
「だって、美緒が変なことを言うからっ」
「はっはっは、すまんすまん。よけいな気を回させてしまったか。別に深い意味などないんだ。たまには感謝の気持ちを言葉にしておかねばと思っただけで」
 詰め寄ってくる同僚を制して、からからと美緒は笑う。
 その様子から杞憂だと悟った醇子は、ひとつ咳払いを落として作業に戻った。
「まったくもう、遺言かと思うじゃない。朝っぱらからびっくりさせないでよね」
「遺言? この私が? それこそ面白い冗談だ。悪いがまだまだ死ぬつもりはないぞ」
「ええ、全て小官の早とちりであります。我が扶桑皇国海軍の誇る坂本少佐に、もしもなんてあるはずがありません」
 平坦に告げると、切った具材を鍋へポイポイッ。
 優雅な立ち振る舞いから貴婦人とあだ名された人物にしては乱暴な行為だ。
「やけに刺々しいな。私は絶対に死なないし、なにがあろうと無事に帰ってくる。醇子は私を信じないのか?」
「そんなわけないじゃない……信じているわ。誰よりも、なによりも、あなたを」
 醇子は真っ直ぐに視線を合わせる。『信じる』ということの意味を教えてくれた、かけがえのない人と。
 先生と教え子、上官と部下。そして、最高の戦友。時間の経過とともに二人の立ち位置は変わったが、互いへの信頼は一度だって揺らぐことはなかった。

92 名前:変わらないもの③:2009/12/20(日) 21:54:55 ID:zE2oIV06
「う、うむ。そう改まって断言されるとなんだか照れるな。は、ははっはっ」
「自分から振ったくせに、もう」
「いかんいかん。時間がおしてきた。握り飯のほうに取り掛からんと」
 分の悪さを悟った美緒はそそくさと大釜にむかう。
 もうとっくに日は昇り、起床サイレンまであと15分といったところ。ひとまず追求は後回しにして、醇子は手のひらに粗塩を揉みこむ。
「手伝うわ。急ぎましょう」
「ああ、頼む。なにしろ皆よく食うからな、たくさん作ってくれ」
「了解!」


XXX


 にぎにぎ、にぎにぎ。
 大皿に並んでいく白くて丸いもの。

「美緒のおにぎり、ちょっと大きすぎない? 一個でお腹いっぱいになっちゃうわよ」
 例えるならグレープフルーツ。よくそのサイズを丸められるわね、と醇子は別な方面で感心する。
 もっともな意見だが、せっせと大むすびを量産する人物は意に介さない。
「このくらいでないと握りづらいんだ」
「あ、そう。ところで三角おにぎりは作れるようになった?」
「はっはっはっは、憶えていたか! では、ひとつ挑戦してみよう。丸い状態から角をつくっていけば……よしよし、今回はいい感じだ。このまま、っく、ぬぉ、ていっ」
 朗らかな様子が一転、眉を寄せて悪戦苦闘。白い大玉がみるみるうちに圧縮されていく。
「ええいくそっ、失敗だ」
 塊を受け止めた皿がカーン! 美緒の驚異的な握力により、おにぎりは石ころと成り果ててしまった。
 一部始終を間近でみていた醇子はあきれる。リバウ基地にいた頃からまるで進歩がみられない。
「りきみすぎなのよ、美緒は。ほらこっちに手を貸して。まずそっと手のひらで包み込むでしょう? この状態で片手を上から被せて、そうそう、こうして優しく」
「…力を抜いて、優しく、優しく―――あっ、こら、醇子やめ、指を突っ込むな、こっちの準備がまだ、うあっ、指を曲げるな?! そんなふうにされたら、くぅ! だ、だめだ、もうもたない」
「おかしな言い回しはやめてよね。人に聞かれたら妙な勘違いをされるじゃない」
 まず確実にアハンでウフンな噂がたつ。
 サポートする醇子がはなれると、美緒の手中には少々歪な三角形。
「おおっ?! すごいじゃないか、はじめて成功したぞ!」
「はいはい、良かったわね」
 きらきらした瞳をさらりと受け流す。こうも絶賛されると面映い。
「もっと喜べ! 醇子がいたから上手くいったんだぞ。やはり、持つべきものは頼れる戦友だな」
「だから大げさだって。まあ、役に立てたなら嬉しいけど。ねえ、美緒」
「うん? なんだ?」
 こほんと咳払いを落とす扶桑撫子を、ためつすかしつ処女作を眺めていた美緒が振り向く。
「扶桑で聞いた話なんだけど、人間の幸せは4つあるって知ってた?」
「4つ? いや、初耳だが」
「人に愛されること、人に褒められること、人の役に立つこと、人に必要とされること。これって真理だと思わない?」
 醇子は穏やかに微笑む。忘れていた話を突然思い出す、そんな瞬間が時におとずれる。
 問われた美緒は、頭の中で内容を繰り返したのち腕組みを解いた。
「…たしかにな。では醇子は今、幸せか?」
「ええ、すこぶるね。美緒はどう?」
「私か? そうだな、う〜ん……やはり幸せだな、はっはっはっは!」
 頷きあい、笑いあう。唱和する笑い声に被さって、けたたましく鳴り響く起床サイレン。
 すると、にわかに廊下が騒がしくなった。近づいてくるバタバタとした足音、そして少女たちの甲高い悲鳴。
「お? やっと起きてきたか」
「ふふっ、随分と慌てているようね」
「まったく落ち着きのない―――こら、宮藤にリーネ! 廊下を走るなっ!」

93 名前:変わらないもの④:2009/12/20(日) 21:55:39 ID:zE2oIV06

「「 す、すみません!」」

 食堂へ駆け込んだ瞬間に一喝されて飛び上がる。
 ついで、身を寄せ合っていた軍曹たちは眼を真ん丸に。

「坂本さん、どうしたんです、その格好?! 竹井さんまでそんな、あいたっ?!」
 不躾に上官を指差す芳佳に、ゴインッと拳骨が見舞われる。
「情けないぞ! 扶桑の撫子たるものが品のない」
「勝手に借りちゃってごめんね。朝食の支度に必要だったから」
 説教モードに突入しそうな気配を察した醇子が割って入る。さすがはリバウの貴婦人といったところか。
「きゃあ?! 頭なんて下げないでください、竹井大尉っ!」
「そうですよ、竹井さん! 食事当番なのに寝過ごしたのは私たちのほうで」
 両手を必死にわたわた。まだまだ新米の軍曹たちは、身の置き所のなさに困り果てる。
 そんな様子を見やった隊長陣は、しばし視線を合わせたのちに微笑んだ。
「なにを寝ぼけている。今朝の食事当番は私と竹井大尉だぞ」
「坂本さんの言うとおりよ。昨日の訓練後に伝えてあったじゃない」
「え? あ、あの……芳佳ちゃん、そうだったかな?」
「さあ?? まあでも良かったよね、リーネちゃん」
 寝坊したと大慌てだった二人は、阿吽の呼吸を発揮する扶桑士官にあっさり丸め込まれる。そうして年相応の純朴な笑顔を浮かべ、朝食の準備を手伝うと申し出た。
「すまないな。では、宮藤はおにぎりをテーブルへ、リーネは味噌汁をよそってくれ。ああ、急ぐ必要はないぞ」
「「 はいっ!」」
「…本当にいい子たちね。よく気がつくし、性根は優しいし。少佐が可愛がりたくなる気持ちがわかるわ」
「はっはっは、そうだろう、そうだろう。竹井もようやく育成のなんたるかがわかってきたか。よし、お前にはこれをやる! 朝食をがっつり食って、今日の訓練も気合を入れていくぞ!」
 バシンと僚友の肩を叩くと、美緒は片手に持っていた皿を押しつける。そして上機嫌に朝食の支度に戻っていった。
 一人立ち尽くす醇子は、大きな三角おにぎりを見つめて微笑む。
「4つの幸せ、か……そんなあなただから、周りに人が集まるの。たぶん気づいてないでしょうけど」
 太陽のような笑顔を浮かべて最前線にたつ戦闘隊長。
 海軍兵学校をでたばかりの頃からずっと、醇子はその輝きを間近にしてきた。こうなりたいと思う目標が存在し、少しでも近づきたくて必死に努力を重ね、そうして過ごしてきた先に今の自分がある。
「あなたと出会えて、本当に良かった」
 人間関係でも歪なトライアングルを形成する困った人だけど。
 信じ続けるということに挫けず、前だけを見つめる在り方を貫き通す―――そんな彼女の背中をこれからも守り続けたい。
「おい竹井、ぼさっとしてないで手伝ってくれ。火加減の調節がどうもうまくいかん」
「…はい? わ、すごい煙っ! うわ、魚が燃えてる?!」
 なにげなく振り向いた先に火柱。すでに火加減がどうのというレベルじゃない。
 ダダダッと駆け寄ってコンロの火を止め、芳佳とリーネに窓を開けるよう指示する。廊下から「なんだこの煙は、火事か?!」「バケツを持ってこい、水を運べ!」という衛兵の叫びと、駆けずり回る足音。
「あーあ、大騒ぎになっちゃって……どうするのよ、坂本さん?」
「そうさなぁ……まあ、ジタバタしてみても始まらん。飯を食ってから考えよう」
 元凶である美緒は浮き足立つ兵士に一声かけ、泣き出しそうな軍曹たちを追い立ててテーブルにつく。そしてこの騒然とした状況で、先頭を切っておにぎりに手を伸ばした。
 昔とちっとも変わらない肝の据わりよう。醇子は呆れとともに奇妙な安堵感をおぼえる。腹をくくった親友にならって腰を落ち着けると、手にした三角おにぎりにパクついた。


 その後―――
 本日の朝食当番二名は隊長室へ出頭。
 ミーナ中佐から基地破壊行動について懇々と諭され、部隊運営予算の切実な現状をくどくどと愚痴られ、士官という身分にありながら大浴場掃除を仰せつかったという。

94 名前:名無しさん:2009/12/20(日) 21:56:54 ID:zE2oIV06
竹井さんが結構好きなので。
カンブリア宮殿を見ていて思いついた話です。
二人のリバウ時代とか気になりますね。

95 名前:名無しさん:2009/12/21(月) 01:22:55 ID:qjMl7B92
>>94
二人の掛け合いってあんまり見てない(DS版は持ってるけどDSを持ってないw)から
割と新鮮で面白かった。俺も竹井さん好きだb
ぐっじょぶでした。

96 名前:名無しさん:2009/12/21(月) 02:09:24 ID:BSbwwtLk
秘め歌CDのネウ子がそろそろ届くらしいな
すっかり忘れてたよ

97 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/23(水) 21:38:07 ID:RpUAT/fA
>>94
GJ!
もっさんとジュンジュンいいですね。


さてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
ちょっと思い付いた事をSSにしてみました。
いつもながら保管庫No.450「ring」シリーズ続編と言う事で。
ではどうぞ。

98 名前:hot fashion 01/07:2009/12/23(水) 21:39:07 ID:RpUAT/fA
 その日の午後は雲ひとつ無い快晴で、訓練にはうってつけだった。
 ストライカーを履き、銃を肩に掛け、軽やかに空へと揚がるふたりのウィッチ。
「……ああ、了解した。機動テストの後、訓練を開始する。行くぞ、ハルトマン」
「いつでも良いよ、トゥルーデ」
 トゥルーデとエーリカはロッテを組むと、ストライカーの調子を確かめ、ゆっくりと降下し、上昇する。
 一度ホバリング状態に移行し、再度状態を確認しあう二人。エーリカが自分とトゥルーデの姿を見、声を掛けた。
「よし、問題なし、と」
「そろそろ行くか?」
「良いよ、トゥルーデ。今日の訓練のルールは『十秒後ろに付いたら勝ち』って事だったよね?」
「ああ。まるで決闘だな」
『バルクホルン、ハルトマン、どうした。始めないのか? 何か問題でも有ったか?』
 基地の司令所テラスから二人を見守る美緒が無線で話し掛けてきた。
「いや、今回の訓練内容を確認していただけだ。問題無い。これより開始する」
『了解した』
 トゥルーデとエーリカは頷くと、速度を上げ、訓練を開始した。

 司令所テラスで上空の様子を眺める美緒。双眼鏡を手にしているが、魔眼も使って二人の動きをくまなくチェックする。
「うむ。いつも通りだ」
「ええ。良い調子ね」
 いつやって来たのか、ミーナが美緒の横に立ち、空を見上げた。
 陽射しが暖かい。掌で陽の光を少し遮って、訓練の様子を見守る。
 二人はしばし無言で訓練の様子を見ていたが、ぽつりと美緒が言った。
「いつ結婚するんだ?」
「えっ!? な、何いきなり!? 一体何の事? 私まだ心の準備あでもいつでも大丈夫だけど……って美緒?」
 慌てふためくミーナ。
「ん? ああすまん。独り言だ」
 苦笑いする美緒を少々の呆れ顔で見た後、再び空に視線を戻しミーナは言った。
「あの二人の事?」
「そうだ。ずっと最前線に居ながら、よく戦意を維持している。なかなか出来ん事だ」
「あの二人だからこそ、よ」
「ミーナの言う事だ、きっとそうなんだろうな」
「あら、やけに素直に私の言う事を信じるのね」
「カールスラントの乙女は真面目で一途だからな」
「何処でそんな事覚えたのかしら?」
「格好の例が私の目の前に居るじゃないか」
 何気なしに呟いた美緒の前で、顔を赤らめるミーナ。見られたくないのか、ぷいと横を向く。
「ん? 何かヘンな事でも言ったか?」
「これだから……」
 二人の間を微妙な空気が流れた。
 が、間もなくその雰囲気は吹き飛ばされる事となる。

「待て、ハルトマン」
 上昇に移り掛けたトゥルーデが、基地から微かに聞こえてきた警報、ほぼ同時に打ち上げられた花火を察知し、動きを緩めた。
 即座に無線で呼び掛ける。
「司令所、指示を頼む」
『ネウロイだ! グリッド東08地域、高度12000に侵入! 訓練を中止し直ちに迎撃せよ』
「了解」
『基地から他の機が間もなく出る。バルクホルン、ハルトマンは先行して敵況を報告せよ』
「了解!」
 銃を構え直すと、トゥルーデとエーリカは指定されたエリアへと急行した。

99 名前:hot fashion 02/07:2009/12/23(水) 21:39:32 ID:RpUAT/fA
 数分飛んでいると、遠くに“所属不明”の飛行物体が見えた。かなりの速度で接近してくる。
 付近を飛行中の航空機は無く、すぐにネウロイだと察知する二人。
 やがてこちらに向かってくるネウロイを見て、エーリカはちょっとした驚きを軽い欠伸で誤魔化しながら言った。
「うわあ……トゥルーデ見て。今回のネウロイ、編隊組んでるよ」
「見た目はそうだな」
 ざっと見て、いわゆる“ロッテ”が四組。いや、“シュバルム”がふたつというべきか。
「ネウロイも遂に集団戦闘を覚えてきた、と言う事か?」
「どうだろうね。単純に整列してるだけかもよ? 前ぇ習えってね」
「司令所へ、ネウロイを確認した。小型タイプが全部で八機……」
 突然無線に奇妙な“旋律”が走る。それまでクリアだった音声がざらついたものに変わり、すぐに沈黙した。
「司令所、応答せよ。司令所!? おい! 応答しろ!」
「トゥルーデ……」
「ああ、まただ」
 前方に広がるネウロイの群を見て、トゥルーデは敵を睨んで言った。
「ここに来て電波妨害か。どうするハルトマン。一旦距離をとるか、援軍を待つか」
「あの速度だと、待ってるうちにブリタニア本土に近付かれちゃうよ」
「となると……答えは」
「決まりだね」
 二人は頷くと、銃を構え直し、安全装置を解除し、ネウロイ目掛けて突っ込んで行った。

 ネウロイは編隊を組んだまま……少なくともトゥルーデにはそう見えた……
ゆっくりと旋回し、トゥルーデ達に迫った。どうやら背後からビームを浴びせるつもりらしい。
「まずは奴等の動きを見るとするか。こう言う時のセオリーは?」
「端からだっけ?」
「相変わらずだな」
 ふっと笑うと、エーリカはネウロイ目掛けて急旋回し、端の小型ネウロイに狙いを定めた。
 その時、ネウロイ達は一斉に動いた。いや、反射的に散り散りになったというべきか。
そして全方位を取り囲む位置取りで、エーリカにビームを放った。
「これ位!」
 軽やかな動きで全てのビームを避けきると、狙っていたネウロイ向けて銃撃した。
正確な射撃を受けたネウロイは抵抗の機動も虚しく爆発した。
「まず、ひとつめ!」
 声を上げるエーリカ。
「まだまだ最初のひとつだ」
「もっと稼ぐよ! ボーナス上乗せだね!」
 エーリカの言葉に頷いたトゥルーデもMG42をうまく操り、瞬く間にネウロイを一機撃墜する。
 爆発の塵は美しいが見とれている暇など無い。

100 名前:hot fashion 03/07:2009/12/23(水) 21:40:10 ID:RpUAT/fA
 間もなく戦いは“混沌”と言うべき状況になった。
 ネウロイはなお数が多く、しかも勝手に動くので逆にペースを乱されつつあった。
 偶然か、エーリカが集中的に狙われ、回避やシールドでの防御も虚しく一筋のビームがストライカーに被弾した。
 右ストライカーの外装がぼろぼろになり煙が出て、エーテル流プロペラもゆっくりと止まった。
「ハルトマン、大丈夫か!?」
「何とかね! まだ飛べるよ!」
「無理をす……」
 刹那、一機のネウロイがトゥルーデと交錯する。咄嗟にシールドを張るも、直撃を受けてしまう。
シールドのお陰でネウロイは爆発したが、その爆風に耐えきれずシールドが一部破られ、
何かの破片がトゥルーデの顔面を掠めた。
 一瞬の出来事に、トゥルーデは意識が飛びかける。そのままふらふらと失速し、海面付近まで落下する。
「トゥルーデ!」
 エーリカが慌ててフォローに入る。直撃寸前のビームを辛うじてシールドで弾く。
「大丈夫、トゥルーデ?」
 トゥルーデの肩を持つエーリカ。身体を触れられた感覚で気付いたのか、トゥルーデは弱々しく声を上げた。
「ああ、ハルト……エーリカか」
 トゥルーデの左瞼の上が切れ、鮮血が流れ、目に入り込んでいる。顔をしかめるトゥルーデ。
「困った。視界が悪い」
「トゥルーデ、目に血が」
「ああ、その様だ」
「とりあえず」
 エーリカは何とかトゥルーデを引っ張り、ネウロイの群……ビームの範囲外まで逃げ出した。
 トゥルーデは服のポケットハンカチを取り出し、血を拭う。しかし左目に流れ込む血は止まらず、視界がクリアにならない。
もしかしたら、瞼だけでなく目そのものにも何らかのダメージを受けているかも知れない。
そうエーリカに告げると、エーリカは自分のとトゥルーデのハンカチを結び、合わせて長く裂き、
額からぐるりと左の目を覆い、きゅっと縛ってみた。即席の眼帯の出来上がりだ。
「これで、血は止まるよ」
「すまない」
「絶対に仲間(僚機)は失わない。安心して」
「そうだったな。頼もしいな」
「それ以前に、一番大事な人を失いたくないよ」
「有り難う」
「もうすぐ掩護が到着するけど、どうする?」
「残りはあと何機だ?」
「割と沢山」
 トゥルーデはぼやける視界で辺りを見回した。爆風の影響か、まだ見える筈の右目もかすんで見える。
「なあ、エーリカ」
 トゥルーデは何か言いかけたが、エーリカに遮られた。
「分かってる。じゃあ、やってみようか」
「ああ」
 二人は身体を重ねた。まるで訓練用の二人用戦闘脚を付けているみたいに、エーリカは片腕をトゥルーデの腰に回し
ぎゅっと抱きしめた。トゥルーデも片腕をエーリカに回し、おんぶする格好になる。
「なんか、訓練生時代を思い出すよね」
「まったくだ」
 余裕か開き直りか、二人はくすっと笑った。
「で、トゥルーデは、目は見えないけど動けるよね。固有魔法で私も軽々、ね」
「そしてエーリカはストライカーに被弾しているが、射撃と目視は出来る、と」
「決まりだね」
「やってみるか。……いや。やるしかないか」
「行こう、トゥルーデ。私達は、今はふたりでひとりのウィッチだよ?」
「ああ。ブリタニアの空は、私が……」
「そこは複数形にすべきだよ。“私達”、ってね」
「そうだった。私達が……、私達が、この空を護ってみせる!」
 歯を食いしばり、トゥルーデは片手でMG42を構えた。ストライカーの魔導エンジンが唸りを上げる。
「行くぞ、エーリカ!」
「いつでも良いよ、トゥルーデ!」
 エーリカもMG42を構え、踏ん張った。
 二人は抱き合ったまま、再び戦火へと舞い戻った。

101 名前:hot fashion 04/07:2009/12/23(水) 21:40:35 ID:RpUAT/fA
 重量を活かした一撃離脱。群を掻き乱し、すれ違い様に一機仕留める。海面スレスレまで急降下した後、
勢いで急上昇し、群からはぐれたネウロイをまた一機屠る。コアを破壊され爆発し、瞬く間に塵と化す。
 トゥルーデは二人分の機動を担当し、エーリカは目となり腕となりトゥルーデを導く。
軽く体重を傾け、的確にトゥルーデに指示を出す。
「右三度、ロール」
「こうか?」
 エーリカから直に伝わる身体の傾きと言葉で、トゥルーデはすぐさま機動を行う。
エーリカのストライカーも補助的な出力となり、機動に一層のキレが出る。
「オッケー! 次、左スリップ! 左方に短射、三回!」
「よし!」
 二人の前方にはネウロイの機影が見える。トゥルーデは自身の固有魔法の強みか、片手で容易くMG42を操る。
「直前方、斉射二秒!」
 トゥルーデの銃撃で逃げ腰になったネウロイをエーリカが的確に捉え、挟み撃ちの要領で撃破していく。
「いっただきー!」
「やったか!?」
 背後で爆発の轟音が聞こえ、すぐに遠ざかる。
「一匹仕留めたよ。次左バンク……やばっ、シャンデル! もっときつく!」
「ぐおお!」
 二人の鼻先をネウロイがかすめて飛んでいく。反航しつつ距離と高度を稼ぎ、機会を窺う。
「危なかった〜。急上昇、行けるとこまで……オッケー、一度水平に、そう、そんな感じ」
 トゥルーデは唸り声で返事の替わりとした。ストライカーの魔導エンジンにありったけの魔力を注ぎ込んでいる。
「頑張れトゥルーデ、私達イケるよ」
「とりあえず、生きて帰りたい」
「私が保証するよ、必ず帰ろう」
「頼もしいな」
「トゥルーデもね」
 敵の真っ直中にあっても、トゥルーデとエーリカは恐怖を感じていない。
 二人がお互いを心から信頼している証。
 やがて次第に劣勢となっていくネウロイの群れ。

「あの二人、一体何をやっているんだ」
 遅れて掩護を引き連れてやって来た美緒が魔眼を通じて事態を把握する。
「凄い……。あの状態で、あの機動……」
 ロッテの長機として飛行していたペリーヌも、トゥルーデ達の奮戦を目撃し、言葉を失う。
「ペリーヌ、周辺に残存ネウロイが居ないか注意しろ! 宮藤は攻撃に備えシールドを」
「了解しました」
「了解!」
 二人のエースが「二人羽織」で行う鋭い急降下と急上昇の繰り返し、僅かに機体をスリップさせ
被弾を免れる繊細かつ大胆な機動を見、美緒達は驚嘆した。
「流石はエース、と言う事か。……リーネ、二時の方角にネウロイだ! 撃てるか」
「はい!」
 リーネはすかさずボーイズを構え、きっかり三秒後、続けざまに四発撃ち込んだ。やや遅れて、遠方で爆発の痕跡が見られた。
「少佐、付近にネウロイの姿は有りません。大尉とハルトマン中尉はなお飛行中です」
「よし。……どうやら戦闘終了の様だな。バルクホルン達と合流する。無線の状況に注意しろ。
まだネウロイの影響が残っているかも知れない」
「了解」
「バルクホルン、ハルトマン。状況を報告せよ。聞こえるか? 応答せよ」

「片付けたよ、トゥルーデ」
「本当に終わったのか?」
「うん。向こうからみんなが来るよ。しっかし今頃遅いなー」
「今更だな。でもまあ良い。撃墜スコアは頂きだ」
「共同撃墜だけどね」
「何でも良い。どうやら生きて帰れそうだ」
 ふうと一息付くトゥルーデ。ホバリングに体勢を移し、微笑んだ。
「有り難う、エーリカ」
「どうしたしまして。てかトゥルーデ、早く帰ろう。出血が結構酷いよ」
 肩を貸すエーリカ。
「ああ……言われてみればそう、かも」
「基地に連絡して救護班を要請しよう。すぐ帰ろう」

102 名前:hot fashion 05/07:2009/12/23(水) 21:41:07 ID:RpUAT/fA
 基地には滑走路上に救護班が待機しており、エーリカとトゥルーデは着陸後直ちに医務室へ運ばれ、
念入りな検査を受けた。
 エーリカはストライカーの破損のみで身体には影響なく、懸案のトゥルーデも幸いな事に負傷の程度は軽く、
芳佳が夜を徹して施した治癒魔法の甲斐もあり、一晩で驚異的な回復を見せた。
 美緒とミーナは今回のネウロイの“戦法”について戦況を交えながら議論したが、明確な答えは出なかった。
 議論の後、二人の治療にあたった医師や整備班の報告を受けレポートを纏めたあと、ミーナがぽつりと呟いた。
「とりあえず怪我の程度が軽くて良かったわ」
「ああ。最悪、我が隊のエース二人を失うところだった。私の指揮が軽率だった。すまない」
 悔やむ美緒。
「いえ、通信もネウロイに遮断されていたし、仕方ないわ。むしろ……。」
「むしろ、何だ?」
「あの二人でなかったら……と思うと、少し怖いわ」
「なるほどな」
「その意味では、あの二人で正解よ。美緒」

103 名前:hot fashion 06/07:2009/12/23(水) 21:41:29 ID:RpUAT/fA
「これ何本?」
「もうしつこいぞ……エーリカの指が二本だ」
「当たり。もう大丈夫って事で良いのかな?」
「私はいつだって大丈夫だ」
「治癒魔法使ってくれたミヤフジに感謝しないとね〜」
「ああ、今度何かしないとな。食事でも振舞うか」
「トゥルーデの?」
 医務室のベッドでお喋りするトゥルーデとエーリカ。
 トゥルーデはベッドの上で、食堂から運ばれて来た夕食を食べつつ、エーリカのからかいに応じている。
「さて問題。これは何本?」
「それは……何本じゃなくてOKサインじゃないか」
「当たり」
「もう良いだろ」
「あ、全部食べたね。おかわり要る?」
「いや、充分だ。食べ過ぎも良くない」
「りょ〜かい」
 エーリカは適当に食器を片付けると、トゥルーデの横に座った。
 何処で調達したのか、黒のアイパッチを取り出すと、トゥルーデの左目を覆うガーゼの上から、きゅっと付けてみる。
「エーリカ、何するんだ。もう目は大丈夫……」
「こうやって、少しはポーズ取らないと」
「ポーズ? 何の?」
「名誉の負傷、みたいな?」
「もう治った。そもそも傷跡も消えた。要らん」
「駄目だよトゥルーデ、せっかくの海賊船長が台無しだよ」
「……私はいつから海賊になったんだ?」
「そんな感じ、しない?」
「し、な、い。もう取るぞ」
「駄目」
「何で」
「これで少佐と並んだら、何か格好良くないかな」
「少佐と?」
 想像してみたものの、いまいちその様子が浮かばないトゥルーデ。
「トゥルーデのアイパッチ姿、なんかホレちゃうよ」
 くすくすと笑うエーリカ。
 いささかげんなりしていたトゥルーデだが、エーリカの小悪魔みたいな笑顔を見ているうちに、
何故か、もやもやしていた気分が晴れていく。
「ほら、見なよ」
 手鏡を渡される。
 トゥルーデはしげしげとアイパッチ姿の自分を眺めた。
「何とも言えんな。やっぱり少佐みたいにはいかん」
「当たり前だよ。向こうは固有魔法、こっちは負傷だよ?」
「だからもう治ったと」
「まだだめ」
「どうして」
「私が満足しないから。分かるよね、トゥルーデ」
「エーリカ……」
 エーリカは毛布の上からトゥルーデの身体に跨り馬乗りになると、顔を両手でそっと持ち、
アイパッチの上からそっとキスをした。
「くすぐったい」
「なんか、雰囲気出るよね」
「ここ医務室のベッドだぞ」
「気にしない気にしない」
「気にしろ」
 そうこう言いつつまんざらでもなさそうなトゥルーデ。
 ゆるゆるとエーリカを抱きしめ、じっくりと口吻する。
 何度か長いキスを交わした後、二人は、はあぁ、と甘く熱い溜め息を付いた。
「トゥルーデ」
「何か、やっと実感が湧いた気がするよ、エーリカ」
「実感?」
「生きて帰った事」
「トゥルーデってば」
 エーリカはトゥルーデをベッドに押し倒し、ふふっと笑った。
「そんな事言うと……もっと実感させてあげたくなる」
 その言葉には答えず、トゥルーデはエーリカの唇を求めた。エーリカも全力で応じた。

104 名前:hot fashion 07/07:2009/12/23(水) 21:42:09 ID:RpUAT/fA
 朝にはすっかり体調も戻り、トゥルーデは医務室から“退院”して皆と朝食を共にした。
 トゥルーデのアイパッチ姿に、一同は驚いた。すすっと横にシャーリーがやって来て言った。
「へえ〜。堅物が負傷ねえ。アイパッチまで付けちゃって」
「な、なんだリベリアン」
「割とサマになってるじゃん」
「ウジュー ホントだ。なんか新鮮〜」
「ルッキーニまで……」
「で、治るのかい? 怪我は?」
 不意に真面目な顔をしてシャーリーが言った。
「ああ。もうなっ……ッ」
 本当の事を言いかけたが横に居るエーリカに脇腹をつつかれて言葉に詰まるトゥルーデ。
「?」
 二人のやり取りを見て首をかしげるシャーリーに、トゥルーデは曖昧な返事をした。
「……ま、大丈夫だろう」
「随分と楽天的だね堅物は。大事な自分の身体なんだぞ?」
「私の事を心配してくれるのか?」
「そりゃ、まあ……。隊の仲間だし、エースだし、同じ大尉同士だし、当たり前じゃないか」
「有り難う」
 素直に礼を言うトゥルーデ。ルッキーニは大尉二人の顔をちらちらと見比べた。
「あれ? シャーリー照れてる?」
「んな事あるか!? 朝から堅物にからかわれた気がする。行こうルッキーニ」
「ニヒヒ おかしなシャーリー」
 シャーリーとルッキーニは席に戻った。
「どうだバルクホルン。怪我の具合は」
 美緒が横に来てトゥルーデの顔を覗き込んだ。
「ああ少佐。宮藤の治癒魔法のお陰でもう大丈夫……だが、とりあえず様子見で」
「そうだな。激戦の直後だ。無理はいかんぞ」
 うんうんと頷く美緒。トゥルーデの横ではエーリカがニヤニヤしている。
「そう言えば宮藤はどうした? 姿が見えんが」
 辺りを見回すトゥルーデ。
「宮藤はお前の治癒の後魔力を消耗してまだ休息中、今朝の訓練も休みだ。そっとしておいてやれ」
 美緒が答える。
「やつには済まない事をしたな。今度礼を……」
「お礼は、おいおい考えれば良いんじゃない?」
 美緒の横に来たミーナがトゥルーデに言った。そして美緒とトゥルーデを交互に見比べた。
「あら、こうして見ると……二人揃ってアイパッチ付けてるとなんか面白いわね」
「ミーナも感心してないで」
「トゥルーデの黒、美緒の白。色もかたちもバッチリ合ってるわ。お揃いみたいで」
「ぶっちゃけありえない」
 呆れるトゥルーデ。
「まあ、ミーナが言うんだ。我々で何かやってみるか? 一発芸とか」
 笑う美緒。
「いや、勘弁してくれホントに」
 エーリカは相変わらずトゥルーデの服の裾を持って、笑っている。
 だが、トゥルーデはそんな賑やかな一同を、そしてエーリカを見、実感する。
 生きているとは、何と素晴らしい事か、と。
 自然と、エーリカを抱き寄せる腕に力が入った。

end

----

以上です。
色々ネタが混ざってますがお気になさらず。
お姉ちゃんもアイパッチ似合うと思うんですよ意外と。
もっさんみたいな紐結びじゃなくて、
もうちょっとがっちりした黒のアイパッチ。
海賊船長みたいな。個人的趣味ですね。

ではまた〜。

105 名前:名無しさん:2009/12/23(水) 22:28:31 ID:oOkxmxJ2
>>104
戦闘シーンがしっかり書かれたSSってあんま読んだことなくてちょっと感動。
さりげなくシャンデルとか使ってるのがニクいw エスコンのリプレイみたいな
映像が脳内で再生されてなかなか楽しかったっす。
次はバレルロールとかヨーヨーとかシザーズとか戦闘機動てんこ盛りのSS読んで
みたいなw
ともあれ楽しませていただきました、GJ!

しかしひとつだけ言いたいことがあるっ!
眼帯はお姉ちゃんやもっさんに限らず大抵のキャラに似合うと思うんだ!
ガチモードの芳佳とかかっこよさそうじゃね?w

106 名前:名無しさん:2009/12/23(水) 22:57:33 ID:1YXxnEMY
>>104
GJ!やっぱりガチの戦闘のあるSSは面白いなぁ。
つか二人羽織には不覚にも吹いたwそうかその手があったか。

>>105
俺は眼帯の上からメガネかけるペリーヌを妄想して興奮した。

107 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/24(木) 22:35:30 ID:hSNGB8VQ
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日〜と言う事で書いてみました。
いつも通り、今回も保管庫No.450「ring」シリーズ続編、
あと>>98-105「hot fashion」の続きと言う事で書きました。宜しくです。
ではどうぞ。

108 名前:名無しさん:2009/12/24(木) 22:36:34 ID:hSNGB8VQ
あ、
>>98-104「hot fashion」
の間違いです。すいません。
では改めて。

109 名前:falcate moon:2009/12/24(木) 22:38:18 ID:hSNGB8VQ
 その夜、トゥルーデの部屋では部屋の主ふたり……彼女とエーリカがくつろいでいた。
 昨日の今日と言う事でアイパッチは付けたまま……エーリカにずっと“強要”されっぱなしで仕方なくと、
トゥルーデは半ば諦めにも似た境地でいるうちに、まんざらでもない感じになっていた。
流されやすいのか? と自問自答するも、エーリカの笑顔を見ているうちに
どうでも良くなっている自分が居る事に気付く。
「見て、トゥルーデ」
 エーリカに腕を引っ張られ、窓際に向かう。
 指差した先に浮かぶのは、鎌の様に鋭く、細い月。
「あんなに細い月、あったっけ?」
「月齢によってはこうなる事もあるだろうな。あれは三日月なのだろうか?」
「無粋だなあ、トゥルーデ」
 エーリカはトゥルーデをぐいと引っ張り、抱きしめると、言葉を続けた。
「なんかさ、こう、神秘的な感じ、しない?」
 意味ありげな笑みを浮かべたエーリカに、トゥルーデはそっと頬を寄せて答えた。
「する」
「だよね〜。月は昔から神秘的なものだって話だし」
「まあな」
「しかも今夜は何か、分かる?」
「クリスマスの前の日だ」
「そそ。だからもっと」
「エーリカ」
「何?」
「今日は皆で、明日の為のクリスマスケーキを作ったり、部屋の飾りつけしたり、色々しただろ」
「うん。したよ?」
「ついでにルッキーニの誕生祝いもした。あれはあれでなかなか愉快だったが、まあそれは良いとして」
「良いとして?」
「私は訓練でも実戦でもないのに固有魔法を使わされて荷物運びだのさせられてだな……」
「いいじゃない。トゥルーデの有効活用。だってこう言う時って私の固有魔法、使えないじゃん」
「それはな……。お前が基地の中で使ったら建物が崩壊する……気がする」
「酷いな、その見方。部屋片付ける時とか良いんだよ?」
「あれは片付けじゃなくて撒き散らしてるだけだ。その後の私の苦労を……」
 いきなりエーリカにキスされ唇を塞がれ、言葉を失う。しばしゆっくりとお互いを感じ、確かめ合う。
「トゥルーデってば、雰囲気出ないな」
「そんなこと、ないぞ」
「じゃあ私の事、愛してる?」
「勿論だ。この命を掛けても良い」
「じゃあ『愛してる』って十回言って?」
「な、何故急に?」
「言わないと……」
「分かった分かった。愛してる、愛してる、あ……」
 またも唇を塞がれ、言葉が途切れた。
「もう良いよ、トゥルーデ」
「怒ったのか」
「なんか、照れる」
「あのなあ……」
 エーリカは照れ隠しか、窓の外を見た。月は二人を微かに照らし、夜空に細く、明るい輝きを放っている。
 トゥルーデはエーリカの肩を抱いた。エーリカは嫌がる風でもなく、トゥルーデに身体を預けている。
「エーリカは、私の事を」
「言わなくても分かるよね? でも言って欲しいでしょ」
「う……それは、まあ」
 トゥルーデの耳たぶにキスした後、囁いた。
「愛してる。誰よりもずっと」
「有難う」
「ふふ、やっと何かいい感じになって来たね」
 エーリカははにかんだ笑みを見せた。
 トゥルーデはちらりと部屋の時計を見た。まだまだ夜はこれから。
「お楽しみの時間だよ」
 エーリカはそう言うと、トゥルーデに全身を預け……そのまま二人してベッドに倒れ込んだ。
 そのまま抱き合い、何度も口吻を交わし、お互いを味わう。いつもしている事なのに、何故か興奮する。
「トゥルーデ」
「エーリカ」
 お互いの名を呼び……そして行為に没頭した。

110 名前:名無しさん:2009/12/24(木) 22:39:03 ID:hSNGB8VQ
以上です。
ルッキーニの誕生祝いやクリスマスネタは去年書いたので
今回はパス(ぇー と言うかネタ切れです先生(;´Д`)
当時の月齢がどうとかその辺のリアリティは無視でお願いします。
雰囲気だけ楽しんでもらえれば。
単純に、いちゃいちゃを書きたかったんです(><

最後に
>>105様、>>106
確かに眼帯は全員に似合うかも知れませんね。
ペリーヌは眼鏡のガラスの部分を黒くするとか良いかも。
「エアーウルフ」のアークエンジェルみたいな……
ってマニアック過ぎですね。すいません。

ではまた〜。

111 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 02:35:39 ID:.TOF8NQI
>>110
エーゲルいちゃいちゃしすぎ。このシリーズは本当によいなぁ。
つかアークエンジェル吹いたwバッカーノのニースのつもりで言ったのに。

流れにのってクリスマスネタを5レスほど。
まだ夜明けてないからおkなはず。

112 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 02:37:06 ID:.TOF8NQI
しんしん、しんしんと、聖夜に雪は降りつもります。
あわくほのかにその夜をいろどるのは、それが雪の役目だからです。
やわらかな光をてらすのは月の役目。しずかな眠りをあたえるのは夜の役目。
こごえた手のひらをつながせようとするのは、ちょっといじわるな冬の空気の役目かもしれません。
みんな、自分の役目をせいいっぱい引き受けているのです。
とはいえ、なんといっても聖夜ですから、これだけでは終わりません。
舞台は主役の登場を待っていました。
その人を前にすれば七面鳥や特大のクリスマスケーキだってかなわないでしょう。
そう、サンタさん。まごうことなきこの夜の主役です。
サンタさんの役目は子どもたちにプレゼントを配ることです。
もちろんそれの頭には“その年よい子にしていた”とつくのですけれど。

みんなの寝しずまる夜を待って、サンタさんはもぞもぞとベッドから起きだしました。
冬の夜ですので毛布のぬくもりは恋しかったりしますが、あまりゆっくりもしていられません。
なにせ今夜中にたくさんの子どもたちにプレゼントを配ってまわらなくてはならないのです。
と、その前に。サンタさんは自分の身なりを整えました。
ダイナマイトバディを包むまっ赤な衣装、目深にかぶられたぽんぽんのついた帽子。
ふさふさの白いおひげこそたくわえていませんが、どこからどう見ても本物のサンタさんです。
うんしょ。大きな白い袋を肩にかつぎます。
なんといっても年に一度のお祭りです。
そのリベリオン生まれのサンタさんにとって、血がたぎらないはずがありません。
え? 年中だろ?
いえいえ、気にしない気にしない。
さあ、年に一度のおしごとのはじまりです。

113 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 02:39:09 ID:.TOF8NQI
最初の部屋の子どもは、ありがたいことにちゃんと寝ていてくれました。
サンタさんが女の子の枕元に立つと、すやすやと気持ちのいい寝息が聞こえてきます。
くりくりした瞳、ころころ変わる豊かな表情、まるで人なつっこい子犬のような女の子です。
サンタさんは袋からプレゼントを取りだすと、置かれていたくつしたにそれをもそもそとつめはじめました。
と、その手が止まります。
サンタさんのしごとは子どもたちにプレゼントをしてまわることです。
ただしそれは、その年ちゃんとよい子にしていた子どもにでした。
この子はちゃんとよい子だったろうか。サンタさんはすこし考えこみました。
その扶桑生まれの女の子はよく、国の料理やお菓子をみんなにふるまってくれました。
あいにくサンタさんの口にはあわないものなんかもあったりはしましたが。
それでも、あたたかな食事をつくってくれることを、サンタさんはいつもうれしく思ってました。
まあ、問題ないかな。
サンタさんはくつしたにプレゼントを入れる作業に戻りました。
プレゼントはくつしたにすっぽりとおさまりました。
はあー。ひとしごと終えたサンタさんは安堵にひといきつきました。
吐く息はそのまま、まっしろな雲のようです。
ですが、あまりゆっくりもしていられません。なにせこれが一人目なのですから。

次の部屋の子どもも、すやすやと寝ていてくれました。
いつもの三つ編みを今はほどいた、栗色でウェーブの髪を長く伸ばした女の子です。
気持ちよく眠ってはいるものの、残念ながら寝ぞうはあまりよろしくないようです。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
はじめてあったころは、自信なさげでうつむくことが多かった気がします。
とはいえ、今となってはそのころのことなんて思いだすのもむずかしくなってきましたけれど。
今ではすっかり、なんだか春のやわらかい日差しのみたいな、心のおだやかな女の子です。
それに、この子のいれてくれる紅茶が、サンタさんはなによりも好きでした。
うん、問題ないな。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。
いれおわると、はたとサンタさんは気がつきました。
このしごとが意外に地味な作業だということに。
まあ、こればかりはしかたないことです。

その次の部屋の子どもも、すやすやと寝ていてくれました。
普段はかけているメガネを今はとっていて、そのせいか顔のつくりがまだおさないことに気づきました。
普段は口やかましいのに、こうしているとなんだかかわいく見えてくるのが不思議です。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
サンタさんはなやみました。
たしかにまじめですし、からかいがいのあるおもしろい子です。
でもその女の子は、けっこうないじわるでした。
とくになにかをしてもらったということもなかった気がします。
はっきりいってしまうと、いわゆるよい子でもあんまりないのです。
けれど、サンタさんは知っていました。
その子が実はひといちばいのさびしがり屋ということに。
そしてそれがうらがえって、ついにくまれ口をきいてしまうということに。
きっとそれはサンタさんばかりでなく、他のみんなだって気づいていることでしょう。
なんで素直になれないのでしょう。もっと心をひらいてくれればいいのに。
まったく、面倒くさいやつだなぁ。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。

114 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 02:41:32 ID:.TOF8NQI
そのまた次の部屋の子どもも、すやすやと寝ていてくれました。
茶色がかった黒い髪の、絵にかいたようなカールスラント人です。
女の子というには、すこし年が上ですけれど。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
たしかにその子はよい子でした。優等生であることにまちがいはありません。
時間にきびしく、口をひらけば規律だ規則だの一点張り。
でもそれはなによりも自由を愛するサンタさんにとって水と油でした。
けれどサンタさんは、そういう彼女のことを、けしてうとましいとか思ったことがありませんでした。
こんなことを伝えてしまうと、この子にまたうるさくとがめられるかもしれませんが。
違うもの同士だけれど、実はけっこういいコンビなのかもしれません。
たまには息抜きくらいしろよ。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。

さらに次の部屋の子どもは、こまったことにまだ起きていました。
もう夜おそくだというのに書類しごとをしている隊長さんです。
これではこっそりプレゼントをとどけることができません。
しかたなくサンタさんは扉の前で彼女がベッドに入っるのを待っていました。
けれどなかなかおしごとはおわらないようです。
せっかくの聖夜だというのに。いや、おそらくこういう日もめずらしくないのかもしれません。
そのことを思うと、サンタさんの胸がじんわりとあつくなります。
ようやくその子がベッドに入ったのはそれから数時間もあとのことでした。
その子のすぅすぅという寝息が聞こえてくると、サンタさんはこっそり忍び足で部屋に入っていきました。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
もちろん文句なしに合格……といいたいところでしたけれど、サンタさんは思いとどまりました。
はて、この子、いやこの人は子どもでよいのだろうか。
もしそうでなければプレゼントをあげてよいのだろうか。
まよいましたが、サンタさんはそういえばさっきの子も自分より年上だったことに気づきました。
だったら別にいいのかもしれません。なんたって今宵はせっかくの聖夜なのですから。
年なんて関係ありません。
この子は子どもというより、みんなのお母さんですけれど。
いつもありがとう。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。

さらにその次の部屋の子どもは、すやすやと寝ていてくれました。
しかしこまったことに、その部屋はまるでおもちゃ箱をひっくり返したようなありさまでした。
いつものことだといわれればそれまでですけれど。
よっ。とっ。サンタさんは月あかりをたよりに、離れ小島をつまさきでわたっていきます。
そのようすはさながら、よっぱらいのダンスのようです。
と、サンタさんの足のうらに、ぐにゃっとやわらかい感触がありました。
なんということでしょう。子どもをふんづけてしまったのです。
まさかゆかに寝ているなんて思いもしませんでしたから。
どくんっ。サンタさんの心臓がはねあがります。
けれど、その子が目をさますことはありませんでした。
このときばかりは、サンタさんはそのねぼすけに感謝しました。
みだれた部屋のなかからようやく、サンタさんはくつしたを見つけました。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
ふかく、ふかく、サンタさんは考えこんでしまいました。
この部屋を見ればそれも当然です。いろいろと問題を起こすことでも知られています。
こればっかりは、さすがのサンタさんも目のつむりようがありません。
ですが、わるい子といいきってしまうのにも、うーんと首をかしげたくなるのでした。
なんともつかみどころのない、そういう子なのです。
いくら考えてもちっともにくらしさがわきでてこないので、この子はもうこれでいいのかもしれません。
これでよい子。まあ、よい子にはちがいないはずです。
部屋はちゃんとかたづけてもらえよ。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。

115 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 02:43:24 ID:.TOF8NQI
長いはずの冬の夜も、もうすぐおわりに近づいていました。
おひさまは水平線のむこうからゆっくりと顔をのぞかせようとしています。
しだいに白んでいく空。降りつもった雪とあいまって、とても幻想的な銀世界へともようを変えていました。
窓から差しこんでくる光はまぶしく、一夜を徹した目にはつらいものです。
それでも、サンタさんのおしごとはつづきます。
だってまだプレゼントを受けとっていない子どもがいるのですから。

次の部屋の子どもは、なんともう起きていました。
日課の鍛練のためでしょう。まさかこんなに朝はやいとは思いませんでしたが。
といっても、はちあわせはまぬがれました。すんでのところでサンタさんは身をかくしたのです。
息をころし、じっと身をひそめます。
こんなところ見つかったらどんなさわぎになってしまうでしょう?
サンタさんだって人の子、できればあんまり怒られたりしたくはないのです。
その子は不思議そうにしばらくきょろきょろとあたりをうかがいます。
やっと彼女がいったのを確認すると、サンタさんは部屋へとしのびこみました。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
考えるまでもありませんでした。
豪胆で、りりしく、かっこいい。
年なんて関係ないと、さきほど結論も出ています。
たまにはゆっくり寝ててください。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。

その次の部屋の子どもは、すやすやと寝ていてくれました。
さらさらのうすい金色の髪の、すらりとした北欧生まれの女の子です。
早起きは三文の徳らしいのですが、どのくらいよいかはわかりません。
さて、この子はよい子にしていただろうか。サンタさんはしばし考えました。
気のせいでしょうか、あまりこの子の働いているところを見てなかったような気もします。
と、そのときでした。
部屋の扉がきゅうにあいて、だれかがはいってくるではありませんか。
しまったとサンタさんは思います。かくれるひまさえありませんでした。
けれど、そのぼんやりまなこはサンタさんをすどおりすると、そのままベッドにたおれこみました。
じきに寝息がふたつ重なって聞こえてきました。
どうやらサンタさんの存在には気づかなかったようです。あるいは、気にもとめられなかったのかも。
夜どおしのおしごとからようやくかえってきたのですからしょうがないのかもしれません。
サンタさんは自分とおんなじだと親近感がわくのでした。
ただ、それが年に一度のおしごとであるサンタさんとはちがって、その子はほぼ毎日そんな生活です。
おそらくみんなのなかでいちばんのがんばり屋さん。
この子はよい子にしていただろうか。サンタさんには考えるまでもありませんでした。
サンタさんは袋からプレゼントを取りだし、くつしたにつめこもうとします。
けれど、そのくつしたは彼女ではなく、この部屋の主の女の子のものであることに気づきました。
この子たちが目をさましたとき、そうするとどうなるだろう?
ゆずりあって、もしかしたらそれが元でけんかになってしまうことになりでもしたら。
とはいえ、目ざめていちばんにプレゼントを目にする、そういうあんばいがこのましいというものです。
こまったことになってしまったな。サンタさんは首をかしげます。
そうだ。
くつしたはふたつでひとつ、対になっているのです。
まるでこのふたりみたいだな、なんてことをサンタさんは思うのでした。
だったらそれぞれにそれぞれのプレゼントをいれてしまったってかまわないでしょう。
ふたりに、ふたつのプレゼントを。
いつまでもなかよくな。
サンタさんはくつしたにもそもそとそれぞれのプレゼントをつめこみました。

116 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 02:45:27 ID:.TOF8NQI
とうとうおしごとも大づめです。
そのまた次の部屋につくと、そこにはだれもいませんでした。
そうでした。この部屋の主はさすらいの眠り姫なのでした。
とにかく、女の子をさがすしかありません。
いったい今日はどこで寝ているのやら。
とはいえ、サンタさんにとっては慣れたものでしたので、思いのほかすぐ女の子は見つかりました。
女の子は梁の上で、おきにいりの毛布にくるまれて、ぐっすり眠っていました。
サンタさんはひとまずほっと胸をなでおろしました。
うんしょ、うんしょ。その子の元まで、サンタさんは登っていきます。
さて、この子はよい子だったろうか。サンタさんはしばし考えました。
考えるまでもありませんでした。
なにせこいつときたらいちばんのわるがきです。
訓練はさぼるし、口はわるいし、いたずらばっかりするし。
わるかったことなら足の指をあわせたってぜんぜんたりないのです。
こんな子にプレゼントをあげるわけにはいきません。
もしあげようものなら、親じゃないのに親ばかとそしられるでしょうし。
こればかりはしかたのないことです。かわいそうだけど、また来年です。
そんなサンタさんの葛藤なんてどこふく風、女の子はのんきなもので、ぐーすかと寝ています。
その寝息をきいていると、つられてふわあああっとサンタさんはあくびをしました。
ふと、サンタさんは気づきました。
この女の子といっしょにいることで、自分がどれほどやすらげているかということに。
するとほかのだれよりもずっとずっと、その子ことがいとおしく思えてきたのです。
とはいっても、それとこれとは話が別です。
やはりよい子じゃないのにクリスマスプレゼントをあげるわけにはいきません。
ですが、サンタさんは考えました。
そのかわり、この子にはバースデイプレゼントをあげよう。
そう、今日はこの子の誕生日だったのです。正しくはもう一日おくれになってしまいましたけれど。
これならなにも問題はないでしょう?
なんだ。安あがりないい子じゃないか。サンタさんは思いました。
誕生日おめでとう。
サンタさんはくつしたにもそもそとプレゼントをつめこみました。
クリスマスプレゼントではなく、バースデイプレゼントを。

ようやくすべてのしごとをおえると、サンタさんのまぶたがとろんと重みを増しました。
安心したことで睡魔がせきをきっておそいかかってきたのです。
だれもわるい子はいない。
そのことがわかっただけで、サンタさんはもうよかったのです。
ほんのちょっとだけ――
そのつもりでまぶたをとじると、まどろみは色濃くなっていきます。
サンタさんはかたわらの女の子に体をあずけると、とうとう眠りに落ちてしまいました。
聖なる夜はおわりを告げて、サンタさんはごく普通の女の子にもどりました。



以上です。
というわけで、メリークリスマスアンド(日付け変わったけど)ハッピーバースデイルッキーニちゃん!
タイトルは「せいなるよるに」です。OsqVefuYでした。

117 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 05:12:04 ID:O6Nev8UE
>>111
今日からスキーでもうすぐ出発で忙しいから今は読めないけどひとつだけ突っ込ませろ
あくまで24日はイブであってクリスマスは25日だw
明けてないも何も、これからが本領発揮だろw

118 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 06:43:29 ID:AXkjXr9k
>>116
GJ! ほんわかな文章がメルヘンでステキです!
シャーリーの呟き(ツッコミ)が面白かった。ミーナさん年齢www
ハッピークリスマスに乾杯!

119 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/25(金) 22:23:57 ID:hdVhv1vk
>>116 OsqVefuY様
GJ! 文章から優しさが伝わってきますね。
あとシャーリーのコメント(心情)が面白いw
心温まるSSに改めてGJ!


改めてこんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.981「music hour」のシリーズです。
今日はクリスマス〜って事で書きましたが
急いでSSなので内容が……。
ではどうぞ。

120 名前:gimme your love:2009/12/25(金) 22:25:29 ID:hdVhv1vk
ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
さて今夜は何の日かわかるかナ? ……そう正解、今日はクリスマスダ!
日々戦いのみんなも今日位はゆっくり楽しく過ごしてもいいんじゃないカナ? ハメ外し過ぎはダメだけどナ。
ネウロイの攻撃が激しくてそれどころじゃなイ? まあ、ガンバレ。

「……」

さて、今夜はクリスマススペシャル! と言う事でリスナーの皆様からのお便りを読むゾ。
……あれ、お便りたった一枚? サーニャ、今夜はこれだけナノ?

「そう。読んで」

一枚だけかァ。まあ、戦いで忙しかったりみんな思い思いに楽しいひとときを過ごしてるんだろうナ。
では早速読むゾ。ラジオネーム「ついてないひと」……これ、スオムスからダヨナ?

「それが何か?」

読みたくないんだけド……

「読んで」

はい、読みまス。

『イッル、いつになったら帰って来るんだよ! 待ちくたびれたよ!
あの日の約束忘れたとは言わせないぞ!?
本妻の私をさしおいて現地妻作ったとか聞いたけど嘘だよな?
とりあえず時期を見てそっち行くから、楽しみにしてて♪』

……。

「……」

ササササーニャ違う、これは誤解ダ! 昔の仲間の悪戯ダ! 事実無根ダ!

「何が誤解なの?」

サーニャ、こっち見て話シヨウ? てか何でフリーガーハマーのセーフティ外したのか
意味不明ナンデスケド……。

「エイラ。『現地妻』って何? 意味が分からない」

わ、私が知る訳無いダロ……だから冗談なんだってバ。ホント。
てかニパふざけやがって、今度空で会ったら撃墜してヤル。

「撃墜って……」

大丈夫、ニパは固有魔法で超回復能力有るから少し位平気ダヨ。軽く銃撃してみると楽しいゾ。

「私も手伝う?」

いやそれはともかくフリーガーハマーこっちに向けないでくれるかなサーニャ?

「エイラ」

はい、何でしょウ?

「色々聞きたい事有るから、後で……」

いい今すぐ話シヨウ! サーニャは何かすんごい誤解をしてると思うんダ。

「じゃあ、話してくれる?」

勿論ダヨ。……サーニャ、何でこっち見てくれないんだヨ〜。

とととりあえず今夜はこの辺で。
最後に、「サーニャのうた」を聴きながらお別れデス。

end

121 名前:名無しさん:2009/12/25(金) 22:25:52 ID:hdVhv1vk
以上です。
この後エイラとサーニャがどうなったかはご想像にお任せします。
まあクリスマスですから、きっと(ry

ではまた〜。

122 名前:名無しさん:2009/12/26(土) 00:51:31 ID:d1BuB4J.
>>121
GJ!!
しかし、オラーシャ女を怒らせると空恐ろしい・・・。

123 名前:名無しさん:2009/12/26(土) 22:04:36 ID:QmsDO.s2
>>120
>撃墜してヤル。

別の意味で読み取った俺は……このスレ的には正常ですね。
サーニャとロッテで出撃するものの、途中でサーニャに寝返られて、
返り討ちで2人に撃墜されるエイラまで妄想した。

>>117
ちょっと調べてみたらイタリアとかフランスでは1月6日までがクリスマスなんダナ。
夜どころか年まで明けてたわ。

124 名前:名無しさん:2009/12/27(日) 03:15:45 ID:glRyDfNo
>>121
GJっすー!
これが…このラジオが…現実になる……w

125 名前:名無しさん:2009/12/27(日) 14:13:03 ID:4l2RqTps
ついに我が家にネウ子が来たあああああ

126 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2009/12/27(日) 23:08:05 ID:apHU8BhE
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
公式見て吹いたw エイラーニャのラジオってホントですかー!
是非聴きたいけど大阪圏じゃないから、一週遅れなのが残念です。

しかし公式と少々ネタ(?)がかぶろうが続けるのが俺のジャスティス(違

と言う訳で懲りずに今日も保管庫No.981「music hour」のシリーズです。
ではどうぞ。

127 名前:easy come easy go 01/03:2009/12/27(日) 23:08:37 ID:apHU8BhE
ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
さて今夜は……そう、年末スペシャル! クリスマスも終わってもうすぐ新年だからナ。
早いよなサーニャ、一年過ぎるのっテ。

「えっ? まだ私達って……」

わああそれは言わない約束なんだナ。私達は永遠の十五歳と十四歳なんだゾ。

「そうそう、私だって十五歳だよ。なあイッル?」

さて、では最初のお便り、ラジオネーム……

「こらあ無視すんなイッル! せっかくランデブー出来たのに何でガン無視なんだよ!?」

……

「……」

「な、何だよ二人揃ってその目は? せめて私の紹介くらいしろよ!」

じゃあとりあえず紹介〜。ホント勝手に付いてきた……いや「ついてない」カタヤイネンこと
スオムス空軍飛行24戦隊曹長、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンだナ。
拍手は要らないゾ。

「酷いな! 501のヴィルケ中佐の時と対応違い過ぎだろ! もっと何か無いのかよ?」

無いナ。

「冷淡過ぎだろ!」

「初めましてカタヤイネンさん。私はサーニャ・V・リトヴャク中尉です」

「あ、どうも。イッルが随分と世話になってるみたいで」

おいニパ、適当に喋るの止めてくれないカ? 誤解されてすっごく困ってるんだ、私ガ。

「困るって、ありのまま話しただけじゃんか」

「ありのまま? それ、詳しく教えてくれませんか?」

「ああ良いよ。私とイッルはスオムスで同僚でさ」

「なるほど。それで?」

「何から話すかな。そうだ、軽くサウナの事話そうか。あれは熱い夜だった。私とイッルはサウナの中で肌を寄せ合っ……」

(MG42の射撃音)
(フリーガーハマーのバックブラスト音)

128 名前:easy come easy go 02/03:2009/12/27(日) 23:09:10 ID:apHU8BhE
さて、静かになった所で最初のお便り。ラジオネーム「がんばるウィッチ」さん。所属はNG。

『私には彼女がいません。どうして彼女ができないんだろうと思って同僚に聞いたら
みんなから「アンタには隙が全然ないから」だと言われました。
エイラさん、どうしたら隙を作ることができますか? 教えてください』

「がんばるウィッチ」さん、ズバリ言ってもいいカナ?

どうしたら隙が作れるかって言ってる時点で隙がないゾ!

