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ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所8

1 名前:管理人 ◆h6U6vDPq/A:2011/03/04(金) 23:23:21 ID:7A0XfQVw
ここはストライクウィッチーズ百合スレ避難所本スレです。

●前スレ
ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所7
http://jbbs.livedoor.jp/bbs/read.cgi/otaku/12483/1290357324/

●Janeで避難所を見る場合
・板一覧を右クリックして「新規カテゴリを追加」をクリック(板一覧が無い場合は「表示」→「板ツリー」→「板全体」で表示できる)
・カテゴリ名を入力してOKをクリックする(例:「したらば」)
・作成したカテゴリにカーソルを合わせて右クリックし、「ここに板を追加」をクリック
・板名を入力してOKをクリックする(例:「百合避難所」)
・URLに「http://jbbs.livedoor.jp/otaku/12483/」を入力してOKをクリックする。

2 名前:管理人 ◆h6U6vDPq/A:2011/03/04(金) 23:23:37 ID:7A0XfQVw
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避難所スレについて、投稿本文の文字制限は4096byte(全て全角文字の場合は2048文字)、
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3 名前:6Qn3fxtl:2011/03/06(日) 07:37:57 ID:iRnXPAs.
>>1 管理人様
スレ立て乙です。いつもありがとうございます。

>>前スレ421 5uxL6QIl様
まず、30機撃墜クラブ入りおめでとうございます!
このアメリーペリーヌも甘っ甘でGJ!
やっぱりペリーヌには、笑っててほしいですよね。


>>同427 Hwd8/SPp様
エーリカ、マジ天使。
振り回されっぱなしのエイラがいい味だしてます。


さて。新スレ1本目で少々恥ずかしいですが、エーリカゲルト置いていきます。
よろしければどうぞ。

4 名前:彼女が制服に着替えたら〜エーリカ編〜 (1/2 @ 6Qn3fxtl):2011/03/06(日) 07:39:16 ID:iRnXPAs.
「ハールートーマァァァン!!!!!!!!」
今日も今日とて、どっかの軍バカ大尉の大声が寝ぼけた頭によく響く。
目の前にいるんだからそんなに大声出さなくても聞こえますって。
あんまり大声出して基地壊しちゃだめだよ、トゥルーデ。
ロマーニャの基地は急ごしらえなんだから。

「あぁ、おはよ。トゥルーデ」
「おはよ、じゃない! 今何時だと思ってるんだ!何時だと!」
エーリカちゃんは今起きたばっかりだから、まだ朝ですよ。
あたり前じゃないですか。
「もう昼食の時間も過ぎてるんだぞ!いい加減にしろ!」
あー。またお昼食べそこねたよ。今日は宮藤とリーネが担当だから、
きっとおいしかったんだろうな。あとで二人に頼んで何かつくってもらおっと。

「どうしていつもいつもそうやってだらしない生活がしていられるんだっ!!!
軍人としてどうこうの前に、カールスラント人として
もうちょっとしっかりできんのか、しっかり!!!」
寝巻き---といってもほとんど下着だけだけど---をだらしなく着崩した私は、
両肩をがっしり掴まれてぐわんぐわんとゆさぶられる。
あぁ、自分の作ったシュトルムに巻き込まれたときってこんな感じだ……。
「お前はっ……!!!それでも人間かっ!!!」

これはひどい。カールスラント軍で一番、ひょっとすると世界中の全ウィッチの中でも
1、2を争うぐらいのスーパー美少女エース、エーリカ・ハルトマンちゃんを捕まえて
その言い方ってないんじゃないだろうか。
さすが、頭の中に軍規と訓練と妹しか入ってない人は見る目がないよ。

「別にいいじゃん、誰が見てるわけでもないんだし」
「そうはいかん! 栄誉あるカールスラント空軍航空歩兵たる我々は、
常に全カールスラント人、ひいては全人類の規範となるべくだな……」
「……トゥルーデ、いつもそんなことばっかり考えてたら胃に穴あくよ……」
「お前はもう少し考えろっ!!!」
わかったわかった。考えます。考えますから耳元で大きな声で叫ぶのはやめてください。
いつかみたいに優しい声で私の名前を呼んでくださいな。

「……ともかく、着衣の乱れは心の乱れ!
ほら、ブラウスにアイロンかけておいてやったから、さっさと制服に着替えろ」
わーい。ちょうどブラウスが見つからないなーって思ってたとこだったんだー。
ありがとう、トゥルーデお姉ちゃん。愛してるよ。
「ふざけたこといっとらんでさっさと着替えんか」
はーい。

5 名前:彼女が制服に着替えたら〜エーリカ編〜 (2/2 @ 6Qn3fxtl):2011/03/06(日) 07:39:43 ID:iRnXPAs.


……もしもし、ゲルトルート・バルクホルン大尉?
「なんだ?」
どうしてそこにいらっしゃるので?
「お前が二度寝しないか、制服の襟が曲がっていないか、
肩章がきちんと付いているか確認するためだ。まるで訓練生だな」
チェックしてくれるのはありがとうございます。
でもね。私は着替えたいわけですよ。
「だから早く着替えろといってるだろう」
いや、だから。
「なんだ……何が言いたいんだ?」
すいませんけど、着替える間ぐらい、部屋を出ていてもらえませんか?
……何その『なにいってんだこいつ』っていう視線は。

「部屋を出ていったら、二度寝をするかだらしない格好をするか、
いずれにせよひどいことになるだろう。だから見張っているんだ」
……少女のプライバシーを土足で踏みにじるのは感心しませんぜ、大尉。
「何がプライバシーだ。私は上官としてお前を監督する義務と責任があるのだ」
いや、だからそこはいいの。着替えてからチェックすればいいことだから。
……だからその『わかんない』って顔やめてってば。 

「だから早く着替えろといってるだろう。それとも、着替えを手伝って欲しいのか?」
「ちがうよっ!」
「だったら早くしろ!」
「だから!……あっち向いててよ、お願いだから」

……なにさ、その呆れたような顔は。
「お前はバカか?下着姿で、ましてやズボンを履かずに基地内を
うろつくような奴がどうして着替えくらいで恥ずかしがるんだ!!」
恥ずかしいよ!年頃の女の子だもん!
下着も替えるし、ズボンも脱ぐんだぞ!
「いつも一緒に風呂に入ってるだろうが!」
「それとこれとは別!」
「今さら恥ずかしがるような間柄じゃないだろ!」


「バカ……!」
トゥルーデだから、恥ずかしいんじゃん。いわせんな。
そりゃ……いつも散々なところ見せてるけど、私にだって、
気になる人には見せたくないものはあるんだよ。
気になる人は特別なんだよ。
戦況を読むのは得意なくせに、こういう気配りができないんじゃ
いまどきの若い子はついてこないよ。この堅物。


「さぁ、くだらんことを言ってないでさっさと着替え……」
「いいから出てけーー!!!」
「おっ、おい!!!」

無理やりに廊下に追い出したら、さっきより少し静かになった。
基地内では静粛を旨とすべし、だもんね。大尉殿。

「……ほんとに、バカ……」
だれかあの大尉に“新人教育”をしてやってくださいな。
きっと私よりも問題児です、あの人。


fin.

6 名前:6Qn3fxtl:2011/03/06(日) 07:40:23 ID:iRnXPAs.
以上です。トゥルーデ、マジトゥルーデ。

7 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/03/06(日) 23:50:53 ID:yBaIbMmY
こんばんは、今日はサーシャ大尉の誕生日という事で
ニパーシャで1本書いてみました。ではどうぞ

8 名前:ニパのプレゼント 1/2:2011/03/06(日) 23:53:38 ID:yBaIbMmY

「いや〜、今日も3人揃って派手に墜ちたね」
回収班のトラックに、ボロボロになったストライカーユニットを乗せながらクルピンスキー中尉が陽気に言う。
何でこの人は撃墜してもいつも笑っていられるんだろうか。
基地のキューベルワーゲンでわざわざ迎えに来てくれたロスマン先生も同じく疑問に思ったらしく、
いつものように中尉の頭を指示棒でぺしぺしと叩きながら、呆れたように溜息をついた。

「『派手に墜ちたね』じゃないわよ、全く。何であんたはそんなにヘラヘラしていられるの?」
「何事も楽しまないと損だよ先生。ほら、笑おうよ。怒ってたらせっかくの可愛い顔も台無しだよ」
「笑えるわけないでしょ! あなた達、この1週間でストライカーを何機ダメにしたと思ってるの?
大体あなた達は……まぁいいわ、続きは基地に帰ってからにしましょう。さ、3人とも早く乗って」
「はぁ〜、こりゃ帰ったらお説教だな」
隣のカンノが憂鬱そうに溜息をつきながら言う。
「また正座しないといけないのか……」
私もカンノと同様に溜息をついてキューベルワーゲンに乗り込む。
それにしてもクルピンスキー中尉、何だか妙に生き生きしてるような……?

「ところで先生、出撃前に話してた件だけど……」
「ええ。それならちゃんと隊長に許可は取ったわ。日が暮れる前に早く行きましょう」
「ん? このまま真っすぐ基地に帰るんじゃないのか?」
「やだなぁ、ナオちゃん。今日はクマさんの誕生日だよ。誕生日プレゼントも買わないでのこのこと基地に戻ったら、
絶対怒られるよ」
「いや、どちみちストライカー壊した件は怒られるわよ」
と、すかさず中尉に突っ込むロスマン先生。
そっか、今日はサーシャ大尉の誕生日だったっけ。
全く、そんな特別な日に3人揃って仲良く撃墜だなんて本当に情けない。

「ところで、プレゼントって何買うんですか?」
私がそう尋ねると、中尉は少し考えるような仕草を取った。
「う〜ん、クマさんって機械とかは大好きだけどオシャレには疎そうだしなぁ……ボクとしては
アクセサリーとかがいいと思うんだけど、先生はどう思う?」
「そうね、私もアクセサリーがいいと思うわ。大尉、あんなに綺麗なのにオシャレしないのは勿体ないもの」
「決まりだね。それじゃあ早速、アクセサリショップへしゅっぱーつ!」

――数十分後、街のアクセサリショップ

「ふ〜ん、アクセサリショップって色々置いてあるんだな……」
ショーウィンドウに並んでいるアクセサリの数々を見つめながらカンノが呟く。
「カンノはこういう店、来るの初めてなのか?」
「当たり前だろ。オレが好き好んでこういう店に来ると思うか?」
「いや、思わない……ん? これは……」
ショーウィンドウに並んであった金色のネックレスがふと私の目に止まる。
「このネックレス、すごく綺麗だな」
私は、サーシャ大尉がこのネックレスを付けた姿を想像してみる。
うん、上手く言葉に言い表せないけどとても似合いそうな気がした。
「お、ニパ君中々良い物に目をつけたね。先生、このネックレスなんかいいんじゃない?」
「どれどれ……本当、すごく可愛らしくて綺麗なネックレスね……店主さん、これ下さい」
ロスマン先生が財布からお金を取り出し、ネックレスを購入する。
一見子供にしか見えない先生が大金を出すものだから、店主さんはとても驚いていた。
「さすが先生、太っ腹だね」
「あら、今支払ったお金は隊長に頼んで、あなた達の給料を前借りしたものよ」
「へぇ〜……って、ええ!? ボク達の給料使っちゃったの?」
「当然でしょ? あなた達が1番大尉に迷惑かけてるんだから」
「うぅ、確かにそれは否定できない……」
「うん」
私とカンノは納得したように頷く。

9 名前:名無しさん:2011/03/06(日) 23:53:48 ID:jvpevUq.
そんなトゥルーデが大好きです。

GJ!

10 名前:ニパのプレゼント 2/2:2011/03/06(日) 23:54:10 ID:yBaIbMmY

「ねぇ、そう言えば誰がプレゼントを渡すの?」
帰りの車中、ロスマン先生が不意に私たちにそう尋ねてきた。
「う〜ん、ボクが渡したら何か誤解されそうだし……ニパ君がいいんじゃない?」
「ああ。オレもニパがいいと思う」
「そうね。私もニパが一番適任だと思うわ」
「ちょ、ちょっと待って! 何で私なんですか? 別にカンノでもいいじゃないか」
「いや、オレあの人の前だと緊張して上手く喋れないと思うし……
それに、そのネックレスに1番最初に目を付けたのはニパじゃないか」
「それはそうだけど……何だか恥ずかしいよ」
「大丈夫大丈夫。いざとなったらボクがフォローしてあげるから」
私にウインクしながら微笑むクルピンスキー中尉。
かえって不安になるのは何故だろうか。

――十数分後、502基地

「全く、あなた達は何機ストライカーを壊せば気が済むんですか!」
予想通り、基地に帰ってくるや否やサーシャ大尉のお説教タイムが始まった。
私たち3人は冷たい床の上で正座して、大尉のお説教を黙って聴いていた。
「ニパ君、ここいらでプレゼントを渡したほうがいいんじゃないかな」
隣に座っているクルピンスキー中尉が小声でそう囁きかけてきた。
「え? このタイミングでですか?」
「うん。いいかい? プレゼントを渡しながらこう言うんだ……ごにょごにょ」
「こら! 2人とも何をこそこそ話しているんですか?」
「大尉、あの……!」
「何ですか? ニパさん」
私は意を決してポケットの中からネックレスの入った小さな箱を取りだし、それを大尉の前に差し出す。
「大尉、誕生日おめでとうございます! これ、私たちからの誕生日プレゼントでぅっ……です!」
「そこ噛むのかよ……」
後ろでカンノがぼそっと呟く。
だけど、私はそこで挫けずに今中尉に言われた言葉を続ける。
「このネックレス、綺麗で可愛い大尉に絶対似合うと思います!」
……言っちゃった。一瞬、辺りに沈黙が流れる。
サーシャ大尉は驚いたような表情を浮かべた後、ゆっくりと口を開いた。
「え、えっと……ありがとうございます。私、すごく嬉しいです」
大尉は優しく微笑むと箱からネックレスを取り出し、それを首に付けた。
わぁ、想像以上に似合っててすごく可愛い。
「似合ってるよ、クマさん」
「ありがとうございます。でも、これで今日の件が帳消しになったりはしませんからね。
3人とも夕食までそこで正座していてください」
「あ、やっぱり正座はしてないといけないのね……」

夕食まで正座しているのは辛かったけど、大尉が私の選んだプレゼントを気に入ってくれて本当に良かった。

――――――

「さっきの台詞、中尉に言わされてたんですか?」
夕食後、2人きりになった談話室で大尉が私にそう尋ねてきた。
「えっと、台詞を考えたのは中尉だけど綺麗で可愛い大尉に似合うと思ったのは本心です……」
「ニパさん、ズルいです。そんな事言われたら何も言い返せないじゃないですか……」
大尉が顔を真っ赤にして俯く。
そ、その表情は反則ですよ大尉。
「大尉、ごめん! 私、我慢できないです!」
大尉の仕草と表情があまりにも可愛かったので、気が付けば私は大尉の唇に口付けを落としていた。
「んっ……ニ、ニパさん!? い、いきなり何を……」
「好きだよ、サーシャ」
そう言って私はもう1度サーシャ大尉にキスをする。

――なぁイッル、オラーシャのウィッチって不思議な魅力を持ってるよな。

11 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/03/07(月) 00:03:13 ID:t9Tmvf1Y
以上です。たまには積極的なニパさんも悪くないかなと思ったり。
サーシャ、誕生日おめでとう!
早いものでサーシャがフミカネさんブログで公開されてから、もう1年経つんですね。

前スレ>>424 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです。素敵なエイラーニャをありがとうございます。
エッチな本をサーニャに見せるエーリカが面白いです。

>>429 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです。エーリカとシャーリーとは珍しい組み合わせですね。
本編ではほとんど絡まない2人ですが、結構気合いそうですよね。

>>4 6Qn3fxtl様
GJ&お久しぶりです。こういうエーゲルいいな〜
エーリカマジ乙女!

12 名前:名無しさん:2011/03/20(日) 01:54:10 ID:FEn4luTI
今なら言える

トゥルーデ、誕生日おめでとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!

13 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/20(日) 17:55:55 ID:JhZywWNo
自分からも…おおおおおおっ!!!!
トゥルーデ!誕生日おめでとうおおおおおお!!!!

あ、どうも。皆さま感想を書いて頂きありがとうございます!感想・返信をしてない自分を許してください!!
久しぶりに『ヘルマの発情』シリーズ…なのですが、色々あったので今回はいつものハイテンションを封印し、特別編を投稿してみたいと思います。
トゥルーデの誕生日に関するエピソードです。


【特別編・ヘルマの軍規違反】

「有給ください!」
「…何故?」
「それはその…私のお祖母ちゃんの入院の準備がありまして…」
「却下」
「何故でありますか?!」
「手術の日ならまだしも、別に入院の準備なら行かなくて良いと思う」
「じゃ、じゃあ手術です!!」
「じゃあって何?」
「ぐぬぬっ…」

いきなりこんな会話からで申し訳ございません!
ストップ、買い占め!第131先行実験隊「ハルプ」第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツであります!
ただいま3月19日の午後1時。お昼の休憩を終え、真っ先にハルトマン中尉の研究室のドアを叩いたであります!

「えと…さっきのお祖母ちゃんの入院は違くて、あの…えと…家族の人に留守を頼まれましたであります!」
「…レンナルツ曹長、今は寮暮らしでしょう?」
「うっ…!とっ、とにかく休みが欲しいであります!!」
「休んでも良いけど、帰ったら曹長のジェットストライカーがあると約束はしない…」
「それは明らかなパワハラであります!!!(泣)」


***

14 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/20(日) 17:56:33 ID:JhZywWNo
>>13の続き。

「はあ…ダメだったでありますかぁ…」

その後、小一時間に渡る説得をしたのでありますがダメでした…。
落ち込んで廊下を歩いていると………

「あ、ヘルマ!」
「………」
「おーい、レンナルツ曹長」
「………」
「ヘチマ曹長?」
「………」
「フランツ・フェルディナンド曹長?」
「…あ、シュナウファー大尉」
「あなたそんな名前じゃないでしょう…」
「どうしたんでありますか?」
「いやあ…下を向いてで歩いて、明らかに残念オーラが漂ってたから…何かあったの?」
「…シュナウファー大尉、もし!裁判になったら!」
「裁判?」
「裁判になったらですね…私が有利になる証言をお願いするであります!」
「は、はあ???」
「私、決めました!徹底的に戦うであります!」
「ちょ…ちょっと待って、話が見えないんだけれども…;;」









私は自室に戻り、バッグに衣服などを入れていたであります...

「えと…軍服の上OK、下OK、歯みがきセットOK、ズボンOK、おもらしした用に予備OK…そして…例のアレOK!よし、完璧であります!」

出発は夜明け前の3時!結果、ハルトマン中尉やシュナウファー大尉を裏切る結果となりますが………
こんな娘でごめんなさい、ここで過ごした日々…楽しかったであります(泣)


***

15 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/20(日) 17:57:02 ID:JhZywWNo
>>14の続き。



まだ日が出ていない…と言うか、誰もいない倉庫にそおっと入るであります...

「私のジェットストライカーはと…暗くてよく見えないであります;;あ、あった!」

閉まっている倉庫から引っ張り出し、ここでエンジンを始動すると音が大きくバレてしまう可能性があるので近くの丘まで持って行くであります;;

「おっ…重いっ…;;;」




20分ほどかけて、少し基地が遠く見えるような丘でエンジンを始動。そのまま発進するであります!

「シュバルツェカッツェ(黒猫)2番、発進するであります!!」

そうして、ロマーニャ・ベネツィア方面に飛んだであります...















































ゴオォォォォッ...

いくらシールドを張ってるとは言え、少々寒い感じがするであります。
もう一枚着こんでくれば良かったでありますねぇ…

…あんま今は考えたくないでありますが、もしこの無断でストライカーを使ったら
…うん、業務上横領罪でありますよね??いや、もしくは窃盗罪…;;;
今からでも遅くないであります、帰ろうかなあ…?;;
…いや!例のアレを渡すまでは!!!!
私はバルクホルン大尉にアレを渡すまでは帰れないんです、枕元にポッと置いてすぐ基地に戻るんであります!!

と、顔をパンパン両手で叩いたであります!!
………んっ!?

「もしかして…?」

赤い光が見えるであります…

「でも今日は確か、輸送機などはなかったハズ…!!」

やはりあれは…ネッ、ネウロイであります!しかも大型の!!!!
…ごめんなさい、バルクホルン大尉…私はまず軍人であります…!!
やはり軍人としての全うな義務を果たすべきでありまして…っ!!

すぐさまポケットから無線を取り出し、

「こちらシュバルツェカッツェ2番シュバルツェカッツェ2番、司令部聞こえるでありますか??!!北北東の方角から大型ネウロイ接近中、ただちにナイトウィッチの派遣をお願いします!到着までの間、私が足を止めます!!!!」


***

16 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/20(日) 17:57:56 ID:JhZywWNo
>>15の続き。




「………」

あの後すぐ、無事にシュナウファー大尉率いる第1夜間戦闘航空団第4飛行隊が到着。
私も応戦したであります…が!基地に帰ったらもう大変;;
まあ………ねえ?察してくださいであります;;;

まあ司令に殴られた…であります。そして罰として、2日間の営倉入り。
…後からシュナウファー大尉から聞いた話なのですが、ハルトマン中尉が直談判しに行って除隊だけはやめるよう懇願。
結果的にネウロイも発見・退治できたことから、2日間の営倉入りだけで済んだんだそう。

コツコツコツ...

「…レンナルツ曹長」
「ハルトマン中尉」
「もう…出て良い」
「はい…であります…」
















パシンッ!!!!

営倉から出てすぐ、私はハルトマン中尉に平手打ちされたであります…

「…馬鹿」
「もっ、申し訳ございませんであります…っ」
「何で言わなかったの…?」
「………」
「バルクホルン大尉に会いに、ロマーニャ方面へ行こうとしたんでしょう?」
「…はい」
「正直に言ったら、私だって…501部隊へ、ストライカー部品の運送名目であなたを派遣させた」
「………」
「バルクホルン大尉をお祝いしたいのは、私も一緒…」
「………」
「しばらく、頭…冷やしなさい」
「申し訳ございません…」

すると急に、

ギュッ...

「ハッ、ハルトマン中尉…?」
「心配させないで、あくまでもあのストライカーは試作品なの…」
「ごめんなさい…」
「まだ長距離の実験もしてないから…」
「もう二度としません…っ」

離れると…いきなり手に何かを握らせられたであります。

「あなたは2日ほど頭を冷やした方が良い」
「あの、これ…」
「今日は自分の部屋に戻りなさい」

そう言うとスタスタ自分の研究室に戻るハルトマン中尉。
手に握らせられたのは………

「何でありますかこれ…『アーヘン発ベネツィア行き』…航空券っ??!!」


***

17 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/20(日) 17:59:57 ID:JhZywWNo
>>16の続き。

【第501部隊基地内のエーリカ・バルクホルンの部屋】

「えぇいハルトマン!何故ズボンを履かないのだ!?」
「だって…ないんだもん」
「きっ、貴様…っ!!それでもカールスラント軍z(ry」

コンコン...

「あのぅ…バルクホルン大尉」
「おう、なんだ宮藤」
「お客様です」
「客?私にか?」
「はい。以前この部隊に来た方なのですが…」

キイッ...

「…レ、レンナルツ曹長」
「あ、やっほ♪」
「………」

なんだろう、バルクホルン大尉の顔を見た瞬間に私…っ!!

「うっ…ううっ…」

今まで我慢してたものが一気にこみあげてきて…っ!!

「バルクホルン大尉っ!!!うっ…ううっ…うわ〜んっ!!!!」
「っ?!ちょ…どうしたレンナルツ曹長!?何故泣いている?!」
「だって…だってっ!!うわ〜んっ!!!!」
「え、えっと…あの…」
「…とりあえず、ギュッとするか頭を撫でたら?」
「あ、うん…そうしよう」

するとバルクホルン大尉は優しく私を抱きしめ、頭を撫でてくれたであります...

「どうした…?何があった…?」
「私…軍人として踏み外す行動を…っ」
「???」

私は15分以上、パルクホルン大尉の胸で泣いてしまったであります…

18 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/20(日) 18:00:46 ID:JhZywWNo
>>17の続き。

「落ち着いたか?」
「はい…であります」

いつの間にかハルトマン中尉…あ、エーリカ・ハルトマン中尉でありますよ?…は外で出てしまってこの部屋は私と大尉2人っきりであります。

「…さっき、ミーナから聞いたがお前ってヤツは…」
「もう二度としません…であります」
「まっ、私は以前こんなことを聞いたことがある。『失敗は尊い月謝である』とな」
「はい…」
「人は失敗をしないと、成長はしない。今回の行動は…その…」
「…正直、営倉に入った時は軍を辞めることも考えたであります。けど…ネウロイを目撃した時、バルクホルン大尉よりネウロイを優先しました。今自分が何をすべきか…を冷静に考えたんです、営倉で」
「そうか」
「やっぱり…やっぱり、私は軍務が大事なんだなあって。戦いが終わった後、なんでこんなバカな真似をしたんだろうって…」
「…なあ、この話止めにしないか?」
「へ?」
「いや…その…お前はじゅうぶん反省した!それで終わりだ」
「でもカールスラント軍人として…」
「なんだ、叱られたいのか?」
「そんな訳では…」
「じゃあ終わりだ。コーヒー飲むか?とびっきり甘いの」
「はっ…はいでありますっ!!!」

…そうして、温かいコーヒーを持ってきてくれたであります。

「そういや、何故ここに来ようと思ったんだ?」
「…あ!」
「どうした?」
「えと…この…」

急いでリュックの中から例のアレを…

「少し遅くなりましたが…バルクホルン大尉!お誕生日、おめでとうございます!!!」
「…へ???」
「これ…私とクリスさんで選んだプレゼントです!」
「クッ、クリスとか??!!」
「はい…あとお手紙も貰ってます」
「お前…クリスと仲が良いのか…」
「はい!…まあクリスさんはロンドンに居るので、1〜2か月に一度しか会えませんが;;」
「ありがとう!」

ギュッ...

また抱きしめられたであります!
…あれ、何時もならテンションMAXなのに今日はその…色々あった後だから、なんかその…心地よい?と言うか…

「本当にありがとう!」
「このプレゼントを渡したくて…ここに来ました」
「これからもクリスと…仲良くしてやってくれ」
「………はい!であります!」
「その笑顔!それでこそレンナルツだ!」

もうしばらくこのままでいても…良いでありますよね…?







【おわり】


***

長文、失礼しました。

19 名前:名無しさん:2011/03/21(月) 19:41:52 ID:zlKI5KhE
>>18
ヤバいよヤバいよ
キュンキュンした!!
ウルスラは片思い……なのかな

20 名前:名無しさん:2011/03/21(月) 23:42:16 ID:u9c.3jVo
>>18
ウルスラの心遣いにキュンときました。GJ。
お姉ちゃんはやっぱりいいお姉ちゃんですね。

21 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/03/22(火) 17:20:38 ID:IKdUgetM
どうも、>>18です。

>>19
ウルスラが片思い…なるほど!その設定は考えていませんでした!;;
今後の展開の参考に、ぜひさせて頂きます!!

>>20
お姉ちゃんは自分の中でペリーヌ・エイラに次ぐ、ほぼ「ネタキャラ」扱いなのですがまあ誕生日…と言うことで「良いお姉ちゃん」に仕立てました!
映画版ジャイアン…みたいな??!!


ご両名方、感想ありがとうございます!

22 名前:名無しさん:2011/04/05(火) 22:25:52 ID:EsefF5Ys
こんばんは、DXUGy60Mです。
最近あるキャラクターに熱が出てきたものですから、そのキャラのSSを2レス程分投下致します。
最後までお読み頂けたら、幸いに思います。

23 名前:その表情は彼女しか知らない:2011/04/05(火) 22:31:13 ID:EsefF5Ys

私は今、どんな顔をしているのでしょうか?
額を近づけ、図面を覗き込む二人。リネット・ビショップさんと・・・ペリーヌ中尉。
このガリアの地で再び中尉に会えたときには、昔みたく中尉の隣に居られるのだと
思った。でも、中尉の隣にはあの方がいらっしゃった。
先の決戦の詳細は人づてにも書面でも幾度も耳にし、目を通した。
ネウロイ化した扶桑の戦艦「赤城」のコアを破壊するため、わずか三人で戦艦内部に
進入し、見事にコアを撃破するエピソードを。
その時の三人が中尉とリネットさん、そして扶桑の宮藤芳佳さん。
その時の活躍を思うと、中尉の隣にいるべきなのはリネットさんなのだという思いが、
決めつけるように無理矢理納得させるように私の心の中に溢れる。
私は今、どんな顔をしているのでしょうか?
前に誰かに云われたことがある。
アメリーはいつも困っているような泣いているような顔をしていると。
多分、今もそんな顔をしているのだと思う。
困っているような泣いているような顔を。
二人の姿を見ているとなぜか哀しいような、辛いような、でも涙が零れるようなの
とは違う気持ちになる。それは、寂しい時の気持ちに似ている。でも、寂しいのは
誰もいないからだけれど、今は・・・あの二人がいるからこんな気持ちになるのだと思う。
「あぁ、アメリーさん」
リネットさんが私に気づくと「あら、いらしてたの」と中尉も私のほうを振り向いた。
「あの、頼まれていた書類です」
「ありがとうございます」リネットさんは笑顔を浮かべながら、私の差し出した書類を受け取った。
素敵な笑顔だ。ウィルマさんの溌剌とした笑顔とはまた違う、どこか繊細なでも優しさに満ちた笑顔を私に向けた。
私の方はどうだろう? やっぱりぎこちない笑顔をしているのかな?
「あの」
「あっ、はい?」
「表情が・・・あまり優れないようですけど」
「そ、そうでしょうか?」私は思わず頬に手を当てる。
「体調管理はしっかりなさいまし。ガリア復興のためとはいえ張り切りすぎて、
身体を壊してはもともこもありませんからね」
「は・・・はい、気を付けます。では、私はこれで」
二人に背を向けトボトボと歩く。
ふと、テットリング基地のことを思い出す。
そうか―あの時も、私は中尉の隣にいたのではなくて、ただ―中尉の背中を小さな子どもみたいに追っかけていただけなんだと。

24 名前:その表情は彼女しか知らない:2011/04/05(火) 22:36:02 ID:EsefF5Ys

私たちウィッチには宿泊場所として、あまり損傷がなかった元・ホテル
の一室がそれぞれに割り当てられた。もちろん、電気も水道も通じてないけど。
私は制服を脱ぎ、ネクタイを外して粗末なハンガーにそれをかけた。
一日の作業で身体はクタクタだった。
シャツとズボン姿でベッドに倒れ込み、少し上気した頬をわずかに冷たいシーツにあてる
「今日も、中尉とあんまり喋れなかったな」
思わずそうつぶやいてから頭を振った。
私は起き上がり、洗面台にへと向かう。洗面台の鏡の前に立ち、自分の姿を映す。
そこあるのは、泣いているような困っているような表情。
「・・・もっと綺麗に笑いたいな」下がっている眉毛に手をあてて上げてみる。
「こ・・・こんな感じかな。あぁ、でも眉間にしわが出来ちゃうな」
それに口元が変に歪んでいる。眉毛に当てていた手を口元に持ってくる。
唇の両端を人差し指でキュッと上げる。
「こ・・・こんな、感じかな? でも・・・」
「何をしていますの?」
「――――! ひゅ、ひゅうい!」
「それも、そんな格好で」
「あ、あの―す、すぐに着替えます!」
「いいですわよ、そのままで。勝手に入ってきたのは私なのですから」
中尉はクスリと笑った。二人でベッドに腰をかける。
中尉はそのままでいいって言ったけど、この格好のまま中尉の横に座るのは少し
恥ずかしかった。頬に熱を感じる。横目でチラリと中尉を見る。
「お茶をお持ちしましたの」そう言われて、中尉がポットと二つのカップを乗せた
お盆を持っていることに初めて気がついた。
「す、すいません。私のためにわざわざ」
「かまいませんわ」膝の上にお盆を置いて、中尉はカップに液体を注ぐ。
懐かしい匂いが鼻に届く。
これは―。
「・・・カモミール」
「えぇ、お疲れのようでしたからね」どうぞ、と中尉にカップを手渡される。
カップの中に私の顔が映る、やっぱりそこには困ったような泣き出しそうな顔をしている私がいた。
「すみばせん」
「・・・まったく、これぐらいのことで泣かれても困るのですが」
中尉はカップを口に近づけながら、呆れたようにでも優しいトーンでつぶやく。
だけど、どうしても、涙がこぼれた。
「その・・・ちゅぶいがとなりにいてくれて、わたしのために・・・おちゃ」
「アメリー!」
「はい?」
「もう少し、笑ったらどうです?」
「・・・わ、笑いたいです。私も。で、でも、なんだか上手くいかなくて」
「笑えますわよ。このガリアで貴女に再びお会いした時には、もう少し良い笑顔を
していましたもの。そうですわね、この眉毛が悪いのかしら?」
中尉の人指し指が眉間に当たる。ヒヤリとした感覚が伝わる。
「さっきも、一生懸命に練習をしていたのですし。もっと、素敵な笑顔を見せれそ
うなものですけどね」
「――――! み、見てたんですか!?」
「悪いとは思いましたが、一部始終を。ほら、また泣きそうな顔になっておりますわよ」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、中尉は今度は私の唇の両端を上げる。カップを両手に持
った私にはどうすることもできない。
「ちゅ、ちゅうい!」
「今こそ日頃の練習の成果を見せる時ですわよ」
「し、してません! さっき、ちょっとだけやってみただけです!」
「あら、じゃあやはり筋がよろしいんではありませんの。頬を当てたくなるような
表情をしていますわよ」
そう言いながら中尉は楽しそうに笑った。
この時に私がどんな表情をしていたのかは、中尉しか知らないことなのです。

Fin

25 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/04/07(木) 23:06:01 ID:4XzKSQVc
>>24 DXUGy60M様
GJ! これはステキなアメリーヌ。
ペリーヌさんとアメリーの優しさがとても素晴らしいです。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

26 名前:ribbon II 01/02:2011/04/07(木) 23:07:06 ID:4XzKSQVc
 朝日が眩しい食堂の席、いつもより遅い食事の席に着いたミーナは、彼女よりも遅れて席に着いたトゥルーデを見つけ、
少し驚いて見せた。
「あらトゥルーデ、どうしたの」
「ん? どうかしたかミーナ?」
「私が聞いてるのよ。いつもなら隊の中でも早くに食事する貴方が、今日はこんな遅いなんて」
「いや、それは」
 恥とも照れとも言える顔を作るトゥルーデ。良く見ると、髪結いのリボンが片方無く、辛うじて結ってある方も、
今にも解けそうだ。
「あら、その髪」
「ああ。このリボン、大分使い込んで居たから、とうとうボロボロになってしまった。もう結べないな」
「なら、新しいのを……」
「そうなんだが。でも……」
 トゥルーデは手元の使い込まれたリボンを見つめ、名残惜しそうに微笑む。
 そんな彼女を見たミーナはふふっと笑った。
「それは取っておけば良いわ。確かこの前送られて来た補給物資に、日用品とか生活用品が有ったから、探せば有るんじゃないかしら」
「そうか。それは助かる」
 トゥルーデはそそくさと食事を済ませると、代わりのリボンを探しに、駆け足で出て行った。

 リストを元に物資を漁ると……果たして、積み荷の中から、髪結い用かどうかは分からないが、幾つかリボンが出て来た。
 鮮やかで、色の種類も太さも豊富だ。
 その中から今までと同じ色柄のものを選び、髪を結ってみる。
 しゅるりと、簡単に解ける。
「ありゃ。……困ったな」
「何が?」
「いや、髪が……って、居たのか?」
 背中にエーリカが張り付いているのに気付かず、驚くトゥルーデ。
「真後ろ取ったー」
「こう言う時にそう言う事を言うもんじゃない」
「なに? 非常事態?」
「見て分からないか?」
「トゥルーデ、髪切った?」
「どうしてこの状況でそうボケられるんだ」
「冗談冗談。リボン取りに来たなら、ここで結ばなくても」
「自室だろうと戦場だろうと、いつ解けてもすぐ結び直せる様にだな……」
「良いから、行こう」
 エーリカに手を握られ、部屋へと連れ戻される。

27 名前:ribbon II 02/02:2011/04/07(木) 23:07:39 ID:4XzKSQVc
「それでエーリカ」
「何、トゥルーデ?」
「このリボンは光沢が有って手触りも良い。上等な品だ。但し」
「但し?」
「滑り過ぎなんだ」
「それ、普通は滑らかって言うんだよ」
「しかしだな……私の髪に合わない様だ。どうも、いつもみたいにうまく結べない」
 何度か試し、そのたびにしゅるりと解けてしまうリボンを見て溜め息を付く。
 しゅるり、とエーリカはトゥルーデの胸のリボンを解いた。
「こら、何処を解いてるんだ」
「こっち使ったら?」
「胸はどうするんだ」
「そのままで。お得だよ」
「だらしないだろう。それに誰が得をするんだ」
「私と……ミヤフジ?」
「何故エーリカと、宮藤が」
「そそ、こうやって」
「こら、やめろエーリカ……くすぐったい」
 こちょこちょとトゥルーデの胸元をいじるエーリカの髪の毛が、トゥルーデの頬と鼻先を擦る。
 エーリカのおふざけか、制服の上とシャツも少しはだけ、ネクタイ代わりに結んでいる胸のリボンも結び目を解かれる。
「ちょ、ちょっと……」
 言葉が止まる“堅物”。
 エーリカは手を休め、トゥルーデを改めてじーっと見た。
 いつもの、がちがちに結んだ髪も、きちっと決まった制服の姿でもなく……ゆったりと髪を垂らし、
服のシワもぞんざいに、少し胸をはだけた感じで少しだけ照れている、いとしのひと。
「良いよ、トゥルーデ。こりゃファンが増えるね」
「何だ、ファンって」
「私、ファンだから」
「何だそれは」
「で、ファンは私だけ」
「どうして」
「私だけのトゥルーデだから。誰にも渡さないよ」
「あのなあ……」
「とりあえず」
 エーリカはトゥルーデの横に座ると、髪に半ば埋もれた耳をかき分け、そっと口付けした。
「ひゃうっ、何を……」
「トゥルーデのせいだよ。そんなに色っぽいから」
「エーリカが勝手に私を遊んで……」
「とりあえず、今日はトゥルーデそのまま」
 答えるスキを与えず、今度は唇を塞ぐ。
 長い長いキスを味わい、深く呼吸する。息が熱くなるのが分かる。
「エーリカ、今日は何かおかしいぞ」
「トゥルーデのせいだかんね」
「意味が分からない」
「分からなくて良いよ。でも、今日は私に付き合ってよ」
「付き合うもなにも……」
 私達は非番じゃないか、と言う言葉が出せない。
 エーリカの執拗な口吻と、肌を這う舌の攻撃に耐えかね、あふう、と吐息が漏れる。
「トゥルーデ……」
「分かったよ、エーリカ」
 トゥルーデは髪を結ぶ事も、リボンを何とかする事も、服を直す事も諦め……エーリカをよいしょと抱えると、
ベッドに連れて行った。にしし、と笑うエーリカ。

 二人は夕食を過ぎても部屋から出てこなかった。
 その事では、誰も何も言わなかった。

「あれ、包装用のリボン、何処行ったんだろう……」
「おかしいね、もう一回ミーナ中佐に聞いてみようか」
 リーネと芳佳は、補給品のリストを見ながら、首を傾げた。

end

28 名前:名無しさん:2011/04/07(木) 23:08:32 ID:4XzKSQVc
以上です。
ふと思い付いたので書いてみました。
髪を解いたお姉ちゃんは良いなあ、と……。

ではまた〜。

29 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/04/12(火) 20:43:31 ID:pGa/HaPc
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ひとつ思い付いたカップリングをひとつ。
ではどうぞ。

30 名前:loiter 01/03:2011/04/12(火) 20:44:07 ID:pGa/HaPc
「なあ、ハルトマン」
「どしたのシャーリー」
 昼食のハンバーガーを頬張りながら会話するふたり。
 食堂は人もまばら。早めに食事を済ませて立ち去った者、慌てて食事を詰め込んで任務に赴いた者、
そもそも食べる気が無いらしく来ない者も居る始末。
 今他に居るのは、美緒と入れ違いに入ってきたミーナしか居ない。奥の厨房では、芳佳とリーネが食事の配膳やら食器洗いやらで大忙し。

 ぱくりと一口食べ、付け合わせのポテトフライをもそもそ食べた後で、シャーリーは改めて話を振った。
「今日さ。ヒマ?」
「ヒマも何も、私もシャーリーも非番じゃん」
「ああ、そうだったっけか」
「で? シャーリーは今日もストライカーいじり?」
「うんにゃ。どうしようか考えてた」
 頬杖をついてぼけっと答えるシャーリー。
「いつもみたいにルッキーニと遊べば? そう言えばルッキーニどうしたの?」
「ルッキーニね。今日は朝から虫取りとか言って、外出てったっきり。何処をほっつき歩いてるのやら」
「なるほど」
「そう言うハルトマンはどうしたんだ? あの堅物……」
「トゥルーデは今、哨戒任務中。それが終わったら、午後はミーナと一緒に軍司令部に行く予定」
「そっか。お互いヒマって事か」
 気怠そうにハンバーガーをかじるエーリカに、シャーリーは片肘をついたまま声を掛ける。
「なあ、たまには二人でどっか行かないか?」
「えー? 行くって何処へ? 勝手に基地の外出られないし……」
 面倒臭そうに応えるエーリカ。横でゆっくり食事をしていたミーナが二人に声を掛ける。
「あら、二人が暇なら、近くの町までお使いに行ってきてくれると助かるんだけど」
「町? ローマですか?」
 がたんと席を立ち行く気満々のシャーリー。
「そこまでは行かないけど……近くの漁港に」
「ぎょ、漁港? 何しに行くんですか」
 驚くシャーリーに、厨房から芳佳が答えた。
「確か、地元の漁師さんが『たくさん魚が獲れたから、どうぞ』って……ですよね、ミーナ中佐?」
「ええそうなの。せっかくの申し出だし、……ほら、物資もここ最近不足気味でしょ? だからちょうど良いかと思って」
「魚かあ。骨取るの面倒なんだよね」
「アジとかイワシなら、細かく叩いてつみれにして……ミンチにしてハンバーグ風に出来ますよ。食べやすくて栄養もあって美味しいですよ?」
 さらっと答える芳佳。
「……ま、何もしないよりは良いか。行こうハルトマン」
「うー」
 部屋で寝ていたい、と言わんばかりの表情もお構いなしに、シャーリーに連れられ、エーリカは基地を出た。

 シャーリーご自慢のトラックがエンジン音を控えめに轟かせながら、基地の入口から外へと出る。
「たまには外出しないとね」
「ローマでおかし買いたかったー」
「ローマねえ……。そっちはそのうち機会も有るだろう」
「うー」
「ま、漁港は近くだから五分と掛からないよ」
 ハンドル片手に、渡された地図を見て経路を確認するシャーリー。
「じゃあ何でトラックなのさ」
「貰える魚の量は、大きなカゴ数杯分って言うじゃないか。ハルトマン達のキューベルワーゲンじゃそこまで積めないだろう?」
「それ以前に魚臭くなるのが……」
「トラックはその辺適当で良いのさ。使い勝手がね」
 地図を仕舞う。前方に障害物が無いのを確認すると、シャーリーの目の色が変わる。
「舌噛むなよ?」
 エーリカが何か言う前に、シャーリーは素早くシフトチェンジすると、アクセルペダルを目一杯踏んだ。
 テールを滑らせながら、爆走するトラック。

 基地の入口でその様子を見ていた芳佳とリーネは、あわわ、と言う表情をする。リーネがおろおろしてミーナに問う。
「あの、ミーナ中佐……?」
「……まあ、仕方ないわね」
 事故らなければいいわ、と付け加えると、苦い顔をしたミーナは書類を手に、執務へと戻った。

31 名前:loiter 02/03:2011/04/12(火) 20:44:49 ID:pGa/HaPc
 数分と掛からず漁港に到着した二人は、予め用意されていた新鮮な魚介類をカゴや樽一杯に貰うと、端からトラックの荷台に積み込んだ。
「いやー、どうもありがとうございます」
 恰幅の良い、漁師のおかみさんらしき方々に囲まれ、シャーリーが礼を言う横で、黙々と荷台にカゴを乗せるエーリカ。
「じゃ、このカゴとか、使い終わったら後で返しに来ますんで」
 魚が傷まないうちにと、話も早々に切り上げ、二人はトラックに乗り込み、漁港を後にする。
「うわー、カゴ持っただけなのにすごい魚臭い……」
 服の裾を持ってすんすんと匂いを嗅ぎ、幻滅するエーリカ。
「しょうがないだろ。我慢我慢」
「シャーリー、町の人と話してばっかりだったじゃん」
「まあ、少しは御礼も言っておかないとさ。大丈夫、宮藤達が何か面白美味しい料理作ってくれるさ」
「まーた宮藤頼み?」
「あたしはせいぜい網焼きで焼く位しか出来ないからね」
 トラックに揺られながら、速度控えめに運転するシャーリー。ちらっと横目でエーリカを見、聞く。
「で、ハルトマンはどうなのよ」
「私は、料理するなってミーナとトゥルーデから命令されてる」
「はは、命令か……ってどんなだよ」
「私が作ると、食べ物じゃなくなるんだって」
「どんな魔法だ」
「私に聞かれても」
「ま、今回あたし達は物資運搬係だから、後は料理係に任せれば良いさ」
「料理係ねえ……確かにミヤフジは扶桑の料理なら良いけど、他が……」
「まあ、ねえ。また甘辛ソースの煮魚とか出てくるのかな」
「嫌いなの?」
「魚って骨有るじゃん? 呑み込んで喉に刺さると痛くてさ」
「ちまちましてるよね」
「まあ、不味くはないけどさ。魚は」
 それきり会話が途絶えるふたり。
 のろのろと道を進むトラック。
 暫くして、エーリカが口を開く。
「行きと違って、帰りのスピード、ゆっくりすぎない?」
「魚を山程積んでるし、そーっと走らないとな」
「さっさと運ぶんじゃなかったの?」
「まあまあ」
「さては」
 エーリカはにやっと笑った。
「理由付けて私とデートしたかった?」
 ぴくりと表情を少しだけ変えた後、平然とした顔を無理に作ってシャーリーは答えた。
「デートねえ。そう言うのなら、もうちょっと洒落たとこ……ローマにでも行ければ雰囲気出て良いんじゃね?」
「今から行く?」
「こんな大量の魚荷台に積んで?」
「ローマで屋台でも出して売れば良いんだよ」
「軍人が魚屋か?」
 あはは、と笑うシャーリーは、少しした後に首を横に振った。
「駄目だ。中佐に怒られるし、せっかくくれた漁師さんに悪いよ」
 それを聞いたエーリカは、くすっと笑った。
「な、なんだよ」
 シャーリーをちらっと見て、エーリカは後ろ手に腕を組んでふふーんとにやけた。
「シャーリーも、似てるね」
「似てる? 誰と」
「言うと怒るから言わない」
「分かった。あの堅物と似てるって言いたいんだな?」
「ノーコメント」
 キキッ、とブレーキを踏んで、トラックを路肩に停める。じっとエーリカの顔を見る。
「な、何さ?」
「あいつと一緒にすんな」
「それ言うだけの為にトラック停めたの?」
「いや……」
 シャーリーはのろのろとトラックを走らせた
「まあ、どうなんだろうね……あたしは」
「どうしたのいきなり黄昏れて」
 それきり、再び、無言の車内。ごとんごとんと、すすむたび車がゆれる。舗装のいきとどいていない道路は、気持ちのいいドライブを
たのしむにはかなり条件がわるかった。とはいえ、わるいのはそれだけではない。
(なにか失敗したかな)
 助手席にすわるエーリカは顔をそむけて窓のそとをぼんやりとながめながら、だまってしまった運転手の気配を耳のうしろのあたりで
感じていた。
 彼女とふたりきりになると、たまにうまくいかなくなった。シャーリーはおしゃべりだ。だから、だまってしまうだけですこし意味深だった。
 彼女とのあいだのそういう空気は、あまり得意ではない。彼女とは、軽快な会話をたのしんでいないと不安になる。それなのに、
シャーリーからことばをうしなわせてしまった。原因がなにかはわからないが、自分の失言のせいだということくらいには思いあたっている。
 エーリカは意味もなくすんと鼻をならした。シャーリーは、なにも言わない。

32 名前:loiter 03/03:2011/04/12(火) 20:45:22 ID:pGa/HaPc
「仮定の話だとして」
 どれくらいの沈黙があったかは、見当をつける気にもならなかった。シャーリーはやっとのことでそれをやぶって話をした。ただし、
こちらはちらりとも見ない。そのおかげでぎくりと肩がゆれたことに気づかれることはなく、ほっとしながらエーリカはつづきをうながす
ようにうんと言った。
「好きになった人には、既に好きな人がいました。さあどうする」
「自分が好きにするしか無いんじゃない?」
「ホントに?」
「相手の事考えるのも必要だけど」
「だよなー」
「どうしたのシャーリー。誰か好きな人でも出来たの? ルッキーニじゃなくて」
「いや、違うんだ、そうじゃなくて」
「まさかトゥルーデ?」
「なんでいちいち堅物なんだ」
「じゃあ、誰?」
「だから仮定の話だってばよ」
「なら、そう言う事にしとく」
「ああ。そうしといてくれ」
 シャーリーはわざと乱暴にギアチェンジをすると、基地目指して走るトラックの速度を上げた。
 あいかわらず窓越しの景色を見ながら、エーリカは頬杖をついていた。耳のうしろがぴりぴりする。微妙な空気、空々しい会話だと思った。
そういうのはきらいじゃないはずなのに、相手がシャーリーだと途端に居心地がわるくなる。その理由をしりたいと、いつも思った。けれど、
答えをさがそうとはしなかった。本当は、もうわかっているのかもしれない。
 結局また沈黙。重苦しいわけではない、ただ、すこしだけかなしくなる。エーリカには、シャーリーのかんがえていることがわからなかった。
しりたいのにしることができなかった。自分が彼女に望んでいること、彼女が自分に望んでいること、なにもかもが全然見えなくて、気味が
わるいくらいに胸がいたんだ。
「……お。見えてきた」
 やがて、見慣れた501の基地が姿を見せた。海のほとりに浮かぶ、偉大なる遺跡を包容する501の心臓部。ふたりの時間がおわりをつげよう
としている。エーリカはどこかでほっとしていた、ただし、シャーリーもまた同感であることはしるよしもない。途端に空気がゆるんで、肩の
力がぬけてゆく。すっかりとざされていたふたつの口も、ゆっくりと他愛ないおしゃべりを再開する。
「早速、宮藤達に料理作って貰おう」
「シャーリー、扶桑の食事好きだね」
「美味ければ何でもいいのさ」
「缶詰肉とかあるじゃん」
「ルッキーニじゃないけど、あれは勘弁……」
「そう言えばカゴの中に、足いっぱいあってうねうねしたのが……」
「タコかよ!? あれは勘弁……ルッキーニと宮藤は平気で食べるけど、あれ人間の食いもんじゃないだろ!」
「そんな嫌そうな顔しなくても。他に色々有るし」
「まあそうだけどさ……」
「おかしなシャーリー」
「へ?」
「何でもない。タコ食べられる様になると良いね」
「どう言う意味だよ、それ」
「な〜んでも」
 501基地の扉が開かれ、トラックはするりと門を潜った。
 芳佳とリーネが出迎える。
 かご一杯の魚介類を見て、今夜は魚尽くしですよ、と力強く言った芳佳を複雑な視線で見るシャーリー。
 大丈夫、シャーリーさんに蛸は出しませんから、と言われてほっとする。
 そんなリベリアン娘を見て、ふっと笑うと、カールスラントの気ままな天使はすっと姿を消した。

end

33 名前:名無しさん:2011/04/12(火) 20:45:39 ID:pGa/HaPc
以上です。
お互い気にはなるけど、
微妙にすれ違い気味なシャーリカ……。
新しい可能性と言う事で。

ではまた〜。

34 名前:256kb:2011/04/13(水) 18:59:52 ID:EdDb8UYQ
2月に本スレで書いたエイラ誕生日SSの続きを投下。

※本スレpart32 >>684 「音よ伝えて」を読んでからだとよりお楽しみ頂けます。

35 名前:256kb - 音よ伝えて After (1/2):2011/04/13(水) 19:02:48 ID:EdDb8UYQ


   ― 音よ伝えて After ―


 ニパへ

 早速だが、例のレコードを聞かせてもらった。
 おまえは本当にバカだ。わざわざわたしなんかの誕生日のためにあんなの作って、サーニャ
まで巻き込んじゃってさ。
 五〇二だって暇じゃないんだろ? それなのに隊ごと巻き込んで、というか、おまえが乗せ
られたのか、そこまでは知らないけど、とりあえずおまえが相変わらずなようで安心した。
 こんなことを書いておいてなんだけど、すごく嬉しかった。本当に。
 とても素敵な、一生忘れられない誕生日になったと思う。
 ありがとうな。
 でも、いろんな意味で恥ずかしかったから、今度会ったら怒る。

 今回は少し短いけど、書くことがうまくまとまらないのでこれで。
 また手紙を書くよ。

 平和になった空の下で会う日を楽しみにしている。

 愛する戦友へ、心を込めて。

 エイラ・イルマタル・ユーティライネン

 p.s. 他の五○二の隊員にもよろしくと伝えてくれ。

   ◇

 イッルから届いた手紙は相変わらず、彼女のぶっきらぼうな面が見え隠れするものだった。
「イッルのやつ……」
「ニパ君は本当に愛されているんだねえ」
「そんなことないですよ……って中尉!?」
 いつの間にかクルピンスキー中尉が背後から手紙を覗き込んでいた。
 慌てて文面を隠すが、中尉は意に介さずにやにやとわたしを見て笑う。
「そういう情熱的な言葉に弱いんだよ、ボクは」
「そもそもスオムス語読めるんですか?」
「いいや。でも、ニパ君の顔を見ればどんなことが書いてあるかは大体わかる」
「そ、そうですか」
「自分の部屋に戻る時間も惜しくて食堂で手紙を開いちゃうせっかちなニパ君とは、珍しいも
のが見れたね。そろそろご飯の時間だよ?」
「わかってますよ!」
 これでは感傷に浸る間もない。食事が終わってから改めて部屋で眺めることにしよう。
 そう思って手紙をしまおうとした時、あることに気付いた。
「……あれ?」
 イッルの手紙はいつも通りスオムス語で書かれているのだが、追伸の下の最後の一文だけが
違う言語で書かれているのだ。
 これは、カールスラント語だろうか。何故わざわざこんな手の込んだことを……。
「中尉、ここの部分なんですけど」
 せっかく近くにカールスラント人がいるのだし、中尉に文の内容を尋ねてみる。
「うん? どれどれ」
 中尉がよどみなくその一文を読み上げた。

36 名前:256kb - 音よ伝えて After (2/2):2011/04/13(水) 19:03:52 ID:EdDb8UYQ
「『それと、クルピンスキー中尉に例のニシンの缶詰を是非とも勧めてやって欲しい』」
「えっ!?」
 その一瞬で、その文の意味を理解した。
「ということで、是非とも勧めてくれたまえ」
「嫌です」
「どうしてだい? せっかくそう書いてあるのに」
「いえ、大変なことになるので」
「美味しすぎて奪い合いになるとか?」
「そんな可愛いものじゃありません」
 クルピンスキー中尉の誘いを断固拒否する。しなければならない。
 録音の最後でサーニャさんに手を出しそうなことを言ったから、こんなことを書いたのか!
慌てて切ったけど、サーニャさんに惚れ込んでいるイッルが聞き逃すはずもなく。
 もし本当にアレを勧めてしまったら、中尉だけでなく基地中大騒ぎになってしまう。そんな
事態はごめんだ。ただでさえストライカーの件で肩身が狭いというのに!
「中尉! またニパさんを困らせて遊んでいたんですか!」
 食堂に入ってきたポクルイーシキン大尉が中尉をたしなめた。
「ただの世間話だよ、大尉。ニシンの缶詰がどうのってね」
「ニシンの缶詰?」
 一瞬の間の後、はっとおぞましいものを見たような表情を浮かべる大尉。
 大尉はアレのことを知っているようだ……。
「ニパさん、もしかして――」
「スオムスの方もニシンを召し上がるんですね。扶桑でもニシンを食べるんですよ」
 調理に精を出していたシモハラさんがキッチンから出てきて、大尉の言葉を遮った。
「いや、その……」
 厳密にはアレはスオムスではなく、その隣国であるバルトランドのものなのだが、それは今
重要なことではない。
「なんだ、今日はニシンか?」
「いえ、今日はお肉です。もうすぐ出来ますからもう少し待ってくださいね、菅野さん」
 頷いて大人しくわたしの隣の席に着くカンノに続いて、ラル隊長とロスマン曹長も食堂に入っ
てくる。
「ほう、ニシンか。あれはマリネにすると美味いんだ」
「そうなんですか。お酢などもありますから、試してみてもいいかもしれませんね」
「わたしも、ちょっと気になります」
「ね」
 おずおずと会話に加わったジョゼさんにシモハラさんが同意する。
「せっかくの機会だ、エディータが教えてやればいい」
「そうね、たまにはそういうのもいいかしら」
 和やかな雰囲気が広がり、胸を撫で下ろす。なんとか、ニシン話は終結へ向かいそうだ。
 いや、向かいそうだったのだが、
「で、そのニシンの缶詰はどうなんだい、ニパ君?」
 クルピンスキー中尉はそれを許してくれなかった。
「そうそう、せっかくですから、そちらのも教えてくれませんか、ニパさん?」
 しかもそこにシモハラさんまで加わってくる。
 クルピンスキー中尉だけならともかく、シモハラさんの何も知らない純粋な探究心からの行
動には、ポクルイーシキン大尉も下手に口を挟めないようだった。
「えーっと……」
 下手に話してしまうと逆に食べてみたいと言い出す人がいないとも言い切れない以上、なん
とか話題を逸らさなければならない。
 手紙の余計な一文でこんなことになるなんて。
 わたしも、今度会ったら怒ろう。その口実が出来た。

 イッルのやつめ、次に会う日が楽しみだ。


Loppu.

37 名前:256kb:2011/04/13(水) 19:06:52 ID:EdDb8UYQ
手紙が遅配で気付いたら春でしたが無害です。
本スレが移行期だったのでこっちにこっそり投下させていただきました。
失礼します。

38 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/04/14(木) 22:58:54 ID:XF0ZJctI
>>256kb様
お久しぶりです! そして超GJ! 本スレ投下分も合わせて拝読しました。
501と502メンバーの合唱に心打たれました。エイラは幸せ者ですね。
そしてニパも相変わらずついてないというか伯爵容赦無しw


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
前回>>30-32「loiter」の続きが出来ましたので
投下します。ではどうぞ。

39 名前:loiter II 01/04:2011/04/14(木) 22:59:51 ID:XF0ZJctI
「補給物資の買い出し!?」
 朝のミーティングでミーナの言葉を聞いたシャーリーは文字通り椅子から飛び上がると手をびしぃっと挙げた。
「あたしが行きます! このあたしが!」
「ウニャー あたしもいきたーい!」
 同じく手を挙げたルッキーニを見て、シャーリーと美緒は苦い顔をした。
「ルッキーニ、お前は駄目だ」
「ヴェーなんでー」
「この前の事を忘れたのか?」
 美緒に問われ、おろおろするルッキーニ。
「うっ……でも、でもいいじゃんかー! なんかあたしのおかげで基地にいろ〜んなモノ増えたしぃ〜」
「そう何度も同じ事が起きると思うか!?」
「はい……」
 美緒に一喝されしおしおとしぼむロマーニャ娘。
「さて。今回は食料品と雑貨だ。希望者が有れば、少々の私物や消耗品の調達も頼むと良いだろう。何か無いか?」
 美緒はミーナから資料を幾つか受け取ると、ページをめくって隊員達に聞いた。

 そして準備が進められ……門の前にトラックが横付けされた。
 ドライバーは勿論シャーリー。但し助手席に乗るのは、何故かエーリカ。
「飛ばすなよ。安全運転でな」
 見送るトゥルーデが、腕組みしてシャーリー達の居る運転席を見上げる。
「大丈夫だって。あたしのドライビングテクニックはそこらのラリードライバーよりも安全、かつ速いんだ」
「何故言い切れる?」
 短く鋭く切り返されたシャーリーは、あぁ〜、と一瞬目を泳がせた後適当に答えた。
「ま、まあ……例えだよ例え。さ、行くかハルトマン」
「うー、寝てたかった」
「ハルトマン、たまにはお前も働け!」
「はいはい分かったよトゥルーデ。じゃねー」
 皆に見送られ、トラックはのろのろと基地の門をくぐり、外へと出た。
 基地と隊員達が見えなくなった瞬間、トラックが爆走を開始したのは言うまでもない。

「と言う訳で、ハルトマンが来たがっていたローマだ。どうだい?」
 ハンドル片手に、うーんと背伸びするシャーリー。ついでに片手でぐるっと辺りの景色を指さし、エーリカに教える。
「途中、あんなに飛ばして大丈夫なの?」
 呆れるエーリカ。道中の滅茶苦茶な飛ばしっぷりに車酔いもせず至って気楽な感じだ。
 ぼんやりと窓の外を眺める。車の流れも人通りそこそこで、「戦争をしている」と言う感じは余り感じ無い。
 街の所々に古代からの遺跡が散見され、ロンドンよりは退屈しなくて済みそうだが……実際のところ、
古代のものにあまり興味が無く、何より、今居る基地そのものが古代遺跡(の一部)であるエーリカにとっては、
ロンドンもローマも関心度は同じ様なものだった。
「大丈夫。前方視界よし、対向車無し。問題無いね」
 気楽に答えるシャーリーをちらっと見る。何でこんなにはしゃいでいるのか。薄々感じてはいるが、まさかと疑念を打ち消す。
 一方のシャーリーは、せっかく来たのにエーリカは何でこんなにテンションが低いのか謎であった。
「あの運転じゃミヤフジもリーネも来ない訳だわ。ま、私でいいのかな」
「何か言ったか?」
 言葉とは裏腹に何故か心躍る感じのシャーリー。ついアクセルをふかし過ぎてないか、隣のカールスラント娘に悟られまいとうまく誤魔化す。
「別に。私は自分のおかしが買えれば良いよ」
 エーリカはぼそっと呟く。
「なんか後ろ向きだな。とりあえず買い物済ませよう。店は知ってる。前にも来た事が有るからな」
 シャーリーはやる気のないエーリカを見て少し苛立ったが、まあ、まだ序盤戦、本当の戦いはこれからだと言い聞かせ、
平静を装う。本当はもっとテンションを上げて欲しかったが、あいにく相手は勝手知ったるルッキーニではない。
丁寧に丁寧に扱わないと。……しかしよくあの堅物はうまく手懐けてるな、と変なところで感心する。
「じゃあそこで」
「なんか、やる気無いんだよな〜ハルトマンは」
 たった一言だけの返事を聞いて、シャーリーは溜め息をついた。

40 名前:loiter II 02/04:2011/04/14(木) 23:01:14 ID:XF0ZJctI
 百貨店で全ての買い物を済ませた後、袋一杯の荷物を担いだ二人はふらふらと道端に停めたトラック目指して歩く。
「これで全員分。……みんな、要らないとか言って注文多過ぎなんだってば」
 ぼやくエーリカに、シャーリーも横目で見ながら愚痴る。
「ハルトマンだってお菓子買い過ぎだろ。どんだけ買ってんだよ」
 エーリカの背負うお菓子満載の袋を見て呆れた。ハロウィンなんてレベルじゃない。
まさに「子供にプレゼントを与えて歩く」聖人ニコラウスと言うべきか。
但し中身が全部彼女のものだと言う事が大きな違いだが。これを見てあの堅物は何と言うか……。
「このお菓子は、私の給金からも出してるから良いの。おかし〜、今度こそおかし〜」
 尋常ならざる執念を見せるエーリカ。この為だけに生きてきた、この為だけにやってきた、といわんばかりの表情。
「食べ過ぎると太るぞ」
「シャーリーみたいに胸だけ太るからいいよ」
 思わぬところで自分の名が出たリベリアン娘は、少し表情が崩れた。そのままもやもや溜まっていた感情を笑い飛ばす。
「あっははは! ハルトマンも面白い事言うなあ!」
「まあ出来たら苦労しないけどね」
 まだテンションの低いエーリカに少しがっかりしながら、シャーリーは言葉を選んだ。
「……ま、とりあえずトラックに積み込むか」
「はいはい」
 結局、無言でのそのそと荷台に詰め込んでいく二人。

 十分後、二人は洒落た場所に居た。シャーリーは両手を広げて自分の庭みたいに自慢する。
「で、ここがあたしと宮藤お薦めのカフェだ」
「そんな美味しいの?」
「勿論。これはまさに役得だな……あ、すいませーん」
 ウエイトレスを呼びつけると、メニューを開き、あれこれと注文する。
「これは……ひとつ、いや、ふたつお願い」
 ジェスチャーも交えて注文しまくるシャーリー。テーブルに頬杖をつき、退屈そうに眺めるエーリカ。
「私はメニュー全然分からないよ」
「任せろ」
 シャーリーの“自信”は何処から来るのかエーリカには分からなかった。
 だがシャーリーとしては、前回の“戦訓”から、明らかな手応えを既に感じていた。
 ハルトマンは絶対に美味いと言う、いや言わせてみせると何故か燃えていた。自分でも分からない位に。
 程なくして、コーヒーとケーキが運ばれて来た。
「役得ってこう言う事?」
 ぼやくエーリカに、シャーリーはフォークを取ると、ほら、と勧めて見せた。
「まあ食べてみなって」
 眠たそうな視線をケーキに向ける。
 基地でリーネや芳佳が作っているケーキとは全く違い、見た目からして洗練されている。
 角の辺りを切り崩して、なにげに口に運ぶ。
 味覚が唸り、意識と感覚が全開になる。目を見開くエーリカ。
「……おいしい!」
「だろ? この美味さは万国共通だね。ローマ万歳って感じだ」
「うん。おいしい」
 頷きながら、ケーキをぱくつくエーリカ。速度は速くなる一方で、呑気に様子を見ていたシャーリーも少々不安になる。
「わ、こら! そんなにがっつくな! あたしの分まで無くなるだろ!」
「すいません、今の同じのふたつ」
 通り掛かったウエイトレスに追加注文するエーリカ。
「ふたつ? そんなに食べるのか?」
「ひとつはシャーリーの分」
「ああ、そりゃどうも……」
 二人は代金の事もそっちのけで、ひたすらにケーキを楽しんだ。

41 名前:loiter II 03/04:2011/04/14(木) 23:01:42 ID:XF0ZJctI
「さて。たっぷりと美味しいケーキも食べた事だし」
「うん」
「少しのんびりするか」
 コーヒーのカップを手にすると、上品を気取って一口飲んでみせるシャーリー。
「良いの? またこの前みたいに敵が来たら……」
「その時の為に、トラックにストライカーユニットと格納装置積んできてるんじゃないか。あたしとハルトマンなら大丈夫だって」
「そう言う問題?」
「気にしない気にしない」
「ま、いいけど」
 いちいち「めんどくさい」と言いたそうなエーリカを見て、シャーリーは内心少々の怒りと不安、焦りを覚えていた。
 だがヘタに刺激してそっぽを向かれても困るし、かと言って自分の言いたい事も言えない様じゃ台無しだ。
 しかしエーリカはエーリカで、シャーリーに何と言って良いか考えあぐねていた。ヘンに気を遣い過ぎてもいけないし、
かと言ってこのまま退屈そうにしていてもシャーリーに悪い。折角色々案内してくれてるのに。
 ぼんやりと、時間だけが過ぎる。
 だらっとコーヒーを飲んでいるエーリカに、シャーリーは思い切って言った。
「でさ」
「?」
「どうよ? あたし達」
「どうって言われても……」
「デートしたいってこの前ハルトマンが言うから、連れて来たんだぞ?」
 ああ、言ってしまった、とシャーリーは思ったが、もうこの際どうにでもなれ、とやけっぱちでの発言。
 それに、ここで言わないと、タイミングを逸してしまいそうで。
 意外にも、エーリカの返事は素直なものだった。こくりと頷いて、金髪の天使は一言呟いた。
「……分かってる」
 エーリカの微かな笑顔と、不安の混じった複雑な表情を見て、シャーリーは半分喜び、半分失望した。
「意地の悪い奴だなー。分かってるなら何で最初から……」
「良いのかなって」
 エーリカは珍しく、思っている事を素直に口にした。
「何が」
「私達。だって、シャーリーにはルッキーニが居て、私には……」
 エーリカ自身の、素直なキモチ。
 彼女には世話焼きなトゥルーデが居て、一方のシャーリーはルッキーニと親子に近い関係だ。
 その事を正直に言うと、不意にシャーリーは真面目な顔を作って、言った。
「それは、言うなよ」
「え」
「ここでは、言うな」
「だって」
「ここだけで良いから、言うな」
 繰り返す。
 シャーリーの偽らざるキモチ。せめてローマ市内だけでも良い。基地に帰ったらさっぱり忘れても構わない。
だけどせめてこのちょっとした“デート”の間だけでも、言わないで欲しかったのだ。
「……面白いね、リベリアンジョーク」
 控えめな答えでお茶を濁そうとするエーリカ。
「ジョーク扱いかよ」
 少しすねるシャーリー。
 エーリカは頬杖をついたまま、微笑しながら言った。
「でもまあ、基地帰ってこんな事言ったら、他の二人がパニック起こしそうだしね」
「ま、まあ……そうかもな」
「ルッキーニとトゥルーデかぁ。油と火って感じ?」
「どんなだよ」
「にしし。気にしない」
 ここでエーリカは笑った。
 つられてシャーリーも笑った。
 分かってる。こいつは誰も傷付けたくないが為に、自分の感情を殺そうとしている、とシャーリーは感じていた。
 適当に振る舞っている様で実に鋭い観察眼で相手を見ている事も。
 だからこそ、あの堅物相手に、うまくやっているし、堅物も何だかんだで面倒を見ているのだろう。
 ……だけど、いや、だからこそ、少し位は自分をさらけ出して、もう少し踏み込んで言えば、自分の方を向いて欲しいと思った。
 でも、やっぱりそれは叶わぬ夢なのかも知れない。
 シャーリーは扶桑の魔女程天然でも無いし、強引に自分の所に引き入れる程の身勝手さも無かった。
 お互い、何だかんだで常識人なのかも知れなかった。

42 名前:loiter II 04/04:2011/04/14(木) 23:02:05 ID:XF0ZJctI
「ねえシャーリー」
「うん? どうした?」
「あと少ししたら、起こしてね」
 エーリカはひとつあくびをすると、テーブルに突っ伏した。
「お、おい、ハルトマン……」
 シャーリーはカップを置いて立ち上がった。そして溜め息一つつくと、エーリカの方に回って、自分の制服のジャケットを
そっとエーリカの身体に被せた。
 ……そういやそうだ。基地を出てから買い物でずっと回っていたんだから、疲れて当然だろう。
 シャツの姿になったシャーリーは、残り僅かなコーヒーを一口含むと、ふう、と一息ついた。
 そしてエーリカは、身体が少し重くなったと感じた。それはシャーリーの制服が由来とすぐに悟る。
 シャーリーは何だかんだで、気を遣ってくれる。トゥルーデとはまた違ったアプローチで。
 けど、何処か似ている部分も有って……戦場で背中を預ける程ではないけど、それでもある種の安心感は有った。
 だから目の前でぐう〜と寝てしまう。寝たふりをして反応を試す程、エーリカも悪魔ではなかった。
「平和だなあ……」
 ぽつりと呟いたシャーリーの言葉が、何処か抜けていて、寂しく感じる。
 エーリカはあえて反応せず、目を閉じたまま、シャーリーの温もりが微かに残る制服をかぶったまま、じっとしている。
 気怠い昼下がり。
 陽の光がふたりに熱分を与え、時折流れるそよ風が適度に体温を調節してくれる。
 ふう、と最後のコーヒーを飲み終えると、シャーリーは頬杖をついた。
「夕暮れまで……は無理か」
 そう言って自嘲気味に笑うシャーリーの言葉を聞いて、思わずくすっと笑ってしまうエーリカ。
「もう一回笑ったら、帰るぞ〜」
 のんびりしたシャーリーの台詞を聞いて、小さく頷いた。

end

43 名前:名無しさん:2011/04/14(木) 23:03:47 ID:XF0ZJctI
以上です。
シャーリカと言う可能性を追究してみました。
なかなかに難しく、また面白いかと。

ではまた〜。

44 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/04/17(日) 15:47:09 ID:Lzji4BPk
>>39 mxTTnzhmさま
シャーリカ…シャーリカですと?!読んでみて結構合うなあこの2人と思いました。
意外(?!)にも息がピッタリそうなカップルですねぇ〜!!

さて、お久しぶりです。今回はギャグ物が書きたいな〜…と思いこんなのを書いてみました!結構前から温めてたネタです!それではどうぞ!


【Alright!!】

ここは基地内の廊下。
窓のある角っこでビューリングと智子は話をしていた。

「ねえ…私たちのこと、バレてないわよね?」
と周りをキョロキョロする智子。

「ああ、大丈夫だ」
心配する智子をよそに、タバコを吹かすビューリング。

「…ねえ、エリザベス」
「やめろ、恥ずかしいだろその呼び名…」

珍しく顔を赤くするビューリング

「良いじゃない、2人っきりなんだし」
「…なんだ」
「あなた平気なの?私がその…毎晩その…ハルカやジュゼッピーナに…」
「別に」
「ちょっ、ちょっと!!すっ、少しは妬いても良いんじゃない??!!」
「別に私はお前と『カラダ』目的で付き合ってるんじゃない」
「それはよくわかってるけど…」
「なんだ…して欲しいのか?」
「へ…?」

ビューリングが発言した後、いきなり廊下で智子を押し倒す

「ちょっ…エリザベス!!正気??!!」
「いつだって私は正気だ」
「後でするから今はっ!!!」

バサッ!!!!

「………」
「っ!?ウルスラ曹長?!」
「おっ、お前いつから…!?」

2人が廊下にて押し倒したり、押し倒されている間に
いつの間にかウルスラが彼らの後ろに立っていた。
そして、ウルスラの周りには書類が散乱していた。

「あー、あのな…これはな」
珍しくあたふたするビューリング。

「これはね、その…運動?金魚運動?いや、ツイスターゲーム?」
支離滅裂な事を言い出す智子。

あわてる2人を尻目に、
「………」
無言で散乱した書類を拾い集め、傍の会議室へと入って行った...

「………」
「………」
「………どうするんだ?」
「み…見られちゃったわね…」
「終わりだ、いっそ私を殺してくれ…」
「それは同じよ、エリザベス…」
「………」
「………」











2人は10分間、何も言わずその場で茫然と立っていた。

ガチャッ...

すると、先ほどウルスラが入って行った会議室のドアが開く。

「あの〜ぅ…智子中尉とビューリング少尉、そろそろ入ってくれます?ミーティングがそのぅ…始まるんですけど」

声の主はエルマであった。


***

45 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/04/17(日) 15:48:13 ID:Lzji4BPk
>>44の続き。


「遅いねー、トモコとビューリングー。日が暮れるかと思ったねー」
「………」
「………」

無言でそそくさと部屋へ入る2人。

「さて、始めましょう!」
「…何を始めるのよ?」

そしてやっと智子が口を開き、

「以前から行ってたじゃないですかぁ!!『いらん子中隊』って名前があんまり良くないんで改名しようって!!」
「なんかそんなこと言ってたわね…」

『こんなくだらない事でわざわざ会議なんか開かないで!』と普段なら怒る智子だが、今日はそれどころの気分じゃない。
彼女が気になるのは、一応『会議中』にも関わらず学術書を読み漁っているウルスラのことだ。もちろんビューリングの視線もウルスラへ向いている。

「トモコ中尉とビューリング少尉!」
「はっ、はぃぃぃ?!」
「…っ?!」
「ちゃんと会議に集中してください!!」
「ごめん」
「済まない…」
「じゃあ始めますよ〜!ジャ〜ン!」

珍しくノリノリで、進行役兼書記係を引き受けたエルマは机の下から段ボールで作られた投票箱を取り出す。

「これって何ですか?」
と疑問の声を上げるハルカ。

「あ、これ食堂の脇にあったわ」
実はこの箱の存在を知っていたジュゼッピーナ。

「はい!基地のみんなにも考えてもらおうと思って投票箱を設置したんです!もちろんハッキネン司令の許可を取ってます!」

エルマが箱をひっくり返すと、投票用紙がドサッと出てくる。

「見てくださいこの反響!いかにこの部隊が好かれているかわかりますね!」
「やったねー、エルマ中尉!」
「いやいや、これもキャサリンさん達のおかげですって!」
「…早く開票しなさいよ」
「あ、すみません;;じゃあ始めますよ!『エルマタイム』!」
「エッ、エルマタイム?」
「じゃあ発表します!!!!」

と明るく、大声で投票用紙をランダムに選び、開いて読み上げる。

「スオムスいらん子中隊」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…次、読みますね」

先ほどの勢いは何処かへ行ってしまったのか、急に声のトーンが落ち発表をし続けるエルマ。

「『スオムス義勇独立飛行中隊』……『スオムスいらん子中隊』……『スオムスいらん子中隊』……『スカイガールズ』……『スオムスいらん子中隊』……『スオムスいらん子中隊』……」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「………」
「…まだ続けますかぁ?!」

何故か涙目で、そしてキレ気味で一同に話しけるエルマであった…。


***

46 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/04/17(日) 15:49:34 ID:Lzji4BPk
>>45の続き。


「エルマ中尉は?」
「あぁ、さっきキャサリンが部屋に行って慰めに行きましたー。精神的ダメージが強すぎて、大泣きしているそうでーす」
「まああんなに張り切ってましたもんねぇ、少しでも悪いイメージを払しょくしようと必死でしたもん」
「あんなんじゃヘコむわよ…」

そしてハルカは残りの投票用紙を取り出す、

「他にどんなことが………うわ、半数以上が『スオムスいらん子中隊』。まあこの名前、浸透してきましたもんね」
「あとは『第08MS小隊』だの『ハイスクール奇面組』だの」
「『バーミヤン』だなんて…コイツ、真面目に考えて投票してないわ」
「『トイレが詰まりやすくなっています。修理してください』だって」
「そうそう、私も思ってました。でも御意見箱になってる…」

そして智子はある一枚の投票用紙を取り上げる、

「えと何なに、『トモコ中尉とビューリング少尉は付き合ってる』…っ!!??」

ドスンッ!!!!

「ちょっ…ビューリング少尉、どうしたんですか??!!」

何故かビューリングは椅子から転げ落ちていた...

「こっ…これ…っ!!」
「嘘よっ!!嘘だわっ、こんなのっ!!!!こんなの、誰が書いてこの箱の中に入れたの??!!」
「さ、さあ…;;;」
「落ち着いてください智子中尉;;」

刀を取り出した智子を必死に取り押さえるハルカとジュゼッピーナ。

「それにビューリング少尉、タバコ持つとこ…逆ですよ」
「え?………熱っ!!!!」


***

47 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/04/17(日) 15:50:58 ID:Lzji4BPk
>>46の続き。

「大丈夫ねー?」
「大丈夫だ、問題ない」
「…それどっかで聞いたことあるフレーズねー」
「良いから早く包帯を巻け!」

誰も居なくなった会議室にて、キャサリンはビューリングの手当てをしていた

「それにしてもどうしたねー?」
「あのなあ!人のプライベートをいちいち詮索するな!」
「悲しいことを言わないでねー、私たち『スオムスいらん子中隊』仲間よー?」
「はああ…」

キイィッ...

部屋に入ってきたのは…、

「ウッ、ウルスラ…?」

学術本を片手にウルスラが入ってきたのであった。

「ごめんなさい。ここまで大事になるとは思わなかった」
「やっぱり犯人はお前か…」
「???」
「…悪いがキャサリン、ちょっと席を外してくれないか?」
「えー」
「『えー』じゃない、出てけ」
「はーい。用事が済んだら呼んでねー」

とキャサリンを退室させた。

「あのなあ…お前なあ…」
「こんな大事になった事は謝る、けど発表した事は謝らない」
「………お前っ!!」
「2人が付き合ってる事を発表して何が悪いの?」
「そっ、それは…」
「見てて、すごくもどかしい」
「は???」
「堂々と発表した方が、清々する」
「は…はあ…;;」

あまりのウルスラらしくない発言に、とても驚くビューリング。

「ビューリングにはどこか、罪悪感でも感じてるの…?」
「罪悪感?何がだ?」
「親友を死なせてしまった自分は、恋愛なんかしてはいけないって」
「…そこまでは思っていないが…でも確かに、そうゆう身分ではないと最近まで思っていた」
「なんで過去形?」
「トモコが変えてくれたんだ、私を」
「トモコ中尉が?」
「ああ。つい最近まで私は…悪夢に魘されていた、親友だったアイツを自分が殺してしまったんだと」
「………」
「そんな魘されてる時、ふと目を覚ますと心配してくれたのか額にかいた汗を必死に拭いててくれたんだ。トモコは」
「それがきっかけ?」
「まあ…そんなところだ。私を闇のどん底から救ってくれた」
「………」

48 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/04/17(日) 15:51:25 ID:Lzji4BPk
>>47の続き。

「色々なアドバイスしてくれたぞ、アイツが死んでから一回も墓に行ってなくて…今度行くべきだと言ってくれたり」
「…じゃあなおさら、発表すべき」
「あのなあ…私はな、」
「ビューリング少尉はトモコ中尉が好き」
「…な、何故話が一番最初に戻るんだ??!!」
「中途半端に付き合うのはトモコ中尉に悪い…と思う」
「…そうか」






そして夕食時、

「えと…お前らに報告がひとつある」
「あ、あのね…みんな…」

そうして、『交際宣言』をした智子とビューリングであった…。




















「あ、あの…ついでにやはり『スオムスいらん子中隊』の改名も…」
「もうその事はどうでも良いねー…;;」


【おわり】

49 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/04/19(火) 18:21:53 ID:i73GjE1A
>>48 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJ! 投票箱意見が適当過ぎてワロタ
ビューリングとトモコも良いですね。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」続編となります。
ではどうぞ。

50 名前:free free:2011/04/19(火) 18:24:24 ID:i73GjE1A
 それは、雨上がりの早朝の出来事。
 まだ日も昇らないうちから、部屋を分断する「ジークフリート線」を超えてくるウィッチがひとり。
 そこらに散らばるがらくたやよく分からない物体をかきわけ、時折蹴飛ばしたり踏み潰しつつ、ベッドの近くでごろりと横になるエーリカの傍に近付いた。

「ハルトマン」
 辛うじて毛布を掛けて眠っていたエーリカは、寝る前に読んでいたであろう本を頭の上からずらし、退ける。
 目をしょぼしょぼさせて問う。
「どうしたのトゥルーデ、改まって」
 聞かれた“堅物”大尉は、腰に手を当て、きりりとした感じで聞いた。
「何か欲しい物はないか? 例えば……」
「おかし」
「即答か……」
 いささか幻滅気味の同僚を傍目に、よいしょと身体を起こすエーリカ。ぼさぼさの髪をふぁさっとかきあげ、何事かと聞き返す。
「どうしたのトゥルーデ? 私、何か変な事言った?」
 眠気はまだ残るが、意識は次第にはっきりしてきた。まだ起床時間ではない事を、目覚まし時計を見て確認する。
「いや、それはいつもの事だろう。他に無いのか?」
 繰り返ししつこく聞いてくる“相棒”を見て、エーリカは目覚ましを横に置くと、一呼吸置いて答える。
「無い事は無いけど……でも今日に限ってどうして?」
 トゥルーデは、何故かいらっとした表情でなおも聞いてくる。
「今日は何の日だ?」
 なるほど、と思い当たったエーリカは、ベッドにごろっと横になって答える。
「お休みの日〜」
「違う! 今日はお前と妹ウルスラの誕生日だろうが!」
 ふふ、何となく分かっていたよ、とエーリカはひとりごちる。
 毛布にくるまりながら、上目遣いにトゥルーデを見る。
「トゥルーデ、何か用意してくれるの?」
 急に風向きが変わった事に気付いたのか、目の前に立っているカールスラント娘が慌てているのがよく分かる。
「そ、それは、同じ仲間としてだな……」
 しどろもどろになるトゥルーデ。はっきり言えば良いのに、と思うも、それはもう少しだけ後にしようと思う。
「もしかして、食堂でみんな待ってるとか?」
 一応確認する。
「こんな朝っぱらから流石に……」
 いささか呆れ気味のトゥルーデを見て、ふむふむ、と考えを巡らすエーリカ。
「そっかー」
「で。決まったのか」
 何度目かの質問。その訊き方、相変わらず野暮だねと内心ぼやくとエーリカは毛布の端からそっとトゥルーデの手を取った。
「もう決めてるんだよね」
 指を絡める。ぐいと引っ張り、腕も一緒に絡めていく。
「ハルトマン。何故私の手を……」
 焦りがはっきり顔に出た“お姉ちゃん”を見て、微笑むエーリカ。
「鈍いなあ、トゥルーデ」
 やっぱり、もっとしないと分からないかな、と、一気に実力行使に出る。
「ちょ、ちょっと……おい、髪を解くな、服を脱がすな!」
「私、トゥルーデだけで良いよ」
「お、おい……」
 それ以上は言わせないよ、とばかりに唇を重ねる。
 最初は少し躊躇っていたが暫く繰り返すうちに観念したのか、ゆっくり息をつくと、はああ、と熱い吐息混じりに、名を呼んできた。
「エーリカ」
「そう、それでいいの、トゥルーデ。私だけのトゥルーデ」
(……まあ、こう言う事は今日だけじゃないんだけど)
 お祝いしてくれるなら、こう言うのもアリだよね。
 エーリカはトゥルーデの耳元でそう呟くと、舌を這わせる。お楽しみはこれから。

 その後、朝のミーティング後に始まったエーリカの誕生祝いで誰よりも照れていたのはトゥルーデだった。
 その理由は、トゥルーデ、そしてエーリカだけが知っている。
 ふたりだけの内緒。
 実際の所501隊員からすると今更秘密でもなかったが……とりあえず祝いは続いた。

end

51 名前:名無しさん:2011/04/19(火) 18:24:44 ID:i73GjE1A
以上です。
エーリカ誕生日おめでとう!
EMT!EMT! と言う事で。

ではまた〜。

52 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/04/22(金) 00:25:25 ID:JxnhOYu2

>>22 DXUGy60M様
GJです、素晴らしいアメリーヌをありがとうございます!
可愛らしいアメリーとかっこいいペリーヌが素敵すぎます。

>>34 256kb様
GJです、手紙のエイラがかっこいいですね。
伯爵の明日はどっちだ

>>44 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです、恋人になりたての智ちゃんとビューさんが可愛らしいです。
ウルスラマジ天使!