「隙がないって、どんなひとなんだろうね、エイラ」

ホントだよナ。でもたま〜にこういうウィッチいるヨナ。完璧過ぎて隙のないひと。
そういう人は『隙を作る』のは無理ダナ。隙のないところを好きになってくれる人を見つけなきゃダメダゾ。

「そう言えばエイラも隙がないよね? 戦闘に限ってだけど」

ま、まあ戦闘に限ってはそうだナ。自分で言うのも何だけど相手の攻撃を先読み出来るから
ネウロイの攻撃は絶対当たらないんダゾ。この能力でサーニャを守るゾ。

「エイラ……有り難う」

そんなサーニャの笑顔がたまらなイ……。

「でもエイラ、そう言う時は隙だらけだよね?」

サーニャがそんな笑顔するからダロ……。照れるじゃないカ。

「エイラったら……」

「こらあ! なに二人でいい雰囲気になってんだ!」

あれニパ、いつの間に戻って来たンダ?

「いきなり銃撃してくるなんて酷いぞ! 危うく墜落死するとこだったじゃないか!
そういえばなんかロケット砲みたいなのも飛んで来た気がするんだけど……痛ぇよ」

気のせいダナ。その証拠にピンピンしてるじゃないカ。

「何が証拠だっ! それにこれは超回復能力のお陰だ」

「ホント。エイラの言う通り面白いね」

「それかっ! リトヴャク中尉のフリーガーハマーか! 冗談でもそれ止めて、痛いから……。
てか笑顔で砲口向けないで! 私が一体何をしたんだっ!?」

“口は災いの元”ってどっかの諺で聞いた事有るゾ。ニパも気を付けろヨ。

「何だよそれ……」

129 名前:easy come easy go 03/03:2009/12/27(日) 23:09:49 ID:apHU8BhE
さて今日最後のお便り。ラジオネーム匿名希望、所属も伏せて下さい、と。
今日は匿名とか多いナ。まあ良いけド。

『エイラさん、サウナって何をする所なんですか?
彼女がよくサウナに行くので一体どんなところか知りたいんですが、
なんかとっても身体につら〜い場所らしくて、どうも一歩踏み出せません。
でも今更聞くに聞けないし……。
サウナって一体何をするとこなのか知らないウィッチは多いと思います。教えてください!』

サウナの事知らないウィッチって多いのカナ? 北欧やオラーシャのウィッチなら誰でも知ってると思うケド。

まあズバリ、言ってもいいカナ?

「サウナはってのはなぁ、凄いことをするとこなんだぜ!」

(MG42の射撃音)
(フリーガーハマーのバックブラスト音)

ニパの冗談はさておいて……

「こらあ! だから何度も銃撃するなって! 私の超回復能力にも限度があるんだ!
つーかフリーガーハマー三発も撃ちやがって! リトヴャク中尉も何の恨みが有って……」

「うふふ、別に?」

「……その笑顔、なんかこえーよ」

ニパもそう思う? 私もたまにそう思う時が有ル……

「エイラ、何か言った?」

いや何にモ。
しかしニパも冗談が過ぎるゾ。ニパが行くサウナは何か別モノに聞こえるゾ?

「え? 何? どう言う事だよ?」

ホホゥ、ニパは何か変なこと想像してるナ? サウナな何をするとこか、ニパと私で「せーの」で同時に言ってミヨウ。

せーの!

「(検閲)……」
裸で入って汗を流すんダゾ。

「イッルの馬鹿ーっ!」

ニパがおかし過ぎるんダロ……。てかこれも放送出来ないゾ。
サウナはスオムス発祥とされる蒸し風呂で、裸で入って汗を流すンダゾ。
白樺の葉で身体を叩くとマッサージ効果も有って気持ちイイゾ。で、後は汗を流しに川へ行くも良し、水をかぶるもヨシ。
501にはサウナが有って、私やサーニャがよく使うゾ。宮藤をサウナに連れてった時はリアクションが面白かったナ。

「エイラ、でもその後……」

いやあれはその……

「な、何が有ったんだイッル! 教えろよ!」

イヤダネ。

「ちくしょー! 二人して何か含み笑いしやがって!」

「エイラ、本当に面白い人ね、カタヤイネンさんって」

ダロ? からかい甲斐が有るから面白いヨナ。

「ふざけんなー! どつき漫才じゃねーっ!」

さテ、ではそろそろお時間となりましタ、今夜はこの辺で。
最後に、「サーニャのうた」を聴きながらお別れデス。

end

130 名前:名無しさん:2009/12/27(日) 23:10:25 ID:apHU8BhE
以上です。
登場キャラがイラストコラム版と言う事で……
ニパの口調とかがいまいち掴めなかったのでこんな感じです。
ご容赦を。

それにしても公式ラジオ楽しみです! ワクワクしますね。

ではまた〜。

131 名前:名無しさん:2009/12/28(月) 18:54:17 ID:tLjFeufM
>>130
ニパキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
GJ!やっぱりゲスト回はいいなぁ。つか、もうこれこの先3人でよくね?
あとネタ被りはそんな気にしなくて大丈夫だと思う。公式のは普通のアニラジだろうし。

132 名前:名無しさん:2009/12/30(水) 02:20:18 ID:QhpXKD/E
久々に基地探訪きてたがやっぱシャッキーニはいいなぁ
そんななかったけど

133 名前:名無しさん:2009/12/30(水) 03:06:43 ID:3U5gfDac
>>132
ミーナさんが意外と……いや、何でもない。

134 名前:名無しさん:2009/12/30(水) 06:45:36 ID:Wn.Fcn7o
エイラーニャ2レスほど。DSのオマケのドラマCDの話。


「遅かったじゃないカ、サーニャ。夜間哨戒おつかれさま」
「夜間哨戒? なにを言っているの、エイラ。わたし、昨日の夜は芳佳ちゃんの部屋に」
「芳佳ちゃんっ!? ちょっ、それどういうことダ!?」
「どうしたの、エイラ。急に大声を出したりして」
「これが騒がずにいられるカ! なあ、なにがあったんダ、サーニャ!?」
「言ったでしょう。クラスのみんなで学園祭でやる劇の、その練習のお手伝いをするって」
「げ、劇? ていうか学園祭? なぁ、サーニャ。さっきから一体なにを言ってるんダ?」
「ああ、ごめんなさい。帰りが遅くなってしまったルームメイトを心配していたのね」
「ルームメイト? それって誰のことダ?」
「なに言ってるの、エイラ。わたしとエイラはこの寮のルームメイトじゃない」
「わっ、私とサーニャがルームメイトォ!?」
「どっ、どうして驚くの? 別におかしなことないじゃない」
「そ、そういえばそうだったナ……。なんだかさっきから調子が悪くて」
「大丈夫?」
「私はストライクウィッチーズ学園の2年で、サーニャは1年。一人前のウィッチになるため、この魔法学校に通ってるんダヨナ」
「説明口調……。でもそれで大丈夫」

「それで、練習ってどんなことをしたんダ?」
「クラスのみんなと、お茶を飲んだり枕投げをしたり」
「それって劇の練習なのカ……?」
「さあ? でも、とっても楽しかった」
「そっカ。サーニャが楽しければいいんダ……できれば私も行きたかったけど」
「それじゃあ次はエイラも一緒に行こ」
「うん――そういえば、劇ってなにやるんダ?」
「『ロミオとジュリエット』よ」
「ふぅん。私、あの話あんまり好きじゃないんダヨナ」
「そう? すてきな話だと思うけど」
「そーカナ? なんか暗くないカ?」
「とってもすてきだったのよ、芳佳ちゃんのジュリエット」
「へぇ。アイツがねぇ……」
「ねぇ、エイラ。わたしたちもやってみない? ここに台本もあるし」
「えっ?」
「エイラはジュリエットをお願い」
「えー!? 私がジュリエットーっ!?」
「それでわたしはロミオをやるわね」
「サーニャが、ロミオ……」
「どうしたの、エイラ。イヤだった?」
「……別に、そんなことないけど」

「じゃあ始めましょう。まずはジュリエットのセリフからよ」
「『ねねねぇ、ロミオ』」
「声が震えているわ、エイラ」
「しょっ、しょうがないダロ。はじめてなんだから」
「落ち着いて。もう一度最初から」
「『ねぇ、ロミオ。あなたはどうしてロミオなの』」
「棒読み……」
「恥ずかしくってサ。普段はこんなしゃべり方しないし」
「照れたりしてはダメ。つけるのよ、ガラスの仮面を」
「ガラスの、仮面……?」
「そう。千も万もの仮面をつけ、千も万もの人生を生きるの」
「人生……。なんだか話がどんどん壮大に」
「人がただ一人の自分を持ち、ただ一度の人生を生きられないのに比べて、なんてぜいたくで、なんて素晴らしいことなのかしら」
「そ、そうカ……。わかった。次はもっとしっかりやるヨ」
「それじゃあもう一度最初からね、エイラ――いいえ、ジュリエット」
「わかったヨ、サーニャ――じゃなかった、ロミオ」

「さあ、もう一度最初から。仮面をつけるのよ」
「『ロミオ。あなたはどうしてロミオなの』」
「エイラ、変わってないわ。棒読みのまま」
「いいや、これは棒じゃなくてスーパーナチュラルっていうんダ」
「スーパーナチュラル?」
「ああ。アニメ監督の中にはそういう演技をする人を好んで起用する人もいるくらいなんダ」
「そう……言われてみればだんだんそんな気がしてきたわ。まるでその人がそこにいるみたい」
「そ、そうカ? 照れるナァ」

135 名前:名無しさん:2009/12/30(水) 06:47:16 ID:Wn.Fcn7o
「ふぅ。とうとうクライマックスね」
「そうダナ」
「ちゃんと死んでないとダメじゃない、ジュリエット。正確には仮死だけど。喋ってはいけないわ」
「ゴ、ゴメン……」
「じゃあ行くわね。『なんということだ、ジュリエット。君は本当に死んでしまったのかい?』」
「…………」
「『やはり返事をしてはくれないんだね。
  ああ、ジュリエット。
  君のいない人生に、一体なんの意味があると言うだろう?
  そんなものはすべてまやかし、富も地位もいかほどの価値も持たない』」
「…………」
「『そうだ、この毒薬で! ジュリエット、僕は君といつまでも一緒にいる』」
「…………」
「『待っていてくれ、ジュリエット。僕も今、君の元へ――』」
「ダメダ」
「えっ?」
「死のうなんてすんナ。そんなことヤメロ」
「どっ、どうしたの!?」
「だって私は生きてるゾ? なのになんで自殺なんてしようとすんダヨ!?
 どっちも死んで、それで幸せなのカヨ!?
 おかしいダロ! ナァ!
 こんなのダメダ! ハッピーエンドじゃなきゃヤなんダ! いや、終わるのもダメダ!
 ずっとずっと、私はサーニャと一緒だから!
 でも、死んだりしない! 生きて、ずっと一緒ダ!
 だからサーニャも絶対死ぬナ! 絶対絶対絶対死ぬナ!!」
「エイラ……」
「サーニャ。私はその、サーニャのことを……その……」
「………………」
「えっと……」
「ふふっ。どうしたの、エイラ? そんなセリフ書いてないじゃない」
「えっ!? そ、そうだったナ……。ゴメン」
「ううん、いい」

「それじゃあ続きからダナ」
「続き?」
「そうダ。今度はちゃんと死んでるからサ」
「じゃあいくわね――やっぱりわたしは死んだりしないわ」
「ン……?」
「あなたが好きよ。いつまでも生きて、わたしはあなたと一緒にいたい」
「どうしたんダ、サーニャ? 台本とセリフ違うじゃないカ」
「……ばか」



以上です。
「ちゃんと死んでないとダメじゃない、エイラ」
↑サーニャにこれ言わせたかっただけですさーせん。でも死なないエイラ。
タイトルは「仮面の告白」です。OsqVefuYでした。

あと間が開きすぎましたが、保管庫1137の怒れる男パロの続き。
終わらないgdgdトークが30kbほど。
http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/68771

136 名前:名無しさん:2009/12/30(水) 18:54:39 ID:CzyR6w2c
>>135
連投GJ! エイラーニャは何をしてもいいですな。
おいしくいただきました。

秘め話CD3届いた。これからウハウハだ〜。

137 名前:名無しさん:2009/12/30(水) 19:18:27 ID:hvDQUsh.
>>135
>「ちゃんと死んでないとダメじゃない、エイラ」
一瞬これがタイトルだと思ってふいたw
どっちもGJ!

138 名前:名無しさん:2009/12/31(木) 03:03:19 ID:3ov51o0U
秘め話CD3届いたので早速聴いた。
シャッキーニ話はほのぼのしてて良かった。
ミーナさんのエンドレス気味な愚痴とか、
お姉ちゃんの暴走&必死っぷりとか
なかなか面白かった。

139 名前:名無しさん:2009/12/31(木) 15:40:19 ID:7MYHi.iY
うちにも秘め話キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
いやあやっぱり公式は素晴らしいな。これで年こつる!
シャッキーニやお姉ちゃんやつくづく扱い酷いエイラもよかったけど、
なんと言ってもウルスラきたああああああああああ!
これ、ウルスラーニャってアリじゃないですかね?

140 名前:名無しさん:2009/12/31(木) 19:53:00 ID:yotqw6X6
ウルスラーニャよりウルサーニャの方が語呂が良い

141 名前:名無しさん:2009/12/31(木) 20:49:54 ID:G6MKd5GU
もっと縮めてウーニャとか
いら、それだと誰かとカブるか・・・?

142 名前:名無しさん:2009/12/31(木) 22:35:05 ID:t4N10/fk
何故サーラでは駄目なのか

143 名前:名無しさん:2009/12/31(木) 23:26:56 ID:G6MKd5GU
それだとサーニャ攻めのエイラーニャになってしまう

144 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 00:33:20 ID:hVErEjRI
みなさんあけおめ!ってことで正月ネタを5レスほど。


「というわけでカルタをしましょう」
 新年を迎えた501基地のミーティングルーム、のほほんとくつろぐみんなに私は提案した。
「というわけってどういうわけですの?」
「えっ!? なにを言ってるんですか、ペリーヌさん。お正月といえばカルタじゃないですか」
「じゃないですかと言われましても」
「ふふふ。実はもう、こんなものを用意してしまったんです!」
 じゃーん!
 とばかりに、私は取り出したカルタをみんなに向けてかざした。
 ただのカルタじゃない。宮藤芳佳お手製の501カルタ。
 読み札はすべてストライクウィッチーズにちなんだもので、取り札にもちゃんと絵を描いてある。
 ――のだけれど。
 あれっ、なんだかみんなの反応が薄い。自信作だったのに。
「ねぇ、芳佳ちゃん。そもそも『カルタ』ってなあに?」
「えっ!? リーネちゃん、カルタ知らないの!?」
「ご、ごめんね、芳佳ちゃん」
「ううん、いいの。じゃあペリーヌさんは?」
「いえ、知りませんわ」
「坂本さんは知ってますよね?」
「ああ、当然だろう。といっても、私と宮藤以外は知らないみたいだな」
 坂本さんの言う通り、他のみんなはカルタを知らなかった。
 どうやらカルタって扶桑ローカルの遊びだったらしい(トランプなんかは世界中でやってるのに)。
「宮藤さん、それでカルタってどうやって遊ぶの?」
「まずはこうやって、札を表にして並べるんです」
 私は絨毯に、取り札をバラバラと広げてみせた。
「ゆ、床に並べるの?」
「そうですけど」
「なにこのへったくそな絵〜」
 と、それを見てルッキーニちゃん。……けっこう自信あったのに。
「こっちはいいの、宮藤?」
「あっ。待ってください、ハルトマンさん。それは読み札と言って、この取り札とは別にしておくんです」
「よみふだ?」
「その名のとおり、書いてある歌を詠む役の人が読むんです」
「これをか。『よ5本』……?」
「バルクホルンさん、違います。扶桑では文字を縦に書くんですよ」
「た、縦に……」
「それで、その読んだ歌の、その頭の文字の書かれた札をここから取るんです」
「このバラバラの中からか?」
「はい。早い者勝ちで」
「ふぅん。だったらあたしの専売特許だね」
「そうやって取った札は取った人が貰うんです。
 それを札が全部なくなるまで繰り返して、最後にその取った札の枚数を競うんです」
「ルールはわかったけどサ。それ、面白いのカ?」
「面白そう。わたし、やってみたい」
「サッ、サーニャがやるなら私もやるゾ」
「はいはい! あたしもやる〜♪」
「みんなルールも理解したようだし、いい機会だからやってみましょうか」
「わたくしもですか?」
「もちろん、みんなでやりましょうよ。読む役は私がやりますね」
 ぞろぞろとみんなが集まってくる。
 全部で44枚となる取り札。それに群がるように囲む10人。なんだか壮観だな。
「あっ、そうだ。トップになった人の言うことを、他のみんなは聞かなきゃいけないってのはどうですか」
 と、思いつきで提案してみたら、途端にみんなの目の色が変えて、
「言うこと聞く? それってなんでもいいの?」
「なんでもってなんでもカ!?」
「はい、そのつもりで言ったんですけど」
「そんじゃー、あたしが一番になったら、みんなのおっぱい揉ませて貰うね」
「ちょっと待って、宮藤さん。そういうのはどうかと思うわ」
「まあ、ミーナ。正月だし、勝負事はそのくらいの方が面白いじゃないか」
「……それもそうね。そのかわり、美……坂本少佐、あなたも勝った人の言うことはちゃんと聞くのよ」
「ああ、もちろんそのつもりだが?」
 そうしたわけで、新春501カルタ大会は幕を開けた。

145 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 00:36:04 ID:hVErEjRI
「それじゃあいきますね――『納豆は 体にいいから 食べてみて』」
「はい」
 と、坂本さんだ。
 カルタ初心者のみんなと違い、本場の扶桑人としてここは負けられないところ。なかなか幸先がいい。
「次、いきます――『お手紙を」
「はい」
 読み終わるより早く、今度も坂本さんが『お』の札を押さえる。
「じゃあ次――」
「ちょっと待った、宮藤!」
「どうしたんですか、ハルトマンさん?」
「これって扶桑語でやるもんなの?」
「はい。だって扶桑の遊びですからね」
「でもそれじゃ、あまりにも坂本少佐に有利すぎでしょ。
 ただでさえ私たち初めてのに、これじゃあもう少佐の一人勝ちじゃん」
「たしかにそうだな。これでは私も面白くない」
「すいません、気づかずに――じゃあ、なにかハンデをつけますか?
 坂本さんは10メートル離れたところから、読みあげた後にスタートする。これでどうですか?」
「ああ、わかった」
 うなずくと坂本さんはすたすたとこの場から離れていった。

「改めていきます――『ズボンです だから恥ずかしく ありません』」
 9人は目をこらして『す』の札を探す。
 けれど、誰一人として一向に動こうとはしない。
 どうしたんだろう? ルッキーニちゃんのすぐ前にあるのに。
 そうこうしている間に坂本さんは到着して、
「はい」
 と、『す』の札を取った。
「また坂本さんですね」
「待って、待って! それ、『su』じゃなくて『zu』じゃん」
「ああ、『ず』は『す』でいいんだ。濁音や半濁音は清音で考えるから」
「うげーっ、なにそれー」
「つまり、子音の[g]は[k]、[z]は[s]、[d]は[t]、[b]と[p]は[h]になるんだ。どれ、ちょっと待ってろ」
 そう言うと坂本さんは、近くにあった紙にさらさらに50音表を書いてみせた。
「5段が10行あって50音。だが、や行は3つ、わ行は1つしかないため、カルタは全部で44枚になる」
「ふ、扶桑語は奥が深い……」
 まじまじとその表を見つめ、バルクホルンさんは呟いた。
「うー。ロマーニャ語ならあたしが無双のはずなのにー」
「ガリア語でしたら、これほどまでにわたくしがひけをとることもありませんのに」
「スオムス語なら絶対負けないのにナ」
「オラーシャ語だったら……」
 口々にあがる不満。
 まずい……せっかく頑張って作ったのに、カルタは失敗だったかも……。
「そういえばこの中じゃ、あたしとリーネだけは一ヶ国語しか話せないんだよな」
「いえ。私は第二外国語を最近勉強しだしたんですよ」
「え、何語?」
「将来のことを考えて、扶桑語を。ミーナ中佐と一緒に」
「ええ、2人でね。将来のことを考えて」
「そ、そう……あたしもなにか始めようかな」
 そう言って、シャーリーさんは苦笑いをした。
 リーネちゃんって扶桑語の勉強してるんだ。でも、将来ってなんのことだろ?

146 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 00:37:31 ID:hVErEjRI
「次いきます――『絶対無敵 カールスラントの 3人娘』」
「ぜ、ぜ……いや『ze』は『se』になるから――これだっ!」
 勢いよくバルクホルンさんの右手が降りおろされる。
 が、その時――ぶわっ、と場に風が吹いた。
 ハルトマンさんが固有魔法の疾風を使って、触らずして札を動かしたのだ。
 バルクホルンさんの手のひらが捕えたのは、『せ』ではなく『ゆ』の札だった。
 飛ばされた『せ』の札はハルトマンさんの手元に落ち、
「はーいっ」
 と、ハルトマンさんはしたり顔を浮かべて『せ』の札を手に取った。
「やったじゃないですか。これでハルトマンさん1枚ですね」
「どーもどーも」
「待ってくれ、宮藤! 見ただろう、今のを。これは反則じゃないのか!?」
「えーっ? 使っちゃダメなんてルール聞いてないし」
「まぁまぁ。それじゃあ今度からはナシと言うことで」
 そんなわけで、『せ』の札はハルトマンさんのものに。
 バルクホルンさんはお手つきで1回休みとなった。

「それじゃあ次に――あれっ? エイラさん、なにしてるんですか?」
 エイラさんはカードをめくっていた。
 カルタではなく(そもそもまだ0枚だし)、タロットの。
「ああ、次になにが読まれるか占ってたんダ」
「占い……それでわかるものなんですか?」
「疑うのカ? 見てろヨ――オッ、このカードは! オイ、宮藤。早く読め」
「はいはい、いきますね――『夜の空 哨戒任務 サーニャちゃん』」
「これダッ!」
 エイラさんの手が動く。たしかにそれは『よ』の札だった。
 ――けれど、それにもう1本の手が伸びる。
 サーニャちゃんだ。
 『よ』の小さな札の上で、2人の手と手がこつんと触れあう。
「サッ、サーニャ……!」
「ごめんなさい、エイラ。手を少し叩いてしまって」
「気にすんナ――ほら、これサーニャが貰えヨ。ずっと狙ってたんダロ?」
「でも、エイラの方が少し早かった」
「サーニャ、まだ1枚も取ってないじゃないカ。いいから貰っとけヨ」
 エイラさんもまだ0枚なんだけどな。
 譲り合いの結果、サーニャちゃんが1枚となった。

「次いきますよ――『リーネちゃん とってもとっても 大好きだよ』」
「芳佳ちゃん……! 私も芳佳ちゃんのこと大好きだよ」
「ありがとう、リーネちゃん。でも、私の方が大好きだよ」
「そんなことないよ。私の方が大好きだもん」
「そうかなぁ? 絶対私の方が大好きだよ」
「ううん、絶対絶対私の方が大好きだもん」
 ――と、そんなことを言いあいっこしてる間に、
「おーい、芳佳ーっ、取ったぞー」
 と、ルッキーニちゃん。その手にはたしかに『り』の札が。
 リーネちゃんの顔が青ざめる。
 私と会話してたせいで、札を探すのを忘れてたせいかも。
 でも、大丈夫。まだまだ逆転可能だよ。

「次いきますね――『はっはっは! 坂本さんの 高笑い』」
「きたわ!」
「きましたわ!」
 ミーナ中佐とペリーヌさんが同時に動く。
 その時、また風が吹いた。
 なにこれ? またハルトマンさんの仕業?
 ――いや、違う。
 これは純粋な、手のひらによる風圧だ。
 近くに並べられた他の札までも、あるいは浮き上がり、あるいは裏返る。
 まるで勢いよくメンコを地面に叩きつけたみたいに。
 バシィッ!!
 気持ちいいほどの音をあげて、2人の手のひらはその札をとらえる。
 まったくの同時。
 しめられる手のひらの面積的には、ややペリーヌさんに分がある。
 ぐ、ぐ、ぐ、と少しずつペリーヌさんは札を自分の元へと引きずっていく。
 するとミーナ中佐は空いた左手で、札を押さえるペリーヌさんの手をバシバシと叩き出した。
 苦痛に顔を歪めるペリーヌさん――しかし、やられてばかりではない。
 今度はペリーヌさんが、ミーナ中佐の札を押さえる手を、空いた左手でスパンキン!
 そうして2人の容赦ない争いが続いている中、ゆっくり10メートル歩いてきた坂本さんは、
「はい」
 と、『は』の札を取った。
「「えっ!?」」
 と、声をあげるミーナ中佐とペリーヌさん。
 2人が手のひらをどけて見てみると、それは『は』ではなく『ほ』の札だった。

147 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 00:39:16 ID:hVErEjRI
 そこにはもう、お正月の遊びなんて穏やかな雰囲気はなくなっていた。
 大声をあげ、悲鳴があがり、あらゆる手を駆使したガッチガチの闘争。
 カルタがこんなにも壮絶なものだなんて、私は今まで知らなかった。
 誰一人として集中力を切らす人はいない。一戦一戦がとても密度の濃いものだった。
 それでも1枚、また1枚と、場から札はなくなっていくのだった。
 まあそんな感じでゲームは進行していって――

「とうとう次で最後ですね」
 私の言葉に、みんなは疲れきった顔を向ける。
 汗をぬぐう人、肩で息をする人、さまざまだけど、これを読みあげてもうおしまいなのだ。
「と、その前に。枚数を確認しましょう。ルッキーニちゃんとサーニャちゃんとハルトマンさんが1枚で……」
「芳佳ちゃん、違うよ。ルッキーニちゃんじゃなくて私が1枚だよ」
 と、リーネちゃん。その手にはたしかに『り』の札がある。
 あれっ? でも、その札はルッキーニちゃんの取ったものだったはず。
 なのにどうしてリーネちゃんが持ってるんだろう?
 ……ま、いっか。
「それで坂本さんが40枚、他の人は0と」

「「「「「「…………………………」」」」」」

「えっと、その、ごめんなさい」
 とりあえず私は頭を下げた。
 みんなからの視線が痛い……。
「いくらなんでも無理があったね。この中であたしだけバイリンガルじゃないし」
 まだ引きずってたんですか、シャーリーさん。
「じゃ、じゃあ、最後の1枚は100枚分というのはどうですか?
 それ1枚取っただけで、坂本さんにダブルスコアつけて大逆転優勝です!」
 ヤケクソになって私は叫んだ。
 その提案に、みんなはもちろん賛成した。
 今までの勝負はなんだったんだろうとか、そういうことは考えてはいけない。
「いいですか、現在トップの坂本さん?」
「ああ、かまわん。だが、もうハンデはナシだからな」
 坂本さんはそう言うと、どっしりあぐらをかいて座った。
「頑張るね、芳佳ちゃん。まあこれ1枚で、実質私の優勝なんだけど」
 リーネちゃんがかかげて見せるのは『り』の札だ。
「へっふぁいふぁくふへんふゅーひょう」
 もごもごとルッキーニちゃん。なに食べてるのかな、なんだか甘い匂いがする。
「トゥルーデには負けないよ」
「私こそ、貴様にだけは絶対負けん」
 腕まくりをするバルクホルンさんと、前屈みになるハルトマンさん。
「絶対取る」
「今度こそ誰にも渡さないからナ」
 沸々と闘志をたぎらせるサーニャちゃんと、またタロットで占い出すエイラさん。
「今こそクロステルマン家に代々伝わる、幻の究極奥義をお見せしますわ」
 なんですか、それ。ていうかペリーヌさん、カルタ初めてだったんじゃ?
「なら私も本気にならざるをえないようね」
 ミーナ中佐はそう言うと、聴覚を高めるとかいう固有魔法を発現させた。
 多分それ、ほとんど関係ないと思う。
「ふふん。取る札さえわかってれば、スピードであたしに勝るものはないね」
「あ、シャーリーさんはさっきお手つきしたので今回は休みです」
「えっ、マジ!?」
「それじゃあ、いきますねー」
 私の言葉にシャーリーさんを除く全員が、残された1枚の札を食い入るように見つめる。
 次の瞬間、その1枚の札をめがけて、9本(あるいはもっと?)の手が伸びることだろう。
 私は『ほ』の札を読みあげた。

「『本年も 501を よろしくね』」

148 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 00:40:34 ID:hVErEjRI
おまけ『501カルタ全44枚』


あ 青い海 なのにどうして 訓練なの
い 色・張りよし バルクホルンさん 結構ある
う 運命線 重ねたら夢への 共犯者
え エイラさん ちゃんと相談 聞いてください
お お手紙を 前略、一番 会いたい人へ

か 返してよ ルッキーニちゃん 私の服
き 綺麗だな 歌とピアノの ハーモニー
く 黒幕は ハルトマンさん だったんですね
け けんぜんいちにょ? 意味わかりません 坂本さん
こ 501 世界の空を 守ります

さ サーニャちゃん 今度じっくり 触らせてね
し シャーリーさん 立派なおっぱい 素敵です
す ズボンです だから恥ずかしく ありません
せ 絶対無敵 カールスラントの 3人娘
そ そろそろか 2期の放送 いつやるの?

た ためになる ミーナ中佐の 軍事教練
ち ちっちゃくて いつも元気な ルッキーニちゃん
つ 続きまだ? いらん子4巻 待ちどおしい
て 手のひらを つないで飛んだ はじめての夜
と トネールと 唱えることで 雷が

な 納豆は 体にいいから 食べてみて
に にい、にい、ご 新作ゲームの 発売日
ぬ ぬくぬくの お風呂はみんなの 憩いの場
ね ねんど系 ほんとにあったら いいのにな
の 飲めません エンジンオイルと 肝油だけは

は はっはっは! 坂本さんの 高笑い
ひ 貧乳は ステータスでは ありません
ふ ブリタニア ここはいいとこ 一度はおいで
へ ペリフネさん 間違えました ペリーヌさん
ほ 本年も 501を よろしくね

ま 豆狸と 呼ぶのはやめてと 言ってるでしょ
み みっちゃんは ちゃんと元気に やってるかな
む むふふのふ〜♪ いったい2人は なにしてるの?
め めげません 宮藤芳佳 がんばります
も もうダメです これ以上は 走れません

や やわらかい! はやい!おっきい! やわらかい!
ゆ 湯けむりは でぃーぶいでぃーで 取れますよ
よ 夜の空 哨戒任務 サーニャちゃん

ら ラジオでの 2人のトーク 楽しみだなぁ
り リーネちゃん とってもとっても 大好きだよ
る るんるんるん♪ お茶会準備の お手伝い
れ 連載を してる雑誌は 娘TYPE
ろ ロンドンで 食べたパルフェ おいしかったね

わ 私にも できること1つずつ かなえたい



以上です。
というわけで改めましてあけおめ!2010年は全世界的にストパンの年。
(宣伝多いのは気にしないでください)
タイトルは「501カルタ」です。OsqVefuYでした。

149 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 01:01:33 ID:LAze2TfE
かるたの「ひ」ww

150 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/01(金) 01:07:15 ID:YDoAAJQo
>>148 OsqVefuY様
GJ! 新年一発目を狙っていたけど先越されたw
SSも面白かったけど、カルタ凝り過ぎ! これは純粋に凄い!
てか芳佳煩悩多過ぎワロタ
とにかくGJです!

あけましておめでとうございます。mxTTnzhmでございます。
新年とかけて満月とかけて戦闘と解く。その答えは?(イミフ
と言う訳でSSひとつご用意しました。
ではどうぞ。

151 名前:fire on the moon 01/07:2010/01/01(金) 01:07:49 ID:YDoAAJQo
 その日の夜間哨戒は生憎の雨に見舞われ、寒さが身体にまとわりつく。
 雨の中じんわりと濡れながら飛行するのは、夜間哨戒を主任務とするサーニャ。
 頭の周りにまとったライムグリーンの魔導針が輝きを放つ。時折ゆっくりロールして周囲をくまなく探る。
 そんな彼女の横にはMG42を背負ったエーリカの姿があった。
 理由のひとつは悪天候の為、もうひとつは「最近南東から怪しい影が見える」との報告を受けての増援。
 だが雨などものともしない素振りの二人は、哨戒の気晴らしついでにお喋りをしていた。
「それでね、聞いて、ハルトマンさん。エイラったら、また……」
「ははー。エイラならやりそうだよね〜」
「私、ちょっと怒ったって言うか、悲しくなって……」
「分かる分かる。サーニャならそう思って当然だよね」
「こう言う時、ハルトマンさんならどうする?」
「そうだね〜」
 エーリカはポケットに大切にしまっている指輪に指をそっと当てて、考えた。
「私とトゥルーデの関係は、サーニャ達にとってはあんまり参考にならないかもよ?」
「色々な人が居るもの。ひとつのケースとして聞きたいの」
「なるほどね。参考例って事ね」
「ごめんなさい。悪い意味で取らないで」
「全然、大丈夫だよ」
 エーリカは笑った。

 一方の基地。
 書庫で書類整理の“任務”にあたっているのはトゥルーデとエイラ。
 埃を被った古めかしい書物から、最近書いたばかりの報告書まで、色々な書類を整頓していく。
 いわゆる「雑務」「雑用」のうちのひとつだ。寝る前のひととき、たまにはこうした仕事も悪くない。
 それはさておき。どうしたものか。
 トゥルーデは一緒に仕事をするエイラを見て、やれやれと内心溜め息を付いた。
「どうした、エイラ。妙に元気が無いな」
 返事が無い。しょげている。かと思えば不意に怒ってみたり、急にめそめそ泣いてみたり、
“喜怒哀楽”の「怒」と「哀」だけが強調されている感じだ。
 仕事に差し障りが有ると危惧したトゥルーデは、もう一度エイラに聞いた。
「エイラ、何か問題でも有るのか? 有るなら聞くぞ?」
「えッ? イヤ、ナイ。ナイゾ。何もナイ。何モ……無いんダ」
 はあ〜、と溜め息を付くエイラ。そのまま魂が抜けてしまいそうな表情に、トゥルーデは慌てた。
「仕事中なのにその体たらくでは困る。しゃんとしろ、“ダイヤのエース”」
「エース……私はエースなのカ」
「エースだから501(ここ)に居るんじゃないのか」
「はあ……」
「……」
 頭を掻くトゥルーデ。どうにも要領を得ない。いつものエイラらしくない。
「何か有ったのか。私に相談出来る事なら、何でも話してみろ」
「大尉に、相談?」
「こう見えても私は口が堅いんだ。大船に乗ったつもりでだな」
「……」
 じと目でトゥルーデを見るエイラ。
「な、なんだその目は! 別に疚しい事など考えてない!」
「だっテ、この前『お姉ちゃんを辞めない、皆私の妹だ』みたいな事言ってたじゃないカ」
「なっ! 聞いてたのか」
「あんな大声基地中に聞こえるッテ。ミーナ隊長まで妹扱いするなんて正気の沙汰じゃなイゾ」
 ここでエイラは唐突にくしゃみをした。
「何だいきなり」
「誰か噂してる気がスル……で、大尉ドウナンダ」
「あれは言葉のあやと言うか勢いでだな、勿論ミーナも大事な仲間で家族だが。……で、話す事は無いのか」
「……大尉に話した所で解決する様な問題じゃないヨ」
「なら自分で解決するんだな」
「アア」
 しばし無言で作業を続ける二人。
「でも、話すだけなら、自由だぞ」
「しつこいなア、大尉モ」
「上官として言わせて貰うが、今のお前の態度、素行を見ていると任務に支障が出ないかと心配なんだ」
「そうカ」
「あとは、隊の仲間と言うか、家族として、気になる」
「悪いけど私は大尉の妹ジャナイゾ」
「それはもういいから!」

152 名前:fire on the moon 02/07:2010/01/01(金) 01:08:14 ID:YDoAAJQo
「仲直りのキス?」
 サーニャは驚いて口に手を当てた。
「うん。トゥルーデと私って、稀に手を上げちゃったりする事も有るけど……最終的にはゴメンナサイして、
ゆっくりキスして……まあ続きも有るけど……それでお互いの気持ち確かめて、元通り」
「そうなんだ。すごいね」
「サーニャ達は?」
「……あんまり。エイラが何となく避けてる気がして」
「エイラは避けてるんじゃないと思うよ。サーニャが大事だけど大事過ぎて、ちょっとヘタレって言うか」
「うん、分かってる」
「問題はそこだよね。サーニャばっかり積極的になっても余計にエイラひくだろうし」
「うん、多分そう思う。でも……」
 ふと、魔導針が輝きを増した。
 サーニャがフリーガーハマーを構えるのとエーリカがMG42を構えるのはほぼ同時。
 間も無く、禍々しい色のビームが二人を襲った。
 即座に反撃に出る二人。

 数分無言を貫いた後、エイラは観念したのか、ぽつりぽつりと呟いた。
「サーニャと、喧嘩した」
「なるほど。やっぱり」
「やっぱりッテ、大尉見てたノカ」
「私は他人のプライベートには干渉しない。ただ日頃のお前達を見てそうじゃないかと感じただけだ」
「ソッカ」
「お前は、他人の事はよくおちょくるが、いざ自分の事となると……」
「な、なんダヨ? いきなり説教カヨ?」
「違う。単純な感想だ。似たような事言われないか?」
「ウウ……言われタ。サーニャとか、サーニャとか、サーニャとか」
「サーニャばっかりじゃないか」
「なあ大尉、私ヘタレなのカ? そもそもヘタレって何ダ? 私死ぬノカ? うわあああァ」
「落ち着け!」
 今にも自殺しそうな勢いのエイラを羽交い絞めにしてトゥルーデは声を掛けた。
「自分をそんなに責めるな」
「だっテ……」
「何があったかは知らんが、ともかくまずは……」
 トゥルーデは言いかけて止まった。
 基地の中に響く警報音。ネウロイ襲来を告げる忌々しい呼び出し音。
 二人は片付け途中の書類をそのままに、書庫を飛び出した。

 サーニャとエーリカは悪天候に阻まれ予想以上の苦戦を強いられていた。
「雨が酷くなってきた。何も見えない」
「私も魔導針の働きが微妙で……ネウロイの影が二重に見える」
「ホント? ネウロイの陽動?」
「分からない」
「これじゃあどっちに逃げて良いかも分からないね」
「下手に動くと……」
 飛んでくるビームを避け、反撃を加えるもまるで手応えがない。
「まずったなあ。残弾僅少……」
「司令所との通信途絶……。ハルトマンさん、どうしよう」
「サーニャ、フリーガーハマーの残弾はあと幾つ?」
「あと三発」
「じゃああと一発だけ撃ってみて。私も同じ方向に撃ってみる。位置を教えて」
「……ここから二時の方向。もう少し。そう、その辺り」
 サーニャは魔導針に微かに引っ掛かるノイズを手掛かりに、当たりを付けて発射した。
 エーリカも残り少ない弾数を数えながら射撃を行う。
 しかし二人の攻撃は虚しく遠くの雲に穴を開けただけで、何の手応えも無かった。
 代わりに帰って来たのはビームの束。
 ぎりぎりのところで回避しつつ、サーニャはエーリカと肩を合わせた。
「あと二発」
「私も同じ位かな。で、残りは取っておいて」
「どう言う事?」
「一発は、対ネウロイ用ね」
「あと一発は?」
「もう一発はね……味方に気付いて貰う為だよっ」
 エーリカはサーニャを抱きしめると、有無を言わさず回避行動に専念した。

153 名前:fire on the moon 03/07:2010/01/01(金) 01:08:41 ID:YDoAAJQo
 就寝直後の時間帯にも関わらず、全員しゃんとしてブリーフィングルームに集合した。
但し、着ている服はパジャマだったりとてんでばらばらだったが。
「全員揃ったわね」
 書類をテーブルに置き、ミーナが一同を見渡した。美緒が続いて話を始める。
「よし。今回のネウロイだが……どうやらハルトマンとサーニャを待ち伏せしていた様だ。
大まかな位置はグリッド南東213地区と推定される。高度は不明だ」
「不明?」
「ノイズが多過ぎて何処にネウロイ本体が居るのか分からん。観測所でも判断しかねるそうだ。
ちなみにハルトマンとサーニャとの通信が途絶したポイントは、ここ」
 黒板に貼られた地図を指さす美緒。
「かと言ってノコノコ出て行って返り討ちに遭う危険も有ると?」
 ペリーヌの発した疑問に美緒が頷く。
「そうだ。いわゆる『ファイタースウィープ』の可能性も無くはない」
「私が行ク! 行かせてクレ! 私なら敵の攻撃は絶対に当たらないカラ……」
「エイラさん落ち着いて。貴方がそう言うと思って既に出撃メンバーは決定してあるわ。……坂本少佐」
 ミーナは美緒に続きを促した。
「ああ。今回の出撃はバルクホルンと宮藤、ペリーヌとエイラだ。それぞれでロッテを組め。
一番機はバルクホルンとペリーヌが担当しろ」
「了解!」
「了解しましたわ」
「そして……現状で判明している通り、戦闘途中で司令所との無線通信が遮断される可能性が非常に高い。
よって万が一司令所との通信が途絶した場合は、バルクホルン、お前が小隊の指揮を執れ」
「了解した」
「残りの人は基地で待機です。万一の場合に備えて準備を」
「了解」
「今回の最優先の目的はハルトマンとサーニャの救出だ。出来ればネウロイを破壊したいが、無理はするな。
貴重な戦力の損失は避けたい。以上だ。直ちに全員任務に就け!」
 美緒の言葉が終わらないうちに、全員が立ち上がった。
「出撃だ! 行くぞ!」
「了解!」
 トゥルーデとエイラの声がとりわけ大きく響いた。

 降りしきる雨の中、エーリカとサーニャは身を寄せ合って寒さをしのいでいた。
 時折ビームが雨に混じる。しかし狙っている様で照準はでたらめで、当たる気配が無い。
 不安そうな顔をしたサーニャを見て、エーリカが微笑んだ。
「大丈夫、サーニャは私が守るよ」
「え、でも」
「大丈夫だって。私は僚機(仲間)を失くした事が無いんだよ」
 何か言いかけて躊躇うサーニャ。エーリカはサーニャの肩を持って言葉を続けた。
「それに、サーニャを守れなかったら悲しむよ、みんなが。エイラもそう、トゥルーデだってきっとね。
それに、トゥルーデに怒られちゃうよ。それすっごいイヤかな」
 へへ、と照れ隠しの笑みを浮かべるエーリカ。
「だから信じて。私には分かるんだ。きっと助けに来るって。それまで、少しの辛抱」
 そう言って、うんうんと頷いたエーリカを前に、サーニャはエーリカの服の袖を掴み、こくりと頷いた。

 腕にはめた腕時計型の高度計と方位計を頼りに、基地より飛び立ったシュバルムは目的の場所を目指した。
「大尉、間もなく推定ポイントに到達します」
「ああ。二人とも無事だと良いんだが」
 トゥルーデは無線で司令所に状況を報告した。
「……司令所、聞こえるか。間もなく現場に到着する。辺りにハルトマンとサーニャの姿は見えない。
何処かに避難しているのかも知れない。引き続き捜索を行う」
『了解。お前達も十分用心……』
 美緒の言葉がノイズでかき消される。
「大尉、これは」
 ペリーヌがトゥルーデに近寄って声を掛ける。
「当たりだ。この付近で間違いない。全機、ネウロイの攻撃に備えろ!」
 全員が銃を構える。
 間もなく、雨と一緒に幾筋ものビームが降り注いだ。
「上か?」
 回避機動とシールドでビームをしのぎつつ、様子を伺う。
「どうするンダ大尉、ヘタに撃ってその先にサーニャ達が居たラ……」
「私もそれを考えていたところだ。前にエイラ達はその手のネウロイに遭遇した筈だよな?」
「アア」
「ウィッチの同士討ちを狙ったとか言う、例のネウロイですの?」
 ペリーヌが疑問を口にする。
「そうダヨ。あれもちょうど雲の中デ、通信が途切れテ……」
「今回も同じ手かも知れないな。一度上昇し雲の上に出るぞ」
「了解」
「途中で敵の動きが有る場合は直ちに指示を出す。私の指示を聞き逃すな。あと味方を見失うなよ」
「了解!」
「よし、回避行動を取りつつ上昇だ!」
 めいめいがロールしつつ雲の上を目指す。上昇するに従いビームは一旦収まった。

154 名前:fire on the moon 04/07:2010/01/01(金) 01:09:04 ID:YDoAAJQo
 それまでエーリカに身を預けていたサーニャが、突然辺りを見回し始めた。
「サーニャ、どうかした?」
「今、新しいノイズが……」
「ホント? 味方? それとも、ネウロイの増援?」
「分からない。でも、動きが……」
「じゃあ、一発どかんと行ってみようか」
「え?」
「まだ二発あるでしょ? 一発試しに」
「でも、もしノイズの元がエイラで、もし当たったら」
 戸惑うサーニャを見て、エーリカは苦笑いした。
「ホント、サーニャはエイラの事が大好きなんだね」
「そ、それは……その」
「大丈夫、エイラだったら絶対に避けて、こっちに来るよ。これでもしトゥルーデも一緒だったら
その可能性は更に高いよ。やってみる価値は有るよ」
「本当?」
「こう言う時は、私は絶対に嘘は言わないよ」
「分かった」
 サーニャは魔導針を最大限に輝かせ、目指す「ノイズ」目掛けて一発発射した。

「大尉待っタ!」
「どうしたエイラ?」
「待ってクレ!」
「全員上昇やめ! 何があった」
「何だか、悪い予感がするンダ。この先に……」
「この先に何が有る?」
 トゥルーデがエイラに問うた途端、二人のすぐ脇を一発のロケット弾がひゅっと抜けて行った。
 やがて信管が作動したのか、近くで爆発し、周囲の雲に穴を開けた。爆風がなびいて一同の髪を揺らす。
「今ノ……サーニャのフリーガーハマーダ!」
「その様だな。しかし私達に当たりそうだったぞ」
「だから待ってクレって言ったんじゃないカ〜」
「ともかく、今の弾道の軌跡を辿るぞ。そこに二人は居る。間違い無い」
 ビームの束が四人を襲う。
「全機私に付いて来い! ビームはぎりぎりで回避して隊列を乱すな! お互いの姿を見失うなよ!」
 トゥルーデは先頭に立ち、方角を見定めると直進を開始した。

「ノイズが近付いてくる」
「ホント?」
「もしネウロイだったら」
「その時は、まだ一発有るでしょ。大丈夫」
 エーリカの服を握るサーニャの力が強くなる。
「大丈夫。信じて」
 エーリカも万が一の用心か、MG42を構えた。残弾は僅かだが、お守り代わりにはなりそうだ。

 視界が悪く、再会は実に突然で、呆気ないものだった。
「エーリカ!」
「トゥルーデ!?」
 僅かの距離でお互いの姿を視認する。トゥルーデは咄嗟に身体を捻り急ブレーキを掛ける。
「全機止まれ! 二人を確認した、ここだ! 止まれえっ!」
「ひゃあっ!」
 ペリーヌも体勢を崩しかけるもぎりぎりのところで急停止し辛うじてホバリングに移る。
「サーニャ!」
 エイラがサーニャを見つけ、止まりきれずに飛び込む形で抱きついた。
「エイラ……エイラなのね」
「良かったサーニャ、無事デ。ホント良かっタ」
 今にも泣きそうなエイラを優しく抱き止めるサーニャ。
「私は大丈夫。エイラならって、信じてた」
「エーリカ、サーニャ。二人とも無事か?」
 トゥルーデが辺りを見回しながら確認する。
「平気平気。ちょっと寒かったけどね」
「私も、問題有りません」
「あわわ、皆さん何処ですか〜」
 芳佳の情けない声が聞こえる。
「宮藤、進み過ぎだ。戻って来い。すぐ目の前だ。ゆっくり来い」
「あ……バルクホルンさん居た! 良かったぁ」
「まったく宮藤さんは。大尉が先走るなとあれ程……」
 見事再会を果たした六人目掛けて、猛烈な数のビームが襲い来る。
「ともかく、同士討ちの危険は無くなったな。全機回避行動を取りつつ雲の上に出るぞ! 私に続け!」
 トゥルーデを先頭に、六人のウィッチは雲の上を目指し、分厚い雨雲を突き抜けた。

155 名前:fire on the moon 05/07:2010/01/01(金) 01:09:28 ID:YDoAAJQo
 雲の上は見事な星空が広がっていた。思わず見とれてしまいそうな程の美しさだ。
しかしそんな気分も一瞬で吹き飛ぶ。雲中からビームの束がこれでもかと言う程に撃たれ、夜空を見ている暇も無い。
「サーニャ、怪我してるゾ!」
 エイラが慌ててサーニャを抱きしめた。当の本人は全然気付いていない様子だ。
「え、何処?」
「太腿の辺り、ココ」
「大丈夫、かすり傷だから」
「宮藤、治癒魔法を頼ム!」
「サーニャちゃん大丈夫?」
 芳佳が治癒魔法を施そうとするも、ビームに阻まれてシールドを張るのが精一杯。
「トゥルーデ」
 攻撃を回避しつつ、エーリカが近寄って来た。
「無事で良かった。まず、お前に渡すモノが有る」
「何々?」
 ぽいと投げて寄越されたもの。それはMG42の予備マガジン。
「まだいけるか?」
「勿論! 気が利くねトゥルーデ。これで全然大丈夫だよ」
 マガジンを交換して、MG42を構えるエーリカ。
「これで、とりあえずは……」
 トゥルーデは全員を見た。そして数秒考えた後、全員に告げた。
「最優先の目的を達成した。次は隊列変更だ。エイラはサーニャの二番機だ。二人は回避に専念しろ」
「了解」
「ペリーヌの二番機に宮藤。ハルトマンは私の二番機だ」
「了解!」
「了解しましたわ。でも、これから大尉、どうするおつもりで……」
「これよりネウロイを攻撃、破壊する。まずは私とハルトマンの二人で攻撃を行う」
「そんな! この悪天候の中で一体どうやって」
「問題無い。ペリーヌと宮藤は、サーニャ達の掩護に回れ。状況によっては新たに指示を出す。良いな」
「了解しました」
「互いの位置確認を怠るな。行くぞハルトマン!」
「了解!」
 トゥルーデとエーリカは揃ってネウロイ目掛けて急降下した。

 雲の中に身を潜めるネウロイは異常に表面装甲が硬いらしく、銃弾が次々と弾かれ砕ける音が周囲にこだまする。
 一方のビーム攻撃は酷さを増すばかり。幾度かシールドで直撃を防ぐも、限界が迫りつつある。
「厳しいな。一旦上昇するか?」
「トゥルーデ、ここはあえて下に行ってみよう」
「下?」
「少佐が言ってたよ。『虎の穴に入らないと虎を捕まえられないよ』だったっけ?」
「なんだそれは?」
「どっかの諺らしいよ。あと他にも似たのあるじゃん。『扉を叩けば開くかもね』みたいな」
「適当過ぎだ。何の事だかさっぱり」
「とにかく、ハイリスクだけどハイリターンって事」
「遠回し過ぎるんだ」
 ぼやくトゥルーデの腕を、エーリカがきゅっと握った。
「ちょっと冒険しようよ。付き合ってくれるよね?」
「……当然だ」
「私に考えが有るんだ。何となくだけど」
 エーリカに引かれるまま、トゥルーデはビームの発射される“根本”の近く、ネウロイの至近距離を抜け、降下した。
 すれ違いざま、エーリカはトゥルーデに促し、二人で一斉に背面部分を攻撃する。
 上面と違い、背面の装甲は脆く、いとも容易く削り取られていく様だ。明らかに弾着音が違う。
 ビーム攻撃も上面程苛烈ではない。
「なるほどな。ネウロイはわざと上におびき出して私達を纏めて袋叩きにするつもりだった、と言う事か」
「トゥルーデ、鋭いね」
「たまたまだ。お前や少佐みたいに勘が鋭い訳ではない」
「またまた〜」
 一度ネウロイをやり過ごし、もう一度突入に向けて体勢を構え直す。
「とにかく、もう一度行くぞ。視界が悪い分若干計器飛行になるが……」
「大丈夫、トゥルーデを信じてるよ」
 エーリカがそっと近付き、指を絡ませてきた。トゥルーデはそれに気付き、ゆるゆると、少しの間だけ指を絡める。
 エーリカが微笑んだ。トゥルーデも口元が緩む。しかしそれも一瞬のこと。
「行くぞハルトマン!」
「了解!」
 ふたりのエースは揃って急降下に移った。間も無く分厚い雨雲の塊が二人を飲み込んだ。

156 名前:fire on the moon 06/07:2010/01/01(金) 01:09:49 ID:YDoAAJQo
 雲を突き抜け、雨粒を貫いて襲い来るビームの束。ぎりぎりで回避しながら高速で突入する。
高度計をちらりと見る。暗闇、しかも雲中突破の上、雲下は雨で視界はゼロに等しい。
 ごくりと唾を飲み込む。
 高度計の針がまもなく海面と言う事を指し示す。
「今だハルトマン、急上昇だ!」
「了解!」
 揃って綺麗に上昇に移る。降下速度をそのまま上昇に転じ、ネウロイの背面に位置を取る。
「お前の弱点は……そこだっ!」
 降りしきるビームのど真ん中目掛けて二挺構えたMG42を連射するトゥルーデ。
 エーリカも同じくMG42を連射する。
 がりがりと背面の装甲が削られる。ネウロイは危機を感じたのか突如として上昇し加速した。
「雲の上に出るつもりか! 絶対逃がさん!」
「待てー!」
 ほぼ垂直に上昇するネウロイを追って、トゥルーデとエーリカも急角度で上昇する。

 “敵影”は、唐突に姿を現した。
「な、なんですの、あれは」
「これが、今回のネウロイ……」
 ペリーヌとサーニャは絶句した。
「まるでハリネズミみたいダナ」
 サーニャを両腕で抱きか抱えるエイラは余裕ぶって答えた。
 そう、まるで動物のハリネズミ、もしくは鉄条網をくしゃくしゃに丸めた様な……
或いは扶桑の清掃用具「たわし」に近い形かも知れない。雲を押し上げて不気味な漆黒の容姿を晒した。
「トゲトゲの塊、ですね」
 芳佳が唖然とし、感想を口にした。
 ネウロイは“トゲ”の先端から辺り構わずビームを撒き散らし、四人の留まる高度をすぐに抜き、
更に上昇を続けながら遁走している。
 そしてほぼ同時に雲中から姿を現したのは、501のウルトラエース二人。高速でネウロイを追撃している。
「お前達、ボケっとしてないで撃て! コアは背面、真下側に露出してるぞ!」
「りょ、了解!」
「エイラはサーニャを連れて回避に専念しろ! ペリーヌと宮藤は前進上昇しつつネウロイを攻撃! 急げ!」
「了解!」
「突撃するぞハルトマン!」
「いいよ、トゥルーデ!」
 二人の猛追にネウロイは上昇を諦め、今度は水平方向に飛行を始めた。じわじわと速度を上げる。
 少々距離をられたトゥルーデとエーリカは上昇から一旦再下降に移り、高度差を活かし更に加速しネウロイに迫る。
 執拗に放たれるビームをエルロンロール、バレルロールできっちり避けきり、コアの至近距離まで迫った。
 ペリーヌと芳佳も速度を上げて射撃を行う。
 サーニャはフリーガーハマーを担ぐと、エイラに抱かれたまま僅かに上昇し、狙いを定めた。
「サーニャ、私がついてル」
「ありがとう、エイラ」
 全員が揃って、敵のコアを狙い撃つ。
 皆の気持ちと射線がひとつに集約され……それは最終的にコアへと到達し……
間もなくヒビが入り、粉と化した。
 ネウロイは派手に爆発し、粉塵を周囲に撒き散らした。めいめいがシールドでダメージを回避する。
「やった……」
「や、やりましたねペリーヌさん!」
 銃口を下げ、ほっと一息付くペリーヌ、まだ興奮冷めやらない芳佳。
 ホバリング体勢に移った六名は、誰が言うとでもなく、エイラとサーニャに近寄った。
「無事か? サーニャ」
 トゥルーデが重ねて確認する。
「はい。有り難う御座います」
「良かったね」
 エーリカはサーニャに向かって笑顔を見せた。
「ありがとう、ハルトマンさん」
 サーニャもエーリカを見て微笑んだ。
「エ? 何この二人ノ雰囲気……」
 納得いかない様子のエイラだったが、サーニャに寄り掛かられ、そっと抱く事でもやもやした気分が晴れた。
 そんな二人を見たエーリカは、トゥルーデの腕をぎゅっと抱いた。
「おい、まだ戦闘は終わって……」
「見て、トゥルーデ」
 エーリカが指さす先を、トゥルーデが、つられて全員が見上げた。

157 名前:fire on the moon 07/07:2010/01/01(金) 01:10:17 ID:YDoAAJQo
 満月。
 戦いで全く気付かなかったが、確かに、上空には真円に近い月が浮かんでいた。
 そこに掛かるネウロイの美しい塵。霞が被さるみたいで、それでいて……
「月が、紅(あか)く、見える」
 サーニャがぽつりと呟いた。
「紅い月なんて滅多に見られないゾ。幸運の印カナ」
「なんか、私には燃えてるみたいに見えるよ。トゥルーデもそう思わない?」
「ああ。不思議なものだ」
「ネウロイの塵なのに、本当、不思議……」
 一同は、戦いの事も忘れ「紅く燃える」月を見上げ、そのままずっと見続けた。
 塵が粒子と化して消え去るまで。

 無事帰還した六人はひとまず雨に打たれた寒気を解消すべく、熱々の風呂に浸かり、身体を癒した。
 最初は湯船で冗談も飛び交ったが、緊張が解けた反動か次第に眠気に襲われ、皆ふらふらになりながら風呂を出た。
 芳佳は帰りを待っていたリーネに付き添われて部屋に戻り、ペリーヌはそんな二人を見て溜め息を付きながら
自室へと戻った。

 エイラの部屋には、サーニャが付いてきていた。二人で一緒のベッドに座る。
「ナァ、サーニャ」
「なに、エイラ?」
「あの、サ……」
「?」
「私が悪かったヨ。謝ル。ゴメンーニャ! 今回の戦いで、その……やっぱりサーニャが居ないと私……」
 エイラは突然の出来事にびっくりし言葉を失った。サーニャがエイラを押し倒し、キスをしてきたからだ。
 ぼおっとなった頭で、エイラは言った。
「サーニャ、大好きダヨ」
「エイラ、私も貴方の事大好き。だから……」
 サーニャはエイラをきつく抱きしめ、ゆっくり味わう様に口吻を重ねた。

 トゥルーデの部屋では、大きなあくびをしながらエーリカがベッドに寝転がり、いとしのひとを呼んだ。
髪をとかしていたトゥルーデは櫛を引き出しに仕舞うと髪を結う事もなく、エーリカの横に座った。
 エーリカはずるずると動き、トゥルーデに膝枕する格好になった。
「お疲れ、トゥルーデ」
「本当に無事で良かった、エーリカ」
「私は大丈夫だよ。サーニャも守ったし」
「流石だ。よく持ち堪えたな。お前にしか出来ない事だ」
「トゥルーデにホメられちゃった」
 ふふ、と笑うエーリカ。
「絶対にトゥルーデが助けに来るって思ってた。トゥルーデも、何が何でも助けに来るつもりだった?」
「当然だ。例え命令違反になっても出撃しただろうな……エーリカをこの手で助けたかった」
「それ、聞きたかったよ。嬉しい」
 仰向けでトゥルーデを見上げるエーリカはトゥルーデの手を取り、指を絡ませた。
 控えめに輝くふたりの証……指輪が交差する。自然と笑みがこぼれる。
「そう言えばトゥルーデ、私と再会したとき、私の事何て呼んでたか覚えてる?」
「あれは咄嗟の事だったから……、エーリカの無事な姿を見て……」
「そう、それだよトゥルーデ」
「?」
「名前で呼んだでしょ」
「そうだったか?」
「もう、トゥルーデってば」
 エーリカはごろりと横になるとトゥルーデの太股にキスをした。
「や、やめろ、くすぐったい」
「だめ。やめない。止めて欲しかったら……分かるよね」
 やれやれと溜め息を付くと、トゥルーデはエーリカをそっと優しく抱き、とびきり濃ゆいキスを交わした。

 間も無く夜明けだが、二人の、いや二組の“夜”は始まったばかり。

end

158 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 01:14:12 ID:YDoAAJQo
以上です。
言い忘れましたが保管庫No.0450「ring」シリーズ続編と言う事でよろしくです。
あとお姉ちゃんの「501全員妹宣言」は保管庫No.1163「sister ban」
「以前の同士討ち狙いのネウロイ」については同じくNo.0390「shattered skies」を
もとに書いてます。
ややこしいですがどうぞよしなに。

SS本編とは関係無いんですが、
リアルでちょうど今夜辺りが満月(に近い)らしいので……
月にまつわるSSを書いてみました。
あと>>105様と>>106様よりリクを頂いたので戦闘のあるSSを。
新年とはあんまり関係ないですね。すいません。

改めて、本年もスレの皆様とストライクウィッチーズ、
とにかく諸々全てにとって良い年でありますよう
心よりお祈りしております。

ではまた〜。

159 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 01:59:16 ID:/sBdBWqU
新年早々だけどGJ!!