>>49 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
いつものエーゲルGJです!
シャーリカの関係も素晴らしいです。

さて、皆様お久しぶりです。
訳あって3月の間に投下できなかった誕生日話をまとめて投下していきます。
1本目は保管庫NO.1331「天使ミーナVS悪魔ミーナ」の続編で、ラルさん×ミーナ中佐というちょっと変わったCPです。
ではどうぞ

53 名前:天使ミーナVS悪魔ミーナ RETURNS 1/2:2011/04/22(金) 00:26:37 ID:JxnhOYu2
「ん……」
燦々と降り注ぐ朝の日差しに照らされ、私は目を覚ます。
窓の外からは小鳥たちの気持ち良さそうな囀りが聴こえてくる。
「やあミーナ、起きたかい? 今日は良い天気だね」
目を覚ましてからしばらくの間、昨日の出来事を思い出しぼーっとしていると、隣から明るく陽気な声が私の名前を呼ぶ。
「グ、グンドュラさん……」
朗らかに微笑む彼女を見て、私は自分の顔が真っ赤になるのを感じる。
昨日の出来事がいっそ夢だったらどんなに良かったことか。
「昨日は楽しかったよ。君の意外な一面が見れてね」
「あ、あなただって、いきなりあんな事……」
私はシーツに包まり俯きながら、グンドュラさんから目を反らす。
「ごめんごめん。でも、あそこでああしなかったら逆に私がやられていた。そうだろ?」
「そ、それはその……」
明るい口調でそう語るグンドュラさんに私は何も言い返せなくなってしまう。
そう、全てのきっかけは昨日の夜……

――――――――――――

――1947年3月、バルクホルンの家

「いやー、寮を抜け出して夜の街に繰り出したのが上官にバレた時はさすがのボクも終わったと思うね」
「あはは! 伯爵面白〜い!」
その日は、トゥルーデの家で久しぶりにカールスラントのみんなで集まって昔話に花を咲かせていた。
ロスマンさんが誕生日の近い私とグンドュラさんとトゥルーデのために作ってくれたケーキを肴に、他愛のない話で盛り上がる。
「お、おい……エーリカもクルピンスキーもクリスが上で寝てるんだからもう少し静かにしてくれないか?」
すっかりできあがってるフラウとクルピンスキーさんに対して、トゥルーデが呆れながら言う。
「そっか、クリスちゃんもう寝てるんだね。それじゃあクリスちゃんのベッドに突撃と行こっかな」
「おっ、いいね〜伯爵。私も行くー!」
「き、貴様ら……ふざけるな〜!」
トゥルーデが顔を真っ赤にさせながら、クリスちゃんの寝室へ向かおうとしたフラウ達を追いかけまわす。
「うわっ、トゥルーデが怒った!」
「逃っげろ〜」
「逃がすか〜! 待て!」
えっと……なんて言うかトゥルーデが一番この場を騒がしくしているんじゃないかしら。

「やれやれ……一番騒がしいのはバルクホルンじゃないか」
グンドュラさんも私と同じ事を考えていたらしく、走り回る3人を見ながら呆れたように呟く。
「本当ね……でも良かった、ああやってみんなとまた大騒ぎするトゥルーデが見られて。
彼女、一時期自暴自棄になってたみたいだから……」
ロスマンさんが複雑そうな表情でトゥルーデの方を見ながら言った。
それを聞いたグンドュラさんも腕を組み、考え込むような表情になる。
「それもそうだな。ミーナもあの時は大変だっただろう? その……色々と」
「そうね、辛くなかったと言えば嘘になるけど……フラウや501のみんなが私たちを
支えてくれたから、辛かった出来事も乗り越えられたわ」
私は当時の事を思い出しながら、グンドュラさんの問いにそう答える。
トゥルーデやフラウや美緒、それに501のみんなのおかげで今日の私があると言っても過言ではない。
本当、素晴らしい"家族"を持ったものだと心から思えた。
最も、その家族達に頭を悩ませられた事もたくさんあったけど……
そんな事をロスマンさん達に語りながら、私はワインを飲み進めた。

――数十分後……

「駄目だ〜もう歩けない……先生、おんぶして」
「できるわけないでしょ……ほら、しっかりしなさい」
ロスマンさんが顔を真っ赤にしたクルピンスキーさんの肩に手を回して身体を支える。
「どうしたの先生〜? こんなにひっついちゃって今日は随分大胆だね〜」
「何馬鹿な事言ってるのよ。じゃあトゥルーデ、私とニセ伯爵は奥の寝室を借りるわね」
「ああ分かった。エーリカ、お前はどこで寝る?」
トゥルーデが寝室に向かうロスマンさん達を見送りながら、真っ赤な顔で酔いつぶれているフラウに問いかける。
「にひひ〜。私、トゥルーデと一緒に寝たい〜」
フラウがトゥルーデにハグしながらそう答える。
抱きつかれたトゥルーデは、まんざらでもなさそうな表情で頬を赤らめた。
「……分かった分かった、ちょっと待ってろ。グンドュラはどうする……って、寝てるのか」
「う〜ん、むにゃむにゃ……」
トゥルーデは、気持ち良さそうに眠っているグンドュラさんの身体を揺すって起こそうとするも、中々起きる気配がない。
「仕方ない、寝室まで連れてってやるか」
見かねたトゥルーデがグンドュラさんを抱え上げながら言った。
「ミーナ、グンドュラと同じ部屋でいいか?」
「ええ、構わないけど」

54 名前:天使ミーナVS悪魔ミーナ RETURNS 2/3:2011/04/22(金) 00:28:42 ID:JxnhOYu2

≪数分後、2階のとある部屋≫

「これでよし、と」
トゥルーデがグンドュラさんをベッドに乗せ、身体の上からシーツをそっとかける。
「それじゃお休み、ミーナ」
「お休み〜、ミーナ」
「ええ、お休みなさい。トゥルーデ、フラウ」
トゥルーデとフラウを見送った後、寝巻きに着替えて眠りに就こうとしたちょうどその時、
グンドュラさんがごろんと寝返りを打つのが見えた。
寝返りを打った拍子にグンドュラさんの身体を包んでいたシーツがベッドからずり落ちる。
「ん〜、むにゃむにゃ……」
「あらあら、グンドュラさんったら……」
私がシーツをかけ直すためにグンドュラさんに近づいた時、不意に彼女のお尻が目に入る。
「グンドュラさんってすごく形の良いお尻、してるわね……」
彼女の丸みを帯びた柔らかそうなお尻を見てたら、自分の中でもやもやとした気持ちが湧き上がってくる。
ああ、触りたいわ……

『触っちゃいなさいよ、ミーナ』
(出たわね、悪魔ミーナ!)
久しぶりに自分の中の悪魔が私に囁きかけてきた。
『ミーナ、これは今まで501の隊長として頑張ってきたあなたへのご褒美よ。
グンドュラさんのお尻を好きなだけ触りなさい』
(で、でも……)
確かに今のグンドュラさんは無防備だ、触るには絶好の機会と言えるだろう。
しかし、今の自分にはまだかろうじて理性が残っていた。
『悪魔ミーナの言うことを聞いちゃ駄目よ、ミーナ!』
(天使ミーナ……!)
これまた久しぶりに天使の自分が心の中で囁きかけてきた。
『いかなる理由があろうと、相手の合意もなしにお尻を触るなんて人として最低よ!』
(そ、そうよね……)
『何よ! 今まで一度も私に勝ったことないくせに!』
悪魔ミーナが天使ミーナにそう言い返す。
そう、私の中で天使と悪魔が対立を始めると勝つのはいつも決まって悪魔ミーナだった。
その結果、いつも私は自分の欲に負けて暴走してしまい、隊のみんなに迷惑をかけたものだ。
(や、やっぱり合意もなしにお尻を触るのは良くないわよね……)
私が自分の欲を振り払おうとしたその時、悪魔ミーナが再び囁きかけてくる、
『いいことミーナ? ここでグンドュラさんのお尻を触らないというのは彼女に対する冒涜よ!
ウィッチ達の健康的なお尻を触る事こそ、あなたの義務なのよ!』
悪魔ミーナのその言葉で自分の中で何かが吹っ切れた。
そうだ、ウィッチのお尻を触る事が私に課せられた義務なのだ。

「そうよね、ちょっとだけなら……いいわよね?」
私がグンドュラさんのお尻に触れようとしたその瞬間、彼女はむくりと起き上がり、私の腕をつかんできた。
「え?」
「やれやれ、お尻好きって噂は聞いてたけど本当だったんだね。眠ってたらそのままやられるとこだった」
「お、起きてたの?」
私は胸をドキドキさせながら、グンドュラさんに訊ねる。
「ああ。『グンドュラさんってすごく形の良いお尻、してるわね……』辺りからね……えいっ」
「きゃっ!」
私はそのままグンドュラさんにあっさりと押し倒されてしまう。
さすがフラウ、トゥルーデに次ぐ撃墜数第3位のウルトラエースなだけあるわね……って、感心してる場合じゃない。
この状況、かなりマズいんじゃないかしら?
「私のお尻を触りたかったのかい? でも、私からしてみれば……」
グンドュラさんが私のお尻に手を回し、ズボンに手をかけてそれをするすると脱がしていく。
「ちょ、ちょっと……」
「君のお尻のほうがよっぽど興味深い」
グンドュラさんはそう微笑むと、私のお尻をそっと撫でてくる。
「あぁ……ぁんっ」
お尻を撫でられるのが気持ちよくて、私は思わず声を洩らしてしまった。
「グ、グンドュラさん……はぁっん……」
お尻を撫でる手が段々激しくなり、それに呼応するかのように私の声も大きくなる。
「これが噂の200機目撃墜を達成したというお尻か……確かに素晴らしい触り心地だ」
「そ、それは言わないでよ……あぁん」
「ミーナ、もっと気持ち良くしてあげるね」
そう言って、私のお尻を優しく揉んでくるグンドュラさん。
お尻を揉まれる感覚に私はびくりと身体を震わせる。
「グンドュラさん……ダ、ダメっ……あっ、ぁん」
「ミーナ、可愛いよ」
グンドュラさんのその言葉を最後に、私の意識はそこで途切れた……

55 名前:天使ミーナVS悪魔ミーナ RETURNS 3/3:2011/04/22(金) 00:30:38 ID:JxnhOYu2
――――――――――――

「おーい! ミーナ、グンドュラ! 朝食ができたぞ」
回想が終わると同時に、下のほうからトゥルーデが私たちを呼ぶ声が聞こえてきた。
下から漂ってくる朝食の美味しそうな匂いが私の食欲をくすぐる。
「分かった、今行くよー!……さてと、それじゃ私は先に行ってるよ。ミーナも着替えたらすぐに来てね」
「え、ええ……」
私は1階へ降りたグンドュラさんを見送った後、自分のお尻をそっと触ってみた。
昨日彼女に触られた感触がまだ残っているような気がした。
「また今度、触ってもらおうかしら……」
私はズボンを穿き替えながら、不意に呟く。
たまにはこんなスリルも悪くないわよね?

〜Fin〜


――――――――――――

以上です。内容はほとんど誕生日関係ないですね。
続いてはあくしずのピンナップ(ttp://skm.vip2ch.com/hirame/hira026098.jpg)を元にしたトゥルーデ×エーリカです。
若干えっちな表現が含まれています。ではどうぞ

56 名前:Double Angels:2011/04/22(金) 00:31:54 ID:JxnhOYu2

「トゥルーデ! 誕生日おめでとー」
3月20日、私は今日が誕生日のその人の背中めがけて思いっきりハグをする。
トゥルーデは最初ビックリしていたけど、抱きついてきたのが私だと分かると振り向き、優しく微笑んでくれた。
「ああ、ありがとうエーリカ……って、何だその格好は!」
「天使だよ。見て分からない?」
今私が身に付けているのは白と水色をベースにした露出度の高いトップスとベルト、それに輪っかと羽の装飾。
そう、早い話が天使の格好をしているというわけだ。
「いや、だから何でそんな格好をしているのか聞いたんだ」
と、腕を組み困ったような表情で訊ねてくるトゥルーデ。
「えへへ、可愛いでしょ? この前の休日に買ってきたんだ。もちろんトゥルーデの分もあるよ。はい、これ」
私は自分が今着てるのと同じ衣装をプレゼントとしてトゥルーデに渡す。
「一緒に着よ」
「こ、断る! 何で私がそんな格好を……」
う〜ん、やっぱりそんな簡単に着てくれないか。
いいもんね、それなら無理矢理着せちゃうから。
「へへ、ちょっとじっとしててねトゥルーデ」
「お、おいエーリカ! いきなり何するんだ!」
私はトゥルーデの軍服を脱がして天使の衣装を着せていく。
トゥルーデも抵抗しようと思えば出来たはずなのにそれをしないって事は、私と密着してるのがまんざらでもなかったのかな。
「後は輪っかを付けてと……よし、これでOK!」
「エーリカ、やっぱり私にはこんな格好似合わないと思うが……」
天使の衣装を纏ったトゥルーデが恥ずかしそうに頬を染めながら俯く。
ねぇトゥルーデ、その表情はちょっと卑怯じゃないかな?

「もう……トゥルーデ可愛すぎ」
「エ、エーリカ!?」
気が付けば私はトゥルーデの事をぎゅっと抱きしめていた。
着替えさせた時よりも一層お互いの肌と肌が密着する。
トゥルーデの胸に耳を当ててみると、激しい胸の鼓動が聞こえてきた。
「トゥルーデ、すごくドキドキしてるね……」
「あ、当たり前だ、大好きなエーリカにいきなり抱きしめられたんだから……」
「え?」
不意にトゥルーデに大好きと言われ、私も思わず顔が真っ赤になってしまう。
「どうした、顔が真っ赤だぞ?」
「うぅ、トゥルーデの意地悪……」
私がそう呟くと、トゥルーデは悪戯っぽく頬笑みながら私にキスをしてきた。
「トゥルーデ……あぅ」
「ふ、可愛い奴め」
そう言いながらトゥルーデは、右手を私の肩に回して左手で私の太ももの辺りを撫でてくる。
「トゥルーデ……あぁっ……んっ」
トゥルーデに撫でれるのがあまりにも気持ちよくて、私はつい普段出さないような声を洩らしてしまう。
それを聞いたトゥルーデは一層激しく私の太ももを撫でてきた。
「エーリカ、すごく綺麗だ」
「ひゃっ……んっ」
トゥルーデはそれからしばらくの間私の太ももを撫でた後、今度は私のベルトの中に自分の左手を侵入させてくる。
ちょ、ちょっと待って! 今私ズボン穿いてないからそんなところ撫でられたらやばいって!
「ひゃっ……トゥルーデ、そ、そこっ、ダメ……あぁん」
「な!? 何でお前はズボンを穿いていないんだ!?」
「な、何でって、いつも通り見つからなかったから……ぁんっ」
私がそう応えるとトゥルーデはぴょこんと使い魔の耳と尻尾を出して、私をベッドに押し倒した。
「へ? トゥ、トゥルーデ?」
私がトゥルーデの顔を覗き込むと、彼女は顔を真っ赤に紅潮させていた。
「全く……お前は私をどれだけドキドキさせれば気が済むんだ」
それはこっちの台詞だよ、私だってトゥルーデの傍にいるとドキドキが止まらないんだから。
それにしても、今日は随分積極的だねトゥルーデ。
ひょっとして、誕生日だから気持ちが舞い上がってるのかな?

「いいよ、今日はトゥルーデの好きにして」
私のその言葉を聞いて、トゥルーデは顔を更に真っ赤にさせる。
「……どうなっても知らないぞ」
そう呟きながら、トゥルーデは左手を再び私のベルトの中に侵入させてきた。
「んっ……トゥルーデ……ひゃぁん」
「エーリカ、愛してる」
そう耳元で囁かれ、もう一度私の唇に自分の唇を重ねてくるトゥルーデ。
ありゃりゃ、どうやら私、トゥルーデの中で眠ってたワンちゃんを起こしちゃったみたい。
でも、こんなに元気ならまだまだ一緒に飛べるかもね。
ねぇトゥルーデ、来年の今日はどんな服を一緒に着よっか?

〜Fin〜

―――
以上です。エーゲルマジ天使! ところで、どうしてエーリカはピンナップだとおっぱいが増量するんでしょうね。
最後は保管庫NO.1453「Magic Box」の続編でパティ視点のジェーン×ドミニカです。ではどうぞ

57 名前:Double Angels 1/2:2011/04/22(金) 00:33:26 ID:JxnhOYu2

「ジェーンに私をプレゼントしようと思うんだ」
時刻は23時を少し過ぎた頃、私とティナが談話室でトランプで遊んでるところに
ドミニカがやってきて、不意にそんな事を言うもんだから思わず吹き出しそうになった。
「えっと、今……なんて?」
「ほら、この前の私の誕生日に2人がジェーンをプレゼントしてくれただろう?
それと同じ事を私もやろうと思ってな」
と、部屋の時計を見ながらドミニカが言う。
そう言えばあと数十分もしないうちにジェーンさんの誕生日ね。
「つまり、またぼく達に協力してほしいってこと?」
「ああ、そういう事だ」
「ぼくは別にいいけど……パティはどうする?」
「もちろん協力するわ。ジェーンさんの反応も見てみたいしね」
「よし! そうと決まれば善は急げだね。ぼく、隊長からおっきな箱借りてくるよ」
悪戯っぽく微笑みながらティナは一旦談話室を後にする。
さてと、それじゃあ私は主役の大将さんに飾り付けでも施すとしますか。

――それから10分後

「後はここをこうして……これでよし、と」
「お、おいパティ……ちょっと巻きすぎじゃないか?」
「え? そんな事ないと思うけど……ところでドミニカ、さっきから気になってたんだけどその箱は何?」
全身をリボンでぐるぐる巻きにされても尚、ドミニカが大事そうに抱えている小さな箱を見ながら私は尋ねる。
「ああ、これはさっき私とルチアナで作ったジェーンのバースデーケーキだ。最も、私は横で見てただけだけどな」
「要はそれ、ルチアナが1人で全部作ったのね」
「まぁ、そうとも言うな」
ニヤリと笑いながら、私のツッコミにそう言い返すドミニカ。
「隊長に頼んでおっきめの箱、貰ってきたよ」
ちょうどそこに、大きな箱を持ったティナがニコニコ顔で談話室に戻ってきた。
よし、これで準備はOKね。
「それじゃあドミニカ、私たちはジェーンさんを連れてくるから箱の中で待っててね」
「ああ、頼む」
私たちはリボンでぐるぐる巻きになってるドミニカを箱に入れて、その上からそっとフタを被せた。
後は箱の中の眠り姫を目覚めさせる王子様を連れてくるだけね。

58 名前:Double Angels 2/2:2011/04/22(金) 00:34:09 ID:JxnhOYu2
――更に10分後

「パティさん! マルチナさん! どこに連れてくつもりですか?」
「今に分かるよ。ほら、早く早く」
私とティナはジェーンさんの手を引っ張って彼女を談話室まで連れて行く。
「ささ、入って入って」
「は、はい……えっと、この箱は何ですか?」
ジェーンさんは、部屋の真ん中に不自然に置かれている大きな箱を見て首を傾げる。
「へへ、誕生日おめでと、ジェーン」
「それは私たちからの誕生日プレゼントだよ、開けてみて」
「ええ!? いいんですか? こんな大きなプレゼント……」
「うん。ほら、早く開けて開けて」
「ありがとうございます。では、早速開けてみますね」
ジェーンさんは戸惑いながらも箱のフタをゆっくりと開けていく。
ふふっ、ジェーンさんがどんな反応をするか楽しみね。
「ジェーン、誕生日おめでとう」
「わわっ! た、大将!?」
箱から出てきたリボンに身を包んだドミニカにビックリしたジェーンさんは思わずその場で尻もちをついた。
うん、中々面白いリアクションね。
「何だ、そんなに驚くことないじゃないか。前にお前も私に同じことをしてくれただろう?」
「そ、それはそうですけど……まさか箱の中に人が入ってるなんて思わないじゃないですか」
「4ヶ月前の私も同じことを思ったさ。さ、今日はジェーンが私を好きにしていいぞ」
と、聞いてるこっちが赤面するような台詞を平然と言い出すドミニカ。
何と言うか、さすがロマーニャ人の血が入ってるだけあるわね。
「た、大将! いきなり何言い出すですか!」
ティナのズボンと同じくらい顔を真っ赤にしながら、ジェーンさんは慌てふためく。
「どうした? 私がプレゼントじゃイヤだったか?」
「い、いえ……そんな事ないですけど……」
顔を一層真っ赤にさせて、しばらくの間黙りこむジェーンさん。
やがて何かを決意したような表情で立ちあがり、ドミニカの前でこう呟いた。
「本当に……好きにしていいんですね?」
その台詞を言い終わるか言い終わらないうちに、ジェーンさんはドミニカの唇にそっと自分の唇を寄せる。
「わぁ、ジェーンって意外と大胆だね」
「う、うん……」
私たちがそのままリベリオン夫婦の行く末を見守っていると、ジェーンさんが驚くべき行動に出た。
「うわぁ、すごく美味しそうなケーキですね」
「私とルチアナで作ったケーキだ、食べてくれ」
「はい、頂きます!」
ジェーンさんはドミニカがルチアナと共同(正確にはルチアナが1人で)作ったケーキの生クリームを
ドミニカの首に塗ると、生クリームごとその首をペロリと舐める。
あらら、もう完全に私たちの存在なんてお構いなしね。
「お、おいジェーン、そんなとこっ……んっ」
「えへへ、ケーキも大将も美味しいです。次は頬に塗りますね」

ジェーンさんはそれから数十分もの間、ドミニカの身体に生クリームを塗って舐めるという行為を繰り返し続けた。
何て言うか……2人とも末永くお幸せにね。

〜Fin〜

―――
以上です。気がつけばハルトマン姉妹の誕生日過ぎてました……
今月中にはどうにか誕生日話を完成させたい……ではまた

59 名前:鋼の魔女はかく語りき:2011/04/23(土) 20:07:45 ID:VUHe331U
最初に言っておくよ。
私はあんた達が大嫌いだ。
戦う力も無いくせに口先ばかり達者で、私達ウィッチがどんな気持ちで、その青春時代を仲間の血と硝煙と自ら流した涙に染めたかなんて理解しようともしない。
繰り返すけど私は偉そうにふんぞり返って指示を出す事しか出来ない上層部も、それに媚びへつらう政治家も大嫌いだ。
でも、私は戦わなければいけないんだ。
でも、私は戦わなければいけないんだ。
人質にされている家族の為、死んでいった仲間の為、これから産まれてくる少女がウィッチとして戦わなくても良いように、私は飛べなくなっても戦い続けるんだ。
後の歴史に名を残すで有ろう彼女はこの様に前置きし、私に一冊の手帳を差し出し語り始めた。
彼女の許可を得てまずはその手帳の内容を記す。

60 名前:鋼の魔女はかく語りき2:2011/04/23(土) 20:09:11 ID:VUHe331U
美緒の表情が暗い。過日赤城が沈みその乗員が皆行方不明とし処理されたからだろうか?
一人ストライカーで帰還した彼女は何時もの豪放磊落な彼女ではなく、暗い影を帯びていた。
宮藤博士の墓所で泣きながら何か呟いていたそうだし心配だわ。
私は指揮官として最低だ。
副官の不調に気を取られていて新兵の不安に気付かなかった。
今も、彼女がブリタニア有数の資産家でありウィッチの家系の生まれで、その彼女を戦死させてしまった事によってブリタニア軍との折り合いが悪くなる事を打算的に考えてしまう。
此処まで読んだ時にふと彼女が話しかけてきたので、その言葉を挿入する。
なに青い顔をしかめてるのさ?
あんた達が興味津々な乙女の日記だよ。
もっと楽しそうに読みなよ。
おどけてみせるが彼女の瞳は全く笑っておらず、深い闇がのぞいていた。
続くかもしれない

61 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/04/24(日) 20:08:15 ID:4e6zd.as
>>52 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
大量投下GJです!
悪魔ミーナvs天使ミーナ吹いたw さすがラル隊長ですね。
天使エーゲルとプレゼント大将も素敵です!


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は何の日、と言う事で軽く書いてみました。
ではどうぞ。

62 名前:playfully 01/02:2011/04/24(日) 20:08:49 ID:4e6zd.as
(嫌いなら、何でわざわざ来たんだろう……)
 アンジーは思いを巡らせながら、執務室へと急いだ。

 執務室をノックすると、どうぞー、と気楽な声が帰って来た。がちゃりとドアを開け、中に入る。
「あらどうしたの、アンジー。むっつりした顔で。何かイケナイ事でもあった?」
 つまらなそうに片肘をついて書類を読んでいたフェデリカは、横目でアンジーの顔を見て作り笑いをして見せた。
「隊長。さっきのはどういうおつもりですか」
 一歩一歩近付き、机の前に立つと、怒鳴る訳でもなく、ただ、怒りを押し殺した声で問うアンジー。
 “さっき”の出来事。それは誕生日祝いもそこそこに、極めて適当な態度でさっさと切り上げてしまった祝いの主役。
そんな彼女に対する、アンジーの悲しみと若干の怒り。
「何って言われても。私はまだまだイケてる自信はあるけど、流石にああいう事するトシでもないと思っただけよ」
 あっけらかんと答えるフェデリカ。顔色を変えるアンジー。
「だからって……」
 ばんと机に手を置き……叩くとも言う……、フェデリカをじっと“見る”アンジー。
 そんな馬鹿真面目なヒスパニアンを見たフェデリカは、物怖じ一つせず、あらあらと様子を見た後くすっと笑い、
やおら立ち上がるとアンジーの身体をつつっと指でなぞり、そっと後ろから抱きしめた。
「分かってる、アンジー。貴方、優しい子ね」
「隊長……」
 突然の抱擁に慌てるアンジー。身体の距離が近過ぎるスキンシップはまだ少々不慣れだ。
「あのロマーニャ三バカ娘を筆頭におバカな事ばっかりだからちょっとは腹の立つ事もあるでしょうけど、大目に見てやって。
同じ赤ズボン隊のひとりとしてね」
「でも、私は」
 なおも食い下がるアンジーに、フェデリカは笑顔のまま、言葉を続けた。
「良いのよ。たまには私抜きでどんちゃん騒ぎしても」
「そ、それはいつもの事で」
「あはは。アンジーはいつも横目で見てるだけだからね。何故見てるの? 見てるだけなの?」
「何故って……」
 フェデリカはアンジーを真正面に見る。肩をぐっと掴み、真面目な顔を作って言った。
「貴方も、もっと楽しみなさい。生きてるうちじゃないと楽しめないわよ?」
「……」
 引退間近の、魔女の言葉は殊の外重い。手から肩にかかる力だけでなく、言葉の力も、意味も。
「この前の怪我もそう。死ぬ気で戦うのと、死んでも良いと思って戦う事は別。分かる?」
 先日の戦いと負傷の事を言われ、言い返せず、肯定するしかなかった。
「……はい」
 脇に目を逸らしたアンジーを見、フェデリカはもう一度アンジーを抱きしめ、耳元で囁いた。
「なら、明日を生きる為に、戦いなさい。そして今日を生き抜いて、とことん楽しむ。それでいいわね?」
「め、命令とあらば」
「どこまでもカタいんだから」
 フェデリカはもう一度、笑った。そしてアンジーの耳元でそっと囁いた。
「もう、行ってあげなよ。心配してる娘がいるから」
「えっ?」
「私の授業はここまで。さ、出てった出てった」
 フェデリカに唐突に腕を引かれ……、そのまま執務室の外にぽいと追い出される。

63 名前:playfully 02/02:2011/04/24(日) 20:09:11 ID:4e6zd.as
 びっくりした顔で目の前に居たのはパティ。突然の“パス”を出された格好で、何処か挙動不審に見える。
「うわ、アンジー。た、隊長……、どうだった?」
 恐る恐る聞いてくるブリタニア娘を前に、アンジーは答えに詰まる。
「うーん、まあ……」
「怒ってた?」
「怒ってはなかった。皆で騒げって」
 アンジーの答えを聞いたパティは、やれやれと身体の緊張を解いた。
「それは大丈夫。もう随分と騒いでるから」
「あいつら……」
 パティはアンジーの肩を抱くと、にやっと笑い、誘う。
「まあ良いじゃない。アンジーもどう?」
「わりとどうでもいい」
 ぶっきらぼうな答えを聞いたパティは、アンジーの耳元でわざとひそひそ声で囁いてみる。
「隊長の言葉、いきなり反故にするの」
 パティの吐息絡みの言葉を聞いたアンジーは、耳まで真っ赤にして、驚く。
「ちょっ、パティ、まさか聞いてた?」
「さあ、どうだかね」
 パティはさっと身を翻すと、一歩退いた。一歩踏み出すアンジーは警告した。
「ちょっと待て。盗み聞きは良くない」
「なら、私を捕まえたら教えてあげる」
 悪戯っぽい笑みを浮かべて、パティはパーティー会場になっている食堂目掛けて走り出す。
「ま、待てぇ!」
「あはは、アンジーこっちこっち!」
 パティとアンジーの短い鬼ごっこは、食堂の目前で終わる。
 肩を掴まれ、そのまま廊下にすっ転ぶ。
 身体がもつれ、廊下で抱き合ったかたちになったパティとアンジー。真剣な目で見るアンジー。
「で、どうなんだ」
「ここまでして、知りたい?」
 悪戯っぽく笑うパティ。
 その時、食堂のドアが開き、ドミニカとジェーンがひょっこり顔を出した。
「おや、大きな物音の正体は……」
「大将、じっと見てたら悪いですよ」
「こりゃ邪魔したな」
 言うなり、ばたんとドアを閉めるドミニカ。
「ちっ違う! 誤解するな!」
「誤解じゃなくしてもいいんだけどなー」
「えっ」
 驚くアンジーの前で、少し頬を染めたパティが居る。
 アンジーは食堂に乱入して「くだらない会合をただちに中止させる」か、「目の前のパティの企みを暴く」か、
いずれにせよ迷い、困惑し、身動きが取れなくなった。
 目の前のパティをまずどうするか……どうでも良くない事が、始まろうとしていた。

end

64 名前:名無しさん:2011/04/24(日) 20:09:22 ID:4e6zd.as
以上です。
フェデリカ姉さん誕生日おめ!
なぜかアンジー主体になってしまいましたが、
まあそれはそれで。

ではまた〜。

65 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/05/01(日) 20:58:42 ID:a.V9DEwY
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
今日は5月1日で501の日! と言う事で軽く書いてみました。
ではどうぞ。

66 名前:twister 01/02:2011/05/01(日) 20:59:30 ID:a.V9DEwY
 夜明け前、しんと静まりかえった基地内の木立。
 静寂過ぎて張り裂けんばかりの緊張感の中、必死に刀を振るう魔女がひとり。
 かけ声は鋭く、手にした刀の切れ味に負けずとも劣らず。

 不意に身の背後へ迫る「何か」を感じ、切っ先を向ける。
「ギニャ! 斬るのなしー」
 樹上から姿を現し、悲鳴を上げる。
「なんだ、ルッキーニか。いきなりどうした」
「ニヒヒ 後ろ取ったから勝ち〜」
「何だそれは。稽古でもしにきたのか?」
「違うよ」
 あっさりと否定する天真爛漫なロマーニャ娘を前に、扶桑軍人は顔色を曇らせる。
「で、何だルッキーニ」
「んーとね、少佐、あたしね、夢の中ですんごい戦法思い付いたの!」
「ほう、どんな?」
 “戦法”に興味を持ち、刀を鞘に収める美緒。
「あのね、あのね」
 ルッキーニは木から飛び降りると、目をきらきらさせて、両方の手をひらひらさせながら、語った。
「こう言う感じでネウロイが居るでしょ? そこであたしは、こっからギューンとこっち行って、
そうすると敵も追ってくるから、そこであたしがグルングルンスバーな感じでギュワーンして、
で、敵も負けじとグルグルしてくるから、あたしはもっとズバーっとゴーして、
最後ヨイショッって感じでクルクルーってして、最後ずどーん」
 擬音の多さに何をどうしたいのか意図が全く分からず、眉間にしわを寄せる。
「これは……シャーリーに通訳を頼むべきなのか」
「あ、シャーリーまだ寝てるよ。さっきまで寝ないでずっとストライカーの整備してたから」
「そうか。あいつも熱心だな。って任務は……ああ、今日シャーリーは非番か。なるほどな」
 ひとりスケジュールを思い出し合点する美緒。
「でね少佐。シャーリー起こすのかわいそうだし、少佐にどうって聞いてみたくなって」
「ふむ……」
 美緒は顎に手を遣り考えた。
 これは……。
「よしルッキーニ、お前が実際にやってみせろ。私が見届けてやる」
「えっホント?」
「ああ。数分程度ならちょっとした訓練で済むし、ミーナもうるさく言わんだろう」

67 名前:twister 02/02:2011/05/01(日) 21:00:30 ID:a.V9DEwY
 数分後、基地上空で揃って飛ぶ美緒とルッキーニ。
「じゃあ、少佐、ネウロイね」
「私が敵役なのか……まあ、必然的にそうなるか」
 何やら不吉めいた言葉を聞くも、とりあえず受け流す美緒。
「で、あたしの後をついてきてね」
 二人は一応模擬戦用の銃器を担いでいるが、あくまでマニューバの確認と言う事で模擬弾は装填していない。
「じゃあ、行くね」
 ルッキーニはそう言うと、前方に急加速した。
 流石はロマーニャの誇るG55、速度は大したものだ。
 美緒も負けじと後を追う。よく整備された紫電改は美緒の思うままに挙動する。
 唐突に、ルッキーニが振り向いた。
「ここで、さっきのグルングルンスバーな感じでギュワーンいくよ。少佐はまっすぐ飛んでね」
 言うなり、ルッキーニは急上昇を始める。美緒も少し後ろをついて行く。
 するとどうだろう、美緒を中心軸にして、滑らかにロールしながら上昇していく。
「ハイGバレルロールか?」
 美緒はルッキーニの挙動を見、唸った。
 しかし不安もある。
 上昇角が急過ぎる。
「おいルッキーニ、このままだと……」
 言いかけ、息を呑む美緒。
 案の定失速したルッキーニは、加速が止まり、重力に従って「下降」を開始する。
 良くないパターン。
 焦る美緒に、ルッキーニが笑いかけた。
「ここで、クルクルー、で、どかーん!」
 ルッキーニの身体を持とうとした鼻先で、ルッキーニは身体を捻らせ、下降しながら美緒に狙いをつけた。
 二人の身体が重なる。
 美緒は奥歯を噛みしめ、ルッキーニをストライカーごとがっしりと受けとめる。
 何とか安定したホバリング状態に移った後、ゆっくりとルッキーニの身体を離し、雷を落とす。
「こらルッキーニ! あんなでたらめな急上昇で、危ないじゃないか」
「でも、少佐をねらって、ずどーんって……」
 ちょっとしょげるルッキーニ。
 そこで美緒ははたと思い返す。
 なるほど……。
 わざとストールさせ、自重に任せてターンし、急降下攻撃、と言う事か。
 美緒は笑った。
「そうか、そう言う事かルッキーニ。面白い。なかなか面白いぞ」
「えっ、ホント、少佐?」
「ああ。なかなか興味深い発想だったぞ。でもこれはネウロイ相手の実戦ではどうかなぁ」
「アチャー やっぱり?」
「まあ、そうだな。場合によっては……応用が利くかも知れないな。これで終わりか?」
「うん。ありがと少佐。付き合ってくれて」
「はっはっは。少し肝を冷やしたが……まあ、たまにはこう言う訓練も良いな」
 二人は笑った。

 帰投後、ハンガーで仁王立ちで待っていたのはミーナ。
 笑顔で事の顛末を話そうとした矢先にきついお叱りを受け、とほほ……としぼむ美緒とルッキーニ。
 基地の整備員から連絡を受け、慌てて司令所からふたりの様子を「見て」いたのだ。
「二人が交錯してそのまま墜落したらと思って、救護班まで準備させかけたのよ?」
「すまん、ミーナ」
「ごめんなさーい……」
「命が幾つあっても足りないわよ、貴方達と付き合っていると……」
「これは訓練を許可した上官の責任でもある。と言う訳でルッキーニは大目に見てやってはくれないか」
 珍しい、美緒の申し出。ぴくり、と耳が動いたミーナは、あらあら、と言った顔を作りルッキーニの頭をぽんと叩いた。
「全く……ああ言う危なっかしい飛行訓練は程々にね?」
「はーい」
「もう行って良いわ。報告書は何とかしておくから」
「ありがとミーナ中佐!」
 ルッキーニは喜びスキップでハンガーから退散した。
 同じく、基地に戻ろうとした美緒は何故かミーナに肩を掴まれた。
「ん? どうしたミーナ?」
「上官の責任、って言ったわよね?」
「あ、ああ……」
「分かってるわよね? まずは報告書、次は……」
「分かった分かった。隊長殿の、仰せのままに」
「宜しい。じゃあ、行きましょうか」
 何故か嬉しそうなミーナ。
 機嫌が良くなるなら、まあ良いか……。
 美緒はぼんやりとそんな事を思いつつ、ミーナと一緒に執務室へ向かった。

end

68 名前:名無しさん:2011/05/01(日) 21:01:50 ID:a.V9DEwY
以上です。
空戦は本当に思い付きですので、
リアリティとか皆無です。
その辺りはご容赦を……。

続いてもう一本投下しますのでよしなに。

69 名前:high wind 01/02:2011/05/01(日) 21:03:53 ID:a.V9DEwY
 強風吹きすさぶ501の基地。
 隊員達は基地の中に閉じこもってしまったが、あえてこの風の中、外で過ごすウィッチがふたり。
「珍しいね、こんな風強いなんて」
「ああ。これは離着陸が大変だ。気をつけないとな」
 ベランダから滑走路を眺め、ぼんやりと呟くエーリカとトゥルーデ。
「今日の哨戒任務誰だっけ?」
「シャーリーと宮藤だったか……、まあ、あの二人なら大丈夫だろう」
「そうだね。ミヤフジがちょっと心配?」
「まあ、大丈夫じゃないか?」
 気にしてないぞ、と言う顔を作るトゥルーデ、それを見てふふんと笑うエーリカ。
 午後の休憩(お茶会)も基地のミーティングルームで……と言う事になり、外のベランダに出て辺りを見ているのは
エーリカとトゥルーデの二人だけ。
「まさか、お前のせいじゃないだろうな」
 不意にトゥルーデが呟く。
「どうして私?」
 数秒の沈黙の後、トゥルーデはぷいと横を向いた。
「いや、何でもない」
「まさか、私の固有魔法が暴走したとか言いたい? またまた〜」
「……」
 顔を見せないトゥルーデを見て、エーリカはトゥルーデの肩をぽんぽんと叩いた。
「あれ、マジだった? トゥルーデが冗談言うとはねー。こりゃ今夜は大荒れだよ」
「そこまで言うか!? ……ちょっとした冗談のつもりだったんだ」
「みんなには言わない方が良いよ。多分私以上の反応するだろうから」
「言われなくても」
 ようやく横顔を見せるトゥルーデの頬は、ほんのり赤く……それは強風のせいか、照れのせいかは分からない。
「ま、この風に対抗してみても良いんだけどね」
 両手を風に向かって突き出してみるエーリカ。慌てて止めるトゥルーデ。
「無茶は止めろ。変に力が掛かって、基地が壊れたりしたらどうするんだ」
「それもそっか」
 結局、ベランダに肘つき、風もお構いなしに流れゆく風を感じる。
 ぼんやりと眺める辺りの景色は……海が激しく波打ち、木々が風に翻弄され、時折何かのゴミか紙屑が飛んでいく程度には、
普段よりも変化はしていた。しかし、大嵐が来た程ではなく、ただただ風が強いだけであった。
 ぶわっと、空気の塊が二人を包み、一瞬で抜けていく。
 風圧に圧され少しよろけたエーリカの肩を、がっしりと掴むのはトゥルーデ。
 ただ力が強いだけでなく……さりげない優しさも持った、501の「頼れる姉」。
 エーリカはそのまましだれ掛かり、そして手を伸ばし、トゥルーデの髪縛りを片方解いた。
「お、おい!」
 またも吹き抜ける一陣の風。
 エーリカが持つリボンの軛から解き放たれたトゥルーデの髪は、片方だけ、ざーっと押し寄せる空気に流され、激しく波打った。
「これだから、私は縛っていた方が良いんだ……落ち着かない」
「私は別に良いけどな」
「どうして」
「楽しいし、トゥルーデっぽいし」
「私っぽい? 何処がだ」
「ベッドの上で眠るトゥルーデ?」
「な、な、なんてことを……」
「にしし」
「とりあえずリボンを返せ」
「部屋戻ったらね。今こんな風の中でうまく縛れないでしょ。リボン飛んでくのも嫌だし」
 そう言うと、エーリカはリボンを服の胸ポケットにしまった。
「全く……」

70 名前:high wind 02/02:2011/05/01(日) 21:04:12 ID:a.V9DEwY
「あ、見て。シャーリーとミヤフジだ」
 ハンガーからよろつきながらタキシングしてくるシャーリーと芳佳を見る。
「今から任務か。強風で……大丈夫か」
「さっきトゥルーデ大丈夫だって言ったじゃん」
「まあ、そうだが」
「じゃあ、見てようよ」
「ああ」
 シャーリーと芳佳のロッテは……ふらつきながらも離陸した。離陸直後、シャーリーと芳佳がこっちを見た。
 控えめに手を振るシャーリーと芳佳。エーリカとトゥルーデも手を振り返す。
 やがて、シャーリーと芳佳はストライカーを加速させ、あっという間に上昇した。
「雲の上に出るつもりか……上空の風はどうなっているんだ」
「そこまで心配?」
「いや、大丈夫だな」
「そそ。問題ないってね」
 エーリカはそこで、くしゅんと小さくくしゃみをした。トゥルーデはハンカチを取り出しエーリカの鼻を拭く。
「もう戻るか。あんまり風に当たり過ぎても良くない。ストライカーも無しでな」
「そう言えば、何で外の様子見ようって事になったんだっけ?」
「それは……」
 言われて気付く。その辺りの記憶が何故か曖昧な事に。
 まあ、良いか……。トゥルーデはそう呟くと、エーリカと一緒にミーティングルームに向かった。
 きっとリーネが二人の為に熱いお茶を淹れて待っているだろう。残った連中が少なからず茶化すだろう。
 しかし501とはそう言う部隊であり、そんな家族的な雰囲気こそが強さの源かも知れない。
 きっとミーナは控えめに、美緒は豪快に笑うだろう。それで良いのだ。それが501なのだ。

end

71 名前:名無しさん:2011/05/01(日) 21:05:22 ID:a.V9DEwY
以上です。
強風下でストライカーが発進出来るかどうか……
その辺の考察が曖昧ですが、雰囲気って事でよしなに。

ではまた〜。

72 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 00:18:13 ID:puEpBQFU
こんばんは!

>>65 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.cさま
毎度毎度、読ませて頂いてキュンキュンしています!少佐とルッキーニ…これまた斬新な組み合わせですね!
掛け合いが新鮮でした、ルッキーニの擬音の多さだとか;;あと「ring」シリーズ…最高です!バルクホルンの洒落を言って恥ずかしがるところとかw

今回は『ヘルマの発情』シリーズ最新作を投稿したいと思います!

73 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 00:18:52 ID:puEpBQFU
【ヘルマの弟子入り】

「少し遅くなりましたが…バルクホルン大尉!お誕生日、おめでとうございます!!!」
「…へ???」
「これ…私とクリスさんで選んだプレゼントです!」
「クッ、クリスとか??!!」
「はい…あとお手紙も貰ってます」
「お前…クリスと仲が良いのか…」
「はい!…まあクリスさんはロンドンに居るので、1〜2か月に一度しか会えませんが;;」
「ありがとう!」

ギュッ...

最近、寮近くで住み着いてる野良猫が発情期でうるさくて眠れません!
…あ、第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケであります!
これは、その…この間の、『特別編・ヘルマの軍規違反』直後の話であります………。

「本当にありがとう!」
「このプレゼントを渡したくて…ここに来ました」
「これからもクリスと…仲良くしてやってくれ」
「………はい!であります!」
「その笑顔!それでこそレンナルツだ!」
「ありがとうございます、バルクホルン大尉…私、ここに来て正解だったでありま………ひいっ!!??」
「…ん?どうした?レンナルツ」
「ああああああの…」

わっ、私!見てはいけないモノを見てしまったでありますっ!!!!

「ん?どうした?」

ドアが少し開いていていてですね…その隙間から光る2つの怪しげなモノが…っ!!

「あら、バレちゃったかしら?」
「なんだミーナか…」

その…隙間からミーナ中佐が見ていて…なんか背中がゾクッとしたんでありますよ!マジで!!

「ねえヘルマさん」
「はいぃぃっ??!!」
「…とりあえず、抱き合うのはいったんやめにしてもらえないかしら?」
「あ…」

気付けば、ずっとバババババルクホルン大尉と…その抱き合ってたであります;;

「今夜はここに泊っていくということで、大丈夫よね?」
「へ…??」
「ウルスラさんから聞いてるわ、あなたの事を。よろしく頼みますってね」

えぇぇぇっ??!!
そんなん無理です、ダメであります!!
だってここに泊まるイコール、ミーナ中佐に『いただかれちゃう』ってことですから!
…てかさっきからミーナ中佐、顔は笑ってるけど目は獲物を狙う目でありますよ??!!

「あ、あのぅ…」
「何かしら?」
「この辺にビジネスホテルとかないですかね…?」
「ないわ」
「じゃっ、じゃあ部隊の他の方々に迷惑掛けるとアレなんで野宿します!」
「迷惑なんかじゃないわ、泊まっていきなさい」
「そうだぞレンナルツ、お前は居ても全然迷惑なんかじゃないぞ!」

ううっ…バルクホルン大尉、そのお言葉と笑顔は反則でありますって!!


***

74 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 00:20:04 ID:puEpBQFU
>>73の続き。


【数時間後】


「うううっ…(泣)」
「ねえヘルマさん…良かったわ。もう一回戦、どうかしら?」

掛け布団にくるまり、泣いてる私…であります。てか、なんで私とミーナ中佐は同室なんでありますかぁ??!!
…そして、やはりミーナ中佐に『いただかれちゃった』であります…。

「なに泣いてるのかしら?」
「ごっ、ご自身がなされてることがわからないのですか?!パワハラ…いや!れっきとしたセクハラですよ!!」
「あのね、ヘルマさん」

するとミーナ中佐はベッドから抜け、傍のテーブルに置いてあるガラス製のピッチャーを手に取り、グラスに水を注いだであります。

「私くらいの役職だと…こうゆう軽いことは揉み消すことが出来るのよ」
「非常に、そして淡々と最低なことを言いますね…;;」
「管理職となると色々とねえ…ストレスが溜まるのよ」
「わっ、私はミーナ中佐の人柱じゃありませんってば!!」
「人柱?…聞こえが悪いわね。あくまでもあなたの意志でベッドに入ってベッドで行為をした…って解釈だけど?」
「…絶対に偉くなったら、あなたをっ!!」
「何か言ったかしら?」
「いいえ!!」
「ふふふっ…さっ、も一回しましょう」
「…へ???」


***

75 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 00:21:01 ID:puEpBQFU
>>74の続き。


「イタタタ…」

翌朝、腰がものすごく痛いであります;;
まあ…あの後4・5回撃墜されてしまいましらからねえ…;;;

バレないようベッドからそっと抜け出し、裏庭へ行く私。
するとそこには…

「あ!あの人…!」

ガリア復興の際、一時期『時の人』となっていたガリアのぺリーヌ・クロステルマン中尉ではありませんか!!
恐る恐る近づいて…、

「おっ…おはようございます」
「きゃっ!?」
「わっ!!??」

そっ、そんなに驚かなくても;;;
それに私までも驚いちゃったであります;;;

「なっ、何ですのあなたは!?」
「あ、第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のヘルマ・レンナルツであります!」
「前にも来た方ですわよね?」
「はい。失礼ですが、自由ガリア空軍のぺリーヌ・クロステルマン中尉でありますよね??」
「いかにも私がそうですが」
「わあ…!!有名人に会えるだなんて…!!」
「有名人?私が?」
「はい!」

少し頬を赤く染めるクロステルマン中尉…であります。
『ブループルミエ』と呼ばれるトップエースも、意外と恥ずかしがり屋さんなんでありますね〜!

「リネット曹長とガリア復興で活躍してたそうですね?!我がカールスラントでも新聞の一面を飾ったことがありますよ!」
「それは本当ですの?!」
「ええ!ヤフーニュースでもトップニュースに!」
「そ、そうですの;;」
「あ、あとこの間あれにも出てませんでした?!『あの人は今!?』に!!」
「………」

あ…あれれぇ???

「なっ、何をなされてるんですか?こんな朝早い時間に」
「種を植えてるんですの」
「種?そういやここ…」

周りを見渡すと、軍事基地とは思えないほどの綺麗な花々!
昔、小さい頃に読んだ童話の世界…ような花畑がそこにあったであります。

76 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 00:21:26 ID:puEpBQFU
>>75の続き。

「綺麗な花々でありますねえ…」
「そ、そうかしら?」
「それに…良い香りですねえ」
「ハーブも育ててるからですわ」
「お詳しいんですか?」
「まあ…ちょっと」
「スゴいであります!」

有名人の意外な一面も…ちょこっと見れたでありますね。

「コホン…これはレモングラス、あれはベルガモット、こっちがマジョラム」
「結構色々な種類のを栽培なされてるんでありますね!」
「まっ!貴族として当然の嗜みですわ!(ドヤ」

…え、ドヤ顔?!私の中の『ペリーヌ・クロステルマン』像のポイントが20点マイナスであります…;;

「あの…」
「何ですの?」
「単刀直入に聞きますが、クロステルマン中尉は坂本少佐がお好きなんでありますよね?」
「なっ!!何故それを…!?」
「公式設定ですから」
「何ですの?!それ」
「そんなことはどうでも良いんで、教えてください」
「あ、あれは憧れから来るものでありますわ!!」
「…ですよねえ」
「だから何ですの?」
「付き合いたい…って思わないんでありますか?」

すると、クロステルマン中尉は近くのベンチに座ったであります。

「そりゃあ…もしお付き合いが出来るのなら、したいですわ」
「ええ」
「けど…今の関係が、一番良いかなって最近思い始めてて…」
「………」
「少佐といつか結ばれる!と思ってるから、日々の生活が楽しいのではないのかしら…って思いますわ」
「べっ、勉強になるであります!!!!」
「かかか顔が近いっ!!」
「ス、スミマセン;;そうでありますよね…前から欲しかった物がいざ手に入ると…楽しさが半減することと一緒でありますよね?」
「まあ…そんなところですわね」

正直、昨日あのままずっとバルクホルン大尉に抱きしめられてたら…どんなに夢見心地だったのでしょう…
けど…『憧れ』は『憧れ』のままにしておくから、その分パワーになって跳ね返って来るものだと思うであります!

「クロステルマン中尉!…いや、ペリーヌ姉やん!!!!」
「ペッ、ペリーヌ姉やんですって??!!」
「あっしを…今日から弟子入りさせてください!!!!」
「ちょちょちょ…どうゆうことかしら???」
「まずは性格をツンツンにした方が良いのでありますね??!!」


***

77 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 00:22:29 ID:puEpBQFU
>>76の続き。


そして帰る時間がやって来たであります。
ハルトマン中尉の運転で、バルクホルン大尉と私の3人で空港まで送ってもらい、車中にて…

「バルクホルン大尉」
「レンナルツ、どうした?」
「あの…えと、昨日は色々迷惑かけて申し訳ございません!!」
「全然迷惑だなんて思っていないぞ、心配するな」
「そのうちトゥルーデ、レンは『いもうと』だって言うかもねー」

なんか良い感じだったのに、ハルトマン中尉が横槍を入れてきたであります!
全く、この人はもう!!

「エーリカ!」
「へへーんだ」
「ゴホン…けど、レンは…我々501部隊の家族…ではないが…親戚だな」
「親戚…でありますか?」
「ああ。バカンスに遊びにくるような感覚で、疲れたら私のところに来れば良い」
「あれぇ、ここは戦場だよー?遊びに来るところはないよー?」
「えぇい!さっきから茶々を入れるなハルトマン!!!!」
「はは…あははは」
「あ、レン!ウルスラによろしくね」
「はい!であります!」

そう言って、私はウルスラ・ハルトマン中尉の『粋な計らい』によって生み出された休暇…いや、謹慎?
まあどっちでも良いであります!

そして、本国へ戻ってから真っ先にハルトマン中尉の研究室へ。

「この度は申し訳ございませんした!以後、あのようなことがないよう心がけますので明日から心機一転頑張ります!」
「…そう」
「あとこれは…501部隊の宮藤軍曹からお土産の里芋の煮っころがしです…あ、タッパーの蓋が緩くて汁がこぼれててベトベトですが;;」
「…姉さまは、元気だった?」
「はい!ぜひ会いたいと仰ってました!」
「そう…」

普段はあまり見せることのない笑顔を、見せたであります。
良かった…これで以前の関係に戻ったであります!

上機嫌で部屋に戻ると、

「ん…んっ?」

ドアに何か手紙が挟まってるではありませんか!!

「何でしょう…?」

恐る恐る手紙を開けると、そこには1枚の写真とメモが。

「…えっ!?」

写真とは………ベッドの中でいつの間にか中佐に撮られた…その、その…そのぅ…いわゆる『ニャンニャン写真』であります;;;

「な…何でありますか?!これっ!!」

そしてメモには、
『あなたは私からは逃げられないわ。 ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ』
と。

「………優秀な弁護士を探さないと;;」

ヘルマ・レンナルツ13歳、一難去ってまた一難…まだまだ苦労は絶えません…トホホ。

【おわれ】

78 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/05(木) 10:44:46 ID:puEpBQFU
どうも、作者です。

>>73についていきなり訂正が!
『…あ、第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケであります!』
って…ヘルマ、自己紹介で誰の名前を言ってるのでしょうか?;;正しくは、
『…あ、第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のヘルマ・レンナルツであります!』
です;;;

凡ミスをしてしまい、すみません;;;

79 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/05/06(金) 01:30:55 ID:Md54HCKw
>>78 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
細かいミスはキニシナイ! 誰にでも有る事ですし。
ともかく、毎度のテンション&細かいネタにGJです!


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ちょっと思い付いた食事ネタをひとつ。
ではどうぞ。

80 名前:reheater 01/02:2011/05/06(金) 01:31:35 ID:Md54HCKw
 倉庫の片隅で、何やら荷物らしき物体と格闘している同僚を見つけたトゥルーデ。
 何をしているかと思い近付きながら声を掛ける。
「どうしたリベリアン」
 振り向いたシャーリーは、一瞬ぎくりとした顔をしたが、トゥルーデの顔を見ると、無理に笑顔を作った。
「あ、堅物か。バーベキューしようと思ってさ。準備してたんだけど……」
 言ったそばから、ごろんと転がり落ちる、ドラム缶の破片。
「そのドラム缶……前に作ったバーベキューグリルとか言う……」
「そう。こっちでも一応作ったんだけど、圧力弁がうまく開かなくてね……」
 機械いじりが得意なシャーリーが、自ら作った仕掛けを前に、何やら自信なさげだ。
「空気弁だろう? 見た目単純な構造なのにな」
 前に見た装置を再度眺め、ぽつりと言うトゥルーデに、シャーリーは言葉を返す。
「機械音痴なあんたに言われるとちょっと腹立つけど……まあ、実際そうなんだけどさ」
「どこかに何かが引っ掛かってるんじゃないか? 試しに、誰かに切って貰ったらどうだ」
「切るって?」
「例えば少佐に……」
 言いかけて言葉を止めるトゥルーデ。
 考え込むシャーリー。そして、ドラム缶を指差して言う。
「あの人、グリルを縦まっぷたつにしそうだからやめてくれよ」
「まさかドラム缶を扶桑刀で斬るなんて……。いや、そう言えば確かネウロイ斬ってたな」
「だろ? だから少佐は良いって」
 “調節”以前に“破壊”されそうな不吉を感じ取ったシャーリーは、両手で「NO THANK YOU」の仕草をした。
「じゃあ、簡単な網焼きの方で良いんじゃないか。いつも豪快に火柱を上げてやっている……」
 トゥルーデの提案を聞いて頷くシャーリー。
「ああ、グリルね。まあそれでも良いか。せっかくだから堅物もどうよ」
「暇だし手伝ってやらん事もない」
 言い終わると同時に、ぐうぅ、とトゥルーデの腹が鳴る。横を向き、無かった事に出来ないか辺りに視線を巡らすも
陽気なリベリアンの前では無駄だった。
 シャーリーは笑いながら真面目なカールスラント軍人に声を掛ける。
「素直に腹減ったって言えないのかねー。じゃあ、グリルの準備するからこっちのドラム缶持って。あと炭と……」
 重量物ばかりを指定され、疑惑の目を向けるトゥルーデ。
「何だか重労働じゃないか、私だけ」
「魔法を有効活用するのさ」
「納得いかない」
「まあ良いじゃないか。とりあえず、これバルコニーに運んどいてくれ。あたしは肉と野菜の下ごしらえしてくる」
「お、おいっ! 私にこっちを全部やれと言うのか!?」
「運ぶだけでいいよ。まあ、火くらい起こしてくれても良いけど。うまく出来るかい?」
「火起こし位出来るに決まってるだろう。カールスラント軍人を甘く見るな」
「じゃあそう言う事で宜しく」
「ま、待て!」

 三十分程経過した後、二人は再び顔を合わせた。それぞれが準備した用具と、具材を突き合わせる。
 満足そうに頷くシャーリー。横で腕組みし様子を見るトゥルーデ。
 グリルに種火と炭をセットし……火を付け……炭がオレンジ色になる程加熱した所で、下ごしらえした肉やら野菜を
適当に載せ、じゅうじゅうと香ばしい音を上げ、焼いていく。
「こんなに肉を使って大丈夫なのか」
 腕組みして様子を眺めるトゥルーデ。
「宮藤とリーネが使って良いって言うから持って来た。大丈夫だろ」
 じゃんじゃん盛っていくシャーリー。
「アバウトだな」
「これ位豪快な方が美味いんだ」
 呆れるトゥルーデ。
「よし。もっと火力だ」
 焼き加減を確かめながら、シャーリーは炭の入った袋を指差した。
「これ以上無闇に炭を入れたら、熱過ぎて肉が焦げるぞ」
「大丈夫。どさーっと」
「蒸気機関車じゃあるまいし……」
 言いながらも、適当に炭を放り込んでいくトゥルーデ。

81 名前:reheater 02/02:2011/05/06(金) 01:32:06 ID:Md54HCKw
 やがて立ち上る煙と、香りにつられた隊員達が集まり……ちょうど昼食の時間と言う事で……めいめいに食器と飲み物が渡され……
「イエー カンパーイ!」
 全員で祝杯の音頭を取り飲み物を口にしたあと、即席のバーベキューを堪能する。
「結局パーティーみたいになってないか」
「みたい、と言うより思いっきりパーティー化してるんだけど」
 辺りを見回しながら、何故か軽い疲労を覚える501の大尉ふたり。
「ただの昼飯の筈が……どうしてこうなったんだ」
 他の隊員に促されるまま、肉を焼き、皿に盛り付けるシャーリー。
「ニヒー いいじゃんシャーリー! 楽しんだモノ勝ちだよ! おいし〜いお肉ちょーだい!」
 空になった皿を持って、シャーリーの前でくるくると踊るルッキーニ。
「こらルッキーニ、肉だけじゃなく野菜も食べないと」
「ヤダー! もっと食べてシャーリーみたいになるんだもん」
 顔を見合わせるシャーリーとトゥルーデ。
「まあ、良いんじゃないか」
 思わぬトゥルーデの答えに眼をぱちくりさせるシャーリー。
「珍しいな。いつもなら栄養のバランスを〜とか言うのに。熱でも有るのか?」
「何を言う。私は至って普通だ。何だその疑いの目は」
「……ま、良いか。さて、あんたの相棒にもしっかり食べさせてやりなよ。待ってるぞ。ほら」
 皿に肉を大盛りにして、トゥルーデに渡す。
「ああ……。そうする」
 トゥルーデはエーリカの座るテーブルに向かう。
「何だかんだで、甘いね、堅物は」
 ま、それで良いんだけどね。とこっそり呟くシャーリーの言葉は誰にも聞こえず。
 けど、横でもふもふと料理を美味しそうに頬張るルッキーニの笑顔を見ていると、軽いもやもやとした気分も晴れていく。
「どしたのシャーリ−?」
「ん? 何でもない。ほら。もっと食べなよ」
「ありがとシャーリー」
 満面の笑みにつられ、自らの顔もほころぶ。
 そこへ、お皿を持って芳佳とリーネもやって来た。
「シャーリーさん、このお肉美味しいです! 何か隠し味でも?」
「塩胡椒程度だけどな。あー、ビネガー少し入れた位かな」
「へえ。凄いですねえ」
「芳佳ちゃん、どこ見てるの」
「あう……」
「あっはっは! 宮藤もしっかり食べないと大きくなれないぞ?」
「そーそー。あたしみたいにねー」
「ルッキーニちゃんに言われたくないよー」
「ニャハー 芳佳はまだまだ残念賞だから〜」

 賑やかな様子を見る、指揮官二人。へきしっ、と帯刀した扶桑軍人がくしゃみをする。
「あら、美緒どうしたの? 風邪?」
「いや、朝から時折……誰か私の噂でもしていたのか?」
「まさか。さ、私達もせっかくのバーベキュー、頂きましょう」
「ああ。賑やかで良いな」
 ミーナと美緒の登場に隊員達は活気付き、早く早くと手を引き……いつしか、本格的なパーティーとなる。

end

82 名前:名無しさん:2011/05/06(金) 01:32:19 ID:Md54HCKw
以上です。
501でバーベキュー的な食事……となると、
何だかんだでパーティー化すると妄想してしまいます。

ではまた〜。

83 名前:名無しさん:2011/05/06(金) 03:29:44 ID:giQxMOO2
>>82
GJ! シャーリーとお姉ちゃんの焼く肉、おいしそうです。
バーベキューに限らず、501は食事のたびにパーティー化してそうwww

84 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/05/14(土) 19:55:35 ID:SfedFCjM
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ちょっと思い付いたネタをひとつ短めに。
ではどうぞ。

85 名前:position:2011/05/14(土) 19:56:47 ID:SfedFCjM
 ミーティングルームでの、午後のひととき。
 リーネと芳佳が準備した美味しい紅茶とお菓子を前に、皆のたわいもないお喋りが始まる。

「ん? 何読んでるの? それ何の雑誌?」
「フットボール」
「?」
「足で球を蹴るスポーツの事だよ」
「扶桑には貴族がやる『蹴鞠』ってのがありまして……」
「ゴメンそれはよく分からない」
「その足で蹴る球技、サッカーとは言わないのか」
「国によって言い方違うんじゃね? リベリオンで『フットボール』って言うとサッカーとはまた他の競技に……」
「面白そうだね。501(ウチ)はちょうど十一人居るから、今度サッカーしない?」
「しても良いけど……誰と」
「例えば、隣の504とか」
「乱闘になりやしないか心配だ」
「何でそこまで心配するのさ」
「ウチは、やっぱりエースと言う事でトゥルーデと私のツートップ?」
「いや、むしろ堅物はゴールキーパーだろう」
「何で私がキーパーなんだ」
「鉄壁というか、いかにも堅物にぴったりじゃないか」
「何だとリベリアン」
「まあまあ。じゃあ、フォワードは少佐で?」
「私か? 球技は良くわからんのだが大丈夫なのか。シールドは張れないが」
「シールド使うスポーツじゃないから大丈夫よ、美緒」
「そもそもシールドが必要なスポーツなんて有るのかヨ?」
「となると、ミッドフィルダーかディフェンダー辺りにはミーナ中佐が良いな。チームの司令塔って感じでさ」
「ついでに固有魔法使えば位置把握も完璧だね、ミーナ」
「ええっ? 流石にスポーツで固有魔法使うのはどうかと思うわ……」
「エイラ、私、人と張り合うのは……」
「大丈夫、サーニャは私が守るゾ」
「いや、ゴールも守ってくれよ」
「じゃあ中盤で二人でお互いを守るヨ」
「何か違うぞそれ」
「芳佳ちゃん、私達は?」
「どうしよう、リーネちゃん」
「宮藤とリーネか。二人は……そうだな、ペリーヌと三人で、中盤でプレス掛ければ良いんじゃないか?」
「プレス? 何ですかそれ?」
「相手を威圧するんだ」
「威圧……」
「芳佳ちゃん、何で私の胸見るの!?」
「こ、この豆狸は……ッ!」
「ニヒー 二人共胸ぺたんこだしー、プレスプレスー」
「ルッキーニさんに言われたくはありませんわ!」
「ルッキーニは何処がいいかな……てかよく考えたら、501の大半がフォワード向きな気がしてきた」
「むしろ守備的な奴の方が少なくないか?」
「そうかな?」
「えっ」
「えっ」
「うーむ。球技の事は良く分からんのだが……とりあえず斬れば良いのか?」
「斬る!? 何を!?」
「あのー少佐、この球技、扶桑刀は使いませんから」
「てか刀使う球技って有るのか」
「ふむ……やっぱりよく分からんな」
「まあ、トゥルーデはキーパー決定ね」
「だから何で私はそこ限定なんだ」
「だってキーパーって……何でもない」
「はっきり言わんか! 気になるだろう」
「シャーリーもトゥルーデはキーパー向きだって思わない?」
「あー……。うん。分かる。何かそんな感じ」
「どんな感じなんだ?」
「えっと、ほら。こう、妹達を包み込む愛情、みたいな?」
「ちょっと違わない?」
「意味が分からない! てかサッカーと妹は関係無いだろう」
「攻め込んでくる妹達を受けとめる、みたいな」
「ふむ。私を姉と慕うなら、喜んで受け容れるぞ」
「いやだからそこは守りなって」
「結局何の話なんダヨー」

 紅茶とお菓子の甘い香りが漂う中、止まることなくかしましい会話は続く。

end

86 名前:名無しさん:2011/05/14(土) 19:57:42 ID:SfedFCjM
以上です。
JFW対抗サッカーとか有ったら見て見たい気もします。
その前に守備位置でもめそうですけど。

ではまた〜。

87 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/05/19(木) 21:53:59 ID:xndhmOP2
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
またも、ちょっと思い付いたネタをひとつ短めに。
ではどうぞ。

88 名前:tomato:2011/05/19(木) 21:54:51 ID:xndhmOP2
クリス! ああ久しぶりだ! 会いたかった! 元気になったか? ……え、声が大きい? ああ、すまない、久々に会うから、ちょっと気持ちが。
繰り返し聞くが、元気になったか? ……そうか、だいぶ良くなってきたか。それは良い事だ。
リハビリも続けて、どんどん元気になるんだぞ。お姉ちゃんとの約束だぞ。私も頑張るからな。
……ん? 後ろのモノは何かって? ああ忘れていた。下ろして良いぞハルトマン。
今日は、クリスの為に、とあるものを持って来たんだ。健康に良いと言われてるもので……え、何だハルトマン。
『私にモノを持たせすぎ』じゃないかって? 何を言う、妹との再会を一秒でも早くと思う私にだな……あー、いや、すまない。
さて、この木箱に入っているモノなんだが……そう、これは、いや違う。トマトジュースだ。
トマトはクリスも知っているだろう? ジュースにして飲むと、身体に良いらしい。
もっとも、何事も食べ過ぎ飲み過ぎはダメだけどな。規則正しい食事、バランスの取れた食事が一番と言う事だ。
で、クリスの食事の中に、このトマトジュースを組み入れてみてはどうかと思ってだな……え、量が多いって?
そ、そうかな? とりあえず手持ちの金で買えるだけ買っただけなんだが……クリスもハルトマンも何故笑ってるんだ!?
まあ、とりあえず飲んでみると良い。早速……看護婦さん、申し訳無いがコップと栓抜きを持ってきてくれませんか?
ああ申し訳無い。

……さて、このトマトジュースはリベリ……いや、同僚のシャーリーがわざわざ故郷の国から取り寄せてくれたものなんだ。
さっきも言ったが、よく分からなかったので、手持ちの金を全部渡して頼んだのだが……ちょっと多かったか? まあいい。
ロマーニャのトマトでジュースにしないのかって? ロマーニャのトマトは調理用が多くてジュースでは飲まないらしい。
私も品種の違いはよく分からないが……色々有るんだろうな。
さて、早速飲んでみるといい。もっともっと健康になれるぞ。
……え? トマトそのまんまの味? そりゃまあ、トマトをジュースにしたものだからな。
塩かコショウで味付けしてみるか?
どれ貸してみろ。私も飲んでみよう。……確かにぬるいと味が微妙だな。冷やすと良いかも知れない。
後で看護婦さんに氷でも……どうしたハルトマン。……え。病院に迷惑をかけ過ぎだって?
そうか? 愛する妹の為に何でもしようと思うのは当たり前じゃないか。
クリスもどうした。何!? あんまり好みじゃなかったか? 身体に良いと聞いて買ったのだが……うーむ。
では、ひとケースだけ置いていこう。あとは基地に持って帰って、皆で飲むとしよう。
気にするなクリス。私もたまには勘違いというか、勢いでやり過ぎることがあ……何を言いたいハルトマン。
いつもの事じゃないかって? やかましい!
とりあえず、一瓶開けてしまったからには私が責任を持って飲むとしよう……こう、一気飲みの感じで飲めば……
ぶわっはははははは!
こーらーハルトマン! 飲んでる時に後ろからくすぐるとは何事だ!? さっきから何を……
はっ!? クリス!? どうしたその姿は!? 何で血だらけに? 一体どうしたって言うんだ!?
……私がトマトジュースを吹いたから? そ、そうか。済まなかった……ってハルトマン! お前のせいでクリスが!
とりあえず着替えだ。そして顔と頭を洗って……看護婦さん! 着替えと入浴を頼む!
え、今は入浴時間じゃないから無理だって? なら仕方ない。ハルトマン、基地にクリスを連れて帰るぞ!
何を言っている? 基地には少佐が作らせた立派な風呂が有るじゃないか。少し借りる位、ミーナだって許してくれる筈だ!
ストライカーはどこだ!? 何だエーリカこんな時に? 落ち着けって? 落ち着いていられるか? クリスがーっ!

……さっきは取り乱してすまなかった。普通にタオルで拭いて着替えれば良かっただけだったな。
クリス、何を笑ってる? ……何? いつも先走り過ぎだって? そんな事は無いぞ。私はいつだって冷静だ。
ハルトマン、何が言いたい? いつも通りだから問題無いって? あのなあハルトマン……、元はと言えばお前が!
まあ……、何だ……。色々と手伝ってくれた事は、感謝している。
こっこら! クリスの前で何を……

ど、どうしたクリス? ……え? やっぱり二人は、お似合いだねって?

ああ、そうだ。私にとってかけがえのない“家族”の一人だ。

end

89 名前:名無しさん:2011/05/19(木) 21:56:37 ID:xndhmOP2
以上です。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編と言う事でよしなに。
トマトジュースって意外と歴史が浅いものだと
wikipedia先生に教わりました。まあ細かい点はご容赦を。

ではまた〜。

90 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/05/19(木) 23:38:41 ID:xndhmOP2
たびたびこんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫の方でリクエストを頂いたので、
>>85「position」の続きを書いてみました。
ではどうぞ。

91 名前:formation "501" 01/02:2011/05/19(木) 23:40:14 ID:xndhmOP2
 今日も美味しいお菓子と紅茶を片手に、のんべんだらりと会話が続く。

「この前のサッカーの話だけど」
「うんうん」
「何か有ったのか?」
「504の隊長さんに話付けてきた」
「えっマジで?」
「本当に試合やるのカヨ?」
「なんかよく分からないけど、向こうはみんなノリノリだったよ」
「お気楽ロマーニャン達め……」
「あたしらも似た様なもんだけどね」
「JFW対抗戦って事で、501はサッカーでも一番を目指すよ!」
「“でも”って何だ? そもそも、何かで一番とか目指していたのか私達は……」
「トゥルーデ細かい事考えないの」
「しかし、よく504の隊長が許可してくれたな」
「んー、なんかね。『面白そうなのは大好物』とか言ってたよ」
「……何か危険な香りがする」
「ミーナは良いよね? 親善試合」
「し、親善!? まあ……、そうね。向こうが良いって言うなら考えるけど、どう思う美緒?」
「とりあえず、何をするんだミーナ?」
「えっ!?」
「そこからカヨ!」
「剣術なら負けないつもりだが」
「だから少佐、刀から離れろッテ! サッカーダヨサッカー!」
「うーむ、何をすればいいんだ」
「手とか腕、肘を使わずに足だけ使って相手からボールを奪って、追いすがる相手をかわして、相手のゴールにボールを蹴り入れるだけの簡単な……」
「難しそうだな」
「まあ、確かに難しいんだけどね」
「少佐は……そうだな、攻撃的ミッドフィールダーなんかどうだろう」
「何だそれは」
「魔眼を使って相手の弱点を探して、フォワードに伝えれば良いんですよ。あわよくばスキをみてゴールを……」
「なるほど、私にも出来る事があるんだな」
「……スポーツで固有魔法使うのはどうかと思うんだけど」
「そんな中佐はディフェンダーかミッドフィールダーで、固有魔法使ってフィールド全員の位置把握をしてチーム全員に指示を出して下さい」
「私も固有魔法使わないといけないの?」
「中佐の三次元空間把握能力はとても有効だと思うんですけどね」
「スポーツで固有魔法って、なんかズルしてるみたいで……」
「良いんですよバレなきゃ」
「そう言うものなの?」
「ルッキーニはその俊足と身軽さを活かして、サイドから一気に攻め込むのも有りだな」
「ニャハーおもしろそう」
「確かに、ルッキーニは身体軽いし動きも速いから、キーパー以外何処でもいけそうだな」
「イエー あったし〜、万能選手って事?」
「器用貧乏とも言うんダゾ?」
「ぶー。エイラひどい!」

92 名前:formation "501" 02/02:2011/05/19(木) 23:41:04 ID:xndhmOP2
「しかし、考えてみると501(ウチ)はフォワード向きなの多いな」
「そうだな」
「例えば、エイラも固有魔法使えば無敵じゃね?」
「フォワードにもディフェンダーにもゴールキーパーにも向いているな」
「私は痛いの嫌だから、ボール来たら避けるヨ」
「おい!」
「避けたらダメだろ避けちゃ!」
「……前の“特訓”を思い出して、色々と頭が痛くなってきましたわ」
「落ち着けペリーヌ」
「じゃあキーパーはやっぱりバルクホルンで」
「だからどうして私なんだ」
「あの……私は何か出来ますか?」
「サーニャか。魔導針で相手の位置補足とか」
「ディフェンダー向きだな。中佐と同じポジションでもいけそうだな」
「だからサーニャは私が守るって言ってるダロー!」
「だからサッカーで何でサーニャを守る事に固執するんだ。スポーツだぞ?」
「ロマーニャ人は油断ならないからナ。サーニャに何かしたら絶対許さないゾ」
「落ち着けエイラ」
「いや待てよバルクホルン。ここはエイラの特性を活かして、むしろサーニャをキーパーに……」
「なるほど、そうすればエイラは絶対に相手から……」
「コラー! サーニャをエサに私を動かすナー!」
「ところでシャーリー、お前は何処のポジションなんだ」
「あたし? サイド辺りのミッドフィルダーでいいんじゃね? ボール貰ったら一気に加速して距離詰めてゴール!」
「加速か……なんか卑怯だな」
「卑怯って言うな!」
「私はどうするのトゥルーデ?」
「ハルトマンはフォワードだろう。純粋に身体能力高いし、何よりウチのエースだからな」
「シュトルムー、とか?」
「それを相手にやったら多分一発退場だと思う」
「ペリーヌもそうだな。相手に電撃とかかましたら、レッドカードに……」
「ルッキーニも多重シールドとか使うなよ?」
「エーなんでー? 相手に直接身体触れないからいいじゃん」
「そう言う問題じゃない」
「リーネは宮藤、ペリーヌと一緒にディフェンダーが良いな。三人のチームワークでオフサイドトラップ仕掛けるのも良いな」
「それは構いませんけど……鈍臭い宮藤さんが私達について来られるか心配ですわ。しくじったらゴールがら空きですし」
「酷いペリーヌさん! なら私とリーネちゃんで合体攻撃を……」
「何をするつもりだ宮藤」
「そうだなー。特にリーネの狙撃能力で、フォワードに的確なパスを」
「それ『狙撃』って言うんですか? 私、ボール蹴る事そんなに無いから……」
「大丈夫、魔法魔法」
「はあ」
「で、宮藤は負傷した仲間を治療すると」
「あの……私、フィールドに居なくても良いんじゃないですか? ベンチで待機でも」
「いや、サッカーは十一人でやるものだから」
「そんな輝いた顔で言われても……」
「ところで、チームの監督は誰?」
「えっ」
「えっ」

 リーネがおかわりの紅茶を淹れ、皆に振る舞う。まったりとした甘い香りの中、お喋りは途切れる事無く続く。

end

93 名前:名無しさん:2011/05/19(木) 23:42:24 ID:xndhmOP2
以上です。
501は(固有魔法有りだと)サッカーでも
最強メンバーの様な気がします……なんとなくですが。

ではまた〜。

94 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:50:41 ID:ZPhgFrmQ
おひさしぶりっす。
5/20にウィルマの誕生日ネタを書いたんですが、
こっちの方に投下できなかったので某所に上げたりしてました。

保管庫1384【ファラウェイランド1945 舞台裏の取引】の続き物なのでちゃんとこちらにも投下します〜。

95 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:51:05 ID:ZPhgFrmQ
「ふぅ」
「『ふぅ』じゃないでしょ。溜息つきたいのはこっちなんだけど」
「フムン」
「『フムン』でもないわっ! キョトンとした表情で見つめ返されても困るわよっ」
「そうか……ほら、ビールだ。それとも紅茶の方がよかったかな?」
「だからそういうんじゃなくってぇ」

 まだ少し上気したままの、それでいてどこか余裕のある事後の横顔。
 どう考えても私の反応を楽しんでいる。
 腹立たしさを落ち着かせるため、少しの間でも彼女の顔を見ず意識しないようにする為、大した尿意は無いけれどトイレに行く事にする。
 私はシーツを胸元に引き寄せながら上半身を起こした。

「花摘み? 場所はわかる?」
「馬鹿にしないで」

 毎度の事ながら半ば無理矢理連れ込まれたホテル。
 かなり高級な部屋であるとは言え、極端に広いわけじゃない。
 トイレぐらい、ドアを一つ二つ開ければすぐに見つけられるに決まってるじゃない。

「フム……おっと」

 私がシーツを引きながら立ち上がった事によって、上半身を起こしてビールジョッキを傾けていた彼女の身体が露になった。
 同性の私でも見惚れる様なすらりとした肢体、バランスも形もいい乳房。
 さっきまでの情事を思い出して思わず赤くなる。
 悔しい事に、この女……アドルフィーネはセックスが上手い。
 同性同士だからイイ所をわきまえてるとか、そういうのじゃ説明が付かないほどに、その……気持ちよくしてくれる。

96 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:51:57 ID:ZPhgFrmQ
 正直な所、ダーリンよりも凄い。
 原因は多分、あの魔眼だというのはわかっている。
 あれで私の一番いいところを探り当てて弄りこんで来てるんだと思う。
 そして、まだ朝までは長い。
 きっとまた、体力が切れるまでいっぱいされちゃうんだろうな……。
 と、そんな思考が無意識に脳内を満たすけど、くすりと笑う彼女の表情に現実へと引き戻される。
 考えてる事、見透かされた?

「いい表情」
「うっ……」

 やっぱり。
 現役の将官ともなると、人の思考を読むのも上手いって事なのかしら。

「と、とにかく! トイレの場所は教えてくれなくても構わないわ。自分で探すから」

 アドルフィーネにに背中を向けつつシーツを体に巻く。
 彼女から完全にシーツを剥ぎ取る恰好になるけれど、気にしない。

「その角度で君を眺めるのは初めてだが……なるほど、背中からお尻にかけてのラインも絶品だ。本当に君は素晴らしいよ。先に魅力に気付けなかった自分を恥じる。魔眼など、名ばかりだ、全く嘆かわしい」
「はいはい」

 芝居がかった彼女の台詞を尻目に、ベッドを離れる。

「本当にそちらにはトイレが無いんだが……」
「でも、部屋のドアはそっちでしょう」

 視界内にあるドアを指差す。

「その通りではあるのだが、その向こうには無いという事を言いたいのだ」
「じゃ、どこにあるの?」
「待ちたまえ」

 私に待機を命じたアドルフィーネは、おもむろにジョッキのビールを飲み干した。

「ふぅ……よし、用意が出来た」
「どういうこと?」
「わからないのかな?」
「あんたがナニ考えてるかなんてわかるはず無いでしょ」
「フムン」

 裸のまま、ベッドに腰掛けて右手に空のジョッキを持ち、少し考えるような仕草のアドルフィーネ。

97 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:52:46 ID:ZPhgFrmQ
どんな状況のどんな態度でもサマになる美人ってのはいるものね、と思い知らされる瞬間。

「つまり、だ」

 右手に持ったジョッキを、左手で指差す。

「ここが君のトイレと言う事なんだが」
「は?」
「これが君のトイレだと」
「もう一回」
「これに君が用を足すんだ。ジョボジョボと」
「だ、だれがするかっ!!」

 思いっきり叫んだ!
 平手……いや、グーでパンチを食らわせなかったのは我ながらなかなかの自制心だと思う。

「この、変態っ!!!」
「フム、君に罵られるのは実に心地いい。気が済むまで罵って構わないので気持ちよく用を足して欲しい」

 ぐっ、とジョッキを近づける。

「くっ」

 このマイペースな自己中変態のVIPには既に常識など通用しない。

「わかった! わかったわよ! やってやるわよ! やればいいんでしょ!」

 投げやりに言い放ちながらジョッキをひったくり、床へと置き、その上にしゃがみこむ。

「み、見ないでよね……」
「それは無理だ。見たいが為にこうしたんだから」
「へんたい」
「結構だ。さぁ」

 わざわざベッドの上に座りなおし、軽く開いたフトモモの上に肘を置いて鑑賞モードのアドルフィーネ。

「せめて後ろくらい向かせてよね」
「却下だ。ついでに目線はこちらに貰おう」
「へんたいっ!!」
「結構だ。さぁ」
「くっ」

 覚悟を決めて、腰の位置を合わせる。

98 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:53:21 ID:ZPhgFrmQ
 ジョッキが大きいせいで、何となくお尻の高さが落ち着かない。
 ついでに元々大した尿意があったわけでも無かった所に加えて、妙な緊張状態を強いられているせいで、出すものが出せそうに無い。
 人の前で、ジョッキの前で脚を開いて座り込んで……こんな恥ずかしいポーズをとっているって言うのに、早く終わらせたいのにどうにもならない。

「いいよ、そのまま。無理せずゆっくり」
「わ、わたしは、早く終わらせたいのっ!」
「そんなに早く私に見せたいのか、それは光栄だ」
「ううっ……」

 悔しい。
 何を言っても、なんだか相手を期待させて喜ばせている様にしか思えないなんて、本当に悔しい。
 でも、妹の……リーネのためには逆らえない。
 ううん、違う。
 本当に一番悔しいのは、多分わたしの中のどこかが、この状況を許容して、こんな変態行為を楽しんでしまっているって言う事。
 だから、ほら、その証拠に、まだおしっこを出していないのに、開かれたアソコがヌルヌルになってる。

「ああ、ステキだよ、ウィルマ。すごくいやらしい」

 そんな私の心を見透かしているのだろう目の前の年上の彼女は、惜しげもなく股間をさらすだけでは飽きたらず、そこに手を差し入れて自慰をしながら私の観察を続けている。
 私はといえば、そんなアドルフィーネに言われるがまま、その淫蕩に濡れた瞳へと自らの意思で視線を合わせ、ジョッキの上でもどかしく腰をくねらせるだけだった。
 そして、その状態のままどれくらいの時間が過ぎたのだろう?
 10分? 20分?
 時計を見ていないので正確なところはわからないけれど、実は思っているほど時間は経っていなくて、ものの一分くらいだったのかもしれない。
 とにかく、私にとっては長時間の羞恥に耐え……いえ、流されながら無理矢理高めた尿意がやっと実を結んでくれた。
 ぷしっ、と尿道から噴出す感覚。
 次にそれはジョッキのガラスを叩く少し高い音へと変わり、やがて水面へと当たる彼女の称した音となる。
 じょぼじょぼじょぼ……。
 同時に、感度の高まった身体は、尿道の粘膜を液体で擦られるという単なる排泄行為にまで昂ぶりを憶え、ただひたすらに自分が落ちていくのを感じる。
 そして、その間も視線は彼女に向けられ、絡めとられていた。

99 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:54:09 ID:ZPhgFrmQ
 股間から響く排尿の熱さと、目線を合わせる事でいやでも自覚してしまうこの羞恥の感覚が、たまらなく私の淫蕩な部分を燃え上がらせる。

「ウィルマ……」

 永い永い羞恥と恍惚の時間から開放されると同時に、蕩けたアドルフィーネの瞳が迫ってくる。

「アドルフィーネ……」

 私はすっかり力が抜けて、ジョッキの上に座り込んでいる状態だった。
 更にそのジョッキと身体の僅かな隙間に、私の濡れた女性自身に、彼女自身の粘液で濡れてぬらりとした光を反射する指先が、挿し入れられる。

「ひんっ」
「ウイルマ、これですっきりしたのなら服を着てこの部屋を出ていってくれて構わない。まだ私を感じたりないというのなら、この指先の導きに従ってもう一度ベッドの上に来てくれて構わない。どう?」

 問題の指先は、私の粘膜をやわやわと撫で続けている。
 耐えられない。
 耐えられっこない。
 こんなに昂ぶって、濡れて、気持ちがいいのに、この部屋を出ていけるはずがない。

「あぁ……あなたは、ずるいわ」
「軍で重用されるには必要な資質だよ。褒め言葉と受け取っておこう。で、どう?」

 再度の問い掛けに、私はふらつきながら立ち上がり、倒れるようにして抱きついた。
 それが彼女の指先に導かれた答だった。

「アドルフィーネ……」
「いい子だ、ウィルマ」

 そして、熱に浮かされた夜は深まっていく。

 ――――。

100 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:54:33 ID:ZPhgFrmQ

 朝。

「じゃあ、私はこれで」
「待ち給え」

 何時ものように先に出ていこうとするとアドルフィーネに呼び止められた。

「何よ」
「今日はフロントまで送ろう」
「別に見送りなんて……」
「好意は受け取るものさ、ウィルマ」

 これだ。
 彼女の落ち着き払った声で名前を呼ばれると、何だか逆らいがたい雰囲気になる。
 そして、結局今回も押し切られ、恋人同士のように肩を抱かれてフロントへ。
 するとそこには、派手な花束とトランクが置かれていた。

「これは?」
「ハッピーバースデイだ、ウィルマ」
「え……」
「ささやかながら花束と、そちらのトランクにはドレスが入っている。ぜひ次の夜会には着てきて欲しいものだ」

 あ、うちのダーリンは軍務で忙しくて跳び回って私の誕生日に何もしてくれてないのに、アドルフィーネは、ちゃんと……。
 なんだか、すごく嬉しい。
 私ってばすごく単純だ。
 たったこれだけの事でアドルフィーネへの反発心が薄れていく。
 本当に、とても、嬉しい。

「知って……覚えていてくれたの? 私の誕生日」
「フフ……、当然だ。私は君の生理の周期まで熟知している。その証拠に、最中に呼び出したことはないと思ったが?」

 前言撤回!

「こ、このへんたいっ!」
「今に始まった話ではないだろう」
「帰るっ!」

 話していても埒があかないと判断した私は、花束をふんだくってから乱暴にトランクを引っ張り、背を向ける。

「今度のキミの妹、リネット嬢の誕生日にも何かを贈りたい。ついては今度また買い物にでも付き合ってほしい。よろしいか?」
「しらないっ!」
「フム、ではスケジュールはこちらで調整させて頂こう。もちろん、周期は避けるので安心してほしい」
「ふんっ!」

 一瞬だけ反応して返事をしてから、再び背を向けてホテルを出て行く。
 また、次も流されてしまいそうな予感を、胸に秘めながら。

101 名前:zet4j65z ◆le5/5MRGKA:2011/05/24(火) 18:57:07 ID:ZPhgFrmQ
以上となります。

っていうか、注意書きとタイトル忘れてたっ!
内容には「エロス」と「おしっこ」な内容が含まれています。
タイトルは、
【●ファラウェイランド1945 5月20日】
となります。

リーネちゃんの誕生日にもこの続きで書くぞー!
おっぱ!