160 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/01(金) 23:22:36 ID:1iH6KuCs
明けましておめでとうございます。

コミケ向けで忙しくて12月中の更新を殆ど見てなかった。
これから読んできます〜。

161 名前:名無しさん:2010/01/01(金) 23:58:19 ID:w5aXTZ9Y
新年早々職人達GJ!
カルタすごすぎワロタ
長編乙彼

162 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:10:48 ID:yWQ9zCac
明けましておめでとうございます。
新年に関係ない
シャッキーニを一本。



 良く晴れた日、私は洗濯ものを干してゆく。
 自分の身長から高い所に在る物干し竿に、めんどくさい単純作業。

 つまらないなぁ。

 この基地の周りの海は、優しい風に吹かれて穏やかな音をたてる。

――生まれて始めての転属。
 それは私にとって特別な出来事。
 同じ言葉を喋る者は居ないし、マーマも居ない。

 すぐに自分の家に帰れないのは嫌だった。

 ミーティングルームでメンバーを見ても、別に関わらなくてもいい。大丈夫、そう思った。

 けど違った、違ったんだよ。

 なのに、その頃の私は、天才の中に入ってしまえば、天才として扱われない、そう思った。

 だって私は天才と言われるのが嫌だったから。

 そして、自分勝手な傲慢な盾を周りに向けて満足していた。
だからその頃、自分にとっての味方は、マーマがくれた毛布しかなかった。
 でもそれが在れば安心して眠れるし、何処ででも寝れた。

誰にも関わらない方が、迷惑もかけない。それでいい、そう考えてた。

163 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:12:15 ID:yWQ9zCac
みんなのシーツや制服を干し終わって、愛用の毛布を掛けたまではいい。
 けれど、洗濯バサミを使い切ってしまった様だ。
 基地に余りがあるのか確認しようと戻ろうとした。
 その時だった。
制服から腰が全部見えてしまう位、風が吹いた。

 毛布が飛んで行く――追いかけなくちゃ

見失なわないように走る。ストライカーを履かずに空を飛ぶ魔法があればないいのに。

毛布は滑走路脇の海に落っこちた。
 波がカレントではない様なので、毛布は沖に流れない。
岩場に行き、手を伸ばしたり足を伸ばしたりするが、長い棒か何かでなければ届かない所にある。

 長い棒と言えばあれしかない。

ハンガーに行き、誰も居ない事を確認してそっと入る。
魔力を開放して、自分の銃座からブレダ-SAFATを引っ張り出し、岩場へ急ぐ。

岩にしっかり手を着き、寝そべるような形で、銃口を毛布に引っ掛ける。

164 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:13:13 ID:yWQ9zCac
「おーい、そこでなにしてんだ?」
「うに゛ゃっ!?」
驚いた。
 突然のことで頭の中がパニックになった。
毛布を抱き寄せる。
勝手に銃火器を持ち出した事がわからないように、魔力を収める。
当然、私のブレダ-SAFATは重すぎて海へ落としてしまう。
何をしたのか分からないまま、ここまでの事が一瞬で通り過ぎる。
 ミーナ中佐にどう説明しようとか、軍人にとって自分の命であるものに、なんてことをしてしまったとか、自分を頭の中で責める。

 その時の私の顔どうだったろうか?

 近づいてきた人にとにかく返事を、
「は、はい、何でしょうか? イェーガー中尉? でしたっけ?」
「覚えくれてて嬉しいよ、ルッキーニ少尉。顔色悪いけど大丈夫か?」
「だっ、大丈夫です」

それから、中尉は自分の事をシャーリーと呼んでくれ、堅苦しいことは私にはしなくていいからと言って、こう続ける。
「で、どうしたら自分の銃を海に返してあげるなんて、優しい心の持ち主に成れるんだ?」
――さっきのを見られた。
「え、えっと。これは、ロマーニャの文化で……」
と言いかけたら、腹を抱えて笑うシャーリーが居た。

165 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:14:30 ID:yWQ9zCac
「お、お前、あははっ、いいよ。すごいよ、ルッキーニ、ジョークのセンスあるね。はぁー、腹痛い」
「おこらないんですか? わたし、自分の銃を……」
シャーリーは優しく微笑んで、心配するなよ、私の予備のM1919A6をあげるよ。
 なんて言ったってリべリオンは量産が効くからなぁ、と言いいながら私の髪を撫でる。
ここに来てから久しぶりの優しさだった。あれは、ロマーニャに居た頃の様な、

海風と暖かい陽気。

その後、私とシャーリーは、一緒にミーナ中佐に怒られた。
どうして銃持ち出したのかという質問に、マーマの毛布がなければ安心して眠れなくて、だから取りに行くために仕方なく持ち出した。
そんな理由で自国の銃をなくしたなんて言えない。
 私が俯いて黙っていると、シャーリーが。
「それは、私のゴルフの練習に調度良い長さの銃だったからであります。そんで、フルスウィングしたら海に飛んでっちゃって……。」
なんて言って、更に雷を落とす羽目になったけど、嬉しかった。原隊に居たときは一緒に怒られる人なんて居なかったから。

 マーマ、これからもここでやって行けそうです。

よくはれた日、わたしはみんなのせんたくものをほしました。

166 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:15:14 ID:yWQ9zCac
 へぇ、ルッキーニはこんな風に思っていたのか。
 今は相棒であり、パートナーであるルッキーニの日記を、秘密基地の掃除していた私は見つけて、見入ってしまっていた。
 ルッキーニは基地に居るシャーリーに向かって叫ぶ。
「シャーリー? ねぇ、ねぇ! 終わった?」
日記を読んでいる私は気付かない。
 しびれを切らしたルッキーニは基地の中に入る。
「シャーリー、ねぇ聞いてる? シャ、シャーリー!? ちょっとなにしてんの!?」
「うわっ、ルッキーニ。わ、私はちゃんと今掃除してたぞ」
「ねぇ、これ読んだ? これ、どこまで読んだ?」
私がとっさに背中に隠した日記を奪って言う。ばれるよなぁ。目尻には涙が浮かんでいる。
 参ったなぁ。
「ごめんよ、ルッキーニ。それに、まだ全然読んでないいから、今手にたばっかりだからさ、な?」
「よかった……。でも、ゆるしてあげないよーだ」
「ごめん、ごめんって」
 ルッキーニを抱き寄せながら、何度も謝る。少しくらい嘘付いてもいいよね。

167 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:15:57 ID:yWQ9zCac
「シャーリーはさ、マーマに似てるよね。マーマに」
「えっとさ、よく似てる似てるって言うけど、そんなにお前のマーマに似てるのか私? 写真とかあったら見せてくれよ」
 そう言うと、するり私のうでを抜けてルッキーニはその可愛いらしい八重歯を見せて言う。
「やだよーだ、見せててほしけりゃここまでおいで、あははっ、逃げろー!」
秘密基地から飛び出すツインテール。マーマの話となるといつもこうなんだよな、からかわれているのか私。
 でも、私からは逃げられない。なんて言ったって私は、
「世界一のスピード狂、グラマラス・シャーリーだ! 私のスピードを舐めんなよ! 待てー」
二人で笑いながら走る。
 確かに親子かもしれない。
 いや、兄弟。ちがう、姉妹だ。
でもさ、そんな事どうでもいい。

こうして私たちの一日は過ぎて行く。
会えてよかった、ありがとうルッキーニ。

168 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:22:32 ID:yWQ9zCac
タイトルは、「Theme For Two」です。
よろしくお願いします。

169 名前:名無しさん:2010/01/04(月) 01:33:39 ID:IMZWcQ6U
おお、リアルタイム投下乙です
この二人の関係はカップリング云々抜きにしても微笑ましくて好きです
ただ、一つ言わせてもらうと前半部分のルッキーニが敬語を使う場面に違和感が…

170 名前:Formation Δ(デルタ) - 1/9:2010/01/04(月) 23:00:24 ID:uzF4qeCc
rQBwlPEOと申します。もっぺり状のもの投下。
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「……手のひらと親指の付け根で……柔らかく挟み込むようにしてくださいませ……」
「……む? ……そうか……」

 誰もいない食堂、しかも夜も明けやらぬ早朝とあっては、ささやく声も大きく響いて、わたくしの耳を驚かせる。
 おまけにこんなに近くにいては、わたくしの鼓動すらそのお耳に聞こえてしまうような気がして。

「……強すぎます。もう少しやさしく……指をお当てくださいまし」
「…そうか、すまない」
 声を潜めて、少佐を励ますように語りかける。三度、四度、少佐の指が動く。

「……」
 そして無言のまま、少佐は手を止めた。

「……いいのか……? ペリーヌ」
 何かを包み隠すような、押し殺した少佐のお声が、私の名を呼ぶ。不安と緊張と、そして隠し切れない好奇心の入り混じった少佐の目が、お手元とわたくしの顔をみつめる。
 ここまで来たら、わたくしも否はない。覚悟を決めて口を開いた。
「……ええ」
「そうか……」
 少佐はわたくしの目を覗き込み、うなずく。硬くこわばった指を、ゆっくりと開いていく。
「は……はは……!」
「……少佐……!」
 少佐の手が緩んでいくと共に、わたくしの目が見開かれる。少佐の険しく引き締められたお顔が、ゆっくりとほころんでいく。
「どうだ! 出来た! 私にも出来たぞ! ははっ……はっはっはっ!」
「少佐……やりましたのね! 少佐!」
 喜色をお顔にたたえて少佐は笑う。わたくしの目が潤んでいく。

 少佐の手。塩水とお米の糊でしっとりと濡れた手のひらの上。そこにはふわりと握られた──おにぎり。


「……三角だな! はは、どうだ! 見事な三角だ!」
「ええ! 三角ですわ! どこに出しても恥ずかしくないほど三角ですわ!」
 ……実際は、かなr……いえ、ほんのすこしだけ、いびつな気がいたしますけど……。
「ははは! 言うなペリーヌ! それは言いすぎだ!」
 ――幾何学上の些細な違いなど、少佐のこの笑顔の前ではあまりに小さな事ですわ! 三角を前に少佐が喜んでおられる。それ以上何が必要でしょう? ええ。これはガリア社交界に出しても恥ずかしくないほど三角なのですとも!
「……ささ、少佐! 海苔を! 海苔を巻いてくださいまし!」
「……あ、ああ! そうだな! 海苔を巻くまでがおにぎりと言うからな!」

 子供の様にはしゃがれる少佐――ああ。まるで我が事のようにうれしいですわね!
 少佐がいそいそと海苔の入った缶に手を伸ばす。白い割烹着がお似合いで、わたくしはまた頬をほころばせた。

171 名前:Formation Δ(デルタ) - 2/9:2010/01/04(月) 23:01:45 ID:uzF4qeCc


 早朝の食堂で「訓練」をされていた少佐を、わたくしは偶然お見かけしたのです。おにぎりの訓練をされている少佐を。

 以前挑戦されたときに、宮藤さん達が普通のおにぎりを作っている中、いくつ握っても不思議な形と大きさのおにぎりを生産し続けていた少佐。あの時は「どうも分からんな」と諦めて、詰まらなさそうにわたくし達の作業を見ておられたのだけれど。やはり気にしておられたのですね。
 おにぎりなど握られなくても、少佐は少佐でいいのです、とわたくしは思いますけれども。

「――たかがお米の塊に敗北しては扶桑撫子として申し訳が立たないじゃないか」

 と、ばつが悪そうに言い訳をされる少佐が、その、失礼とは思いますが、かわいらしくて。僭越ながらわたくしもお手伝いをする事にしましたの。
 他者の支えとなるはガリア貴族の誇り。ましてやそれがいとしい少佐なら尚更。
 こんなこともあろうかとあの豆狸の手つきを観察しておいてよかったですわ。

 少佐はふふっと含み笑いをもらす。海苔を巻いたおにぎりを一つ、大事そうにお皿に載せる。こんな少佐を見られるだけで、全てが報われた気になりますわね。
 今日ここに居合わせた僥倖を天に感謝するわたくしに、少佐はとんでもないことをおっしゃった。

「……では、これはお前に食べてもらおうか。ペリーヌ」
「……はい?」

 思わず問い返したわたくしに、少佐はお皿を差し出します。

「私だけでは無理だったろうからな。よくこんな早朝から付き合ってくれたものだ」
「それは、何でもありませんけど……わたくしで、よろしいのですか……?」
「遠慮などいらん。ただし味の保障はせんがな。はは」
「と、とんでもありません! 少佐が作られたおにぎりが、口に合わないわけがありませんわ!」

(……なにを、おっしゃってらっしゃいますの?)

 口は勝手に受け答えをしておりますが、私の脳は現実を受け止めききれておりません。

(なんでしょう……なにかとても、幸せな言葉を聞いているような……)

 ばくんばくんと心臓が踊り始めます。頬がぽーっと熱くなって参りますわ……。

「どうした?」
「い、いえ……」

 この笑顔で見つめられると胸が一杯になって、何も言えなくなるのはいつものことですけれども……。
 あまりの事にぽーっとしているわたくし。両脇にだらんと下げたままになっているわたくしの手を、少佐は取り上げる。その手にお皿を握らせながら、わたくしに身を寄せる少佐。ふわり、と少佐の髪の匂いが薫る。

「では、食べてくれるな?」
「……はい……」

(はーーーーー!!!)

 ようやく事態が把握できましてよ!
 少佐の! 手作りの! はじめての! おにぎり!
 それを! それをわたくしが!!!

 ああお父様お母様、おばあさま。おばあさまのおばあさまのそのまたおばあさま。ペリーヌは幸せです。もうすぐそちらにいけそうですわよ……。

 ……て!

 落ち着きなさい、落ち着くのです、ペリーヌ・クロステルマン。あやうく脳内で昇天するところでしてよ!
 ――大体、少佐はわたくしのつとめに感謝しておにぎりを下さるのであって、わたくしは、ただ感謝の印を受け取るのだけなのです。そ、それに、自分で作ったものを、即自分で食べるのは味気ないものですから!
 あくまでそういう理由であって、それだけなのであって、わたくしがやましいことを考えているわけには参りませんわ! そんなことは許されないのですわ!

 ――しかし、しかしです。正直に言うならば。
 いえ。事実をあくまで誠実に申し述べるならば。

 少佐の毅くもたおやかな指が握られたおにぎりが、
 厳しくも優しきその愛情をたっぷりと注がれて作られたはじめてのおにぎりを――わたくしが――わたくしが――!

(……これは昇天してもかまわないと思いますわね)

「あ、ありがたく……いただきます……」
「よし!」

 少佐はわたくしにとびきりの笑顔を見せます。そっとお皿から手を離すと、背を向けて戸棚の中をごそごそと探ります。

「む? お茶がない――ペリーヌ、済まないが少し待っていてくれないか? 部屋にあるお茶と付けあわせを取って来る」
「は、はい! お待ちしておりますわ! 少佐!」
「悪いな。すぐ戻る」

172 名前:Formation Δ(デルタ) - 3/9:2010/01/04(月) 23:02:31 ID:uzF4qeCc
 そう言って立ち去られる少佐。ハンケチを振ってその背中を見送り、高鳴る胸を押さえながら、足取りも軽く食堂のテーブルにつく。私の前に置かれたおにぎり。それをうっとりと見つめる。
 少佐が戻られるまで、食べるのは待つことにいたしましょう。
 早く戻ってきていただきたいですけれど、幸せをかみ締めながら待つ時間というのも悪くないですものね。
 あと数分で少佐はお戻りになるでしょう。あと数分。少佐が戻られたら、戻られたら――

『ど……どうだ? ペリーヌ?』
『……』
『どうした? ひょっとして口に合わなかったか?』
『……い、いいえ! 違います。違うのです』
『? どういうことだ?』
『あまりの事に、その、つい言葉を――失礼いたしましたわ。
 ――おいしいですわ。さながらバロック様式の宮殿のごとく繊細かつ大胆な握り具合といい! サヴォイアの春風のごとくさわやかな塩気といい! ほどよく炊かれたお米と海苔のハーモニーが、さながらヴィシーの鉱泉のごとく口の中ではじけてまいりますわーーー!!!(てきとう)』
『ほう! お前にそう言ってもらえると、たとえお世辞でも嬉しいぞ!』
『いいえ少佐。わたくし、世辞など申しませんわよ。ありのままを申したまでです』
『そ、そうか! はは! はっはっは! いや。お前が見ていてくれたおかげだ』
『……少佐……』
『ありがとう。ペリーヌ(にこ)』
『少佐――!!!』


「はーーーー!!!」


 ……いけません。鼻血が。
 うなじをとんとんと叩いてこみ上げてくる血を抑えます。妄想だけでこのありさまなんて。
 しかし、しかしです。これほど甘美なシチュエーションであれば、鼻血も無理なからぬことですわ。ええ。リアルで経験したら間違いなく5回はヘブンにいけますもの。
 しかも、しかもです。これはひょっといたしますと、「頬についたご飯粒を少佐にとってもらう」イベントに派生するフラグ――! ああっ少佐……早く戻っていらして!

「あ、ペリーヌさーん! おはようございまーす」
「ぎっく!」

 ほやーんと緊張感のない声が、幸せに浸りきっていたわたくしの耳を打ちます。食堂に現れた宮藤さんが、きょとんとした顔でわたくしの前に置かれたおにぎりを眺めていました。

「あ、お、おはようございますわ。宮藤さん。ずいぶんと無駄にお早いですのね」
「おはようございます! ところでそれ、どうしたんですか?」
「ぎくぅっ! な、なんでもありませんわよ!」

 宮藤さんにおにぎりを指差されて、思わず焦りが顔に出てしまうわたくし。それを見て何かを感づいた宮藤さんは、ずかずかとわたくしの元に近寄ってくる。

「あ、なんか怪しいー。どうしたんですか? ペリーヌさん」
「あ……いえ……そのこれは……」
「何で隠すんですか? 私に見られると困るんですか?」
「ど、どうでもいいじゃありませんか! 第一、あなたには関係ありませんで」
「――あ! そういえば廊下で坂本さんと会ったんですけど、ひょっとしてそれ、坂本さんが……!」
「!!」

 ――ばちんぬ!

「……ペリーヌ……さん?」

 ――がたん。
 黒焦げになった一脚の椅子が、仰向けに倒れて食堂の床を打ちます。
 駆け寄ってこようとした宮藤さんは、足元に倒れた椅子を見ながら、冷や汗を流しています。

「――どうなさいまして? 宮藤さん」
「あの……なんでトネール……」
「――あら。」

 乱れた髪を撫で付けながら、エレガントに宮藤さんに向かって笑いかけました。

「……そういえば、そろそろ静電気のいたずらに悩まされる季節ですわね……お気をつけあそばせ?」
「……どこの世界に椅子を消し炭にする静電気があるんですか……」
「静電気ですわ?」
「……あ、あのそれにまだ、夏ですけど……」
「静電気でしてよ?」

 がるるるる。食い下がる宮藤さんをにらみつけます。
 全くこの豆狸ときたら。油断も隙もありませんわね。人が幸せの絶頂にいる時に限って現れるなんて、ずいぶんとタイミングを心得てらっしゃいます事。
 ですが、邪魔させるわけには参りませんわ。そうよ! わたくしと少佐の幸せを邪魔するものは、怒りのトネール……もとい静電気に打たれるがいいのです!

「そう言う事ですから、これ以上静電気の悪戯に弄ばれないうちに退散あそばせ」
「一日一回しか使えないじゃない。トネール……」
「何か!? おっしゃいましてっ!?」
「何でもないですよー。もう」
「全く……」

 ため息をついて椅子に座り直す。宮藤さんはテーブルに近づいて来ると、当然の様にわたくしの正面に座った。

173 名前:Formation Δ(デルタ) - 4/9:2010/01/04(月) 23:03:08 ID:uzF4qeCc
「……な、なんですの? 退散なさいといったでしょう!」
「それ、やっぱり坂本さんが作ったんですよね?」
 興味深々の顔でおにぎりを見つめている宮藤さん。まだ懲りませんの!?
「……し、しつこいですわね! どなたでもいいじゃありませんか……」
「いいじゃないですか。教えてくれても」
 ずい、と宮藤さんが詰め寄ってくる。その勢いに抗えず、わたくしは目を逸らす。
「…………取らないと、約束できますの?」
「……取りませんよー」
「……そう。ならば、お察しの通りでしてよ」
「へー。ずいぶん上達したんですね坂本さん」
「そ、そうね。ふふ。少佐に出来ない事なんてございませんわ」
「でもペリーヌさんもらったんだ。いいなー」
「そ、そう?」
「いいないいなー。ペリーヌさんいいなー」
「……そんな事言ってもあげませんわよ」
「取りませんよー」

 ペリーヌさんひどいー。抗議しながら、宮藤さんは頬杖をついてにこにことわたくしを見ている。

「そ、そう? ならば、よろしいのですけれど……」

(……ごめんなさい、宮藤さん)
 心の中で、そんな宮藤さんに謝った。
 同郷のよしみで結ばれた坂本少佐と宮藤さん。わたくしにはどうにもできない絆で結ばれたお二人を見ると、わたくしはついつい対抗心を燃やしてしまうのですけれど、宮藤さんも別に、わたくしのおにぎりを狙って現れたわけではないですものね。
 それなのにわたくしときたら、彼女を泥棒猫のように思ってしまって、それに対してトネールまで。
 ――全く、こんな風だから「ツンツンメガネ」なんて言われるんですのね。

「? 食べないんですか? ペリーヌさん」
 きょとんとしながら不思議そうにわたくしを見ている宮藤さん。その視線が恥ずかしくなって、わたくしは目をそらす。
「……。少佐が戻られたら食べますわよ」
「あー。そうなんですか。じゃあ今は幸せをかみ締めている最中なんですね」
「ちっ……違いますわよ! あ、いえ、そのとにかく……
 あ、あんまりじろじろ見ないでくださいまし! そんなに見られていると、恥ずかしいですわ……」
「えー? いいじゃないですか。坂本さんが作った、初めてのちゃんとしたおにぎりですよ」
「……」
「それにペリーヌさんにこにこして幸せそうだし。なんだかかわいいなーって」
「なっ……」
「あー、赤くなったー!」
「……な、な、何をおっしゃいますの! そもそも、大体、じろじろ見るのはおやめくださいと言っているでしょう!」
「えー? いいじゃないですかー。減るものじゃないですし」
「減ったら一大事ですわよ!!」

 全くあなたときたら。どうしてそうデリカシーがないんですの……。

 緊張感のない笑顔の宮藤さんに呆れながら、宮藤さんと一緒におにぎりを見つめる。
 つやつやと差し入る朝の日差しを受けて輝くお米の粒。指先でそっと触れれば、しっとりとした海苔の手触り。ほんのりと潮の香りすら漂ってきそうな神々しい姿を、わたくしは目に焼きつけ――

 ――ただならぬ気配を感じてわたくしの手が止まる。うなじの毛が逆立つのを感じた。


----

174 名前:Formation Δ(デルタ) - 5/9:2010/01/04(月) 23:04:17 ID:uzF4qeCc
「どうしたんですか?」

 ペリーヌさん? 宮藤さんがわたくしを呼ぶ。

「」
「……」

 その宮藤さんに返事をすることも出来ず、わたくしは固まっている。
 ……見られていますわ。苦手な視線に。

「ペリーヌさん? ペリーヌさん?」

 その目は多分、ルビーの色をしていて。そこには笑みが浮かんでいて。
 宮藤さんが座っている場所の、さらに後方。食堂の入り口から漂ってくるただならぬ気配、いえ殺気に、わたくしの全神経が警報を発している。

「――クロステルマン中尉。」

 絹のように滑らかな声が、わたくしの名を呼んだ。
 見てはいけない、そう思いながら、その声にわたくしの視線は吸い寄せられる。半分開いたドアの向こう、そこから覗く緋色の瞳と視線を合わせる。

「おはよう、クロステルマン中尉」

 ミーナ中佐が、わたくしに向かって笑いかけていた。
 徹夜明け……でしょうか。中佐はやや疲れたご様子のまま、据わりきった視線でわたくしの手元を見ています。

「……クロステルマン中尉。ちょっといいかしら」
「あ、あのわたくし、今ちょっと、食事中で……」
「いらっしゃい――」

 ミーナ中佐はゆっくりと手を上げて、わたくしがいただこうとしていたおにぎりを指差す。

「――それを持って」
「ひ……」

 射抜くような視線を受けて息を飲みました。

(……まずいですわ! ロックオンされていますわ!)

 とっさに少佐が去った廊下の先を窺う。わたくしの待ちわびる少佐のお姿はなく、ただ朝の光が白々と射す廊下。少佐はまだ、戻って来られない。それに、

(いけませんわね……わたくしったら)

 少佐にこの場を収めてもらう事を期待するなんて、虫が良すぎますわね。少佐はわたくしに、もう十分幸せな時間をくださいましたもの。あとはわたくしが、この幸せをお守りする番ですわ。

「宮藤さん――」
「はい」

 こみあげる恐怖を払い、胸に残る闘志を熾(おこ)して立ち上がる。

「――少佐が戻られたら、お待ちいただくようにお伝えくださいまし」
「あ、あの……ペリーヌさん」

 わたくしに釣られて立ち上がった宮藤さんは、気遣わしげな顔。……あなたがそんな顔をする必要はありませんのよ。
 内心がすぐ顔に表れる宮藤さんを見て、こんな状況にも関わらず少し笑ってしまう。
 ありがとう宮藤さん。少しだけ肩の力が抜けましてよ。

「クロステルマン中尉」
「今参りますわ。中佐」

 これは少佐自らが作られたもの。そしてわたくしに下さったもの。
 おにぎりを入れたお皿を取り上げ、わたくしを手招くミーナ中佐の元に歩いていく。
 立ち去り際に目を閉じ、少佐のお姿を思い浮かべた。

(少佐……必ず戻ってまいりますわ……)


----

175 名前:Formation Δ(デルタ) - 6/9:2010/01/04(月) 23:04:40 ID:uzF4qeCc

「……実はね、ちょっと相談があるのだけれど……」
「……い、いきなりお皿を掴まないでくださいまし」

 食堂を少し離れた薄暗い廊下。わたくしは中佐と壁の間に挟まれて、おにぎりを奪われそうになっていた。中佐はわたくしの頭のすぐ横に手をついて寄りかかりながら、わたくしの顔を間近から覗き込んでいた。

「そのおにぎりは、美緒が作った物ね?」
「ち……違います……! これはその……わたくしが……」
「ペリーヌさん。」
「はいぃっ!」
 わたくしの名前を呼びながら、中佐はにっこりと笑う。その笑顔の裏からにじみ出る殺気を感じて、わたくしのこめかみを冷や汗が伝い降りる。
「犬という動物はね、約2000種類のにおいを嗅ぎ分けることが出来るの」
「……?」
「それでね、狼の嗅覚は、それ以上と言われているのよ」
 緋色の髪を掻き分けて、狼の耳が立ち上がる。赤いズボンの上に、銀の尾がこぼれ落ちる。
「――そのおにぎりからは、『かつてない障害を克服して歓喜する美緒』の匂いがするわ」
「ひ、ひぃっ!」
「大丈夫よペリーヌさん。痛いのは……少しだけ?」
「疑問形なのおやめくださいまし! あと痛くしないでくださいまし!」

 ――ああ、だめだ。この人の前では。
 最初の決意はどこへやら。狼ににらまれた小動物のように、わたくしは竦み上がってしまう。ミーナ中佐に呼ばれてから一分も経たないうちに、わたくしは早くも戦意を失い始めている。
 舌なめずりしかねない勢いで、ミーナ中佐はさらにわたくしに顔を寄せる。逃げようとしたわたくしの後頭部が、冷たい石の壁にこつんと当たる。

「……そ、そもそも、これはわたくしに下さったものです! 部隊内での私物の略取を隊長自ら行われるというのは、風紀上許される事では……!」
「う……。そ、そうかしら……」
 わたくしの一言に中佐はうろたえる。ふっと中佐の殺気が緩む。
「ええ! そうですとも」
「そう……実はねペリーヌさん、私もこんなこと言いたくはないのだけれど……」
 中佐は殺気を収め、ふっと目を逸らした。

「な、なんですの?」
「美緒のウィッチの寿命が、つきかけていることは知ってるわね」
「え、ええ。ですがそれと一体何の関係が……?
「その美緒が三角のおにぎりを作るのにはね。膨大な魔力を必要とするの。ウィッチの寿命に影響するほどの」
「そんな! そんな事! あるわけありませんわ!」
「いいえ。美緒はね。ずっとおにぎりに挫折し続けてきたの。私はそれを知っているわ」
「あの、中佐……いい加減な事おっしゃらないで下さいまし……!」
「今ここで成功の味を占め、ペリーヌさんが喜んでしまえば、美緒はこれからもおにぎりを作り続ける。ウィッチとしての寿命を削る事になったとしても。そうなる前に、私が止めなくてはいけないの」
「中佐……」
 少佐を思いやる言葉を口からこぼしながら、私に迫る中佐。

「だからペリーヌさん、今すぐそれを私に――」
「中佐……!」

(……大ウソですわ……!)

 じりじりと迫る中佐から逃げながら、心の中でそう叫びます。

「だ、だめです……これは……」
「そう? 例え美緒のウィッチとしての寿命を縮めるとしても?」
「――例えそうだとしても、わたくしがお止めしますわ」
「……」

 自分の言葉を恥じ入るように中佐はうつむきます。わたくしは中佐に向かって、静かに語りかけます。

「中佐……」
「なに? ペリーヌさん」
「中佐は、少佐と共有できる物を、とても多く持っていらっしゃるじゃないですか……。
 共に過ごして来た時間も、思い出も、共に部隊を率いるという立場も……。それに少佐がお辛い時、中佐でしたらわたくしには出来ないやり方で支えて差し上げる事も出来ます……。わたくしはいつも、それをとてもうらやましく思ってしまうのです……」
「ペリーヌさん……」
「自分ではどうにもならないことで、人をうらやんだりしたくはありません。
 ですがわたくしには、想いしかないのです……。
 だからその……す、少しぐらい、わたくしだけの物があってもいいじゃありませんか……!」
「……」

176 名前:Formation Δ(デルタ) - 7/10:2010/01/04(月) 23:06:26 ID:uzF4qeCc

 わたくしの訴えに、中佐は思わず言葉を詰まらせる。わたくしは中佐の目を覗き込む。分かってくださいまし、その思いを込めて。
 わたくしを壁に押し付けながら、わたくしの目を見返す中佐の緋色の瞳。それを受け止めるわたくし。

「……こ、これ、どうなるんでしょうか、バルクホルンさん」
「全く、ペリーヌがミーナを屋上に呼び出したと聞いたから、何事かと思えば……」
「ペリーヌさん、大丈夫かな……そもそもこれ、どういう状況なんでしょうか」

 横から聞こえてきたひそひそ声に、わたくし達は同時に視線を外した。横目でうかがうと、廊下に立ち並ぶ柱の影から、宮藤さんとリーネさんと、バルクホルン大尉のお顔がのぞいている。

「……リーネちゃんあれだよ! これはカツアゲだよ!」
「カツアゲ……?」
「そう。扶桑の学校でね。突然体育館裏とかに呼び出されて金品を巻き上げるという恐怖の儀式……!」
「金品を奪取……? ……み、宮藤。お前そんな環境で育ってきたのか!?」
 バルクホルン大尉が宮藤さんの顔を覗き込む。大尉が握り締めている柱にぴしりとひびが入る。
「あ、私の学校はそんなのなかったですけど」
「そ、そうか……もしお前がそんな目にあっていたとしたら、私は今すぐ扶桑に侵攻しなければならないかと……」
「そ、それで芳佳ちゃん! 中佐はペリーヌさんから、その『カツアゲ』で坂本少佐のおにぎりを奪おうと……?」
「そうだよリーネちゃん。きっとそのうち『ジャンプなさーい』とか言い出すよ?」
「ジャンプ……?」
「あ、ごめん。それは話すと長くなるから……。でもね……カツアゲでおにぎりを奪われるだけじゃないんだよリーネちゃん。
 そのカツアゲの恐ろしいところはね? 一回じゃすまないって事なの」
「え?」
「そうだよ! 一度そういう上下関係がついてしまうとね、中々抜け出せないの。やる方もどんどんエスカレートしていって、やられる方もそれが当たり前になっちゃって……」
「そ、そうなの……?」
「うん。だからペリーヌさん、これからきっとミーナ中佐にいろいろされちゃうんじゃないかな……」
「ミーナ中佐に……ペリーヌさんが?」
「それから部屋の前で毎晩『キュッ』って音を響かせてペリーヌさんを眠れなくするとか」
「ええ! そんな!」
「それからブリーフィングに来たら、黒板に相合傘で『ペリーヌ(はぁと)肝油』って書かれてたり……」
「た、耐えられない! でも……『リネット(はぁと)芳佳ちゃん』……いいかも……」
「……そしてその上ストライカーに画鋲を……!」
「やっぱりやめて! 芳佳ちゃんやめて!」
 怖い。頭を抱えて震えながら、リーネさんが叫ぶ。

177 名前:Formation Δ(デルタ) - 8/10:2010/01/04(月) 23:07:04 ID:uzF4qeCc

「えーと……」
「あの、どうしましょう……」
 好き勝手に暴走する宮藤さんとリーネさんの会話を聞きながら、わたくし達は顔を見合わせる。
「……私、宮藤さん達にどんな風に思われているのかしら……」
 中佐がぽつっとそう呟いた。

「……まあ待て二人とも。いくらミーナでも、そこまで大人気ないことはしないだろう」
 無責任に盛り上がる二人をとりなすように、バルクホルン大尉が間に割ってはいる。
「そうですか?」
「ああ。そこまで子供じみた事はしないさ。
 それにな。ミーナを庇うわけではないが、ああ見えてミーナには苦労が耐えないんだ。
 統合航空団の司令という立場は、激務だしストレスも多い。上との折衝に部下の面倒、それこそ神経にヤスリをかけるような日々をミーナは過ごしている。私達がこうして戦えているのも、ミーナのおかげなんだぞ。それを忘れて、勝手な事を言ってはいかんぞ」
「……トゥルーデ! そ、そうよね! あなたなら分かってくれると信じてたわ!」
「――『女侯爵』『鉄の大臀筋』『18歳』。そんな虚飾に満ちた言葉で祭り上げられてはいるが、ミーナはその肩で複雑な立場にある私達の部隊を支えているんだ」
「……トゥルーデ?」
 ――18歳は虚飾じゃないのよ? 中佐が首をかしげながら問いかけます。
「だから――たとえ、人として目も当てられないような醜態をさらしていても……大目にみてやってくれないか?」
「――ちょ……フォローしてくれてるのよね!? フォローする様に見せながらひどい事言ってるいんじゃないわよねトゥルーデ!」
 それから18歳は本当なのよ信じて! ミーナ中佐は大尉に向かって繰り返します。

「ペリーヌさんもそうですよね……」
「うん。人として必要なものを見失うほどに、おにぎりが大事なんだね……」
「おやめくださいまし! 一括りに変態扱いするのはおやめくださいまし!」
 こちらの必死の呼びかけを無視して三人は会話を進めていく。

「どうしよう芳佳ちゃん……」
「どうしましょうバルクホルンさん」
「どうしようもないな……」
 バルクホルン大尉はため息をつき、わたくし達を眺めます。

「ああなったミーナに手を出すと後が怖いからな。私たちに出来ることは、せいぜい二人の行く末をを見守ることだけだ……」
「な、なにをきれいにまとめてらっしゃいますの!?」
「トゥルーデ! 気づいてるんでしょ!? 聞こえてるの分かって言ってるんでしょ!」
「……」
「……あからさまに目をそらさないで!!」
「おやめくださいまし! 聞こえない振りをするのはおやめくださいまし!」

 行こう。ペリーヌは大丈夫だ、多分。そういいながら、逃げるようにバルクホルン大尉は去っていきます。わたくし達は呆然とその姿を見送ります。


「……帰りましょうか」

 三人の姿が廊下の先に消えたとき、ぽつん中佐がそう呟いた。お皿から手を離して、わたくしに背を向ける。

「あの……これは……」
 その背中に向かってわたくしは声をかける。いつもわたくし達を支えてくれる毅然としたその背中が、なんだか小さく見えます。ふわ、と緋色の髪がゆれて、ミーナ中佐が振り返ります。

「美緒が見ている前で食べてあげてね」

 にっこり。いつも隊をまとめてくれる穏やかな笑顔で、中佐はそうおっしゃいます。

「どんな味でも、おいしいといってあげないと駄目よ」
「え、ええ!」

 ほっと肩の力が抜ける。胸を張ってわたくしは断言した。

「――心配はご無用ですわ! 少佐が作られたものですもの!」

 中佐は苦笑しながら、「だから危ないのに」と答えた。


----

178 名前:Formation Δ(デルタ) - 9/10:2010/01/04(月) 23:08:01 ID:uzF4qeCc

「――どうしたんだ? 二人一緒になって」
「あ、いえ……その……」
「……ねぇ?」

 食堂に戻ってきて、少佐に迎えられたわたくしたちは顔を見合わせた。中佐はばつの悪そうな顔をして、わたくしも苦笑いをしている。

「……なんだ。まだ食べてなかったのか。あんまり置いておくと乾いてしまうぞ。一体どうしたんだ?」
「いえ、これはその……せっかくですから、中佐もご覧になりたいのではないかと思いまして……二人で見ていましたの」
「ほう! そうか!」

 少佐の質問にやや苦しい言い訳をすると、中佐がぐっと親指を立てた。わたくしも中佐もテーブルをはさんで座ります。おにぎりをテーブルに置き、隣に座る少佐にお辞儀をしました。

「で、では、いただきますわ……」
「ああ! 食べてくれ」

 少佐のやや照れたお顔を見て、おにぎりに向かいます。
 ちょんとお皿に盛られたおにぎり。それに向かって、両手を合わせて「いただきます」――テーブルマナーとしてはどうかと思いますけれど、この方が気持ちがこもるような気がいたしますものね。
 そして手を伸ばし、触れます。先ほどより少ししっとりとした海苔の手触りを感じながら、おにぎりを手に取ります。目の前におにぎりを運んでしばし見つめ。胸いっぱいに香りを吸い込み、口をつけ――

「――」
「ど、どうしたんだ! ペリーヌ!」

 一口目から固まったわたくしを少佐がゆすぶっています。肩をがくがくとゆすぶられながら、なにも言う事が出来ないわたくし。
 少佐が手ずから作られたおにぎり。私もお手伝いをして、少佐の愛情を一杯注がれて作られたおにぎり。わたくしがそれを口にしている。そう考えると、頭の中がぽーっと桃色に染まってきて――

「お、おいどうした! ペリーヌ! 喉に詰まったか!? それとも……まずかったか!?」

 少佐があわててお茶を注いでくださいます。ああ、申し訳ありません少佐。違います。違うのです。
 ただ感極まって――わたくしの幸せ回路がショートしているだけなのですわ!

「ち、ちがいます……」
「どうしたんだ? 大丈夫か!?」
「ええ……少佐。あの、おいし……おいしいですわ……!」
「おお……そうか!」

 やっとそれだけを言えた言葉。それを聞いて、少佐の顔がぱぁっと明るくなる。わたくしもつられて笑う。

「ははっ、そうか。そうかそうか!」
「はい! おいしいですとも!」
「(キュメキッ!)」

 ――なんだか、向かいの椅子の方から、何かが砕け散る音がしたような気がしますが、気のせいですわね。

「――良かったわね、ペリーヌさん」
「はい!」

 中佐は椅子に腰掛けたまま、にこやかにわたくしを見つめてくださっていますもの。
 一口一口、味わいながら食べていきます。少佐と中佐が笑いながら、わたくしを見守ってくださいます。
 暖かなお二人に見守られながら、少佐のおにぎりをいただく。その幸せを噛み締めながら、わたくしは黙って口を動かします。減っていくおにぎりを惜しみながら、でもそれがいずれわたくしの一部になることを喜びながら、わたくしは食べ続け――
 ――ごくん。最後の一口を飲み込み、静かにお茶を飲み干しました。

「ごちそうさま。とても……おいしかったですわ……」
「そうか!」
「はい……あ、あの……」
「……? どうした」
「はい……そのとても、おいしかったですわ……」

 ……胸がつまって、それしかいえないわたくし。
 いけませんわ。これほど幸せにしてくださったのに、これだけでは中佐と少佐に何も返していないも同然ですわ。何か言わないと……。そんな風に焦るわたくしをなだめるように、お二人はあくまで優しくわたくしに言葉をかけて下さいます。

「ペリーヌさん、おいしかった?」
「ええ……」
「そうか! 喜んでもらえて何よりだ」
「……はい」
「うむ! いや、実は私も食べては見たんだが、どうも塩気の量に自信がもてなくてな」
「──はい?」

 少佐は厨房の方に去っていき、大皿を手に抱えたまま戻ってくる。どん、と音を立てて、その大皿をわたくし達の前に置いた。

「いくらでもあるからな。どんどん食べてくれ」
「……へ?」

179 名前:Formation Δ(デルタ) - 10/10:2010/01/04(月) 23:09:41 ID:uzF4qeCc

 おにぎりが積み上げられた大皿を目の前に置いて、少佐は得意そうな顔。

「これ、全部美緒が?」
「ああ。釜一杯分のご飯があるんだ。まさか1個だけ作って終わりというわけにも行かないだろう」
「そうだけど……」
「大体お前たちは、いつも食が細くて心配になるぞ。
 ペリーヌもミーナもいつも無理をしているんだ。せめて食べて力をつけないとだな――」
「そ、そう?」
「そこまで、無理はしていませんけど……」

 ――そういうところは見えてらっしゃいますのね。随分と都合のいい視覚です事。
 本当にしょうがない方。呆れながら中佐と顔を見合わせて、二人同時にくすりと笑った。

「おぉ、もうこんな時間か」

 では訓練に行って来る。そう言って少佐は立ち上がり食堂を出て行く。
 「宮藤ー! いるかー!?」と呼ぶ声が廊下を遠ざかっていく。

「……」

 そして食堂には、わたくしと中佐だけが残された。

「量産、されてたんですね……」
「そうね……」
「これ……三角……ですわよね……」
「……そう見えないこともないわね」

 うず高く積み上げられたおにぎりを見ながら、ぽつりぽつりと言葉を交わします。

「……あの、中佐……」
「なぁに? ペリーヌさん」
「わたくし……少しおなかがすいて参りましたわ」
「……みんなが来るまで、きっとまだ時間があるわね」

 座板が粉砕された椅子から、中佐は腰を上げ、別の椅子を引き出して座りなおします。
 わたくしは急須を取り上げ、二人分のお茶を注ぎました。

 食堂にはわたくしたち二人だけ。目の前の大皿には積み上げられたおにぎり。坂本少佐のおにぎり。
 このシチュエーションが示すものは――第二ラウンドの幕開け。

「ねぇペリーヌさん。美緒と一緒に訓練に行った方がいいんじゃないかしら?」
「少佐がこれを作ってくださったんですもの。それを置いて行けませんわ」
「そうかしら……」
「中佐こそ、お休みになってないんでしょう? 寝る前にお食べなると大変な事になりませんの?」
「そうねぇ。でも、美緒のおにぎりが食べられるなら、まだ寝ないでがんばれるかな……」

 二人の視線ががっちりと組み合います。

「――大人しく、お休みにはなりませんのね?」
「――訓練には行く気は、ないと思っていいのね?」

 おにぎりが盛られた大皿をはさんで、見詰め合うわたくしと中佐。

「そう……ふふ」
「ええ……うふふ」

 不敵な笑みを漏らすわたくしと中佐。

 ……食べ尽くして差し上げますわ。あなたより、ひとつでも多く。

「いただきます」

 二人の手が、同時におにぎりをがっつと掴みました。


                                        おわり

----
ページ分けを間違えました。すみません。
本当はペリーヌがかっこよく少佐をお助けする話を書きたかったんですが……どこで間違ったんだろう。きっと体調が悪かったんです。頭とか。
読んでくださってありがとうございました! それではまた。

180 名前:名無しさん:2010/01/05(火) 00:11:59 ID:..n6OZww
>>168
GJ! シャッキーニ分補給できた!
イイネ

>>179
GJ! ミーナさんとか色々大変な事になっているけどもっペリ良かった!
お姉ちゃんフォローになってないw 芳佳も何かおかしいw

181 名前:名無しさん:2010/01/06(水) 02:42:17 ID:ZYPkVD.A
テンションのままに書き上げました。4レス分です。


操り人形

「ふぅ……やっとできた」

 ひっそりと寝静まった基地の一室で、私は一人笑みを浮かべた。
手にしたそれは人形である。
凡そ三十余の夜を経て造り上げたその人形は、世には傀儡と呼ばれる代物だった。
私は人形をそっと月夜に照らした。
映し出されたのはとっても可愛らしい女の子のお人形。
人懐こっそうな表情にふわりとはねた亜麻色の髪。セーラー服にスク水といういけない雰囲気全開の水兵服。
その全てに可愛らしいという形容詞がつく私の最愛の人、宮藤芳佳ちゃんを完全に模して造り上げたものだ。
その人形の大きさは本人の十分の一。
親友として当然のスキンシップを通じた結果、それこそ胸の形や黒子の位置まで忠実に再現した逸品だ。
もちろん芳佳ちゃんの可愛らしさも余すことなく再現してある。

「あとはこれを巻いて……」

ところで傀儡を機能させるには器となる人形の他にも、対象の体の一部が必要である。
なので今日の、いや正確には昨日のお風呂の内に採取した芳佳ちゃんの頭髪を人形の腕に結び付けた。

「やった、完成したよ芳佳ちゃん」

私は人形を大切に抱き締めると、静かに歓声を上げた。
たとえ人形でも、芳佳ちゃんを抱くと、なんだか幸せな気分になる。
少しばかり妄想に浸ったあと、私は人形を試験することにした。
実はというところ、この人形を機能させるのにはもう一つ必要な要素がある。魔力だ。
私は人形を胸に抱きながら瞳を閉じて、集中。魔力を発動させた。
側頭部と臀部のむずむずした感触に背筋がぞくりとし、思わず息を漏らす。
そしてそのまま魔力を人形に流し込む。
芳佳ちゃんを抱き締めて、その温もりを共有するように。
私の魔力が芳佳ちゃんの魔力に溶け込むように。
ゆっくりと、優しく、慈しむようにして魔力を私と人形の間で循環させた。

「よし」

目を開くと、手にした人形は淡く輝いていた。
その状態に自信を深めると、壁にコップをあてて私は耳をすました。

182 名前:名無しさん:2010/01/06(水) 02:43:42 ID:ZYPkVD.A
 息を吸って、吐く。
それを数回繰り返した後、コップを持たない左手をおもむろに人形の胸部に触れた。
反応が無い。
続け様に服の下に指を滑らすと、小さな胸をいじくり回す。
すると寝息の中に微かな喘ぎ声が混じりだした。
俄然テンションが上がった。
 私はそのあと、人形の至る所に指を這わせ、夜が明けるまでその嬌声を楽しんだ。



「芳佳ちゃん大丈夫? とっても疲れた顔をしてるよ?」
「ううん、大丈夫だよリーネちゃん! ちょっと寝不足なだけだから!」
「ふふ、ちゃんと寝なきゃダメだよ? 寝るのも任務の内なんだから」
「う〜わかってるよそれくらい。ただ、昨日はその……特別なの!」
「なにそれー」

ああ可愛いな芳佳ちゃん。顔を赤らめて恥ずかしがって。
それにしても確かに昨日、というか今日は特別だったよね。
芳佳ちゃんの鳴き声とっても可愛かったよ、なーんてね。
でもさすがに夜中にするのはもうやめよう。朝食を作る芳佳ちゃんを見て私はそう思った。

「ああっ! お米を流し台に捨てちゃだめ!」
「え?」

「お塩とお砂糖間違ってるよ!」
「え?」

「うぅ、そこからはミルクなんて出ないよぉ……」
「え?」

いかんいかん、最後に私の妄想が入り込んでしまった。油断も隙もない。
なんにしても、これでは戦闘行動に支障を来してしまい、芳佳ちゃんの被弾率が大きく上がってしまう。
それは私にとって耐えがたいことだ。
しかし、だからといってあの人形の味を知った私は、もうあれ無しでは生きられない体になっているのだ。
芳佳ちゃんが寝不足にならず、私が魔力を発動させても不審ではなく、且つ危険でもない。
そんな理想的な環境といえば……やはりあの時間しかない。

183 名前:名無しさん:2010/01/06(水) 02:46:00 ID:ZYPkVD.A
ブロロロと、ストライカーの振動が空気を震わせた。下を向くと小さい点になった基地が見える。
上空千メートルの世界に私達は居た。

『今から飛行訓練を始める!』

坂本少佐がインカム越しに宣言する。

『宮藤は私に、リーネはバルクホルンについていけ』

全員が肯定の声を返す。俄に場の魔道エンジンの音が大きくなる。
そして突然、爆音上げて坂本少佐は真っ逆様に海に落ちていく。芳佳ちゃんはそれを慌てて追いかけていった。

『我々もいくぞ』
『はい!』

言葉と同時にバルクホルンさんが急降下を始めた。一瞬の間を置いてから私もそれを追従した。

急降下から始まって、あらゆる戦術機動を行ない、現在の私達は水平飛行をしていた。私の右前方には芳佳ちゃんが見える。

(そろそろ……)

訓練用の銃を肩に背負うと、私は隠し持っていた人形を手にした。その人形に私の魔力を流し込む。
私は右前方を注視しながら、人形の胸部に右手を触れた。

『きゃあっ!?』

耳に可愛い声が鳴り響いた。芳佳ちゃんは驚いたのか、少しバランスを崩した。
反省反省。もっと優しくしなきゃね。

『どうした! 宮藤!』

坂本少佐はストライカーを停止させて叫ぶ。私達もその動きに従う。

『な、なんでもありません!』
『よし! ではこれより模』
『ひゃうっ!?』

だめ、可愛いすぎて我慢できない。

『なんだぁ! 宮藤ぃ!』
『ち、ちがあぁん!』
『しゃっきりせんか!』
『ひゃ、ひゃいっ!』『みぃ!』
『あっ』
『やぁ!』
『いやぁ』
『ふぅ!』
『んぁっ』
『じいいいいぃ!!!』
『んぅぅぅぅぅ!!!』

可愛い喘ぎ声ともじもじ悶える芳佳ちゃんを前に、私の理性は虚しく弾けとんだ。
私は胸を弄んでいた指を人形の下腹部までなぞると、一気にその部分を擦った。

『いやぁぁぁぁぁぁ!!!』

可愛い。可愛いよ芳佳ちゃん。もっとたくさんその可愛い声を私に聞かせて。

『まったく……なにをやっとるんだこいつらは……ん?』

芳佳ちゃあぁぁぁぁぁぁぁん!!!

『おい、リーネ』
『え?』

あっ

不意に捕まれた肩に驚いて、私はなんと、大事な人形を落としてしまった。
直ぐさまストライカーを急降下させる。魔道エンジンは出力全開。降下速度も気にしない。
どんどん海面が近付いてくる。人形まであともう少し――

184 名前:名無しさん:2010/01/06(水) 02:46:25 ID:ZYPkVD.A
――結局人形の回収は失敗した。

その後、ことの真相が暴かれた私は、ミーナ中佐にこってり絞られることになった。

「リーネさん」
「はい」
「あのね……その」

「私の分も作ってもらえないかしら?」


おわり



皆GJ!
今はラジオがすごく楽しみ。
これでまた賑やかになればいいなぁ。

185 名前:名無しさん:2010/01/06(水) 13:44:29 ID:BilsNtBE
>>184
何の人形だw エロいなGJ

186 名前:名無しさん:2010/01/06(水) 22:55:40 ID:aqnWD5dc
>>184
訓練中は我慢しろリーネちゃんwwwww
隊長も自重だwww エロくてGJ

187 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/07(木) 20:26:55 ID:bQl9CfHE
>>184
エロくて素敵、GJ!

久しぶりに書いたんでどっちに投下するか悩んだんだけど、最近の流れ的にはこっちかなぁ。
そんなわけでいきます。


●スオムス1946 ピアノのある喫茶店の風景 8月26日

 相変わらず夏の終わりの忙しさは続いてるけど、ニパの奴は風邪ひいて寝込み中なんでちょっと人手が不足気味。
 とは言っても今回のはわたしとサーニャの風邪を引き受けてくれたようなもんだし、あんまり文句は言えないよな。
 でも、サーニャの料理を作る横顔、綺麗だなぁ。
 なんだか凄く手馴れてきてて、なんていうかこう、どこに嫁に出しても恥ずかしくないと言うかむしろどこにも出したくないと言うか……っと、電話だ。
 ふぅ、人の幸せなひとときを邪魔するなんて無粋な電話だな。
 でもまぁ仕方ない、出てやるとするかな。

「はいもしもし喫茶ハカリスティ……」
「あ、エイラちゃん? 今日……」
「間に合ってるぞ!」

 ガチャリと音を立てて受話器を置き、額の汗をぬぐいながら独りごちる。
 ふぅ、悪は去った。
 まさかまたあの瓶底メガネの声を聞かされることになろうとはな。

「どうしたの? エイラ?」
「あーいや、なんでもない。単なる間違い電話だ」
「そう……とりあえずこれ、出来たから3番テーブルに」
「おう、任せとけ」

 サーニャからお皿を受け取り、お盆に乗せてフロアへ。
 すると、もう一度電話が鳴り、今度は手の開いてるサーニャが受話器を取った。
 サーニャは笑顔で挨拶をして二言三言言葉を交わし、静かに受話器を置いた。
 電話対応の見本のような態度。うんうん、客商売はこうでなくっちゃな。

「エイラ、ヘルシンキのハルカさんから、今日午後に扶桑からのお客さんがこっちに来るからしっかりおもてなししてね、だって」
「ええっ!?」

 き、聞いてないぞっ! って、今聞いたんだから当たり前か。
 あーあ、また瓶底メガネかよ。んー、お客さんって事はつまりあいつだけじゃないのかな? でもあいつ厚かましから自分の事をお客さんって言ってもおかしくないしなぁ。また相手しなきゃいけないと思うと気が重い。

「誰が来るのかしら。楽しみね、エイラ」
「う、うん……そうだなぁ、楽しみだなぁ、サーニャ。ははははは、は、は……」

 喫茶ハカリスティ、なんだか今日は波乱の予感だぞ。

188 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/07(木) 20:27:34 ID:bQl9CfHE

 そして昼下がり、そいつらはやってきた。
 四人乗りの自動車でハンドルを握っているのは見覚えのある緑の上着。あれは確か扶桑陸軍の士官服だったかな?
 助手席も同じ服装で、後席に見えるのはつい一週間ちょっと前に見たばかりの白の上着。
 ははーん、読めたぞぉ。
 柱とか窓の光の反射で顔が良く確認出来ないけれど、ここまで材料が揃えば未来予知するまでも無い。
 つまり、前席どちらかが穴拭智子少佐で、後席の瓶底メガネは少佐にちゃっかり着いて来たってところだな。
 フフン、そうと決まれば〜。

「エイラ、どうしたの?」
「ん、お客来たみたいだから念入りにテーブルとか拭いておこうと思って」
「そう、じゃあお願いね」
「おう、任せとけ」

 で、敢えて床も拭いたりなんかしてからぎゅーっと絞って汚い汁をバケツにたっぷり、フッフッフ、準備完了だ。
 さぁ来い、早く入って来い。

「こんにちはサーニャ、お久しぶり」

 予想通り一人目はトモコ少佐。
 二〇代前半のその姿は凛々しくて大人の風格を漂わせてる。まーこの人は瓶底メガネとかと絡んでなければクールビューティだったりするんだよな。
 胸は相変わらずわたしの基準では残念賞気味なのが玉に瑕。

「へぇ、なかなかいい所ね」 

 続いて入ってきたのは何となく見覚えのあるトモコ少佐と同じ年くらいの扶桑撫子。
 見たところおっぱいはトモコ少佐よりも触り甲斐がありそうだな。
 そして、次っ!
 出入口の横で待ち構えるわたしの視界に白い袖が目に入る。よし、今だっ!!!
 汚れた水のたっぷり入ったバケツをその白い服に向かってぶちまける!

「わー、手が滑ったぁ(棒)」
「あ、坂本少佐」
「久しぶりだなさー……」

 え? さかもと?

 ざばー。

「あ」
「ほう、久しぶりの挨拶にしてはなかなかいい悪戯をしてくれるじゃないか、エイラ」
「し、しししししし少佐ぁ」
「そこになおれぇっ!」

 すごい勢いで一喝。うう、現役時代以上の迫力じゃないかー。どどどどうしよう。

「ひ、ひぃっ、ゴメンナサイ」
「まぁまぁ、美緒、エイラさんも手が滑ったって言っているし、それに早く着替えないと風邪をひいちゃうわよ」

 全力で頭を下げてると竹井少佐が横からとりなしてくれる。

「む、醇子、しかしだなぁ」
「サーニャさん、美緒の着られそうな服はあるかしら?」

 収まらない坂本少佐をうまくいなして話を別の方向へ。鮮やかだなぁ。

「おい、醇子」
「いいからいいから」

189 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/07(木) 20:28:04 ID:bQl9CfHE
 …………。
 と、いうわけで、少佐を一旦水浴び場に案内して着替えてもらってから改めて挨拶になった。
 因みに坂本少佐用の着替えの服はキャサリンの置いて行ったおっぱい強調型フリフリウェイトレス(勿論オプションでローラースケート付きだぞ)を第一に薦めたんだけど速攻で却下されて、結局わたしと揃いのウェイター服に落ち着いた。
 うん、こう言う男前な服装って少佐に似あうよな。
 ペリーヌやミーナ隊長が見たら鼻血モノだな。後で写真を残せたらいいんだけど。

「とりあえずお久しぶり、エイラ。あなたは相変わらずね。さっきのはハルカと勘違い?」

 サーニャとは挨拶が終わっているのか、私の方にだけ話しかけてくる。

「あはは、まぁそれはそんな感じで……トモコ少佐も相変わらずあいつが居ないとカッコイイな」
「そ、それは余計なお世話よっ。わたしは何時だって凛々しい扶桑海の電光なんだから」

 年上とは言え相変わらず余裕の無い性格だな。ま、だからからかい甲斐があるんだけれど。

「あーあーはいはい、じゃあそれでいいよ。で、この人は?」

 と、何となく見覚えのある初対面の人へと目を向ける。

「初めまして無傷のエース。私は加藤武子、智子とは同期よ」
「あ、どっかで見たことあると思ったら加藤隼戦闘隊の人か、スオムス以外じゃトモコ少佐より有名だよな」
「うっ」

 坂本少佐並みにカッコイイ空中格闘をやるんだよなー。ま、それはトモコ少佐も同じだけれど、むしろそっちはわたしの一言でダメージを受けている姿のほうが真実だと知っているんでこういう追い打ちで情けない表情を見る方が楽しい。

「ええ、まぁその名前で映画も作られてるし、本当は目立つの苦手なんだけど……」

 と、思ったらなんだかカトーさんの方がまさかの弱気モード。あー、そうか、本当にこの人は目立つのが苦手っぽいな。
 でもなぁ……。

「いいじゃん、実力通りの評価だろー、恥ずかしがらずに胸をはれば良いんだ。うちの方とかは映画の話は無かったしなぁ……っていうか、わたしよりもやっぱりサーニャがウィッチになってから戦争を戦い抜いて両親に再会するまでの感動的な物語をだな……」
「エイラ……」
「はいはい、サーニャさんが大事なのはわかるけど私たちのことも忘れないでね」
「あ、竹井少佐……」

 力が入り始めたところで竹井少佐が割り込んでくれる。この人は空気読むのうまいよな。

「とりあえず、今は半分プライベートで来てるから、階級はやめましょう。皆それでいいわよね」

 竹井さんの提案に頷く皆。半分プライベートって事は半分は公用なのか。軍服着てるしな。

「しかし、いきなりバケツの水を引っ掛けられるとは思わなかったぞ」
「うう、それは本当にゴメンナサイ。瓶底……ハルカの奴だと思ったんだよー」
「相手が誰であろうと、そういう真似は感心せん。もう二度とするなよ」
「うう、はい」

 改めて平謝り。こっちが悪いんだし、頭を上げらんないな。

「でも、そんなに目の敵にするなんて、あの娘この間こっちに来た時に何かやらかしたの?」
「え、あ、いや、その……」

 そりゃあやらかしたけれど……そ、そんな事恥ずかしくて言えるかよぉ。
 と、口ごもってたら新たな来客。

190 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/07(木) 20:28:44 ID:bQl9CfHE
「すまん、遅れた遅れた。いやー、釣りを丁度いい時間で切り上げられなくてなぁ。もう始まって……無いようだな、よしよし」

 遅れたとか言いながらそれを悪びれもせず入ってきたのは羽織った上着から判断するに多分扶桑陸軍の人なんだけど、麦わら帽子を被って右肩に釣竿を担ぎ、左肩からは魚籠を下げたその姿はなんだか全然軍人っぽく見えない。
 序に閉じられていない軍服の隙間から見えるのはおっぱいを申し訳程度に隠すだけのサラシ。
 意外とボリュームもあるし、これは……ごきゅり。

「エイラ、何処を見てるの?」
「ゑ!? な、ナニも見てないぞ」
「そう、なら良いんだけど」

 こういう時のサーニャは勘が鋭くって困る。ついうっかり美しいモノに見とれることも出来やしないぞ。
 ところで、この人は誰だ?