102 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/05/27(金) 19:19:22 ID:7xyPRekM
>>101 zet4j65z ◆le5/5MRGKA様
GJです! かなりアブノーマルなお話しですねw
ガランドさんが“紳士”過ぎるw


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
某所でのネタ話から、
思い付いた“ifファンタジー”な話をひとつ。
ではどうぞ。

103 名前:hunter life 01/03:2011/05/27(金) 19:20:21 ID:7xyPRekM
 トゥルーデはふと目を覚ました。いつものベッドの筈が、肌に触れるシーツが妙にちくちくと感じる。
 部屋で寝ていた筈が……どこか異国の地に見える。色とりどりの木の葉が舞い、遠くから川の流れも聞こえる。
 ゆっくりと身体を起こして気付いた。見覚えのないモノを身に纏っている。
「何だ、これは?」
「似合ってるよ、トゥルーデ」
 横から聞こえたエーリカの声。振り向くと、彼女も何やらいつもとは違った服装……いや、「鎧」を着込んでいる。
 しかし鎧と言っても妙なもので、中世の騎士団が着用していたものとは何かが違う……何かの素材を豪快に使っている感じだ。
「さて、リミットは五十分だよ」
「何の事だ?」
 エーリカは短めの剣を二本、肩に掛けると歩き出した。
「おい、ちょっと待て、私には何が何だか」
「大丈夫よ、トゥルーデ」
 ベッドの脇、焚き火の前でくつろいでいるのはミーナ。ミーナも何か不思議な鎧を纏っていたが、出撃する雰囲気ではない。
「フラウ、トゥルーデ。エリア6に反応。翼は畳んで……今は随分とリラックスしているみたいね」
「じゃあ、さっさと行ってぼころう」
「?」
 銃は? 私のMG42は? ストライカーは? と言うかここはどこだ?
 色々と質問したかったが、その場の雰囲気に気圧され、ああ、と頷くしかできない。
 ミーナの横では、いつもより大き過ぎる……扶桑刀に似た刀……を背負った美緒が、遠くを魔眼で見ていた。
「弱点は頭、雷属性に弱い。ペリーヌがトネールを使えばな……。破壊可能部位は……」
「ちょ、ちょっと待ってくれ少佐。私には何の事かさっぱりわから……」
「ほら」
 美緒から、ひとふりの「ハンマー」を渡される。拳銃の一部をやたらと大きくした様な、不格好な武器。
「とりあえずこれでも何とかなるだろう」
「は、はあ……」
「大丈夫、お前ならすぐやれるさ……本当は私も行きたいんだが、ミーナに止められてな」
 刀の柄に手を掛け、物凄く残念そうな美緒。しかし服の袖をミーナがぎゅっと握っている辺り、強烈な意思表示と見える。
「まあ、少佐はミーナとここでゆっくりしていてくれ」
 トゥルーデはよいしょとハンマーを担ぐと、エーリカの後を追った。

「エリア6に行くには、こっちが良いんだよ」
 小さな滝の横を抜け、ごつごつした山肌をとことこと走っていくエーリカ。
「なあ、ハルトマン」
「大丈夫、皆も先に行ってるから」
「皆? ああ、他の奴等か」
「あ……ミヤフジ達が敵に見つかった」
 ぽつりと呟くエーリカ。
「おいおい。急がないと」
「大丈夫、裏からシャーリーとルッキーニも回って来ているし、辺りの雑魚はエイラとサーニャが片付けてるよ」
「なるほど。それは心強いな」
「あそこの谷を下りるとエリア6。急ごう、トゥルーデ」
 そこで、ぐうう、とトゥルーデの腹が鳴る。
「そう言えば、何か腹が減ったんだが……」
「はいどうぞ」
 慣れた感じで、コンロを渡される。と言ってもシャーリーが簡単なバーベキューをしそうな程度には大きい。
「エーリカ、お前どこからこんなモノを?」
「肉はさっきのエリアに居た鳥から剥ぎ取ったものを……」
「鳥? あの丸っこいやつか」
「そそ」
「なんか、色々と違う気がする……」
 頭を抱えるトゥルーデ。エーリカから生の肉を渡される。どしりと重い。
「はい、火にかけて」
 焼く事しばし。エーリカはにやにやと見ていたが、トゥルーデは加減が分からず派手に焦がしてしまう。
「ありゃ。まあ、たべてみたら?」
 がぶりとかじりついて豪快に食べるが、途中で焦げ臭さと苦さに耐えられずむせてしまう。
「私の携帯食料あげるよ。はい」
「すまない」
「さあ、急ごう。ミヤフジ達が危ない」

 谷を下りた所は、実に見事な景色が広がっていた。
 滝のすぐ脇を流れる風流な川の流れ、鮮やかな色で舞う木の葉……、そして見た事もない、大型の“生物”。
「おぉい! 何だあれは! ネウロイじゃないよな!? 違うよな!?」
「慌てない。飛竜種の一種で……」
 飛び掛かってくる巨大生物を紙一重で回避する。
「ああ、バルクホルンさんにハルトマンさん、遅いですよ……もう駄目かと思いました」
「立ちなさい宮藤さん。まだまだ行けるはずですわ。リーネさんは背後から狙撃を」
「は、はい!」

 場違いな巨大生物を相手に、これまた場違いな面子が、普段とは異なった武装で立ち向かっていた。

104 名前:hunter life 02/03:2011/05/27(金) 19:22:10 ID:7xyPRekM
「あれ? 弾がない……弾詰まり?」
 銃の様子を確認するリーネ。
「リーネさん、しゃがみ撃ちするときは残弾に気を付けろとあれ程……」
「ひゃああ!」
 突進をまともに浴びてごろごろと転がるリーネ。
「ああ、リーネちゃん!」
「宮藤さん、リーネさんに治癒を」
「はい」
 三人は辛うじて連携を取っている。
「さて、私達も行こうか。トゥルーデは頭だけ狙えば良いから」
「頭? ああ」
 訳も分からぬまま、ハンマーを手に取り、敵に向かう。
「なんか戦況結構酷いね。皆、目塞いでね。行くよー」
 エーリカはそう言うと、何か手榴弾みたいなモノを投げた。途端に辺りが眩く光り、敵が立ちくらみを起こす。
 好機とばかりにエーリカは両手に剣を握り、するりと懐に潜り込むとまるで疾風の如く舞い、敵を刻んでいく。
 間も無く剣が紅く光り、エーリカの身体からもオーラが見えた。
「まずは下ごしらえ完了。さっさと行くよ〜」
 更に速く、すばしこく、攻撃を避け、鮮やかに敵を斬りつけていく。思わずその動きに魅了されるトゥルーデ。
「ほらほらー。トゥルーデもさっさと頭を殴る」
「わ、分かってる!」
 重いハンマーをぶんと振り、敵の脳天目掛けて振り下ろす。敵がよろけたところで、もう一撃、さらに一撃と加える。
最後に思いっきりスイングし、頭をぐらつかせる。
「良い感じだね」
「そうか? 私にはよく……」
「お待たせー」
「ニャハー おまたせー」
 遠くから声が聞こえたかと思うと、背後からどかどかと何かが突進して来た。どんと背中を突かれ、派手に転ぶトゥルーデ。
 突進して来たのは槍を構えたシャーリー。持ち前の加速で勢いを付け、まるで敵を突き抜けるかの様にずばずばと強引にダメージを与える。
「おいリベリアン、気を付けろ! 今、私を吹っ飛ばしたな?」
「軸線上に居たアンタが悪い」
「なんだと」
「ほらシャーリー早くー」
 一方のルッキーニはえらく軽装で、異国風の銃器を手にすると、ぱぱぱんと連射を浴びせる。
「百発百中〜」
 銃を手ににんまりと笑う。
「お、ここに居たカ。周りの雑魚はあらかた退治してきたから、残ってるのはコイツだけダナ」
 谷の奥から、エイラとサーニャがやって来た。
「右ダナ」
 エイラはサーニャの手を取り、ささっと位置取りをする。襲い来る敵の尻尾は見事に空を切り、弾かれた落ち葉が水に濡れる。
「ねえエイラ、もうすぐこの敵……」
 サーニャが魔導針で様子を伺う。
「ヨシ。おーい宮藤、シビレ罠準備シロー」
「は、はい!」
「ツンツン眼鏡はトネール禁止ナ。皆を巻き込むからナ」
「何度も連発出来ませんわよ!」
「トゥルーデ、ついでに脇のブレードみたいな部分も壊してね」
「注文が多いな」
 文句を言いながらも、何とかげしげしと殴りつけ、翼の端に傷を付ける。悲鳴を上げる敵。
「大丈夫。もう捕獲行ける」
 サーニャがエイラの手を握って、声を上げる。
「宮藤、準備は?」
「は、はい! 大丈夫です!」
 狙いを芳佳に定めて突進する敵。しかし途中には罠が置かれており、ビリビリと拘束される。
 そこに芳佳が何発か麻酔用の弾を投げつけた所で、敵はがくりと崩れ落ち、寝いびきを立て始めた。
「お疲れー」
「お疲れ様」
 揃った皆は口々に健闘を称え合う。
「案外早かったね。五分針ぎりぎりってとこ」
 エーリカが時計を見て言った。
「なんだそれ」
 意味が分からないトゥルーデ。
「まあいいからいいから」
「で、この寝ているのはどうするんだ」
「ギルドが引き取ってくれるよ」
「??」
「もう。トゥルーデはもうちょっと勉強しないと」
 エーリカは笑いながらこつん、とトゥルーデの兜を小突いた。

105 名前:hunter life 03/03:2011/05/27(金) 19:22:43 ID:7xyPRekM
 はっと目が覚める。
 いつもの部屋の天井……いつものベッド。
 トゥルーデは自分の身体をぺたぺたと触って感触を確かめる。パジャマと、下着、ズボン以外、身に付けていない。
 当然だ。ここは501の基地の中。私は非番で……
 そこで、エーリカがすぐ横で寝ている事に気付く。だらしなく伸びた腕がトゥルーデの額に当たったらしい。
「何だったんだ……さっきのは」
 時計を見る。寝直すには微妙な時間だ。まだ十分も経っていない。
「……ん?」
 何か違和感を覚えるも、トゥルーデは首を振り、まあいい、と呟いてごろんとベッドに横になった。

end

106 名前:名無しさん:2011/05/27(金) 19:23:00 ID:7xyPRekM
以上です。
ネタが分かる人には分かると思いますが……
誰得なものを、失礼しました。

ではまた〜。

107 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/29(日) 12:21:59 ID:VayjPsec
どうもこんにちは〜。いきなりですが、最近書いたものを投稿させて頂きます!
…と言っても実はこの間投稿した「ヘルマの弟子入り」とネタが若干被っててお蔵入りした作品だったのですが…もったいないので投稿させて頂きます!

【Ihr wahrer Charakter】

砂漠の中に設営されたテント。
そこに、数人の司令官やウィッチが定例の会議をしている。

「ネウロイは昨日に攻めてきたので、今日出る確率は低いわ」

会議を仕切っているのは『ケイ』こと加東圭子。

「なので、各自訓練等をしておくこと。以上、解散!」

会議を終えると、次々とテントの中から出て行く...

「…さてと、夕飯の下ごしらえを」

最後の方に、立つ人物が一人。彼女の名はライーサ・ペットゲン。
テーブルの上に置いていたメモ帳を忘れないように取り、調理場のあるテントへ向かおうと席を立つ…が、

「あ、ライーサさん!忘れ物ですよ!」

ライーサが立った際に落としてしまったメモ帳に挟まれてたと思われる一枚の写真を取る、傍にいた稲垣。

「あれ…行っちゃった」

既に彼女の姿はなく、ふと手にしている写真を見てみる。

―――誰のサインだろう…?

その写真の裏には誰かのサインがあり、表面を見てみると…

「…えっ?」







「ライーサさん!」
「あ、マミ。どうしたの?」
「あの…これ」
「へっ…?」

調理場のあるテントにて、稲垣は先ほどライーサが落とした写真を渡す

「…っ!!」
「あの…何故?」
「だっ、誰にも言わないで…ね」
「は…はあ…」
「………」
「…お好きなんですか?」
「うん!」

若干、鼻息を荒くして答えるライーサ。
寡黙な人…という印象を持っていた稲垣は、普段の彼女からは感じられない姿にただただ驚く…

「もしかして…マミも!?」
「あ…えと、上官としては…ですけど」
「そ…そうなんだ」


***

108 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/29(日) 12:22:38 ID:VayjPsec
>>107の続き。

所変わり、マルセイユのテント。

「なあケイ」

いつもとは違い、真剣な表情をするマルセイユ。

「ん?何よ?…と言うか、あなたも仕事しなさい」
「私は事務仕事は苦手なんだ」

何故かマルセイユのテント内で事務仕事しているケイ

「そもそも、なんでここで仕事をしているんだ?」
「このテントが一番涼しいんだもの」
「だからって…」
「…で、何?何か呼ばなかった」
「あ、ああ。最近…なんかその…気持ち悪いんだ」
「飲み過ぎよ」
「違う!そうゆう気持ち悪さじゃなくてだな!」
「じゃあ何よ?」
「…なんかその…後を付けられてる感じがするんだ」

すると何事も無かったかのように仕事に戻るケイ

「おい!」
「まさかその歳で幽霊が怖いとか、どんだけよ」
「違うっ!」
「はいはい、今夜一緒に寝てあげるわ」
「子供扱いすんな!」
「じゃあ何?!私、今忙しいんだけど!!」
「…誰かにストーキングされてるっぽいんだ」
「アナタの熱狂的ファンなんじゃないのかしら?」
「そうゆうのはマティルダが排除してくれてる」
「…まあもしそれが本当なら、外部からの犯行は無理ね」

事務仕事をしていた手を一旦止め、ケイは肩を回し始める...

「肩が凝るわねえ…で、こんな僻地まで追っかけてくるファンって今まで居たかしら?」
「…あ、ケイが来る前に1人だけ居た!私の熱狂的なファンでな…マンションの権利書を持って来たファンがな」
「じゃあソイツじゃないの?」
「いや、権利書だけ貰ってカールスラントに強制送還して…本国で裁判したからもう来ないな」
「逆恨みの犯行じゃないの?」
「うーん…」
「じゃあソイツじゃ、ないんじゃない」
「…真面目に聞いてくれ、ケイ!」
「あー…アホくさ」

突然ケイは立ち上がり、机の上に広げてあった書類をまとめ始める

「自称『アフリカの星』が…なんて弱気なことを言ってるのよ!それより戦闘で怖い経験を何回かしてきたでしょ?!」
「だから!…その怖さとはまた違った怖さなんだって!!例えば…シャワーを覗かれてる気がしたりとかな!」
「じゃあ何って言うの?」
「私が考えるに…同性の犯行だな」
「そう。わかった」

そう言い残すと、テントから出て行った。

「…話を聞け、バカ!」


***


所戻って、調理場のあるテント。

「…アルバム、見たい?」
「へっ…??いや…結構です;;;」
「見たい…よね?!」

もの凄い勢いで稲垣に迫るライーサ

「わっ、わかりました!!みっ、見たいです!!見たいし、痛いです;;腕を掴まないでください!!;;」

すると、どこから取り出したのか『ライーサのマル秘アルバム』を取り出す...

「いっ、一体どこから…?」
「これは私が1年間毎日撮り続けた記録なんだけど…」
「えと………え、ウソッ!?」
「この写真撮るの…大変だったなあ」
「ちょちょちょ!!」
「え、焼き増しして欲しいの?フィルム残ってたかなあ…」
「ちっ、違います!」


***

109 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/29(日) 12:23:19 ID:VayjPsec
>>108の続き。

そして、その日の深夜。

「…ん?」

たまたま用があり、テントとテントの往き来をしていたケイはマルセイユのテント付近で不審な影を見つける

「もっ、もしかして…」

『例えば…シャワーを覗かれてる気がしたりとかな!』
と、昼にマルセイユが言っていたことを思い出す。

「ま…まさか!!」












バッ!!

テントに忍び寄る不審な人物の腕を掴む

「アナタ!!そこで何やってるの??!!」
「っ!!」
「…ラッ、ライーサ??!!」
「こっ…こんばんは〜」
「…こんばんは」

そこに居たのは意外過ぎる人物だったので、思わず変なリアクションを取ってしまうケイであった。

「何してるの?!…って、それーっ!!」
「シ〜ッ!!声が大きいですって;;」
「あ、ごめん;;…じゃなくて!それ私のカメラじゃない!」

そして、ライーサの手には何故かケイのカメラがあった...

「あの…これは…今から、バードウオッチングにですねぇ;;」
「私のライカで?」
「あの…これは…この間ヨドバシのポイントを使って………ごめんなさい!!!!」
「………」

ケイにより強制的に、テントへ連れて行かれるライーサ。

「…話を聞こうか」
「別に!悪気はないんです!!」
「どう見てもあるわよ!自覚ないの?!」
「ただ…ティナの天使のような寝顔が撮りたくて…エヘヘヘ…すみません、ヨダレが」
「うわああ…」

若干、引くケイ。

「あの…騒がしいですが、どうしたんですか?」

よほど騒いでいたのか、心配になってやって来た稲垣。

「マミ!ライーサがね、」
「あー…」
「何か知ってるの?!」
「あれは…私も良くないと思います」
「え?え?」
「ライーサさん…昼に、私にマル秘アルバムを見せて来たんです」
「アルバム?」
「ええ…一年間に渡って撮り続けていたマルセイユさんの写真のです」
「今度本国の出版社へこの写真を持ち込んで、写真集かカレンダーを作ってもらう予定です」
「何勝手に他人の写真集作ろうとしてるのよ!」
「大丈夫です、出版社に知り合いが居ますので」
「そうゆう問題じゃない!」

ケイは頭を抱えながら、席に座る。

110 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/29(日) 12:24:02 ID:VayjPsec
>>109の続き。

「はああ…」
「大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないわよ!まさか身内の犯行だったとは…」
「…あ、あのぅ」

すると、今まで黙っていた稲垣が手を挙げる...

「どうしたのよ?」
「ライーサさん…マルセイユさんがお好きなんですよね?」
「はい」
「あのぅ…なんで…?」
「だってカッコ良いじゃありませんかぁ!!!!」
「………」
「………」

いつもと180度キャラが違うライーサに困惑する、2人である…。

「ちなみに、ティナの何でも知ってますよ?!ティナの好きな飲み物は牛乳、好きな花はパンジー、好きな映画は『カサブランカ』、好きな漫画は『聖闘士星矢』、好きな芸能人は中井貴一、好きなお笑い芸人はオール阪神」
「もう良いっ!!!!」
「うっ…うわああ…」
「…まだまだ知ってますよ?ティナが最近気になる物は『ポケットドルツ』とか」
「ライーサさんって、マルセイユさんのマネージャーさんですか??」
「いや、れっきとしたストーカーね…ねえライーサ」

少々呆れ顔で質問するケイ

「そんなん詳しいなら、付き合っちゃえば良いじゃない」
「…それはちょっと」
「へ???」
「何でですか?!」
「確かにティナは好きです、けど…」
「「けど?」」
「いつまでも…心の奥にしまっておきたいんです」
「…はあ?」
「だって永遠の片想いって最高じゃないですか?」
「最高なの?マミ」
「私に聞かないでください;;;」
「そもそも…私とティナの出会いは本国のJG27に居た時です…」
「ちょっと待ってライーサ、その話って長い?」
「ええ、長いです」
「…まあ良いわ、続けて」

そして、延々と2時間に渡って
ライーサがどれだけマルセイユを慕っているかを聞かされたケイ。

111 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/29(日) 12:24:36 ID:VayjPsec
>>110の続き。

「Zzz...」
「…だったんです。そうした時に、ティナが…ケイさん!ケイさん!」
「…あ」
「『あ』じゃないです!!聞いてました?!」
「うん、聞いてた聞いてた…Zzz」
「ちょっと寝ないでください!!」
「ごめん…続けて」
「もう…それで、私とティナで『なわとび選手権』に出ましてですね…」

ちなみに稲垣は既にリタイアし、地面に横になって寝ている...

そして朝陽が差し込む時間となった。

「…というワケで、私はティナが好きなんです!あ、好きと言っても『LOVE』じゃなくて『LIKE』なんですけどね」
「………おはよ」
「…おはようございます」
「で、終わったの?」
「ええ、私とティナにおける歴史。カールスラント編」
「え?!まだあるの?!」
「はい、アフリカ編もありますが…それが何か?」
「うわあ…」
「さあ、朝マックして訓練に備えましょう!」
「ねえライーサ」

寝ぼけ眼で、話しかけるケイ。

「あなたはマルセイユを想っている」
「???」
「そして、マルセイユのパートナーであり親友である」
「…昨夜、それを話したじゃないですか」
「それをね…世間は『LOVE』に分類されるものよ?」
「…へ???」
「断言する、あなたはねえ!…マルセイユのことが好きなのよ!愛してるのよ!」
「まさかそんな………え?」
「さあ行くのよ!ライーサ・ペットゲン!マルセイユのところへ!」
「あの、仰ってることの意味が…?」
「早く行きなさいってば!!!!」
「はっ、はい!!!!」

ケイに圧倒されたのか、ライーサは走ってテントの外へ出て行った。

「…あ、おはようございます」
「あ、マミ。おはよう」
「今のやり取りって…?」
「…もう腹立って、デタラメ言ったわ」
「えぇぇ…」
「したら、今…」
「あ〜…」
「………」
「………朝ごはん、食べに行きましょうか」
「そうね」



後日、マルセイユにベタベタくっついているライーサの姿を目撃する隊員が続出。
見る者は皆、驚いたという。

それもそうと、勤務中は『寡黙』『真面目』で通っているライーサ。
しかし勤務が終わるとスイッチが入ったかのように、ベタベタし…あげくの果てには甘い声を出すのだ。


***


「なあケイ…」

神妙な顔つきでケイに相談するマルセイユ...

「ん?どうしたの?」
「最近のライーサ…変じゃないか?」
「変って…どの辺がよ?」
「人が変わったと言うか、なんと言うかその…」
「…気のせいよ」
「確かにアイツは本国時代からの仲間だ、戦友だ。しかし、それ以上の関係ではないんだ」
「そう」
「でも最近やけに私に話かけてくるようになってな…」
「良いことじゃないの」
「…いや違うんだ!!怖いんだケイ!助けてくれ、アイツはたぶん私に変な水を段ボールごと買わせようとしてるんだ!」
「………」
「『ねずみ講』に引っ掛かけようとしてるんだ、アイツは!それか変な宗教か!」
「………あなたってば、どれだけ仲間を信じてないのよ…」

ライーサの意外な一面と、
マルセイユは意外と小心者だということがわかった、出来事であった…。



【おわれ】

112 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/05/29(日) 12:27:39 ID:VayjPsec
以上です、スレ占拠失礼しました〜。
書いた本人が言うのもちょっとアレですが、
個人的にライーサがテントに盗み入ろうとケイに捕まった時の、

「…ラッ、ライーサ??!!」
「こっ…こんばんは〜」
「…こんばんは」

おケイさんが動揺し過ぎて至って普通な事を発したやり取りが好きですw

113 名前:名無しさん:2011/06/01(水) 11:49:57 ID:URZ1zLjw
良し!

114 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/06/04(土) 15:39:39 ID:sOgep9S2
こんにちは!連投ではございますが、新しいのを書いたので投下させて頂きます!
6月4日は、ストパンキャラで一番好きなエルマさんの誕生日!なんで、ビューエル作品を書いてみました!


【ここに居なきゃいけない理由】

「あなたねえ!何度言ったらわかるの?!」
「ひいっ!!トモコ中尉ぃ、ごめんなさいっ!」

廊下で、そして大声で智子に怒られているエルマ。

「戦闘の時に逃げ腰になるなってあれほど…っ!!」
「っ…!!」

必死に涙をこらえているエルマ...

「あのねえ!泣けば良いってものじゃないわよ?!」
「なっ、泣いてなんか…っ!!」
「ほら泣くわよ、3・2・1…」
「うわあああああん!!!!」
「はああ…」

すると背後から、

「Oh!トモコがエルマを泣かせたねー!」
「ちょっ、キャサリンあなたねえ!」

蜂の巣をつっついたように騒ぎだすキャサリン。
いつの間にかハルカとジュゼッピーナがエルマの背後に移動し、

「大丈夫ですよ〜、エルマ中尉」
「今度は私たちがトモコ中尉を泣かせる番なんで」
「ひいっ?!」
「ト・モ・コ中尉ぃ〜」
「泣かせちゃ…いけませんよぉ〜」
「いっ…いやあああああ!!!!」

そうして、廊下でもみくちゃにされるトモコ。
スキを見計らい、ビューリングが食堂へ連れて行った…。



エルマの目の前に熱々のコーヒーカップを置くビューリング。

「落ち着いたか」
「はい…ひっく…」
「ったく…アイツも怒り過ぎだ」
「私が…私が悪いんです!」
「まあそんな悲観するな。後で私からもキツく言っておく」
「…ビューリングさんは」
「ん?」
「ビューリングさんは、どうしてそんな強いんですか?」
「強い?私がか?」
「ええ…」
「…何言ってるんだ、私はもの凄く弱いぞ」
「へ…???」

今まで吸っていたタバコを灰皿に一旦置く

「こう見えてもな、死んだヤツのことが今でも忘れられないんだ」
「………」
「アイツ、今生きてたらこれくらいの階級で…もっと言えば結婚してたかもしれない。何せ一人の未来を奪ったからな」

俯くエルマ...

「もっと言えば、悪夢に魘されるんだ。アイツが私のことを恨んでるって感じの」
「ごめんなさい、なんか変なこと聞いちゃって…。話題変えませんか?あ、ペンギンの可愛さについてだとか!」
「…今の流れからペンギンの話か?」
「………私、実家帰ろうと思うんです」
「は…?」
「もうわかったんです、このスオムスの空は私には守れないって」
「ちょちょちょ…ちょっと待て!どうゆうことだ?」
「その言葉通り…軍を辞めようかと。入った時は、この国を守りたい!と思いました。けど…けど今は、もう皆さんが居ます!もう私が別に居なくても大丈夫ですよ!」
「…っ!!」

ガンッ!!!!

ビューリングは近くにある椅子を蹴り、ビクッと反応するエルマ...

「ふっ、ふざけるな!!!!」
「…なんでビューリングさんが怒るんです?私がここに居なきゃいけない理由でもあるんですか?」
「それは………それはなあ!!!!」
「…ほら、すぐ言えないじゃないですか」
「………」
「すぐに言葉が出てこない…ってことは、それほどの活躍をしてないんですよ私」
「………」
「…何か言ってくださいよ!!!!」

初めてだろうか、エルマは大声を上げる。

「…ごめんなさい、もう寝ます」
「………」


***

115 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/06/04(土) 15:40:16 ID:sOgep9S2
>>114の続き。


翌朝、事件が起こる…。

朝食時にみんなが食堂で集まっていた時だ。

「…あれ、エルマ中尉は?」
「朝見たねー!買い物行ってくるとか言ってたねー」
「…おいおい、この間買い出しをしたばっかだろ?」
『………』

ビューリングの一言により、静まりかえる食堂…。

「ちょっと寝室へ行ってくる!」
「待って、私も行くわ!!」























案の定、

「ない…」
「ないな…」

エルマのベッド周辺にあったはずの、私物の本や服などが無くなっている。

「わ…私のせいだ」
「ちょっと、何言ってるのビューリング」

ビューリングは脱力したのか、ベッドに腰かけた

「あー…ちょっと吸って良いか?」
「何言ってるの…」

焦る智子と、何がどうなってるのかわからないビューリング。
タバコに火を付け、

「ふう…」

一服する。

「…よくこんな時に吸えるわね」
「…全然美味しくないな」
「当たり前よ!」
「どうして…あんなことを言ったんだろう…」
「何?!あなた、エルマに何か言ったの?!」
「言った…」
「あぁぁぁ………なんて言ったの?」
「言ったというか、答えられなかった」
「何をよ?」
「昨日な…」

立ち上がり、窓の外を見るビューリング。

「アイツから相談されてたんだ。ここに居る理由をな」
「…で?」
「答えられなかった」
「はあ…なんで…」
「じゃあお前は答えられるのか?!」
「私に振らないでよ!」
「お前だって答えられないじゃないか!どうして私が責められなければならないんだ!」
「はぁ?!責任転嫁?!」
「2人とも、うるさい…」
「「っ??!!」」

言い争っている2人の後ろには、ベッドの上で学術書を読んでいるウルスラの姿がそこにあった。

116 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/06/04(土) 15:40:44 ID:sOgep9S2
>>115の続き。

「ウ、ウルスラ…」
「あなたいつの間に…」
「朝食を摂った後、すぐにここへ戻ってきた」
「そう…」
「………」
「…今日は何日?」

…とウルスラを本を閉じ、眼鏡を外す。

「今日?6月の3日だけど」
「それがどうしたんだ?」
「そう…」
「???」
「トモコー!ビューリングー!」

すると遠くからドタドタと走って来る音がし、

「Oh!ウルスラも一緒ねー!」
「どうしたの?」
「フツーにエルマが帰ってきたねー」
「「…はぁ??!!」」


***


ドタドタドタ...

「あ、トモコ中尉にビューリング少尉おはようございます」
「おはようって…お前…」
「ちょっと!!何処行ってたの?!」
「何処に行ってたって…買い出しですが?」

エルマは手に持っていた紙袋を見せる

「あれ、キャサリンさんに言ったんですが…。買い置きのバターとかジャムとかが無くなって補充しに、あとジュゼッピーナさんからパスタを買ってきて欲しいって。あとシャンプーも!」
「…で?」
「えと…早起きしてバスに乗って市場へ行って来たんですが…どうしたんです?2人とも」
「じゃあ!お前のベッドの周りの本とか服は?!」
「今日シーツとかをまとめて洗おうと思ってですねぇ…で、ついでに周りも掃除しちゃおうって思って」
「よ…良かったぁ」
「へ??何がですか??」
「…このバカ!心配かけさせないでよね!」
「えぇぇぇ?!トモコ中尉…;;」

そして、大股開きで智子は何処かへと行った…。




























「ふう…」

辺りがシンと静かな、そろそろ日付けが変わろうかとする時間に、
ビューリングは基地の敷地内にあるちょっとした内庭でタバコを吸っていた。

117 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/06/04(土) 15:41:08 ID:sOgep9S2
>>116の続き。

「あ、ビューリング少尉」
「…エルマか」
「寝ないんですか?」
「ああ」
「そうですか…」
「お前こそ寝ないのか?」
「ええ」
「どうしてだ?」
「いやあ…なんか眠くなくって」
「そうか…」
「………」
「………」
「…昨日はごめんなさい」
「へ?あ、ああ。私こそ悪かった」
「私、もうちょっと…もうちょっとだけ頑張ってみようかと思います」
「ふん…」

奇妙な時間が、2人の間を流れる...

「…衝撃的な発言しても良いですか?」
「程度による」
「じゃあ話しますね………実は今朝、実家へ戻ろうと思ったんです」
「っ?!」

ビューリングは驚き、吸っていたタバコを地面に落としてしまった。

「荷物も纏めて、離隊届もちゃんと書いて…みんなが寝てる時間に基地から出て行こうと思って」
「………」
「けど、バレてしまったんですね〜…ウルスラ曹長に」
「そ、そうだったのか…」
「今でも腕が赤くなってるんですが…必死に私を引き留めようとして、ギュッと掴んできたんです。で、ムキになって私も無理やり引っ張ろうとして…」
「珍しいな、アイツがか」
「ええ、いつもとは人が違うみたいに。ウルスラ曹長、昨日のやり取りを全て聞いてたそうです」
「………」
「あ、そもそも私はよく一緒にシャワー入ってウルスラ曹長の頭を洗ってるんです。したら、『誰が髪を洗ってくれるの?』って…怒られちゃいました、あはは」
「アイツはもう1人で洗えるだろ…;;」
「でも良いんです、その一言で…私にもちゃんと仕事があるんだって」
「…じゃあ何で外に出たんだ?」
「シャンプー」
「…は?」
「ウルスラ曹長…明日、私の誕生日だってことを覚えてたそうなんです。したら、いつも洗ってくれてるから明日は私のを洗ってくれるって」
「………」
「こんなこと言われちゃったら、出るにも出られなくなりますって」
「………」
「さてと、私明日の訓練に備えてもう休みます。おやすみなさい」
「あ…ああ、おやすみ」

部屋に戻ろうとしたエルマを、

「なあ!おい」
「はい?」
「わっ、私…おっお前のその笑顔…好きだぞ。ずっとここに居てほしいって思ってる」
「へっ?!」

そして、ビューリングは今口走ったことを思い出したのか顔を真っ赤にする...

「えっあっ…その、な…」
「もしかしてビューリングさんも『女の子好きー』なんですか?!ケモノさんなんですか?!」
「違うっ!」
「…ふふふ、わかってます。ありがとうございます、なんか…元気が出ました」
「そうか?」
「はい」
「あの…お礼してもよろしいでしょうか?」
「お礼?」
「ええ」

と、エルマはビューリングに近づき…


チュッ...


一瞬、何をされたのかわからないビューリング。
エルマは彼女の頬にキスをしたのだ…。

「…おい」
「はい?」
「なんのつもりだ?」
「お礼です」
「………」
「…私のおばあちゃんが、ケンカや励ましの言葉をもらったらほっぺにチューしなさいって言わました」
「そ、そうか…」
「おやすみなさい」
「あ…ああ」

ニコニコと、自分のベッドへ戻って行く…。

次の日、『いらん子中隊』の全員によるエルマ誕生日パーティーが行われた。
そして当時に、ビューリングはこの日を境にエルマへ特別な感情を抱くようになったのであった…。



【おわり】

118 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/06/08(水) 22:36:56 ID:fcKFZbW6
>>117他 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
連続でGJです!
一途すぎて豹変するライーサも、ビューエルもステキです。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ちょっと思い付いた小ネタを元に書いてみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

119 名前:tester 01/02:2011/06/08(水) 22:38:27 ID:fcKFZbW6
 訓練のお手本になる様な、見事な着陸を決め滑走路をゆっくりとタキシングする。そのままハンガーに戻ったトゥルーデは、
なびいてほつれる髪も気にせず、手にした銃器をラックにそっと置くなり、待ち構えていたウルスラに言い放った。
「こんないい加減な作りでは、実戦で役に立たないぞ」
 ウルスラは手元の書類に幾つかメモをしながら、トゥルーデに答える。
「技術部としては的確な運用を考慮して製作したつもりですが」
 トゥルーデはストライカーユニットを履いたまま、腰に手を当て、それは違うと反論する。
「『つもり』では困るのだ。実戦では何が起こるか分からない。だからあらゆる可能性を考えてリスクを可能な限り低くするのがお前達の仕事な筈だ」
「ごもっともです」
 ウルスラはそう答えたっきり、手元の書類を見たまま。トゥルーデは何か言いかけたが、一呼吸置いて、声を掛ける。
「……とりあえず、このままでは、この銃は絶対にジャムを起こす」
「分かりました。持ち帰って再度調整します」
「そうしてくれ。他には?」
「今回は、有りません。試験終了です。お疲れ様でした」
「分かった。ハルトマン中尉も少し休め」
 それだけ受け答えすると、トゥルーデはストライカー格納装置に自分のストライカーを固着し、よいしょと脱ぎ、
すたすたとハンガーから去っていった。恐らくシャワーでも浴びるのだろう。
「相変わらず、厳しいですね、バルクホルンさん」
 横でやり取りを見ていた芳佳が呆れ半分に呟く。
「いえ、良いんです」
 ウルスラは機材と書類を片付けながら、ぽつりと言う。
 無表情。
 その顔色から、何かの感情を読み取る事は、芳佳には無理な事だった。芳佳は何と声を掛けるかか迷っているうちに、
ハンガーにとてとてとやってくる足音に振り向く。
「芳佳ちゃん! お茶とお菓子の準備出来たよ! ハルトマン中尉もどうぞ」
 リーネがやって来て、皆をミーティングルームに招待する。

 朝からあいにくの雨天で始まった今回の試作銃器のテスト。過酷な状況下で出来るならこれ幸いとばかりに
トゥルーデは真っ先に試作の銃器を担いで曇天の空に昇っていったが……、銃の仕上がりに不満だったのか、
フィーリング、反動、射撃時の姿勢変化、排莢の具合など、事細かに様子を無線越しに実況し、
基地に戻ってからは責任者のウルスラを掴まえてあれやこれやと“説明”した。
 ところがその「説明」の様子がまるで説教に見えたものだから、周りは少々肝を冷やした。

 皆の輪の中に混じり、ちびりちびりと紅茶を飲むウルスラ。今日は散々だったねと皆に励まされたりしながら、
自身は表情を余り出さずに紅茶のカップをずっと持っている。
 そこに、実の姉であるエーリカがやって来て、隙間に入り込む様にするっとウルスラの横に腰掛けた。
「お疲れウーシュ。トゥルーデ五月蠅かったでしょ」
「いえ」
「そう? ハンガーからトゥルーデの怒鳴り声がこっちまで聞こえて来たよ」
 苦笑いするエーリカ。クッキーをひとつ食べて、美味しいよ、とウルスラに薦める。
 ウルスラは言われるがままに受け取り、もそもそと食べ、紅茶を一口飲む。
「疲れた時は甘いモノが一番だって」
 笑うエーリカにつられ、もう一枚クッキーを食べる。
「ありがとう、姉様」
「気にしない気にしない」
 ウルスラにはすぐ分かる。自分の姉は、無神経な様でいて、とても相手の事を思いやる事に長けている。
 今もまさに、自分に向かって、最大限の「気遣い」と言う名の姉妹間の愛情を注いでくれているのだ。
 辺りには余り悟られぬ様に。
 そんな姉をちらりと見て、ウルスラは何とも言えぬ気分になる。何か言おうとしたが、うまく言葉に出来ない。
 こう言う時、本は何と言えば良いと言っていた? 書物や教科書でこう言う時の対処法を教えてくれる事は滅多に無い。
 教科書や教本は良く読むが所謂「純文学少女」ではなかったウルスラには、余計に難しく感じる。
 巧い方程式、戦術と言うものは、対人コミュニケーションと言う分野に於いては難解極まるものだ。
 やがて、紅茶で唇を潤したウルスラは、エーリカに聞こえる程度のちいさな声で呟いた。

120 名前:tester 02/02:2011/06/08(水) 22:39:08 ID:fcKFZbW6
「トゥルーデ姉様は」
「ん? どうしたのウーシュ」
「優しいですね」
 妹の思いも寄らぬ言葉に驚く姉。
「え? あんなにガンガン言われたのに?」
「裏返し、ですよ」
「あー。ウーシュの言いたい事分かった」
 エーリカはウルスラの言葉を聞いて、はにかんだ。
「本当は誰も傷付いて欲しくない。だから、試作の武器には……」
「まあ、適当に審査されるよりは良いかもね」
 エーリカはウルスラの頭をくしゃっと撫でた。小さく微笑む双子の妹。

 さっぱりとした表情で、遅れてやって来たトゥルーデ。団欒の輪を見回し、ウルスラの姿を見つけると、つかつかと歩み寄った。
「来ていたのか、ウルスラ」
「ウーシュで良いですよ」
「ああ、そうだったな。おっと、リーネすまない」
 トゥルーデはリーネから紅茶を受け取ると、エーリカとウルスラの横に腰掛けた。
 シャワーを浴びた後なのだろうか、髪が濡れ、下着も新しくなっている。石けんの香りが微かに漂ってくる。
「ところで。あー、その、なんだ。さっきは少し言い過ぎた。済まなかった」
 紅茶を一口含んだ後、らしくなく、反省してみせる「お姉ちゃん」。
「良いんです。あれ位厳しく言って貰わないと私達も弛みます。それに」
「?」
「エースの言葉には重みが有りますから」
「何だ何だ、急に私を持ち上げて、気持ち悪い。私をおだてても何も出ないぞ」
 少々困惑の表情を浮かべるトゥルーデ。
「あれ、トゥルーデ姉様……」
 ウルスラは紅茶のカップをそっと置くと、おもむろにトゥルーデの髪に手を伸ばし、しゅるりと髪縛りの片方を解く。
「お、おい。何をするんだ」
「ほんの少し、泡の跡が残ってます……急ぎましたね。髪に悪いですよ」
 まじまじと魅入るウルスラ。本人にはその気がなくても……あくまでも科学的観察だったのだが……
その仕草、手指の動きが気になって仕方ない。エーリカの双子の妹だからか。
「こら」
 エーリカに、ぐにゅーと頬をつねられ無理矢理顔を彼女の方に向けられる。
「なんて顔してるの」
「なっ! 私がそんなおかしな顔する訳無いだろう!?」
 焦って弁明するトゥルーデを見て、一瞬笑顔を作るエーリカは、すぐに「狩人」の目をして言った。
「照れてる。可愛いけどさ〜。でもあんまり度が過ぎると許さないよ?」
「おいおい……って、ウーシュもいつまで私の髪で遊んでいるんだ!?」
「すいません。よく手入れされてますが、少々毛先が」
「大丈夫だ、戦闘では関係無い。問題無い」
「私が気にします」
「何? どう言う事だ」
「トゥルーデ姉様には……」
「おっとそこまでだよウーシュ」
 エーリカはウルスラの前で人差し指を立てると、もう片方の手で、しゅるりとトゥルーデの髪縛りを解く。
「こらお前達! 私の前で喧嘩をするな! と言うか勝手に髪を解くな!」
「誰のせいだと思ってるの?」
「何っ?」
 呆気に取られ、意味が分からず身体が固まるトゥルーデ。スキを見逃さず、双子の「ハルトマン」は一斉に飛び掛かった。
「うわ、やめ……うひゃひゃ……」
 二人の“同時攻撃”に悶え、笑い、苦しむトゥルーデ。

 傍から様子を見ていた501の隊員達は、いつもの事かとすました顔。
 やれやれと溜め息をついたり、変わらず自分達のお喋りを続けたり。
 でも、ハルトマン姉妹とトゥルーデのいちゃつきは視界の隅にしっかりと入れている。
 501はそう言う意味でも「戦場」であり、そして同時に平和なのだ。

end

121 名前:名無しさん:2011/06/08(水) 22:39:25 ID:fcKFZbW6
以上です。
単純に兵器テストのネタだけの筈だったのですが。
もっとお姉ちゃんは愛されると良いと思います。

ではまた〜。

122 名前:アキゴジ:2011/06/19(日) 23:55:17 ID:cN7m1A9I
はじめまして、アキゴジと申します。
ここに来るのは初めてですが、芳佳ちゃんとバルクホルン大尉を書かせていただきます。
注:エロ有りでバルクホルン大尉が病んデレ気味です。苦手な方はご注意ください。

123 名前:私は妹さんの代わり 1:2011/06/20(月) 02:15:43 ID:XP.hz/ro
 私は眠れずにいた。何故だかわからないけど寝付く事が出来なかった。こんな事は一度もなかったのに、何だか珍しいかな、と思う。
芳佳「少し歩いていれば、眠くなるかな・・・」
 そう思った私は部屋を出て廊下を歩きだす。誰もいない静かな夜の廊下をただひたすら歩く。
芳佳「坂本さんかミーナ中佐に見つかったら、何て言われちゃうかな・・・眠れないんですって言ったら話し相手ぐらいにはなってくれるかな?」
 窓の外を見ながら独り言を呟く・・・独り言を呟くなんて自分でもおかしいな、と思ってしまう。いつもなら夜になれば訓練の疲れですぐに眠くなってしまう。だけど、今日の夜は不思議と眠くならなかった。どうしてだろう?そう思いながら夜空を見上げる。今はサーニャちゃんが夜間哨戒に出ている頃だろう。眠くなれないくらいならいっその事、夜間哨戒に出た方がよかったかもしれないと思う。
芳佳「・・・さびしいな」
 無理もない。誰もいないこんな夜だもの。一人になれば、誰だってさびしさを感じる。
芳佳「戻ろうかな・・・」
???「宮藤、こんな所でどうした 消灯時間はもう過ぎているぞ」
 私が部屋に戻ろうと思った瞬間、隣にバルクホルンさんが立っていた。
芳佳「バルクホルンさん・・・」
バルクホルン「珍しいな、お前が夜に寝ていないなんて」
芳佳「あはは・・・そうですね、自分でもそう思います でもバルクホルンさんも同じじゃないですか?」
バルクホルン「フッ・・・まぁな・・・」
 バルクホルンさんがこんな夜にいるのも珍しい。普段の彼女なら夜になればとっくに眠っているはずだ。しかし、今は私の隣にいる。
芳佳(話し相手になってくれないかな・・・)
 そういう考えが思い浮かぶが、何を話せばいいかわからなくなる。
バルクホルン「・・・宮藤」
芳佳「あ、はい」
バルクホルン「私の部屋に来ないか?こんな所にいても心細いだろう」
芳佳「え、あ、いやそんな・・・一人で大丈夫です」
バルクホルン「だが、お前はさっきさびしいと言ってたじゃないか」
芳佳「・・・聞こえていたんですか」
バルクホルン「あぁ・・・ずいぶんと人恋しそうにな」
 そのあと、しばらく沈黙が続いた。

124 名前:私は妹さんの代わり 2:2011/06/20(月) 22:36:19 ID:XP.hz/ro
 沈黙が続く中で、何だか落ち着けなくなっていた。バルクホルンさんがすぐそこにいるのが気になって仕方がない。すると、バルクホルンさんが話しかける。
バルクホルン「宮藤、自分の部屋に戻ってもどうせ眠れないだろう?私が相手をしてやる、だから私の部屋に来い」
芳佳「え・・・でも」
バルクホルン「何を遠慮している、私が来いと言っているんだ さぁ行くぞ」
芳佳「え、あ、ちょ、ちょっと!バルクホルンさん!」
 躊躇しているヒマもなく、私はバルクホルンさんに腕を掴まれながら部屋に連れて行かれる。気のせいか、バルクホルンさんの腕の力が妙に痛いほど強く掴まれている気がした。

芳佳「・・・えっと・・・バルクホルンさん、ホントにいいんですか?」
バルクホルン「遠慮がすぎる奴だな、いちいちそんな事を気にしてもしょうがないだろう」
芳佳「それは、そうですけど・・・」
バルクホルン「それに、お前には少し役目を担ってもらおうと思ってな・・・」
芳佳「役目・・・?」
 その言葉を聞いた瞬間、何故か私は嫌な空気に包まれた。
芳佳「あ、あの・・・バルクホルンさん、役目って一体・・・」
バルクホルン「言葉で教える必要はない、その身体ですぐに教えてやる」
芳佳「ど、どういう事ですか?」
バルクホルン「宮藤、言葉で教える必要はない、と言っただろう」
芳佳「は、はい・・・」
 戸惑う私にいらついたのか、バルクホルンさんは重くのしかかるような言葉を言い放ち、私を黙らせた。突然の事に私は恐怖で身体が震えだす。
バルクホルン「宮藤」
芳佳「は、はい・・・」
バルクホルン「ベッドに座れ」
芳佳「え・・・な、何で」
バルクホルン「ベッドに座れ、わからないのか?」
芳佳「う・・・は、はい・・・」
 バルクホルンさんの鋭い剣幕に私は逆らう事が出来ず、そのままベッドに腰掛ける。
バルクホルン「うむ、それで良い・・・」
 すると、バルクホルンさんは笑顔を浮かべながら私の方に近づいて来た。私は彼女のその笑顔に、とてつもなく不安を感じた。
芳佳「あ、あの、バルクホルンさん」
バルクホルン「・・・」
 バルクホルンさんは笑顔を浮かべたまま、私の髪をなでる。普通なら嬉しく思うはずなのに、何故か嫌な気分になる。どうしてだろう?
バルクホルン「さて・・・宮藤、役目を担ってもらうぞ」
芳佳「え?あの、それって・・・」
チュッ
芳佳「ッ!?」
 戸惑う私にバルクホルンさんはキスをした。突然の事に私は離れようとするが、隊の中で最も力強いバルクホルンさんに身体を捕らえられているため、抵抗する事が出来ない。
芳佳(バルクホルンさん・・・何で・・・何でこんな事を・・・)
チュプ・・・クチュ・・・ヂュル・・・レチョ・・・
芳佳「んっ!んんっ!んんんん〜〜〜〜っ!!」
 息苦しくなるくらいに唇を押しつけられ、舌で私の口の中を弄ぶ。私はもう頭がおかしくなりそうだった・・・。

125 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/06/22(水) 23:12:04 ID:e55HorT2
>122 アキゴジ様
GJです。こう言うお姉ちゃんもアリなんですねw


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ちょっと思い付いた事を元に書いてみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

126 名前:magical girl:2011/06/22(水) 23:13:31 ID:e55HorT2
「ねえトゥルーデ」
 耳元に甘い声で囁かれたトゥルーデは、瞼を無理矢理こじ開ける。
 薄目で見ると、いつ起きたのか、エーリカがトゥルーデの顔を見て、にやっと笑っている。
「どうした?」
「いつもは早いのにね。寝坊?」
「何っ!?」
 慌てて身体を起こして時計を見る。まだ起床時間ではない事を確認すると、やれやれとばかりにゆっくりと身体を横たえる。
「二度寝?」
「まだ朝にもなってないだろう」
「少佐はさっき出て行ったよ」
「少佐は朝になる前から出掛けていくからな……で?」
 まだ眠気が残るトゥルーデは、曖昧に……ややぶっきらぼうに問う。
 エーリカはそんなトゥルーデを見た後、解かれてベッド上で自由に広がる髪をすくって、軽くキスをする。
「何だ、エーリカ……」
「ねえ、トゥルーデ」
 エーリカは繰り返した。
 甘い囁き。
 そして、囁きは続く。
「私達、『魔法少女』、らしいよ?」
 突然の言葉に意味が分からず、ぼんやりと数秒考えた後、どう言う事だと答えるのが精一杯。
「言葉の通り。さしずめ私は『せくしー魔法美少女』ってとこかな」
「なんだそれは」
 トゥルーデは呆れて、寝返りを打とうとした。
 エーリカは逃すまいとトゥルーデの身体を抱きしめ、顔を正面に持ってくる。
 見事に捕まった格好の堅物大尉は、眠気と呆れが混じった顔で呟く。
「私達はウィッチ、魔女だろう。違うのか」
「そうじゃなくてね、トゥルーデ」
「じゃあどう言う事なんだ」
「魔法少女」
 無邪気に繰り返される言葉を聞いて、トゥルーデは思わず笑った。
「一体何なんだ。私はもう十九で、少女と呼べる歳でも……」
「トシの話はしない方が良いよ。ミーナの前では特にね」
「何故ミーナが出てくる……」
「まあ良いから」
 エーリカは何か言いかけたトゥルーデの唇をそっと塞ぐ。
 少し呻いたトゥルーデも、エーリカの愛情を受け容れ、お互いの感触を確かめ合う。
 つつっと、唇を離す。
 微かに雫が零れ落ち、ベッドのシーツに小さな染みを作る。
「ねえ、トゥルーデ」
 彼女の声で、次に彼女が何を求めているかトゥルーデには分かっていた。

 エーリカ、お前って奴は……。

 トゥルーデは心の中でそう呟くと、エーリカの肩をぎゅっと抱きしめ、とびっきりのキスをプレゼントする。
そっと唇を這わせ、頬をなぞり、首筋にきゅっと吸い口を付ける。エーリカも負けじとトゥルーデに同じ事をする。
 やがて、目覚まし時計の存在に気付くまで……アラームはエーリカが止めたので鳴らなかった……、
二人はお互いの肌を肌で感じ、気持ちを確かめる。それを何度も繰り返す。
頭の中が、心が覚醒する。酔いしれる。お互いの感触、ココロを。

「で、結局」
 もそもそとトゥルーデは寝坊した言い訳を考えながら、エーリカに問うた。
「何が?」
「お前の言っていた『魔法少女』の意味だ」
「深く考えないの」
「何だかな。とりあえず、寝坊した理由を……」
「それは私から言うよ」
「余計ややこしくなるだろう」
「じゃあこれ、はい」
 エーリカは絆創膏をおもむろに取り出し、トゥルーデの首筋にぺたっと貼った。
「少しでも隠す努力はしておかないとね」
 はにかんで笑うエーリカを見て、かあっと頬が熱くなる。エーリカの手から一枚取ると、彼女の首筋にも一枚貼る。
「ありがとうトゥルーデ。行こう?」
「ああ」
 身体の“同じ位置”に絆創膏を貼り付けた二人は、足取りも軽く、食堂目指して走り出す。
 いつもと、変わらぬ風景。変わらぬ「魔法少女」ふたりの姿。

end

127 名前:名無しさん:2011/06/22(水) 23:13:46 ID:e55HorT2
以上です。
思い付きで書いたので、ただいちゃついてるだけと言う……。

ではまた〜。

128 名前:アキゴジ:2011/06/23(木) 22:04:44 ID:ERoWoP4s
>125 mxTTnzhm様
ありがとうございます。それとエーゲル最高でしたw
本当は坂本少佐でいってみようかなって思ってたんですが、むしろシスコン気味のバルクホルン大尉にやってもらった方が面白そうだなと思ったんで書いてみましたw
ちなみにPS2のゲーム「ストライクウィッチーズ あなたとできること A Little Peaceful Days」をプレイしたせいで芳佳ちゃん×全員にはまってしまいましたw

では以前の続きを書きます。

129 名前:私は妹さんの代わり 3:2011/06/23(木) 22:55:07 ID:ERoWoP4s
チュル・・・ネチョ・・・クチュ・・・
芳佳「ん・・・ん・・・・・・んん・・・」
 あまりにも長く息苦しいキスを続くせいで私は思わず涙がこぼれる。そして「早く離して」と思いながら弱々しい声を漏らす。
バルクホルン「・・・」
チュパッ
芳佳「ッハア!!ハァ・・・!ハァ・・・!ウッ・・・エフッ!エフッ!」
 ようやく唇が離され、その解放感と同時に私は呼吸を整えようとするが、勢い余って思わずむせてしまった。そしてだらしなく口から唾液が滴り、目から涙がこぼれ落ちる。
芳佳「・・・ハァ・・・ハァ・・・バルク、ホルン、さん・・・何で、何でこんな事を・・・」
バルクホルン「・・・知りたいか?」
芳佳「ハァ・・・ハァ・・・!」
 私は息継ぎをしながらコクリとうなずく。とても息苦しくて、声を出す暇が無い。
バルクホルン「・・・まぁ良いだろう、これからもお前にはこうやってもらうのだから、教えてやるとしよう」
芳佳「ハァ・・・ッハァ・・・」
バルクホルン「お前には私の妹の代わりをやってもらう」
芳佳「・・・!?それって、どういう・・・」
バルクホルン「言葉通りだ、その意味は言わずともわかるだろう」
芳佳「・・・バルクホルンさん、まさか妹さんにこんな事を・・・」
バルクホルン「いや、私はクリスにそんな事をしてはいない」
芳佳「じゃあ・・・何で私にはこんな事をするんですか!?」
バルクホルン「・・・お前はクリスじゃないからだ」
芳佳「え・・・?」
バルクホルン「お前は確かにクリスに似ている、でもお前は宮藤芳佳という別人だ だからクリスの代わりと同時に私の慰めになってもらおうと思ったのだ」
芳佳「・・・そんな・・・そんな・・・」
 その言葉に、私は涙が更に溢れだした。憧れている人にこんな事をされると思うと、ショックのあまり泣きださずにはいられない。
バルクホルン「泣くな宮藤、私はとても嬉しいんだ お前がいるだけで私はクリスと一緒にいられる心地がするんだ・・・」
 そう言いながら、バルクホルンさんは私を抱きしめる。
芳佳「・・・離してください」
バルクホルン「・・・悪いが、お前の頼みは聞けない 私が満足するまでは絶対に離さないぞ」
芳佳「・・・お願いです、バルクホルンさん・・・離してください・・・」
 私は耐えきれなくなり、涙をこぼしながらバルクホルンさんに離してくださいと要求する。しかし、私の必死な要求をバルクホルンさんは一方的に拒否する。
バルクホルン「仕方が無いな・・・」
スッ・・・
芳佳「・・・!?何をするんですか・・・?」
 バルクホルンさんは急に私の服に手を入れだしてきた。私は思わず身体が震えだす。
バルクホルン「簡単な事だ、受け入れてくれないのなら・・・無理矢理受け入れさせてやるまでだ」
芳佳「いや・・・やめて・・・やめてくださいバルクホルンさん、お願いします・・・もうやめ」
プニュ、クリクリ
芳佳「あっ・・・あうぅ・・・」
 私の服に入ってきたバルクホルンさんの手は服の上から私の乳首をつまみ、指でゆっくりとかき回す。
芳佳「ダメ・・・やだ・・・やめ、やめて、もういやです、もう・・・あっ」
バルクホルン「宮藤・・・もう誰にも渡さない、お前は私のモノだ」
芳佳「いや・・・やめて・・・・・・いやだ〜・・・」
 私は情けないほどに泣きながら弱々しい悲鳴を上げる。しかし、誰にも聞こえない。バルクホルンさんに身体を弄ばれながら私の時間は過ぎていった・・・。

130 名前:アキゴジ:2011/06/23(木) 23:02:04 ID:ERoWoP4s
とりあずここまでです。まだまだ続くかもしれません。
それでは失礼します。

131 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:09:57 ID:nI2wGBNM
>>129 アキゴジ様
久しぶりの18禁小説ですね(^◇^)
やはりトゥルーデはSじゃなくっちゃ!そして泣く宮藤…たまりませんなあ!

さて、「妹」つながりでこんな作品を書いたんで投稿したいと思います。
とあるテレビ番組で、「ビスクドール」なるフランスの人形を見まして…ふとペリーヌがこのコスプレが似合うじゃないか?!と思いつきのまま書きました!
…思いついたまま書いてしまっただけに、後半はめっちゃgdgdですが;;

ぜひ読んでみてください!

132 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:10:31 ID:nI2wGBNM
【ツンツンメガネとビスクドール】


ネウロイの襲撃も無さそうな、夏のとても暑いある日。

「トゥルーデ!」
「なんだ?」

自室にてトレーニングをしていた、バルクホルン。

「クリスからの手紙だよ!」
「本当か?!」

と、ハルトマンが手に持っていた手紙を半ば強引に奪い取るバルクホルンであった。

「おぉクリス…クリス…クリス!!…おっと、ヨダレが…」
「うわあ…気持ち悪いよ、トゥルーデ」
「えぇい!構わん!クリスのためだったらキャラ崩壊しても良いくらいだ!戦闘の時だけちゃんとしてれば良いんだ!」
「…早く読みなよ」
「おお、そうだな」

手紙の封を開けると、そこには可愛らしい便箋が入っており、姉へのメッセージが書かれていた。

「ほうほう…」
「ねね、なんて書いてあるの?!」
「お前には見せてやらん!!!!」
「…そうですか」
「嘘だ嘘だ、そんなに引かないでくれハルトマン;;」

そして、その手紙をハルトマンに渡す。
渡された本人は笑顔でその手紙を読み…、

「ねえねえ」
「なんだ?」
「クリスが何かを欲しがるって珍しいねえ」
「え?!そんなこと書いてあったか?!」
「…何読んでるのさ;;」
「いや…このクリスの書いた文字、その文体から滲み出ている、姉を欲する思いがもう…」
「………」
「だーかーらー!引かないでくれ!」
「意外とクリスも年頃の女の子だねえ」
「へ?なんでだ?」
「ほら、お人形さんが欲しいって」
「そうかそうか…じゃあ五徳堂の陸軍軍人の人形をヤフオクで、」
「年頃の女の子がそんなのを欲しがる?フツー…」
「ふむ…じゃあ、じゃあ何なんだ!!全く!」
「え、逆ギレ?!」

今までタンクトップ姿であったが、急に上に羽織るバルクホルン。

「ちゃんと読みなよ、えと…ビスクドールが欲しいんだって」
「はて…?」
「どしたの?」
「いや…クリスって、今まで人形で遊んでる姿は見たことなかったなって…な」
「気が変わったんじゃないのー?」
「あり得ない、クリスはクリスだ」
「…使い方間違えてるよ?;;」
「じゃあ何故…」
「まあ良いよ、今度ローマへ行ったら見に行こうよ」
「そうだな」


***

133 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:11:03 ID:nI2wGBNM
>>132の続き。


そして次の休暇。
エーリカとバルクホルン、そして何故かペリーヌもだが買い出しに同行していた。

助手席に座るバルクホルンは後ろの席に座っているペリーヌに話し掛ける

「悪いなペリーヌ」
「いいえ、正直ハルトマン中尉と2人で買い出しだなんて不安で不安で」
「ちょっとー、何それぇー」
「でもどうして買い出しにバルクホルン大尉も?」
「いや…ちょっとな」
「トゥルーデ、妹への贈り物を買いに行くんだってー」
「エーリカ!」
「そっ、そうなんですの?!」
「ゴホン…まあ…な」
「素敵じゃありませんか」
「そ…そうか?」
「えぇ!妹さんのためにだなんて…!」
「なっ、なら貴様も私の『いもうと』にしてやろう!」
「それは結構ですわ」
「………」
「………」

そして車が1時間走ったかという頃、

「…トゥルーデ?」
「ん?どうした?」
「どうしたのさ?」

バルクホルンはずっと、窓枠に肘を置き景色を見ていた

「いや…クリスのことをだな」
「…パンツをくんかくんかしたいとか?」
「そうだな…あの、数日間熟成させた匂いが…って、おぉい!」
「けけけーっ」
「それにペリーヌ!お前はドン引きするな!!!!」
「だって今の…結構本気のリアクションじゃあ…?」
「で、何を考えてたのさ?」
「…クリスの将来のことだ」
「将来?」
「あぁ」
「…と言いますと?」

後部座席のペリーヌが体を乗り出し、バルクホルンに質問をする。

「結婚…するのかなあってな」
「ねえ、トゥルーデ」

すると、ハルトマンはいきなりハンドルを握りながら真剣な顔をし…

「もし…したらどうするの?」
「一緒に住む」
「えぇぇぇっ??!!」
「トゥルーデ…実の姉が妹夫婦と同居するだなんて初めて聞くよ;;」
「え、おかしいか?」
「おかしいも何も…;;;」
「じゃっ、じゃあもし!もし、妹さんご夫婦がその…」
「あぁー…」
「なんだ?ペリーヌ。何をそんなに恥ずかしがってるんだ?」

ペリーヌは顔を赤くし、モジモジしながら、

「その…子作り…するときは」
「別に構わないぞ、むしろ作って欲しいぐらいだ。そうだなあ…2人は欲しいな、1人は男で1人は女だな」
「なんかトゥルーデ…子供の名前も決めそう」
「何言ってんだ!…もちろんだろう!私とクリスで名前を決める!」
「旦那さんは無視なのね;;;」
「もっと言えば子どもの保護者会や運動会にも参加してそうですわ…;;」
「何言ってんるんだ、私は保護者だぞ」
「あくまでも義理のね;;」

134 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:11:35 ID:nI2wGBNM
>>133の続き。

しかし、ペリーヌはちょっとマズそうな顔で…、

「でも大尉…それに、自分の愛する妹さんがどこの馬の骨がわからない男に、体を捧げる訳ですわよ?」
「…何言ってるんだペリーヌ、私にとってセックスは『スポーツ』だ!」
「おぉ、言うねえトゥルーデ」
「私とクリスは深い絆で結ばれてるのさ(ドヤ」
「深い絆…と言うか、血の繋がった姉妹でしょ;;」
「ふう…これはあくまでも私の推測ですわ」
「なんだ、言ってみろ」
「たぶん妹さんご夫婦は大尉を気遣って、夫婦2人でロマーニャへ旅行と偽り『子作り旅行』をするんですわ」
「…続けろ、ペリーヌ」
「もう妹さんは、大尉に見せたことのないような顔を旦那さんの前でするんですわ」
「…問題ない」
「ロマーニャのリゾートホテルにて一戦交えて、シャワー浴びて、一戦交えて、シャワー浴びて、シャワー、一戦、シャワー、一戦、一戦、シャワー、一戦…」

何故か脂汗を流すバルクホルンは、ずっと握り拳をしたままである…。

「そしてヘトヘトになって帰ってくるんですわ」
「…そっ、それで子供が出来たんなら万々歳だ」
「ヘトヘトになって、『お姉ちゃん、疲れたー』って言って行く前既に作り置きしてたアイスバインを大尉の夕食に出すんですわ」

すると急に、

「たっ…大尉っ…!!くるし…っ!!!!」
「っ!!!!」
「ちょ…トゥルーデ落ち着きなって!」

体を乗り出していたペリーヌの首を絞めるバルクホルン
すぐさま車を路肩に停め、

「殺す!旦那を殺す!アイスバインを出す前に殺す!!!!」
「落ち着きなってトゥルーデ!あくまでもこれはペリーヌのフィクション!…ね?」
「そ…そうか!」
「ゲホッゲホッ…た、大尉…」
「済まないペリーヌ、つい…」
「『つい』のレベルですの?!今のは!!??」


***

135 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:12:32 ID:nI2wGBNM
>>134の続き。


「…ねえトゥルーデ」
「何だ?」
「これってさ…」
「ん?」
「通貨の単位はマルクだよな?」
「…同感だ」

ハルトマンとバルクホルンは用事を済まし、余った時間でおもちゃ屋に来ていた。

「…やっぱり現実見よう、トゥルーデ。ここはロマーニャ、リラだよ!!」
「しまったなあ…今月は使える金がないんだ」
「クリスの入院費の他に何か支払ったの?」
「新たなトレーニングマシンをな」
「………」
「そっ、そういうエーリカこそ金はないのか!?」
「エーリカちゃんは全てお給料をお菓子代に使ってまーす」
「クソッ…」
「お待たせしましたわっ!」

2人が悩んでいる間に、ペリーヌもおもちゃ屋にて合流する。

「どうしたんですの?」
「あ、ペリーヌ。お前は今いくら持っている?」
「え…!?カツアゲ!?」
「違うっ!あ…あれが欲しいんだ…」

指を差したのはいかにも高価そうな陶器で出来た人形のビスクドール

「懐かしいですわあ…」
「え、ペリーヌ持ってたの?!」
「ええ。昔ですが、よくお人形さん遊びしてましたわ」
「意外ーっ」
「失礼な、私にだって『乙女心』はありますのよ!?」
「今でもペリーヌの家が残ってればなあ…」
「…ごめんなさい大尉、貸してあげたいのは山々ですがお給料のほとんどをガリア復興費に使っているもので…」
「そう…か。そうか、わかった。悪かったな、ペリーヌ」
「す…すいません…」
「エーリカ、私はちょっと疲れた。お菓子を買って来ても良いぞ、私はちょっと車の中で休んでる」
「え、トゥルーデ…?」

そして、明らか様に肩を落として店から出て行くバルクホルン。
残された2人は…

「なんか…」
「ん?」
「なんか、可哀そうですわね」
「まああんなに高い物だとは私もわからなかったよ」
「今回は残念ですが…また来月、お給料が入ったら買いに」
「…っ!!」

何かを思い出したかのように、豆電球が頭の上に浮かんだハルトマン
停めている車まで戻り、シートを倒して横になっている相棒に…

「ねえトゥルーデ!」
「…おっ、なんだ?」
「可愛ければOKなんだよね?!」
「???」
「だーかーらー!クリスへの贈り物」
「可愛ければ…ってワケじゃないな、あの人形がやっぱり…」
「ちょっと待ってて!1時間くらい」
「…そうか。待ってる、終わったら起してくれ」
「了解!」


















「あ…あのぅ、中尉」
「んー?」

ハルトマンとペリーヌが居たのは…

「何故私たちはここに…?」
「見ればわかんじゃん」
「いや、わかりますわ。けど…いまだに状況整理出来ませんわ」
「おっ…おやっさん、一枚お願いしまーす」

2人が居たのは街中の写真館。

136 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:13:20 ID:nI2wGBNM
>>135の続き。


そしてペリーヌは、

「あ、あのぅ…」
「おっ!大丈夫、似合ってるよー!これぞ、ビスクドール3D!」
「3Dどころか、実際に着てます;;」

フリフリな水色のドレスに、白い靴下。
そして黒い靴に、小花の束とリボンが付いた帽子を被ってカメラの前に座っている。

「でも…ホンット、絵になるねえ」
「………」
「ほら、そんなムスッとしない!クリスに送るんだから!」
「でっ、でも…妹さんは本物が欲しいと思ってるんですよ?」
「うん」
「そんな…私なんかの写真を送っても…虚しくなるだけですわ」
「なんか誤解してない?ペリーヌ」
「はい?」
「確かに今月は買えないけど…今月はこの写真で我慢してもらうんだ」
「中尉…」
「あ、トゥルーデには内緒だよ!」
「…嫌です!」
「へ…??」
「その時は…私も、ぜひ少しですがお出ししますわ」
「…ありがとう、ペリーヌ」
「いいえ、これは貴族として当然の行為…ノーブレスオブリージュですわ」
「あ!」

何かを思い出したかのように、ビスクドールもといペリーヌに近づくハルトマン

「ふふふー♪」
「なっ…何ですの?!」
「えい!」
「きゃっ!」

近づいたと思えば、眼鏡を強引に取ったのであった

「みっ、見えないですわ!」
「眼鏡を取った方がよりお人形さんっぽく見えるよー!あ、おやっさん一枚お願いします♪」


***

137 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/03(日) 00:13:47 ID:nI2wGBNM
>>136の続き。


数日後...


「エーリカ!」
「ん?」

基地内にてバルクホルンの怒鳴り声が廊下じゅうに響く

「おっ、お前クリスに何か送ったのか??」
「え、うーん…どうしよっかなあ」
「はあ?私が言ってる意味通じてるか?」
「ごめん、冗談。送ったよ」
「何をだ?」
「ペリーヌの写真」
「…だからか」

その場でしゃがみ込み、

「クリスが…ペリーヌに会いたがってる」
「へ、そうなの?!」
「なあ…一体、何をしたんだ?お前らは」
「…さあね」
「『さあね』ってお前!!」
「ペリーヌは会わせても大丈夫っしょ、少なくともエイラよりは」
「…まっ、まあそうだが」
「じゃあ良いじゃん」
「ぐぬぬっ…あ、あとお前に伝言だ」
「ん?」
「『本物』の方はいらないって書いてあったんだが」
「…そっか」
「でも珍しいな、物が欲しいって突然言い出したら今度はペリーヌに会いたいだなんて」
「まっ、気が変わったんじゃない?聞いた話によるとクリスって相当な『ウィッチおたく』なんでしょ?」
「ああ…最近はマルセイユにハマってて困る…」

いつの間にか傍の椅子に座り、

「と言うか思い出した、何故あの人形を欲しがったのか」
「なんでなんで?」
「戦いが始まる前…私が軍に入る前にだ、父から誕生日祝いに人形を貰ったんだ」
「ふんふん」
「で、いつかあげてやるって言って…先の大戦で、その人形を失くしてしまったんだがな」
「…あのさ」
「どうした?」
「つまり、人形をダシに甘えたかったんじゃないかな?」
「はぁ?」
「人形が欲しいって言えば、ブリタニアの病院に来てくれるかも!って思ったのかもよ」
「…?」
「だぁかぁらぁ!クリスは…トゥルーデに会いたがってるんだってこと!」
「…はっ!!??」
「もう…鈍感なんだからトゥルーデは、危うく伯爵にお見舞い行くよう頼む寸前だったよ」
「アイツを呼ぶな、絶対!…そもそも私のしたことがっ!!!!」
「行っといで」
「ブリタニアにか…?」
「うん、お土産のペリーヌと一緒に」
「お土産って…お前なあ;;」
「ミーナには私が言っとく」
「た、頼む」
「うん」

焦った表情で部屋から出て行くバルクホルン。

「はぁ…マジ天使なエーリカちゃんは、今日も天使のお仕事をしましたよーだ」

とベッドの上で寝っころがる。

「…たまにはウルスラにも手紙を書くかな」

急に起き上がり、そのまま机へと向かった。

そしてその後、バルクホルンとペリーヌは2日間休暇を取ってブリタニアへ向かったのであった…。

【おわり】

138 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/03(日) 23:46:14 ID:DbxettRQ
>>130 アキゴジ様
GJです。R18な内容にぐっときますね。

>>137 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJ! エーリカマジ天使というか気配りガールですね…。お姉ちゃん…w


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
久々に、食事の最中思い付いた事をネタに書いてみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

139 名前:getting muddy 01/03:2011/07/03(日) 23:47:33 ID:DbxettRQ
 朝食を前に、自室前の廊下の壁にもたれ、横の窓から外を見るウィッチが一人。
 おさげの髪が、窓から入り込むそよ風にゆらりゆらりと揺られ、毛先が乱される。
 外は雨上がりの清々しい晴れ……しかし彼女の顔は曇ったまま。
 偶然通り掛かったシャーリーは、その陰鬱な雰囲気を背負ったままのカールスラントの大尉を見つけ、よっ、と声を掛けてみた。
「どうした堅物。何か外に面白いモンでも有るのか?」
「……」
 無言でちらりとシャーリーを見、またぷいと外を見るトゥルーデ。
「何だ、瞑想でもしてるのか? まあとりあえず朝飯位食えよ」
 シャーリーはこれ以上は付き合いきれないとばかりに、早々に見切りを付け手を振りその場を離れようとした。
「お前は」
「ん?」
 思わず立ち止まるシャーリーに、同僚の大尉は重い口調で問い掛けた。
「泥をすすった事は有るか?」
「はあ? 泥? 何言ってんだバルクホルン」
「私は……」
 輝きが失せ、澱んだ目で言いかけたトゥルーデ。
 どん、と背中を叩かれ、うっ、と呻く。
 衝撃を与えたのはエーリカ。
「まーた、何一人で暗くなってるの。シャーリー困ってるじゃん」
 慣れた手つきでぐい、と首根っこを掴む。
「いや、あたしは別に構わないよ。割といつもの事だしさ」
 軽く笑って済ますシャーリー。エーリカも日常茶飯事とばかりにぐいぐいとトゥルーデを掴む。
「ま、そうだけど悪いし〜」
「こら、ハルトマ……」
 エーリカに何か言いかけたトゥルーデは、エーリカにぐいと手を引かれた。軽く触れ合う唇。
「と言う訳で、悪いねシャーリー」
 不機嫌そうな大尉を無理矢理黙らせたエーリカは、笑顔を作ってにやけてみせる。
 二人の様子を見せつけられたシャーリーは、やれやれと苦笑すると、今度こそ手を振って別れ、食堂に向かった。

「今朝は親子丼ですよー。しっかり食べて元気つけて下さいね」
 芳佳が腕を振るって、朝から丼物を作る。真っ先に席についたシャーリーに、熱々の丼をひとつ渡した。
 その食べ物を見たシャーリーは仰天した。
「お、おい、これ!」
 芳佳はええ、と頷くと得意げに説明した。
「親子丼ですよ。今日は朝から訓練って聞いたので、皆さんに元気つけて貰いたくて、リーネちゃんと二人で頑張りました!」
「い、いや、その気持ちは嬉しいんだけどさ」
 シャーリーは困惑しながら丼の中身を指差して言葉を続けた。
「卵に火通ってないぞ? これ半生じゃないのか? 食えるのか?」
「あれ、シャーリーさん、半熟はお嫌いですか?」
「いや……そもそも生の卵って食えないだろ」
「扶桑じゃ生卵食べますけど」
「いやいや、ここのは大丈夫なのか? てか生の白身、感触がなんかドロっとしてハナミ……」
「シャーリー、食べる気無くす様な事いわないでー」
 焦るリベリアンの隣に座ったロマーニャ娘がぶーたれる。
「ああゴメンなルッキーニ」
「じゃあ、火の通ってる卵のものに換えますね。はいどうぞ」
 芳佳は丼をひとつ取り替えてシャーリーに渡すと、自分の席に「半熟」の丼を置いた。
「悪いね」
「宮藤、食事当番であるからには、皆の好みや食の習慣もきちんと把握しないといけないぞ。余り無理強いは良くない」
 ミーナと揃って座る美緒が、芳佳に諭してみせる。
「すいません、気を付けます坂本さん。あ、坂本さんは半熟でも……」
「いや、私も火を通した方が」
「はあ」
「宮藤さん、私は何でもいいわよ」
「え、いや、ちゃんと火を通しますから」
 笑うミーナに、少し戸惑う芳佳。
 結局、改めてしっかりと卵に火を通し、皆に振る舞う事となった。

「うん。まあ、ソイソースの甘辛い感じは良いね」
 シャーリーはもぐもぐと食べながら感想を言った。
「卵、次は気を付けますから」
「うん、まあ宜しくな」
「シャーリー、おにくちょーだい!」
 言うなりぱくりとシャーリーの丼から鶏肉をかっさらうルッキーニ。
「おい、あたしの肉」
「あたーしぃ、もっとたーくさん食べてぇ、シャーリーみたいなナイスなバディになるの。で、このタマネギ要らないからあげるね」
「そっか。ならもっと食べないとな。でも好き嫌いはダメだぞー」
 シャーリーは笑いつつ、ルッキーニと丼の具を分け合う。

140 名前:getting muddy 02/03:2011/07/03(日) 23:48:03 ID:DbxettRQ
 隊員達があらかた食事を終え席を立った頃、遅れてトゥルーデとエーリカがやって来た。
 お二人が遅いって珍しいですね、何か用事でも? と芳佳は聞いたが特に返事らしい返事はなく、首を傾げつつ二人に丼を渡す。
「扶桑の食べ物だね」
「親子丼です」
「ふーん、面白そうだね。ありがとミヤフジ。さ、食べようトゥルーデ」
「ああ」
 二人並んで座り、親子丼を口に運ぶ。
「扶桑の味だね。ちょっと甘めのソースっぽい」
 エーリカはそう言うと、美味しいんじゃない? と芳佳に笑ってみせた。良かった、と喜ぶ扶桑の娘。
 トゥルーデは無言、無表情のまま、淡々と食事を口に運ぶ。
「どう、トゥルーデ?」
「ああ」
「また、さっきの話?」
「いや……」
「どうしたんですかバルクホルンさん? なんか顔色良くないですけど……別の食事……お雑炊とか作ります?」
「あー、大丈夫だよミヤフジ。ちょっとネガティブ入ってるだけだから」
「は、はあ」
 何の事かいまいち分からない芳佳は、無理矢理作り笑いをして見せた。
「宮藤は、泥を……」
「トゥルーデ、もうやめなって」
「え、泥、ですか? 泥がどうしたんです?」
「気にしないで」
「宮藤、お前は泥をすすった事は有るか」
「それは『食べた』って事ですか?」
 いきなりの問い掛けに、芳佳は戸惑ったが、一秒きっかりで、きっぱりと答えた。
「それは無いです」
「だよね」
 苦笑するエーリカ。
「バルクホルンさんは、有るんですか?」
 逆に聞かれたトゥルーデは、何かを言いかけたが、
「口の周り汚れてるよー」
 とエーリカに無理矢理ハンカチで口の周りをこしょこしょとくすぐられ、思わずふふっと笑ってしまう。
「扶桑では、とある地方で昔、大飢饉の時に泥の団子を作って食べたって噂話が有ります……あまり良い話ではないですけど」
 芳佳はそう説明すると、少し悲しそうな顔をした。
「そもそも泥って、食べ物じゃないですよね。食べたらお腹壊しますし」
 冷静に言う芳佳に相槌をうつエーリカ。
「だよね。流石、医者の娘ミヤフジ」
「いえいえ」
「……だが」
 それでも何か言いかけたトゥルーデ。
 エーリカはちょっとゴメン、と芳佳に目くばせすると、おもむろにトゥルーデを抱きしめ、頬に唇を這わせた。
「ちょっ、ちょっと、止め……」
「止めて欲しいなら、トゥルーデももう止める?」
「わかっ……分かったから……」
「じゃあ約束ね」
 エーリカはそっとトゥルーデから離れると、にこっと笑う。
 根負けしたのか、暗い表情だったトゥルーデも、苦笑した。少し表情が和らぐ。改めて芳佳に向き直り、口を開く。
「すまなかったな、宮藤。変な事を聞いて」
「いえ、良いんです。なんか私も変な事言ってしまったみたいで」
「気にしないでミヤフジ。あ、リーネが呼んでるよ」
「あ、はい! どうしたのリーネちゃん?」
 芳佳はリーネが居る厨房へと、とたとたと早足で戻った。

141 名前:getting muddy 03/03:2011/07/04(月) 00:17:57 ID:QAlfqNmM
mxTTnzhmです。

この続きはしたらばのNGワードに引っ掛かってしまったので……
(どの箇所が掛かったのか謎ですが)
http://www1.axfc.net/uploader/Sc/so/251538
こちらに最後の部分をうpしましたので、宜しければどうぞ。
パスワードは「sw」です。


とりあえず以上です。
朝から親子丼もどうかと思いましたが、
芳佳ならやりかねないかなーとか思ったり。
お姉ちゃんはたまに思い出し鬱気味になるのかなーとか
勝手に妄想したり。

ではまた〜。

142 名前:名無しさん:2011/07/04(月) 01:27:46 ID:MekLqfDM
>>141
いつも乙です。
調べてみたところ、引っかかったのは「たたみ○○○○に、エーリカは」のところの○○○○の部分でした。
”様”を平仮名にする等の対処をすれば書き込めると思います。

143 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/04(月) 19:34:43 ID:mzs5XCEA
>>142
わざわざ調べて頂き誠に有り難う御座いました。
まさかそんなNGワードが有ったとは……。

今後は色々と気を付けたいと思います。

144 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/05(火) 21:38:44 ID:Zdewv2ro
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
とあるPVを見ていて、思い付いた事をヒントに書いてみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

145 名前:ignition:2011/07/05(火) 21:42:18 ID:Zdewv2ro
 ねえトゥルーデ、知ってる? 私、魔法少女なんだよ?
 ……前にもそんな話聞いたって? またまた〜。
 とりあえず聞いてよ。暇なんでしょ、トゥルーデ?

 いちいち小言とか理由言わないと私の側に座らないとことか、いつもと一緒だね。
 ま、良いけど。もっと側に来てよ。……うん、イイ感じ。
 え? 勿体ぶらずに話せって? 慌てないで。ちょっと良いムードになったら話してあげる。
 分かるよね、トゥルーデ?

 顔真っ赤だよトゥルーデ。そういうとこ好きだよ。ふふ。
 じゃあ話すね。私、魔法少女なんだ。
 ……繰り返すなって? そう言えばこの前この事、ちょっと話し掛けて途中のままだったっけ。
 ふーん。トゥルーデ、無関心みたいで意外としっかり覚えてるんだよね。
 そういうとこ嫌いじゃないけど。にしし。

 私にはね、固有魔法の他にもうひとつ、魔法を持ってるんだ。
 知ってた?
 知らない? まあそうだよね。だって話すの初めてだもん。トゥルーデが一番最初。
 どんな魔法かって? まあ慌てないで。

 そうだね。
 何て説明したら良いのかな。

 例えば、エイラとサーにゃんがケンカしてたとするじゃん?
 そこには、決まって、ある色のカケラが転がってるんだよ。紅に近いかな。
 ネウロイのコアじゃないってば。そんな物騒なものじゃないし私より先に少佐に見つかっちゃうよ。
 で、私が、そっと忍び寄って、カケラを見つけて、持ち去る。
 そうするとエイラとサーにゃんは「ゴメンネ」抱き合って仲直り。って訳。

 例えば、ペリーヌとリーネがお茶の淹れ方、選び方でもめたりしてるよね?
 テーブルの隅、見てごらん。同じ色のカケラが有るから。
 私がさりげなくテーブルからそのカケラを取ると、ペリーヌのツンツン口調が収まってリーネも微笑む。

 例えば、ミーナと少佐が些細な事で口を利かなくなったとか、あるよね?
 部屋でひとり黄昏れてるミーナの横には、今にも割れそうなカケラが有ってね。
 私がそっと持ち去ると、少佐が入ってきて、……あとは分かるよね?
 ミーナだし。少佐はあんな感じだし。

 どう? こう言うの。私のもうひとつのチカラ。
 え、仲直りさせるだけかって? 分かってないなあ、トゥルーデ。
 私が魔法少女だから、出来るんだよ? せくしーぎゃるだし、私。
 どうしたのトゥルーデ? そのカケラはどうやって処理するのかって?
 溜め込んで、私がどうにかなるんじゃないかって?

 心配性だね、トゥルーデ。分かってるよ、トゥルーデ。
 そうやっていつも私の事気にしてくれるの、嬉しい。

 カケラはね、ぎゅーっとまとめてひとつにして、私がゴクリって呑み込む。
 そうすれば綺麗になくなるよ。ちょっと胃がボンッてなって舌がひりっとするけど、結構美味しいんだ。ハッカみたいで。

 大丈夫、慌てないでトゥルーデ、本当に心配性だね。私は大丈夫だって。
 どうしてそんな事言えるのかって? 「負の感情」を食べて平気な訳有るか、って?