「黒江大尉じゃないか、貴方もこちらへ来ていたのか」
「こちらで声をかけて置いたのよ。で、現地合流の積もりでいたんだけれど案の定釣り優先で遅刻してきたの。本当にしょうがないんだから」
「あはは、すまんすまん。ところであんたがユーティライネンでそっちがリトヴャクだな。初めまして、よろしく。私は黒江綾香だ。欧州だと魔のクロエの方が通りが良いかな」

 有無を言わさぬ勢いで挨拶&握手。

「わかったよ。よろしく、クロエ。それと、わたしの事はエイラでいい」

 本当はイッルがいいんだけど扶桑の連中には発音しにくいみたいだからまぁ仕方ない。

「はじめまして、私はサーニャと呼んでください、クロエさん」
「エイラとサーニャだな。了解した。で、始めないのか?」
「そうね、それじゃあ、はい」

 扶桑の連中を振り返ってのその「始めないのか?」の一言に竹井さんが反応して坂本さん――何となく少佐をつけないと呼びにくいな――を除くこの場の皆にクラッカーを配り始める。
 クラッカーか……用意が良いなぁ。って、そうか。

「おお、再会を祝してクラッカーを鳴らすのか、これは賑やかでいいな。所でわたしの分はないのか? 醇子」
「美緒……」

 竹井さんを中心にクラッカーを持つ皆の残念なものでも見るような視線が坂本少佐へと集中する。
 全く鈍感だよなぁ少佐は。これだから扶桑の魔女は……っと、周りの様子を見るに今回に限っては扶桑の魔女は関係ないな。
 少佐の問題だと思うぞ。

「コホン……とりあえず、八月二六日ということで……」

 咳払いして気を取り直し、竹井さんが音頭をとる。

「美緒、誕生日おめでとう!」
『おめでとう』

 そこそこ揃ったオメデトウの言葉に前後して、ちょっと揃わないクラッカーのパパパパンといった炸裂音が店内に響きわたる。

「え!? ああ、おお……」

 面食らった坂本少佐っていうのもなんだか新鮮だな。

「美緒ったら二〇歳になるまでは誕生日が来る度にピリピリしてたっていうのに、それを過ぎたら呆れる程無頓着になるんですもの。で、折角こういう機会だからこんなサプライズを、ね」
「あ、それ分かるわ。ウチにも似た様なのが居るもの」
「へぇ、そんな人が居るのね」
「居るわよ。ね、綾香」
「む、まぁ、居たかもしれないな」

 わざと呆れ顔を作って笑顔で語る竹井さん、それに同調するカトーさん、なんだか良くわかってない感じに頷くトモコ少佐、バツの悪いそうな雰囲気で同意するファーストネームで呼ばれたクロエ。何となく立ち位置とか性格とか掴めてきたぞ。

191 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/07(木) 20:29:13 ID:bQl9CfHE
「はっはっは、これは面目ない。確かに今日は誕生日だったな。バタバタしていたせいで忘れていたよ。しかし、皆にこうして祝って貰えるのは本当に嬉しい」
「でもどうして扶桑の凄いメンバーがこんな日に揃ってるんだ? 全員エクスウィッチとして有名人じゃないか」
「皆さん、お忙しいんじゃないですか?」

 私とサーニャで単純な疑問をぶつけてみる。

「ああ、それなら今丁度視察で欧州各地を廻っていて、昨日からがたまたまスオムスだったって事なのよ。その根回しの為に先週の内にハルカ達が動いてたりしてたわけ」
「あー、それでこうやって扶桑の連中が連続で来たのかー」

 トモコ少佐がそう答えてくれた所でサーニャがわたしの服の裾を引っ張りながら言う。。

「エイラ、立ち話してる暇ないよ。誕生日に相応しい物を今の手持ちで作らないと」
「おおっと、そうだったな」
「あ、無理はしないで。本当に時間を調整出来るかわからなかったから無駄な事をさせちゃ悪いんで事前に何も言わなかったの。昔なじみも交えて祝うことができれば良いと思っていただけだから……」
「とりあえず酒だ酒。スオミビールとコッスを持ってきてくれ。まずはそれが無いと始まらない」

 と、竹井さんの申し訳なさそうな言葉を遮るかのようにどうやら空気の読め無さでは坂本少佐と同等っぽい雰囲気のクロエがお酒を要求。
 その後は結構忙しかった。
 普通にやってくるお客さんの相手をしつつ酒が入って加速のついた連中の対応も同時にこなす事のは中々大変だぞ。
 お客さんがはけてからはアカペラで歌い始めた扶桑の軍歌に対してサーニャが即興で伴奏をつけたり、カトーさんのカメラで私たちも含めた記念写真を撮ったり、誕生日の贈り物代わりだと言って表で扶桑式の剣舞を各々が披露したり。
 っていうか扶桑の連中って全員剣の達人なのか……。サムライとか呼ばれて坂本少佐だけが特別なのかと思ってたけど、聞けばこの場に居る全員扶桑刀での撃墜記録があるみたいじゃないか。
 と、言うことは刀を使わないミヤフジが例外なのか?とか聞いてみたら皆に大笑いされた。やっぱり今集まってる集団が異常らしい。そりゃあそうだよなー。
 でも、みんな無邪気で楽しそう。
 竹井さん以外は扶桑海事変で、トモコ少佐以外は欧州西武戦線で翼を並べてたっていうから同窓会みたいな感じなんだろうな。

「なんか、いいよなー」
「え?」
「ああ、わたしたちもあんな風になれるかなーって思ったんだ」
「エイラ、それなら、もうなってるよ」
「え、そうなのか?」
「きっと先週の私達も一歩離れて見たら今日の皆さんに負けないくらいキラキラ輝いてる集まりだったと思うの」
「あー、それもそうかー」
「でも……」
「でも?」
「どうせなら501隊と507隊の皆も集めてこんな同窓会みたいな事、したいね」
「うんっ、そうだな」

 と、綺麗に纏まったように見せかけて終わらないのがわたしの周りのダメな所だな。
 余程楽しかったのか竹井さんとカトーさんの二人以外が深酒でぐでんぐでんになったんで酔い覚ましに風呂と言う事に。
 っていうかそもそも二人は最初の一杯だけ乾杯してから酒を呑む振りかソフトドリンクでごまかしてたみたいだ。
 二人とも苦労人なんだなぁ。とか言ったら二人して苦笑してた。
 風呂の方は501での経験を生かした扶桑式なんで違和感なく使ってくれるはずなんだけど……。
 まぁ、それはそれとして、此処から先はお風呂の案内にかこつけたおっぱい鑑賞ターイム!!
 ……とか思ったのに『エイラの用意してくれたサウナが一番気持ちいいと思うの(にっこり)』と言うサーニャの言葉と笑顔と態度によってなんだか張り切ってサウナの準備をしてるわたし。
 むむむ、何かおかしいようなそうでもないような……。
 はっ、もしかしてサーニャがおっぱいを独り占め!?
 なーんて、わたしじゃあるまいし、サーニャがそんな事考えるハズないよなー。

 ヨシ、それじゃあサーニャと皆の笑顔のためにサウナの準備に気合を入れるとすっかなー。
 がんばるぞー!

192 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/07(木) 20:30:04 ID:bQl9CfHE
以上となります。

季節感無視でごめんなさい。
喫茶店はマイペースです。

193 名前:名無しさん:2010/01/07(木) 22:53:59 ID:JPKlzNbk
>>192

万歳!(ノ^^)ノ~

194 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/07(木) 23:20:58 ID:7r2OehHc
>>168
GJ! これは良いシャッキーニ。
ご馳走様です。

>>179 rQBwlPEO様
お久しぶりです&GJ! これは良いもっペリ。
ミーナさんじゅうはっさいが大人げないけどワロタw

>>184
GJ! 人形ワロタ リーネ黒いよリーネw
エロス

>>192 zet4j65z様
GJ! 扶桑の(エクス)ウィッチ同窓会和んだ!
確かに彼女達は異常ですわな。戦績は勿論、(一部)性格とかも……w


さて改めてこんばんは、mxTTnzhmでございます。
今夜は「そうだ、ラジオだ!(6話芳佳風に」と言う事で、
ちょっと趣向を変えてみました。
勢いだけで書いたのでアレですがどうぞ。
保管庫No.450「ring」とNo.981「music hour」の番外編、と言う事でよしなに。

195 名前:telephone line 01/03:2010/01/07(木) 23:21:51 ID:7r2OehHc
「501電話相談室」
「はじまりはじまり〜」
「ひゅーひゅー」
「騒ぎすぎだ、お前達。……えっと、コホン。この電話相談室は、日常色々な悩みを抱えるウィッチの為に、
我々、連合軍第501統合戦闘航空団『STRIKE WITCHES』のメンバーが質問等に答えるコーナーだ。
501の基地司令所特設スタジオからお伝えするぞ。気さくに電話してくると良い。番号は44-XXXX-XXXXX……」
「ちょっと待ってトゥルーデ。良いの勝手に司令所の電話使って?」
「問題無い、エーリカ。通信室に特別許可を貰って、今日の為に一本だけ電話回線を引いてある。ミーナも了承してくれた」
「ありがとうございます、中佐」
「ウシャシャ ありがと〜ミーナ中佐」
「いえいえ」
「さて。電話にお答えするのは、私、ゲルトルート・バルクホルンと」
「シャーロット・E・イェーガー。よろしくな」
「以上だ。他にも周りにアシスタント的な意味で数人居るから、必要なら皆で答えるぞ」
「……そう言えば堅物、いつもサーニャとエイラがやってるあれは?」
「今夜は……まあ、我々が地上でこうして通信をだな……余り深く突っ込むなリベリアン」
「ま、いいんだけどね〜」

リリリリリリリリリ……

「おお。早速電話だ。私が取るぞ。はいもしもし。こちら501電話相談室」
「堅過ぎだよ堅物は。もうちょっとソフトに……」
『……あ、あの、この番号で良いんですよね? 相談室って』
「そうだが? どうした宮藤。何か悩みか?」
『えええっ、いきなり酷いですバルクホルンさん!』
「堅物の馬鹿ッ! いきなり相談者の本名言うMCが何処にいるよ? ちゃんと本人に確認取れって」
「ああすまん。いつも聞き慣れていた声だからつい。……で、何だ?」
『いえ、あの……』
「むう……、大丈夫だ宮藤。お前の声は宮藤に似ているが、きっと私の知っている宮藤ではない
誰か別の宮藤っぽい人物なのだろう。そう言う訳で安心して話すが良い。私を姉だと思って安心してだな……」
「全然フォローになってないよ堅物」
『はい。……それで、あの。悩み、なんですけど』
「おお、どうした宮藤」
「もうフォローしきれんわ」
『バルクホルンさんもシャーリーさんも、ミーナ中佐も皆さん胸大きいですけど、どうしたら大きくなれるんですか?』
「なっ!?」
「あっはははは! それが悩みか! しっかり食べないと大きくなれないぞ?」
「笑い事かリベリアン!」
『食べる……、ですか? 本当なんですかバルクホルンさん』
「それを私に聞かれてもな……ミーナはどう思う?」
「確かに、しっかり栄養を取るのは重要ね。あとは適度な運動かしら」
「胸もむと良いって聞いた事あるよ。ニヒヒ」
「ルッキーニもいい加減な事を……」
「あながち嘘でもないかもね」
「エーリカまで!」
「だってほら。トゥルーデもシャーリーも毎晩私とルッキーニに……」
「わあ、言うな! 分かったから! 宮藤も良いな。これで分かったな。お前も努力しろよ!」
『ええっ、話はまだ……』

ガチャッ ツー、ツー、ツー、……

「おい、こっちから切るなって」
「記念すべき一回目からこれとは……」
「良いのかよこんなグダグダで。これ、仮にも世界中のウィッチが聞いてるんだろ?」
「私に言うな。て言うか誰だこんな事やろうと言い出したのは」
「あたしに聞くなよ。ほら、またすぐ電話掛かって来るぞ」

196 名前:telephone line 02/03:2010/01/07(木) 23:22:22 ID:7r2OehHc
リリリリリリリリリ……

「……」
「じゃあ今度はあたしが電話取ろう。堅物じゃどうもね。は〜い、こちら501電話相談室。
あたしはシャーロット・E・イェーガー。シャーリーで良いよ。さ、お悩み何でもどうぞ〜」
『あのお……』
「おおっと、最初に国籍だけ教えてね。あとは匿名でも何でも構わないからさ」
『あ、はい。じゃあロマーニャの、匿名希望で』
「はいはい。ロマーニャの匿名希望さんね。それで悩みってどんなの?」
『ええと、友人の悩みなんですけど……』
「ああ匿名希望さん、もっと気楽に行こうよ。ざっくばらんで良いよ。友達感覚でさ」
『あ、どうもぉ。じゃあ。……私には、仮にAとBとするけど、二人の友人が居てぇ、
Aは強引な性格なんだけどどこか憎めなくて、それでBを部隊に引き込んだだよね。
それで私とAとBは同じ軍学校出身で、BはAの事が好きみたいなんだけど私はBがちょっと好きで、
でも私とAは喧嘩友達みたいな、だけどAは……』
「ややこしいわっ!」
「こら、説明の途中だぞ堅物。悩み抱えてる乙女に向かってその口の訊き方はないだろ」
「しかしだなリベリアン。もっとこう分かり易くだな……」
「はいはい黙って聞いてて。……さあ、匿名希望さん、続きどうぞ」
『あ、どうも。で、Aなんだけど結局好きなのはもしかしたらカールスラント空軍の教官なのかもとか思って、
ちょっと私達どうしたら良いのかって思ってさ……』
「……また一人新しいキャラが出て来たわね」
「ミーナ大丈夫か、眉間にシワがよってるぞ」
「つまり匿名希望さんは、友人との関係を整理したいって事で良いのかな?」
『それもそうなんだけど、でもBとCも仲良いからあんま出しゃばれないし、でもCとDも出来てるって噂だし、
だけどEとFがそれ見て黙ってる筈無いし、あ、でもGはAの事も好きで、私も実はHとIも……』
「分かるか!? 登場人物が多過ぎる!」
「これ位で動揺してどうするよ堅物」
『でね、イェーガーさん。Xがレズビアンだってカミングアウトしてね、もう大変ったら』
「おい待て! 初めて聞いたぞその名前! て言うかXまでの間の人はどうした?」
「落ち着け堅物。……ふむふむ、それで?」
『それを聞いたルッキーニ少尉は今でもトラウマに思ってるらしくて』
「いきなりそこ実名か? 『Lさん』で良かったんじゃ」
「ウニャ? あたし?」
「なんだ、ルッキーニ覚え有るのか?」
「う〜ん、あんまり。覚えてるって言うか覚えてないって言うか、わかんな〜い」
『あ、そこに居るのルッキーニ少尉? 久しぶり。元気してた?』
「キャハ! お久しぶり! ……て言うか匿名希望だから名前言えないよぉ〜」
「そこは我慢だルッキーニ。まあ、後で話しなよ」
「そうする。てかもう眠いから寝る〜」
「……おいおい、あたしの膝の上で寝ちゃったよ。まあ、いいけどね」
「まるで母と娘ね♪」
「あのぉミーナ中佐、あたし、まだ十六なんですけど」
「全く。それで話を整理すると、……ややこしいな。一体何人出て来たんだ」
「はい、合格〜」

カランカランカラン

「いきなり何だエーリカ! 鐘鳴らして合格とか意味不明だぞ」
「え、これってそう言う番組じゃなかったの?」
「何か混ざり過ぎじゃないか」
『やったあ! 合格なんですか? ……って何の?』
「私もよく分からないけど、何となく合格」
「エーリカ、ちょっと黙ってろ」
『じゃあ、黄色の十四番のパネルを』
「パネルなど無いっ! クイズ番組じゃないんだぞ」
「ノリノリだな匿名希望さん」
「まあ、友人関係だけど、落ち着いて整理してみたらどうかしら。皆で話をすれば分かり合えるかも知れないわよ。
何はともあれ、決して一人で抱え込まないでね」
「ミーナ、ひとり真面目に答えて……」
『どうも有り難う御座います! なんかすっきりしました!』
「良かったわ」
『そうだ、私ヴィルケ中佐のファンなんです!』
「あら本当? 嬉しいわ」
「ミーナのファンか。珍しいな。ミーナのどういうところが好きなんだ?」
『いえ……別に』

ガチャッ ツー、ツー、ツー、……

197 名前:telephone line 03/03:2010/01/07(木) 23:23:00 ID:7r2OehHc
「ミーナ、いきなり電話切るな!」
「あら、何かしたかしら?」
「笑顔で言うなっ!」
「もう訳分からん」
「と、とにかく。そろそろ時間だ。今回の501電話相談室はこれまで。また機会が有ったら……
多分永遠に無いと思うが、その時また」
「じゃあまた〜」
「またね〜」
「バイバ〜イ」
「って起きてるのかルッキーニ!」

end

----

以上です。
ラジオの次は電話相談室だっ! と言う訳で書いてみました。
ホント勢いで書いたので、多分続かないと思います。……わからんけどw
そもそも501側の登場人物も多過ぎな気も……。
元ネタに関しては、分かる人だけどうぞ。

ではまた〜。

198 名前:<削除>:<削除>
<削除>

199 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 15:33:40 ID:fJkGw0qs
>>191
続きktkr
まさかもっさんの誕生日までやるとは思わんかった
喫茶店はこういうのんびりしたペースがいいよね

>>196
おおついに赤ズボン隊きた。つか関係性ドロドロすぎるだろw
あと明石家サンタワロタw

200 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 16:01:02 ID:JRjVXQJc
>>192
GJ! 喫茶店シリーズ待ってた!
貴方の書くシリーズは安定感抜群と言うか読んでてホッとしますよ〜。
のんびり続き待ってます。

>>197
GJ! 色々ネタ混じり過ぎワロタ
続きは……有るのか?w

201 名前:zet4j65h:2010/01/09(土) 20:59:54 ID:JHOeDwJE
>>197
相変わらず筆の速さが羨ましいです。
モトネタわからないわからないところが多いけどかなり笑わせてもらいました。GJ

で、自分の方、8月26日の続きになります。
サーニャ視点なんで一応外伝扱いとなります。正直風呂で何が発生するか気になったんで書いてみましたw


●スオムス1946 湯船のある扶桑風呂の風景

 エイラの目つきが気になったから、サウナの準備をエイラに任せて私がお風呂の案内。
 実際にエイラの用意したサウナって私がするよりもなんだか暖かくってホッとする気がするから、だからエイラが用意してくれた方が皆にも良いと思ったの。
 きっと……多分、私の嫉妬とかそう言うのじゃない……と、思う。
 でも、みんな楽しそうだった。
 海軍と陸軍の軍歌で歌合戦とか、思わず私もピアノで混ざってしまったし。
 もっといっぱい、皆で盛り上がれたらいいな。サトゥルナーリアとかでせめて欧州の人たちだけでも呼べないかな?
 そんなことを考えながらお風呂の準備をして、坂本さん達を案内。

202 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:01:33 ID:JHOeDwJE
 ちなみに竹井さんと加藤さんはお店の方の流しを片付けてくれてる。後で私達がやるって言ったけど、ばたばたさせちゃったお詫びにこれくらいはやらせてと押し切られてしまった。

「そうか、501基地での風呂を参考にしてくれたのか。はっはっは、あの時ミーナに無理を言って導入してもらった甲斐があったな。まさかスオムスまできて扶桑式の風呂に入れると思っていなかったよ」
「喜んで頂けて光栄です」

 脱衣所でいつもの様に豪快に笑いながら服を脱いでいく坂本さん。まだまだお酒が残っているせいで肌がうっすら上気していて、すごく色っぽい。
 ……ちょっと、ドキドキしちゃう。

「しかし、こんなメンバーで風呂に入ることになるとはなぁ」
「そうねぇ、なんとなく意外だわ」

 振り返るとクロエさんとトモコさんが服を脱いでいる。
 なんとなく胸の辺りを自分と見比べ、トモコさんはいいとして、クロエさんの辺りで、ちょっとため息。
 オラーシャ人はもうちょっと大きくなってもいいはずなんだけどな……。

「そうだな、うん、意外ついでにサーニャも一緒に入って行かんか? 501の頃もあまり一緒に入ったことは無かった気がするからな」

203 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:05:51 ID:JHOeDwJE
「え、でも……手狭になってしまいますし、エイラが……」
「いいからいいから……えいっ」
「え!? ひゃあっ!」

 坂本さんのお誘いを断ろうとしたら、まだお酒が入っていて変なテンションのトモコさんがススッと前に回りこんできてあっという間にウェイトレス服を脱がされて下着とズボンだけの姿に……。って、トモコさん、何でこんなに手際がいいの……。

「ふふふ、見よう見まねで意外とやれるモンね」

 だ、誰の見よう見まね……。

「しかし、サーニャちゃんは肌が白いよな。まるで雪の妖精のようだ」
「ひっ」

 半裸になって硬直してる私を後ろから軽く抱くようにしてクロエさんが耳元で囁いて来る。
 あっ、あのっ、背中っ、胸っ、当たってますっ。
 あと、声が、すごく、口説かれてる気がしますっ。
 アルコールのせいか体温が高くて、抱かれてるとその体温が凄く心地よいというかなんと言うか、エイラもこのくらい大胆だったら……って、そうじゃなくてっ!
 ミーナ隊長が「これだから扶桑の魔女は」ってよく言ってたのがわかる気が……。
 抗議とかそういうのがなんだか言葉にならなくて口ばっかりパクパクする。

204 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:07:20 ID:JHOeDwJE
「こらこら、黒江殿。サーニャが緊張しているじゃないか」

 自分でも顔が真っ赤になってるのがわかって、お酒飲んでもいないのになんだかくらくらしてきた所に坂本さんの助け舟。

「おっと、ごめんごめん、サーニャちゃん」

 体の前に回されていた手が緩んで開放されたと思ったのも束の間、坂本さんに手を引かれてそのままぎゅっと抱きしめられてしまう。
 あ、あのっ、また胸が当たってというか……顔っ! 顔っ! 押し付けられていますっ!

「サーニャは恥ずかしがりや何だからな、もう少し距離感を気をつけてやれ」
「おいおい、そんな事いってる坂本が一番大胆だな」
「む? おおっ、すまんなサーニャ」
「えっ、いえっ……」
「あーずるいっ、私もサーニャちゃん抱くっ!」
「ひゃっ」

 坂本さんが開放してくれたと思ったら今度は相変わらず一番酔っ払ってるトモコさんが抱きついてきた。

「雪ノ妖精取得セリ!」

 わ、わ、ちょっと……なんでトモコさんが近くにいると服が脱げるんですかっ!?

「お風呂入りましょう、お風呂」

 気がつくと全裸にされて横抱きにされて強制的に浴室へ。

「あ、こら、穴拭殿っ!」
「抜け駆けはひどいぞ、智子」

205 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:12:29 ID:JHOeDwJE
 でも、流石マナーの国扶桑。浴槽に入る前に皆一度体を流すので、一応そこで開放してもらえた。
 そこでホッとしたのも束の間、

「ほら、サーニャも早く体を流してこっち来ないかー」
「は、はいっ」
「なんなら私が流してあげようかしら? サーニャちゃん」
「酔ってるお前は卑猥だ、自重しろ智子」

 た、たしかに怪しい笑みを浮かべながら手をわきわきと動かすトモコさんは、凄く……ヒワイです。
 やっぱり、ハルカさんとかジュゼさんとの噂って本当なのかな……だとするとトモコさん、ちょっと怖いかも。
 いろいろ考えながらも何となく押し切られる形でお湯を被って簡単に体を流し、広げたタオルで胸から下を隠しつつ浴槽に向かう。
 するとそこには思い思いの姿勢で扶桑風呂を堪能している3人の姿があって、やっぱりちょっと手狭かもと思う。
 普段私とエイラだけなら普通に足を伸ばしても余裕があるんだけれど、4人で入るには無理がある気がする。
 でも、遠慮した私が「あの、やっぱり狭そうなんで、出て待っていますね」という言葉を最後まで言わせて貰えずに3人が3人で自分の脇や胸元を指してここが空いてるとそれぞれの口調で言い出す。

206 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:17:17 ID:JHOeDwJE
 うう、みんな酔っ払ってるせいか行動が凄く大胆です。
 やっぱりエイラにこっちを頼めばよかったかな。
 逆らえる空気じゃないので、3人の様子を見る。
 坂本さんは浴槽の中で胡坐をかいて壁面に寄りかかり、頭には扶桑式の薄手のタオルを乗せている。
 というか3人とも頭のタオルは共通みたい。きっと扶桑の文化なのね。
 クロエさんは足を伸ばしてその先を浴槽から出す姿勢でくつろいでる。あの胸元で空いてるってジェスチャーされても……それって、体の上に乗れって事なのかな。なんだかそれは凄くイケナイ気がする。
 トモコさんは普通にお尻をついて座っているんだけど、手招きする指先とか目つきが妖しい。他の娘の胸を見てるエイラより妖しい。正直怖い。
 酔っ払ったトモコさんとは二人きりにならないように気をつけないといけないかも。
 そうすると、消去法で坂本さんのところしか無いかな。
 詰めれば隣に座れそうなスペースもあるし。うん、そうしよう。
 勇気を出して踏み出し、坂本さんの方へ。

「ああん、妖精ちゃんに振られちゃったぁ、残念」
「ははは、流石スカのサムライだなぁ。完敗だよ全く」

207 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:18:49 ID:JHOeDwJE
 二人の冷やかしみたいな残念そうな声を聞きながら浴槽に入って坂本さんの隣に腰掛けようとすると、あっという間に坂本さんが姿勢を変えて手を引かれる。
 お尻が浴槽の底についた時には後ろからすっかり坂本さんに抱かれる姿勢になっていた。

「え?え?え?」
「ようこそサーニャ」

 状況が掴めなくて目を白黒させているとそんな台詞と共に畳まれたタオルが頭に置かれる。背中には再び柔らかい感触、体の両側には軽く曲げて伸ばされた脚。頭には手が置かれて、タオル越しに撫でられてる状態だから……に、逃げ場が……。

「さっ、さかもちょ……ぶくぶく」
「はっはっは、そんなに縮こまるな。遠慮なく寄りかかっていいんだぞ」

 む、無理っ、絶対無理ですっ。

「……ぶくぶく」

 そんな私の主張は言葉にならず、ぶくぶくと音を立てるだけ。

「しかし、サーニャは成長したな」
「?」
「初めは私やミーナと最低限の接点だけで部隊の夜の守りを担当し、次はエイラの陰に隠れ、守られていた」
「…………」
「それがいつの間にか他の連中とも普通に話せるようになって、気がつけば今はいい風情の食堂のおかみさんだ」

208 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:20:18 ID:JHOeDwJE
「さかもと、さん……」
「働いている時のサーニャ、笑顔が輝いていたぞ」

 凄い、流石世界に名だたるエースウィッチ。あんなにみんなで盛り上がってる間も、私達の方を見てくれてたんだ。

「エイラと皆の、お陰です……」
「ああ、そうだと思っている。私もその一端に関われたことを嬉しく思う、サーニャ」

 なんだか、力強くて優しくてお父様みたい。
 女の人なのにそんな事言ったら気を悪くされちゃうかもだけれど、本当にそう思う。
 そう思ったら急に緊張がほぐれて来た。
 小さな頃のお父様に甘えていた時を思い出して、体の力を抜いて身を預けてみる。
 その体はやっぱりとっても女性を感じさせてくれて、エイラとは違った感触で力強くて柔らかくて、別の安心感を与えてくれた。
 お父様とお母様を足したら坂本さんみたいな人になるのかな……ううん、それも違うような気がする。
 でも、すごくいい気持ち。
 自然と歌がこみ上げてきて、気がつくとハミングで奏でてる。
 ちょっと冷やかし気味の笑顔でこちらを見てたトモコさんとクロエさんも穏やかな表情になって、坂本さんも「いい歌だな」って言ってくれた。

209 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:24:17 ID:JHOeDwJE
 奏で終わったらお湯の温かさと坂本さんの肌の心地よさに揺られて急に眠くなってきた。

「はっはっは、眠り姫ぶりは健在だな」

 そんな坂本さんの優しそうな声を間近に聞きながら、眠りに落ちた。
 なんだか、とても幸せそうな夢が見れそう。
 おやすみなさい。




以上となります。
携帯からのカキコはめんどいなぁ……。
エイラと竹井さんと武子さんの話は……ネタが浮かばないんで多分ムリダナ(・x・)
あと、トモコさんが変な人でごめんなさい。
もうちょっと妖しい行為まで進めようかと思ったんですが、考えるにそこまで行ったら絶対にエイラか武子さん、或いはその両方からのツッコミが入って話が破綻しそうだったんでやめときましたw

それと、レスありがとうございました。喫茶店は秋のエピソードが思いついたら続きを書きます。

鈴木貴昭氏のブログの写真に自分の同人誌が端っこの方だけだけど写ってて幸せなzet4j65zでした。

210 名前:名無しさん:2010/01/09(土) 21:51:29 ID:27CrxuZg
>>209
リアルタイム更新キタ━━━━━(゚∀゚)━━━━━ !!!!
GJ! じっくり拝見しました!
流石扶桑のウィッチ(ry (主にエイラが)出来ないことを平然とやってのける、そこにシビれる(ry

あと同人誌掲載? おめでとうございます。
エースの活躍に今後も期待してます。

211 名前:名無しさん:2010/01/10(日) 11:08:05 ID:dOhCyvJ.
>>209
GJ! トモコ変態過ぎるw
サーニャはもっさんの娘!

212 名前:ピアノと瞳 01/04:2010/01/10(日) 20:48:31 ID:XELw47kQ
>>168を書いた者です。
感想してくださった方々ありがとうございます。
ルッキーニ上手く動かせなくてごめんなさい。
今回は、ルッキーニ×サーニャ=ルッキーニャです。




今日はシャーリーが非番で町に出掛けているので、私は寂しかった。
 やることがないと言えば、それは大嘘だ。
 芳佳やリーネと一緒に、坂本少佐やバルクホルン大尉の訓練だって受けられる。

それにペリーヌやエイラをからかったっていいのに、そんな気分にはなれなかった。

赤信号、みんなで渡ればこわくないという扶桑の諺。
 つまるところ、シャーリーが居なければ楽しくないし、つまらないのだ。
 ハンガーへ行ってみたり、秘密基地へ行ったりして時間を潰した。

そして昼食を食べても、私はずっとつまらないままだった。

ミーティングルームのソファーに横になっているとサーニャがこつこつと歩いて来た。
「ねぇサーニャ、エイラはどうしたの?」
「訓練で、芳佳ちゃん達と飛ぶんだって」
サーニャもひとりらしい。

「ね、ね、つまんないから、ピアノ弾いてよー」
「えっ、えっと、いいけど、あんまり期待しないでね」
そう言って、目を優しく瞑りピアノを弾いていく。

ゆったりとした時間がミーティングに流れ、寂しい気持ちを溶かしていく。
床に寝転がったり、ピアノの上に乗ったりしながらサーニャの優しい曲を聴く。

213 名前:ピアノと瞳 02/04:2010/01/10(日) 20:51:10 ID:XELw47kQ
弾き終えるとサーニャは感想を求めてくる。
「どう、だった?」
「うん、えっとね、最初の方は、うにゃーうにゃにゃーって感じで、そこからね、ウガーってなって、ふにゃふにゃってなるの」
「そっ、そう……。聴いてくれて、ありがとう」
そう言うとサーニャは立ち上がろうとする。
「あっ、まって、まってよ、ねぇ、まだ弾いてよー」
サーニャ困った様な、優しい目を私に向ける。少し時間がたってから、サーニャは私に頼んだ。
「じゃあ、これから私が一曲ずつ弾くから、ルッキーニちゃんは感想を私に言ってくれる?」
私は笑顔でそれに答えた。

一曲ずつ私は思ったままの感想をサーニャにぶつける。
 そのたびサーニャは、今度はこう弾こうかな、こうゆうのはどう、と言いながら微笑む。
 どの曲もサーニャが弾けば、サーニャの曲になった。

そろそろサーニャは、次にどんな曲を弾こうか迷いはじめた様だ。

私は思い切ってリクエストしてみた。自分の故郷の曲を。

214 名前:ピアノと瞳 03/04:2010/01/10(日) 20:52:09 ID:XELw47kQ
「ねぇ、今度はわたしからリクエストしていい?」
「ええ、いいわよ」
「じゃあ、サンタ・ルチア弾いてくれる?」
サーニャは頷き、手を鍵盤に乗せイントロを弾き始めた。



Sul mare luccica, l'astro d'argento

 Placida e` l'onda prospero il vento

 スー マーレ ルチカ ラストロゥラ ドレジェント

 プラチーダエ ロンダ プロスペェロ イヴェント

 Venite all'agile barchetta mia

 Santa Lucia! Santa Lucia!

ヴェーニーテ ア ラージネ バルケッタ ミーヤ

サンタール チーヤ サンタ―ル チーヤ



私はピアノと一緒に歌った。

 まだ自分が幼い頃、音楽の授業で耳が痛くなるまで聴いて、歌わされた歌。

 音程なんてどうでもよかった。
元気に歌った。笑われた。
でも誰よりも好きだった曲。

恥ずかしい。私の歌を聴いているのはサーニャだけ、いつも騒いでみんなにちょっかいだしてるのに。
 心臓は言うことをきかない。

そして、最後のフレーズを歌い上げた。

215 名前:ピアノと瞳 04/04:2010/01/10(日) 20:53:37 ID:XELw47kQ
「ルッキーニちゃん、上手」
「そっそんなこと、ないよ、全然下手だよ、てきとうだよ」
私照れながらがそう言うとサーニャは、
「私は聴いてて、とっても温かい気持ちになれたわ」

私のお父様がよく言っていたの、音楽にしろ芸術にしろ恥ずかしくても堂々としなさいと。
音楽も芸術も自分の心をそのまま相手に見せるでしょ、今のルッキーニちゃんはとってもあなたらしかったわ。
 だから私はルッキーニちゃんの歌、もっと聴きたいし、好きだよ。

「これからも、私のピアノ聴いてくれる? 音楽の話が出来るの、ルッキーニちゃんだけだから。ミーナ中佐には私、話しかけにくくて、だから、ね?」
 サーニャはそう私に言う。断るはずない。

私は、自分と同じ緑色の瞳に今日一番の笑顔を向ける。
寂しかった気持ちは、もうすっかりなくなった。

「いいよ!」

私の声が響く。

216 名前:ピアノと瞳:2010/01/10(日) 20:57:57 ID:XELw47kQ
新しい作品が沢山投下されてて
毎日楽しく過ごせています。

ありがとうございました。

217 名前:名無しさん:2010/01/11(月) 10:53:58 ID:HMvRRQfw
>>216
GJ! ルッキーニャとはまた珍しい組み合わせ。
和んだ!

218 名前:名無しさん:2010/01/11(月) 17:58:05 ID:bX7wAiNo
>>216
二人のやりとりがいい感じで良かったよ。
読みながらこちらも思わずにっこりしてしまった。

219 名前:名無しさん:2010/01/11(月) 23:36:55 ID:SnsV0WDI
>>216
GJ! サーニャとルッキーニも良いネ。

そう言えば、エイラーニャのラジオをインターネット放送で聞いたゾ。
なんか中の人達のほわほわ感がステキだったナ。
次回も楽しみダゾ。
……てか投稿に勲章てw

220 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/13(水) 00:30:01 ID:cMQLp8Mc
>>209 zet4j65z様
GJ! 喫茶店シリーズ毎回楽しく拝見してます。
読んでて楽しくほっと出来る優しい内容がステキです。
同人誌もおめでとうございます?w

>>216
GJ! ルッキーニャとはまたレアですね。
ほのぼのしてて良いですね。


改めてこんばんは、mxTTnzhmでございます。
>>195-197「telephone line」の続編出来ましたのでどうぞ。
例によって勢いだけで書いてます。よしなに。

221 名前:league of lady 01/04:2010/01/13(水) 00:33:40 ID:cMQLp8Mc
「501電話相談室、はじまりだよ〜っ!」
「いえーいえー」
「こんばんは! 今夜も始まりました501電話相談室。お相手は私エーリカ・ハルトマンと」
「ウシャー わたぁ〜くしぃ〜フランチェスカ・ルッキーニでお送りします! ニヒャヒャ」
「「んな訳あるかあっ!!」」
「うわ、トゥルーデが怒った」
「シャーリーまで怒らなくても良いのに……」
「お前達だと何をしでかすか分からないからな。と言うか前ので懲りたんじゃなかったのか」
「トゥルーデとシャーリーが?」
「うぐっ……」
「ま、まあ……、始まっちゃったみたいだし。いいんじゃない?」
「もう、どうしろと……。ともかく、この電話相談室は悩めるウィッチからの電話を受け付けている。
我々、連合軍第501統合戦闘航空団『STRIKE WITCHES』のメンバーが悩みや質問等に答えるぞ。
今回も501の基地司令所特設スタジオからだ。気さくに電話すると良い。番号は44-XXXX-XXXXX…」
「トゥルーデもなんだかんだで乗り気じゃん」
「……さて、改めて、MCは私ゲルトルート・バルクホルンと」
「シャーロット・E・イェーガーがお送りするぞぉ〜。あとハルトマンとルッキーニ、それに中佐も居るから
全方位のお悩みにズバッとお答え出来ると思うよ。安心して電話してくれよな」
「さて……電話は掛かってくるかな」
「前回グダグダだったからな。今度は気を付けろよ堅物」
「大丈夫だ。私は同じミスは繰り返さない」

リリリリリリリリリリ……

「おお、早速電話だ。では、改めて私が取ろう。はいもしもし、こちら501電話相談室。
私、ゲルトルート・バルクホルンが相談に乗るぞ。さあ、何でもどうぞ」
『おー、本当に電話相談やってるんだな、バルクホルン。感心感心』
「えっ? は、はあ、まあ。ええっと、まず最初に国籍を……」
『私の国籍? 扶桑だが? 私は扶桑海軍のさ……』
「その会話待ったあ! 貴方はぜひぜひ匿名で! 匿名でお願いします!」
『どうしたシャーリー。私は別に本名でも構わんが』
「色々と大変なんですよ貴方の場合。お願いしますよ少佐」
「リベリアン。貴様の方こそ匿名でも何でもなくなってるではないか」
「いいから! で、扶桑の匿名希望さん、どんなお悩みで?」
『匿名なのか……まあいいが』
「私が電話取ったのにお前が話してどうするんだリベリアン……」
「で、お悩みとは?」
『いや−、これと言った深刻な悩みではないんだがな。今度、同郷の同僚ウィッチと久々に会う事になってな。
彼女も大変苦労してきたから何かしてやりたいと思うのだが、さて、何をすれば良いか迷って、それでな』
「ちょ、ちょっと! み……」
「堅物とハルトマン、そのまま中佐押さえてて」
「さあミーナ、少しこっちへ行こう」
「はいはい、こっちこっち〜」
「離して! 二人とも離して! あqwせdrftgyh!!!」
「はいはいお待たせ〜。ええっと、何が良いか、でしたよね」
『そうだ。同郷が故に、茶をたてても大して面白くないだろうし、かと言って私に出来る事と言ってもな』
「ウニュー じゃあ食べ物はどうかなぁ? 芳佳が作る扶桑料理〜。それを作るとか」
「ルッキーニ、少佐が料理苦手だって知ってて言ってるのか?」
「あ、そっかー」
「少佐……じゃなくて匿名希望さんは、今度そのウィッチさんと会う時は同郷の人だけですか?」
『恐らくな。まあ宮藤も来るかも知れんが、流石にあいつを頼る訳には……』
「頼っちゃって大丈夫ですよ! このさい宮藤を料理係にして、皆で盛り上がれば」
『それは……何かいつもと変わらない気がするんだが』
「むしろそれでこそしょうs……いや、匿名希望さんだと思うんですけどね? そうだ、ブリタニアで会うなら
ロンドンの喫茶店行ってパフェでもどうですか? エイラとサーニャみたいにふたりでひとつのパフェを……」
「キャー だいた〜ん」

222 名前:league of lady 02/04:2010/01/13(水) 00:34:11 ID:cMQLp8Mc
『おいおい、別に私とあいつはそんな間柄では……』
「ぜっっったいに許さないわよ美緒! そんなふしだらな行為うらやまし……いえ、絶対に認めません!」
「うわ、中佐帰って来たのか!」
『おお、ミーナも居るのか。なら今度、事前調査と言う事で一緒に行かないか? 何かのついでに。
ロンドンのそう言った類の店は、私よりミーナの方が詳しいかも知れないからなあ』
「行きます。必ず行きます。二人っきりで行きましょう、絶対に二人で」
「ちょっと中佐! 何で目の色変わってるんですか? てか受話器握りしめないで! 無駄に魔力解放しなくていいから!」
『はっはっは! ミーナがそう言ってくれて安心したよ。問題解決だな。じゃあまた今度』

ガチャッ ツー、ツー、ツー、……

「ちょっと、どうするつもりだよ」
「どうもこうもない」
「……疲れたよ」
「堅物達ですら押さえきれなかったか……」
「うふふふふふ。美緒と二人っきり。美緒と二人っきり……」
「ウジャー ミーナ中佐が壊れたー」
「あーあー」

223 名前:league of lady 03/04:2010/01/13(水) 00:34:37 ID:cMQLp8Mc
「さて、気を取り直してもう一件行くか?」
「今度は普通の悩み相談をしたい……」
「普通の悩みって、なんだいそれ」

リリリリリリリリリリ……

「よし、あたしが電話取るか。はい、こちら501電話相談室。あたしはシャーロット・E・イェーガー。
シャーリーで良いよ。さ、お悩み何でもどうぞ〜」
『あの……ロマーニャの、その、匿名希望で』
「はいはい。ロマーニャの匿名希望さんね。……そう言えばこの前もロマーニャから掛かってきたな」
『悩み、良いですか?』
「はいはい。何でもどうぞ?」
『有り難う御座います。その……私の友人との関係で、悩みが』
「おお、いいね〜。それでそれで?」
『私には戦友が二人、居るんですけど……、どうも、仲が悪いみたいで。二人とも良い娘なのに』
「ほほう。匿名希望さんは、二人との関係を改善したいと?」
『……』
「ちょっと匿名希望さん? 声小さくて聞こえないよ」
『この前、話、したんです。みんなで。どうしたら良いかって。だけど……』
「だけど? 続きどうぞ〜」
「……気のせいか、何かこの話、何処かで聞いたと言うか」
「もしかしてトゥルーデ、前のロマーニャの匿名希望さんと関係アリとか?」
「エーリカもそう思うか?」
「そこ、カールスラントのバカップルは黙る。で、匿名希望さん、続きは?」
『あの……話、したんですけど、余計に混乱して……』
「その話って、もしかして、皆の仲を整理するとかそう言う」
『どうして分かったんですか?』
「あちゃー」
「アチャー」
「匿名希望さん、話し合いしたけど結局もっと訳分かんなくなったって事だよね?」
『……』
「そう言う事になるな」
「何故かしら。不思議と光景が目に浮かぶわ」
『それで……私の友人二人は、何故か二人揃って私に迫って来るんです、『どっちを取るの』って。
私、そんなつもりじゃないのに……でも、片方は確かになついてくれてるし、私も、その……。
でも、もう片方も押しが強くて、断り切れないというか……でも他の娘も……』
「匿名希望さん、そちらの人間関係と言うか人数的なものは大体把握してるから話さなくて良いよ」
『えっ、どうして分かってるんですか?』
「いや、気のせい気のせい。……さて、どうしようか」
「うーむ。ミーナはどう思う?」
「これは……話がこじれたみたいだから、もう一度、お互い思い違いが無いようにじっくり話をするのはどうかしら」
「ええっ、また相談? ややこしいな〜」
「ただでさえ人数多くてややこしいのに、これ以上やったら訳分かんないよ?」
「ヤヤコシヤー ヤヤコシヤー」
「ルッキーニちょっと黙ってて」
「話をしてダメなら、少し間を置いてみるとか」
『そんな! せっかく三人で頑張ってるのに、別れろなんて、私、辛い……』
「はい合格〜」

カランカランカラン

224 名前:league of lady 04/04:2010/01/13(水) 00:35:06 ID:cMQLp8Mc
「エーリカ。一体これの何処が合格なんだ。深刻な話なんだぞ?」
「だって余計混乱してるじゃん。面白いと思うけど?」
「面白いとか言うなっ」
『合格なんですか? はあ。……じゃあ、スペードの一番のパネルを』
「だからパネルなど無いと言うに!」
「とにかく、誤解の無いようにじっくり話してみてね。応援してるわ」
「ミーナは何でこう無闇やたらと真面目なんだ……」
『有り難う御座います。お陰で何とかなりそうです』
「良かったわ」
『そう言えば、私、ヴィルケ中佐のファンなんです』
「あら、嬉しいわ」
「ほう。ミーナのファンか。ミーナの何処が好きなんだ?」
『いえ、別に』
「……」
「電話を切ろうとするなミーナ! ……匿名希望さん、アナタも人の気持ちというものを考えろ。
仮にも『貴方の事好きです』と来て『何処が?』『別に』って、そんな会話有り得ないだろう」
『えっ、でも、これがルールだって聞きました』
「ルール!? 聞いた? 誰に?」
「さよなら〜♪」

ガチャッ ツー、ツー、ツー、……

「結局ミーナが電話切ってしまったか。しかし今の相談、一体何だったんだ」
「さあ。私も分からなくなったよトゥルーデ」
「ま、仲良くなれば、いいんじゃない?」
「楽観的だなリベリアンは」
「電話相談だからね〜」
「ウニャ もう時間だよ」
「じゃあ、また来週〜」
「えっ、続くのかこれ?」

end

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電話相談室、第二回目と言う事で。
>>199様ご指摘の通り「赤ズボン隊」です。
あくまで赤ズボン隊の説明からの想像(妄想)なので……
その辺は笑って流して頂ければw
あとご指摘の通り「明石家サンタ」の定番ネタが混じってます。
分からない人ごめんなさい(><

ではまた〜。

225 名前:名無しさん:2010/01/13(水) 00:59:11 ID:0FiT0MJ.
えいらーにゃ


今朝は曇り空で光が少ない。ベッドに落ちたエイラの髪はすこし硬質な月の輝き。
髪を一房とって、カーテン越しに注がれるわずかな光にさらしてみる。
今度は明るく柔らかい太陽の輝き。さらさらとわたしの手からこぼれるときは、一本一本がそれぞれに光を受けて、まるで星の輝き。
早朝、とはもう言えない時間。きっとみんなが食堂に集まっているころ。
エイラの髪をこうして触れるのはこの時間だけ。エイラが眠り、わたしが起きている、この短い時間だけ。

夜間哨戒から戻ってエイラの隣で眠ったわたしが目覚める前に、エイラはきちんと定められた起床の時刻に目覚めて、わたしの名前を呼んで、髪を梳く。
起きろよ、朝だぞ。
言葉は乱暴なくせに、エイラの声は子守唄みたいに静かで、エイラの手はお母様みたいに優しいから。
そんなんじゃ起きられないわ。
わたしは薄く目覚めたかけた意識で、ぼんやりそう思いながら、エイラにすり寄って抱きしめて、もっと深く眠るのだ。
そのあとのエイラは見たことがないけれど、きっとわたしを抱きしめ返すことも引き離すこともできないで、ううう、とか唸ったあとにまた眠っているんだと思う。
事実、エイラの腕は不自然な位置に放られている。いつも。

この日もわたしが目を覚ますと、目の前のエイラは寝にくそうな体制、片方の腕はベッドの上、もう片方は横向きになった身体の上にあった。ちょうどクロールの息継ぎのときみたいな格好だ。
そのくせ穏やかに眠っているものだから、すこしおかしい。

初めてエイラの髪に触れた日も、変な格好で眠っていた。
エイラが眠り、わたしが起きているという状況はなかなかないことだ。エイラはわたしといるとき、いつも気を張っているから。
わたしはなんだか嬉しい気持ちで、無防備な寝顔−あらためて、エイラがとても端正な顔立ちをしていると認識した−を見つめた。
かわいいな、きれいだな。
そう思う傍らで、どうして抱きしめてくれないのよと不満な気持ちもあって、わたしの視線に気づかず眠りこけるさまが憎らしくて、閉じられた瞼が寂しくて、とにかくいろんな感情がわっと生まれたのを、覚えている。

226 名前:名無しさん:2010/01/13(水) 01:01:00 ID:0FiT0MJ.
↑のつづき


鼻をつついてみた。
エイラはむにゅ、とかうりゅ、とか呻いたけれど、起きる気配はない。

次はどこにしようか。目がいったのはきらきら光る髪だった。
起きているときはきっと触らせてもらえない。触らせて、なんて言ったら、エイラは真っ赤になって逃げ出してしまうだろう。
そっと、いつもエイラがしてくれるみたいに梳いてみた。ぴくっと動くから起こしてしまったかと思ったけれど、身じろぎしただけだった。
さっきより穏やかな顔をしている気がする。気持ちいいと思ってくれたのかな、わたしと同じように。だとしたら嬉しいな。
今度は一房とって、光にかざして、ぱらぱらと少しずつ離す。
さらさら流れる銀色が、月にも太陽にも星にもなると知ったのはそのときだ。
きれいな髪。
エイラの髪は不思議だ。
わたしのそれと同じ『銀』と称されることが多いけれど、柔らかな黄色に見えたり、透き通る白に見えたり、わたしの青色かかった鈍いそれとは比べ物にならないくらい、たくさんの輝きを秘めている。
わたしは息をついた。
ああ。エイラの髪が月で、太陽で、星ならば、瞳は空に違いないわ。
まだまどろみのなかにいたわたしは、自分のたとえにすっかり得心した。わたしにとって、エイラはうつくしくて、いとおしいもののかたまりであるから。


うう。
エイラの鼻がひくりと動き、瞼がきゅっとより強く閉じられる。
これがエイラの目覚めの兆候だと知っているのは、たぶんきっと、エイラのお母様とわたしだけだ。

エイラがゆっくりと目覚める。この時間の終わり。
わたしは空色の瞳を待ちわびながら、この時間が過ぎ去るのも惜しいと思っている。
矛盾。ジレンマ。だけど決して苦しみなど与えない、なんてしあわせな悩み。

ゆっくり開かれる空色がわたしを捉える前に、一房の輝きに唇を寄せた。

「おはよう、エイラ」

(だいすきよ)


わたしの秘密の、朝のひととき。

227 名前:名無しさん:2010/01/13(水) 01:08:59 ID:0FiT0MJ.
エイラーニャ ラジオも始まり 再加熱  今日の一句
エイラには強気なサーニャとか、好きです。

↑つづきは余計だった…とクリックしたあとで気付きました。

228 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:53:54 ID:SsfCG6aM
「睡眠は……永眠の為の準備動作なんです。擬似体験なんですよ」
「……開口一番に何を言い出す、宮藤」
「……重いな。なんつーか、すっごい話が重いな」
「坂本さん、シャーリーさん。今日は、月が朱いですね」
「今は真昼だ」
「てか、赤いのはお前の顔じゃないか? ……っと?」
「……何をしている、リベリアン」
「いや、なんか宮藤の様子が変だから熱を見て……って、怖いなオイ!? どんだけ睨んでんだよ!?」
「わ・た・し・は・い・た・っ・て・へ・い・じ・ょ・う・だ・!」
「い、いや、鼻息荒いし」
「もぅ、トゥルーデは。短く息を数回吐いて落ち着いてよ」
「ハァハァハ……って、何をさせるかフラウ!!?」
「……あー、少佐ぁ。やっぱり熱あるみたいですよ。かなり熱い」
「やはりか」
「いぇ、私に熱なんてある訳ないじゃないですか、シャーリーさん」
「は?」
「バルクホルンさんは、『私の怪力は世界一ぃ!!』ってネウロイだって素手で真っ二つに引き裂けるんですよ?」
「脈絡なさすぎやしないか!?」
「み、宮藤? お前は私の事を一体何だと……」
「え……出来ないん、ですか……?」
「ふっ、出来るに決まっているだろう?」
「ちょ、おま、堅物!?」
「シスコーン

229 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:54:34 ID:SsfCG6aM
「あら、エイラさ…ん……どうしてサーニャさんを肩車しているのかしら?」
「夜明けのトーテムポール、だからだナ」
「ごめんなさい、意味がわからないわ」
「……エイラの機動性が0.7倍、鼻息が2.3倍にパワーアップします」
「機動性落ちてるよな?」
「……朝焼けのトーテムポール、ですから」
「名称が変わった!?」
「あ、シャーリー。ちょっとしゃかんでくれヨ」
「は? こう、か?」
「回れ右デ」
「こっち向きでか……って、お前私に乗る気だろ!? そうだな!? そうなんだな!? そうに違いないだろ!?」
「レッツ、ディバイン・トーテムポール!」
「何言ってんの!?」
「あ、あの……芳佳ちゃん、寝かせてきました」
「うむ。ご苦労だったな、リーネ」
「いえ、眼福……じゃなくて、目の保養もとい……えっと、大丈夫です!」
「……でも、宮藤さん、急にどうしたのかしらね。」
「……あー、んんっ。昨日は……元気だったよな? 堅物は何か知ってる?」
「いや、私も……私にも、否、私ですら気がつかなかった」
「シスコーン、頭冷やせー。……私が昨日の夜会った時は普通そうに見えたよ」
「ふむ、トーテムポーラーズの二人は?」
「何ですか、その呼称!?」
「……気がつきませんでした」
「トーテムサーニャ」
「それは肯定なのか!? 返事なのか!?」
「シャーリー、今日は突っ込みがトーテム絶好調だナ」
「誰が突っ込ませて……ってか、トーテムの意味はなんなんだよ!?」
「トーテムトーテム」
「無駄に欝陶しいな、オイ!!」
「あの……芳佳ちゃんの熱なんですけど……」
「トーテムどうした、リーネ」
「少佐に感染した!?」
「実はその……私、昨夜は芳佳ちゃんと一緒に寝たんですけど……」
「………………ほぅ?」
「トゥルーデ、目が怖い。てかちょっと危ない」
「それで、宮藤の寝相でも悪かったのか?」
「ここで少佐、トーテムスルー」
「だからトーテムってなんなんだよ!? てか、トーテムから離れろよ!?」
「トーテムリダナー」
「張り倒すぞ!!」
「あの……ええとですね。ベッドに入って少したってから、芳佳ちゃんの様子がおかしい事に気が付きました」
「……ベッドイン」
「フラウ、黙ってなさい?」
「い、イェス、マム」
「私はうつらうつらとしていたんですけど、身体がなんだかくすぐったくて目が覚めたんです。それで見てみると、芳佳ちゃんが……その」

230 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:55:26 ID:SsfCG6aM
「……宮藤が?」
「私の身体を撫で回す様に……こう、手を動かしていて」
「……それで?」
「最初はくすぐったいだけだったんですけど、その……次第に芳佳ちゃんの手が(ヒンヤリと冷たくて)気持ちよく感じてきてしまって……」
「……ごくり」
「改めて見ると、芳佳ちゃんは(うなされているのか)息使いも荒くて、何かを求める様に手を、私に……」
「……うわぉ」
「でも、そんな(しんどそうな)芳佳ちゃんを、私には拒むことなんて出来ませんでした。私は、そんな芳佳ちゃんだからこそ、受け入れたんです」
「お、おお……」
「今思えば、熱にうなされていたんだと思います。今にも泣きそうな顔をしていましたから。だから、私は芳佳ちゃんをぎゅって抱きしめました」
「…………」
「少し落ち着いた様に見えました。でも、その後で……その……」
「……な、何があったの?」
「芳佳ちゃんが……私の(服の)中に指を……這わせてきて……」
「……!!!」
「私、芳佳ちゃん(の行動)に驚いたりしてましたし、(汗で)私の(服の)中も濡れてましたし、どうにかして芳佳ちゃんを止めようとしたんです。……やっぱり、その。(汗の臭いとか)恥ずかしい、ですから」
「……うわぁ、うわぁっ」
「でも、芳佳ちゃんの頬に涙が流れていたのに気付いたんです。芳佳ちゃんは、熱にうなされて、身体が寒くて、私(に暖)を求めようとしたんだと分かりました」
「トーテム」
「だから、芳佳ちゃんの頭をゆっくりと撫でました。少しでも安心させてあげたかったんです。……芳佳ちゃんも私が受け入れたのが分かったんだと思います。
……でも、最初は指だけだったんですけど、その、突然っ……」
「ふむ」
「最初は指で(背中を)擦る、と言うか擦るくたいだったのに、腕ごと私の(服の)中に入れようとしてきて……」
「  ! ?  」
「突然だったので私も驚きました。芳佳ちゃんを止めようとしたんですけど……私の身体は(汗で)濡れたりなんだりで大変でしたし……でも、芳佳ちゃんは全然止まらなくて……」
「わっふる!わっふる!」
「と、トゥルーデの輝きが止まらない……私の知ってたトゥルーデは何処に……」
「トーテム!トーテム!」
「何張り合ってんだよお前は!?」
「でも、両手とも(服の)中に入れられて一応満足したみたいで――」
「り、両手!?」
「え、はい。それで、その後ぎゅっと――」

231 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:55:49 ID:SsfCG6aM
「ぎゅっと!!? え、その…り、両手で……?」
「はい……あの、ミーナ中佐。どうかされたんですか?」
「い、いいえ!? 大丈夫ですよ、リネットさん!!」
「み、ミーナ中佐……言葉使いが……」
「リーネ! そんな事より続きを!!」
「は、はい、バルクホルン大尉! え、えと……芳佳ちゃんの両手でぎゅっとされて……しばらくはそのままでした」
「あの……やっぱり最初は……痛かった、ですか?」
「痛い…? えと、最初はやっぱり無理矢理と言いますか突然でしたから、少しは」
「で、でも……両手、なんだろ? 大丈夫だったのか?」
「それは……まぁ。でもその、一度受け入れちゃうと、だんだん芳佳ちゃん(の体温)を腕から感じる様になりましたから、(暖かくて)気持ち良くなってくるんですよ」
「り、リーネが……遠い……」
「その後……しばらくは、芳佳ちゃんの好きな様に、されるがままでいました」
「何故だ……何故、姉である私がその場に居なかった……ッ!!」
「……もうダメだ、このシスコン」
「それで、気が付くと芳佳ちゃんたら、私の(服の)中に思い切り手を入れたまま眠ってたんですよ。ただ、もうそのままでいいかな、って私もそのまま眠ってしまって……」
「……で、起きたら朝だった?」
「はい。芳佳ちゃんはいませんでしたし、自分の部屋に戻ったんだと思ってました。私に毛布もかけてくれてたみたいです」
「ふーン?」
「……な、なぁ、エイラ。なんでお前そんなに冷静なんだ?」
「何がだヨ?」
「……エイラは、へたれで、朴念仁で、唐変木で、鈍感で……お子様」
「あの……サーニャ? もしかして、なんか怒ってル?」
「……知らない」
「サァアアアアアニャアアアアアアアッ!!?」
「肩車したままで、なんかシュールだな……」
「ね、ね、エイラ。ABCって知ってる?」
「今それ所じゃねーヨ!!」
「エイラ、ハルトマン中尉の質問に答えて」
「さ、サーニャ…? えと、アルファベットだよ、ナ?」
「そっちじゃない」
「……エイラ、本気で知らないの?」
「うぅ……こ、答えないと……ダメ?」
「だめ」
「え、Aは……」
「Aは……?」
「その……て、手を繋ぐ」
「……………………は?」
「だかラ! Aは手を繋ぐだロ!? 恥ずかしい事何度も言わせんなよナ!!」
「あの……エイラさん、Bは……?」
「リーネまデ!? すぅ…はぁ…Bは……キ、キキキ、キスだロ!?」