 トゥルーデ、気付いてない?
 今の話、ぜんぶ嘘。
 もとはね、絵本で見た妖精の話なんだ。何でも……

 ちょ、ちょっとトゥルーデ。どうしたの急に怒って……

 うん。ゴメンね、心配させて。
 でもそうやって、いつも怒ってもすぐ抱きしめて、私の身を案じてくれる。嬉しいよ。
 やっぱり、トゥルーデは笑顔の方が良いよね。私も嬉しくなる。そう。笑って。
 トゥルーデの身体、温かい。たまに熱く熱く火照って、私も着火しそうだよ。


 そうだ、この話、皆にもしてみる?
 どんな顔するか、見てみたいと思わない?
 あ、トゥルーデは嘘が付けないからタチだから、難しいかな?
 でも、やってみる? 一緒に。

end

146 名前:名無しさん:2011/07/05(火) 21:48:56 ID:Zdewv2ro
以上です。
エーリカの独白という形でやってみましたが、
難しいですね、さすが天使。

とあるPVとは、世界的歌姫Avril Lavigne嬢のものです。
描写とかそのまんまですが(汗) 興味のある方はぜひ。
彼女の公式サイトから見られます。

と言うか、こんなステキな「固有魔法」(戦闘関連じゃなく)
持ったウィッチが居ても良いだろうなとか思ったり。

ではまた〜。

147 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/06(水) 23:56:23 ID:wrNOYF9I
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
とある場所で思い付いた事をヒントに書いてみました。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

148 名前:reflection beat 01/02:2011/07/06(水) 23:56:56 ID:wrNOYF9I
 しとしとと雨の降る日。
 訓練や任務を終え、特にやる事もなくなった隊員達は、暇を持て余し、何の気なしにミーティングルームに集う。
 間も無くたわいもないお喋りなど始まるのが常だが……、ふと見渡すと、数名居ない。
「ハルトマンは何処へ?」
 辺りを探し、思わず口にしたトゥルーデに、シャーリーが暇そうにトランプのカードをめくりながら答える。
「あー。さっきサーニャと一緒にどっか行ったぞ。トイレじゃね?」
「にしては遅いな」
「サーニャが帰って来ない。サーニャが……」
 トランプのカードを片手に、落ち着きが無いスオムスのエース。
「お前を見ているとこっちまで不安になるぞエイラ。もっとしゃんと出来ないのか」
「そう言う大尉だっテ、何かせわしないじゃないカ」
「そんな事……」
「待っタ」
 エイラがトゥルーデの口を押さえる。何か聞こえたのか、エイラは何も言わずにそーっと部屋から出て行こうとする。
「待てエイラ、何処へ行く」
 トゥルーデもついていく。

 みっつ隣の部屋。扉が開いている。そこは空き部屋だったが、雨漏りがするらしく、床が所々濡れている。
 そこに、何処から集めて来たのか、コップやらバケツやらを沢山並べて天井から垂れてくる雨粒を受けとめている。
 エイラが「嗅ぎ付けた」通り、サーニャとエーリカはそこに居た。
「あ、エイラ」
 サーニャは笑った。
「サーニャ、今歌ってなかったカ?」
「さすがエイラだね。サーにゃんの歌なら遠くからでも聞こえるって?」
 苦笑するエーリカ。
「ハルトマン、お前達何をしていたんだ」
 トゥルーデの問いに、ふふんと得意げなエーリカ。
「サーにゃんとね、雨漏り対策ついでの暇潰し。聞いてみて」
 しーっと人差し指を立てて皆を沈黙させる。

 ……ぽと。ぽた。ぽちゃん。ぴちゃん。ぱちゃっ。ぽと。ぽた。ぱたっ……

 雨粒の音。大きさもかたちもばらばらの器に受けとめられ、それぞれ違った音を出す。
 それがでたらめの様で、一定のリズムを刻んでいる。

 サーニャがそこに、即興のハミングでメロディをつける。

 別の場所に雨粒が垂れてくる。エーリカは厨房から持ちだしたであろう茶碗をひとつ、受け皿として床に置く。

 偶然か必然か。
 ゆったりと、しかしはっきりとしたビートを刻む。

 それは人の心臓の鼓動に近い柔らかなリズムで……サーニャの魅惑的なハミングとも相まって、不思議な「コンサート」となる。

149 名前:reflection beat 02/02:2011/07/06(水) 23:57:23 ID:wrNOYF9I
(なるほど。サーニャはそう言えば音楽が得意、だったな)
 部屋の壁にもたれ、一人無言で頷くトゥルーデ。エーリカはするりと横に来ると、にしし、と笑ってみせた。
 ……またお前って奴は。
 カールスラントの大尉は声に出さずエーリカに目でそう言うと、エーリカは「気にしない」とばかりにそっと腕を絡めてくる。
 エイラはサーニャの横で、ほんわかとした面持ちで彼女の声に魅了されている。
「こう言うのも、悪くない、か」
 彼女にだけ聞こえる位の囁き声を愛しの人から聞いた金髪の小柄な天使は、こくりと頷いた。

 ふと後ろを見ると……いつの間に聞きつけたのか、部屋のドアの付近には他の隊員達が群がっていた。
 ぎくりとするトゥルーデに、しーっと指を当てるシャーリー。
 あたしも何かやりたいと今にも飛び出しそうなルッキーニを押さえて、よく聞いてご覧、と小声で諭す。
 最初は、ん〜、と複雑な顔をしていたロマーニャ娘も、次第にその声に惹かれ、小さく手拍子をする。
 少しびっくりした様子のサーニャも、雰囲気を察し、構わず即興のハミングを続ける。

「私は雨は好きではないが……エーリカ、今だけは止んで欲しくないな」
「トゥルーデもそう思う?」
 小声で囁き合い、穏やかな表情を浮かべる。

「ねえ、私だけなのもちょっと恥ずかしいから、皆で」
 サーニャは周りを見て、提案した。ルッキーニは早くもバケツの端を木切れでとんかんと叩いて笑っている。
「お、良いねえ。ちょうど天然の楽器があるし」
「私はサーニャと……」
「デュエットする?」
 微笑まれ、かちこちと頷くエイラ。
 自然と始まった手拍子に合わせ……水の音、人の歌声、器の響き……さまざまな“楽器”が集うコンサートが始まる。

「ねえシャーリー。あたしももっと音遊びしたい〜」
 ルッキーニはシャーリーに言う。
「ま、いいじゃないか。そのうち凄い遊びになったりしてな」
「へ、何それ」
「いや、私達にとっては、未来の出来事かも知れないぞ?」
 シャーリーは意味深にそう言うと、笑ってルッキーニの頭を撫でた。

 芳佳達が夕飯を知らせに来るまで、小さな楽団は自らの音を楽しんだ。

end

150 名前:名無しさん:2011/07/06(水) 23:57:56 ID:wrNOYF9I
以上です。

仮に、ゲーセンで音ゲーやったら
サーニャさんは上手いのではと思います。
あとミーナさんも。

ではまた〜。

151 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 07:57:16 ID:WNRSMlUo
>>150
GJです。501の音楽隊、賑やかで楽しそうですね

お久しぶりです。
>>58で言ってたハルトマン姉妹の誕生日SSがようやく完成したのですが、私が無計画なばかりに
4月中どころか6月すら過ぎてしまいました。本当に申し訳ないです(;´д`)
ですが、来年までお蔵入りにするのも何なので投下させて頂きます。

152 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 07:58:10 ID:WNRSMlUo
【ひとりじゃないから】

「なに、これ……」
気がつくと私の目の前には焼け野原が広がっていた。
辺りの木々は燃え盛り、周りには瓦礫の山が散乱している。
そして上空には今までに見たことないくらい巨大なネウロイと、それに交戦するウィッチ達の姿。
巨大ネウロイはウィッチ達の攻撃をもろともせずにビームを撃ち出し、1人また1人とウィッチを地上に墜としていく。
「ウーシュ!」
墜ちていくウィッチの中に自分の半身の姿を見て、私は全身の血の気が引いていくのを感じた。
「そんな……嘘、だよね……?」
私は急いでウーシュのもとへと駆け寄って、その華奢な身体を抱きかかえる。
ウーシュの身体からは止めどなく血が溢れ出し、軍服を真っ赤に染めていく。
「やだよ、こんなの……」
目を開けてよ、ウーシュ……!

――――――――――――

「ウーシュ!」
大声とともに私はがばっと起き上がる。
辺りを見回すと見慣れたガラクタや衣服の山が散乱していた。
「夢か……」
汗で額に張り付いた髪を払いながら、私は呟く。
そうだよね、あんな悪夢みたいな出来事が現実なわけないよね……
あんな悪夢を起こさないために私たちは戦ってるんだから。
「エーリカ、大丈夫か? 随分うなされてたぞ」
「トゥルーデ……」
ジークフリート線の向こうから顔をひょっこり覗かせたトゥルーデが心配そうに訊ねてくる。
「えへへ、私の寝顔を凝視してたの? 照れるなぁ」
ここで今見た夢の話をしても、トゥルーデをかえって心配させるだけだよね。
私は笑いながら話をはぐらかした。
「な!? そ、そそそんなわけあるか! と、とにかく、起きたならさっさと着替えて朝食を食べにいくぞ」
「……うん」
私は軍服に袖を通しながら、部屋のカレンダーに目をやる。
今日は4月19日――私とウーシュの生まれた日。
全く、そんな日に限って私は何て夢見てんだろうね。
「エーリカ」
「何? トゥルーデ」
「その……本当に大丈夫か?」
トゥルーデが背中越しに優しく声をかけてくれた。
私は振り返りながら、笑顔で応える。
「大丈夫だよ、心配してくれてありがとね」

153 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 07:58:50 ID:WNRSMlUo

「おはよ、エイラ」
「ああ、おはようハルトマン……って、何でお前がこんな朝早くに起きてるんだよ!」
エイラが食堂に入るや否や、私を見て驚いたように後ずさりする。
何もそこまで驚かなくてもいいんじゃないかな?
「大袈裟だなぁ。私が起きてるのがそんなに珍しかった?」
「ああ、すごく珍しい」
「明日は雪が降るかもな」
と、横からトゥルーデが冗談交じりに呟く。
「トゥルーデまでひどーい!」
私は頬を膨らませて、拗ねたふりをしながら言う。
「皆さん、温かいスープができましたよ」
そこに宮藤がスープの入った皿をトレイに乗せてやってきた。
スープの美味しそうな匂いが辺りに漂う。
「わぁ、美味しそう。ありがと、宮藤」
「いえ……あ、そうだ。ハルトマンさん、妹さんって何か好き嫌いとかありますか?
今日の誕生会に何作るかリーネちゃんと相談してたんですけど……」
誕生会――その単語を聞いて、起きてから沈み気味だった気持ちも少し明るくなる。
そう、予定では今日の午後ウーシュがこっちに来ることになっていた。
何でも滅多に逢えない私たちのために、トゥルーデとミーナが今日の誕生会を企画してくれたみたい。
ウーシュと一緒に誕生日を過ごすのなんて何年ぶりかな。
トゥルーデとミーナには後でいっぱいお礼を言わないとね。
「う〜ん、そうだなぁ……納豆以外なら食べると思うよ」
「ええ!? どうしてですかー! 納豆美味しいのに……」
「悪いが宮藤、私も納豆だけはどうにも苦手だ」
「私も苦手ダナ。ネバネバしてて臭いし……まぁシュールストレミングには遠く及ばないけどな」
「あはは、さすがにあれより臭いものはないって〜」
それから私たちはしばらくの間笑い合った。
本当に501のみんなといると退屈しないね。
早くウーシュともこの楽しみを共有したいな。

「みんな揃ってるかしら」
そこにミーナと坂本少佐がなんだか難しそうな顔をして食堂にやってきた。
「何かあったの?」
私が訊ねるとミーナは深刻そうな表情で口を開いた。
「ええ。全員、至急ミーティングルームに集まってくれるかしら?」
「エイラは悪いがサーニャを呼んできてくれ」
「あ、ああ分かった……」
坂本少佐に言われてエイラは、サーにゃんを呼びに食堂を出る。
私たちもミーティングルームに向かうため、食堂を後にした。

154 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 07:59:56 ID:WNRSMlUo

――十数分後、ミーティングルーム

「サーニャ、大丈夫か?」
「うん、大丈夫……」
エイラは夜間哨戒明けで眠そうなサーにゃんを支えながら、席に着く。
「全員揃ったな」
坂本少佐はエイラ達が席に着いたのを確認すると、中央のスクリーンにロマーニャの地図を映し出す。
「昨晩、サン・ミケーレ島の上部にネウロイが複数出現したそうです」
ミーナが映し出された地図のヴェネツィアの辺りを指示棒で差し示しながら言う。
あれ? サン・ミケーレ島って確か……
「サン・ミケーレ島……ですか?」
宮藤が疑問の表情を浮かべながら呟く。
「ああ。ヴェネツィアの潟に浮かぶ島だ。戦死したウィッチの魂を祀る場所……ウィッチの墓場だ」
「ウィッチの、墓場……」
坂本少佐のその言葉を聞いて、私の脳裏に今朝見た夢の光景が蘇る。
ネウロイに対抗できる力を持っているとはいえ、私たちウィッチだって人間だ。
時にはネウロイという強大な力に敵わずに死ぬことだってある。
私は目の前で仲間を失ったことこそないけど、撤退戦の時には何人ものウィッチが亡くなったという話を何度も耳にした。
ウィッチだって死ぬ時は死ぬんだ。
そう、夢の中の無数のウィッチ達やウーシュみたいに……ダメだ私、こんな時に何考えてんだよ。
今はミーティングに集中しなくちゃ。

「駐屯地のウィッチがこのネウロイに応戦し、何とか振り払ったそうですが部隊の被害は甚大でほとんどのウィッチが負傷、
現在、戦闘が可能なウィッチは1人しかいないそうです」
「その上、厄介なことに戦闘中にネウロイが1機、姿をくらましたそうだ」
「消えたということか……?」
トゥルーデが驚いたように訊ねる。
「ああ。恐らく、以前サーニャ達が戦ったネウロイと同一のものだろう」

「現在、第504統合戦闘航空団はみんなも知っているように部隊再編成中のため、代わりに我々が援軍に赴くことになりました」
「バルクホルンにハルトマン、それにサーニャ。今回の任務はお前たちに頼みたい。現地のウィッチと協力して、
ネウロイを見つけ出し撃破に当たってくれ」
「了解」
「OK!」
「分かりました」
「はいはいはいはい! ちょっと待て! 私は!?」
「エイラは待機だ。こちらにもいつネウロイが来るか分からないからな」
勢いよく立ちあがりながら、手を挙げ自分の存在をアピールするエイラに坂本少佐がぴしゃりと言い放つ。
「そんな〜」
「心配するな、エイラ」
気が抜けたようにその場にへなへなと座り込んだエイラの肩をぽんぽんと叩きながら、トゥルーデが言った。
「私たちWエースが一緒なんだ。サーニャには傷一つだって付けさせはしない。そうだろ? エーリカ」
「え? う、うん……大丈夫だよ、エイラ。サーにゃんも私たちも絶対無事に帰ってくるから」
私はエイラに、というよりはほとんど自分に言い聞かせるようにそっと呟いた。
「本当だな〜? サーニャに何かあったら、ハルトマンもバルクホルン大尉も承知しないんだかんな〜」
「心配しないで、エイラ。私は平気だから」
「サ、サーニャ……」
エイラの手をぎゅっと握りながらサーにゃんが微笑む。
ねぇ、エイラ。サーにゃんは君が思っているよりずっと強いコだよ。
「よし! それでは3人とも早速準備にかかってくれ」
「くれぐれも無茶はしないでね」
「了解!」
坂本少佐達に見送られながら、私たちは出撃準備のためにミーティングルームを後にした。

155 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 08:01:06 ID:WNRSMlUo

「ハルトマンさん!」
出撃の準備を終え、格納庫から飛び立とうとしたちょうどその時、宮藤が息を切らして駆け込んできた。
「どうしたの? 宮藤」
「あ、あの……気をつけてくださいね」
「え?」
「えっと……何て言うか今朝のハルトマンさん、いつもより元気なさそうだったから私心配で……余計なお世話だったらごめんなさい」
と、申し訳なさそうな顔で宮藤が言った。
私の事を心配してわざわざ格納庫まで来てくれたんだ。
本当に宮藤は良いコだね、トゥルーデが気に入るのも無理ないよ。
「心配してくれてありがとね。私は大丈夫だよ。午後にはウルスラが来ることになってるから、宮藤は誕生会の準備お願いね」
私は宮藤の頭を撫でながらそう告げると、トゥルーデとサーにゃんに続いて空へと飛び立った。

「サーにゃん、大丈夫?」
サン・ミケーレ島に向かう途中、私は夜間哨戒明けで碌に寝てないであろうサーにゃんの横顔を覗きながら訊ねる。
「あ、はい。大丈夫です」
意外にも冴えた目でサーにゃんがそう答える。
「そっか。ならいいんだけど」
「お前のほうこそ大丈夫なのか?」
「へ?」
不意にトゥルーデが私の方を見ながら問いかけてきた。
「宮藤も言ってたが今日のお前、何だか元気がないぞ。今朝うなされてた事と何か関係があるんじゃないか?」
鈍感なトゥルーデにしては珍しくついた言葉だった。
私は平然を装いながらそれとなく話題を変える。
「何でもないよ。それよりさ、サン・ミケーレ島ってヴェネツィアの北部だけど着くのにどれくらいかかるのかな?」
私が話題を変えるとトゥルーデもそれ以上は追及しなくなった。
それから二、三言軽い会話を交わした後はみんな無言になり目的地のサン・ミケーレ島を目指して飛行を続けた。

「見えたぞ、あそこだ」
しばらくして目的地のサン・ミケーレ島が見えた。
四角い形の壁で囲まれた小さな島だった。
少し目を凝らすと、人影が手を振っているのが見える。
「現地のウィッチがお出迎えしてくれてるみたいだね」
私も地上の人影に手を振り返し、トゥルーデやサーにゃんと一緒にサン・ミケーレ島へと降り立った。

「ベンヴェヌーテ! よく来てくれたわね」
ストライカーを島の格納庫に収め、地上に降り立つと褐色の肌が眩しい陽気そうなウィッチが出迎えてくれた。
あれ? この人、どこかで見たような……
「感謝するわ。バルクホルン大尉にハルトマン中尉。それにリトヴャク中尉」
「私たちの事、知ってるの?」
「もちろん! バルクホルン大尉とハルトマン中尉と言えば世界的に有名なエースだもの。それにリトヴャク中尉、
あなたとユーティライネン中尉のラジオ、いつも楽しく聴いてるわ」
「あ、ありがとうございます」
「おっと、紹介が遅れたわね。私はジュゼッピーナ・チュインニ、階級は准尉よ」
「チュインニ准尉と言うと……あの第四航空隊のジュゼッピーナ・チュインニ准尉か?」
と、トゥルーデが目を丸くしながら訊ねる。
「昔の話よ。アガリを迎えた今は母国のロマーニャで教官みたいなことをやってるの」
あっ、そうか。この人、どこかで見たことあると思ったら昔新聞で見たんだ。
ロマーニャ人にして元カールスラント空軍第4航空群第2大隊のエース、ジュゼッピーナ・チュインニ准尉、
確かネウロイとの戦闘中に被弾してその後は成り行きでスオムスの義勇独立飛行中隊に配属されたとかなんとか……
「あれ? って事はもしかしてウルスラの昔の同僚さん?」
「ええ。あなたの妹とは苦楽を共にした仲よ。双子だとは聞いてたけど本当にそっくりね」
「まぁ、性格は全然違うけどね」
「ねぇジュゼ、私の事忘れてない?」
「あっ、ごめんごめん。この娘はエンリーカ・タラントラ准尉、バナナが大好きだから『バナナ』って呼んであげて」
「よろしく〜」
と、チュインニ准尉の横のこれまた陽気そうなウィッチが、私たち一人一人に握手を求めてきた。
「わっ、すごくすべすべしてる……」
「へへ、バナナは美容にもいいんだよ。私なんて毎日食べてるからほら、こんなにすべすべ」
へぇ〜、バナナって美容にも良いんだ。私も今度から毎日食べてみようかな……おっと、今はこんな事考えてる場合じゃなかった、
早くネウロイを捜さないと……ねぇ、トゥルーデ……

156 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 08:01:54 ID:WNRSMlUo

「……何してるの?」
私が振り返ると、そこにはチュインニ准尉に身体のあちこちを触られているトゥルーデの姿があった。
「ふふ〜ん、あなた、結構可愛いわね。私の好みかも」
「な!? ど、どこを触っているんだ……」
「ジュゼは女の子大好きだからね、あれはジュゼの挨拶みたいなものだから気にしないで」
と、何気ない口調で私とサーにゃんに語るバナナ。
ふ〜ん、まるで伯爵みたいなウィッチだね。
「と、とにかく! 早速、この近辺にネウロイが潜んでいるのか調べたいから離してくれないか?」
トゥルーデがそう言うと、チュインニ准尉は一転して真剣な表情になってトゥルーデから手を離した。
「あっ、そうだったわね。早速調査しましょうか。バナナ、あなたも手伝ってくれる?」
「もちろん。ウィッチ達の安らぎの場所をネウロイなんかに壊させたくないもん」

――それから十数分後……

「どうだサーニャ? ネウロイの反応は確認できるか?」
『いえ、確認できません……』
上空でバナナと一緒に索敵に当たっているサーにゃんの透き通った声が、インカムに届く。
サーにゃんの固有魔法でも発見できないなんて、この辺りにはもういないのかな……
「どうする、トゥルーデ?」
私が訊ねると、トゥルーデは少し考え込むような表情をした後、ゆっくりと口を開いた。
「……一旦状況をミーナに報告しよう。サーニャ、タラントラ准尉、ご苦労だった。戻ってきてくれ」
『分かりました』
『了解!』

「チュインニ准尉、そういうわけで501と連絡を取りたいんだが、無線機はあるか?」
「ええ、それなら仮設基地の電信室にあるわ」
「案内してくれ」
トゥルーデとチュインニ准尉が仮設基地の方へ駆けていくのを見送りながら私は、その場に腰を下ろす。
辺りには白く塗られた墓標がいくつも並んでいた。
「自然に囲まれてて良い場所だね……ここでならゆっくり眠れそう」
墓標にはウィッチ達の名前と没年が一つ一つ丁寧に刻まれていた。
母様がウィッチとして戦っていた頃から現在まで、戦っていた時代も、国籍も年齢もみんなバラバラだ。
ただ1つ共通しているのは、ここに眠っているウィッチ達はみんなネウロイのいない平和な世界を実現するために戦って、
その夢を実現できず志半ばに亡くなったという事だ。
「私も夢を叶える前に死んじゃうのかな……」
不意にらしくもない事を口にしてしまう。
ダメだ、どうも今日の私はネガティブ思考でいけない。
しっかりしろ、エーリカ・ハルトマン!
私は自分の頬をばちんと叩いて立ち上がる。

「この島にはウィッチ達の何年分もの想いが詰まってるんですね」
気が付けば、私の隣には索敵から帰ってきたサーにゃんとバナナの姿があった。
サーにゃんが白い墓標に刻まれた名前の一つ一つを見ながら呟いた。
「うん。だから私、この場所が好き。辛い時にここに来ると、この島のみんなが励ましてくれてるような気がするんだよね。
『頑張れ』って。そりゃ、何人もの同志が亡くなってるのは辛いけど……でも、彼女達の果たせなかった想いを果たす事ができるのは、
今を生きてる私たちだけでしょ? だから私はくよくよしないで前を見て進もうって思ったの。何事もね」
そう言いながらバナナが私にウインクを向けてきた。
彼女の言う通り、くよくよしててもしょうがない――今を変えられるのは今を生きてる私たちだけなんだから。
「我武者羅にでも前に進むしかないって事だね」
「そういう事。さ、早くジュゼ達のとこに行こっ」

157 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 08:02:44 ID:WNRSMlUo

「バナナ、あなたに良い報せがあるわ。今病院に連絡したんだけど……」
仮設基地のドアを開くと、チュインニ准尉が口を開いた。
何でも、昨日ネウロイの襲撃を受けて負傷したバナナの仲間達の容体が回復に向かっているらしい。
「3日もすれば退院できるそうよ」
「本当!? 良かった……」
ほっとしたように胸を撫で下ろすバナナ。
と、その直後どこからかぐぅという音が鳴り響いた。
「あ、ほっとしたらお腹が空いちゃった……」
バナナがその台詞を言い終わらないうちに、私のお腹からも良い音が鳴る。
「あ、そう言えば朝ごはんの途中で呼び出されたから全然食べてなかったんだっけ……」
「ふふっ、じゃあお昼にしましょうか。バナナ、あなたも手伝って」
「は〜い」
私はキッチンへ向かうチュインニ准尉とバナナを見送りながら、ソファに座っているトゥルーデの横に腰掛ける。
それから、サーにゃんを手招きして自分の膝に乗せてあげる。
「寝てていいよ。今日は碌に寝てないでしょ?」
「あ、はい……ありがとうございます」
それから数秒もしないうちにサーにゃんは眠りの世界へと落ちていった。
「それで、ミーナは何だって?」
私は横に座っている自分の相棒に訊ねる。
「ああ。もう少しここに残ってネウロイを捜してくれとの事だ。昼食を摂ったら私たちも索敵に当たろう」
「うん。その……今朝はごめんね」
「え?」
「トゥルーデは私の事心配してくれていたのに、何でもないように振る舞っちゃって。今朝、変な夢を見ちゃってね……」
私は今朝見た夢の事をトゥルーデに話した。
トゥルーデは私の目を見ながら黙って話を聞いてくれた。
「それで、そんな夢を見た後にウィッチの墓場に行くって事になったものだから私、自分も戦死しちゃうんじゃないかって
急に不安になっちゃって……でも今は大丈夫だよ。バナナと話してたら、気持ちも少し楽になったから」
「……そうだったのか」
私が話を終えると同時に、トゥルーデは私の肩に腕を回してそっと引き寄せてきた。
「へ? ちょ、ちょっとトゥルーデ!?」
「エーリカ、確かに私たちは個々の力はあまりに無力だ。だが、私たちは1人じゃない。仲間と一緒ならどんなネウロイだって倒せる」
「ネウロイはひとりぼっちだけど、私たちは独りじゃない。だから、私たちは絶対に負けません……今の言葉はエイラの受け売りですけど」
いつの間にか目を覚ましていたサーにゃんが私の膝元で頬を染めながら言う。
へぇ〜、エイラの奴ヘタレだと思っていたけどサーにゃんの前でそんなかっこいい事言ったんだ……
「そういう事だ、エーリカ。仲間がいる限り私たちは負けない。だから、死ぬなんて考えるな」
まさか、一時期は戦って死ぬ事ばかり考えていたトゥルーデにこんな事言われるなんて思ってもいなかったけど、今は不思議とそんなトゥルーデの言葉が何よりも頼もしく思えた。

「……ありがと。トゥルーデ、サーにゃん」
「全く、不安事があったなら今朝話してほしかったぞ。それとも私は、そんなに頼りなかったか?」
「そ、そうじゃないけど、変に夢の話をしてもトゥルーデをかえって心配させるだけだと思って……」
「何も話してくれないほうがよっぽど心配だ。何でも1人で背負い込もうとするな」
「そういうトゥルーデだって、いつも何でも1人で背負い込もうとしてるじゃん」
「う、そ、それはその……」
私が反論すると、トゥルーデは思わず言い淀む。
そんな彼女の慌てた表情が可愛らしくて私も思わず笑みがこぼれる。
「へへ、私たち案外似たもの同士だね」
私がそう言うと、トゥルーデも笑顔で応えてくれた。
「ああ、そうだな」
「……あ」
「どうしたの? サーにゃん」
私が訊ねるとほとんど同時に基地内にサイレンが鳴り響く。
「この音……!」
キッチンにいたチュインニ准尉とバナナも慌てて飛び込んできた。
「ネウロイが現れたんだ! 行こう!」
私たちは格納庫まで一目散に向かい、ストライカーを装着して空へと飛び立った。

158 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 08:04:39 ID:WNRSMlUo

「敵発見!」
サン・ミケーレ島の上空に現れた巨大なネウロイと私たちは対峙する。
私たちが砲撃を開始すると、巨大ネウロイは突如その姿を消した。
「消えた!?」
「いえ、まだ近くにいます! バルクホルンさんとタラントラ准尉は攻撃を続けてください。距離約2800……」
サーにゃんが固有魔法でネウロイの位置を確認しながら冷静に対処する。
トゥルーデとバナナが連射を続けると、ネウロイが再び姿を現した。
今度はコアの位置もはっきりと確認できた。
「見えた!」
「ハルトマンさん!」
ネウロイのビームをシールドで受け止めながら、サーにゃんが叫ぶ。
「OK!」
私はネウロイの真上に移動して、狙いをそのコアへと定める。
ねぇネウロイ、この島に眠っているウィッチ達は君たちとの戦いから解放されてゆっくり眠ってたんだよ?
彼女達の安らぎを妨げるなんて、私が絶対に許さないんだから。
「いっけぇええええええ!」
私は全身の力を込めてMG42のトリガーを引く。
弾は剥き出しになったコアに命中し、爆散する。
「やった……私たち、勝ったんだ!」

「ああ。ネウロイは無事、撃墜できた」
仮設基地に戻ってすぐ、トゥルーデはミーナにネウロイを撃墜した事を報告する。
私はそんなトゥルーデの後ろ姿を見ながら、ある事を思いついていた。
「トゥルーデ、代わって」
「え? あ、ああ……ミーナ、エーリカに代わる」
私はトゥルーデから受話器を受け取って、ミーナとの対話に応じる。
『どうしたの、フラウ? 今ちょうどウルスラさんが到着したところよ』
「あのさミーナ、1つお願いがあるんだけど……」

――数時間後、サン・ミケーレ島船着き場

「ここがサン・ミケーレ島か」
「綺麗なところね」
島の船着き場にゴンドラが到着し、坂本少佐とミーナを先頭に501のみんなが次々と島に降り立つ。
そう、私が思いついたある事とはこの島で私たちの誕生会を開いてほしいというものだった。
突然の無茶なお願いにも関わらず、ミーナは快くこの件を承諾してくれた。
本当にありがとね、ミーナ。
「ウーシュ!」
「ウルスラ!」
私とチュインニ准尉はゴンドラから降りてきた最愛の妹に思いっきりハグをする。
「へへ、元気だった? 逢いたかったよ〜」
「ふふっ、久しぶりね。背も少し伸びたんじゃない?」
「姉様、ジュゼッピーナ、苦しい……」
私たちがしばらくの間、ウーシュの事を抱きしめていると突如お腹から自分でもビックリするくらい大きな音が鳴る。
「姉様……」
「あはは、そう言えば朝も昼もほとんど食べてなかったんだっけ……」
それを聞いた宮藤が満面の笑みを浮かべながら、私の方を見る。
「ふふっ、ちょっと待っててくださいね。私とリーネちゃんが腕によりをかけて美味しいご馳走を作りますから」

――数十分後

「それでね、ネウロイが消えたと思ったらサーニャちゃんが冷静に敵の位置を私たちに教えてくれたの。あの時のサーニャちゃん、すごくカッコよかったよ!」
「いえ、私はそんな……」
「そうだろそうだろ。サーニャはすごいんだ。もっと褒めてもいいんだぞ」
「エイラがいばる事じゃないと思うが……それより、エーリカとウルスラがどこに行ったか知らないか?」
「ん? ああ、あの2人ならさっき外に出てったぞ」

159 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/08(金) 08:05:58 ID:WNRSMlUo
「……綺麗だね」
「……うん」
私たちは島の岸辺から今まさに沈もうとしている夕陽をぼんやりと眺めていた。
遠くの方ではルッキーニとペリーヌが墓標の一つ一つに手を合わせているのが見える。
「ねぇ、ウーシュ」
私は隣に座っているウーシュの手をそっと握りながら呟いた。
「何? 姉様」
「私、生まれ変わってもウーシュのお姉さんでいたいな」
「私も、姉様の妹がいい」
ウーシュもそう言って頬笑みながら私の手を握り返してくれた。

「2人ともここにいたのか」
「あ、トゥルーデ」
「エーリカ、ウルスラ、誕生日おめでとう」
トゥルーデはそう言って、私たちにそれぞれ小さな箱を渡してくれた。
「これは?」
「私とミーナで決めたプレゼントだ」
私たちが箱を開けてみると中にはハート型のペンダントが入っていた。
私のは赤色、ウーシュのは青色をベースとしたもので2つのペンダントは対になっていた。
「わぁ、可愛い……ありがと、トゥルーデ」
「ありがとうございます」
「礼なら後でミーナに言ってくれ。さ、基地に戻るぞ。宮藤とリーネがご馳走を作って待っている」
「うん!」
私はトゥルーデとウーシュの手をとって、仮説基地へと歩んでいく。
世界が平和になるにはまだまだ時間がかかるかもしれないけど、この島で眠っているみんなの努力が無駄にならないためにも
今は、少しずつでもいいから前を見て進もうと思った。
辛い事があっても大丈夫。だって私は一人じゃないから――共に歩んでくれる"家族"がいるから。

〜Fin〜

―――――――――――――

以上です。この話はファンブックで佐伯さんが仰っていた2期4話の没案を元に書いてみました。
ですので、時系列は2期4話と5話の間くらいの話と思っていただければ幸いです。
また、空戦を書いたのは初めてなので至らぬ点も多々あると思いますがご容赦を。
さて、今日はいよいよエーゲルラジオの日ですね。久々にエーリカやトゥルーデの声を聴けると思うと嬉しい限りです。
最後に、フミカネ先生twitterの未来のエーリカがイケメン過ぎて辛いです。
ではまた

160 名前:アキゴジ:2011/07/08(金) 21:51:18 ID:Fs/btNOQ
おやおや、いつの間にやら増えてきましたね。ではもっと増やすために続き行きますか。

161 名前:私は妹さんの代わり 4:2011/07/08(金) 23:00:14 ID:Fs/btNOQ
 あの長い夜から何日も過ぎていた。あの時以来、バルクホルンさんは私が訓練を終えた後に
バルクホルン(宮藤、今日も頼むぞ)
 小声でそう言って、すぐにその場を立ち去る・・・。私は、嫌だった。毎回、あんな事をされるのがとてつもなく嫌だった。でも、逆らえばどんな事をされるかわからない。だから私は夜になるとバルクホルンさんの部屋に行く。誰にも気づかれる事なく・・・。
芳佳「・・・バルクホルンさん」
バルクホルン「うむ、来てくれたな・・・良い子だ」
 私はバルクホルンさんの言葉に不安を感じる。しかし、私の身体は無意識にバルクホルンさんの方に歩み寄る・・・。そして、私が近くに来ると、バルクホルンさんは私の身体を抱きしめる。痛いほどに、でも、私には何故か、痛いはずなのに嬉しく感じてしまう。何故?
バルクホルン「さぁ・・・宮藤、始めようか」
芳佳「・・・はい・・・」

スッ・・・クニュ・・・フニュ・・・プニ・・・

芳佳「んっ・・・あっ・・・はっ・・・」
 バルクホルンさんは早速手を出し、指で私の身体を愛撫する。恥ずかしいとわかっているのに、私は善がり声を上げる。
芳佳「はぁ・・・はぁ・・・」

フニフニ・・・キュッ

芳佳「あっ・・・んん・・・」
バルクホルン「・・・フフ」

スッ、クチュ

芳佳「あっ!バ、バルクホルンさん・・・」
バルクホルン「嫌か?しかしそういう割には、ずいぶん湿っているぞ?」

クチュ、チュル、ヌチャ

芳佳「あっ!あっ!バルクホルンさん、ダメ!ダメェッ!」
バルクホルン「・・・そんなに気持ち良いのか、よしよし・・・もっと激しくしてやろうか」

グチャグチャグチャ!ヌヂュ!グチョ!ジュブ!

芳佳「あぁっ!あうぅっ!んあ!あうん!」
バルクホルン「良いぞ宮藤、ほら、もっと声を聞かせてくれ」
芳佳「はひっ!バ、バルク、ホルンさん!そ、そんなにいじると・・・ああっ!ひうぅっ!」
バルクホルン「そうだ・・・良いぞ宮藤、もっとだ・・・もっとだ!」

ジュブジュブジュブ!グチョ!グリュッ!

芳佳「あぁっ!やあん!んはあっ!バルクホルンさん!もう・・・もう・・・ダメ!ダメェッ!!」

プシャアアァァァァァァァ・・・

 バルクホルンさんの激しい指の動きに、私の股間の汁はものすごい勢いで吹き出してしまった。
芳佳「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」
バルクホルン「フフ・・・なかなか良かったぞ宮藤 だが、こんなに漏らしてしまうとは・・・悪い子だな」
芳佳「ふえ・・・?」
バルクホルン「悪い子にはお仕置きが必要だ・・・」
芳佳「え・・・?え・・・!?」

162 名前:私は妹さんの代わり 5:2011/07/09(土) 00:16:20 ID:o0Q9rBA6
芳佳「今度は・・・何をするんですか?」
バルクホルン「・・・こうするのさ」

ガッ!

芳佳「ひぃっ・・・!」
 バルクホルンさんは突然私のお尻を激しく掴んだ。
芳佳「バ、バルクホルンさん・・・!?」
バルクホルン「さぁ、お仕置きだ」

シュッ、ズプゥッ!!

芳佳「ひゃあううぅぅっ!!?」
 バルクホルンさんは私のお尻の穴に指を、思いっきり刺し込んできた。私はたまらなくなり泣き声を上げてしまう。
バルクホルン「フフフ・・・なかなか良い声を出すじゃないか宮藤、そうでなくてはお仕置きをやる意味が無い」
芳佳「お・・・お仕置きって・・・」
バルクホルン「では、始めるぞ」
芳佳「へっ・・・!ま、待って・・・」

ジュル!グリグリグリグリ!

芳佳「ああぁぁっ!!ひぃっ!!んあぁっ!!」
 バルクホルンさんは指で激しく私のお尻の穴をいじり始める。これには思わず声を上げないわけにはいかなかった。
芳佳「ひゃうぅっ!!バ、バルクホルンさん!!やめて!やめてくださ、あああぁぁぁぁっ!!」
バルクホルン「いいぞ・・・いいぞ“芳佳”、もっとだ・・・もっと泣け!」
芳佳「ら、らめです!そんなにお尻の穴を激しくいじったら・・・また!また!中から出ちゃうぅっ!!」
バルクホルン「そうか・・・また出そうなのか・・・別に出しても構わんぞ?今はお仕置き中だからな」

ジュルジュルジュルッ!グチョッ!ズリュウッ!

芳佳「ひああぁぁっ!!そ、そんなに指を激しく動かしたら・・・お尻の中が変になるうぅっ!!」
バルクホルン「・・・もう限界か、もう少し続けたいところだが、これ以上やるとかわいそうだな・・・では早々にイカせてやるとしよう」

ズプッ!グチュッ!

芳佳「ひぃっ!?」

ズブッ!ズブッ!グリュ、ジュル、ズチュッ!

芳佳「あへぇっ!指が!バルクホルンさんの指が三本も入ってるっ!」
バルクホルン「フフ・・・良い顔だぞ、“芳佳” ほら、出していいぞ 思い切って出せ」
芳佳「あぁっ!出る!出ちゃう!また!おしっこ出ちゃううぅぅぅっ!!!!」

プシャアアアアァァァァァァ・・・

芳佳「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
バルクホルン「今日は実に楽しかった・・・また頼むぞ、“芳佳”」


 薄れゆく意識の中で私は気付いた。バルクホルンさんが私の事を“芳佳”と呼んでくれていた。それに私は妙な嬉しさを感じた・・・そして


芳佳「うん・・・・・・お姉ちゃん・・・」

163 名前:アキゴジ:2011/07/09(土) 00:18:17 ID:o0Q9rBA6
とりあえず、今日はここまでです。すいません、まだ終わりそうにありません(汗)
けど、もしかしたら次で終わるかもしれません。では!

164 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/09(土) 20:39:24 ID:LxJUELgI
>>159 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! 素敵な双子誕生日祝いに乾杯です!空戦も手に汗握る緊迫感が良いですね。

>>163 アキゴジ様
GJです。続きを楽しみにしてます〜。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
フミカネ先生のIFシリーズを拝見して思い付いたネタをひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

165 名前:if you say...:2011/07/09(土) 20:39:54 ID:LxJUELgI
  トゥルーデにははっきりと聞こえた。エーリカの決意ともとれる、一言。
 「私がしっかりしたら安心してくれる?」
  分かってはいる。
  しかし、とトゥルーデは反論した。
 「お前、それがどう言う事か分かっているのか? 今までの様に、ただ単純に戦ってさえいれば良いと言う訳では無い。
  部隊間の連絡調整、部隊の指揮、今までお前がやった事の無い……」
 「分かってるよ。大丈夫、トゥルーデが全部出来たんだもの。私にだって出来るよ」
  少し大人びた天使は、やや伸び気味になった髪をふぁさっとかきあげ、笑顔を作る。
  そう。
  この控えめな微笑みに、何度助けられて来たか。
  しかし、今は……。
  ネウロイを、最後の一匹をこの大陸から叩き出すまで、戦いから逃げる訳には行かない。トゥルーデの決心。
  それを見透かしたかの様に、エーリカは繰り返した。
 「私がしっかりしたら安心してくれる?」
  いつ来たのか、クリスがそっと腕を取る。
 「もう、銃を握らなくても良いから。お姉ちゃん、私と手を繋ごう? 一緒に暮らそう? もう一度、二人で」
  最愛の妹、クリスに言われる。冷たく固い銃のグリップとは正反対の……、柔らかく、小さな手がトゥルーデの手を握る。
  トゥルーデの瞳が潤む。
  違う。そうじゃない。
  トゥルーデは首を振った。確かにとても素敵な未来……だが、違う。
  違うんだ。

 トゥルーデは叫んだ。
 そして自分自身の声に驚いて、がばっとベッドから飛び起きた。
 声と動きに反応したのか、横に寝ていたエーリカもうーんとひとつ唸って、目を開けた。

「私がトゥルーデに引退勧告?」
 エーリカはふわあ、とあくびをしながらトゥルーデに問うた。
「夢の中、での話だ。あくまでも、夢だからな」
「随分はっきりと具体的な夢を見るんだね」
 エーリカはそっとトゥルーデの顔に手をやると、そっと指先で目尻を拭った。
「泣いてる」
「しっ仕方ないだろう……あんな夢」
 嫌がっても、結局はエーリカのなすがままにされるトゥルーデ。
 指先から伝わる彼女の優しさ、それに対する自分の不甲斐なさを一層に感じ、うつむく。
「しっかし、トゥルーデが泣く程って相当だよね。私がねえ……」
 パジャマ姿で、トゥルーデのふとももに頭を載せるエーリカ。トゥルーデが膝枕する格好になる。
 うつむいた顔を覗き込むポジションに位置を取った小柄な天使は、愛しの人の顔をじっと見た。
 トゥルーデも、否が応でもエーリカと目が合ってしまう。ぼんやりと彼女の姿を見る。
 夢の中でもその輝きが変わらなかったブロンドの髪は……違う事と言えば、伸び具合。
「ずるいぞ」
 ぽつりとそう言うと、トゥルーデはふとももをくすぐるエーリカの髪を、そっとすくい上げる。
 はらりはらりとしだれ落ちるエーリカの髪はいつもと変わらぬ輝き、美しさ。そして長さ。繰り返すうち、言われる。
「トゥルーデ、ちょっと引っ張ってるよ?」
「ああ、すまない。つい」
「もう。らしくないなあ。もっとしゃんとしなよ」
「エーリカ、お前にだけは言われたくない」
「そんな事言っちゃってさ」
 エーリカは身を起こすと、トゥルーデにずいと顔を近付け、悪戯っぽく、言った。
「私がしっかりしたら、安心してくれる?」
 トゥルーデはごくりと生唾を飲んだ。
 その言葉、何故?
 彼女の心情を察したかの様に、エーリカはすぐに笑顔を作ると、そっと頬に手を添え、軽く唇を重ねた。
 ゆっくりとお互いの気持ちを落ち着ける、魔法のひとつ。
 しんと静まりかえった夜。
 二人の鼓動が少しばかり高鳴る。
 そのまま身体に腕を回し、身体を預ける。甘え方も心得ているエーリカ。トゥルーデに、勝ち目は無かった。

「言うかもね」
 ベッドにもう一度二人して横になって暫くした後、ぽつりとエーリカは言った。
「言うって、何を」
「トゥルーデが夢で見た事」
「何っ!?」
 ぎょっとして顔を向けるトゥルーデ。エーリカはくすりと笑い、トゥルーデの唇を人差し指の先でちょこんと押さえてみる。
「でも、少し違う所も有ると思うけどね」
「それはどう言う……」
 エーリカは何も言わず、トゥルーデの手を握った。微かに擦れ合う、ふたりの指輪の感触。
 指先から伝わった彼女の思いを受けとめ、トゥルーデはそっとエーリカを抱きしめた。

 今は、まだ。せめてもう少し。
 彼女の偽らざるキモチ。

end

166 名前:名無しさん:2011/07/09(土) 20:40:31 ID:LxJUELgI
以上です。
フミカネ先生のIFシリーズはもっと見たいですが
将来の姿というのもちょっと複雑な気分ですね。
でもみんなイケメン過ぎてもう……。

ではまた〜。

167 名前:名無しさん:2011/07/10(日) 01:35:51 ID:jPeSxMng
ひさびさに来たら大量の良作SSが……!すばらしい!

>>137
エーリカマジ天使! 気配り上手な天使のお話はいいですね。


>>145
素敵な魔法ですね。エーリカがいうと違和感がないのがさらにいい……。

>>159
ナイスウルリカ。 トゥルーデもイケメンすぎてずるいです。


そして
>>162
このお姉ちゃんはすごい。


皆さんGJ!!