232 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:56:09 ID:SsfCG6aM
「エイラ、Cは?」
「サーニャぁ……あの、言わなきゃ……」
「エイラ」
「分かっタ! 分かりましタ! Cは。きっ、キスしながら口の中に舌入れるんだロ!? ……うぅっ、恥ずかしいんだかんナ……」
「エイラ、それ本気か?」
「なんだよシャーリー。言わせといて本気も何もないだロ、まったク!」
「サーニャ、大変だね」
「……ありがとうございます、ハルトマン中尉」
「なぁ、ミーナ。何かエイラはその、変な事を言ったのか?」
「え、みっ、美緒!?」
「少佐まで……」
「な、なんだミーナ、バルクホルンまで」
「はぁ、リネット師匠! あの朴念仁二人に一言お願いします!」
「あ、あのシャーリーさん!? 師匠って」
「まぁまぁ、一言でいいから」
「ハルトマン中尉まで……でも私、何を言えば……」
「急に呼ばれた気がしました」
「芳佳ちゃん!」
「宮藤!?」
「宮藤、お前何処から現れたよ!?」
「そんな事はどうでもいいです。突然ですが、ここでペリーヌさんの新作パジャマコーナー!!」
「いよっ!!」
「待ってたんだナ!!」
「あ、あれ、エイラとハルトマン。なんでお前らそんなにテンション高いの…?」
「ペリーヌさんが夜なべで編んだトーテムパジャマ!! ペリーヌさんどうぞ!!」
「お前もトーテムか!?」
「オーッホッホッホッ、でしてよ!」
「滑らかなラインと淡い色使い。悠々と存在感を示すその出で立ち! テーマはマウント・富士!!」
「着ぐるみじゃねーか!?」
「そして、続いてリーネちゃん専用! ペリーヌさんの愛と友情と何かが詰まってます、どうぞ!」
「あ、あの……どうですか?」
「鳥」
「鳥だナ」
「鳥だね」
「だから着ぐるみだろ、コレ!?」
「テーマはホーク! ホークホクと暖かそうな雰囲気を醸し出します」
「駄 洒 落 か よ ! ?」
「最後は私、芳佳がお送りしますこの着ぐるm……げふん、新作パジャマ!!」
「今着ぐるみって言った!!!言っただろ!!?」
「茄子芳佳! 爆・誕・!」
「何故野菜!?」
「そんな訳で。さぁ、ルッキーニちゃん、朝ですよー」
『……!?』

233 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:56:25 ID:SsfCG6aM
◇ 
 
「…………ウジュ?」
「あ、ルッキーニちゃん。おはよう」
「……芳佳? あれ、なすびじゃない?」
「……へ?」
「あ、リネット師匠。おはようございます」
「も、もぉハルトマン中尉!! あれは誤解だって言ったじゃないですかぁっ!!」
「いやぁ、だって、ねぇ?」
「……リネット。改めて聞くが……本当に、服の中だよな?」
「バルクホルン大尉まで!?」
「まぁ、仕方ないよね。まさかリーネに芳佳がフィストファっむぐ!?」
「ふ、ふふふフラウ!? おま、何処でそんな言葉を!?」
「……私も、いつまでも子供じゃないのさ」
「もっと違う場面でその言葉を聞きたかったぞ、私は……」
「あ、あはは……あ、ルッキーニちゃん、おはようございます」
「……リーネも、普通のパジャマ?」
「え?」
「あ゛ー、喉痛ぇ……、お、ルッキーニ、おはようさん」
「シャーリー! ……声、なんか変」
「……昨日、ちょっと、な!」
「なんだリベリアン、その目は。突っ込みは自己責任でお願いしたいな?」
「全員がボケばっかかますんだから仕方ないだろ!……ゲッホゲホ」
「あぁ、シャーリーさん、これをどうぞ。ハチミツレモンです」
「サンキュー、宮藤」
「あら、皆さん。こんな所で集まって何を――」
「ちぇー、ペリーヌもフツーの服ー。つまんなーい!」
「……まだ寝ぼけてますの?」
「服がどうかしたのか、ルッキーニ」
「うん! あのね、あのねっ――」
 
ウジュっと、せつめーちゅー
 
「――え、と。か、変わった夢だね」
「…………」
「…………」
「…………」
「あ、あれ、リーネちゃん? シャーリーさんも、バルクホルンさんまで、どうして視線を反らすんですか!?」
「まったく、夢は所詮夢ですわ。だいたい、どうして私がどこぞの山の着ぐるみなんて着ますの!?」
「あ、それはですね。扶桑では、年明けの初夢で見ると縁起が良いって『一富士、二鷹に、三茄子』という言葉があるんです」
「……ペリフジ、トリーネ、なすよしか?」
「意味がわかりませんわ」
「み、皆さんは、何か夢は見ましたか?」
「そういえば、私は見てないな。宮藤とペリーヌ、あとルッキーニは、年明けてそうそうに眠ってたよな?」
「他の皆は飲み会みたく騒いでたけどねー。……ついさっきまで」
「初夢なんて。そんなもの、私は……私、は………」
「…………ぁ、ぅ」

234 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:56:41 ID:SsfCG6aM
「あの、ペリーヌさん? 芳佳ちゃんも、なんだか顔が赤くなって……?」
「な、わ、私の夢にまでどこぞの豆狸が……ッ、ゆ、誘導尋問を!?」
「いや、ペリーヌが勝手に自爆しただけじゃん」
「宮藤の夢にはペリーヌが出たのか?」
「……ベッドの、上?」
「!?」
「……ぁぅー」
「あれ、なんだこの二人から発せられる甘酸っぱい空気は」
「知ってる? 夜明けのモーニングコーヒーって、そんな甘い空気を入れ換える為にブラックで飲む物なんだって」
「よ、よよよ…芳佳ちゃん!!?」
『お、落ち着けミーナ!! 正気に戻れ!!』
『失礼ね!? 私は正気だし落ち着いています!!』
『なら服を脱ごうとするなッ!!』
『指揮官たるものABCくらい実践で、私が教えるもんッ!!』
『もん、とか言うなぁああああッ!!』
「…………」
「…………」
「……あの二人、まだやってたんだ」
「え、あのミーナさんを止めなくてもいいんですか?」
「……よし、リーネ師匠。あの二人に一言お願いします」
「ま、まだ引っ張るんですか!?」
 
「……ね、シャーリー」
「ん? どうした、ルッキーニ」
「おんぶして」
「またいきなりだな……ほらよ」
「え、と……トーテム?」
「ぶっ、な、何言ってんだ!?」
「なんでもっ。ね、シャーリー」
「んー?」
「今年もよろしくおねがいします」
「……ああ、私こそ」
 
「リーネ師匠!」
「お願いしますっ!」
「それは誤解なんですってばぁっ!!」
「――あの、ペリーヌ、さん……」
「宮藤、さん……」
『AはピーーーでBは■■■■なのよ!? だからCは£%#&@で、つまり、A=B=Cだから、美緒は私のモノ!!』
『ええい、それ以上近付くな! 切るぞ!? というか舌噛むぞ!?』
「……トーテムエイラ」
「トーテムサーニャ」
 
そんなこんなで、新年、明けてますがおめでとうございました。
 
 


235 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 00:59:49 ID:SsfCG6aM
そんなこんなでCRwGA7CAでした
タイトルは「ドリーム・タイラント」
 
夢って暴君さながらカオスな展開ですよねー……

236 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/14(木) 03:23:11 ID:ZtEtMikY
>>227
GJ! 文中に漂うふんわりな雰囲気が良い!
これはステキなエイラーニャ。

>>235 CRwGA7CA様
GJ! カオス過ぎて吹いたw
トーテムツボったw


さてこんばんは、mxTTnzhmでございます。
島田フミカネ氏の年賀イラストを見て
電波を受信したので、短くひとつ。
一応保管庫No.0450「ring」シリーズと言う事でよしなに。

237 名前:playing with the sisters:2010/01/14(木) 03:24:20 ID:ZtEtMikY
「がうわう」
「こらエーリカ、何をやってるんだ! 履かんか!」
「えー。何でも扶桑の国で、私が必要らしいよ」
「何で」
「虎だよトゥルーデ」
「虎? 虎がどうした」
「扶桑の国で、年ごとに動物決まってて、今年が虎なんだって」
「エーリカと虎に何の関係が……そもそもお前の使い魔は虎じゃないだろ」
「色じゃない?」
「がう……」
「ウルスラも居たのか……お前も履きかけてないでしっかり履け」
「がうわう」
「がう……」
「ううっ……二人してなんだその手つきは」
「トゥルーデ、我慢しちゃって」
「わ、私は何も、我慢などしていないっ! で、ウルスラは何なんだ」
「白虎」
「ああ、なるほど。見ると幸運を呼ぶ白い虎……ってただ白衣着てるだけじゃないか」
「ちゃんと尻尾も、ほら」
「ほら」
「二人して見せんでいい! とにかくお前達、そのはしたない格好をだな」
「トゥルーデが言えた義理? トゥルーデ前に、自分から脱ごうとした事有ったよね」
「なっ!」
「顔、真っ赤だよ」
「う、うるさいっ! とにかく……」
「分かるよトゥルーデ。私達を、他の人に見せたくないって感じ?」
「なっ!? 別にそんな事……」
「あの」
「うわ、何だウルスラ」
「前から、思ってたんです」
「な、何を?」
「姉様を、愛している人がどんな人なのか、確かめたくなって」
「ちょ、ちょっと寄るなウルスラ……しかしホントに二人は容姿がそっくりだな」
「双子だもん」
「確かめるついでに、実験したくなって」
「じ、実験? 何の? てかちょっと離せ! 二人とも離せ! 嫌な予感がする」
「嫌じゃないよ、トゥルーデ。楽しいよ」
「場合によっては刺激が快楽に変化する可能性もありますから」
「冷静に言うなっ」
「トゥルーデつかまえた〜」
「姉様」
「じゃあ、やっちゃおうか」
「エーリカもウルスラもやめ……あんっ……」
「可愛いよ、トゥルーデ」
「姉様の、愛しの人……」
「ず、ずるい、ぞ……二人して……うくっ……」
「私達も一緒だよ♪ トゥルーデだけイイ思いさせないよ」
「姉様」
「ウーシュもね」
(うう……エーリカが二人……いや、違う……でも、やっぱり姉妹で悪魔だ……)

end

----

以上です。
まあ、怒ったつもりが双子に返り討ちにと言う感じで。
しかしあのイラストいいなあ。

ではまた〜。

238 名前:張り切れてなかったのよorz:2010/01/14(木) 09:48:29 ID:SsfCG6aM
「睡眠は……永眠の為の準備動作なんです。擬似体験なんですよ」
「……開口一番に何を言い出す、宮藤」
「……重いな。なんつーか、すっごい話が重いな」
「坂本さん、シャーリーさん。今日は、月が朱いですね」
「今は真昼だ」
「てか、赤いのはお前の顔じゃないか? ……っと?」
「……何をしている、リベリアン」
「いや、なんか宮藤の様子が変だから熱を見て……って、怖いなオイ!? どんだけ睨んでんだよ!?」
「わ・た・し・は・い・た・っ・て・へ・い・じ・ょ・う・だ・!」
「い、いや、鼻息荒いし」
「もぅ、トゥルーデは。短く息を数回吐いて落ち着いてよ」
「ハァハァハ……って、何をさせるかフラウ!!?」
「……あー、少佐ぁ。やっぱり熱あるみたいですよ。かなり熱い」
「やはりか」
「いぇ、私に熱なんてある訳ないじゃないですか、シャーリーさん」
「は?」
「バルクホルンさんは、『私の怪力は世界一ぃ!!』ってネウロイだって素手で真っ二つに引き裂けるんですよ?」
「脈絡なさすぎやしないか!?」
「み、宮藤? お前は私の事を一体何だと……」
「え……出来ないん、ですか……?」
「ふっ、出来るに決まっているだろう?」
「ちょ、おま、堅物!?」
「シスコーン、落ち着けー」
「宮藤が私なら出来ると信じてくれているなら!! 私に不可能なぞ無い!!」
「あらあら、何の騒ぎ?」
「よ、芳佳ちゃん!? 顔が真っ赤……って、凄い熱だよ!?」
「あぁ、ちょうどいい。リーネ、宮藤を部屋へ。とりあえず休ませよう。頼めるか?」
「はい! さ、芳佳ちゃん、行こう」
「み、ミーナ、さん――」
「宮藤さん?」
「――じゅうはっさい……」
「…………」
「あ、ねぇ、トゥルーデ。鏡餅――」
『…………』バッ
「……うふふ。今、私を見た理由を聞かせて貰えるかしら? バルクホルン大尉、イェーガー大尉?」
「い、いや……特に意味は……」
「た、たまたまです! 自分は顔を上げただけです、マム!」
「ミーナの足でー……雪見大福! なんちって」
『……ぶふッ!?』
「……フラウ?」
「うん?」
「怒られたい?」
「……ごめんなさい」
「まったく……」
「ミーナの足か……ふむ」
「あ、あの……美緒?」
「きめ細やかな肌。うむ、雪見大福とは言い得て妙だな」
「……喜んでいいのかしら」
「いいんじゃないカ? 隊長の肌、綺麗なのは本当だしナ」

239 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 09:52:26 ID:SsfCG6aM
>>237
ハルトマン姉妹揃えば最強ですねw

タジタジのトゥルーデが目に浮かびますw

240 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/14(木) 23:55:46 ID:tOdQjwvc
こんばんは、mxTTnzhmでございます。
>>221-224「league of lady」の続編出来ましたのでどうぞ。
例によって勢いだけで書いてます。よしなに。

241 名前:lead me on 01/02:2010/01/14(木) 23:56:22 ID:tOdQjwvc
「501電話相談室、はじまりはじまり〜! お相手はわたぁ〜くしぃ〜
フランチェスカ・ルッキーニでお送りします! ニヒャヒャ」
「……ほほう」
「アキャー……。ハルトマン中尉ぃ……」
「抜け駆けは良くないよ〜。私もまぜてね」
「はい」
「では改めて、501電話相談室はじまり〜!」
「今夜はあたし、フランチェスカ・ルッキーニと」
「エーリカ・ハルトマンがお送りするよっ! お悩みのウィッチさん、ジャンジャン電話ちょうだいね。
私達が懇切丁寧に答えるよ。番号は44-XXXX-XXXXX…」
「お〜でんわちょーだい!」

リリリリリリリリリリ……

「ウキャッ 早速電話来た! あたしが取る取る! もしもーし、501電話相談し……」

ウーーーーーーーーーーーーーーーー

「ええっ、ちょっと、何? ネウロイ?」
「アジュワッ、け、警報!? なんでこんな時に!」
「ルッキーニ、出撃するよ!」
「りょ、りょうかーい」

ガチャッ ツー、ツー、ツー、……

「あらごめんなさい、二人で盛り上がってるところ。今の警報は誤報だったわ。安心して」
「ええ? ミーナ、誤報って……」
「ああああたし何もしてないよ? 今回は。ホントだって」
「さあ。何だったのかしらねえ……」
「……それ『もういい加減にしろ』って言う嫌味?」
「ムキー ものすごく感じの悪い警報だよね」
「とりあえず何も無いから、二人で電話相談続けたらどうかしら?」
「ミーナが言うなら……って」
「ウゲゲ! さっきの電話切っちゃった!」
「切っちゃったの?」
「だって出撃って言うからー。あたしはウィッチとして頑張ろうと思ったのー」
「仕方ないから、もう一度かけ直して貰おうよ」
「掛かってくるかなぁ〜」

242 名前:lead me on 02/02:2010/01/14(木) 23:56:51 ID:tOdQjwvc
リリリリリリリリリリ……

「来た! はい、こちら501電話相談室! さっきの人だよね? 電話繋がってたでしょ?」
『はい』
「ゴメンね〜。ちょっとした手違いって言うか」
「みんなで話を聞きましょうか」
『良いですか?』
「どうぞどうぞ〜。国籍とお名前どーぞ! あ、もちろん匿名でもいいからね」
『ええっと、ロマーニャの、匿名希望で』
「ウキュー 同じ国! うれっしいなーっと。で、とくめいきぼうさんね〜、どうぞ〜」
「……ロマーニャからの電話が多い気がするのは何故かしら」
「ミーナ気にしないの」
『えっと、上官がレズビアンだったんですけど、どうすれば……』
「えっ?」
「えっ?」
『上官がレズビアンだったんです』
「レズビアンだったんだ。なるほどね。それはいつ分かったの?」
『八月に……』
「生々しいね」
「でも、どうして分かったの?」
『八月に、二人っきりで訓練がてら泳ぎに行く機会が有ったんですけど』
「それでそれで?」
『上官が、砂浜でですね、やけにレスリングをしたがるんです』
「それは単なる訓練のひとつじゃないの? レスリングしたからってレズビアンじゃないんじゃ?」
『でも、私の……大事な場所ばかりを狙ってくるんです……。言うのも恥ずかしい……』
「ふつーのレスリングじゃないの?」
『違うんです。何かこう、胸とかあそことかを、揉んだり、撫でたり、舐めたり、キスしてきたり……』
「アナタのを?」
「その行為から、上官さんからの愛みたいなのを感じたとか?」
『いや、そこまでは。ただ、感触が柔らかかったから』
「柔らかかったって言われても……」
「で、ちなみにアナタは気持ちよかったの?」
『はい、とっても。思い出すだけで興奮してしまいます』
「ちょっと……」
「で、ちなみに上官さんは?」
『私もやり返して、一緒に(検閲)してしまいました。今ではもうお互い……』
「ウキャー アナタもレズビアンだよそれぇ!」
「はい、合格〜」

カランカランカラン

「……もう何でも良くなってきたわね」
『じゃあ赤の四番を』
「ごめーん、今日はパネル無いの〜。あとで所属部隊とお名前教えてくれたら記念品あげるね!」
「とりあえず扶桑特製の肝油一缶送るねーお大事に〜」
「……いつからそう言うコーナーになったのかしら」
「ミーナ、深く考えたらダメだって」
『そうだ。私ヴィルケ中佐のファンなんです!』
「へえ。ミーナの何処が好き?」
『そのお顔、髪、瞳、唇、胸、お尻が……』
「……」
「ミーナ、なにひいてるの」
「さ、さよなら〜♪」

ガチャッ ツー、ツー、ツー、……

「ミーナ中佐、電話切っちゃった」
「ミーナ、意外と奥手なんだね〜」
「そうじゃなくて! 幾ら何でも流石にひくわよ」
「またまた〜」
「じゃあ、また時間有ったらコーナーやるからお楽しみにね〜また来週〜、う?」
「いつから毎週になったんだルッキーニ?」
「こんなところで何をしているかと思えば、お前達……」
「ワキャー シャーリーとバルクホルン大尉が来た! にっげろ〜」
「にげろ〜」
「にげろ〜」
「ミーナまで何処へ行く!」

end

243 名前:名無しさん:2010/01/14(木) 23:57:05 ID:tOdQjwvc
以上です。
相変わらず勢いだけですので……。

ではまた〜。

244 名前:名無しさん:2010/01/15(金) 00:36:20 ID:to3WclVY
ラジオ上手く受信できねー(一応聴けたけど)
まあ聴けなかったら聴けなかったでネットで聴けばいいだけだが

245 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/15(金) 01:36:16 ID:Y7A7wVtQ
聖地まで自転車で行ってラジオ聞いてきた。
いつもだったら結構きついはずなのにラジオのエイラーニャに癒されながらの道のりは思いのほか楽だった。
こんなことやってるからSSが進まないw

……っていうか、リロードしたらSSが増えてるし!
最近また流れが良くなってきたよね。
嬉しい限り^^みんなGJ

246 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/15(金) 20:39:13 ID:Y7A7wVtQ
この話、書き始めた直後ににゃんたの漫画が始まってドラマCD2が来て、
ペリーヌ分が補完されまくった結果何となく続きがかけませんでした。
間が空いてやっと書くことが出来たんで投下します。

●ガリア1944 MasterSlave②

 9月も終盤となり、ガリアへと帰還する人々も増えるに従ってわたくしの日常も忙しくなっていった。
 破壊された町の視察、政府関係者との会見、帰還者同士のトラブルの調停、報道機関からの取材、その他にも細かい事を数え上げればきりが無いほど。
 その日も多種多様な業務に追われれるうち、気がつけば空は夕焼けのオレンジに彩られていた。
 現金なものですわね。
 朝はあんなに意識していたというのに、いざ自分の事で忙しいとなればそんな事も忘れて細々とした事にリーネさんを使ってしまうなんて。
 お陰で一息ついた今の今まで、そんな事など思考の外でしたもの。
 リーネさんもそんな事を匂わせるような行動も発言も一切ありませんでしたし、やはりあの出来事はわたくしの思い違いか何かでしたのね、きっと。
 何だかそう結論付けてしまうとかなり心が楽になりましたわ。
 でも、まぁ、その、リーネさんが一人で致しているのは、多分わたくしの勘違いでは無い気がしますし、幾ら仮住まいとはいえ寝室を別にする必要がありそうですわね。
 部屋を別にするには他の部屋も片付けないといけませんけれど、忙しい中でそこまで時間を作れますかしら? 生活環境のレベルを落とせば直ぐに出来る話ですけれど、あまりやり過ぎるとかえって周りに気を使わせてしまいますし……。
 ホント、尊敬される貴族と言うのは楽では有りませんわ。
 考えながら、かなりの部分をリーネさんに任せきりにしていたこの仮住まいの中を改めて見てまわる。
 本来の主が戦争によって既にこの世を去っているこの屋敷は、私達が使用する分以外の家具その他使えそうな物は全て事業に参画している民衆へと供出していたので大部分の部屋ががらんとしていた。
 何もない部屋。
 降りてくる夕闇の中、独り部屋に佇む。
 その空間が主張する重苦しい寂しさに心を掴まれ、去来する様々な思いに胸を打たれて立ち尽くす。
 当初の目的も忘れて呆然とする内、気がつくと窓の外は夜の闇に包まれていた。
 戻らなくては、リーネさんが心配しますわね。
 そう思い、振り返ろうとした時だった。
 ふわりと暖かい何かに、背中から抱き締められた。

「ペリーヌさん」

 リーネさんだった。

「寂しいんですか?」

 私よりも少し背の高いリーネさんが、私のおヘソの上辺りに両手を回し、背中にその羨ましい程にふくよかな膨らみを押し付けつつ左肩に顎をあてて優しく囁いた。
 一瞬だけドキリとしてから、それがリーネさんだとわかって体の力を抜き、小さな溜息と共に返事を返す。

「そんなことは有りませんわ」
「ペリーヌさん……」
「喪った物は大きいけれど、得たものもまた大きいと思っています。それに、今は あなたがいらっしゃいますわ」
「ありがとうございます、ペリーヌさん……。でも、私は寂しいです。ここには……芳佳ちゃんが居ないから」
「リーネさん!?」

 切羽詰ったような声で語るリーネさんの腕に力がこもり、耳元に寄せられるその吐息には不自然なほどの熱さが含まれているの感じた。
 鼓動が早くなるのを感じる。
 制止の声を上げたいのに体が言うことを利かない。
 逃げ場の無い「熱」が体の中でぐるぐる回っているような気がする。
 顔も火照る。
 私、きっと今真っ赤な顔をしていますわ。

「んっ」
「ひうっ……」

 耳たぶに柔らかく熱い感触が触れて、思わず声を上げてしまう。

「リ……ネ、さん……」
「…………」

247 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/15(金) 20:39:33 ID:Y7A7wVtQ
 やっとの思いで名前を呼ぶけれど、リーネさんは無言のまま、少しずつその手を上下にずらし始める。
 右手を上に。
 左手を下に。
 徐々に徐々に、まるで這いずる虫のような陰湿さを持って上へ、下へ、私の体を撫でて行く。
 その意図を感じ取った私は、思わず叫ぶ。

「おっ、おやめなさい!」

 上擦り、どもる声。
 他に人目があるのならばやり直しを要求したくなるレベルの無様な命令。
 でも……。

「はい、ペリーヌさん」

 若干上擦り君で、でも勤めて冷静さを含ませた返事。
 リーネさんは私の命令を受け入れて両腕を開き、背中から一歩離れた。

「あっ」

 脚に力の入らなくなっていた私はその場に崩れ落ち、ややあってからお尻を着いた姿勢のまま振り返り、リーネさんを睨み付ける。

「い、一体どういうつもりですのっ!? こんな、性質の悪いイタズラっ!」 
「そう……そうですよね。悪戯です。よくない類の悪戯。こんな事をする悪い娘には……」

 作ったような虚ろな笑顔で呟きながら、背中に手を回して隠し持っていたらしい何かを取り出す。
 それは、乗馬用の鞭だった。

「なっ……何をするおつもりですのっ! 悪い冗談はおやめくださいましっ!」

 私の剣幕などどこ吹く風といった雰囲気で目の前に跪き、鞭を掌の上において捧げる様にする。

「……御仕置きが必要だと思いませんか?」

 上目遣いの淫靡な輝きに彩られたその視線に射竦められ、同時に見蕩れる。
 胎内を巡る「熱」の捌け口を得たような気がした。
 半ば無意識に立ち上がりながら捧げられた鞭を右手に取り、その相貌を見下ろす。
 上目遣いのリーネさんの貌が歓喜に揺れ、熱い吐息が漏れる。
 ぐるぐると眩暈がしてくる。
 後戻りできそうに無い。
 それでも、リーネさんから伝わってくる感情を辿り、彼女にとってのそうあってほしいであろう姿を思い描き、精一杯の虚勢で言い放つ。

「私のお仕置きは……厳しいですわよ」

 これで良いのか悪いのかわかりませんけれど……ただ確かな事は、私が股間に熱さを感じ、高揚し、リーネさんの濡れた瞳を見下ろすことに快感を感じ始めていたと言う事。

「はい……お願いします。その……ご主人、様……」

 同じ部屋でリーネさんの存在を感じ続けた私は何かの病に犯されていて、同じ夢でも見てるのかもしれない。
 心のどこかにそんな事を思考を感じながら、乗馬鞭をリーネさんへと向けた。



以上となります。
ひとまずここまで。
なんとなくダーク気味な話なので、にゃんたの漫画版の希望あふれる雰囲気見た後だと書けなかったのです。
続きはエロシーンかなーと思うのでまた書けそうなテンションが降りてきたらやります。

248 名前:名無しさん:2010/01/16(土) 12:48:40 ID:dgmnyDwM
>>247
GJ!続きを期待。

249 名前:名無しさん:2010/01/17(日) 18:39:23 ID:OJE/BXlo
久々にここに投下しようかと思って書いてたらふと気づいた。
……百合SSじゃなくて単なるサイドストーリーだった……orz
百合成分が全くないお……orz

250 名前:名無しさん:2010/01/18(月) 01:49:08 ID:yLLMTxSs
>>249
個人的にはOKだと思うが?
百合分以上にストーリーものが読みたい自分のようなヤツもいるし。
ほとんど作者のオリジナルとか、男といちゃつくみたいなものじゃなければ
いいんじゃね?

251 名前:249:2010/01/19(火) 07:58:15 ID:164bFjlc
>>250
うーん、途中まではいいけど途中から既存キャラが芳佳しかいない
から『ほとんど作者のオリジナル』にあたる予感。
ちょっと趣旨とずれてるから、自分のサイトにおくことにします。

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261 名前:名無しさん:2010/01/21(木) 14:04:04 ID:tdbIyP1Q
>>260
リンク貼るだけで良かったんじゃね?
わざわざこっちに転載せんでも……。

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268 名前:名無しさん:2010/01/21(木) 22:18:59 ID:C6xj3cIA
君はもういい

269 名前:名無しさん:2010/01/21(木) 22:23:09 ID:e/WFeG.s
>>260>>262
「評判最悪」と自分で言ってるのを何故ココにコピペするのか意図が不明。
説明不足のまま貼っても、荒らしに間違われるぞ。
てかそれこそ、避難所じゃなくてBBSPINKの本スレに貼りなよ。

270 名前:名無しさん:2010/01/21(木) 22:53:15 ID:TlmRNqY6
>>269
本スレに貼れなかったんで、すまん。
本スレに貼れば良いのか?

271 名前:名無しさん:2010/01/21(木) 23:00:59 ID:qkVYZdDY
本スレに投下しても荒らしの餌にしかならんと思うぞ
というかなんかコメントに困るssだな…

272 名前:名無しさん:2010/01/21(木) 23:04:30 ID:C6xj3cIA
どうぞ巣にお帰り下さい

273 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/22(金) 00:42:26 ID:iEhJOFHc
こんばんは、mxTTnzhmでございます。
今夜はラジオでしたね! 私の住んでる地域では聞けませんが(涙
と言う訳で今夜はエイラーニャを一本どうぞ。
保管庫No.981「music hour」シリーズ続編です。
ではどうぞ。

274 名前:lady navigation 01/02:2010/01/22(金) 00:42:56 ID:iEhJOFHc
ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
さて今夜は久々にフツーに進行するからナ。ではまず最初のお便り……

「イッル、わざとやってるだろ」

最初のお便り、ラジオネーム……

「こらあ私を無視すんな! 居るんだからちゃんと紹介しろよ!」

もーうるさいナア。じゃあ簡単に紹介。ゲストじゃないけど一応ゲスト。
今夜も勝手についてきた「ついてない」カタヤイネンこと
スオムス空軍飛行24戦隊曹長、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネンだナ。
拍手はするだけ無駄ダゾ。

「前より扱い酷くなってないか?」

気のせいダ。そう言えばニパにもお手紙来てるけど読む?

「マジで? どんなの来てるの? ……でも最初に言っとくけど私個人に対する誹謗中傷なら一切受け付けないからな」

「それは残念」

「残念って、リトヴャク中尉……笑顔で言うのがまた怖いよ」

「ふふっ、そう?」

色々な意味で気を付けろよ、ニパ。警告はしたからナ。

「何だよそれ! 何もしてないじゃないか! 私が何をしたんだ!」

「スオムスのひとって、面白い人が多いのね」

ニパと一緒にしないでクレ。では最初の……今日はお便り一枚だけか。まあイイヤ。
国籍はNG、ラジオネーム「砂漠の人」さん。これは……アフリカからカナ?

『エイラさん聞いて下さい。私には将来の夢がないんです。
夢を持つにはどうしたらいいですか?』

夢かァ。まあズバリ、言わせて貰うぞ。

夢を持とうと必死に考えてる時点で夢を見失ってるゾ。

夢って言うのは、人によりけりなんダナ。何かのきっかけが有って夢を持つ人も居るシ
ある日自然に「こうなりたい」みたいなビジョンが見えたりするンダ。
だからいきなり焦って何かを探そうとしても無駄な事って多いンダゾ。

「私の夢かあ。エイラ早くスオムスに帰って来いよ。また二人で色々しようぜ」

エ? ニパ、話振ってないのに何でいきなりそんな流れに?

「忘れたのか? あの時誓い合ったじゃないか。私達は……」

(MG42の射撃音)
(フリーガーハマーのバックブラスト音)

275 名前:lady navigation 02/02:2010/01/22(金) 00:43:34 ID:iEhJOFHc
サーニャ、もう分かってると思うけどニパの言う事はデタラメだから信用しないでクレ。

「それにしても面白い事言う人なのね」

アイツ、前にスオムスで私に散々おちょくられたのを根に持って、私に仕返ししようとしてるナ。
さて、話を元に戻して……夢、の話ダヨナ。サーニャの夢は……ご家族と再会する事、ダヨナ。

「うん。……エイラ、貴方は?」

私? 将来の夢? 無いナ。

「えっ……」

ごっ誤解するなサーニャ! 今の“夢”ってのハ、例えば将来エライ人になりたいとかそう言う分野の“夢”であって、
もうひとつの夢は有るんダ。サーニャと一緒に、サーニャの家族を捜して、その後、あの……ええっと……

「エイラったら」

……言わなきゃダメ?

「教えて?」

ウウ……。
私には、サーニャの他には夢がナイ。でも、サーニャの夢を守りたい。それが私の夢、カナ。

「ありがとう、エイラ。嬉しい」

そんなサーニャが大好きダ。
ともかく「砂漠の人」さん、夢は焦っても見つからないゾ。そのうち見つかるからのんびりしているとイイゾ。

「……綺麗にまとめやがって」

あれ、ニパいつの間に戻ってたんダ?

「ふざけるな! 毎回毎回ハエ叩きみたいに気楽に撃ち落としやがって! 超回復能力なきゃ死んでるぞ!」

「ホント、『ついてない』って渾名は伊達じゃないのね」

「リトヴャク中尉、感心しながらフリーガーハマー向けないでくれる? それ地味に痛い……」

「ふふふ」

「くそー、今日は良い事なかったなあ。あんま喋れなかったし。帰ったらエイラ、一緒にサウナ行こうぜ」

サウナ?

「そう。二人っきりで。せっかくだから……って! 今フリーガーハマー撃とうとしただろ!」

「サウナより良い所有るから教えてあげようかと」

「それがフリーガーハマーとどんな関係が?」

(フリーガーハマーのバックブラスト音)

……サーニャ容赦無いンダナ。まあニパだから大丈夫だろウ。

「エイラ。帰ったらサウナ、一緒に」

ももも勿論!
さテ、ではそろそろお時間となりましタ、今夜はこの辺で。
最後に、「サーニャのうた」を聴きながらお別れデス。

end

276 名前:名無しさん:2010/01/22(金) 00:44:02 ID:iEhJOFHc
以上です。
ラジオがリアルタイムで聞けないからむしゃくしゃして書いた(何
後悔はしていない。

もしかしたらちょこっと続きがあるかも?
ではまた〜。

277 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/01/22(金) 00:59:54 ID:AC9l2SgY
>>276
humikaneのtwitterのSTG寝た思い出したww
ニパがんばれ! 超がんばれ! GJ

北海道とか釜山でも聞いてる人が居るからきっと聞けると思う。
自分も雑音に悩まされながらも何とか聞けたよin横須賀

278 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/22(金) 04:59:04 ID:iEhJOFHc
なんか間違い発見orz

>>274
×「私の夢かあ。エイラ早くスオムスに帰って来いよ。また二人で色々しようぜ」
○「私の夢かあ。イッル、早くスオムスに帰って来いよ。また二人で色々しようぜ」

>>275
×「くそー、今日は良い事なかったなあ。あんま喋れなかったし。帰ったらエイラ、一緒にサウナ行こうぜ」
○「くそー、今日は良い事なかったなあ。あんま喋れなかったし。イッル、帰ったら一緒にサウナ行こうぜ」

えらいケアレスミスでした。
ニパの喋りを間違えてた。お詫びして訂正と言う事で宜しくです。

279 名前:名無しさん:2010/01/22(金) 05:29:20 ID:w6CR.lrs
みんなラジオ苦労してるんだね。おれはsonyのICF-EX5にLWアンテナ繋いで放送
聞いてたが、放送終わって韓国KBSの妨害電波がなくなったのは頭に来た。
もっとお金があればIC-R75買うんだけど。それとお金あるならループアンテナ買うか
安くするなら自作するといいかも。これで確実に改善すと思うけど。
http://www.shamtecdenshi.jp/make_radio/L-001_Loop.html
http://www.mizuhotsushin.com/products/antenna.html
ミズホUZ-8DXsはおすすめだよ。

280 名前:名無しさん:2010/01/22(金) 05:47:37 ID:w6CR.lrs
あとこれも
http://www2.odn.ne.jp/~aag56520/www2.odn.ne.jp/mizuho.htm
あとループアンテナ自作でぐぐると作り方載ってるよ。

281 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/23(土) 20:48:39 ID:2aeHnmg2
こんばんは、mxTTnzhmでございます。

>>277 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
>>279
色々と励ましに受信の為の情報にと、本当に有り難う御座います。
関西発のラジオは他の遠い地域でも聴けるんですね。
今度聴けるかどうか試してみますね。
とりあえず数日遅れのストリーミングが聴けるだけでもすごく嬉しいですがw


さて、今夜はエイラーニャを一本。
>>274-275「lady navigation」の続きになります。
ではどうぞ。

282 名前:eye to eye 01/02:2010/01/23(土) 20:50:00 ID:2aeHnmg2
「サーニャをそんな目で見ンナー!」
 以前、芳佳にそう怒鳴った事があった。しかし今の自分はどうなのか。
 目の前に座る、純白とも白磁とも言える美しい“妖精”を前に、エイラは頭を振った。
 ナニカシタイ。でも何も出来ない。出来る筈もない。だって……
 そんな、内なる自分と格闘するスオムス娘を知ってか知らずか、サーニャは無表情のままサウナの熱気を全身で感じていた。
 汗が一筋の雫となって頬をつたい、床板に落ちる。
 夜間哨戒(?)の後二人揃って寝てしまい、午後も遅くになってまどろみから覚め、一緒に来たサウナ。
 エイラはただ悶々と、何かを言いたそうだが何も言えず、何も出来ないまま、サーニャの目の前に居る。
 ちらりちらりと視線が飛んで来るのは分かるが、その後が続かない。
 サーニャはそんな状況を無言で耐えていたが、ふうと小さく息を吐くと、すっと立ち上がった。
「ねえ、エイラ」
 サーニャはエイラのすぐ横に座り直した。
「うひゃっ? な、何だサーニャ?」
 肌が密着しそうな距離。サウナで肌を触れ合うと、熱い事は承知の上での行為。
「エイラ」
 サーニャはもう一度名前を呼んだ。今日のサウナで初めて交錯する視線。
「どうしタ? のぼせて気分でも悪いのカ? 出て水浴びでも……」
 サーニャは一瞬、決意したかの様に奥歯を噛みしめた。そしてすぐにエイラの両手首を掴んだ。
「な、何すんだサーニャ」
「エイラ」
 為す術の無いエイラをそのままサウナの床に押し倒すサーニャ。
「あ、熱ッ! な、何を」
「どうして、何も言ってくれないの? 何もしてくれないの?」
「だって、サウナはそう言う事する場所じゃナイシ……それに」
「それに?」
「サウナには妖精が居るンダゾ」
「本当?」
「本当ダッテ。私の家から連れて来たンダゾ。この蒸気に、妖精が……」
「その妖精って、見えるの?」
「えッ?」
「エイラには、見えるの?」
「……その前に、私を解放して欲しいンデスケド」
「嫌」
「どうして」
「鈍感」
 サーニャは魔力を解放しエイラを力任せに押さえ込むと、エイラの唇に自分の唇を押し当てた。
 熱さがお互いの唇を通じる。サーニャの汗がぽたりぽたりとエイラの身体に落ちる。

283 名前:eye to eye 02/02:2010/01/23(土) 20:51:53 ID:2aeHnmg2
「サーニャ」
「妖精が見えるとか、どうでも良いの」
「何で、こんな事を」
「私だけ、見て欲しい」
「わ、私はいつだってサーニャだけを見てるゾ! 今だってこうして」
「見てるだけじゃ、嫌」
「そ、それは……サーニャが、大事だから」
「なら、もっと、して?」
 サーニャの懇願。それでも何も出来ないエイラを、サーニャが襲った。
 身体に巻いたタオルがはだけ、肌が密着する。唇を這わせ、吹き出た汗をつつーと舐めていく。
 舌を絡め、濃いキスを交わす。
 サウナの熱気とサーニャの熱意に頭も身体ものぼせてしまったエイラは、辛うじてサーニャを抱き止めるのが精一杯。
「ふふ。サウナの国の人なのにね。ふらふらしてる」
「そ、それは関係ないダロ」
「じゃあ、エイラも私に……」
「い、いいのカ?」
「お願い」
 エイラはサーニャの顔を見た。瞳を見、唇に目が行く。十四とは思えぬ艶やかさに心奪われ、ごくりと唾を飲み込む。
「お願い、エイラ」
 サーニャの、再度の懇願。瞳が潤むのは汗が入ったからではなさそうだ。
 エイラは吹っ切れたのか、思考回路がショートしたのか、サーニャをぐいと抱き直すと、夢中でキスをした。
 身体を抱き寄せ、絡み合い、身体の全部でサーニャを確かめる。
 まるでそれをするのが初めての様に、必死で、がむしゃらに。
 サーニャはそんなエイラを受け入れ、全身でエイラに応えた。

 サウナの入口まで来たリーネと芳佳。不意にリーネが足を止めた。
「今日は、やっぱりお風呂にしよう、芳佳ちゃん」
「え、リーネちゃん、どうして急にお風呂に? たまにはサウナって言い出したのリーネちゃんなのに」
「今は、入っちゃダメだと思うの。あと、私急にお風呂入りたくなった」
「えっ? どうして?」
「どうしても」
「……分かった。リーネちゃんが言うなら」
 いまいち納得のいかない芳佳の腕を引っ張るリーネ。二人は足早に浴場へ向かった。

 暫く後になって、エイラとサーニャは水浴び場で二人、涼みながら肌を寄せ合い、お互いの温もりを確かめ合っていた。
 火照った身体を、小川の水が冷ましてくれる。でも二人の肌がくっついているので、全然寒くない。
「離れたくない」
「私モ」
「愛してる、エイラ」
「私モ、サーニャ」
「ねえ……」
 サーニャがエイラのすぐそばに顔を近付けた。お互いの視線が絡み合う。
 いつもなら、ぎくりとして数歩下がってしまうエイラ。でも今は……下がる場所も理由もない。
 エイラはそっと……ゆっくり顔を寄せ、口付けを交わした。
 急に変われなくても、少しずつゆっくり進んで行ければ……二人で一緒に。
 サーニャはエイラをぎゅっと抱きしめた。エイラもサーニャを抱き、キスを繰り返した。

end

----

以上です。

理由は前回と同じく(ry 勿論後悔はしていない(ぇ

しかし、何か似たシチュエーションが有ったような気も(;・ω・)
エイラーニャは多くの職人様方に愛されているので難しいですね〜。

ではまた〜。

284 名前:名無しさん:2010/01/23(土) 22:47:58 ID:e5I6t6Uk
>>281
これみたら良いよ。
http://www.oyakudachi.net/amradio/amradio_top.htm
ちなみにラジオはSONY ICF-M260なんかおすすめだよ、
これ持って野外で聞くて方法もあるよ。
あと裏技で電話線にラジオ近ずけると感度上がるよ。
それと絶対に電池使う事これで、雑音軽減になるよ。

285 名前:しなやかな青①:2010/01/24(日) 19:53:07 ID:wlyxOGFk
  夜が始まってから大分経った。
  みんなすっかり寝入っているのだろうか、基地の中はしんと静まり返っており物音が聞こえてくる事はない。
  ベッドで横になっていたゲルトルート・バルクホルンはふと時計に目をやる。
  日付が変わって一時間強。
  さし込んでくる月明かり以外に辺りを照らすものはなく、部屋中が青白く染められていた。
  そろそろだ。
  そろそろやって来るハズだ。




 「……一時過ぎだ。待ってるぞ」
  夕食を済ませた後、廊下であいつと一緒になった時にこっそり話し掛けた。
  みんなの前では『ウマの合わない二人』で通っている為に、何をどこで話しても逢い引きの約束だとはまず思われないハズだが、念には念を入れて、だ。
  こうやって秘密に言葉を交わすと、あいつの反応が面白いからという事もある。
  バレぬようにと周りを目だけで確認してから、こくんと首を縦に振る――そんなあいつの妙にしおらしい顔を見られる滅多にない機会なのだ。
  あの時も、あいつは頬を少し染めつつ私の視線とかち合わぬように目を伏せ、「うん」とだけ答えを返したのだった。


  あいつ――シャーロット・E・イェーガーは、こと色事になると普段とは全く違う反応を示す。
  飄々とした雰囲気は一気に失われ、激しい感情の波に上手く対応出来ないのか、いちいち真っ赤になって幼子のようになってしまう。バルクホルンも自分がその手の事に慣れているとは思わないが、あいつは段違いのレヴェルだという認識を持っていた。
 「あっ……いやだ……ちょっと……だっ、ダメだって、あたし……あたしは……」
  自分より少しだけ高い位置にある、あいつの顔に初めて触れた時の事だ。
 「ほんと、ほんとに、ちょっとたんま……まってよ……だめなんだよ、あたし……」
  いつもにへらと笑っているあいつをとにかく自分のものにしたい。
  自分の体温を少しでもあいつのぬくもりと混ぜ合わせたい。
  いつからか芽生えていた原始的な欲求に駆られ、バルクホルンは両手でシャーロットの顔を包み、そして抱き寄せたのだった。
  シャーロットはしばらくポカンとしていたが、バルクホルンが行為に託してぶつけようとするものに思いあたったのだろう、ネジが切れかけたからくり人形のようにぎこちなく手足を動かしていた。
  声は震え、目は潤み、上気したさまは桃のようだと思ったのをバルクホルンはよく覚えている。
  言ってしまえばシャーロットは、こういう事に対して痛みやすい果物のように繊細なのかもしれない。
  しかし、それでも――そうであったとしても止める事など出来る訳がなかった。

286 名前:しなやかな青②:2010/01/24(日) 19:56:10 ID:wlyxOGFk



  廊下でもそもそと何かが動く音がした。
  その何かはバルクホルンの部屋の前で止まったようだが、しばらくしてまた動き出した。
  確かめなくたって分かる。
  あいつだ。
  バルクホルンはのそりと起き上がり、おもむろにドアを開ける。
  コバルトブルーの逆光に伸びる、スラッとした長い影。
  開いた戸に対し、丁度背を向ける具合にあいつは立っていた。
  身にまとっているのはピンク色の下着だけで、それはオレンジの髪に恐ろしく似合っていた。
  窓から月でも見てるのだろうか。
  一向にこちらに気付く様子はない。
 「おい」
  バルクホルンの声に、シャーロットは体をびくりとさせた。
  うう、と情けなくうめき、ゆっくり、ゆっくりバルクホルンの方へ顔を向けていく。
  それでもなお、目だけは相変わらず何もない右斜め下を見ていた。
  唇を尖らせ、胸には大きめの枕を両手で抱えている。
  この姿は自分しか知らない、世界で唯一自分だけがこの姿を知っているのだ。
  うぬぼれではない。
  バルクホルンは真剣だった。
  シャーロットは何やらぶつぶつ呟いていた。
  心の準備が出来ていなくてどうのこうのと繰り返した後、ようやくバルクホルンと目を合わせようとした。
  首をすくめ、きまりが悪そうに上目遣いをするシャーロットであったが、すぐさま顔色を失った。
 「――おっ、おまえっ、はだ、はだかっ……ばかっ!」
  シャーロットは震える右手でバルクホルンの体を指差す。
  バスローブを羽織っただけで中は裸だった。
  前止めをしていないので胸も下腹部もむき出しに見えていた。
  バルクホルンは寝るとき何も着ない。
  それはシャーロットも知っている事なのだが。
  廊下で騒ぐと不味い。
  さすがにこの場面を見られたら、今後こいつは今まで通りのシャーロット・E・イェーガーではやっていけないだろう。
  バルクホルンは面倒になって、シャーロットをとにかく部屋に引き入れる事にした。

287 名前:しなやかな青③:2010/01/24(日) 19:56:37 ID:wlyxOGFk
 「――お前も大概だ。そんな格好で何を言う」
  バルクホルンは、部屋に入ってもなおわたわたと体全体を上下させるシャーロットを見据えて言い放つ。
  声にならない声をあげるばかりだったシャーロットは、指摘された事に今さら恥じらいを覚えたのか、あうあうと枕で自分の体を隠そうと試み出した。
  ――お前の大きなそれがおさまるハズもなかろうに。
 「……まったく」
  本当に仕様のない奴だ。
  バルクホルンはベッドに腰掛け、隣をとんとんと叩く。
  ここに座れ、隣に来いという訳だ。
  シャーロットは息を飲んだが何も言わずに従った。
  枕は未だに抱えたままに、バルクホルンの横に音をたてず座る。
 「……」
 「……」
  バルクホルンはシャーロットの横顔をじっと見つめた。
  固まるシャーロットなど歯牙にもかけない。
  とにかく、ひたすら、舐め回すように。
  シャーロットの顔半分はもう既に唾液でべとべとだった。
  もっとそばが良い。
  もっと匂いを嗅ぎたい。
  腰を浮かせて近付き、シャーロットの膝の上に手をやった。
 「ひゃ……ま、ま、まってよ……やっぱり……やっぱり今日も……」
  その手は別段冷たい訳ではなかったが、シャーロットは途端にそわそわし出して落ち着きを失った。
 「……今日も、何だ?」
  まったくの予想通りと言うか、眉毛をハの字型にして慌てふためく姿はなんとも既視感漂うもので、バルクホルンはシャーロットが自分の手のひらの上に居るように感じられて胸の内のものがぐるぐる回り始めた。
  ふいと耳元に顔を寄せ、
 「……今日も?」
 「……う、ああ……」
  シャーロットはもう枕に顔を埋めさえしている。
  首筋は真っ赤だった。
 「……の……か?」
 「聞こえないぞ。くぐもってしまっているから余計だ」
 「……ばか」
 「……今のは聞こえたな。何が馬鹿だ」
 「……」
 「……」
  じれったくなったのか、バルクホルンはシャーロットの背中に手をやって胸周りの下着のストラップを弄んでいた。
 「……しちゃうの?」
  唐突だった。
 「なんだ?」
  これで何度目の聞き返しだったか、バルクホルンははっきりしない。
 「……だからね……あの、えっ、えっちな事をさ……あたしと……今日も、しちゃうんだよね?」
  小さく、そしてはっきりした声ではなかったが、今度はなんとか聞き取る事が出来た。
  バルクホルンは強く思った。
  お前はどうして枕で顔を隠しているのか。
  一体どんな顔で今の言葉を口にしていたのだろうか。
  サディスティックとまではいかないが、バルクホルンの何かをくすぐるに十分な言葉だった。
  カチッという音。
  ブラジャーのホックが外される音。
 「わっ」
  思わず声が出てしまったらしい。
  シャーロットは顔をあげてこちらを見る。
  目が、淡いブルーの目が、とても良い。
  バルクホルンは止まらない。
  枕とシャーロットの間に手を差し込む。
 「やっぱりするんじゃん……」
  少し細められたブルーは軽く水気を帯びていた。
  バルクホルンはそこに滲んでうつる自分を見た気がしたが、無視してそのまま手触りのある深い霧に飛び込んでいった。



                                     

                                       終わり


  
  ◇初めてなもんで表示のされ方とかよく勝手が分からないです
    見難かったらごめんなさい

288 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 07:49:43 ID:rURTBtF6
>>287
ストライクゾーンのCPでありながらこの攻受は珍しいw
かなり新鮮で面白かった。GJb

289 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 22:47:10 ID:mpMZY0CE
>>287
独特の雰囲気が良かったGJ!
シャーゲルイイヨイイヨー

290 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 23:18:16 ID:L9ykcerQ
とんでもなく電波なエイラーニャ5レスほど。


 あまりの事態に気が動転していた。
 私1人じゃとてもどうにもできそうになんてない。頭がどうにかなってしまいそうで。
 誰か、なんとかしてくれるヤツはいないか探していた。できれば口の固いヤツを。
 食堂へ行ってみると、奥で宮藤が夕食の準備をしているところだった。
 宮藤ナァ……でも、コイツん家ってたしか診療所だったヨナ。
「悪い、宮藤。ちょっと頼みたいことがあるんダ」
「ふぇ? なんですか、エイラさん?」
 と、包丁を持つ手を止めて、顔をあげる宮藤。
「オマエにしかできない相談なんダ。他のみんなには絶対秘密だからナ」
「ダメですよ、こっそりつまみ食いなんて。もうすぐできあがりますから、ちょっと待っててくださいね」
「そんなんじゃねーヨ! いいからちょっと来てクレ!」
「まっ、待ってください。ニンジンの皮だけでも剥いておかないと――」
「ニンジンなんて今はどーでもいいんダヨ! ほら、いくゾ!」
 私は宮藤の手首を掴むと、自分の部屋まで引っ張っていった。

「ムリダナムリダナ」
「キョウダケダカンナー」
 サーニャからの合言葉を確認したのち、私と宮藤は部屋に入った。
 部屋にはサーニャが1人、ベッドの上にいる。
 いや、1人でいいのカ……?
 ――まあとにかく、サーニャが上半身だけ起こして編み物なんかしている。
「それで、なんなんですか、エイラさん?」
「サーニャのお腹を見てクレ」
「お腹……ああ、ぽっこり膨らんでますね」
「今朝になってこんなんで……ナァ、これってなにかの病気なんじゃないカ!?」
 私は宮藤の肩にやった手を揺さぶりながら、大声をあげた。
 そんな私に宮藤は、なに言ってんだって顔を返してきた。
「エイラさん、これは病気じゃないですよ」
「だったらなんだって言うんダヨ!? この、タヌキの置き物みたいなお腹は!?」

「これは妊娠です」

「に、妊娠っ……!?」
「そうです、に・ん・し・ん」
 一音一音句切るようにして言われた言葉が、重く重く私にのしかかってくる。
 たしかに、そりゃ薄々はわかっていたサ。
 でも、だからって信じられるカ? サーニャが妊娠したなんて……。

「おめでとうございます、エイラさん」
「ちょっ、リーネ! なんでオマエがいるんダヨ!?」
「わたくしからもおめでとうと言っておきますわ」
「ペリーヌまで! だいたい、なんで私におめでとうなんダヨ!?」
「だってそれは――ねぇ、ペリーヌさん?」
「この期におよんでなにをすっとぼける必要がありますの」
「オマエらは根本的に問題を勘違いしてる! オイ、サーニャからもなにか言ってくれヨ」
「もちろん、エイラの子よ」
「そうじゃないダロッ! 私はなにも知らないゾ!」
「エイラさん、別に照れる必要はないんですよ」
「そんなんじゃねーヨ! わかってんのカ、宮藤っ? 私は女ダゾ?」
「? そうですね」
「そんでサーニャも女ダロ?」
「ええ。そうですけど……」
「それがどうかしまして?」
「なんで誰一人おかしいって気づかないんダ――――――ッ!?」
 天を仰いで、声をかぎりに私は叫んだ。
「それはあれだよね、リーネちゃん」
「うん、あれだよね」
「あれしかありませんわね」
 宮藤たちはお互いに目で確認しあう。
 肘でこづきあって、言えよ、いやお前が言えよってやりだす3人。
 一体なんだっていうんダ……?
 そんな3人に代わって、サーニャは言った。

「愛の力よ」

291 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 23:20:54 ID:L9ykcerQ
 きゃっ、言っちゃった、って頬を真っ赤に染めるサーニャ。
 なんダヨ、それは! 可愛いけど! 超・超・超可愛いけど!
「あ、愛……?」
「この世で一番強いもの、それは愛よ」
「そう、愛の力は勇気にも勝るんです」
「恋する乙女は一億メガトンですわね」
「エイラさん、ちゃんと見てなかったんですか?」
「なにをダヨ!? オマエら全員あた――」
「あっ。今、蹴った」
「えっ、ホント!?」
 と、サーニャの膨らんだお腹に耳をあてる宮藤。
「うわぁ、お腹の中で動いてるのが聴こえるよ。ホントのエナジーが動き出している」
「もう。芳佳ちゃんばっかりずるい。サーニャちゃん、私も聴いていい?」
「わ、わたくしもよろしいかしら?」
「どうぞどうぞ」
「私の話を聞ケーッ!」
 その叫びもむなしく、みんなはサーニャを囲んで和気あいあいとおしゃべりをはじめてしまった。
 将来はサッカー選手かキックボクサーだね、とかなんとか。
 わけがわからなかった。急激なめまいが襲いかかってきて、頭がくらくらした。
 私はおぼつかない足取りでその場から後ずさっていくと、背中が壁にぶつかった。
 でもそれは動揺してたための勘違いで、人にぶつかったのだった。
「――って、なんで部隊全員揃い踏みしてんダヨ!?」
「なーに言ってんだよ。仲間のおめでたを祝うなんて当たり前だろ?」
「シャーリーさんの言うとおりね。2人とも、私たちの大切な仲間だもの」
「よし! そうとなったらこれからパーティーだ!」
「わーい! パーティーパーティー♪」
「やったーっ! 今晩は茹でたじゃがいもだね!」
「はっはっは! それを言うならお赤飯だろう、ハルトマン」
「それも違うダロ! って、そういうことじゃなくてサ――」
「ねーねー、キスしたの? キス」
「いや、キスじゃ子供できねーから。ルッキーニ」
「えーっ!? だったらなにしたの?」
「知らねーヨ。ていうか、おかしいダロ、これ? 昨日まで、サーニャのお腹こんなんじゃなかったダロ?」
「はははっ、世の中にはiPS細胞っていうのがあってだな」
「そういうことでもないダロ、シャーリー! そうダ! これはエイリアンがサーニャをアブダクトして――」
「そんなオカルトありえないね」
「だー・かー・らー!!!」
「おい、妊婦の前であんまり大声出すな。胎教によくないんだ」
「知らん! 私はなんも知んないかんナ!」
「貴様、それでも軍人――いや、これから人の親になろうとする人間か!」
「トゥルーデの言うとおりだよ。エイラ、これからはちゃんと働くんだよ」
「なんダヨその、今までは働いてなかったみたいな言い方は!?」
「これじゃあ、さーにゃんが可哀想」
「可哀想なのは今の私のこの状況ダッ!」
 叫び疲れた私は、へなへなとその場にしゃがみこんだ。

292 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 23:22:43 ID:L9ykcerQ
「おめでとう」
「おめでとう」
「おめでとう」
 そんな私をみんなは取り囲むと、口々に祝福の言葉を言ってきた。
 私はここにいてもいいのカ? ありがとうって言えばいいのカ?
 もしかしてこれって、私がおかしいんじゃないのカ……?
 なんだか次第にそういう気がしてきた。
 ああ、そうなんダヨナ。だってみんながそう言ってるんだから。
 ――って、そんなはずないダロ!
「カメラはどこダ? プラカードをさっさと出せヨ!」
 私は立ちあがると、声を大にして叫んだ。
「これってドッキリなんダロ? みんなで私を騙そうとしてんダロ? ナァ!」
 もうわかったから許してくれヨ。必死に必死に私は声をあげた。
 けれど、返ってくるのは、そんなはずないだろって笑い声ばかり。
 必死になればなるほど、その声は大きくなっていった。
「違う! これは私を陥れようとする陰謀ダ! 陰謀のセオリーなんダ!」
 なにを言おうと無駄だった。まさしく私は道化だった。
 はまっている。すでに泥中、首まで……。
 今度こそもう諦めようとしていたそのとき、
「ねぇ、みんな。ちょっと待って」
 と、ミーナ中佐はみんなの笑い声をさえぎった。
「困ったことになってしまったわね」
 中佐は頬に手を当てて首をかしげ、ぼそりひとりごちる。
「わ、わかってくれたのカ、ミーナ中佐!」
「エイラさん、あなたはサーニャさんのことをどう思っているの?」
 ミーナ中佐は真剣な、ちょっと怖い顔をして訊いてきた。
「ど、どうって……?」
「好きか嫌いかを聞いているの。ねぇ、どうなの?」
「そりゃ、まあ……その……」
「なんなの、その煮え切らない態度は!」
「なっ、なんで怒るんダ? ていうか、今そのことが関係あるのカ?」
「大アリよ。いい、エイラさん。婚姻関係のない2人のあいだに生まれた子どもには認知というのが必要なの」
「な、なにを言ってるんダ?」
「あなたには生まれてくる子どもの親になる自覚はあるのかって訊いているの! さぁ、どうなの?」
 親になる自覚……。
 その言葉を、胸に問いかけてみた。
「そんなもん、あるわけないダロ」
「なんてことっ……!?」
 ミーナ中佐はあんぐり開いた口に手をあてた。
「ひどい人! サーニャさんはこのあいだ14歳になったばかりなのよ。
 そんないたいけな少女を孕ませておいて、だのに自分は責任もとらず知らんぷりを決めこむつもりなの!?」
「いや、だから……」
「エイラさん。あなた、サーニャさんの体だけが目的だったの!?」
 その言葉に、みんなはざわめきたった。
 ひどい! サイテー! 女の敵!
 めいめいに罵詈雑言の数々を私めがけて浴びせかけてくる。
 そんな満場騒然とした空気のなか、
「みなさん、やめてください。エイラはそんな人じゃありません」
 それをすべてはねのけて、サーニャは声をあげた。
「サ、サーニャ……」
「そうよね、エイラ?」
 サーニャは首をかしげて、そう訊ねかける。
 その顔は今にも泣き出しそうなほど寂しげで、触れたら壊れそうなほど儚げで――
 そうだった。今一番不安に思ってるのはサーニャなんじゃないカ。
 なにせ未婚の母で、14歳の母で、シングルマザーなんだから。
「この子はわたしとエイラの子。そうだよね?」
 お腹をさすりながら、サーニャは私に訊いてきた。
「………………」
 私は言葉につまってしまった。
 肯定も否定もできなかった。なんて答えていいかわからなくて。
 どっちつかずの宙ぶらりんな態度。私には、そこからどちらかに向かおうとする勇気がなかった。
 その時だった。
 急にサーニャはうなり声をあげながら、ベッドの上でじたばたと暴れだした。
「サーニャちゃん!」
 急いでサーニャの元へと駆け寄る宮藤。
 いったい、なにがどうしたっていうんダ?
 まっ、まさか――
 宮藤はなるたけ平静さを保つようにして告げた。でもその声はやはり震えていた。
「陣痛がはじまりました。生まれます」

293 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 23:25:33 ID:L9ykcerQ
 担架に乗せられたサーニャは分娩室へ。
 宮藤と、その手伝いのためにリーネとペリーヌが、それに続いていった。
 私はとてもついていくなんてできず、扉の前で立ちすくんだ。
 長い時間、ただおどおどと、廊下を行ったり来たり立ち止まったり、そうしているしかできなかった。
 そして、夜が明けた。

「やりましたね、エイラさん。元気な女の子ですよ」
 宮藤はそう言いながら、赤ん坊を抱えて分娩室から出てきた。
 雪を集めてつくったみたいな、真っ白い赤ちゃんだった。
 そこはかとなく私に似てる気がするのは……気のせい気のせい。

「喜ぶのはまだ早いですよ、エイラさん」
 リーネはそう言いながら、赤ん坊を抱えて分娩室から出てきた。
「双子っ!?」
「つまり、二人がロッテを組めばふたりのロッテというわけだな! はっはっは!」
「これでウィッチーズの将来も安泰ね」
「佐官のくせに、なに呑気なこと言ってんダヨ! 双子ダゾ! 倍なんダゾ!」

「喜ぶのはまだ早いですわ、エイラさん」
 ペリーヌはそう言いながら、赤ん坊を抱えて分娩室から出てきた。
「三つ子っ!!?」
「みつどもえじゃん!」
「やったな、エイラ。ちょうど今、タイムリーじゃないか」
「なんてことダ……」
 へなへなとへたりこんで、私は床に手をついた。
「ダイヤのエースともあろう者が、3人の子持ちになってしまった……!」

「ううん。違うわ、エイラ」
 サーニャはそう言いながら、赤ん坊を抱えて分娩室から出てきた。
「四つ子っ!!!?」
「やったじゃないか。超白銀合体できるぞ!」
「真顔でわけわかんねーこと言うナ! バルクホルン大尉!」
「そうだよ、トゥルーデ。四姉妹だもん、若草物語ごっこでしょ」
「中尉もダ! 私はそういうことが言いたいんじゃないから!」
 なんなんダ? どうしたらいいんダ……?
 ていうか、これ本当に私の子どもなのカ?
 私はすっかり腰が抜けてしまい、とても立ちあがれそうにはなかった。
 そんな私のことなど置き去りにして、みんなから三三九度の拍手が起こった。
「拍手すナ! 赤ん坊も泣くナ! 泣きたいのはこっちの方だって言うのに……」
「いい加減にしたらどうだ!」
 坂本少佐の怒号に、たまらず私はそれに怯んだ。
 少佐は私の前にしゃがみこむと、諭すように言葉を続けた。
「私はなにも、泣き言を口にするなとは言わん。
 だが、子どもの前でだけは慎め。たとえそれが、言葉のわからぬ赤ん坊の前でもだ。
 親の背中を見て、子どもは育つのだからな。
 胸を張れ。あんな大人になりたくないと思われることはするな」
「坂本少佐……」
「自分もああなりたいと、そう思われる大人になれ。それが百合者というものだ」
「ゆ、ゆりしゃ……!?」
「そうだ。この子たちはお前とサーニャの愛が生んだのだろう? だったらもう、泣き言は言うな」
「私と、サーニャの……」
「ああ。お前とサーニャの子どもだ」
 そりゃサーニャのことは好きだし、大好きだし、あ、愛してるけど……
 でも、だからって、一度に4人の子どもなんて……
「ほら、ちゃんと顔を見てやったらどうだ。まだちゃんと見てなかっただろう」
 少佐にせかされて、私は赤ん坊の顔をのぞきこんだ。
 赤ちゃんは、私の顔を見ると微笑みかけた。
 これが、私とサーニャの子どもたち。
 私の、子ども……。

「ゴメンナ、サーニャ」
 私はサーニャに深々と頭をさげた。
「それにみんなもゴメン」
 向き直って、他のみんなにも。
「私、臆病だったんダ。こんな私が人の人生背負えるのかなって。
 でも、これからはちゃんと真面目に働くヨ。
 サーニャ、初産なのに立ち会ってあげられなくてゴメンナ」
 そう言うと、サーニャはふるふると首を振った。
「いいのよ、背負わなくても。婦婦だもの、2人で支えあっていけば」
「それが婦婦ダ!」
「エイラ……!」
 サーニャは私の胸に飛びこんできた。私はそれを受け止めた。
「これからサーニャと2人で――いや、この子たちもいるから6人で、幸せな家庭を築いていくヨ」
 私はサーニャの肩をそっと抱き寄せると、みんなに向き直った。
「みんなも遊びに来てくれヨナ!」
「いいとも!」
 みんなは声をかぎりにそう叫んだ。シャーリーまで。
「よく言ったわ、エイラさん。百合者王の誕生よ!」
「待テ、中佐! それは違うゾ!」
「そうとなったら胴上げだ! さあ、冒険のはじまりだ!」
 坂本少佐の掛け声とともに、みんなは私たち家族を取り囲んだ。
 そして、私も、サーニャも、子どもたちも、何度も何度も宙を舞った。
 わっしょい、わっしょい、わっしょい……。

294 名前:名無しさん:2010/01/25(月) 23:27:06 ID:L9ykcerQ
 ――という夢を見た。

 我ながらなんて夢だ。ぐらぐらとひどい頭痛がする。
 ぐっしょりと寝汗をかいてしまったせいで、身体中がべとべとして気持ち悪くなっていた。
 そんな私の隣では、サーニャがすやすやと寝息をたてて眠っている。
 当然、そのお腹が膨らんでいるなんてこともなく――

 ……ぎ…………ぎ……

 いい夢だった……のカナ?
 子宝に恵まれて。しかも四つ子で。
 不安はある。でも、希望だってある。
 きっと家族を持つってそういうことなんダナ。
 ベッドの上に寝ているのに、なんだか今も宙を舞っている気分だった。
 それにしても、私たち2人の愛の結晶カァー。
 まあ、いくらなんでも今はちょっと早すぎるヨナ。

 ……ぎゃあ……ぎゃあ……

 私は寝返りをうった。
 もう一度、寝よう。もう一度。
 なんか聞こえてるけど、いやいやこれは全部気のせいダヨナ……?
 けれど、いくら耳をふさいでも、その声がやむことはなかった。

 おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ、おぎゃあ……。



以上です。
えーと、ゴルドランのBOX一気見した勢いで魔が差した。反省はしていない。
タイトルは「デキ婚百合者エイラさん」です。OsqVefuYでした。

295 名前:名無しさん:2010/01/26(火) 00:11:58 ID:v.DUkBn.
>>294
GJ!色々ネタ混じってて面白かった!
夢オチじゃなさそうなのが怖いw

296 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/01/28(木) 01:54:37 ID:vNkkIDoE
>>287
GJ! シャーゲルの新境地此処にあり。
ステキな文章、本当お見事です。

>>294 OsqVefuY様
GJ! 最後の泣き声がちょっと怖いかもw
ネタいっぱいで面白かったです。


こんばんは、mxTTnzhmでございます。
保管庫No.981「music hour」シリーズ続編です。
ではどうぞ。

297 名前:shooting star 01/03:2010/01/28(木) 01:55:36 ID:vNkkIDoE
ハ〜イ今夜も「STRIKE TALKING RADIO」始まりマシタ〜。
DJ兼MC、パーソナリティのエイラ・イルマタル・ユーティライネンでス。皆聴いてるカナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を通しテ、全世界の悩めるウィッチに秘密のラジオとしてお伝えしているンダナ。
夜間哨戒のついでじゃないカラナ?
さて今夜はあいにくの雨模様だけど、サーニャと私で頑張るカラナ。

「イッルいい加減にしろよ。私も居るんだぞ」

……。

「……」

「な、何だよ二人揃ってその目は?」

別ニ。空気読めてないナアって思ったダケ。じゃあ最初のお便り……

「紹介すら無しかよ!? 私の扱いどんだけ酷いんだ!」

あーもう分かったヨ。今週も頼んでもいないのについてきた「ついてない」カタヤイネンこと
スオムス空軍飛行24戦隊曹長、ニッカ・エドワーディン・カタヤイネン。紹介するのも飽きてきたゾ。

「おい……それはあんまりじゃないかイッル」

まあ、今夜はネウロイが出るかもと予報されてるみたいダカラ、ニパも居てくれると助かるかナ。
私とサーニャだけでも余裕なんだけど一応。

「おおう、任せとけ! 私だってこう見えてスオムスのエースなんだからな」

「ハンガー清掃の?」

「うっ……それはもう卒業したの!」

「でも、ついてないんですよね? ふふふっ」

「リトヴャク中尉、だからその笑顔が怖いって……」

さて、まず最初のお便り。ラジオネーム「恋するオオカミちゃん」。おッまたこの人カ。

『私のみ……いえ、私の彼女なんですが、最近オヤジ化が酷いと言うか
おっさんみたいになってしまって困っています。
あんまり笑えない駄洒落を言ったり、大笑いで誤魔化したり、挙げ句下ネタとか。
もう直にウィッチを引退する頃の歳なので無理はして欲しくないのですが、
ただこう言う歳の取り方はどうかと思うんです。どうしたら良いですか』

こ、これハ……難しい質問ダナ。でもあえてズバリ言って良いカナ?

「諦めろ! ハタチ超えたらもうお……」

(MG42の射撃音)
(フリーガーハマーのバックブラスト音)

ニパはたまに冗談にならない事言うから困るンダヨ。
さてと、改めてズバリ言うゾ。

「恋するオオカミちゃん」のちからで何とかするンダ! じゃなきゃそれも含めて愛しちゃえ!

と言うか、その人って多分元からそんな感じじゃないかと思うンダナ。
それを承知でその人好きになったんダロ? だったらもうありのまま受け入れるしか無いナ。
話が前後するケド、「恋するオオカミちゃん」が常日頃さりげな〜くチェックしていればバ、
本人が気付いたりして直るかも知れないケド、期待し過ぎには注意ダゾ。

「エイラ、遠回しにカタヤイネンさんと同じ事言ってる気がする」

きっ気のせいだかんナ! 私は建設的な話をしているンダゾ?

298 名前:shooting star 02/03:2010/01/28(木) 01:56:14 ID:vNkkIDoE
さて次のお便り。ラジオネーム……

「こらあ! 背後から撃つの止めろと何度言えば!」

ニパ、帰り早いナ。

「あら、ついてないのね」

「イッルにリトヴャク中尉……、もう絶対にわざとだろ」

そんな事無いゾ。ちょっとした軽いツッコミだと思って貰えれば良いゾ。

「軽いツッコミで実弾撃つ奴が何処にいるよ……」

「あ、待って。……二時の方向にネウロイ。距離2000。加速してこっちに向かってくる」

ネウロイ!? やっぱり来たカ。予報当たったナ。

「よし、任せとけ! イッルには指一本触れさせないぞ!」

頼もしいな。持つべきはやっぱり友って感じダナ。

「距離1000……もうすぐ見えてくるはず。間もなく私達の方も射程圏内に……」

ヨシ……ニパ、今だ、頼んダ!

「え? うわっ、何で背中押すん……うわああああああぁぁぁ……」

(フリーガーハマーのバックブラスト音)

ネウロイ呆気なかったナ。サーニャのフリーガーハマーで粉微塵ダゾ。

「エイラが私を抱きしめて、全部回避してくれたから。ありがとう、エイラ」

礼なんてイイヨ。サーニャを守る為だったら私は何でもするゾ。

「……だったら、何で私を盾にしたんだよイッル?」

ああニパ、無事だったカ。

「無事じゃねえ! ご覧の有様だよ! というか大怪我だよ! ビーム全弾直撃とか有り得ないだろ!」

ニパ喜べ、名誉の負傷ダゾ。

「おい待てよ。そもそもさあ、イッルは未来予知出来て完全回避出来るんだから、私を盾にする必要なかったんじゃ
……目ぇそむけんなよイッル」

私の未来予知では、ニパを盾にするしかない、って見えたんだナ。

「嘘だッ!」

299 名前:shooting star 03/03:2010/01/28(木) 01:57:01 ID:vNkkIDoE
さて、和んだところで次のお便り、と言うかこれが今夜最後のお便り。
ラジオネーム「マンマのパスタたべたぁ〜い」さん。……ホホゥ、今度はちゃんとラジオネーム書ける様になったンダナ。

『基地に居ると飛行訓練とかぁ〜、戦いのお勉強しないといけないんだけど
正直チョーめんどくさーい! 全然集中できません。
どうしたら集中できますか!?』

これ自分で答え言ってるみたいなもんダゾ……ズバリ言わせて貰うゾ。

「面倒臭がってる時点でダメダメだぞ!」

ニパ、たまにはまともな事言うンダナ。私も同じ様な事言おうと思ってたゾ。

「へえ。ウマが合うね。流石同郷、同志よ♪」

なんかニパが楽しそうでサーニャがえらく不機嫌なんダゾ……。
ともかく、面倒と思ってる時点でやる気出ないのは当たり前なんダナ。

「何かきっかけをつかんで、少しの時間でも良いから、集中すれば良いと思う」

サーニャの言う通りダナ。
例えば三十分勉強したら十五分昼寝するとカ、また三十分勉強したら宮藤とリーネからお菓子貰うとカ、
そうやってきっかけを作ってやってみると良いかも知れないゾ。

「私もそう思う。エイラ、一緒だね」

サーニャもそう思ウ? やっぱ……いててて、ニパ何するンダ。

「何でイッルはいつもいつもそうやってリトヴャク中尉とばっかり」

「だって……」

「私にも喋る機会くれよ!」

「この後帰ったら、二人で一緒にサウナ入るんだもん。ね、エイラ?」

そそそそうダゾ? サウナ。サウナに入って……サーニャと……

「イッル、何で鼻血出してるんだよ」

気のせい。

「ヘンな事想像したんじゃないだろうな?」

「想像したんじゃないもん。したんだもん。今夜もするんだもん」

「な、なんだって−! それは本当かイッル!?」

ノーコメント。

「何だよ! 二人して顔赤くしたりニヤケたりして! なんかむかつく!」

「カタヤイネンさんって楽しいね」

とととりあえず今夜はそろそろお時間となりましタ、この辺で。
最後に、「サーニャのうた」を聴きながらお別れデス。

end

300 名前:名無しさん:2010/01/28(木) 01:58:25 ID:vNkkIDoE
以上です。
島田フミカネ氏のtwitterでのSTGネタを入れてみたり。
あくまでネタと言う事で。

ではまた〜。

301 名前:名無しさん:2010/01/29(金) 00:39:46 ID:AdKWak9c
サーニャの中の人は女の子の写真を撮りまくるのがマイブームらしい

302 名前:名無しさん:2010/01/30(土) 13:25:39 ID:1CyBSe36
ttp://www.w-russell.jp/ps_strike/images/sev07.jpg

303 名前:名無しさん:2010/01/30(土) 14:44:48 ID:i232GlPI
>>302
そう言えばPS2版また延期らしいな……。
そのままお蔵入り(無かった事に)とかならなきゃいいけど。

アニメ2期は2010Q3開始だっけ? 詳しい事は知らんけど期待してる。

304 名前:名無しさん:2010/01/30(土) 15:57:46 ID:F9x63JAA
>>302
ハルッキーニktkr
これってつまり、

「ねーねー、私にやらせて」
「ウゲェー ハルトマンがー?」
「なにその疑う目は。ほら、ちゃんと前見て」
(数分後)
「ほうら出来た。三つ編みダブル」
「って、やっぱ出来てないじゃんかよー」

とかいう俺得すぎるシュチュですか?

305 名前:名無しさん:2010/01/31(日) 21:31:00 ID:alK/SlsM
二期が今年の夏に決定したってのに静かだな

306 名前:名無しさん:2010/02/01(月) 18:44:18 ID:T/D2.QBs
>>305
みんなお祝いSS書いてるんじゃないか?

307 名前:名無しさん:2010/02/01(月) 22:47:12 ID:QuZLtn1o
こっそり芳みっちゃん2レスほど。


「お、落ち着いて、芳佳ちゃん……」
 返事はない。
「そっ、そんなにせっつかないで……」
 返事はない。
「あ……あんっ……それはダメェッ……!」
 やはり芳佳ちゃんからの返事はない。
 不安になった。私の声は芳佳ちゃんの耳に届いているのだろうか。
 届いているとすれば、なぜ芳佳ちゃんは答えてくれないのだろう?
 届いていないとすれば、私はとんでもないことを芳佳ちゃんにしてしまったことになる。
 そんなつもりじゃなかったのに。
 仕向けたのは私。こんなこと言ってしまうと、そんなの嘘になってしまうけれど。
 でも、そんなつもりじゃなかったのに。
 まさかこれほどまでに芳佳ちゃんが飢えていたなんて、私は知らなかったから。
 このままじゃ全部食べられちゃう。
 ぺろぺろぺろぺろぺろぺろ。
 私の胸にある膨らみに、芳佳ちゃんはいやらしい舌づかいを繰り返す。
 そしてひととおり堪能すると、今度は歯を立てるのだった。
 はむはむはむはむはむはむ。
 噛みつき、むしゃぶり、頬ばりつくす。
 ああ、芳佳ちゃん……。
 視界の下の隅に、なんとか芳佳ちゃんを確認する。あと見えるのは天井ばかり。
 蠱惑的な表情を芳佳ちゃんは浮かべている。
 それは私が今まで見てきたどれとも違う、とてもとても可愛らしいものだった。
 突然押し倒された時はそれはもうびっくりしたけれど、それもほとんど治まっていた。
 その代わり、今はそれとは別の気持ちが私の心臓を熱くさせている。
 ただひたすらに、私は芳佳ちゃんにされるがまま。
 きっとまな板にのせられた鯉というのは、今の私とおんなじような心境なのだろう。そんなことを思った。

308 名前:名無しさん:2010/02/01(月) 22:48:55 ID:QuZLtn1o
 時は少しさかのぼる。
 ブリタニアから扶桑の私の元(ここアンダーライン)に帰ってきた芳佳ちゃんがどうも元気がない。
 最初は離れ離れになった仲間のことが寂しいのだと思ったけれど、どうやらそれだけではないらしい。
 おぼろげで、心ここにあらずな表情。今ここでないどこかに向けられた瞳。
 時折、だらしなくゆるんだ顔を浮かべては、またすぐに気を落として。
 ねぇ、どうしてそんな顔をするの?
 なんだかすごく苦しそう。芳佳ちゃんのそんな顔、私見たくないよ。
 それはなにかを耐えているようで……ああ、そうだ、禁煙中のお父さんになんだか似ている。
 そうか! そうだったんだね、芳佳ちゃん!
 その原因をつきとめた私は、横浜の繁華街に出向いたのだった。
 ある物を大量に買い込むと、急いで芳佳ちゃんの家へと向かった。

 うつろな顔をした芳佳ちゃんが私のことを出迎えた。
 舌打ちされた気がしたけれど、ううん気のせいだよね。
 ああ、またそんな顔をして……でも、それももうおしまいだよ。
「今日は芳佳ちゃんにおみやげがあるの。いっしょに食べようと思って」
「……なに?」
 私は答える代わり、紙袋からそれを1つ取り出してみせた。
「そ、それはっ……!」
 うふふ。見てる見てる。
 減量中のボクサーとおそらく同じような目をしている。
 ギラギラと眼光鋭く、うちなる攻撃性を潜ませたそういう目。
「肉まんだよ、芳佳ちゃん」
 しかも普通よりも大きい特製肉まん。
 そして、さらにもう1つ。
 芳佳ちゃんはエサを前にして待てと言われた犬みたいに、あうあうしている。
「ねぇ、芳佳ちゃん――」
 私は手にした2つの肉まんを自分の胸に引っつけると、そう唱えてみせた。
「おっぱい」

 次の瞬間、芳佳ちゃんは猛る獣と化していた。
 ものすごい力で私を畳の上に押し倒し、馬乗りになると、私の胸にある肉まんに口を近づけた。
 まずはアイスキャンディにそうするかのごとく、ぺろぺろと舐めまわしていく。
 丹念に、丹念に。千化万変の舌の動きで。
 ひととおり舐めつくすのに満足すると、ようやく肉まんを賞味しだした。
 もそもそもそもそ。
 まるで小鳥のさえずりのような、口先と前歯の細々した運動。
 食べきるのを惜しむように、でも口を離すなんてこともできず――
 そのジレンマも長くは続かなかった。
 がつがつという食べ方に変わり、最後は飲みこむように、あっという間に2個の肉まんを平らげてしまった。
 肉汁のしたたる口をぬぐうと、芳佳ちゃんは吠えた。
「もっ、もっと!」

 私は新しい肉まんを紙袋から取り出して、再び胸の位置にかまえた。
 芳佳ちゃんは再びがっつきだす。そんなにせっつかなくても、まだまだたくさんあるのに。
 とはいえ――肉まん、あんまん、ピザまん、カレーまんにその他新商品は、みるみるうちに消えていった。
 そんなやり取りがしばらく続いて、
「あ……あんっ……それはダメェッ……!」
 うかつにも私は紙袋から誤ってそれを手に取ってしまったのだった。
 制止するも、芳佳ちゃんは止まらない。猛烈な勢いでそれを噛みちぎり、
「あああああああああああああっ!!!!」
 悲鳴をあげる芳佳ちゃん。
 小籠包のアツアツのスープがあふれ出して、芳佳ちゃんの顔面を襲ったのだ。
「だっ、大丈夫!?」
 芳佳ちゃんは返事の代わりに、ぶるんぶるんと首を横に振り、顔についたスープを畳にまきちらせた。
 そして再度、にっくき小籠包を食ってかかったのだった。
 食べきると、芳佳ちゃんは張り裂けんばかりの雄叫びをあげた。
「もっと!」
 獰猛な肉食獣がここ、扶桑皇国の横須賀によみがえったのだ。
 そう、ミヤフジザウルスヨシカ。
 そこにあるのは胸の膨らみへの純粋衝動。
 それを本能とし、それのみに生きる、地球上に1頭の獣――

 すべてを食べつくした芳佳ちゃんは、お腹いっぱいになって寝てしまった。
 さっきまでとは全然違う。その寝顔はまだまだあどけない、私と同い年の少女のものだった。
 それにしても肉まんを頬ばる芳佳ちゃんすごかったなぁ。
 も、もし私にあんなことされたら……
 そんなことを考えただけで、無性に体が熱くなってくるよ。
 ああ、でも……
 私は自分のなだらかな胸をなぞりながら、こっそりため息をついた。
 明日から牛乳飲も。



以上です。
みっちゃん誕生日おめ!誕生日関係ない上、バカな話でさーせん。
タイトルは「まな板の恋」です。OsqVefuYでした。

309 名前:名無しさん:2010/02/02(火) 13:55:32 ID:NBTjzkHM
>>308
GJ! 芳佳がケダモノ過ぎるw
面白かった。

310 名前:名無しさん:2010/02/02(火) 17:08:17 ID:pagJGOIQ
>>308
GJ! さすがおっぱい星人芳佳ww

>禁煙中のお父さんになんだか似ている。
ここにものすごい吹いた。

311 名前:名無しさん:2010/02/05(金) 00:32:47 ID:vtNukNdw
ラジオの受信状態がやっぱり悪い
何故か外国の音声が混じって聞き取りにくいorz

312 名前:名無しさん:2010/02/05(金) 01:16:36 ID:GOFW.94Q
こんばんは、DXUGy60M「節分」でちょっと思いついた短いものを投下します。
最後までお読み頂けたら幸いに思います。

『豆をまく理由』

厨房からは何かを炒る小気味良い音が流れていた。
宮藤芳佳は慣れた手つきで大豆をフライパンの上で転がしていた。頃合いが良さそうにな
ると、炒った大豆をテーブルの上の大皿に乗せて冷ますのだが、白い手がヒョイと伸びて
は、大豆を掴んで自分の口の中に放り込んでいた。しきりにパリポリという音をさせたかと思うと
「やっぱあんまり美味いもんじゃないな〜」と椅子に腰掛けたエイラ・イルマタル・ユー
ティライネンは筋違いの感想を述べた。
「そうかなぁ? 私はけっこう好きだけど」再び作業に取り掛かった宮藤は振り向くこと
なく、エイラの意見に応えた。
「でも、扶桑じゃなんでセツブンの日に炒った豆を投げるだけで、家の中の悪い霊が出て
いくんだ?」また大豆を一つ口に放り込みながらエイラは尋ねた。
「おばあちゃんから聞いた話だと、昔一匹の鬼が人間のお姫様に結婚を申し込んだんだって」
「オニって扶桑でいう、悪魔やゴブリンだろ? それが人間に結婚を申し込むなんて無謀だな」
「うん、お姫様は豆を一つ鬼に渡して、『その豆から芽が出たら結婚してもいい』って約束したの」
「ずいぶん簡単な約束だなぁ。お姫様もオニに気があったのか?」
「で、鬼は豆を地面に埋めて大切に育てたんだけど、実は豆はもう炒ってあって、芽が出るはずなかったの。鬼は結局お姫様との結婚をあきらめたんだって。それで、節分の日には炒った大豆を投げて鬼を追い出すんだって」宮藤が振り向くとエイラは何やら考え込んだ顔つきをしていた。
「どうしたの?」
「・・・いや、いくら何でもオニが可哀想じゃないか?」
「え?」
「そんな回りくどいことするんだったら、素直に断った方がいいように思うんだけど」
「でも、相手は怖い鬼だし、断ったら何をされるかわからないよ」
「いや〜、豆育てろって言われて素直に言うこと聞く奴だったら、そういうことはしないと思うけどな〜」
「う〜ん・・・お姫様なりの優しさなのかも」
「優しさ?」
「例えばエイラさんがサーニャちゃんに結婚を申し込んだとして・・・」
「おっ、おい! 何の話だよいきなり!」顔を紅くしながらエイラはテーブルに身を乗り出すも、宮藤はそれを意に介さない話を続ける。
「サーニャちゃんに素直に断られるよりも、条件を出されてそれに失敗する方が傷つかないんじゃないのかなぁ」
「う〜ん・・・確かにそうかもしんないけど」椅子に座り直しながら左肘をついて、手に顎を乗せる。
「芽が全然生えてこなくてどうにかしないといけない、でも出来る事がなくて不安で不安でたまらなくなっちゃいそうだけどなぁ」
「・・・そうだね」
「なぁ宮藤」
「何、エイラさん?」
「・・・芽が出たって言って、別のを持ってくのはダメか?」
「・・・エイラさんズルい」宮藤は冷めた目でエイラを見つめる。
「そ、そんな目で私を見んな! っていうか、何で私が豆を育てる話になってんだよ」
「ああ、そうだね」宮藤は思わず苦笑いをする。
「それに豆はいいのか? こげちまうぞ」
「あっ! いけない」慌てて振り向くと、箸で大豆をかき回す。
「でも、あれだね。もし、鬼がエイラさんみたいのだったら追い出せられないだろうね」
「なんだよいきなり〜、まぁ私相手じゃ豆は一発も当たんないだろうなぁ」
そう言いながらエイラは誇らしげな顔をみせる。
「ああ・・・そうじゃなくて」
「ん?」
「たまにイタズラされても、いてくれる方が楽しいかなって」
「宮藤ぃ」
「はい? イタッ!」
「なんか恥ずかしくなるような事言うなよ」
エイラの放った大豆は、綺麗な放物線を描いて、振り向き様の宮藤の眉間に命中した。
そして、どちらともなく互いに苦笑いをするのであった。



313 名前:名無しさん:2010/02/05(金) 21:00:32 ID:426sDuDI
>>312
GJ! 二人の会話で和んだw
ほのぼのしてて(・∀・)イイヨイイヨー

314 名前:名無しさん:2010/02/05(金) 22:47:07 ID:0Y46TdWc
>>311
本気でクリアな放送リアルタイムで聴きたいなら、
ゼネカバ受信機と高性能アンテナ使うなら問題なし。
一番安い機種とアンテナで10万あれは十分足りるよ。
近くに無線屋あるなら相談してみたらいいよ。
あと窓際やベランダあるなら外に出てみろ。確実に変わるぞ

315 名前:名無しさん:2010/02/06(土) 03:16:58 ID:niyStYYU
地元で一番の高台(といっても100mもないと思われ)に上ってラジオを聴いたんだが、雑音やばかった。
っていうかハングル許すまじ!
ちなみにPAC3のレーダーシステムとかICPOの通信設備があるんだが……あれのせいかなぁw

っていうか、2月に入ったのに誕生日系SS全然用意してないし……どうしよ。

316 名前:名無しさん:2010/02/06(土) 06:09:58 ID:bPsf3YRM
まだあわてるような時間じゃない…

317 名前:名無しさん:2010/02/06(土) 10:58:49 ID:2OKB1iSc

混信してる韓国の放送はCBSキリスト教放送で出力10kw
我らのラジオ大阪は出力50kw でも韓国の放送はそれ以上の大出力で放送て常識。
だから普通のラジオじゃ高性能のフィルターとか同期検波とか付いてないから
混信に弱い。しかし神は見捨ててないぞ。アルミホイルこれで混信側の方角の電波を
シールドする。これで、CBSの電波が弱まる。
あとレーダーが作動してる時に普段も地元のラジオが聞けないなら、電波管理局か
NHKに調査してもらうのも手だよ。

318 名前:名無しさん:2010/02/06(土) 11:15:36 ID:2OKB1iSc
でも国内最強機種のAMラジオと自作アンテナで聞いてる、俺でも混信時は
どうにもならないから、フィルターナローに切り替えたり、感度切り替え
で感度下げたり、同期検波切り替えたり、色々ためして、最後はアンテナ外して
アルミホイルこれで何とかなったよ。あとアース取れるならアース棒埋めたら
効果あるよ。最悪の状態で聞いてるの君だけじゃないから、がんばれ!
あと野外で聞くなら、場所色々歩き回って探してみるといいよ。

319 名前:名無しさん:2010/02/06(土) 18:44:50 ID:Sv6NBU0E
>>312
節分は恵方巻切って食べたなあ。普通の食事だった。
それはともかく、どこかほのぼのなエイラと芳佳が良かった!GJ!

320 名前:橙色の時間①:2010/02/07(日) 01:33:56 ID:lPM/4Yi6
   この時期らしい暖かな夕暮れに、バルクホルンは一人、滑走路の端に腰掛けていた。
   西から吹く風を受け止めて、両足を互い違いにぷらぷらさせながら気持ち良さそうに目を閉じている。
   別に、何の目的もなくただ黄昏たくてここに、という訳ではなかった。
   無骨なように見えて意外とロマンチックさを忘れない性格のバルクホルンであったが、今日は単にここで人と会う約束をしていたのであった。
   しかし、それでも目の前に広がる穏やかな海の様子はバルクホルンの心を無条件に凪いだものにするには十分であり、現に彼女は柔らかみのある女性らしい表情を呈していた。
  「あいつも良い時に呼んでくれたな……」
   のびをしながら、満足そうにバルクホルンはそうつぶやく。
   『あいつ』とはバルクホルンをここへ呼び出した人間の事であり、すなわち彼女の同僚であるリベリオン人、シャーロット・E・イェーガーの事だ。
   まさしくカールスラント軍人のステロタイプだと言いたくなる程に規律と実利とを重んじるバルクホルンにとって、シャーロットのような自由気ままなリベリオン人は本来最も反りの合わない相手であるのだろうが(実際そうであったのだが、と言った方が正確かもしれない)、同じ目的を持って戦っていく内にどういう訳か互いに歩み寄り、今ではやんごとなき間柄を築くに至っていた。
   シャーロットを待つ間、バルクホルンは静かな波間を照らして沈み行く太陽を見ていた。
   それは冗談のように鮮やかなオレンジ色に滲んでおり、いつかに妹と食べた地中海産の甘酸っぱい果物をバルクホルンに自然と思い起こさせる。
   美味しいねえと目を細める妹を更に喜ばせたくて、地中海に分布する気候が示す夏季における特徴をつらつら語ってしまった事もだ。
   ――柑橘類はね、そんな乾燥に強いんだぞ、クリス。
   妹も口では「へえ」と言っていたが、明らかにそんな事よりオレンジだ、というスタンスをとっていた事にはさすがのバルクホルンも気付いてた。
   全て話終わった後に、だが。
   そうして少ししょんぼりしながら、妹の為にもう一つオレンジを剥いたのだった。
   苦笑するバルクホルンは、ついこの前の事を続けて思い出す。
  「……明日は、雨かな」
   ――綺麗な夕焼けは、次の日に雨が降る前兆なんですよ。
   ずいぶん宮藤は得意気に言っていたな、とバルクホルンは顔をゆるませた。
   風呂場で、素っ裸のまま胸をはる宮藤は実に可愛いものだった。
   ――バルクホルンさん、知ってましたか、だから夕焼けの綺麗だった晩には雨が入ってこないようにしっかり窓やら閉めてくださいね。
  「……はいはい、分かった分かった」
   こうなると、どきっとするまでに妹に似た少女は、なんだか自分にも似ている気すらしてきた。
   何となく、前後にばたつかせている両足を、もっと勢いよく振り回したくなる。
   そんな折だった。
  「なあ……」
   右斜め後方、少し高めの位置からだ。
  「さっきから大丈夫かい、あんた?」
   目を遣れば、約束の相手、シャーロット。
   カーキ色のリベリオン空軍の制服を引っかけるように着た彼女は、何やら載ったトレーを両手で支えていた。
  「……問題ない」
   バルクホルンは精一杯取り繕ってみせた。
   取り繕ってみせたのだが、
  「なーにが、問題ない、だよ。キラーンってか、格好つけちゃって」
   けっ、といやらしい目付きでからかってくるシャーロットを前に、バルクホルンはもう真っ赤になっていた。
   シャーロットはヘラヘラとした表情をそのままに、おもむろに脇に腰を下ろし、持っていたトレーの上のものをバルクホルンに見せる。
  「ほりゃ。ハンバーガーにコークはいかがですか、ああお客様、当店ではペリーヌのぺったんこフライは取り扱っておりませんのでセットはあたしになりまーす、ってね」
   シャーロットは軽食を作ってきていたのだった。
   ミートパテは熱々で、トロリと溶け出したチーズの香りが食欲をフルスロットルで挑発してくる。
   午後の訓練を終えた後の、いわば少し重めのおやつ、と言った所だろう。
  「…………」
   バルクホルンはまだ何かを言いたげな目でシャーロットを見つめていたが、仕方のない奴だ、と言ってハンバーガーに手を伸ばした。

321 名前:橙色の時間②:2010/02/07(日) 01:34:36 ID:lPM/4Yi6
  「またまたあ。仕方のない奴はあんたでしょ、全くもー」
   ハハッ、とあくまでも引っ掛かりのない笑い声と共にシャーロットは片手に持ったコーラ入りのグラスを傾けていく。
  「一人でぶつぶつと、危ないったらないね。どうせ、可愛い可愛い妹さんの事でも考えてたんだろ? ……待てよ、それとも宮藤か?」
   バルクホルンは目の前の極めて察しの良いリベリオン人を海に突き落としたくなった。
   ミーナには、こいつがヒャッホーと叫んで突然自ら飛び込んだと言えばバレないのではないか。
  「ここっこ根拠もないのにいきなり何を言う。お前という奴はいつもいつも……」
   あてもないまま口を開いたバルクホルンに対し、シャーロットはどうしようもないものを見るかのごとき憐れみすら漂う目を向けていた。
   その目が意外に辛く、バルクホルンはぷいと海の方を向いてハンバーガーにかぶりついた。
  「……あんたってさ、本当に……いや、やっぱり良い」
  「……私も良い」
   めちゃくちゃに小さくなったバルクホルンをいじくりまわすのは気が引けたのか、シャーロットもコーラグラスを置いて、ハンバーガーを口に運びだした。
   何となく会話が途切れ、並んだ二人は遠くの海鳥の声を聞きながらむしゃむしゃとシャーロットお手製のおやつを飲み込んでいく。
   以前にもシャーロットのハンバーガーを食べた事があり、バルクホルンの中では秘密裏にお気に入りメニューとして位置付けられていたのだが、今回のミートパテに絡んだソースはいつものものとどこか違うように感じられた。
   マヨネーズがベースになっているのは分かるのだが、バルクホルンにはそこに何が混ぜられているのか分からなかった。
   サンドされている玉ねぎやトマトにもよく合っており、これだとジャガイモにつけて食べるだけで美味しいかもしれない。
  「これって……?」
  「……ん? あによ?」
   口をもごもごさせながらの、シャーロットの気の抜けた返事。
  「ハンバーガーのソースだよ。マヨネーズだよな……あとは何を混ぜた?」
   バルクホルンの質問に、シャーロットは待ってましたとばかり嬉しそうな顔をする。
   グラスを掴んで、コーラで口の中のものを流し込んでから、
  「これうまいでしょ? あたしもびっくりしたねー」
   心底幸せそうにシャーロットは語り出した。
  「いやね、発見したのはルッキーニなんだ。よせって言ったのに、この前あいつが調味料の新境地開拓とかで色んなものをミックスさせまくっててさ。
   チョコソースにケチャップとか、クレイジーな組み合わせばっかりだったんだけど、その中で奇跡的に合うのがあったんだよ。……何か分かる?」
  「分からないから聞いてるんじゃないか。……しかし、ルッキーニ少尉は仕方ないな。食べ物で遊ぶなど……」
  「ああ、それは大丈夫。あたしがその後、駄目だぞーって言っといたからさ。
   ……それでね、もう面倒だから答え言っちゃうけど、宮藤の持ってきてたショウユ、ほらソイソースだよ、あれなんだ。あれとマヨネーズを混ぜたらめちゃくちゃ旨かったという訳」
  「ほう」
  「宮藤も感激してたぞー。扶桑のお母さんに手紙で教えよう、とか言っちゃってさ」
   シャーロットも、マヨネーズのこってり一辺倒の味の中に締まりが生まれたと興奮して、ルッキーニをくしゃくしゃに撫で回してしまったらしい。
   そしてそのまま宮藤に頼んでスティック状の人参を用意してもらい、ばか騒ぎしながらソイ・マヨネーズソースを味わい尽くしたという事だった。
   要は、ルッキーニのイタズラの中で偶然見付かった新技術を、シャーロットが早速ハンバーガーに応用したのだ。
  「ふむ……。なるほどなるほど、覚えておこうか」
   バルクホルンはまじまじとハンバーガーを見つめて、茹でジャガイモとソイ・マヨネーズソースの親和性について思いを馳せた。

322 名前:橙色の時間③:2010/02/07(日) 01:35:23 ID:lPM/4Yi6




   ハンバーガーを食べ終わり、バルクホルンはコーラを片手にシャーロットとの世間話に花を咲かせていた。
  「あはは、あの人らしいや」
  「だろう? エーリカは本当にだらしがないんだ」
   今はバルクホルンの同僚、エーリカ・ハルトマンのズボラさについてが主な話題だった。
  「んー。でも、あたしも結構だらしないかもなー。……これじゃ、あんたに嫌われちゃうかな」
  「何だ、自覚はあったのか」
  「うわっ、ひどいなー。陰湿エースのバルクホルンだ」
  「馬鹿を言うな」
   はた目には意味のない下らないやり取りにしか見えないが、下らないからこそ当人たちにとってはかげがえのない時間となるのだろう。
   ネウロイとの、手探りに近い戦闘の中ではよりそう感じられるのかもしれない。
   バルクホルンが細めた目をふとシャーロットの方へ遣れば、シャーロットはどういう訳か少しうつ向き加減になっていた。
  「……どうした?」
   唐突過ぎるその様子に、バルクホルンの声にも不安の色が混じる。
  「いや……大丈夫。……ちょっとね」
  「そうか……。差し支えがなければで良いが、どうだ、言ってみろ」
   どこまでも面倒を見たがるバルクホルンの姉気質に、シャーロットは困ったような笑いを浮かべながら、
  「……ハルトマンが、羨ましいなって」
   抱えた膝に頬を乗せて呟いた。
  「……何故だ?」
  「そりゃあ、ねえ? ……ちょっとねえ」
  「はっきりせんか。全く……」
   差し支えが云々と言っておきながら、丸っきり強制である。
   バルクホルンは無意識の内にシャーロットを急かす言葉を口にしてしまっていた。
  「……分かったよ。……ハルトマンはさ、この戦いが終わっても……あんたと一緒に居られるだろ?」
  「……まあな」
  「……でも……あたしは違う」
  「…………」
  「あたしはリベリオンだ。……それで、あんたはこのままカールスラント奪還へ……。間には大西洋と、国がいくつあるんだろ……」
  「お前……」
   バルクホルンは息を飲む。
  「やめてよ。そんな目で見ないで……お願い……」
   手をひらひらさせたと思ったら、子どもっぽい、幼い事を言ってしまったとシャーロットは恥じたのだろうか、バルクホルンと反対の方向に顔を向けてしまった。
   鼻をすする音が聞こえ、バルクホルンは、目の前の、自分より少し背の高い、しかし自分より歳の若い少女――そう、確かにまだ『少女』なのだ――の体が急に小さく見えるような感覚を覚えた。
  「おい……」
  「……なに」
   トレーを押し退け、シャーロットのすぐ隣に腰を動かす。
  「シャーロット……」
  「……なにさ」
   左腕をシャーロットの肩に回し、バルクホルンはまるであやすようにして、
  「……だからか?」
  「…………」 
  「だから今日、呼んだのか……?」
  「……そだよ」
   こいつは、もう。

323 名前:橙色の時間④:2010/02/07(日) 01:35:53 ID:lPM/4Yi6
  「……ほら、こっちを向け」
   バルクホルンは今、随分と柔らかな表情を呈している。
   ある種のものは、無条件で人の心を凪いだものにするからだ。
   おもむろにバルクホルンの方を向いたシャーロットだが、目だけは決まりが悪そうにそっぽを漂っている。
   何という事だ。
   バルクホルンはこれを世間では何と呼ぶ状況なのかを知っていた。
  「……可愛い奴め」
   バルクホルンは両頬を手で包み込み、有無を言わさぬようにして自分のおでことシャーロットのおでこを重ね合わせた。
  「あっ」
   突然に視界の全てをバルクホルンで埋め尽くされたシャーロットは、戸惑いを隠せるはずもなく、うわあうわあと慌てふためいた。
  「大丈夫」
  「……だって」
  「私も、お前と一緒が良いんだ」
  「……そんな事言ってもさ」
  「もう、」
   バルクホルンはもどかしくて、シャーロットの唇を塞いでしまった。
   両手は頬でいっぱいなのだから、何で塞いだかは言うまでもない。
  「んあっ……むっ、あぁっ……んむうっ……」
   いつまでも離れたくないよと言った人の口の中に、バルクホルンは自分のモノをねじ込んで、届く所は全て撫で上げた。
   シャーロットもいつの間にかバルクホルンの背中に腕を回してしがみついていた。
   目を閉じ、必死に吸い付き、まるで赤ん坊のように。
   息苦しくなって離れても、酸素を取り入れればすぐにまた絡み合う。
   もう止まらなかった。
   夕陽も沈み切り、二人を見ている者は何処にもない。
  「嫌だよ……あんたと離れたくないよ……」
   シャーロットは涙さえ浮かべていた。
  「こんなに近くに居るじゃないか」
  「やだよお……」
   暗中模索の対ネウロイ戦でも、勝利を重ねていく度に『終わり』を意識してしまうのは無理からぬ事であった。
   しかし、欧州奪還の端緒となるガリアの解放は世界的にも待望されている事。
   到底己の都合でどうこう出来るものなんかでは無い。
   自分同様に器用とは言えないこの少女に出来る事といえば、一生懸命戦って、一生懸命我慢して、一所懸命むつかる事だけなのかもしれないな、とバルクホルンは思った。
   しだれかかってくるシャーロットの目尻を、バルクホルンは軍服の袖でぬぐってやった。
  「……全く……手のかかる」
  「うう……ばかあ……」
   ばかばかばかと繰り返すシャーロットの頭をいつくしむように撫でまわす。   
   胸の中で肩を震わせるシャーロットは、どこまでもしなやかに思えた。
   そうっと見上げた空にはぽっかり月が浮かび、その横に、寄り添うようにして一つの星影が観て取れた。
 
   
   

   基地に戻ったのはしばらく後で、夜中には、枕を抱えたシャーロットがバルクホルンの私室に入る姿が見られたのだった。





                                     終わり

  
   ◇wlyxOGFkで登録された者です。
    みかんが美味しかったので。
    無理やりくさいですがどうぞよしなに。

324 名前:名無しさん:2010/02/07(日) 02:13:56 ID:lPM/4Yi6
連続して申し訳ないです。
重大なミスがあったので。

>>320の下から十四行目

> カーキ色のリベリオン空軍の制服を引っかけるように着た彼女は、何やら載ったトレーを両手で支えていた。

ですが、シャーロットは陸軍属でありますので正しくは「……リベリオン陸軍の制服……」となります。
失礼しました。

325 名前:名無しさん:2010/02/07(日) 09:44:35 ID:zTpHIhLw
>>324
可愛いシャーリーいい!
前半の何気ないやりとりもきゅんと来るよGJ!

326 名前:zet4j65z ◆XYex8TeNzA:2010/02/07(日) 11:04:55 ID:jAt4VUkQ
>>312
今年唯一の節分ネタGJ

>>319
自分は恵方サブ!
フットロングのBLTサンド食ったよw
シャーリーもきっとサンドウィッチだろうなーとか思って調べたらサブウェイは1965年創業だったw

>>318
前にNHKに調査してもらったときはやる気のないチェックだけでパソコンがいっぱいあるから電波の入り悪いんじゃないですかとか言われたw
とりあえず、リアルタイムで聞くのは意地とか気分なんでネットでじっくり聞くから手間はかけない方向で行きます。
……なんて、高校の頃無線部にいた人間の言う事ではないな。やる気がなさ過ぎるw

>>320
これから読みます〜。

誕生日ネタ書いてないんですが北アフリカで一本。
にゃんタの漫画見て思いついたネタなんで読んでないとわかりにくいかも。
マミタソハァハァ

327 名前:zet4j65z ◆XYex8TeNzA:2010/02/07(日) 11:05:31 ID:jAt4VUkQ
●北アフリカ1944 洗濯の板

「しゃーーーりーーー、つかれたー、あきたー」

 傍らのルッキーニが平板な声で不満を漏らす。

「あたしも疲れたし飽きてるよ」

 正直な感想を返すあたし。
 掃除洗濯テントの点検その他……料理以外の色んな雑用が降りかかってくるアフリカの日々。
 なーんでこんなことになってるんだろうなーと乾いた心で自問する。

「ニヒッ、じゃーこんなのほっぽってどっか行こー」
「ダメだルッキーニ」
「エー、シャーリーのけち〜」
「はぁ……いいかルッキーニ、元はと言えばお前が原因なんだぞ」

 そう、原因はルッキーニだ。31stJFSqのマルセイユ、ケイ、稲垣のおっぱい触りまくった結果がこれだ。

「そ、それはそうだけど……何でこんな洗濯とか雑用ばっかり〜」

 実を言うとウンザリはしているけれどこうしてルッキーニとずっと一緒にいられるのは結構うれしかったりする。
 とはいえ初めは一緒に行動しながら雑談することにルッキーニも楽しみを見出していてくれたみたいなんだけど、そもそも飽きっぽいのがあたしのお姫様の本質だ。
 もうずいぶんと前から不平不満しか聞こえなくなってきている。
 まーそもそもこいつがアタシのおっぱいだけで満足しててくれればこういう事態にも陥らなかったわけなんだよな……ふぅ。

「ミーナ隊長の時だって同じ様な罰当番合っただろ。諦めてちゃっちゃと終わらせよう。ノルマこなせば休憩できるんだからさ」
「う〜……」

 そんな会話をしていると足音が近づいてきた。
 振り返るとそこには申し訳なさそうな表情の稲垣真美軍曹が篭を抱えて立っていた。

「ごめんなさい。そのノルマ……洗濯物の追加です」
「うぇ〜」
「うぁ……マジかよ……」

 二人してこれ以上は無いってくらい嫌な顔をする。
 しかしそこに投げかけられた稲垣の言葉は素晴らしい物だった。

「あの、手伝いましょうか?」

 おおっ、まさかの救いの女神降臨。

「ウニャッ、オネガイっ!」
「待て待てルッキーニ、本当にいいのか? 稲垣」

 速攻でオネガイし始めるルッキーニをいなしてしっかり確認する。
 そもそも稲垣はルッキーニの直接の被害者なわけだから手伝って貰って更に迷惑をかけるようなことがあっちゃいけないだろ。

「もともとずっとやっていましたから、何もしていないと却って落ち着かなくて……」
「そういう事なら手伝ってほしいけど、上には何も言われないか?」
「はい、それも大丈夫だと思います。お二人の件も『余興』という事であのドタバタも記録には残っていませんから」

 おー、これは思った以上にケイ少佐もいい人みたいで助かったな。
 稲垣に手伝って貰ったって事が知れても苦笑ひとつで流して貰えそうだ。

「よし、じゃあよろしく頼むよ」
「ニッヒー、マミありがとっ!」

 言いながら徐に稲垣の胸に抱きつくルッキーニ。

328 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/07(日) 11:13:59 ID:jAt4VUkQ

「きゃっ」
「お、おいおいルッキーニっ、お前なんで雑用やってるかもう忘れたのかよ」
「ウニャー、喜びは全身で表現するモンだよっ」
「あ、いや、でも、その……恥ずかしいです」
「扶桑の人は恥ずかしがりだなぁ。うりうり」

 笑顔で返事を返しつつ、稲垣の反応を楽しむようにしながら扶桑の民族衣装に包まれたその薄い胸へと顔全体を刷りこんでいく。
 うんうん、あれで結構テクニシャンなんだよなぁ、ルッキーニは。
 でもまぁ自分が楽しみつつ相手も気持ちよく出来るって言うのはいいことだと思うぞ。

「ひゃっ! くすぐったっ……だめっ」
「でも残念賞……」

 なんか稲垣が微妙に盛り上がってきたかというところで顔を離して残念な表情で呟く。
 おいおい、そんなわざわざ地雷踏みに行くようなまねをしてどうするよ。

「うう、そんなに顔をこすり付けておいてまた残念なんて……ひどい」
「こらルッキーニッ!」
「ウジュジュッ、ゴメンゴメン。でも大丈夫だって。すぐに大きくなるから平気平気っ」
「ああ、そうだぞ稲垣。まだまだ小さいんだから、今そのくらいならきっと宮藤よりも見込みがあるさっ。あ、因みに宮藤って言うのは501で一緒だった扶桑人で……」
「うんうん、15であたしよりも年上でシャーリーと一つしか違わないのに残念賞な子だよっ」

 話題を修正しようと別のものを引き合いに出してフォロー。
 ルッキーニも乗って来てくれたんでこのまま笑い話にすれば稲垣もそんなに気を落とさずに済むだろう。

「はい……知ってます」

 なんかハイライト無しの瞳になって妙に静かな凄みを利かせた状態で呟く稲垣。
 なんか様子がおかしくないか?

「ストライクウィッチーズは有名ですから……」

 くるりと背を向けてつかつかと歩き出す。
 な、なんだ? 何がどうしたんだ?

「ねぇシャーリー、なんだかマミの様子、変?」
「あ、ああ……なんだかただならぬ気配が……」

 稲垣はそのまま自分よりも大きな岩の前まで行って立ち止まる。

「宮藤さんの事なら報道で知っています」
「そ、そうなのかー……」
「く、空戦の腕はすっごい上達したのに胸はずっと残念賞だったよ」
「私、こう見えても……」

 稲垣が岩の前で屈んだ。

「その宮藤さんと同い年なんですけどっ!」

 一瞬何が起きたかわからなかった。
 稲垣が立ち上がると同時に、その前にあった岩もすっと浮き上がったんだ。
 よくよく見てみると、岩は浮き上がったんじゃなくて稲垣の手に繋がって頭上へと掲げられていた。
 こ、こいつ堅物並みの怪力かよっ!

「え?え?え?」
「フシュシュシュシュッ!!!」

 あたしが一瞬混乱している隙にルッキーニが逃げを打った。
 っていうかこれはガチでやばい! あたしも逃げないとっ!

「てええーい!」

 走り始めてルッキーニに追いついたところに岩が飛んできた。
 ルッキーニの手をつかんで加速の固有魔法を発動し、岩を回避する。

「ふぅ、危機一髪だったな」
「ニャウ〜」

 一息ついて振り返ると稲垣が次の岩を抱えていた。

「げぇっ! 逃げるぞルッキーニ!」
「ハゥアゥアゥッ!」

 猛然とダッシュ!

329 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/07(日) 11:15:23 ID:jAt4VUkQ


 …………。

 結局その後、手近な岩を投げきる事で稲垣が我に返ったお陰で、あたしたちの生命は無事に済んだんだけど……。

「しゃーーーりーーー、つかれたー、あきたー」
「あぁ……もう少し別のことがしたいです」

 なんだか、あたしの傍らで愚痴る奴が一人増えた。
 っていうか愚痴りたいのはこっちだよ。
 あの時、稲垣の投げた岩の一つが洗濯中のたらいを直撃してかなりの量のズボンが悲惨なことになった。
 と、いうわけで稲垣も晴れて我々罰当番係りの仲間入りを果たしたのだった。
 三人して砂漠の真ん中にもかかわらず潤沢な水を使ってズボンを洗う、洗う、洗う……。

「あたしも疲れたし別のことがしたい……」
「ニヒッ、じゃあじゃあっ……」
「却下だルッキーニ」
「エーまだ何も言ってないよー」
「わかったわかった。じゃあ話だけは聞いてやる」
「うんうん、んとね、今回マミが怒って洗濯物無茶苦茶にしたから罰当番仲間でしょ」
「うぅ……ゴメンナサイ」

 微妙に心の傷をえぐられたらしい稲垣が俯いて謝る。

「まぁ、原因は置いておいて……流れ的にはそうだったな」
「うん、だからね思いついたんだけど」
「ふむふむ」
「みんな怒らせて失敗させたらみーんな罰当番だよねっ。そしたら楽できるし人が増えればきっと楽しいよっ。じゃー行って来るねっ!」

 流れるように滅茶苦茶な事を言って駆け出すルッキーニ。
 あたしは一瞬呆然としてから稲垣の呆けた顔を見て我に返ってルッキーニを追いかけた。

「ゑっ!? ちょっ!! まてっ!!! ルッキーニっ!!!!」

 どうやらこの地獄から開放される日はかなり遠そうだ。



以上となります。

稲垣真美って1941の夏くらいの時点で12歳だから1944の秋では15歳だよね、多分。
ケイが24歳くらいでマルセイユは18歳かな? 
あとコミックでのマティルダとライーサ(だと思われるキャラ)の扱いがヒドスwww
それはそうと、ビジュアル的にも性格的にもルッキーニと真美のペアって結構萌える気がするのは自分だけかなぁ。

っていうか、OS再インストールしたら履歴がなくなっててトリ間違えたwww

330 名前:名無しさん:2010/02/07(日) 14:15:43 ID:PaGOXBxo
>>324
シャーゲルも好きですが、ゲルロット(ごろ悪…)も好みであります。
といいますか、最近開拓されたかも

>>326
アフリカのss少ないから書いてこよーと離れたすきにw
ストームウィチーズはキャラがたっているので楽しいですよね
マルセイユとケイの年齢差萌え

こちらもニャンタ読んで短いの書いてみました
_______________

[食わず嫌い]

 滑走路の上に張られた日よけ布と、幾つも並ぶ長テーブル。
 第31統合戦闘飛行隊『アフリカ』では、ウィッチと兵士が一緒に食事をとるのが通例となっている。

「あ〜腹へったぁ……」
「だよねぇ。洗濯物の量、多すぎだよ」
 強制的にストームウィッチーズへ配属となって以降、凸凹コンビはすっかり隊の雑用係として馴染んでしまった。男性兵士が立ち入れないデリケートな部分、つまりウィッチの衣類の洗

濯やテントの掃除などをおもに任せられている。
「立ち止まっていたら通行の邪魔だぞ」
 後ろからかかった声に振り向けば、そこには絶世の美女。
 身にまとう王者のオーラに、思わずヘヘェ〜と平伏したくなる。
「あ、悪い! ほらルッキーニ、こっちへ寄れ。マルセイユ大尉が通れないって」
「うん。あれ? ねえシャーリー、マルセイユ大尉のメニューって、あたしたちと違うよね」
 炊事班の兵士に盛ってもらったプレートを手にして、ルッキーニが呟く。
 そんな少女を追い抜いたマルセイユは、先に席へついていた上官の隣に腰を下ろす。そして、双方のプレートをちらり。
「この隊では食事に貴賎はないぞ。私やケイも皆と同じメニューだ」
「ん〜でも、なんか―――あ、わかった! ピーマンの炒め物がないんだ!」

ざわっ、ざわっ

 途端、滑走路にはしる異様な緊張感。
 談笑していた隊員たちも、いまや固唾を呑んで行方を見守っている。

「お、おい、ルッキーニ」
 よからぬ空気を察したシャーリーが相棒を小突く。
 だが興味をひかれたルッキーニは意に介さない。マルセイユのいる長テーブルへ自分のプレートを置く。
「ねえねえ、マルセイユ大尉ってピーマン嫌いなの?」
「…この私に好き嫌いなどあるわけないだろう。残り少ないようだったから、他に回してやっただけだ」
 くい下がってくる新人へ、もっともらしく述べるマルセイユ。
 軽く汗をしたたらせて強弁するさまに、ケイは噴き出しかけた口元を押さえる。
「うにゃ? 先にあたしがいっぱい取っちゃったせいかぁ。じゃあ、あたしの半分あげる!」
「―――――?!」

ざわっ、ざわっ

 遠巻きにする隊員たちの度肝を抜く行為。
 山盛りになっていたピーマンの炒め物が、ごっそりとマルセイユのプレートへ。

「そのかわり、このお肉もらうね。んー、おいしいっ! ……どったのシャーリー、変な顔して」
「…もういい。今さら言っても遅いし」
 ゲットした極上の肉を頬張るルッキーニ。テーブルに組んだ両手へ額を預けるシャーリー。
 緑色で埋め尽くされたプレートを前に、マルセイユは口の端を吊り上げる。
「二人とも、雑用ばかりも飽きただろ? 午後は空へあがれ。この私が直々に相手をしてやろう」
「に"ゃーーーっ?! なぜにぃ!」
「それはこっちの台詞だっての! あたし関係ないじゃん!」
 凄みをきかせるウルトラエースの死刑宣告。
 大騒ぎする二人組を放置して、据わった目をしたマルセイユは緑の物体をもぐもぐ。機械的な動作で、咀嚼と嚥下を繰り返す。
「どう? 意外といけそう?」
「だから好き嫌いなどないと言っている」
 ライカを構えた上官に尖った口調でかみつく。
 珍しい光景を激写したケイは、レンズを明後日の方向へ向ける。
「そっちじゃなくって、あの二人のことよ」
「…ふん。使い勝手はまだわからんが、退屈はしなさそうだ」
 逃げるルッキーニを追うシャーリー。
 陽炎たつ砂漠での追いかけっこを眺め、午後への英気を養う隊員たちだった。

331 名前:名無しさん:2010/02/08(月) 06:32:10 ID:JnzxPKd.
>>326
おはようございます。NHKはたしかに確証がないと来ないし、自分の放送じゃないなら
適当な時もあるし、俺ん時は電管に電話してたら、NHKに行けて言われて、
電話したら、もう少し様子見てくださいて。
で結局受信機で発信元見つけて、原因はアマ無線だったが。結局地元のJARLに相談して
、解決してもらったが。ただ証拠のレポート書いたりして、面倒だったけど。
でもラジオ大阪は混信だからね。野外じゃなくて、自宅で聞けたら最高なんだけど。
あと長文ですいません。あと皆さんのSS。ROM専ですけど毎回楽しみにしてますよ。

332 名前:名無しさん:2010/02/08(月) 14:20:07 ID:LEufRTsI
>>329 >>330
二人ともGJ! アフリカもの2本連続キター
ストームウィッチーズもキャラ濃いの揃ってるから面白い。

333 名前:311:2010/02/12(金) 00:55:33 ID:4X6KETZI
今日は外に出て聴いた
音は良く入るようになったけど混信も酷くなった
外国の歌や話し声(?)とか色々混ざってて結局いつもとそれほど変わらなかった

334 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/12(金) 01:34:11 ID:vK/3RtE6
今日は雨降ってたんで家の中で聞いたよ。
先週行った近所の高台よりも家の中のほうがマシだった罠。


それはそうと自分、何回にゃんたのマンガ読み返してるんだろ……。
っていうか、スフィンクス予告キタ。
ttp://www.firstspear.com/witch/index.html
アフリカはwktkが止まらないな。

というわけで一応前回の「洗濯の板」話の続きとなります。

335 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/12(金) 01:34:57 ID:vK/3RtE6
 …………。

「お、おいマルセイユ! こんな所でこんなことしてどうするつもりだ!」
「見ての通りだが?」
「何が見ての通りだ! 良いからこの手錠をはず……ひゃんっ、耳を舐めるな」
「ふふ、気にするな。ただちょっと確かめたいことがあるだけさ」
「ななな何をするつもりだぁっ! っていうか酒臭いぞ! 酔ってるだろお前!」
「ふふふふふ、それだけ大きいんだったら……ミルクとかも出るんじゃないかと思ってな」
「ちょ! 出るわけ無いだ……あああああんっっ! や、めろって……そんなにっ、激しく……」
「大きいだけじゃなくて感じやすいんだな、シャーリー……」
「ああああああんっ!!!」

 …………。


●北アフリカ1944 シャーロット

「今日も暑いー」
「暑いですね」
「ま、砂漠だしね。でも夜はちゃんと涼しくなるでしょ」

 炎天下に三人で佇む。
 私とルッキーニ少尉は屈んでお洗濯。
 お姉さまは私達の様子を見るためにちょっと立ち寄ったみたい。

「あーいうのは涼しいんじゃなくて寒いっていうの。外で毛布で寝られないよ」
「ああ、それは身体に悪いと思います」
「そうね、ちゃんとテントで寝なさいな」

 流石に屋外で寝るのはその軽装ではかなりつらい気がします。

「っていうか洗濯がツマンナイ! シャーリーがいないからもっとツマンナイ!」
「まぁまぁ、マルセイユが大尉同士でミーティングって言ってたんだから仕方ないじゃない」
「少佐の言うとおりです。実戦部隊は事実上マルセイユ大尉が率いていますから、上級指揮官同士での意識合わせは必要だと思います」

 お姉さまに同意して理詰めでのルッキーニ少尉の説得に参加。
 でも、ルッキーニ少尉はこういうのあまり通じないんですよね。

「扶桑もカールスラントも固いよ〜、適当で良いじゃん」
「そういうわけにも行かないでしょ。ま、そろそろ来る頃だと思うから仲良くしてね。私も書類仕事があるからもう行くわね」

 案の定といった具合の適当な態度に愛想をつかしたわけでもないと思うけれど、お姉さまが言ってしまう。
 でも、言葉の雰囲気からするとすぐにシャーリー大尉が戻ってくるんでしょうか?
 よくわかりませんがお姉さまの言う事なので頷きます。

「はい、少佐」
「ウジューいてらー」

 と、お姉さまを見送った後一分もしないうちにルッキーニ少尉が口を開く。

「ねー、マミ、ヒマ」
「暇じゃないですよ。お洗濯してます」
「洗濯しててもヒーマーなーのー」
「いや、でも、何度も言ってる通りしっかり洗濯しようと思うと結構奥が深いんですよ。きっと楽しくなってきます」
「あたしはマミじゃないからこんなの楽しくないよ」
「うーん……なんと言えば良いのか……」

 ああ、会話にならない……。
 こういう天真爛漫な娘は見ていて楽しくはあるのだけれど、現実に軍という組織内で一緒に行動するとなると話は別です。
 お姉さまならどう諭すんでしょうか。
 と、悩んでいたら突然背後から人の声がした。

336 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/12(金) 01:35:33 ID:vK/3RtE6
「暑い……」
「わっ」
「ウジャ?」

 あわてた振り返るとそこには暑さにだれた様子のシャーロットさんがいた。

「シャーロットさん」
「フニャ? マミ、この娘はシャーリーじゃないよ」
「マミちゃん、この娘は?」
「え、ええと……」

 シャーロットさんの突然の訪問に驚きつつルッキーニ少尉の当然の疑問を解消するために互いの自己紹介の仲介を行う。

「お互い顔合わせは初めてですよね。こちら、カールスラント陸軍のシャーロットさん。で、こちらはロマーニャ空軍のルッキーニ少尉です」

 いいながら、そういえば私達の部隊にロマーニャやリベリオンの人が混ざるのは初めてかも、と改めて認識する。

「そうなんだ。初めまして、ロマーニャのかわいい少尉。私は……」
「ニヒッ、えいっ」
「え? ってルッキーニ少尉!?」

 ルッキーニ少尉はシャーロットさんに抱きついてその胸に顔を埋めていた。
 って、この人なんでこう懲りないんですかぁ!

「ンニュー……努力賞?」

 しかも不満そうにひどい判定してる!
 た、たしかにシャーロットさんはカールスラントの人としては多分年齢相応くらいだとは思うんだけど私よりもよっぽどあるはずなのに……。

「…………」
「シャーリーと同じ名前だから見た目よりもあるかと思ったんだけどなー」

 そんな滅茶苦茶な……。シャーロットさん純粋に魔力が大きいですから、怒らせたら怖い気がするんですけど……大丈夫でしょうか?

「ルッキーニちゃん、楽しい?」
「うん、洗濯なんかよりずぅーっと楽しいよ」

 あ、よかった。
 怒っている様子はないみたい。むしろルッキーニ少尉に興味を持ってる気がする。
 結構人見知りする方だからルッキーニ少尉みたいな物怖じしない人とは合うのかな?

「へぇ、そうなんだ……真美ちゃん、えいっ」
「ひゃっ」

 不意打ちだった。シャーロットちゃんの手が私の胸伸びてその膨らみを確かめるべく動かされる。
 まさかシャーロットちゃんがそういう行動に出るとは……。

「マミちゃんはあんまり無いね」
「ウミュー、そうなんだよねー、マミは残念賞」

 うう、なんだか先日に引き続いて残念賞攻撃。
 口には出せませんけど私だっておっきいのには憧れてたりするんですよ。
 扶桑人なんで開始時点から不利ですけれど、せめて同じ年齢の時にはお姉さまの様になりたいと思いつつ過去の写真を見るに既に夢だったりするんですよね。

「でもお人形さんみたいでかわいくて似合ってると思う」

337 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/12(金) 01:36:00 ID:vK/3RtE6
 笑顔でフォローというか素直な感想を言っているのは分かるんです。それは分かっているんですが追い討ちと感じてしまうのは私の心が狭い証左なんでしょうか。教えてくださいお姉さま。

「エイッ」

 私が項垂れている内に今度はルッキーニ少尉の胸に手を出していた。

「ニュハ、あたしはまだまだこれからだよ」

 ルッキーニ少尉は腰に手を当てて胸を張ってさも当然というように答える。

「でも今は残念賞?」
「ちーがーうーのー、あと何年かしたらばいーんばいーんになるんだから今はノーカウントなのっ」

 相変わらずなんだか言ってることが飛んでいるけれど短時間のうちに大分慣れた気がします。
 改めて自分の胸に手を当ててみる。
 ぺたぺた。
 無いですね、絶望的に。
 年齢からすれば本当はもうちょっとあってもいいと思うんですよ。
 お姉さまからは空を飛ぶのには空気抵抗が無くて良いじゃないとも慰められてましたが、マルセイユ大尉を見てる時点で説得力が皆無な上に、シャーリー大尉まで来てしまってはお姉さまの言葉とはいえもう素直に頷くことが出来ません。

「そうなんだ、すごーい」
「ふふーん」

 そんな私が落ち込んでいる間も二人の会話は継続している。

「フレデリカさんみたいになるのかな?」
「ふれでりか?」
「うん、私の上司で保護者。凄くおっきいよ」

 あー、確かにあの人もかなり大きい。かなりいい勝負なんじゃないかと思うけど、実際のところどっちが上なのかな?

「えー、きっとシャーリーのほうがおっきいよ」
「そういえばさっきも言ってたけどシャーリーって、誰?」
「え、ああシャーリーはシャーリーだよ。名前はシャーロット・イェーガーでリベリオンではやくておっきくてやわらかいのっ」
「よくわかんないけどおっきいんだ」
「うんっ」
「確めてみたいな」
「ダーメ。シャーリーのおっぱいはあたしのなの」
「え? えと……じゃ、じゃあフレデリカさんのを触っちゃダメ」
「ヴー、シャーロットのけちー」
「だってルッキーニちゃんが先に……」

 なんだか頭の痛い会話です。
 あー、でも、さっきお姉さまが言っていた仲良くしてあげてねっていうのはこういう事だったのかな。
 そうだとするとルッキーニ少尉とシャーロットちゃんの現状はとても望ましい状況だと思えます。
 何となく嬉しくなって目を細めながら二人を見守る。

「ねぇマミ!」
「マミちゃん」

 突然二人の話題の矛先が私に向けられる。

「あ、えと……何でしょう?」
「そういうわけで行って来るねー」
「また後でね、マミちゃん」
「えっ、あのっ、何処へ!?」
「フレデリカって人を探した後シャーリーのところ行って来るー」
「うん、それでどっちがより大きいか確認する」
「は、はぁ」

 や、やっぱりついていける気がしません。
 でも、もしかしたらああやってはしゃいだりするのがシャーロットちゃんの本当の姿なのかな?
 私の場合は、自分でも思うけれどちょっと態度が硬すぎる気もしますし……。

「いこっ、シャーロット!」
「うん、ルッキーニちゃん」
「いってらっしゃい」

 暑い中ばたばたと砂を巻き上げながら走っていく二人を見送りながら、はたと思い出す。

「あああっ、お洗濯!」

 結局一人で残りをやる羽目に……はぅ。

338 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/12(金) 01:36:31 ID:vK/3RtE6
以上となります。
絵が描けたら本当は絵にしたいんですよね、この3人。
マミ、シャロ、ルッキというウィッチきっての外見炉キャラがここアフリカに集中してるのは素晴らしいと思います。
あとはヘルマがいたら四天王ですね。きっとおねえちゃんが黙っていないw
イメージ的にはおっぱいはマミ=ルッキーニ<シャーロット、かなぁ。
フレデリカさんとシャーリーは、自分の勝手なイメージだけどバストサイズではフレデリカ、カップサイズの比率だとシャーリーかなぁ、と。



…………。
ああ、冒頭のは幻です。
きっと砂漠で蜃気楼でも見たんでしょう。

339 名前:名無しさん:2010/02/12(金) 16:27:13 ID:86JZBkqQ
>>338
GJ! アフリカSSキター
賑やかでいいですなアフリカ。

ところで「冒頭の幻」をもっと詳しく。

340 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/13(土) 00:11:04 ID:hZkX49lc
どうもこんばんは。mxTTnzhmでございます。
約3週間ぶりのご無沙汰です。
職人様方のSS、楽しく拝見してます。
本当に皆様GJ! ここはニヤニヤの宝石箱や〜(違

さて今回は誕生日祝い〜と言う事でひとつ書いてみました。
ではどうぞ。

341 名前:hide and seek 01/03:2010/02/13(土) 00:11:34 ID:hZkX49lc
「さがしてごらん」
 シャーリーの元に届けられた一枚の紙切れ。
 差出人は誰かと聞いても、“代理人(エージェント)”役の芳佳は苦笑いするだけ。
 とりあえず、贈られたいっぱいの花束と豪華に飾られたケーキ、賑やかに祝う隊員を前に、シャーリーは紙切れをポケットにしまった。

 今日はシャーリーの誕生日。芳佳とリーネは張り切ってケーキを作り、皆から花束も差し出され、賑やかなものとなった。たまたまロンドンに所用で訪れていた醇子も「今日が誕生日」と言う事で501基地に招かれ、より華やかさが増した。
「竹井さんも同じ誕生日とは」
 驚くシャーリー。
「奇遇ね。運命の二人かしら?」
 醇子はふふっと笑うと、シャーリーの横に立った。
「いや、ちょっと違うと思うけど」
 醇子につつかれて笑うシャーリー。
「はっはっは、そんな事を言ったら宮藤とサーニャもそうなるぞ?」
 美緒の冗談を聞いて顔色を変えるリーネとエイラ。
「あの、今日は竹井さんもいらっしゃると聞いて、お汁粉作ったんです。扶桑の甘いもの、どうかと思って」
「ありがとう」
 芳佳の出したお汁粉を一口食べ、ちょっとびっくりした顔をする醇子。
「ブリタニアでここまで本格的なお汁粉食べられるとは思わなかったわ」
「ありあわせの材料ですけど」
「さすがね、宮藤さん」

 お祝いの最中、シャンパンを飲み、ケーキを頬張りながら、シャーリーは改めて、紙切れを取り出した。
「……のきのしたでまってます」
 なんだこりゃ、とシャーリーは呟いた。肝心な部分が掠れて読めない。
「あら、愛の告白かしら?」
 いつの間に見たのか、醇子が意味ありげな笑みを浮かべた。
「竹井さん、そんなんじゃありませんよ」
 ふっと笑うシャーリ−。
「残念ね〜。私も愛の告白されてみたいわ〜。ねえ美緒?」
「こら醇子、皆の前で下の名で呼ぶなと何度言えば」
 思わず醇子につられてしまう美緒。
「今日位良いじゃない。誕生日なんだし、美緒がお祝いしてくれるって言うからわざわざ立ち寄ったのに」
「そうは言うがな」
 朗らかに笑う醇子、苦り切った顔をする美緒。その裏で一人妙なオーラを出している人物が居て
気付いた隊員はぎょっとしたり、見て見ぬ振りをしている。
「シャーリーさん、貴方も私と同じ誕生日なんでしょう? もっと一緒にお祝いしましょうよ。さあ食べて食べて」
「ああ、ええ、まあ」
 曖昧に返事するシャーリーを見て、醇子は首を傾げた。
「……」
「どうかしました、竹井さん」
「いつものシャーリーさんなら、もっとこう大らかと言うか、こうと決めたら一直線な感じかと思ったけど」
「はあ……そう見えます?」
「でも意外とウブなのね」
「ええっ? どう言う意味ですかそれ」
「何でもないわ」
「こら、あんまりシャーリーをからかうな」
「そんな事ないわよー」
 美緒の愚痴も笑って流す醇子。

342 名前:hide and seek 02/03:2010/02/13(土) 00:12:32 ID:hZkX49lc
 しかし、「きのした」って何だ? シャーリーはいまいち分からずに呟いた。
「シャーリーさん」
 さっきから様子を見ていた醇子がシャーリーに声を掛けた。
「なんでしょう」
「何か物足りないって顔してる」
「そんな事無いです、ただ……」
「ただ?」
「いや、なんと言うか……」
「ほら、誰か一人忘れてない? 大切な……」
「え?」
 シャーリーは辺りを見回した。確かに十一人居る。……いや、醇子が居るのに十一人とはどう言う事か。
「……そうか、そう言う事か! ありがとう竹井さん」
 シャーリーは突然、残っていたケーキをひったくって皿にどっかと盛った。
 びっくりする隊員をよそに、シャーリーは紙切れをポケットに押し込むと、辺りを見回した。
「どうしたシャーリー。探し物か?」
「ええ、そういう感じです」
「何だリベリアン、落ち着きが無い」
「急用を思い出しましたんで、それじゃっ」
 ぽかんとする一同をよそに、食堂を飛び出した。ひとり、くすっと笑う醇子は、美緒の脇をつついて言った。
「ねえ美緒、誕生日祝いついでに、今日はここに泊めさせてもらってもいい?」
「な、何ぃ? ……ミーナの許可が、無いと」
「それは残念」
 醇子はすました顔でケーキを食べ、おいしい、と呟いた。

 どの木だ? シャーリーは山盛りのケーキを片手に、辺りを探し回った。
 中庭の木でもないし、いつも昼寝している大きな広葉樹でもない。となると……
 裏庭、とも言うべき少し鬱蒼とした場所。その生い茂る木々の中に、探し求めるひとが居た。
「遅〜い、シャーリー」
 街くたびれた、と全身で表現するそのひとに会い、シャーリーは言葉を選び言った。
「ごめんよルッキーニ。探したぞ」
 ほら、とケーキを差し出す。本来なら祝って貰う人が食べる筈のケーキ。
 だけどシャーリーは二人で祝いたかった。
「芳佳とリーネが作ったやつでしょ? あたし昨日の夜見たもん」
「見てたのか」
「たまたま食堂通りがかったら二人で何かしてるから。おいしかったよ」
「って事は、あたしが食べる前に味見したな?」
「だってー」
 えへへ、と笑うルッキーニ。今日はじめて見る、彼女の笑顔。
「でも味見だけって事は、しっかり食べてないだろ? 一緒に食べよう」
「うん。お腹すいてたし」
 木の下に腰掛け、二人でケーキをつつく。
「シャーリー、お皿に盛り過ぎ。山みたいになってるじゃん。崩れてるし〜」
「ルッキーニがたくさん食べるかと思ってさ」
「まあ、食べるよ? いっぱい食べてシャーリーみたいになるんだ」
「そうか。期待してるぞ?」
「いっただき〜」
 まるでちょっとしたピクニックだ。日差しも柔らかく、この時期にしては風も無く穏やかで暖かい。
「なんだかあたしがお祝いされてるみたいだね」
 ルッキーニが手づかみでケーキを食べながら言った。
「そういやそうだ」
「シャーリーの誕生日なのにね」
「他人事だなあ」
「そんなことないよ。シャーリーの為に、プレゼント考えたもん」
「おおー、楽しみだなあ。何?」
「ケーキ食べたら教えてあげる」
「? まあいいや。食べよう」
 二人でぱくぱくとケーキを食べる。ルッキーニは余程お腹が減っていたと見え、シャーリーよりも早く多くケーキを食べた。
「もっと持ってくれば良かったか?」
「ううん、大丈夫」
「そっか」
「あとでまた芳佳とリーネに作って貰うも〜ん」
 表面上は呑気なルッキーニ。だけど何処か落ち着きが無い。

343 名前:hide and seek 03/03:2010/02/13(土) 00:13:20 ID:hZkX49lc
「そうだ、プレゼントって、何?」
「やっぱり欲しい?」
「そりゃ勿論欲しいさ」
「じゃあ」
 ルッキーニは顔を赤らめると、シャーリーの胸に飛び込んだ。
「お、おい?」
 戸惑うシャーリー。
「あたし。あたしがプレゼント」
「な、何ぃ? 一体どう言う事だ?」
「うーんとね。色々考えたんだ。シャーリー何が良いかなって。でもあたしよく分かんなかった。
シャーリー、機械とか好きだけどあたし、よくわかんないし。
でもあたしの持ってる本とか雑誌とかオモチャじゃつまんないだろうし。
だから、あたしを今日一日あげる」
「おいおい、そんなプレゼントアリかよ」
「……だめ?」
 しゅんとなるルッキーニ。
 多分、彼女なりに必死に考えたのだろう。シャーリーは微笑むと、ルッキーニをぎゅっと抱きしめた。
「じゃあ、遠慮なく」
「えっ? シャーリー?」
「あたしにくれるんだろ?」
「う、うん」
「だから、もらうよ」
「ありがと……」
「それはこっちのセリフ」
 シャーリーは少し笑うと、不意に真面目な顔をして、ルッキーニとキスを交わした。
「シャーリー……」
「なんか、ちょっとイケナイ感じがしてきた」
「顔赤いよシャーリー」
「ルッキーニだって」
 二人してくすくす笑って、またキスをする。何度も繰り返し、抱きしめる力が増し……
「やさしく、ね?」
 ルッキーニの一言で、シャーリーの何かが弾けた。
 二人だけのお祝いはいつ終わるともなく、木々に隠れた場所で、ひっそりと、こっそりと、そして盛大に。

end

----

以上です。
これまでシャーリーの誕生日祝いSSって書いた事無かったので、
軽めにひとつ。ジュンジュンも誕生日一緒なのでついでに。
ホントは別に一本書きたかったんですけど、そこまで余力が……。

ではまた〜。

344 名前:名無しさん:2010/02/13(土) 00:22:30 ID:6D6p.Bzk
>>343
甘〜いシャッキーニ分ありがとう!GJ!

345 名前:名無しさん:2010/02/13(土) 02:19:27 ID:STt3KIBw
>>343
寝る前にスレ覗いて良かった。
甘々のシャッキーニをGJ!
今年は書けそうにないけど、シャーリーもジュンジュンも誕生日おめ!

346 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/14(日) 22:33:28 ID:cYm/aiyI
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日はバレンタインデー。
と言う訳で、wikipedia先生に聞いたところ
欧米での習慣らしきものが分かったので
ちょっと小ネタ程度に書いてみました。

>>341-343「hide and seek」の続き、
そして保管庫No.0450「ring」シリーズ番外編
と言う事で宜しくです。

347 名前:come baby:2010/02/14(日) 22:34:46 ID:cYm/aiyI
 木陰で激しく“いちゃつく”シャーリーとルッキーニ。
 そんな二人の様子を遠〜くの方から伺う人影が二つ。
「まっっっったく、あいつらは一体何をやって……」
 慌ててトゥルーデの口を塞ぎ、ひそひそ声でエーリカが囁いた。
「静かに。私達居るのバレちゃうよ」
 エーリカの手をそっと取り、怒りと呆れと困りが混じった表情をするトゥルーデ。
「けどなエーリカ。私はあいつらに『昼飯だ』と声を掛けに来ただけで、疾しい事は何も……」
「じゃあどうして、私達小声なの? 何で隠れてるの?」
「それは……」
 二人して、遠くの茂みで繰り広げられる痴態を改めて見やる。
 きっかり二十秒経って、同時に、互いの目の前に居るひとの顔を見つめた。
「前からずっと思ってたんだが」
「何、トゥルーデ?」
「ルッキーニ、確か十二歳だろ。色々とまずいんじゃないのか」
「どうして? あの二人は歳もそんな離れてないし、お互い合意の上だし良いんじゃないの?」
 あっけらかんと答えるエーリカに、トゥルーデは呆れて呟いた。
「歳離れて、って……リベリアンは十六だろ」
「私だって十六だよ?」
「あのなあ、エーリカ……」
「私とトゥルーデ、ふたつも歳離れてるよ〜。トゥルーデお姉ちゃん」
「お姉ちゃんって……。ともかく、二歳位は良いだろう。しかもあいつらとは何の関係も……」
「どうして? トゥルーデの理屈じゃ、トゥルーデは付き合えるのミーナだけになっちゃうよ?」
「どうしてそうなるんだ」
「良いの? 私じゃなくても」
「そ、それは……困る」
 エーリカの袖を握るトゥルーデ。
「いいじゃん。二人は二人で。私達は私達で。ね、トゥルーデ」
「あ、ああ。まあ……そうか」
 二人してしゃがみ込み、そっと抱き合い、口吻を交わす。
「……あれ?」
「どうしたの、トゥルーデ」
「何か大事な事、忘れてる様な……」
「気にしない気にしない」
「いや、何だっけな」
「そろそろバレンタインとか?」
「そう言えばそうだ」
「トゥルーデ、私に何くれるの?」
「……全然考えてなかった」
「ひっどいなあ」
「じゃあエーリカは何を?」
「トゥルーデから貰うの、期待してたんだけどな」
「と言う事は、何も無しか」
「そんな事無いよ」
 エーリカはそう言うと、トゥルーデを抱きしめ、キスをしながら上着のボタンを外しにかかった。
「お、ちょっと待て、こんな所で」
「何か良いよね、こう言うシチュエーションも。あっちはあっちでやってるし」
「そう言う問題か……ぅあっ」
「トゥルーデ、声大きいよ」
「馬鹿。エーリカがそんな所に手を……ううっ」
「トゥルーデ、可愛い」
「エーリカ、やめ……」
「じゃ、どうする? ここで続ける? それとも、トゥルーデ……」
 妙に艶めかしいエーリカの瞳と唇を見、トゥルーデは即決した。いや、頭の中で何かが弾けた。
 エーリカをお姫様抱っこすると、そのまま駆け足で自室に向かい、鍵をしっかり掛け、籠もった。

「……ぁん。シャーリ−、もっとぉ」
「ルッキーニ可愛いよ」
「大好き、シャーリー。……シャーリー? どうかした?」
「いや、あいつらも何やってんだかって」
「??」
「ま、あたし達もあたし達か。何でもない」
「? ヘンなシャーリー」
 音速のリベリアンは、自嘲的な笑みを一瞬浮かべた後、目の前にいる可愛い恋人の唇を塞いだ。

end

348 名前:名無しさん:2010/02/14(日) 22:36:27 ID:cYm/aiyI
以上です。
バレンタインだからと言って特別何かを書く訳でもなく……
ただ、「いちゃいちゃ」を書いてみたかっただけなんです……。

ではまた〜。

349 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/16(火) 20:09:06 ID:mG9F/Pnc
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今回も誕生日祝い〜と言う事で短いのを書いてみました。

かなりごっちゃになってややこしいですが、
No.981「music hour」シリーズ番外編、
そしてNo.0946「queen's knight」、0951「knight without armour」
0957「knight of the moonlight」の続き……と言う事でよしなに。

ではどうぞ。

350 名前:heartbeat:2010/02/16(火) 20:10:43 ID:mG9F/Pnc
「規定の任務完了。これより帰投します」
『了解しました大尉。お気をつけて』
 部隊通信本部と簡単な通信を済ませたのち、ハイデマリーは周囲をもう一度見回し、ネウロイの影が無い事を確かめる。
 ライムグリーンの魔導レーダーがひときわ輝く。
 任務を終え帰る間際が一番危険。幾多の戦いを潜り抜けてきた“戦訓”だ。
 ハイデマリーは意識を集中させた。
 今日はネウロイの影もなく大丈夫らしいと判断し、くるりと身体をロールさせる。
 再び、魔導レーダーの輝きが増す。
 雑多なノイズを抜けて、幾つかの周波数を辿っていくと、たまに他のナイトウィッチと交信出来る。
 今日は誰が……と期待していると、どこか聞き覚えのある声が聞こえてきた。

『ハ〜イ……「STRIKE TALKING RADIO」始まりマ……
DJ兼MC、パーソ……の……でス。皆聴い……カナ?
この番組ハ、サーニャのレーダー魔導針を……、全世界の悩めるウィッチに……』
 雑音が酷い。今日に限ってどう言う事? と訝しむハイデマリー。
『サテ……ホンット、今日は特別ダカンナー! 今日だけダカンナー!』
 この声は、確かサーニャさんの友人の……。いまいち思い出せないハイデマリー。
『ええっと、シュナウファー大尉に連絡と言うか伝言です』
 突然サーニャから自分の名を呼ばれ戸惑う。感情に呼応したのかストライカーの消炎排気管から炎が一瞬見える。
 ノイズ混じりのサーニャの声を拾うべく、必死に魔導レーダーの位置を変えてみる。

『では読みます。
--
ハイディ、今日は貴方の誕生日と……から聞きました。おめでとう。
本当は……で一緒にお祝いしたいけど、
その楽しみとワインは一緒に取っておきますわ。だから絶対に無茶しないで。
離れても心は共にある、ブループルミエより
--
シュナウファー大尉、お誕生日おめでとうございます』
『おめでとナ』
 ハイデマリーは、ああ、とそのひとを思い出し、口を手で覆った。
 そう言えば、今日は私の……そんな日も有った。でも、わざわざ無線で言わなくても……
 眼鏡を取り、目に溜まった涙を拭く。
 “ラジオ”はその後殆ど聞き取れなくなったけど、知りたい情報は全て得た。それ以上の嬉しさが有った。
「ありがとう」
 そんな言葉も自然と口に出る。
「今度は、どんな理由つけて行こうかな」
 ぽつりと呟く。
「そうだ、今度彼女の誕生日、調べてみないと」
 私の楽しみもひとつ増えそう、と笑みを浮かべるハイデマリー。
『大尉、どうかされましたか』
 舞台通信本部から連絡が入る。
「何も。問題有りません」
 平静を装いつつも、ハイデマリーの関心と意識は、既にあの場所、あのひとへと向いていた。

end

351 名前:名無しさん:2010/02/16(火) 20:11:30 ID:mG9F/Pnc
以上です。
眼鏡っ娘同士(ハイデマリー×ペリーヌ)の可能性を追求してみたり。
誕生日、と言う事で続きがあるかもです。
ではまた〜。

352 名前:名無しさん:2010/02/16(火) 20:15:14 ID:mG9F/Pnc
>>350
>× 舞台通信本部から連絡が入る。
>○ 部隊通信本部から連絡が入る。

うーん、またポカやってしもうた。反省です……。

でわでわ。

353 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2010/02/18(木) 00:33:16 ID:b4/kMQxY
誕生日、バレンタイン、誕生日と連続GJ

個人的にはエーリカとハイディの組み合わせを書いてみたかったんだけど、
どれも書けんかったorz
何日か遅れで黒江さんネタは投下するつもり。

あと、今年こそはエイラを祝福したいが……ムリダナ

354 名前:名無しさん:2010/02/18(木) 19:20:44 ID:Kc1v0AiA
シャーゲル2レスほど。


「うひゃあ、いい眺めだな。最高点は地上120メートルに達するってさ」
「…………」
「なんだそのむくれっ面は。好きなんだろ、観覧車」
「お前が私の背中を強引に押してきたんだろう」
「だって乗りたそうにしてたからさ」
「してない」
「してた」
「してない」
「はいはい。もうそれでいいよ――あー、なんか飽きてきたな」
「なにを言っている。まだ1分も経ってないだろう」
「つまんねーよ。高さはあってもスピードはない。おまけにこんなのと10分以上顔をつきあわせるなんて」
「勝手なやつだ」
「あんたはどうなの?」
「悪くない。のんびり空を散歩してるようだ……ん? どうしたんだ、笑い出したりして」
「あはっ……いや、カールスラントの堅物ともあろうものが意外にロマンチストだなって」
「笑うな」
「怒るなよ、あははっ……あっ、ルッキーニが手ぇ振ってる。おーい!」
「おい、あまりはしゃぐな。ゴンドラが揺れるだろう」
「ハルトマンもだ。なんか叫んでるぞ。あんたも見ろよ」
「別にいい」
「ほーら」
「おい、引っ張るな……なぁ、なんだか下の様子がおかしくないか?」
「人がわんさか集まってきてるな。パレードでもあるのか?」
「なんだかみんなこっちを見てないか?」
「あっ、モールス信号」
「ゴ、ン、ド、ラ、ニ、バ、ク、ダ、ン、ガ、シ、カ、ケ、ラ、レ、テ、イ、ル」
「……なんだよそれ? 笑えない冗談だな」
「係員までか?」
「なに、まさか本気で信じちゃったわけ?」
「こっちにはないようだ。そっちじゃないのか?」
「なんだよ、取り乱して。冷静に――」
「いいから股をひらけ、リベリアン!」
「なっ、なに言い出すんだ!?」
「早くしろ!」
「わっ、わかったよ。どうせホントにあるわけ――」
「あった」

「0432……これ、4時間32分とかじゃないよな?」
「着々と減っているのにか? 23、22、21……」
「読みあげるな!」
「あと4分――ちょうど頂上にいるころだ」
「どうすんだよ! あたしまだ死にたくないぞ!」
「クリスー! 芳佳ー!」
「落ち着けよ、堅物! こんなとこから飛び降りたらそれこそ死ぬだろ! だいたい、妹はともかく、なんで宮藤なのさ?」
「別にいいだろう。お前はどうなんだ? なんでそんなに落ち着いてる」
「んなわけあるか。あたしだってイヤに決まってるだろ。明日の新聞に書かれちゃうんだぜ。
 『なおその観覧車にはシャーロット・E・イェーガー、ゲルトルート・バルクホルンの両名が乗っていた』」
「『ゲルトルート・バルクホルン、シャーロット・E・イェーガーの両名』だ」
「どっちでもいいよ。あー、せめてこれが作戦中なら殉職だったのに」
「おもいっきりオフだったな。特にお前はハメを外しすぎだ。一体、ジェットコースター何周した?」
「あんたこそ、メリーゴーランドではしゃいだりして。似合わねー」
「…………」
「…………」
「…………」
「あたし、あんたと2人で死ぬなんてヤだからな」
「私こそ、お前とだけは死んでもゴメンだ」
「…………」
「…………」
「なぁ、このまま死んだら、あたしとあんたって仲良しってふうに思われるのかな」
「それどころかカップルってことになるかもな」
「死ぬな」
「死ねるな」
「…………」
「…………」
「そこどけ」
「?」
「今からあたしが時限爆弾を解体する。あんたはそっちでバランス取ってろ」
「そんなこと言ったってここには道具も……なんであるんだ」
「普通持ってない? 精密工具セット」
「持ってるわけがないだろう。そんなものいつも持ち歩いているのか?」
「まあね。えーっと、まずは外装を外して……」
「なんでできるんだ?」
「聞かないでくれ」
「そうしておこう――どうだ、いけそうか?」
「構造自体は単純みたい。あとは時間との勝負だな」

355 名前:名無しさん:2010/02/18(木) 19:22:06 ID:Kc1v0AiA
「急げ、残り30秒だぞ」
「んなことわかってるよ。静かにしてろ――よし、あと1本」
「やったな…………どうしたんだ、手が止まっているぞ」
「1本がホンモノで、もう1本がダミーだ。間違ったら多分爆発する」
「わからないのか?」
「お手あげ。あとはフィフティーフィフティーだ」
「切らないのか?」
「どっちだかわからないのに?」
「らしくないな」
「そう? 完全な運任せってあたししないんだけどな。運よくないし。だから1%でも確率のあがる方法を模索する」
「なるほどな」
「青と赤、どっちだと思う? ていうか、そもそもあんたって運はいい方?」
「…………」
「訊くんじゃなかった」
「私はまだ答えていないだろう」
「……あのさ。ごめん」
「なにがだ」
「あたしがムリヤリあんたを押しこんだせいでさ。こんな目にあわせちゃって……」
「謝るな。そんな話、今はいい。残り10秒――」
「なぁ、さっきはついあんなこと言っちゃったけどさ」
「…………」
「やっぱあたし、あんたとだったらさ」
「青だ」
「聞けよ」
「聞かん。青を切れ」

「なぁ、訊いてもいいか?」
「なんだ?」
「なんで青を切れって言ったわけ?」
「……別に、大した理由があるわけじゃない」
「なんかあるんだ。いいから教えろよ」
「……赤は……」
「なに?」
「赤は、お前の色だから。だったら赤を切るわけにいかないだろう」



以上です。
爆発物解体シュチュって燃え萌えですよね。まあぶっちゃけ、
「いいから股をひらけ、リベリアン!」
って言わせたかっただけですが!
タイトルは「How to Dismantle a Love Bomb」です。OsqVefuYでした。

356 名前:名無しさん:2010/02/18(木) 23:16:56 ID:fuN16IZI
>>355
いかにもなシャーゲルって感じで良いなぁ。シャーリーが完全な運任せを
しないってのはなんとなく頷ける気がしたよ。GJ。
ただ股を開けは盛大に吹きましたw

うーむ。
書き途中のSSが五本もある……orz

芳佳×トゥルーデと
エイラの昔話と
属性ネタと
エーゲルと
現代に飛んできちゃいましたネタ

……とりあえず今から新規に書くともうごちゃごちゃになるから
それは止めるとして、しかしどれを書こうか……orz

357 名前:名無しさん:2010/02/19(金) 11:19:17 ID:Z.J4dtuQ
>>355
GJ!
いずれにせよ、「シャーゲル両名、爆弾解体成功!」で仲良し認定だな
GJ!

358 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/21(日) 00:20:47 ID:Wn7bcsok
>>355 OsqVefuY様
GJ! 股をひらけワロタ
これは良いシャーゲル。お見事です。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日〜と言う事でひとつ。

359 名前:you're my only shining star 01/02:2010/02/21(日) 00:21:33 ID:Wn7bcsok
  夜空を駆ける無数のウィッチ達。銃を手にし、互いを撃ち合う。恐らくは模擬戦か飛行訓練か。
  彼女達の懸命な姿、空を描く軌跡は美しく、ワルツの様で、それでいて少し物悲しくも見える。
  そんなウィッチ達の乱戦をひらりひらりとかわし前を進むのは、スオムスが誇る無傷のエース、エイラ・イルマタル・ユーティライネン。
  まるで朝飯前の如く、他のウィッチ達をからかい、おちょくり、次々と被弾させながら飛んでいく。「完全回避」の面目躍如。
  だけど、他のウィッチはエイラの事はさして気にも掛けず、素通りしている風で……しばらく経たぬうちに周囲には誰も居なくなり、ぽつんとひとりになった。虚無感にも似た感情がエイラを襲う。
  (私は一体、何をしているんだろう)
  ふと気付く。
  自分を狙う、誰かが居る事に。
  背後、斜め上を見上げる。満月を背に、ひとりのウィッチがこちらを見下ろしている。表情は分からない。
  エイラは反射的にMG42を構えた。が、握っているはずの銃が無い。
  彼女のMG42は、エイラを見下ろすウィッチがいつの間にか手にしていた。
  撃たれる。エイラの直感がそう告げる。シールドは、間に合わない。
  逃げられない。
  ゆっくりと、しかし確実に、ウィッチはトリガーを引く。
  エイラの心臓を一瞬一撃で貫く。ぐらりと体勢を崩すエイラ。ストライカーのエーテル流も止まり、自由落下に身を任せる他無かった。
  だけど痛みは感じず、エイラはただ、遂に撃たれたと言う安堵にも似た感情、自分に向かい飛んで来て手を差し伸べる「魔弾の射手」の影を懐かしく、愛しく思い……


「ねえ、エイラ。起きて。エイラ」
「ウワ!? サーニャ?」
 エイラは耳元、至近距離でこそばゆく聞こえたサーニャの囁き声と甘く熱い吐息で、微睡みから一気に覚醒した。
「大丈夫? エイラ。寝汗凄いよ。タオル、使って」
「ああ、アリガトナ」
 慌ててタオルで額を拭う。
「エイラ、珍しい。うなされてた」
「ホントカ? 寝言とかうるさかっタ? ゴメンなサーニャ」
「良いの」
 夜間哨戒帰りのサーニャを起こしてしまったとは……己を呪うエイラ。しかしひとつ気に掛かる事が。
「さっき、サーニャの声が耳元で聞こえた様ナ……何かしタ?」
「ううん、まだ何もしてないよ?」
「そ、ソッカ。……マ、マダぁ!?」
「そ、それはその……とにかく起きて、エイラ」
「あ、アァ」
 もうひとつの、疑問。
 さっき見た光景は……、自分が撃ち抜かれたのは、夢? それとも……。
「ねえ、エイラ」
「どうしたサーニャ?」
「今日は、貴方の誕生日でしょ? だからちょっと早起きして、作ってみたの」
 いつ用意したのか、小さな小さなケーキがひとつ。上にイチゴとブルーベリーが数個載っている。
「これ、サーニャが?」
「うん。エイラ、気に入ってくれれば良いんだけど」
「オオ〜可愛いケーキだなァ。アリガトナ、サーニャ。何か食べるの勿体ない気がするゾ」
「エイラの為に作ったんだから」
「食べるヨ」
 じっと、エイラを見つめるサーニャ。
「な、何か食べ辛イ……」
「見てちゃダメ?」
「いや全然」
 フォークを当てるのも躊躇う程に、整った可愛いケーキ。
 意を決してひとくち、そっと味わう。エイラの好みに合わせた、ほのかな甘味と酸味……
 エイラは仰天した。
 この感覚……さっき“撃たれた”時と同じ……。
 と言う事は。
 エイラはサーニャを見た。サーニャはサーニャで、ケーキの味がどうか、エイラの評価を待っている。
 あのヴィジョン、満月の中に居た“人影”は……間違いない。
「サーニャだ!」
「えっ? どうしたの、いきなり?」
「やっぱりサーニャだったんだ!」
 エイラは堪えきれず、サーニャに抱きついた。何故か涙が一筋流れる。
「エイラ。どうしたの。ケーキは? 美味しくなかったの?」
「美味しい。これだったンダ、分かったヨ、サーニャ」
 涙声で、エイラはサーニャを抱きしめた。意味が分からなかったが、とりあえずサーニャも優しく、エイラを抱いた。

360 名前:you're my only shining star 02/02:2010/02/21(日) 00:22:39 ID:Wn7bcsok
「夢の中で、私に撃たれたの?」
 エイラの夢物語を聞いたサーニャは、首を傾げて言葉を続けた。
「私はMG42は使わない。フリーガーハマーを使う筈だけど」
「そ、それは実戦ダロ? 私の夢の中の話だってバ」
「でも、どうして私だって、分かるの?」
「だって、ほラ。私は相手の動きを先読み出来るから絶対に当たらないのニ……」
「だけど、私は……」
「確かに魔導レーダーも見えなかっタ。でもあれはサーニャなんダ。じゃなきゃ私は撃たれなイ」
「エイラったら」
「撃たれた時、何とも言えない気持ちになっタ。解放されたと言うか何と言うか……それで、このケーキ食べた時も同じ気持ちに……だから、サーニャ」
「おかしなエイラ」
 くすっと笑うサーニャ。そしてエイラをきゅっと抱きしめ、ベッドに押し倒した。そしてエイラの耳元で、また囁いた。
「でも、間違いではないかも」
「サーニャ、それって……」
「今日はエイラの誕生日、よね?」
「そうだヨ」
「私だけが、お祝いしても、良いよね?」
「エ?」
「私だけ。良いよね?」
「サーニャ……」
「答えは、聞かない」
 それだけ言うと、サーニャはエイラの唇を自らので塞いだ。
 ケーキのカスタードクリームの味がほのかに残る。サーニャはまるでそれを味わうかの様に、エイラに口吻を何度も繰り返した。

 部屋の外がにわかに騒がしい。
 そろそろ朝食……いや、もう昼飯の時間だ。
 恐らく、エイラの誕生日と言う事で、501の隊員達が何かを用意して待っているのだろう。
 だけどサーニャはそんな事お構いなし。
「私だけの、エイラ」
 それだけ言うと、エイラには何も言わせず、繰り返し、濃いキスをした。
 暫く経って外が静かになっても、二人は絡み合ったまま、熱い息遣いの中、“お祝い”の行為に耽った。

end

----

以上です。
エイラ誕生日おめでとう! やっと誕生日SS書けた!
エイラと言えばやっぱりサーニャと言う事で。
何か、何処かで似たシチュ有った気もするけど気のせい……?
何卒ご容赦を。

ではまた〜。

361 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2010/02/21(日) 02:00:45 ID:BOTOSz9o
超久々に新作投下です。ちなみにエイラの誕生日とは関係ありません……。
[大空に舞う紅蓮の軌跡] 登場キャラは秘密ということで。強いて言うならオールキャラ。
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/oozora.txt(統一版)
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/oozora1.txt(以下分割版)
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/oozora2.txt
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/oozora3.txt
統一版も分割版も内容は一緒ですが、分割版は目安500行前後のキリのいいところで切ってあります。
あるキャラを見てたら無性に書きたくなって、だったらこうしちゃえ、で膨れ上がりました。
多分、このキャラでSS書くのはここでも本スレでも初めてかな?

>>360
GJ! SS落とそうとしたら新しいの来てたから読んでみたらなかなか、
堪能させていただきました。エイラーニャいいよエイラーニャ。
そして同時に落胆……今日エイラの誕生日か……すっかり忘れてたorz
せっかく三〜四時間で集中して書き上げたSS、エイラ一回も出てこねーorz ごめんねエイラ。

362 名前:苦悩は甘く溶ける:2010/02/21(日) 04:17:30 ID:yt0EUn1o
こんばんは、DXUGy60Mです。一週間遅れで申し訳ないですが、バレンタインネタを投下します(汗)
最後までお読み頂けたら幸いに思います。そして、エイラお誕生日おめでとう!


宮藤とリーネは、横目でお互いをチラチラと見ながら椅子に座っていた。
二人の目の前にはエイラが立っていたが、腕を組んだままじっとだまっていた。
「なぁ・・・ちょっと来てくれないか、話があるんだ」
夕食の片づけをしていた二人は、エイラに呼びかけられてブリーフィングルームに
来たのだが、エイラは呼び出した理由を二人になかなか告げようとしなかった。
「あ・・・あの、エイラさん、話って何?」
気まずい沈黙に耐えかねた宮藤は、思わずエイラに問いかけた。それに気がつくと、
「そ・・・その、ちょっと二人に手伝ってもらいたくてさ・・・」
エイラは伏し目がちに答えた。
「何をですか?」
リーネが首を傾げる。
「その・・・一緒にお菓子の家を作ってもらいたくてさ」
エイラは頭をかきながら答えた。
「お菓子の家!!」
宮藤とリーネは思わずお互いの顔を見合わせた。
「お菓子の家って・・・あのヘンゼルとグレーテルに出てくるやつですか?」
宮藤の問いに、エイラはこくりとうなずく。
「でも、何でお菓子の家なんて作ろうと思ったんですか?」
今度はリーネがたずねた。
「あ・・・あのさ、この前サーニャとロンドンに行ってきたんだよ。私が用事を
済ませって戻ってきたら、サーニャが古本屋の前で何か熱心に読んでたんだよ。
私が、何読んでんだって聞いたら、『ヘンゼルとグレーテル』の表紙を見せてきてさ。
サーニャ、小さい頃一度でいいからお菓子の家を食べてみたかったんだって。
それでさ、今度フェルナンヌウス祭だろ? 本当にお菓子の家を見せてやりたくてさ・・・サーニャに」
「素敵な考えだね」
宮藤は素直に感想をもらした。
「でさ・・・一人じゃとて無理だから、二人に手伝ってもらいたいんだ、他のみんなには
たのめないし・・・その、いいか?」
宮藤とリーネは笑顔でうなずいた。
「本当か?・・・ありがとな」
エイラは素直にお礼を述べた。
「じゃあさ、これが設計図なんだけど・・・」
そう言うが早いか、エイラは一枚の紙を机に広げた。
宮藤とリーネは身を乗り出し設計図を覗き込んだが、その瞬間思わず青ざめた。
「えっ・・・これを三人で作るんですか?」
宮藤の質問にエイラは真面目な顔をしてうなずいた。
「リーネちゃん・・・フェルナンヌウス祭っていつあるの?」
「え〜と・・・2週間後かな」
二人はお互いの顔を見合わせると、エイラの顔をサッとうかがった。
エイラは二人の目が自分に向いているのに気づくと、
「大丈夫、この計画通りいけば・・・」
そう言って新たに1枚の紙を机に広げた。
「ローテーションはもう組んであるんだ。夜に二人が家の材料を作って、一人が
昼間にそれを組み立てる」
二人はローテーション表を見て再び青ざめた。
「これを普段の隊務の合間を縫ってやるんですか?」
リーネがおそるおそる聞くと、エイラはまたも真面目な顔でこくりとうなずいた。
宮藤とリーネは再びお互いの顔を見交わした。
どう見ても不眠不休の作業だった。
一瞬の沈黙が流れる。
「頑張ろう! サーニャちゃんのために。ねっ!リーネちゃん」
宮藤は立ち上がり、リーネの方を向いた。
リーネも宮藤の真剣な顔つきを見ると、戸惑った顔つきは一瞬で力強いものとなり、首を
縦に振った。そうして二人がエイラの顔を見つめると、
「うん・・・頑張ろうな!」
エイラもそれに応じた。
「で、さっそくで悪いんだけど・・・」
エイラは宮藤の顔をじっと見た。
「どうしたの?」
「実は・・・」
・・・・・・・・・・

宮藤はベッドに横になりながら、足場の無くなった部屋を見渡した。
そうしてエイラの言ったことを思い出す。
「私の部屋には置いとけないしさ、リーネの部屋は荷物が多いし、悪いんだけど
 宮藤の部屋に置かせてくれないか?」
宮藤は部屋を満たしたお菓子の材料を見ながら、明日からの激務への不安を覚えた。そし
て、明日への備えと自分の周りの荷物を見ないためにも早々に目をつぶることにした。

363 名前:苦悩は甘く溶ける:2010/02/21(日) 04:21:16 ID:yt0EUn1o

ブリーフィングルームでの会議から既に1週間が経過していた。
厨房のエイラと宮藤はオーブンの火を見ながら虚ろな目をしていた。三人の体は、睡眠不
足と疲労で既に満身創痍の状態だったが、工程は残念ながら予定の半分にも満たなかった。
「・・・ムリダナ」
エイラが思わずつぶやく。
「え?」
宮藤は思わずエイラの方を振り向く。
「やっぱり無理だったんだよ、たったの三人でこんなの作ろうなんて」
エイラはそう言いながら机の上の図面に視線を落とす。
「・・・・・・諦めよう」
そうポツリと呟いた。
「でも、ここまで作ったお菓子の家はどうなるの?」
「ほっとけば鳥とかが食べてくれるよ」
宮藤の問いにエイラは弱々しい笑みを浮かべながら答える。
「でも・・・、せっかくエイラさんがサーニャちゃんのために考えたのに・・・」
「いくらサーニャのためだからって、お前やリーネが体を壊したら一番悲しむのは・・・サーニャだろ?」
「でも・・・」
「もういいんだって、元々私の勝手な考えなんだしさ・・・」
二人の間には長い沈黙が流れ、部屋はわずかにだがオーブンから出る香ばしい匂いで満たされていく。
「そうだ!」
「何だよ?」
「あのっ、こういうのはどうかな?」
宮藤は思いついた考えをとうとうとエイラに説明した。
「どう?」
「・・・いい考えかもな、それ」
宮藤の提案を聞き、エイラの顔にはにわかに活力が戻ってきていた。
「最初の計画からはだいぶ小ぢんまりしちゃったけど・・・」
宮藤はもうしわけなさそうに頭をかく。
「いや、すげぇ宮藤らしいよ今の自分にできることをってさ」
そう言いながらエイラは宮藤に笑顔を向けた。
「へへっ、ありがとう」
「でも、だからってあんま調子にのんなよ〜」
そう言いながらエイラは宮藤の頬っぺたを両手でつねった。
「な、なにひゅるの〜」
「宮藤がもう少し頑張ってれば、とっくに完成してたかもしんないんだぞぉ」
「む、むひだって〜」
「どうかな〜」
二人っきりの厨房は賑やかな声と香ばしい匂いで満たされていった。

364 名前:苦悩は甘く溶ける:2010/02/21(日) 05:00:40 ID:yt0EUn1o

時計の針が12時を少し回った頃、サーニャ・V・リトヴャクは、夜間哨戒のために滑走路
より飛びたったばかりだった。そのまま上昇していこうとした瞬間、地上で何かが閃いた
のに気づいた。
「え?」
サーニャは思わず目を凝らすと、地上には無数の淡い光の粒が溢れ、一本の道を作り出していたのだ。
(なんだろう? でもすごく綺麗)
サーニャがその光景に見とれていると、魔導針で人の存在を捉えた。
(エイラ?・・・それに芳佳ちゃんにリーネちゃん? ・・・この先にいるの?)
サーニャはよくわからないまま、光の道筋に沿って飛行していった。
光の道が途切れた時、エイラと宮藤、リーネが自分に向かって手を振っているのが目に入った。
サーニャは高度を下げていき、三人の近くでホバリングをした。
「どうしたの?」
サーニャは三人に尋ねる。
「ほら、サーニャこの前、小さい頃お菓子の家に行きたかったって言ったろ」
サーニャはこくりとうなずく。
「それでさ、ジャーン!」
エイラは後ろ手に隠していた、(当初の予定よりもだいぶ小さくなった)お菓子の家をサーニャに手渡した。
「うわぁ・・・」
サーニャは思わず吐息をもらしながら、
「そうか・・・さっきの光の道は迷わないための?」
と、自分が今通ってきた道の意味に気がついた。
「うん、まぁ光る石じゃなくて電球だけどな」
「エイラが考えたの?」
「・・・いや、宮藤のアイデアなんだ」
そう言いながら後ろに控えていた宮藤の方に視線を送った。
「へへっ」
宮藤は照れくさそうにする。
「それに、このお菓子の家も宮藤とリーネのおかげなんだ。二人には・・・まぁ色々と手
伝ってもらったんだ」
それを聞くとサーニャは宮藤とリーネを見ながら申し訳なさそうにする。
「ごめんなさい・・・芳佳ちゃん、リーネちゃん、エイラが迷惑をかけたみたいで」
「お、おい、サーニャ〜」
エイラが顔を赤くしながら慌てて会話を取り繕うとしたが、
「ううん、全然気にしてないよ。ねっ、リーネちゃん」
「うん」
「お、お前らまで〜」
二人の対応に思わず肩を落とした。そうして、誰ともなく笑い声があがり、夜の静寂の中
に4人の少女の笑い声とストラカーユニットが空気を裂く音だけが聞こえた。

「あ! でも・・・」
何かを思い出したようにサーニャが声をあげる。
「どうかした? サーニャちゃん」
宮藤が問いかける。
「私・・・これから夜間哨戒だから、今渡されても・・・」
「・・・・・・あ!」
エイラ、宮藤、リーネは思わず同時に声をあげた。
「ど、どうするんだよ宮藤?」
「えぇ! どうしよう、そんなこと全然考えてなかったよ」
「・・・小さく切ったのを持っててもらえば?」
「それいいね、リーネちゃん。じゃあ、私何か切るものを持ってくるよ」
戸惑う三人の姿を見てクスクスと笑っていたサーニャは、
「いいよ芳佳ちゃん、帰ってきたら食べるから」
リーネの提案を受けて走りだそうとする宮藤を呼び止めた。
「食堂に置いておいて、戻ってきたら・・・大事に食べるから」
「うん、わかった」
エイラがそれに応じた。
「じゃあ・・・行ってきます」
サーニャは手を振りながら、天高くへと昇っていった。
三人とも地上からサーニャの姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

365 名前:苦悩は甘く溶ける:2010/02/21(日) 05:05:10 ID:yt0EUn1o

「お早う芳佳ちゃん」
「お早うリーネちゃん」
廊下であった二人は、夜遅くにあった出来事を話しながら朝食の準備のために食堂にへと
向かった。二人が食堂に入ると、いつもは誰もいないはずの厨房で人影が動いた。
「あれ? エイラさん?」
宮藤は思わず声をあげた。
「ああ、宮藤とリーネか。お早う」
二人もエイラに習って挨拶をする。
「どうしたんですか? こんなに朝早くから」
「まぁいいから、座って待ってろよ」
リーネの質問を軽く受け流したエイラは、二人にそう指示した。なんだろうと思いながら
も、二人は黙って椅子に腰を下ろした。そしてしばらくすると、
「お待たせ」
エイラの声と共に、座っていた二人の前にはサンドイッチが置かれた。
「これエイラさんが?」
後ろを振り向きながら、宮藤はエイラに質問すると、
「自信作だぞ」
とエイラは胸を張るようにして答えた。
「お前たちには、色々迷惑かけたからな、私からの感謝の印。ありがたく食べろよ〜」
「エイラさんがわざわざ私達のために?」
宮藤は訝しげにエイラを見つめる。エイラはその言葉に少しムッとし、
「嫌なら食べなくたっていいんだぞ」
「え! ううん、食べる食べる」
そう言われて、宮藤は取り上げられないように慌ててサンドイッチが置かれた皿を掴んだ。
「じゃあ・・・いただきます」
「いただきます」
宮藤とリーネは声を揃えてそう言うと、サンドイッチを頬張った。
「うわぁ、美味しい!」
「ねぇ」
「言ったろ、自信作だって」
二人の素直な感想にエイラは満足気な笑みを浮かべる。
「それとサーニャの奴が二人にお礼を言っといてだって、美味しかったって」
「あれ、エイラさんサーニャちゃんと話したの?」
「ん? まぁな」
「それだったら私達も起こしてくれれば良かったのに」
宮藤は少し不満げな顔をする。
「いや・・・二人とも気持ちよく寝てると思ってさ、起こしちゃ悪いかな〜って」
本当はサーニャと二人っきりでいたかったから、とは口が裂けても言えなかった。
それにこうやって朝食を作ったにはお礼の意味もあったが、サーニャが帰ってくるまでの
深夜から朝までの暇な時間を潰すためのものでもあった。
「そうだそうだ、まだ他の奴らも分も作らないと。二人ともこんな面倒なこと、よく毎朝できるよな、本当」
追求を恐れたエイラは、そそくさと厨房へと行こうと背を向けると、
「ああ、あと誰かにどやされる前に電球を片付けとかないとな。それと・・・ありがとな」
そう言い残してエイラは厨房へと戻っていった。

「ねぇ、リーネちゃん」
「ん?」
「一つ聞きたいことがあるんだけど」
「何?」
「フェルナンヌウス祭ってどんなお祭りなの?」
「えっ? え〜と・・・」
エイラのサンドイッチを頬張りながら、宮藤は素朴な疑問をリーネに投げかけた。
「元々はロマーニャのお祭りで、大事な人にお菓子やプレゼントを渡す日だよ」
「へぇ〜、扶桑じゃそんなの無かったからなぁ〜。じゃあさ、お互いにお菓子の送り合いっこしない? 
私が扶桑のお菓子を作るから、リーネちゃんはブリタニアのお菓子で」
「う・・・うん、いいよ」
リーネは少しドギマギしながら答える。
「何作ろうかなぁ〜」
その後二人はお菓子談義で盛り上がった。宮藤は無邪気な顔で、リーネは少し頬を赤らめながら・・・。

Fin

366 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 11:07:13 ID:oz9V6GLE
>>361
大作GJ! テキスト量の多さにビビッタw
後でゆっくり堪能させて貰います。

>>365
GJ! バレンタインネタ良いですな〜。
この後の芳佳とリーネも妄想した。

367 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 19:34:00 ID:MWDtkwY2
さすがエイラ
大量のプレゼントじゃ

368 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 20:20:58 ID:8LGSkx7.
うおお、なんか久しぶりにラッシュ来てる。
自分もなんか投下したいが今なんもねーや。とにかくみんなGJ!

>>360
誕生日SSGJ!私だけがお祝い萌えた。
ところでタイトルは忍ペンまん丸のEDですか?

>>361
赤ズボン隊キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
大作GJ!ガッチガチの戦闘面白かった!
つかこの量と内容を4時間とかで書けるとかあなたナニモンだよw

>>365
この4人の和気あいあいとしてるのって大好きなんだ。
やさしいバレンタイン話をGJ!

369 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 22:14:56 ID:BOTOSz9o
>>365
ぐっじょぶ!この面子ってありがちだけどなかなか見かけないから
見かけると嬉しいです。ありがとうb

>>368
そこまで言っていただけると恐縮です^^;
ほかに溜め込んでるSSが腐るほどあるのに、「あ、そういやこの人たち誰も
書いてないなー、よし書こう」で「んー、こうするかな」「あー、この人は
こうでいっか」とか適当に考えて書いたらこうなりました。勢いがあるうちに
最後まで書ききれるとこうなるんですが、途中で失速しようもんなら次々
マイドキュに溜め込まれていくという……orz
とりあえず一個仕上がったんで、あげる準備でもしてきます。

370 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2010/02/21(日) 22:56:00 ID:BOTOSz9o
というわけで本日二本目ー。やっぱりエイラは関係ないです、ごめんねエイラorz
[時間を結ぶ雨の音]芳佳&トゥルーデです
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/time_rain.txt
今回は500行ちょいなのでいつもどおりです。

371 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 23:45:01 ID:mOZgZ9rM
こんばんは。LWqeWTRGです。
なんというラッシュw

と、早速ですが投下、3レスです。
いろいろと変な… いえ掛け合いの会話しかありませんが、どうぞ。

372 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 23:46:24 ID:mOZgZ9rM
「お誕生日おめでとう、エイラ」

「おお、ありがとうサーニャ〜」
「というわけで今日は1日私の言うこときいてね」
「なんで!?」
「まずは肩揉んで」
「いやいや、ちょっと待って!」
「だめかな?」
「だめだろー!? 私の誕生日なんだぞ?」
「まあまあ」
「まあまあじゃねーよ!」
「ほらほら、揉んで揉んで」
「ったくもー……。今日だけだかんなー!」



「どうだ? 気持ちいいかー?」
「うん、とっても」
「そっか、よかったー」
「じゃあエイラ。次は前をお願い」
「おう、わかったぞ。って前?」
「うん。ほら、ここよ……」
「うわっ! ちょ、ま、おいサーニャ!」
「ん、ちゃんとやって……」
「ちゃんとってここは胸! おかしいって!」
「こう……んっ……動かして……。優しく、ね……?」
「ちが、揉む場所がおかしいって言ってんの!」
「んっ…あ…。そう…もっと…」
「自分で動かすなー!」
「まったくもう…エイラのばか……」
「なんで私が怒られてるの!?」
「たまにはいいじゃない」
「怒られるのが!?」
「ほら、手が止まってる。続けて」
「お、おう……。ってダメー!」

373 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 23:47:41 ID:mOZgZ9rM
「はぁ……」
「まったく…。どうして急にこんなこと言いだしたんだ?」
「それは…、ほら、誕生日だし」
「あんまり関係ないじゃんかー」
「エイラを独り占めしたくて……」
「ううっ、そう…だったのか……」
「ごめんなさい……」
「サーニャ……」
「ごめん…なさい……」
「い、いいって! 気にすんな! ほら、次のお願いはなんだ?」

「ほんと? じゃあ続きお願い」

「って遠慮なしかああああああああ!」
「気持ちよくさせてね……?」
「もっと踏み込んだああああああああ!」

374 名前:名無しさん:2010/02/21(日) 23:49:16 ID:mOZgZ9rM
「ちぇ……」
「まったく……。サーニャってば……」
「……」
「そんな目で見てもダメ! まだ私の心の準備ってものがダナ………」
「だったら…」
「まだあるのか? へ、変なお願いはダメだかんな……」
「もう大丈夫よ……。えっと――」

「ずっと、私のそばにいてください……」

「サーニャ……。あ、当たり前だっ…! 私がサーニャをおいてどっか行くわけないだろ!」
「エイラ……。ありがとう」
「へへ……」
「そして…はい、誕生日プレゼント」
「ありがとうサーニャ…。ってこれ……!」

「大好きよ、エイラ」

「……」
「エイラが好き……」
「……わ、私だってサーニャが好きなんだぞ!」
「エイラ……」
「だ、大好きなんだからな!」
「うん…」
「ずっと、一緒なんだからな!」
「うん…!」



END

――――――――
以上です。
エイラさん誕生日おめでとう!
タイトルは「お願いハニー」です。

…投下しといてなんだけどほとんど誕生日関係なゲフンゲフン……。

それでは失礼します。

375 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/21(日) 23:55:41 ID:dLWjgR/E
>>361>>370 Laevatein ◆nc1Kth5AW6様
GJ! 大作2本投下凄いです! 質も量も半端ないです!
戦闘がリアルでナイス。特に撤退戦はプライベート・ライアンやBHDを思い出してもうたw

>>365 DXUGy60M様
バレンタインSSGJ!
文章から滲み出る雰囲気に和みました。

>>368
タイトルは……そのものズバリなのが幾つか有りますので(ry
とお茶を濁してみるw

>>374 LWqeWTRG様
誕生日SSGJ!
これは良いエイラーニャ! すんごいニヤニヤさせて頂きました。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日〜、エイラの誕生日祝い!
と言う事でもうひとつ、急遽書いてみました。
時間、ギリギリ間に合ったか? ではどうぞ。

376 名前:payback 01/03:2010/02/21(日) 23:56:09 ID:dLWjgR/E
 “ロンドンのスオムス空軍連絡所に用事アリ”と言う名目、更にその“ついで”とばかり
501滑走路に降り立ったウィッチがひとり。そのまま誘導され、ハンガーへと向かった。
「いよっ、イッル。久しぶり」
 やって来た彼女の名はニッカ・エドワーディン・カタヤイネン。
 スオムス空軍のエース部隊、飛行24戦隊に所属しておりエイラとは同僚の仲である。
 しかし出迎えたエイラは久々の再会を喜びもせず、むしろうんざりした表情をしていた。
「何でニパがここに来るんだよ……ストライカー壊すなよ」
「いきなりひっでえなあ。今日イッルの誕生日だから、遠くスオムスから飛んで来たんだぞ。感謝しろよ?」
「押しかけて来て感謝も何もあるかよ……」
「さてと」
 ニッカはハンガーの格納装置にストライカーを置くと、よいしょと脱ぎ、バッグから靴を出して履いた。
「今夜はよろしく」
「はあ? 何が宜しくだよ?」
「あれ聞いてないのか? 私今日ここで一泊する予定なんだけど」
「帰れ」
「ひでえ! イッルひでえ! 補給も休憩も無しにスオムスまで蜻蛉返りしろってのかよ」
「いいから帰れ。とにかく帰れ」
「なんでだよ。正式な滞在許可書も有るんだぞ。そうだ、501(ここ)の隊長さんは何処? ヴィルケ中佐だっけ?」
「ミーナ中佐なら、さっき用事でロンドンに行ったぞ」
「えーっ? 入れ違い?」
「ホント、ついてないよな」
 にやけるエイラ。ニッカは手にした許可書をポケットにしまうと、バッグを肩に掛け、歩き始めた。
「どこ行くんだよニパ」
「隊のエライ人のとこ。隊長さんの代理の人、居るだろ?」
「まあ、居るけど」
「同僚のよしみで案内しろよ」
「はあ……」

「ほほう、わざわざスオムスからとは、ご苦労ご苦労」
 許可書を手に取りうんうんと頷く美緒。ミーナが居ない間、501を預かる身だ。
「まあ、ミーナは今居ないが滞在には問題無いだろう、ゆっくりして行くと良い」
 美緒は手渡された書類、司令所等から届く書面等に目を通していく。
「ふむ……ちょうど北方は現在悪天候らしい。だが明日には回復するそうだ。ちょうど良かったな」
「やった! 私ついてる!」
 はしゃぐニッカ、幻滅するエイラ。
「そうだエイラ。彼女は同僚なんだろう? 基地施設の案内等はお前に頼んだぞ」
 美緒はエイラに告げた。
「は、はい……」
「どうもお邪魔しました! じゃあ私達はこれで」
 ニッカは嬉しそうにエイラの腕を引っ張り執務室から出て行った。
 同席し、一部始終を見ていたトゥルーデとエーリカ。
 トゥルーデは、うーんと言う表情を作り、一方のエーリカは、ニヤニヤしている。
「仲が良いのか分からないな、あれは……」
「後で面白くなりそうだよ、トゥルーデ」
「エーリカ、また何か企んでるな?」
「とんでもな〜い」

377 名前:payback 02/03:2010/02/21(日) 23:56:28 ID:dLWjgR/E
 午後のお茶会。
 訓練を挟んでの休憩と言う事で、生憎の所用で不在のミーナ、夜間哨戒開けで就寝中のサーニャ以外
501の全員が揃った。但し天気が良くないのでミーティングルームでのお茶会となったが。
 そこで目を引いたのが、お皿に並べられた、大小さまざまな形の焼き菓子、プレッツェルだ。
「ほほう。随分と種類があるな」
「たまにはどうかと思って、色々取り寄せたんです」
 リーネが微笑む。
「カールスラントのも有るじゃないか」
 トゥルーデが円形のプレッツェルを手に取り、微笑む。しかし横に置かれた、直線状の固い棒状の物体を見て首を捻った。
「……この細長い棒は何だ」
「知らないのかい。これもプレッツェルだよ。あたしの国のだよ」
 シャーリーが慣れた手つきで一本つまみ、ぱきっと噛み砕いて食べた。
「棒と言うのも何だかリベリアンらしいな。単純で」
「シンプルで食べやすいと言って欲しいねー。あたしの国じゃこれが普通なんだ。
そんなねじれた輪っかみたいなのこそ食べにくそうじゃないか。喉に詰まるぞ」
「何を? これには神聖な理由が有ってだな……」
「はいはい二人とも、ストップ〜」
「ストップストップ〜」
 いがみあうトゥルーデとシャーリーの間に割って入るエーリカとルッキーニ。
「ウシュシュ ねえねえシャーリー、あたし面白い事思い付いた」
「なに? どうしたルッ……うぐっ」
 言いかけたシャーリーの口にプレッツェルの端を押し込む。
「もごご……」
「ニヒヒ 二人して、端っこから食べてくの。折れたり離したら負け〜」
 そう言うとルッキーニは端をくわえ、カリカリと食べ始めた。事情を察したシャーリーも負けじとポリポリと食べる。
 突然の出来事、そして展開に唖然とし、そして固唾を呑んで見守る一同。
「な、なんだこれ……こんな事501の連中はフツーにやってんのか、イッル?」
 ニッカはエイラの服の袖を掴んだまま、呆気に取られた。
「まあ、普通だな。こんなのまだ可愛い方だって」
「す、すげえな、501って……あ」
「?」
 もう少しで唇が触れ合う……、と言う所で、急いだルッキーニがプレッツェルを折ってしまった。
「あーん、おしい。もうちょっとだったのにぃー」
「ルッキーニ急ぎ過ぎなんだって」
「お、お前ら何を……、人前で破廉恥な事を!」
 わなわなと怒るトゥルーデ。そんな彼女の肩をエーリカがぽんと叩いた。
「トゥルーデ、私達もやってみようよ」
「な、何ぃ!? 本気かエーリカ?」
「ねえ芳佳ちゃん、やろう?」
「え? リーネちゃん、私達もやるの? ちょっと、恥ずかしい……でもやりたい」
「全く、揃いも揃って何なんですの一体……坂本少佐、あの、宜しければ」
「?? 何の話だペリーヌ?」
 にわかに盛り上がる501の面々。エイラはそんな隊員達を眺めていたが、不意に大声を出した。
「よーし皆見てくれ! 私とニパの、スオムスコンビの息の合った連係プレー!」
「えっ!? えっ? 何で? 何で私とイッルが!?」
「良いからニパ、早くくわえろよ。ここで場を盛り上げないでどうするんだよ」
「そうは言っても……」
「ほほう。ニパ度胸無いのか?」
 エイラの挑発にカチンと来たのか、ニッカはばっと向き合い、プレッツェルの端をくわえた。
「来いよイッル。どっちが度胸無しか、はっきりさせようじゃないか」
 詰まりながらもエイラに向かう。
「よーし。皆見てろよ!」
 エイラもプレッツェルをくわえた。
 ゆっくり、カリコリカリコリと慎重にプレッツェルを食べていく。
 静まりかえる一同。
 距離が一ミリ、また一ミリと縮まる。
(イッルの顔が近くに来る……)
 ニッカはイッルに接近し、段々と、その事で頭が沸騰し始めた。最初の威勢の良さは既に無い。
 ニッカは少年ぽい容姿で髪も短め。長い髪のエイラとは正反対だが、二人が近付く事により、
その“インモラル”さが際立ってくる。ニッカ自身もその事は自覚しているらしく、
近付く距離に比例して頬がどんどん紅くなる。
(イッルが……イッルが……)
 耐えきれなくなりニッカは目を閉じた。また少しかじる。
 カリッ。
 ニッカの唇に柔らかいものが触れた。
「!!!」
 目を開けると、寸前の所でピースサインを作ってプレッツェルの真ん中を「真剣白刃取り」の如くつまみ、
そしてニッカの唇を器用に指先でつんつんつつき、ニヤニヤしているエイラが見えた。
 ばきっ。
 プレッツェルは見事に砕けた。
「イッルの馬鹿ーッ!」
 本気で怒り叫ぶニッカ、笑い転げるエイラ、つられて爆笑する一同。
 “プレッツェル遊び”は、その後も散発的に続いた。

378 名前:payback 03/03:2010/02/21(日) 23:57:16 ID:dLWjgR/E
 翌日、ニッカが帰った後。
 いつもの様にサーニャと一緒に昼寝をしていたエイラは、ふと、両腕が言う事を聞かなくなった事に気付く。
「何だこりゃ?」
 寝惚け眼で自分の腕を見る。いつされたのか、手錠が掛けられている。
「ええっ? 何コレ?」
「エイラ」
「うわ、サーニャ?」
 一緒に寝ていた筈のサーニャが覚醒して、エイラを膝枕している。
「こ、この手錠、どうしたのかな?」
「拘束してみた」
「どうして?」
「理由、分からない?」
「いや、理由とかそう言う以前に、意味が分からないんだけど……」
「そう」
「サーニャ、怒ってる?」
「そう見える?」
「見える」
 サーニャはエイラを見下ろすと、いつ何処で用意したのか、棒のプレッツェルを取り出し、
エイラに無理矢理端をくわえさせた。
「ちょ、ちょっと……」
「私も、遊んで良いよね?」
「ちょ! 何処でこの事を? 誰から?」
「エイラは知らなくて良いの。私も昨日の事は知らなかったけど、知ったから」
「さ、サーニャぁ……」
「私も、遊んで良いよね?」
 繰り返すサーニャ。
 サーニャはエイラの顔をがっしりと両手で押さえつけ、プレッツェルをかりかりと食べ、そのままキスをした。
 ごくり、と唾とプレッツェルを飲み込むと、何か言いかけたエイラの唇を奪った。」
 息を付かせる暇も無く、キスを繰り返す。苦しみ荒く息をつくエイラに、またもプレッツェルをちらつかせる。
「サーニャ……ちょっと……」
「エイラ」
 サーニャは微笑むと、続きをゆっくりと、じっくりと楽しんだ。

end

----

以上です。犯人はエーリカ(何

とにかく早い話がポッ○ーゲーム! 的なものをやろうかと。
……てかこのネタのSS有りましたっけ?(;・ω・)
ネタかぶってたらごめんなさい。
あとプレッツェルの歴史とか調べたんですけど
いまいち分からなかったのでその辺は適当に。
エイラとサーニャが鉄板なら、エイラとニッカもたまにはアリかな、なんて。
まあ最後はサーニャが持って行くんですけども。

ではまた〜。

379 名前:名無しさん:2010/02/22(月) 13:08:06 ID:UUxL/gWc
1日に2本とは……
さすが神速…GJです!
ニパイッルもいいですよね〜。でもやっぱりサーニャさん強い…w

380 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2010/02/22(月) 13:48:31 ID:oOeDcGEY
ふう、三本目できた。

[我レ、速度ヲ求メタリ]ゲルトルート&エーリカ&シャーリーで。
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/n4s.txt
タイトルで何か分かる人はきっとスピードマニアw
かなりコアな内容なのでいつにもまして読む人を選びます。あと
時間がないので(この後出かける用事がある><)切り忘れましたが、
1000行超ありますので読むときはどっしり構えてくださいw

381 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2010/02/22(月) 13:49:36 ID:oOeDcGEY
連投失礼、書き忘れました。
仕上げてからほとんど読み直してないので、何か疑問な表現とか
これ間違ってるよとかあったら指摘してください、直します。

ではー。

382 名前:名無しさん:2010/02/22(月) 16:08:23 ID:IbJRBfm2
>>381
TOKYO DRIFTワロタw GJ!

383 名前:Laevatein ◆nc1Kth5AW6:2010/02/23(火) 03:11:09 ID:UGrlAiOg
あー、くそ。更新までに間に合わなかったかw
四本連続といきたかったんだけど、ちょっと無理だったw
折角エイラ誕生日だし、誕生日ネタじゃないけど、書き途中だった
エイラネタ完成させました。

[If.<イフ> -ジ・アナザー・ストーリーズ- CASE 06:"OASIS"]
ttp://sky.geocities.jp/tsuki_no_tomo_sibi/swss/if_CASE6.txt

エイラ&エーリカ、エイラ&マルセイユ&圭子です。
後半はちょっと疲れてきちゃったのでダレ気味です。もしかしたら
後日修正するかも。夜遅くなってから書き始めたので体力尽きた……w
850行なので普段よりちょい長め……っていうか、むしろこれぐらいが
デフォルトになりつつあるなぁ、俺。

384 名前:名無しさん:2010/02/24(水) 18:31:18 ID:utxt2NmQ
ペリーヌとエイラの誕生日って結構近いな、と思いちょっと書いてみた。
二人が出会った頃のお話。お気に召すと幸い。

http://www1.axfc.net/uploader/He/so/266233

結構長いです。初投稿なのでなにかまずいことをやらかしているかもしれませんが、
ご指摘、ご感想お待ちしております。

385 名前:名無しさん:2010/02/24(水) 18:33:05 ID:utxt2NmQ
直リンになっとるやん すいません

386 名前:名無しさん:2010/02/24(水) 19:08:00 ID:utxt2NmQ
あ PASSはSWです。なんども申し訳ない

387 名前:名無しさん:2010/02/24(水) 23:45:41 ID:FQcwq7HM
>>386
結構長いってことで落ち着いて読んでみたけど、なんというかまあ……
言葉にできんなあ。読み終わってから思わずいい話だなーってつぶやいたw
この発想はなかった。ほんとにGJ、というか心の温まるSSをありがとうb
初投稿ということだけど、SS自体はどれぐらい前から書かれてるんで?
もっといろいろ読ませていただきたい、wktkしながら待ってるw

こういうの読むと余計にアニメ本編のペリーヌのウザキャラっぷりが
目に余る……もうちょっといいキャラに描こうとは思わなかったんかね、スタッフはw

388 名前:名無しさん:2010/02/25(木) 00:42:04 ID:n.6XQ47s
>>386
なんというか……圧倒されました。
ペリーヌとエイラの心理描写がものすごく丁寧で綺麗ですよね。
きっとこれまでにたくさん書いてこられたんだろうなという印象です。
次回作、今から楽しみにしてます!GJ!

>>387
まぁ、ペリーヌに限らず、本編だけではどのキャラも描ききれないところばっかりだったような……。
自分はその分、二期に期待してるんですが。

それと、二次創作をきっかけにして固まっていったキャラのイメージも結構多い気が。

389 名前:名無しさん:2010/02/25(木) 01:04:48 ID:b90Qophk
>それと、二次創作をきっかけにして固まっていったキャラのイメージも結構多い気が。

お姉ちゃんなんてその典型だよなぁ。

390 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/25(木) 22:49:59 ID:/566/5uo
>>380>>383 Laevatein ◆nc1Kth5AW6様
大作連投GJ! TOKYO DRIFTと言い、ネタの引き出し多いですねー!
何はともあれ、いやはや凄いとしか。

>>386
GJ! 丁寧な描写がお見事です!
着眼点も文章もステキ過ぎます。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
おやつ食べてて思い付いたネタをひとつ。

391 名前:sweet doughnut 01/02:2010/02/25(木) 22:50:24 ID:/566/5uo
 501基地の庭。木立が生い茂るその隅に、海が見えるポイントが有る。
 基地の細部に詳しいルッキーニは勿論、時たま隊員達がそれとなく訪れ、
海の青さ、海風の爽快感と木漏れ日の温かさを同時に、静かに味わう。
 今日はその場所に芳佳とリーネが居た。大きな木の下に座り、海を眺めた。
「ちょっと、肌寒いね」
「そうだね」
 リーネは頷くと、脇に置いていた包みの中から丁寧に編まれたマフラーを出した。
「これ、リーネちゃんが?」
「うん。でも、失敗しちゃったの」
 芳佳はマフラーを手に取った。何処も破けていないし、編み目も細かく正確だ。
「失敗した様には見えないけど……」
「ええっと」
 リーネは苦笑いしてマフラーの“続き”を芳佳に見せた。
「な、長いね……」
 芳佳はマフラーを広げて、言葉に困った。リーネも苦笑してマフラーの端を持った。
「うん。一生懸命作ってるうちに、長さの調節忘れちゃって……こんなに長く。お姉ちゃんから糸送って貰って、
頑張ってたんだけど……」
「大丈夫だよ、リーネちゃん」
 芳佳は自分にぐるりと一回りさせると、そのままリーネの肩、首に回し、ひとつで二人分のマフラーとした。
「ほら。こうするとちょうど長さもぴったり」
「芳佳ちゃん」
「リーネちゃん、これ切ったりするの勿体ないから、これからはこうやって使おう?」
 笑顔の芳佳。リーネは顔を赤らめる。
「芳佳ちゃん、それって……」
「?」
「私と、ずっと一緒に居てくれるって事?」
「やだなぁリーネちゃん、何言ってるの」
「え」
 一瞬リーネの顔色が変わる。
「聞くまでも無い事だよ。今までもず〜っと一緒だったんだし、これからも一緒だよ」
「そ、そう言う意味……」
 ほっとするリーネ。
「私、何かヘンな事言った?」
「ううん、全然」
 リーネはちょっと恥じらいと苛立ちが混じった表情を作った。
「ゴメンね、リーネちゃん。私、あんまりこう言う事、うまく言えないから」
「良いの。気にしないで」
 慌てて芳佳をフォローするリーネ。顔を見合わせて、二人はふっと笑いあった。
 南から優しく流れてくる海風は少し冷たいが頬に心地よく、木々の中を抜けてくる木漏れ日は
優しく二人を照らし、包み込む。
 二人は肩を寄せ合い、海を眺めた。この海原を隔てた場所で激戦が行われているなど信じがたい程海面は穏やかで、
飛んでいる海鳥が豆粒の様に小さく見える。
「暖かいよ、このマフラー」
 不意に芳佳は呟いて、マフラーをさすった。そのままリーネにもたれ掛かった。
「芳佳ちゃん」
「ありがとう、リーネちゃん」
 リーネは芳佳の名を呼んだ。芳佳もリーネに微笑みかけた。
「マフラー暖かいから、とっても幸せ。リーネちゃんの気持ちと同じだね」
「えっ? そんな事……」
 二人は肩を寄せ合ったまま、お互いを見つめた。そのまま距離を縮め、ゼロに。
 二人の影が交錯する。
 唇を重ね合わせた二人は、マフラーの温もりと一緒に、お互いの身体の温かさを感じた。
 芳佳とリーネは、そのままゆるく抱き合ったまま、温もりを共有した。

392 名前:sweet doughnut 02/02:2010/02/25(木) 22:50:50 ID:/566/5uo
 暫くゆっくりした後、リーネはもうひとつの包みを取り出した。
「これも、リーネちゃんが?」
「うん。本当は午後のお茶会に出すつもりだったんだけど……失敗しちゃって」
 リーネが包みを開くと、そこにはまん丸にかたどられたドーナツが幾つか出て来た。
「失敗? そうは見えないけど」
 芳佳は早速口にした。
「……別に全然大丈夫だけどな。ちょっと甘さ多め?」
「うん。お砂糖多く入れ過ぎちゃって」
「これ位全然大丈夫だよ〜。私だったら気にせず食べちゃうよ」
「でも」
「じゃあ、これ私が全部食べる。せっかくリーネちゃんが作ったドーナツだもん」
「芳佳ちゃん」
「これも、リーネちゃんの心がこもってるんだよね」
 芳佳は笑顔でドーナツを頬張った。
 からりと揚げられたドーナツは生地もふんわりして、油もしつこくない。
 リーネもひとつドーナツを手に取り、一口食べてみた。芳佳の言う通り、それ程でもないかも……と思い直す。
「美味しいよ、リーネちゃん」
 芳佳は笑った。
「ありがとう、芳佳ちゃん。今度はもっと美味しく作るから」
「このドーナツも美味しいんだけどなぁ」
「でも、リベンジさせて?」
「じゃあ、作ったら、一番最初に私が味見するよ。約束」
「うん。約束」
 二人は指を絡ませ、頷いた。
 お互いの距離がまた近付いたのを切欠に、二人は再びキスを交わした。
「なんか、幸せ」
「私も」
 芳佳とリーネは、肩を寄せ合い、微笑んだ。
 二人の首に巻かれた一本のマフラーは緩やかな円を描き、まるで二人を包むドーナツのよう。
 二人だけの時間、二人だけの休息。

end

----

以上です。
急いで書いたのでかなり描写がテキトーですが
雰囲気だけでも。

ではまた〜。

393 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/26(金) 00:00:36 ID:fYbeo002
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
>>391-392「sweet doughnut」の続き? を思い付いて
ざざっと書いてみました。
例の如く保管庫No.0450「ring」続編扱いと言う事で宜しくです。
ではどうぞ。

394 名前:sweetheart, good night 01/02:2010/02/26(金) 00:01:05 ID:fYbeo002
「何だお前達、その格好は」
 芳佳とリーネの姿を見た美緒は溜め息を付いた。
 お揃いのマフラー……と言うより長い一本のマフラーを二人で巻いて使っている。
「マフラー長く作っちゃったので、こうして二人でひとつ……」
「いざという時迅速に動けるのか? たるんどる」
 マフラーを両断するつもりか、扶桑刀に手を掛ける美緒。
「す、すいませんっ!」
「坂本さん、お願いですから斬るのだけは止めて下さい!」
「そうよ少佐。そこまでする必要は無いわ」
 背後からミーナの声が聞こえた。美緒は扶桑刀を肩に掛け直すと、溜め息を付いた。
「しかしなミーナ。いつネウロイが来るとも分からんのだぞ」
「いつもそうされるとちょっと困るけど……非番の時とか、休暇の時位は良いんじゃない?」
 ミーナに諭され、美緒もうーむと唸り、芳佳とリーネを見た。
「まあ、ミーナが言うなら」
「少し位気分転換しても良いと思うわ。ねえ、トゥルーデ?」
 ミーナの後ろからやって来たトゥルーデとエーリカは、揃って頷いた。何故かトゥルーデの顔が赤い。
「ま、まあ……マフラー位なら良いんじゃないか。すぐ脱げるし」
「バルクホルンもそう思うのか。……なら、良いか」
 あっさりと納得した美緒は、改めて芳佳とリーネを見た。芳佳の顔が緩んでいる。
「こら宮藤。認められたからと言って気分まで緩んでどうする!」
「は、はひっ! すいません」
「仮にもここは最前線だ。羽目を外しすぎぬ様にな」
 それだけ言うと、美緒は立ち去った。
「宮藤さん、リーネさん。少佐の言う通り、あんまりだらけちゃダメよ?」
 ミーナは笑顔で二人に言うと、マフラーにそっと手を掛けた。
「あら、随分綺麗に織り込んでるわね。暖かそうで素敵ね。これはリーネさんが?」
「は、はい! 姉から糸を送ってもらったので、作りました」
「そう。今度また糸を貰ったら私にも少し分けてくれないかしら? 私も少し作ってみようかしら」
「はい、喜んで!」
「宮藤もリーネも、もう少し時と場所と場合を考えてだな……」
 トゥルーデの説教が始まるかと思いきや、エーリカにくいくいと腕を引っ張られ、言葉が詰まる。顔が真っ赤になる。
「? バルクホルンさん、どうかしました?」
「いや、何でもない。何でも無いんだ」
 トゥルーデはそう言うと、皆から見られぬ様、腕を後ろに回した。その分エーリカの腕が引っ張られる。
「全く、この子達は……」
 ミーナは苦笑して、書類を小脇に抱えると執務室へと向かった。
「さて、私達も戻るか、エーリカ」
「顔真っ赤だよトゥルーデ」
「あ、あのなあ……」
「?」
「じゃ、私達はこれで〜」
 エーリカはトゥルーデを引っ張って部屋に戻った。
 そこで芳佳とリーネは、トゥルーデとエーリカの腕が何かで固定? されている事に気付く。
「バルクホルンさんとハルトマンさん、どうしたんだろうね」
「何だろうね……」
 首を傾げる芳佳とリーネ。

395 名前:sweetheart, good night 02/02:2010/02/26(金) 00:01:25 ID:fYbeo002
 部屋の扉を閉め、鍵を掛ける。その動作を終え、ゆっくりとエーリカに向き直った。
「エーリカ」
「トゥルーデ」
 とりあえず軽く挨拶代わりのキスをした後、トゥルーデは腕をぐいと引っ張った。釣られてエーリカの腕も上がる。
「あの二人の前で、これは無いだろう」
 トゥルーデとエーリカの腕をしっかりと繋ぐ、手錠。がっちりと二人を繋ぎ、外れそうもない。
「たまにはこう言うのも面白いよね」
「だから……」
「首輪よりは良いと思うけど」
「当たり前だ! 皆に示しが付かない」
「でもトゥルーデ、必死に隠そうとしてたけどバレバレだよ」
「……ーっ!」
「大丈夫、鍵なら持ってるし、いざという時はトゥルーデの怪力で何とかなるでしょ」
「そう言う問題じゃない! それこそ少佐に斬られるぞ」
「じゃあ今度ミーナと少佐を手錠で……」
「上官を拘束するつもりか、エーリカ」
「まあまあ」
 エーリカは迫ってきたトゥルーデを逆に抱きしめると、口止めとばかりにキスをした。
 流石に拒めず、ゆっくりと、柔らかな唇の感触を確かめる。
「ねえ、トゥルーデ」
「何だ、エーリカ」
「今日は私達非番でしょ?」
「そうだが」
「なら、良いよね」
 それだけ言うと、エーリカはトゥルーデを抱きしめたままベッドにダイブした。
「エーリカ……」
「トゥルーデ見てたら、何かこうしたくなった」
「あのなあ」
「じゃあ、トゥルーデは?」
 問われ、口ごもったトゥルーデは、ぷいと横を向き、ぽつりと呟いた。
「まあ……、私も、ちょっと、したい」
「ちょっと? ちょっとだけなの?」
「いや……そんな事は」
「トゥルーデってば」
 エーリカは笑った。その笑みには艶が有り……トゥルーデの理性をくらくらと惑わせる。
「時間もたっぷり有るし……ねえ、トゥルーデ?」
 エーリカはトゥルーデの服のボタンを少し外し、首筋に唇を這わせた。
 トゥルーデから甘い声が漏れる。負けじとエーリカの服を半分脱がせ、同じ事をし返す。
 ふたりはそのまま、時が経つのも忘れ、愛する行為に没頭した。

 ぐちゃぐちゃに乱れた服のまま、手錠も外さずに、トゥルーデはベッドに横になり、同じ様相のエーリカを抱いた。
 ふと外を見る。いつしか陽は沈み、夜の帳の中にあった。
 窓越しに、星空をじっと見つめるトゥルーデ。
 幾つもの戦いの中、たまに夜空を見上げ、星の瞬きを眺める事が有る。
 だが、その行為でいつも心安らぐ訳ではない。かつての激戦の夜を思い出し、心掻き乱される時も有る。
「トゥルーデ、眠れないの?」
 エーリカがトゥルーデを緩く抱いて、囁いた。
「星空を、見てた」
「星って綺麗だよね〜」
「ああ」
「トゥルーデ、余計な事考えちゃダメだよ。星空は星空、それ以上でも何でも無いよ」
「ああ、分かってる。分かってはいるさ」
「そう言えば、今日は晩ご飯食べ損ねちゃったね。後で夜食食べに食堂か厨房にでも行く?」
「いや……今日は良い。このまま寝よう」
「良いよ、トゥルーデ。一緒に寝よ」
「ああ。すまない、エーリカ」
「ベッドに押し倒したの私だもん。それにトゥルーデさえ居れば」
「有り難う」
「おやすみ、トゥルーデ」
 エーリカはトゥルーデにキスをした。お休みのキスのつもりが、ぐっと深く濃いものに変わる。
 はあ、と息を付く。熱い吐息がお互いの頬を撫でる。
「眠れないかな、これじゃ」
 笑うエーリカ。
「いや、眠れるさ。きっと」
 トゥルーデはそう言うと、もう一度キスを求めた。エーリカは指を絡ませ、そのままトゥルーデと身体を、唇を重ねた。

end

396 名前:名無しさん:2010/02/26(金) 00:01:51 ID:fYbeo002
以上です。
芳佳とリーネがマフラーなら、トゥルーデとエーリカは手錠!(酷
と安直に考えて書いてみました。
でもこう言うシチュもたまには良いかな〜とか思ったり。

ではまた〜。

397 名前:名無しさん:2010/02/27(土) 23:02:18 ID:EpaCYjd2
>>391-395
GJ!リーネちゃんには次は手袋を編んでいただきたい
エーリカは何を持ち出すことやらw

398 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/02/28(日) 00:01:22 ID:SPm1LBGM
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日〜と言う事でひとつ、
書いてみました。
>>350「heartbeat」の続き、と言う事でよしなに。
ではどうぞ。

399 名前:remember me 01/02:2010/02/28(日) 00:01:57 ID:SPm1LBGM
 ペリーヌの部屋。
 音もなく扉が開かれ、忍び寄る人影。
 そのひとは、ベッドの上ですやすやと眠るガリアの少女を見つめ、微笑んだ。
 そっと手を当て、唇を奪う。
 尋常ならざる“感触”に目覚めたペリーヌは、眼前僅か数ミリのところに、かのひとの姿をみとめ、驚いて飛び起きた。
「ハイディ!」
「おはよう、ペリーヌ」
「ちょ、ちょっと、貴方一体どうして! いつ501(ここ)に?」
「ついさっき」
 悪戯っぽく笑うハイデマリー。
「さっきって、貴方……教えてくれれば迎えに行ったのに」
「それじゃあつまらないじゃない」
 ハイデマリーは肩に掛けた鞄からワインを一本取り出した。
「私があげられるのはワインくらいしか無いけど」
「い、頂きますわ」
 まだ501の隊員の殆どは起きてもいない時間帯だ。薄明かりがもうすぐ差すかと言う微妙なとき。
 ペリーヌはいとしの人を前に、覚醒した。

 執務室に通され、トゥルーデ達の横のソファーに座るハイデマリー。横にはペリーヌも居る。
「で、今回は何の用事なんだ、シュナウファー」
「そうですね、用事と言えば用事。ヴィルケ中佐にお渡ししたかった書類が幾つか」
「郵送でも良かったんじゃないの?」
「すぐに届けたかったし、私が飛ぶ方が確実」
 トゥルーデとエーリカから問われ、あっけらかんと答えるハイデマリー。
「わざわざご苦労様」
 ミーナの労いの言葉に、笑顔で返すハイデマリー。
「自ら郵便配達人とはな。いつ転職したんだシュナウファー」
「良いじゃないですか、たまには」
「ま、それだけじゃなさそうだけどね〜」
 エーリカがにやける。ハイデマリーも笑う。
「まあ何だ、ストライカーの整備も有るだろうし、今日明日はここに滞在するんだろう? ゆっくりしていけ」
 ミーナの横に立つ美緒が声を掛ける。
「有り難うございます」
「同じウィッチ同士だ、遠慮なんかするな」
「そうだぞ、少佐の言う通りだ。なあ、ミーナ?」
「そうね。ゆっくりしていってね」
「ごゆっくり〜」
「皆さん、お気遣い有難うございます。では、これで」
 ハイデマリーはそう言うと、席を立ち、ペリーヌの腕を取った。
「好きにするがいいさ」
 言葉とは裏腹に、珍しく肯定的なトゥルーデ。
「あら、バルクホルン達だって好きにやってるそうじゃないですか。カールスラント空軍のウィッチの間でも随分噂になってるけど?」
 言葉を返すハイデマリー。
「他人の言う事なんか気にしな〜い」
 茶化すエーリカ。
「ま、まあ、そうだな」
 咳混じりに、珍しく同意するトゥルーデ。少し顔が紅い。
「じゃあ、遠慮なく」
 そのままペリーヌを引きずって、ハイデマリーは去っていった。
「しかし……あいつ、何時からあんなに積極的になったんだ?」
「さあ」

400 名前:remember me 02/02:2010/02/28(日) 00:03:02 ID:SPm1LBGM
「お誕生日おめでとう」
 ペリーヌと目が合い、微笑む。
「有り難う。でもどうしてわたくしの誕生日を?」
「この前ヴィルケ中佐に聞いたの」
「わざわざ?」
「勿論」
「それで、わたくしの誕生日の為に、501(ここ)まで?」
「勿論」
「それは、わたくしを想ってくれての事、と解釈して宜しいのかしら」
「勿論」
「と言う事は……。この前の、その、ラジオを……、聴いたとか? きちんと聞こえていれば良かったのだけど」
「当然」
 くすっと笑うハイデマリー。ワインのコルクを抜き、とぽとぽとワインをグラスに注ぐ。
「午後のお茶会で、貴方のお祝いをするみたいよ」
「あ、あら。そう」
「でも、私はそれよりも先に、貴方を祝いたい」
「有り難う。でも、朝から酔わせてどうするつもり?」
「知ってるくせに」
 ふふ、と笑うハイデマリー。苦笑せざるを得ないペリーヌ。
 二人して静かに乾杯し、飲み干すワインが心にしみる。
「美味しい」
「良かった、気に入って貰えて」
「貴方の選ぶワインですもの。外れなんて無いに決まってますわ」
「それ、プレッシャー?」
「そう言う意味では……」
 ペリーヌの軽い戸惑いを見てくすっと笑い、ワインをきゅっと飲み干す。
「良かった、今日ここに来られて」
「わたくしも、まさか……」
「忘れて欲しくないから」
「忘れる筈など、有りませんわ」
「そう言ってくれると、嬉しい」
 そっと抱きしめる。服を通してほのかに温もりが伝わる。
「ずっとこうしていたい」
「わたくしも」
「でも、そう言う訳にもいかない」
「だけど」
「そうね。せめて、ひとときでも」
 それっきり言葉を交わさず、お互いを感じ、存在を確かめる。
 二人はそれだけで十分だった。
 静かに流れるときも、今はゆっくりと、じっくりと、二人を優しく包む。

end


ペリーヌ誕生日おめ!
無難にもっさんやアメリーがお相手でも良かったんですが……
ハイデマリーと一緒ってのも良いかなとか思ったり。

そしてこれで遂に、私的に501主要キャラの誕生日お祝いSS制覇?
若干被ってますが、ひとつの区切りって事で……いやー長かった。
まあ、どうでも良い事ですけどねw;

ではまた〜。

401 名前:名無しさん:2010/02/28(日) 22:32:14 ID:pDi5STsc
久しぶりの良作ラッシュで読むのが追いつかないくらいです。
久々だな、この感じ。月並みだけど皆さんGJ!

こんな流れの中ではすごく恥ずかしいんですけども、
誕生日ということでペリーヌ×ハイデマリーを投下します。
しかも、恐れ多くもmxTTnzhmさんリスペクト作です。すいません。
時系列としては「remember me」の少し後です。

2レスお借りします。

402 名前:"Relay Station" 1/2 @6Qn3fxtl:2010/02/28(日) 22:34:18 ID:pDi5STsc
それは朝食を終えた私が、自室に戻ろうと長い廊下を歩いている途中のことだった。
「……ーヌさん、ペリーヌさん」
どこかから何かが聞こえる。
その声があまりにも透き通っていてはかなげだったから、
まさかそれが私を呼び止めようとしている声だなんて思いもよらなかった。
「ペリーヌさん」
その人が少し――それでも消え入りそうなのにはかわりがないけれど――
語気を強めて呼び止めてくれたおかげで、ようやく私も自分が
とても意外な人から呼び止められていることに気がついた。
「……サーニャさん?」
「あの……」
「何か御用?」

なぜだか、思わず身構えてしまう。
自分が幽霊のようだと言ってしまった相手だからということもあるが、
実のところ、私はこのオラーシャの魔女が苦手なのだ。
本物の幽霊のように、いるのかいないのか、何を考えているのかよくわからないところが。
そんな私の気配に押されてか、相手の声はますます小さくなる。
「……あの……今夜の……」
「話があるのなら、はっきりと言ってくださらない?そんな声じゃよく聞こえませんわ」
我ながらなんともとげのある言い方だ。
例の北欧人に「ツンツンメガネ」と不名誉な呼ばれ方をしても仕方がない。
「あの……」
「何?」
「シフトが変更になって、今夜一緒に夜間哨戒をすることになったので、それで……」
「今夜?」
そんな話はミーナ中佐からも坂本少佐からも聞いていないのだけど。
「昼間の任務はなくなったので、それだけお伝えしておかないと……」
「わかりました。それにしてもずいぶん急な話ね」
「……忙しいから……」
「え?」
「いえ、なんでもありません……。じゃあ、今晩……」
それだけ伝えるとサーニャさんは足早にその場を立ち去った。
何やらよくわからないけれど、詳しい話はミーナ中佐から後で伝達があるのだろう。
あまり細かいことは気にせず、自室に戻ることにした。
……それに、いつかの一件以来、夜の空というのも案外気に入っているのだ。


その晩。私は暖かい格好をして夜の滑走路に立っていた。
もう春だとはいえ、夜はまだ冷える。
冷たい夜の海風を頬に感じながら漆黒の闇を飛ぶハイディを思った。
あの子はこんなに寒くて暗い夜を毎日飛んでいるのか。
風邪をひいてはいないだろうか。無理をしていなければいいのだけど。
「……ペリーヌさん、そろそろ行きましょうか」
「ええ。準備は出来ていますわ」
サーニャさんに続いて私もゆっくりとスロットルを開く。

「きれいな夜ね……」
思わずそんな言葉がもれるほどにその夜はいい夜だった。
雲は少なく、空気はずっと澄み渡っていて、ほんの小さな星の光さえも見えそうなほどだった。
魔導エンジンの航跡ともあいまって、まるで星の海の中を漂っているかのような気分だ。
「こんな夜は、電波も遠くまで届くんです」
「本当、地平線の向こう側の音まで聞こえてきそうですわね」
空はしんと静まりかえって、聞こえてくるのは自分たちのエンジン音だけ。
周囲に敵の気配はなく、非常を知らせる通信もない。
そんな静けさが心地いいような、居心地が悪いような。
こんなときにどういって声をかけるべきなのだろう。
ちらりとサーニャさんのほうを見ると、嬉しそうな、
それでいてどこか緊張したような顔をしていた。
私と一緒にいることが嫌なのか、そうでないのか。
やはり、私にはこの子の考えていることがよくわからない。

サーニャさんがちらりと時計を確認する。
そして一つ息を吸うと、恥ずかしそうに私に声をかけた。
「ペリーヌさん……耳をすましてみてください」
「え?」
サーニャさんの魔導針がわずかに光を増した。
「こちらビェルイェ・リーリア。ゲアファルケ、感度ありますか?」
しばしのザザッというノイズの後、はっきりと人の声が聞こえる。
「……らはゲアファルケ。感度良好です」
「これって……」
電波に乗って聞こえてきたのは確かにハイディの声。
ついこの間あったばかりだというのにひどく懐かしい声。
「ねぇ、ブループルミエ。そこにいるんでしょ?」
向こうからコールサインを呼ばれてどきっとする。
今日急にシフトが変更になったのに、ハイディが知っているということは。
「ペリーヌさん、こちらの声は私が中継してますから……」
私は小さく頷くと水平線の向こうの相手に話しかけた。

403 名前:"Relay Station" 2/2 @6Qn3fxtl:2010/02/28(日) 22:34:50 ID:pDi5STsc
「こちらブループルミエ。あなたね、哨戒シフトを無理に変えさせたのは」
「仕方ないじゃない。こんなに電波状況のいい夜はめったにないんだから」
大して悪びれもせず、ハイディが答える。
「だからって仮にも大尉がこんな公私混同をするのはどうかしらね?」
「ペリーヌのためだもの」
はるか遠い空の向こうでハイディが笑う。
私も自分の頬がだらしないくらいに緩んでいるのがわかる。
そんな私たちの声がサーニャさんを通じてやり取りされているというのがなんとも恥ずかしい。
「それで?わざわざこんなところまで呼び出して一体何の用ですの?」
「うん。お礼がしたかったの」
「お礼?」
「そう。誕生日のときのお礼を」
誕生日って……あのラジオのことだろうか。
私がサーニャさんに無理をいって伝えてもらった、ハイディへのバースデーメッセージ。
「……私の誕生日なら先日、直接祝ってくれたじゃない」
「でも、伝え足りなかったからね」
「そんなの……」
この間あった時に十分すぎるくらいにもらったじゃない。
それに、本当に必要なら手紙を贈るなり何なりの手段だってある。
あえてこんなに面倒な手段をとる必要なんて……。
「あら。空でのお礼は空で返すのがウィッチの習わしでしょ?それに……」
嬉しそうに笑うハイディの様子が伝わってくる。
「ペリーヌにも知って欲しかったの。
 電波に乗って一番大切な人からメッセージが届く奇跡っていうのをね」
「ちょ、ちょっとハイディ!?」
ハイディの思わぬ告白に顔が真っ赤になる。
まるで二人っきりのときのように甘く話しかけてくるハイディ。
「遠く遠く離れていても、確かに心は繋がっている。そういうのって素敵じゃない?」
「もう。いい加減にしないと、サーニャさんがゆでダコになってしまいますわ」
私たちの会話を中継していたサーニャさんはもう耳まで真っ赤だ。
「あら。ごめんなさい、サーニャさん」
「いえ……大丈夫です」
口ではそういいながら今にも顔から火を出しそうなサーニャさん。
「あまり大丈夫ではなさそうよ、ハイディ」
「そうね。名残惜しいけど、今夜はこれで。じゃあまたね、ペリーヌ」
「えぇ。また遊びにいらしてくださいね」
「ペリーヌこそ。とっておきのワインを用意して待ってるわ」
やがて再びノイズの向こうにハイディの声が消えていった。
サーニャさんが赤い顔のまま、魔導針をしまった。

交信が終わってしまうとまた二人きりの時間が訪れる。
でも今度はちっとも嫌じゃない。
「こういうことでしたのね。急に夜間哨戒と言い出したのは」
「ごめんなさい……」
さっきまで笑顔だったサーニャさんが急に小さくなる。
「ちっ、違いますわ!べっ、別に怒ってなどいませんから……」
慌ててサーニャさんの誤解を否定する。
「ただ……ありがとう。私たちのわがままに付き合ってくださって」
「いえ。私も嬉しいんです……こうやって大切な人に何かを伝える
 お手伝いができることが」
そういってサーニャさんが笑いかける。
そんな顔をされるとなぜだがひどく気恥ずかしくなって、
サーニャさんの顔をまともに見られなくなる。
「サッ、サーニャさん」
横を向いたまま続ける。
「わがままついでにお願いしますけど、今度ハイディと交信することがあったら
 伝えてくださらないかしら。びっくりしたけど、嬉しかったと」
ここで一つ深:呼吸。こんなこと恥ずかしくて普段なら言えるわけないのに。
「それと……、私の大切な、501の仲間をよろしくって」
「……はい」
サーニャさんがそっと伸ばした手が私の左手に触れる。
かすかに、電気のような熱のようなものが流れるのを感じた。
「さあ!早く基地に帰りましょう。ミーナ中佐に一言謝っておかないといけませんわ」
すうっと大きな弧を描いて基地へと進路をとる。

まったく、ナイトウィッチという種族の考えることはやっぱりよく分からない。
でも、なかなか洒落たことをするじゃないの。
私も何か、ハイディに洒落たお返しを考えないといけない。
……それにサーニャさんへのお礼も。

そんなことを考えながら飛んでいるとなんだが頬が熱くなってくる。
水平線の向こうからはもう、うっすらと光が差し始めていた。

Fin.

404 名前:6Qn3fxtl:2010/02/28(日) 22:36:20 ID:pDi5STsc
以上です。大好きなringシリーズに泥塗ってなければいいんですが。
緊張しすぎて名前入れ忘れてしまいましたが、>>401も私です。

ハイディのコールサインがわからなかったので、使い魔の「シロハヤブサ」の
ドイツ語名、Gerfalkeから適当に決めました。
正しい読み方がわからなかったので、間違っていたらごめんなさい。

405 名前:名無しさん:2010/02/28(日) 23:56:26 ID:91HH4zyM
なんとか間に合ったw
流れに乗ってこっちはアメリーヌとあとリーネですが、3レスほど。


 あの長かった冬をようやく、ガリアは越えようとしている。
 果てなく続くトンネルのようだった。横たわる深い闇に、自分が一体どこに立っているのかわからなくなる。
 それが今、その先に一筋の光明を見出だすことができる。それには長い歳月と多くの辛苦を要したけれど。
 思えば昨年10月に再びガリアの土を踏んだ時には、耐えきれず我が目を覆ったものだった。
 それからはネウロイとはまた別の戦いだ。
 少ない人手と予算と物資をやりくりしての復興作業。毎日毎日がわずかなことの積み重ねだ。
 追われた人々を迎え入れ、道路の脇や広場に木を植え、崩れた建造物の修築や、あるいは解体して建て直す。
 しかも季節はもうじき冬へと向かおうとしていたものだから、事態により一層の腐心を強いられた。
 それが年を越し、2月の寒さも峠を越えて、近頃はずいぶん日も長くなってきた。
 街に少しずつ活気が戻っていくのがわかる。木の芽の成長や、人々の笑顔で。それを見つけるのが嬉しい。
 もういくらかしたら春ね。
 そんなことを思って心がはずむ。それはわたくしばかりではないはずだ。
 さて。それじゃあまだまだ頑張らなくては――

 目を覚ましたのは机の上で、つっ伏すようにしてだった。
 書類仕事の最中につい眠ってしまっていたらしい。
 ずれた眼鏡をかけ直し、下敷きにしていた書類に皺ができていないことに安堵すると、
 うーんと座ったまま大きく腕と背を伸ばした。
 すると、わたくしの肩から背を撫でるようにして、ブランケットが落ちる。
 これは――?
 わたくしは首をかしげた。
 自分のものではない。とすれば、他の誰かがこれをかけたのだ。
 きっと、こうして寝ているわたくしを見たその人が、起こさぬようにそうしてくれたのだろう。
 ふと、小さなメモが机の上に置かれていたことに気づいた。

  ペリーヌさんへ。
  いつもおつかれさまです。
  けれど、くれぐれもお体を壊さぬよう、
  頑張りすぎもほどほどに。

 丸みをおびた幼い文字でつづられた短い文章。
 名前こそ書かれてはいなかったけれど、それが誰によるものか、わたくしにはわかった。
 自然と自分の口元が緩んでいることに気づく。
 あとでちゃんとお礼を言いませんとね。
 ブランケットをちゃんとたたんで、机の脇にそれを置いた。
 窓の外はもう朝だ。もう行かないと。

 その当人とは思いのほかはやく巡り会えた。
 宿舎の廊下をふらふらと、おぼつかない足取りで歩いていく背を見つけたのだ。
「アメリー、ちょっといいかしら」
 わたくしが声をかけると、アメリーはまるで電気を走らせでもしたように、びくりと震わせた。
 右へ左へぶんぶんと頭を振り、ようやくわたくしが後ろにいるのだと気づくと、
 みるみる顔中を真っ赤に染めて、うつむいてしまった。
 見るからに挙動不審。まあ、この子がおかしいのはいつものことではあるけれど。
「あっ、あの、ペリーヌさん!? その……おはようございます……」
「おはよう。それよりどうかしたの?」
「うえっ!? な、なにがですか?」
 大げさに声をあげるアメリー。顔はうつむけたまま、時折ちらちらとこちらの顔色をうかがってくる。
 その目のふちに黒ずんだものを発見した。
「その、目の下にクマができてましてよ」
「ええっと、これは……」
「頑張りすぎるのもほどほどにね」
 どこかで聞いたセリフだと気づいたのは口にした後だった。こっそりと自嘲してみる。
「いえ、そういうのじゃなくて……」
「……?」
「えっと、その……ごめんなさい。わたし、もう行かないと」
 アメリーは深く頭を下げて言うと、きびすを返してどたばたと走っていってしまった。
 まったく、騒がしい子ね。
 お礼を言いそびれてしまったことに気づいた時には、もうアメリーは視界からは消えていた。

406 名前:名無しさん:2010/02/28(日) 23:58:28 ID:91HH4zyM
 それは結局、このあとも言えずじまいだった。
 会ってもまともに顔もあわせてくれない。
 声をかけてみても、そっけなく足早に去っていってしまう。
 なにがあったかは知らないけれど、避けられているのだと知るまでに長くはかからなかった。
「ねぇ、リーネさん。あなたなにか知らない?」
「いえ、知りません」
 それとなく相談してみるも、リーネさんはふるふると首を振った。
 このところよく一緒にいるのを見かけるから、もしかしてと思ったのだけれど。
 2人は知り合ったばかりの頃こそぎこちなかったものの、一度打ち解けてしまえばあとは早かった。
 アメリーはよくなついているし、リーネさんはそんなこの子を可愛がってくれている。
「そう……」
 そっと、ため息をこぼす。
「その、ペリーヌさん覚えて……いえ、なにか心当たりはないんですか?」
「心当たり? わたくしが?」
 あの子になにかいけないことをしてしまったか、記憶を掘り起こしてじっと考えてみる。
 なにもない。
 ちょっときつい物言いをしてしまったことだとか、泣かせてしまっただとか、そういうことは多いけれど。
 でも、それは別に嫌われるようなことではない。世間一般はともかく、アメリー個人としては、だ。
 意外にタフなのがアメリーという人間だ。そういうところがわたくしは気に入っている。
 こう言っては見も蓋もないけれど、ちょっとやそっと泣かせたくらいで嫌われるような、
 そんなことで崩れるような関係ではないと思っていた。
 包み隠さず言ってしまえば――少なからず好かれているという自覚があった。
 これまでは。
 もちろん、それはうぬぼれでしかない。
 だから、急に、こうも態度を変えられてしまっては、どうしたらいいのかわからなくなる。
 わたくしはなにも答えなかった。
 それを汲み取ったのか、リーネさんからもなにも言ってはこない。
 そもそも、それがわからなくて、こうやって相談しているのだけれど。
「わたくし、気づかぬうちにあの子になにかしてしまったのかしら」
「したっていうか、されたっていうか……」
「そう……」
 吐息をこぼす。
 したっていうか、された。なにをだっていうの?
 ……ん?
「ちょっと、リーネさん!」
「なっ、なんですか? 急に大声で」
「あなた、なにか知っているの? ねぇ、そうなんでしょう?」
「ええっと、その……」
 リーネさんは目をそらせた。わたくしはそれに視線で追及を加えた。
 するとリーネさんは素早く頭を下げて、
「ペリーヌさん、ごめんなさい! これ、アメリーちゃんとのヒミツなんです!」
 そう言ってわたくしの元から逃げていってしまった。

 わけがわからなかった。
 ヒミツというのはおそらくアメリーとリーネさんの2人だけのものだろう。
 それがどのようなものかはわからないけれど――もうどうでもいい。
 きっとこれ以上問い詰めても、2人とも口を割ることはないだろうから。
 それならこんなこと気にかけるだけ、労力と心のゆとりの無駄だもの。
 わたくしだけのけ者にされたことを心外に思わないでもないけれど、それだって別にかまいはしない。
 別にあの子が誰と仲良くしようと、わたくしにはどうだっていいこと。
 そう思う。心からそう思っている。
 では、どうしてこんなにも心がさざめくのだろう?
 ――ああ、そうだ。
 この気持ちをわたくしは知っている。
 忘れかけていたけれど、手紙を受け取るようにして、はたとある時そのことに気づかされる。
 そこにはこう記されている。

『わたくしのこと、あの人はちゃんと好きでいてくれているかしら』

 それがわからなくて、いつも不安にさいなまれる。
 訊くこともできず、確かめるすべもしらず、だからぐるぐるぐるぐる……際限なく考えを巡らせるだけだ。
 なにも持っていないのではないか――
 だから、やさしくされるのは苦手だった。
 その人にどんどん惹かれていく自分がわかるから。
 わたくしの心にどんどん踏み入ってきて、かき乱すだけかき乱して、そうしていつかは去っていってしまう。
 そんな誰かを気にして不自由になるならば、1人でいる方がずっと楽だ。
 いつもそうしてきた。わたくしはそれでかまわない。

407 名前:名無しさん:2010/03/01(月) 00:00:09 ID:muONEYcg
「あのっ……ペリーヌさん、ちょっといいですか」
 夜も深まる頃あいに、アメリーは執務中のわたくしの元へやってきて、そう訊ねかけてきた。
「なに?」
 顔はあげずに問い返す。
「その、来てほしいところがあるんです」
「今、書類の見直しをしているの。あとになさい」
 つい棘のある言い方になってしまった。
 アメリーは困った顔をして、あちらこちらに視線を飛ばす。
 ああ、もうすぐ泣き出すだろうななんてことを思った。
 ――どうだっていい。
 しばらく2人無言でいると、今度はリーネさんが部屋に入ってきて、
「いいから来てください」
 わたくしの手を取り、引っ張ってくる。
「ちょっと! なにをするの!」
「いいから早く」
 わたくしは手を引かれるまま、部屋をあとにした。
 後ろからアメリーがついてきて、わたくしの背中を押した。
 そうして連れてこられたのは、電気のつけられていない、アメリーの部屋にだった。
「なんですの、いったい!?」
「アメリーちゃん、準備はいーい?」
「はい!」
 2人は、せーの、と短く言ってから――

「「ペリーヌさん、お誕生日おめでとうございます!」」

 パンッ、とわたくしに向けられたクラッカーが鳴る。
 少し遅れて部屋に電気がつけられた。
 そこに並んだ料理も、ケーキも、飾りつけも、すべて手作りで。
「誕生日……?」
「はい。だって今日は2月の28日ですから。もしかして忘れてたんですか?」
「そんなはずないでしょう。ただ……」
 リーネさんを正そうとしたけれど、その言葉をなかばで呑みこんだ。
「ただ、なんですか?」
「――いえ、なんでもありませんわ」
 ただ、自分が誰かに祝ってもらえるなんて、そんなこと考えてもみなかったから。
 そんなこと、この場でとても言えはしない。
 わたくしの悪いくせだ。
 信じることよりも、疑ってしまう。いつもつい忘れてしまいそうになる。
 けれど、こうしてちゃんとたしかなものが、今ここにあってわたくしを囲んでいる。
 今までだってきっと同じだったはず。ただ気づこうとしなかっただけで。
 たくさんのものに支えられて、そうして今、わたくしはここにいる――

「秘密というのはこのことでしたの?」
 わたくしが訊ねると、2人は顔を見あわせる。
 アメリーの顔がみるみる赤く染まっていった。
 そんな彼女の代わりに、リーネさんが言った。
「はい。2人でこっそり準備してたんですよ」
「そう……。まったく、あなたたちは、その……ありがとう」
 そうして3人だけのバースデイパーティーは、ささやかながらも盛況におこなわれた。

 アメリーは一番最初に寝てしまった。そんなこの子にわたくしは膝を貸してあげた。
 いろいろと疲れていたのかもしれない。けれど、寝顔はやすらかなものだった。
「あの、ペリーヌさん。さっきのことですけど」
 と、リーネさんは言ってきた。
「私たちがヒミツにしてたこと、実は違うんです」
「じゃあなあに?」
「実は――」
 リーネさんはわたくしに、ごにょごにょと耳打ちをした。
「なっ……!?」
 思わずわたくしは声をあげた。
 アメリーが起きていないことを確認し、わたくしはリーネさんに問い直した。
「本当なの、それは?」
「はい、そう聞きましたけど……あっ、でもほっぺたですよ」
 わたくしの顔がみるみる熱くなっていくのがわかった。
 まったく、この子ときたら……
 膝の上を陣取るその呑気な横向きの寝顔を見たら、文句も言う気も失せてしまった。
 その代わりに。
 わたくしはアメリーの顔にかかった髪をすくいあげた。
「いい、リーネさん? これは2人だけの秘密ですわよ」
 きつくそう確認してからわたくしは、眠れるアメリーに同じことをしてやった。
 おそらく、同じところに。

 2月最後の日の夜ふけ。春はもう、すぐそこだ。



以上です。
そんなわけでペリーヌお誕生日おめでとうだよペリーヌ。
タイトルは「春よ、来い」です。OsqVefuYでした。

408 名前:mxTTnzhm ◆hjpN6vNb3.:2010/03/02(火) 00:25:01 ID:7PUYX/uk
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ちょっと私信。

>>404 6Qn3fxtl様
GJ! 拝見しました!
私のSSを気に入って頂き、ホント感激です!
しかも後日談SSを書いて頂けるなんて、
何て言うか、ホント、めちゃ嬉しいです。
6Qn3fxtl様の詩的な表現と柔らかな文体はお見事です。素晴らしい!
私が書くよりも素敵なんじゃないかと思いますよ。
こう言うのもえらいおこがましいですが、「公認」と言うか
このSS、このまま「remember me」の続編としてお願いしたい位です。
本当に有り難う御座います。

これからも「ring」シリーズは続けていきたいと思いますので
どうぞ宜しくお願いします。今後も精進しますので。


>>407 OsqVefuY様
GJ! アメリーヌ&リーネ素敵です。
ペリーヌおめでとうですね。
読んでるこっちも幸せな気分になります。


折を見てまたSS投下しますのでその時は宜しくです。
ではまた〜。

409 名前:名無しさん:2010/03/03(水) 10:13:19 ID:5cVARHJM
>>404
GJ!ハイペリ良いね サーニャも良い味出てる

>>407
GJ!アメリーヌ+リーネイイヨイイヨー ペリーヌかわいい


管理人さん、500KBいったので
そろそろ次のスレ立てて貰えませんか。
お願いします。

410 名前:名無しさん:2010/03/04(木) 23:44:37 ID:lb3PQr1k
フミカネブログにライーサとマティルダきてる!!

411 名前:名無しさん:2010/03/05(金) 01:01:30 ID:FWMRjhpE
          坂本・ミーナ
   シャーリー・ルッキーニ・美千子
     バルクホルン・エーリカ
芳佳・リーネ・エイラ・サーニャ・ペリーヌ



ラジオで言っていたひな祭りネタはこんな感じだったけど
個人的には三人官女はリーネ、芳佳、美千子で
五人囃子はサーニャ、エイラ、ルッキーニ、シャーリー、ペリーヌがいいと思った。

今日も相変わらず混信状態だし来週は携帯のアンテナにラジオを
近づけるのを試してみようかな。

412 名前:名無しさん:2010/03/05(金) 01:14:47 ID:oIQH9NkE
フミカネブログは良い燃料補給になるなあ。
ストームウィッチーズの妄想が広がる。

413 名前:名無しさん:2010/03/07(日) 17:08:28 ID:SVu2wldE
避難所の管理人さんは留守かな?
そろそろ次スレ立てた方が良いと思います。
500KB超えてますので。宜しくお願いします。

414 名前:名無しさん:2010/03/07(日) 17:11:52 ID:SVu2wldE
てかフミカネブログにまた新キャラキター
「ニパさんそこに正座!」って事は……ゴクリ。

415 名前:管理人 ◆JvGG5u6wMo:2010/03/07(日) 17:26:42 ID:U28RsrsU
遅れてすみません。次スレを立てましたのでこちらはスレストにします。

ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所5
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