168 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/11(月) 23:16:25 ID:lazItB.I
>>160 アキゴジ様
GJです。ドSなお姉ちゃんたまらないです。

>>164 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです。未来のウィッチーズを見れたのは嬉しいような、ちょっと寂しいような複雑な気持ちになりますよね。
時が経ってもエーゲルの信頼関係は変わらないでしょうね、絶対。

こんばんは。今日は現在、コンプエースにて連載中の漫画「片翼の魔女たち」に登場するフランちゃんの誕生日ということで、
ウィルマさん×フランちゃんで1本書いてみました。ではどうぞ

169 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/11(月) 23:17:01 ID:lazItB.I
【フランと勝負ズボン】

「えーっと、頼まれてたものはこれで全部かな」
買い物リストのメモにチェックを入れながら、栗色の髪の少女が隣の橙色の髪の少女に呟く。
彼女達はブリタニア連邦に位置する島、「ワイト島分遣隊」のウィッチ、
ウィルマ・ビショップ軍曹とアメリー・プランシャール軍曹だ。
2人は同隊の角丸隊長に頼まれ、本土のお店で必要な物を買い揃えていた。
「買い忘れた物とかないよね?」
「あっ、はい。必要な物は全部揃いました……あっ!」
「どうしたの?」
「いえ。そう言えばフランさん、もうすぐ誕生日だなーって思って」
「え? そうなの?」
そう、今日は7月8日――ウィルマとアメリーの同僚、フランシー・ジェラード少尉の誕生日の3日前だった。
その事をアメリーから聞いたウィルマは、少し考え込んでから口を開いた。
「せっかくだから何かプレゼント買っていこっか。船の時間までまだあるしね」
「はい!」
ウィルマの提案にアメリーが元気よく返事をする。
かくして彼女達は、フランへの誕生日プレゼントを探す事になったのだが……

「う〜ん、フランさんが気に入りそうなものってなんだろう……」
お店の商品棚の周りをうろうろしながら、アメリーが呟く。
しばらくアメリーが辺りをうろついていると、ふとある物が目に止まる。
「あっ、このゴーグルなんかいいかも」
アメリーの目にふと止まったのは、バイクレース用のゴーグル。
フランの尊敬するウィッチ、シャーロット・E・イェーガー中尉がバイクレースで世界記録を樹立したレーサーという事もあり、
彼女がゴーグルに興味を持っていた事をアメリーは知っていた。
「うん。このゴーグルなんかフランさんに似合いそう……あれ? ウィルマさんどこ行っちゃったんだろ……」
アメリーがいつの間にかいなくなったウィルマをキョロキョロと捜していると、不意に後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。
「お〜い、アメリー〜! フランへのプレゼント、決まった?」
「あっ、はい。ウィルマさんは?」
「へへ、私はね……ズバリ! これをプレゼントしようと思うの」
「ええ!?」
ウィルマが差し出したそれを見て、アメリーは思わず顔が真っ赤になってしまう。
「ウィルマさん! 本当にそ、それをフランさんにプレゼントするんですか?」
「うん。なんだかフランにすごく似合いそうじゃない?」
そう言って悪戯っぽく笑うウィルマを見て、3日後が不安になるアメリーなのであった……

170 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/11(月) 23:17:53 ID:lazItB.I

――それから3日後の深夜

「ふぁ〜あ、ねむ……なんなのよ、こんな時間に」
眠気眼を擦りながら、寝間着姿のフランがウィルマ達の部屋の前で呟く。
0時になったらここに来るようにとウィルマに言われていたのだ。
フランが渋々ドアをコンコンと叩くと、扉の向こうから「どうぞ〜」という声が聞こえてくる。
「あ、開けてくれるわけじゃないのね……」
フランが仕方なしにドアを開けると、同時に、クラッカーの音が部屋に鳴り響いた。
「へ?」
「フランさん、誕生日……」
「おめでとう!」
目の前にはクラッカーを持ってニコニコしているウィルマとアメリーの姿。
突然の出来事にフランは、状況を理解するのに多少の時間がかかった。
「え、えっと……」
「ほら、今日ってフランの誕生日でしょ? もしかして忘れてた?」
「ううん、忘れてたわけじゃないけど……祝ってもらえるなんて思ってなかったから……」
「ふふっ、誕生日は1年に1度の特別な日なんだから盛大に祝わないと。ね、アメリー?」
「はい。角丸隊長に頼んで午後にはみんなで誕生会を開く事になりました。ですがその前に、
私たちで個別にプレゼントを渡したいと思いまして」
アメリーはそう言って、小包みをフランに渡す。
フランがその小包みを受け取り、中身を見ると思わず感嘆の声が漏れる。
「わぁ、素敵……」
「フランさんが興味を持ってたバイクレース用のゴーグルです。イェーガー中尉のゴーグルと比べると、見劣りするでしょうけど……」
「ううん、そんな事ない……ありがと、アメリー」
アメリーからプレゼントされたゴーグルを大事そうに抱えながら、フランは微笑んだ。
「はい! じゃあ次は私の番ね。フラン、きっとあなたに似合うと思うの」
「え? なになに……」
フランは続けてウィルマから小包みを受け取り、その中身を見て驚愕する。

「な、何よこれ!」
中に入っていたのは、布の面積が異様に狭い、お尻の部分がT字になっているズボンだった。
「『てぃーばっく』っていうズボンらしいわ。1939年頃からお祭りの時に、リベリオンのダンサーが着用するようになったんだって」
「そんな事聞いてるんじゃないわよ! 何であたしにこんな物を……」
「ほら、フランっていつも紐ズボン穿いてるから、大胆なズボンが好きなのかなーって思って」
「あのねぇ……あのズボンは軍から支給されたもので、別にあたしが趣味で穿いてるわけじゃないんだけど」
「へー、そうだったの……まぁ、せっかくだし試しに穿いてみてよ」
「は、穿けるわけないでしょ! バカ!!」
「まぁまぁ、いいからいいから」
ふとフランは下半身がスースーするのを感じた。
気が付けば、いつの間にかズボンをウィルマに脱がされていたのだ。
「きゃっ! な、何すんのよ! ウィルマのバカ!!」
「へへ、フランったらせくし〜」
中年男性のような笑みを浮かべながらウィルマは、フランにTバックのズボンを穿かせていく。
その様子をアメリーは、顔を赤らめながらただ黙って見る事しかできなかった。

「わぁ、フラン可っ愛い〜」
「うぅ、これなら何も穿かないほうがよっぽどマシだわ……こんなズボン、誰が好んで穿くのよ」
「お店の人が言ってたんだけどね、このズボンを穿けばここ一番の勝負にも絶対勝てるようになるんだって」
それを聞いて、フランは朱に染まった顔を更に赤くする。
「へ!? しょ、勝負って、あたしまだそういう事するのは早いし……」
「えっ、"そういう事"って何? 私はネウロイとの戦闘の事を言ったんだけど……少尉殿は一体、何の勝負を連想してたのかな〜?」
「……ウィ、ウィルマのアホ〜!」
これ以上ないくらいに顔を真っ赤にしたフランがウィルマの肩の辺りをぽかぽかと殴りかかる。
「うんうん。やっぱフランはちょっと生意気でマセてるほうが可愛いわ。なでなでしてあげる」
「な!? あたしに向かってその態度! じょーかんぶじょくなんだから〜」

(ふふっ、最初はどうなるかと思ったけど、何だかフランさんが楽しそうで良かったです)
自分より小さな上官の頭をくしゃくしゃに撫でるウィルマと、小言を言いながらもまんざらでもなさそうな顔をするフラン。
そんな2人の様子を微笑ましく見守るアメリーなのであった。


―――――――――――

以上です。フランちゃん、(それとマロニー大将と副官さん)誕生日おめでとう!
今後もワイト組の動向に目が離せませんね。ラウラちゃんと角丸隊長の当番回も楽しみです。ではまた

171 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/15(金) 18:39:55 ID:2OFlbuf.
>>170 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! ワイト島分遣隊キター! ウィルマさん積極的過ぎです!


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
フミカネ先生のIFシリーズから思い付いたネタをもうひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

172 名前:IF you say... II 01/02:2011/07/15(金) 18:41:17 ID:2OFlbuf.
 とたとたと早足で近付く靴音。そして開けるのももどかしいと言わんばかりの鍵の開け方。
 そんな音を出すのは、お姉ちゃんだけ。クリスには分かっていた。
 勢い良くドアが開く。
「お帰り、お姉ちゃん」
「今帰った。遅くなってすまない」
「また何かもめ事?」
「いや、いつもの事と言えばいつもの事なんだが……地上勤務は骨が折れるな。面倒臭い仕事ばかりで。
空を飛んでいた方がまだマシだ。ミーナの苦労が今更分かった気がするよ」
「そう言えばミーナさん、お元気なの?」
「彼女はいつだって元気さ」
「良かった」
「さあ、待たせて済まなかったな。今すぐ食事を作ろう」

 トゥルーデとクリスは、基地から程近い場所に住まいを借り、そこで暮らしていた。
 地上勤務とは言え、まだ軍人であるトゥルーデは、すぐさま基地に行ける様、構えて居た。
 しかし病状が快方に向かうクリスの世話もしなければならないトゥルーデは……
 今はむしろ、比重がクリスの方に傾きつつあった。

 手早く食事を作り、食卓を囲む。琥珀色に周りを照らすランプの横で、つつましくも楽しい団欒のひととき。
「はほへ、ほへえひゃん……」
「こら、口の中にモノを入れたまま喋るんじゃない。何を言っているか分からないだろう。落ち着けクリス」
「ごめんお姉ちゃん。伝えたい事があって」
 ごくりと飲み込むと、クリスはトゥルーデに向き直った。
「どうしたんだ。改まって。……言ってごらん」
 微笑むトゥルーデに、クリスは言った。
「好きな人が出来たんだけ……」
 カシャーン、とスプーンが食器に当たる音。
 カタカタカタと、小刻みにトゥルーデの手が震える。
「……な、な、な。なんだってぇー!?」
 絶叫いや悲鳴に近い問いを発する姉。妹の答えを待たず、がたんと席を立ち、壁に頭を付けぶつぶつと呟く。
「い、いつかこう言う日が来る、とは覚悟はしていた……だがしかし、早すぎないか?」
 トゥルーデは振り返ると、ずいとクリスに詰め寄った。
「何処の誰だ? どんな奴だ? 名前は? 何処の国の人だ? ええい面倒だ、今すぐここに連れて来い!」
 どん、とテーブルを叩く姉の手に、そっと自分の手を重ねる。
「落ち着いてお姉ちゃん」
 クリスは笑うと、続きを話した。
「病院で知り合った子の話だから。私じゃないよ」
 それを聞いたトゥルーデは、ふらふらと席に戻ると、どっかと腰を落ち着け、やや乱れた髪を整え、こほんと咳をした。
「ふむ……。まあ、そう言う事だろうとは思っていた」
「またまた〜。お姉ちゃん、うろたえすぎ」
「そ、そんな事は無いぞ!」
「でも、それだけ私を心配してくれてるって事だよね」
「そっそれは当たり前だろう! たった一人の妹をだな……」
 クリスはくすくす笑う。
「で、その子に好きな人が出来たから、クリスに相談して、クリスが私に相談、と言う訳か」
「そうそう。お姉ちゃんなら何でも知ってるかと思って」
「任せろ」
 頬に一筋の汗が流れるが、これは錯覚だと言い聞かせるトゥルーデ。
「若いうちは、まずハメを外しすぎない事が大事だぞ。お互い節制と節度を持って……」
「お姉ちゃん、教会の厳しい神父さんみたい」
 クリスは笑った。
「いや、当然だろう。何か間違いが有ったら困る」
「間違いって?」
「それは……」
「お姉ちゃん達を見てたら、もっと具体的な事を聞けるかと思ったんだけどな」
「私達?」
 クリスは、ほら、と、後ろを指差した。

173 名前:IF you say... II 02/02:2011/07/15(金) 18:42:36 ID:2OFlbuf.
 ばたーんと家の扉が開かれる。
「二人共ただいま! あれ、私の食事は?」
 エーリカだった。顔に少々疲労の色が出ているが、いつもと変わらない笑顔。
「お帰りエーリカ。遅かったな」
「お帰りなさい、エーリカお姉ちゃん」
「いい子にしてたクリス? ねえお腹空いたトゥルーデ」
「分かった分かった。用意してあるから、まずはその汚れた手を洗ってこい」
「すぐ食べたーい」
「駄目だ。清潔な手で食事をしないと、巡り巡って腹を壊す」
「全く、オヨメさんだよねトゥルーデは」
「なっ!」
 顔を真っ赤にするトゥルーデ。にやにやしながらエーリカは洗面所に向かった。くすくすと笑うクリス。

 戻って来た頃には、食器は全て並べられ、シチュー、パンに肉料理と、エーリカの分が用意されていた。
「お腹すいたーいただきます」
 スプーンとフォークを手に、もくもくと食べるエーリカ。
「どうだ? 隊の任務には慣れたか?」
「トゥルーデ、昨日もそれ聞いてたよ」
「私と違って、お前は不慣れだろうから……」
「つまり心配してくれてるって事だよね」
 クリスに言われた事をエーリカにも言われ、頬を赤らめるトゥルーデ。
 大丈夫、とエーリカは言うと、シチューのジャガイモを頬張りながら続けた。
「毎日が面白い事の発見でね。トゥルーデやミーナもこんな事してたんだ、とかね。色々」
「大変だろう」
「まあね。でも苦痛じゃないよ」
「本当か? 強がりじゃないだろうな」
 問い詰められたエーリカは苦笑いした。
「まあ少しはあるけど、大丈夫だって。それがトゥルーデとの約束でもある訳だし」
「私はいつでも戻……」
「大丈夫」
 エーリカは繰り返すと、笑顔を作った。
「トゥルーデが皆を守った様に、今度は私が守るからね」
「ばっ馬鹿……」
 そんな姉達のやり取りをみていたクリスは、ぽんと手を叩いた。
「そう、それだよ、お姉ちゃん」
「? 何の事だ?」
「どうして二人はそんなに仲が良いの?」
「聞きたいクリス? 話すと長〜くなるよ?」
 にやつくエーリカ。興味津々のクリス。
「こらこら二人共やめないか。ところでクリス、その子の話だけど、詳しい事情が分からないと何とも言えないぞ」
「トゥルーデ、話誤魔化そうとしてない?」
「いや違う。クリスにさっき相談されたんだ」
「私も聞きたい」
「聞いてよエーリカお姉ちゃん。お姉ちゃんったらね、私の友達の相談なのに、私に好きな人が出来たって勘違いして……」
「それは見たかったなー。大体想像付くけど」
「あれはクリスの言い方が悪い。誤解を招く」
「トゥルーデも早とちりするからね」
「それで二人に聞きたいんだけど……」
「何でも良いよ?」
 パンを頬張りながら笑うエーリカ。「ともだち」の話を始めるクリス。
 トゥルーデはそんな二人を目の前に、手にしていたスプーンを持ち直す。ぼんやりと映り込む、歪んだ自分の顔。
 つい昨日までの激闘。生きるか死ぬかの戦いの中に居た筈の自分。
 それが今はどうだ。大切な二人を前に、腑抜けて間抜けな笑顔を作っている。
 こんな事で良いのか?
「いいんじゃない?」
 トゥルーデは、エーリカの言葉を聞いて我に返った。愛しの人の顔を見る。
「トゥルーデ、考えすぎだよ」
 苦笑するエーリカ。何の事だとはぐらかすも、じーっと見つめられ、逆に答えに窮する。
「良いなあ、お姉ちゃん達。私も早く……」
「わあっ、クリスにはまだ早い!」
 焦るトゥルーデの手を引き、エーリカが言う。
「いや、良いんじゃない? その時は色々と教えてあげるよ」
「本当? ありがとうエーリカお姉ちゃん」
「お前が教えるのはろくでもない事ばかりだからな」
「まあまあトゥルーデ」
 ほのかに照らされる灯りの下、平和で幸せなひとときが続く。
 それは“死線”を潜り抜けた者に与えられる、最高の幸福。

end

174 名前:名無しさん:2011/07/15(金) 18:43:35 ID:2OFlbuf.
以上です。
“その後”を考えて、こう言うパターンもアリかなとか。
IFシリーズは色々考えちゃいますね。

ではまた〜。

175 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/15(金) 21:33:03 ID:2OFlbuf.
再びこんばんは。mxTTnzhmでございます。
某漫画からヒントを得たネタで一本書いてみました。
ではどうぞ。

176 名前:count your mark 01/03:2011/07/15(金) 21:33:39 ID:2OFlbuf.
 午前十時きっかりに、その数字は現れた。
 頭の上にピコンと表示されたその「数」は、ウィッチによりまるで違っていた。
 突然の事態に混乱を来す501。
「これはどう言う事? 何なのこれは?」
「落ち着けミーナ。とりあえず直接の害は無さそうだが……まさかネウロイの仕業か?」
「ウィッチによって数が違うってのも気になるな」
「美緒、魔眼で分からない?」
「撃墜数じゃないか? はっはっは」
「いや、笑い事じゃなくてね」
「とりあえず全員を集めて調査を!」
 ミーナの号令で、全員が(夜間哨戒明けで寝ていたサーニャとエイラも叩き起こされ)調査を開始した。

 ブリーフィングルームに集まった501の面々。
「現状、判明している事を報告します」
 いつにない緊張の面持ちでミーナは皆に告げた。
「この数字が現れ、見えているのは私達ウィッチ同士だけ。ウィッチ以外の人間は……基地内の男性も女性も、その兆候は無く、
私達には見える数も、全く見えないそうよ」
「なるほど。やっぱりウィッチの能力に関係してるとか。例えば魔力とか」
 シャーリーが頬杖付いて仮説を立てる。
「それはどうかしら。仮に撃墜数だとすると、皆のスコアと合わないわ」
 否定するミーナ。
「これは天が与え指し示した罪の数ですわ!」
 ペリーヌが立ち上がり、新たな説を唱える。
「罪? どんな?」
「例えば、懲罰とか」
「仮に懲罰だとしたら、ペリーヌがゼロなのはともかく、他の隊員も全員一以上有るってのはおかしいよな」
「そ、それは……」
「他の部隊にも問い合わせたけど、この様な事態にはなっていないそうよ」
「じゃあウチ(501)だけかあ。何だろうね」
「やはりこれは、ネウロイの仕業かっ!?」
 握り拳を作るトゥルーデ。
「今の所、この数に変動は無いから、恐らく何かの数値だと思われるわ。あと、坂本少佐と宮藤さんのは……」
「漢字で表示されてますね」
 美緒と自身の頭の上の数を指差す芳佳。梵字にも似た崩し字、そして旧い書体で書かれている為、扶桑のウィッチでないと判読しにくい。
「ラテン語圏の私達は、ラテン数字だな。何か微妙に分かりにくいな」
「とりあえず、ハルトマン中尉とルッキーニ少尉を先程哨戒任務から呼び戻したので、これから全ウィッチを……」
「身体検査でもするのか?」
 この前の「虫型ネウロイ」の様に、基地の中まで侵入し悪事を働いているのかと考えを巡らせ、だんと机を叩くトゥルーデ。
「一体どうすれば良いんだ!?」
 のほほんと構えて居たシャーリーは、エイラとサーニャの数を見て呟いた。
「……サーニャとエイラはなんか数が多いな」
「わ、分かったゾ。これはラジオだ。ラジオの回数ダ」
「二人でそんなに放送したのか?」
「えうッ……」
「あ、二人が帰ってきましたよ」
 芳佳が指し示す。
 ドアがぎぃーと開いて、エーリカとルッキーニが帰還した。
「あれ、どうしたのみんな。深刻そうな顔して」
 いつもと変わらないエーリカ。彼女の頭上にも、数が見える。
「あ、見てみて、あれ。ちゃんと出てる! みんな見える見える!」
 何故か嬉しそうなルッキーニ。当然彼女にも数字が現れている。
 皆の数字をしげしげと観察するエーリカとルッキーニ。
 しばしの沈黙。
 やがて「またお前達か」と言う、全員からの刺す様な視線に晒される。
「や、やだなー。どうしたの皆」
「ヤダナー、ナー」
 冷や汗を一筋拭い作り笑いするエーリカとルッキーニ。一歩退く。
「事情を聞きます。二人を拘束して」
 一歩踏み出したミーナは、冷気の籠もった目で二人を射抜いた。

177 名前:count your mark 02/03:2011/07/15(金) 21:34:09 ID:2OFlbuf.
 間も無く捕縛され(椅子に座らされ)たエーリカとルッキーニはあっさりと口を割った。
 そして事の次第を聞いたウィッチ達は驚きの声を上げた。
「キスした回数?」
 全員で声を上げ、改めて、頭上に浮かぶ数字をまじまじと見る。そして他のウィッチのと比べ……
「こら、じろじろ見るな!」
「大尉だって見てるじゃないカー!」
「ほほう。サーニャ、お前結構……」
「しょ、少佐まで何見てンダヨ!」
 ミーナから“尋問”を受けるエーリカは、いともあっさりとネタばらし。
「そ。これはキスの回数だよ。朝食の時に、セクシー魔法少女の私が、とある魔法の粉を鍋の中に……」
「誰がセクシー魔法少女だ。大体、皆の食事に毒物を混入させるとは何事だ! 重罪だぞ」
 トゥルーデが腰に手を当て追及する。
「毒じゃないじゃーん」
「色々な意味で毒だ! 大体、こんなプライベートな数字を、互いに可視可能な状態にしてどうする?」
「面白いじゃん?」
 あっけらかんと答えるエーリカを見て、呆れるシャーリー。
「あのなあ……お前達、ちょっと遊び過ぎじゃないか」
「ウジュー、ごめんね、シャーリー」
 頭にたんこぶをつくった……美緒の鉄拳がその理由だが……涙目のルッキーニは、シャーリーにすり寄ると、
子猫の如く、唇をシャーリーに合わせた。
 刹那の出来事だった。
 ルッキーニと、シャーリーの頭の上に輝く数が、ぴこーんとひとつずつ増える。
 実際の現場を見、そして数が増えるさまを目の当たりにした隊員達は、動揺を隠せない。
「うわ、本当だ!」
「ちょ、ちょっと……」
「これはまずいんじゃないか」
 動揺する一同。
「でも、シャーリーとルッキーニの数、シャーリーの方が僅かに多いね。何で?」
「えっ、シャーリー、あたし以外の誰かと?」
「うーん、どうだろう。なあ堅物」
「な、何故私に振るッ!?」
「動揺し過ぎダゾ大尉。隠しても隠しきれてないシ」
「芳佳ちゃん……芳佳ちゃんの数、私読めないよ」
「だだ大丈夫、リーネちゃんと一緒だよ?」
 咄嗟に適当に答えて頷く芳佳。
「わあ、嬉しい! 私達一緒だね!」
 抱き合う芳佳とリーネ。
「お待ちなさいそこの二人! 数が一緒だなんておかしいでしょうに!」
 納得いかないペリーヌの頭上を見た芳佳とリーネは、可哀相なものを見る目をした。
「ペリーヌさん……」
「ペリーヌさん……」
「ちょっ、これは、その……」
 頭上の数字を、手でかき消す素振りをしつつ慌てふためくペリーヌ。
「なあサーニャ、私と数が微妙に違うんだけド」
「……私の方が少し多いね」
「さサーニャ? そ、それってどう言う事ダ? まさか私以外に? ……何で何も言わないんだ、答えてくれサーニャぁぁぁ」
「エイラが壊れかけてるぞ、誰か止めてやれ」
「無理だなー」
「ねえ、宮藤さん?」
「なんでしょうミーナ中佐」
「み……坂本少佐の数字を教えて欲しいんだけど」
「ええっと、ミーナ中佐よりも多いですね、倍くらい」
「ば、倍!? ちょっと美緒! どう言う事!?」
「おいおい穏やかでないなミーナ、私は何もしてないぞ」
「じゃあその数字はどう言う事なの!? きっちり説明して貰います!」
「いや、私は全く記憶に無くてだな……若い頃に原隊で……扶桑で、いや、戯れが有ったかも知れないが記憶に無い……」
「記憶に無い……まさか」
「ネウロイか?」
「じゃなくて酒のせいだろ、少佐のアレは」
 呆れる隊員達をよそに、ミーナと美緒の押し問答が続く。
「だがミーナ、お前だってそれなりにカウントが多いじゃないか。それはやっぱり……」
「昔の事はもう良いの!」
「おい危ない! 拳銃を向けるなミーナ!」
「なんか中佐の機嫌が急に悪くなったが大丈夫か?」
「大丈夫じゃない、問題だ」
「トゥルーデと私の数は……私の方がちょっと多いね」
「何故だ」
「さあねー。JG52の頃とか……」
「な、何ぃ? さてはクルピンスキーか!? それともあのマルセイユか? 誰なんだ相手は!?」
「にしし。教えて欲しかったらキスして」
「ぐぬぬ……」
「今度は大尉が慌て始めたゾ」

178 名前:count your mark 03/03:2011/07/15(金) 21:34:33 ID:2OFlbuf.
「この数字、過去に出した最高速度だったら面白かったのになあ」
「そう考えるのはお前だけだリベリアン」
「ま、楽しければいいんじゃない? 堅物も考え過ぎだって」
「お気楽だな、リベリアン。見ろ、501全体が混乱してるじゃないか」
「そう言う割には皆楽しそうだけど? ……あれ、中佐が少佐連れてどっか行こうとしてるぞ」
「お、おい、ミーナ待て!」
 声を掛けたが止められる筈もなく、指揮官不在となってしまう501。
「ま、いいんじゃね?」
 気楽に構えるシャーリーを前に、トゥルーデは辺りの状況を見回して言った。
「一体どうするんだ。これで何か有ったら501は戦わずして負けてしまうぞ」
「その前に、何に負けるのさ」

 昼食前、突如としてその数字は霞と消えた。
 ミーナの厳命により、一度は記録された各隊員の数値も全て破棄され、極秘扱いとされた。
 そしてミーナが美緒を何処かへ連れて行った事も、全て伏せられた。
 全ては、無かった事に……。

end

179 名前:名無しさん:2011/07/15(金) 21:35:29 ID:2OFlbuf.
以上です。
かなり泥沼になりそうな予感が……。

ではまた〜。

180 名前:アキゴジ:2011/07/16(土) 15:51:39 ID:LeldTBSE
どうもです。みなさんの作品、どれも素晴らしいですね!
さて・・・今度こそ終わらせるぞ・・・。

181 名前:私は妹さんの代わり 6:2011/07/16(土) 17:22:36 ID:LeldTBSE
 訓練を行っていて、最近私は気になっていた。ここのところ、どうも宮藤の様子がおかしい事を。何と言えばいいか・・・こう、いつもの様な元気が感じられなかった・・・。

芳佳「・・・・・・」
坂本「・・・宮藤」
芳佳「・・・あ、はい・・・」
坂本「何かあったのか?ずいぶんやつれてるように見えるが・・・」
芳佳「・・・え?あはは・・・なに言ってるんですか坂本さん・・・私は、いつも通りですよ・・・」

 まったくそうには見えない・・・まるで今までの宮藤とは思えなかった。まさか、誰かが宮藤に何かをしたのだろうか・・・?しかし、そんな事をする者がいるのだろうか?

坂本「宮藤・・・別に遠慮する事は」
バルクホルン「坂本少佐、すまないが席を外してくれないか?宮藤と話があるんだ」
坂本「・・・バルクホルンか、しかし・・・」
芳佳「坂本さん、私からもお願いします」
坂本「む・・・そうか・・・わかった」

 今の状態の宮藤に頼まれては断りようも無い。やむをえず私は2人の邪魔にならないよう他の場所へ歩く。・・・しかし、少々変なモノを感じた。バルクホルンが着た途端、宮藤の表情が嬉しそうになっていた事を・・・。普通なら部下が嬉しそうな顔をしているなら、嫌な感じなどしないはずだ。だが、さっきの宮藤の表情に、私は妙な違和感を感じた。

坂本(まさかバルクホルン・・・お前が・・・)

 夜になり、私は廊下を見回ってみる事にした。

坂本(こんな時間に限って、宮藤が妙な事をするとは思えんが・・・)

 そう考えながら歩いていると、誰かの影が見えた。

坂本(あの部屋は、確かバルクホルンの・・・!?)

 バルクホルンの部屋の前にいた人影は、宮藤だった。私は思わず立ち止まるが、宮藤はまったく私に気づいていない。

芳佳「バルクホルンさん・・・入っても良いですか?」
バルクホルン「あぁ、良いぞ」

ガチャ、バタン!!

坂本(何故宮藤があそこに・・・!?宮藤に何をする気だ!?バルクホルン・・・!)

 私は嫌な予感がした。ばれないように、ゆっくりとドアに近づき、耳を澄ましてみる。

芳佳「・・・はぁ・・・はぁ・・・お姉、ちゃん・・・」
バルクホルン「フフ・・・今日もかわいいな、芳佳・・・」

チュッ

芳佳「ん・・・んんん・・・ん・・・」
坂本「・・・!?」
バルクホルン「さぁ、芳佳、今日はどうしてほしい?」
芳佳「えっとね・・・芳佳のここをね、舐めてほしいの」
バルクホルン「あぁここか・・・ずいぶん濡れているな・・・私に舐めてほしくて漏らしてしまったのか?」
芳佳「うん・・・だって、お姉ちゃんのなめなめ気持ち良いんだもん・・・」
バルクホルン「そうか・・・私が舐めるのがそんなに良いのか、よしよし、わかった」
芳佳「ありがとう、お姉ちゃん じゃあ、ズボン脱ぐね」
バルクホルン「いや、脱ぐ必要は無い、そのままでいい」
芳佳「え?いいの?」
バルクホルン「あぁ」
芳佳「じゃあ・・・お姉ちゃん、舐めて」
バルクホルン「うむ・・・」

ペロ

芳佳「ひゃう・・・!」

ペロペロ、ヌチャ、クチュクチュ・・・

芳佳「はぁ・・・はぁ・・・!お姉ちゃん・・・もっと、もっと・・・!芳佳のお股、ペロペロしてぇ・・・!」

坂本(そんな・・・宮藤が・・・!)

 信じられなかった。バルクホルンが宮藤を犯している・・・!それどころか、宮藤はそれを嬉しそうに受け入れているのだ・・・!宮藤をあんな風に変えた犯人が・・・バルクホルン・・・貴様だったとは・・・!

182 名前:私は妹さんの代わり 7:2011/07/16(土) 20:06:20 ID:LeldTBSE
芳佳「はぁ・・・はぁ・・・お姉ちゃん・・・!お姉ちゃん・・・!」

レロ、ネチョ、ハム・・・

芳佳「あっ!そこ・・・噛んだら、ダメェ・・・!」
バルクホルン(・・・なら、これはどうだ・・・?)

チュッ、チュッ、チュッ、チュウ〜

芳佳「ひゃああぁんっ!お、お姉ちゃん!そんなに吸ったら、漏れちゃう!漏れちゃうよぉ〜!」

レロレロレロ、チュル、カプ

芳佳「あっ!あっ!お姉ちゃん!出る!出る!出ちゃうううぅぅぅ〜!!」

プシャアアアァァァ・・・

バルクホルン「フフ・・・どうだ芳佳・・・気持ちよかったか?」
芳佳「うん・・・すごく・・・良かった・・・♪」
バルクホルン「そうか・・・それじゃ次は」

バンッ!!

芳佳「ひっ!!」
坂本「バルクホルンッ!!!!」
バルクホルン「・・・すまない芳佳・・・少し待ってくれるか?」
芳佳「う、うん・・・」
バルクホルン「よし・・・ところで、何の用だ?坂本少佐、ずいぶんと荒れているじゃないか」
坂本「ふざけるな!!」

ガシッ!!

坂本「貴様・・・!よくも・・・よくも宮藤を!」
バルクホルン「何をそんなにいきり立っているんだ?私はただ宮藤の望む事をやっていただけだぞ?」
坂本「貴様が無理矢理そうさせたんだろう!!宮藤が自分からこんな事を望むはずが無い!!」
バルクホルン「フン・・・だったらどうする?この場で私を殺すのか?宮藤の前で」
坂本「何・・・!?」
芳佳「・・・」

 宮藤は、震えながら私を見ていた。怒り狂うような私に怯えながら・・・。

坂本「・・・宮藤・・・」

 私はバルクホルンから手を離し、宮藤に伸ばそうとした。だが・・・

芳佳「・・・!!」(ビクッ!!)
坂本「うっ・・・」

 宮藤は私の手が目の前に来た途端に身体を震わす。そして目には涙が流れていた・・・。

坂本「宮藤・・・」
バルクホルン「いけないな少佐・・・大切な部下を怯えさせるとは、あなたはそれでも宮藤の上司か?」
坂本「・・・黙れ、バルクホルン・・・!!」

 私は睨み殺すような眼差しをバルクホルンに突き刺す。しかし、奴はまったく微動だにしない。

バルクホルン「とにかくだ、あなたがそんな事では宮藤が怯えてしまってかわいそうだ・・・すぐに出て行ってもらおうか」
坂本「貴様・・・!!」
バルクホルン「フッ・・・ずいぶんと鋭い剣幕だな・・・なぁ芳佳、あんな少佐に連れて行かれたいか?」
坂本「汚い手で宮藤を触るな!!宮藤から手を離せ!!このゲスが!!!!」
芳佳「・・・出て行ってください」
坂本「!?」
芳佳「坂本さん・・・出て行ってください」
坂本「み、宮藤・・・?」
芳佳「そんな顔をした坂本さんなんか・・・見たくありません・・・!」
坂本「・・・!!」
バルクホルン「そういうわけだ・・・少佐、出て行ってもらおうか」
坂本「バルクホルン、貴様・・・!!」
バルクホルン「・・・フン・・・」

ガシッ!!

坂本「なっ・・・!!」
バルクホルン「私の固有魔法が怪力である事をわかっているはずだ もっとも、魔力が衰え始めた少佐ではどうにもできまい・・・」
坂本「黙れ・・・!!」

ブンッ!!ドカッ!!

坂本「ガッ・・・!!」

 私を掴んだバルクホルンはものすごい勢いで部屋から廊下に投げ捨て、壁に叩きつけられた。

バルクホルン「宮藤は私がもらい受ける、だから少佐は精々衰えていく自分の身を案ずる事だな」
坂本「くっ・・・貴様・・・!!」
バルクホルン「それでは、ゆっくり身体を休めてくれ 宮藤の、元上司よ」

バタンッ!!

坂本「くっ・・・!!バルクホルン・・・返せ!!!宮藤を・・・返せえええぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」

 私は何度もバルクホルンの部屋の前で叫んだ。宮藤を取り戻したいがために、何度も叫んだ。しかし、私の叫びは虚しく響き渡るだけだった・・・。

坂本「・・・うっ・・・くっ・・・!宮藤・・・宮藤・・・!!」

 私は泣いた。宮藤を奪われた事に悔しさを感じながら泣いた。身体を動かせないまま、宮藤の名を叫びながら・・・。




宮藤(坂本さん・・・ごめんなさい 私はもうバルクホルンさんに心を許してしまいました だから、もう坂本さんの傍にはいられません でも、坂本さん、私を失っても泣かないでください 私はいつだって坂本さんを忘れません 坂本さんが教えてくれた事を、坂本さんと過ごした日々を、一生忘れません だから、坂本さんも私を忘れないでください いつまでも、ずっと、ずっと・・・)

183 名前:アキゴジ:2011/07/16(土) 20:09:01 ID:LeldTBSE
お、終わった・・・ようやく終わらせる事ができた・・・。
あ、ちなみに今回は坂本少佐の視点で書いてみました。微妙なバッドエンドにしまいましたが・・・(汗)

184 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:41:24 ID:CgdObdj.
こんばんは〜!
まずは感想から!

>>176 mxTTnzhmさま
お〜!キスした回数が頭上に現れる…今まであったようで、無かったシステムですね!
と言うか、シュールですw
それにしてもルッキーニとエーリカ…新しい組み合わせですね!ぜひ、「ring」シリーズにてこの2人の物語が読みたいです!

>>180 アキゴジさま
なんかもっさん…怖いですね!そしてバルクホルンも怖い;;
バッドエンドですかぁ…ハッピーエンドのVerも見たいですね〜!


さて!久々の「ヘルマの発情」シリーズです!
禁断の…○オチネタですw

185 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:42:23 ID:CgdObdj.
【ヘルマの出張 inアフリカ】


「寒いとこと暑いとこ…どっちが良い?」
「へ???」

訓練途中にハルトマン中尉からこんな事を言われたであります。

「えっと…?」
「良いから。どっちが良い?」
「あ…暑いところであります」
「わかった」

その時、何がわかったのかよく知らなかったのでありますが………その結果、


***


【3日後】


「あ…暑いであります…」

飛行機がアフリカの空港に着き、タラップを使って降りた瞬間…ヨーロッパの気候と全く違う事にまず驚いた事であります!
汗を拭いても拭いても流れてくるであります、こんな事なら事前に半袖を着ておくべきだったでありますね…。

あ、この間盗まれたので新しい自転車を買いました!ヘルマ・レンナルツであります!(ビシッ













「あづい…」

どんな気候条件でも耐久出来るかどうか…という研究のため、今私はここに居るであります。
と言うか、立ってるだけで暑いとは何事でありますか!?なんかムカムカしてきた〜!!

「おつかれ様ぁ」
「あ、シャーロット軍曹!お疲れ様です」

いつの間にか私の後ろにカースルラントのシャーロット軍曹が居て、

「いやあ…ホンット、暑いねえ…」
「やはり、ここに長く居ても暑く感じるくらいですか?」
「ヘルマちゃん…めっちゃ運悪いね」
「へ???」
「だって今年一番アフリカで暑い日だと思うよ?」
「………」
「しっかも世の中は節電ムードだし…ああ!もう暑い!!!!」
「落ち着いてください;;」
「じゃっ、これから私は戦車の試験だから」
「はい!…であります」

と会話をして、シャーロット軍曹は訓練へ行ったであります。
…でもまあ、知らない寒い場所よりは良かったです。だって…だってここには…っ!!!

「マルセイユ大尉が!」

そう…マルセイユ大尉が居るであります!


***

186 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:43:18 ID:CgdObdj.


「あ…あそこでありますね…」

カメラを片手に、テントの横でコソコソしてる私…であります。
アフリカへ来る直前、ブリタニア経由でこっちへ来たのでありますが…クリスからのお願いで、マルセイユ大尉の生写真が欲しいと。

「IXY持っていくし〜…何ちゃって」

軍部からこっそりと許可をもらって、借りてきたこのライカ!
カールスラントが誇る技術で、マルセイユ大尉を激写しようかと!

「つっ、使い方よくわからないであります;;えと…まずピントを合わせないと…」

そんな作業を、テント横でコソコソしていると…

「…あ、あのぅ」
「ひいぃぃっ??!!」
「きゃっ!」

そこには、

「あの…何をなされてるんでしょうか…?」

以前、何かの文献で読んだ『扶桑人形』のような顔立ち・格好の人が後ろから声を掛けてきたであります!」

「何もしてません!何もしてません、だから何もしてませんからっ!!!!」
「あの…まだ何も;;;」
「へっ??!!」
「あのぅ…どちら様ですか??」
「はっ?!」
「受付はなされましたか?」
「うっ、受付?;;」
「不審者…じゃなさそうですが…あ、もちろんマルセイユ大尉のファンの方で…?」
「まあ一応…そんなとこになりますかね;;;」
「じゃあこちらへ」
「へ??」

…と、その『扶桑人形』のようなお方に何処かへ連れて行かれるであります。
もしかして…拷問部屋?!

「あ、あの…別に、本当に悪気はなかったんです!!」
「???」
「なんで、本国に連絡だとかそうゆうのは勘弁してください;;;」
「いや…別に連絡などはしませんが…」

そしたらですね…とあるテントの前に連れて来られたであります!

「こちらで氏名や住所をお書きください」
「は…???」
「『マルセイユ合衆国』です」
「は…はぁ??!!」

…テントの上にはデカデカと、『マルセイユ合衆国』という文字が;;;
何でありますか?!これって…;;;

「これって…?」
「マルセイユ大尉って全世界に人気があるんですよね」
「ええ、知ってます…;;」
「私の上官である加東圭子少佐がファンが大勢来るのならこうゆうのを作ろうって」
「…;;;」

うわあ…こんな事、私が言うのもアレですが…軍人は公務員ですよ?;;
色々と法律に引っ掛かる気が…;;;

「おケイさんが『細けえ事はいいんだ』って言ってました」
「あのAAみたいに?」
「はい」

187 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:43:42 ID:CgdObdj.
「…;;」
「あ、こちらに氏名と住所をお書きください」
「え、ああ…わかりました;;」

色々とツッコむべき所はありますが、言われた通り申込用紙に名前と住所を…

「むっ!?」

なんで収入を書く欄が…?;;

「あの…書きました…」
「確かに受け取りました。入場料が75エジプトポンドです」
「えっ?!入場料…取るんでありますかぁ??!!」
「ええ、まあ…」
「え〜…っ;;;」
「あ、ドルでもマルクでも大丈夫ですよ?」

ちょちょちょ!扶桑円にして1000円って…高くないでありますかぁ??!!
…でもまあせっかく来たし。クリスへのお土産にも…まっ、しょうがないでありますねぇ…;;;

「わかりました、じゃあエジプトポンドで」
「かしこまりました」
「あ、一応領収書ください。『ウルスラ・ハルトマン』宛てで」
「はい」
「でも運良かったですね」
「はい?」

おつりを受け取ると、先ほどからガイド役になってる『扶桑人形』のようなお方がニッコリと。

「今の時間ならマルセイユ大尉、テントに居るかもしれないですよ!」
「えええ…マルセイユ大尉のプライベートを公開してるんでありますかぁ??!!」
「はい。機嫌が良ければ一緒に記念撮影も」
「うわあ…;;ディズニーランドのミッキーの家じゃあるまいし…」
「では、お楽しみください」
「今軽くスルーしたでありますよね?!」


***


入るとすぐに、豪華なテントが。

「…『マルセイユの部屋』って…そのまんま;;」

でもまあさすが、『アフリカの星』!
やはり優遇されてますねえ!

「ごっ、ごめんくださ〜い…」
「ん?」
「あ…!」

ちょちょちょちょちょ!!!!
めっ、目の前に…マルセイユ大尉が!!!!

ほら、よくディズニーのミッキーの家へ入る前は
『はあ?なんでそんなのでテンション上がんの?』
って言うけれど、実際にミッキーと会ったら真っ先に
『ミッキー!!!!』
って叫んだり抱きつく人が居るじゃないですかぁ?それと同じ原理です!

「マルセイユ大尉ぃ〜!!!!」
「おおっ、今日もまた濃いのが来たなあ」
「会いたかったでありますぅ〜、ぜひ一緒に写真を!」
「おー、良いぞ!こっちへ来い!」
「はい!…でありますっ!!!」

先ほどの『扶桑人形』のようなガイドの方にライカを渡して、

「それじゃあ行きますよ〜、はいチーズ!」

カシャッ!!

「あ、ありがとうございます!」

188 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:44:03 ID:CgdObdj.
「こんなので良いのか?」
「はい!あと、サインを…っ!!」
「それは無理だ」
「…へ?」
「無理だ」
「…そこを何とか;;」
「無理」
「…何とかゴリ押しで;;」
「無理」
「………」

「マルセイユ大尉!」
「お、どうした?」

すると、さっきまで中にいて一旦外に出たと思った『扶桑人形』のお方が急いでテントの中へ入ってきたであります!
緊急事態でありますかね?!

「ネウロイです!小型ネウロイが3機確認されました」
「よし、わかった。ケイは?」
「既に無線などの調整をしています」
「急いで準備するぞ!…そこの子猫ちゃん!」
「わっ、私でありますか?!」
「ああ。ちょっと…厄介な客人が来た、ちょっとだけ席を外すぞ!」

走ってテントから出て行く大尉であります…

「あの…私も一応、ウィッチであります…;;;」

…でもこうやって地上から戦いを見てる場合じゃありません!


***


「すいません、ネウロイが確認されたって本当ですか?」
「ええ、まあ」

私はすぐさま実験場所へ戻り、

「じゃあ今すぐ私のジェットストライカーを」
「でもしかし!」
「私はウィッチであります!…このまま見過ごすわけにもいけません!」

きっ…決まったぁ!いやあ、カッコ良いなあ私ってば…。

「…わかりました。総員に告ぐ、今から出撃準備!」

部隊のリーダーがみんなを呼び、出撃準備をし出したであります。

10分もかからないうちに…、

「お気をつけて」

189 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:44:20 ID:CgdObdj.
「はい!………シュバルツェカッツェ2番、発進するであります!!」

相変わらず暑いですが、出撃し…すぐさま大尉たちの戦っている場所へ!



「っ…!!クソッ!!」

どうやら苦戦していたようで…あ!大尉!後ろ後ろ!!
ネウロイの流れ弾が…!!

「わ、私の出番でありますよ〜!!!!」

手に持っていた銃で………っ!


ターンッ!!!


命中!

「お、お前は…?」
「あ…先ほどはどうも」
「お前、ウィッチだったのか…?」

どうやらマルセイユ大尉は鳩が豆鉄砲を喰らった様子であります…

「なっ、なかなかの腕前だな…お前」
「はいっ!」
「名前」
「へ?」
「名前!教えろ!」
「はいっ!!第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属のヘルマ・レンナルツ曹長であります!」


***

190 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/16(土) 22:44:40 ID:CgdObdj.


「れぇんなるつそうちょうでぇ…ありますぅ…」
「お客様…お客様?」
「からあげにはぁ…れもんをかけるたいぷでぇ…ありますぅ…」
「お客様!あの…」
「…っ!」

え…!?ここどこでありますか…!?

「え…ここ、どこでありますか?!」
「当機は無事アフリカへ着陸しました」
「ひっ…飛行機…?」
「はい。ぐっすりとお休みになられたようで」

周りを見渡すと、すっかり乗客の居なくなった機内。
えぇぇ…まさかの、このシリーズ作品始まって以来の夢オチぃ!?
だったらミーナ中佐との出来事も…夢オチに…;;;

「…申し訳ないであります。今すぐ降りる準備を」
「この度はご搭乗ありがとうございました」

CAさんを尻目に、急いでタラップを駆け下りると…

「ゲッ!?なんでありますか…!!」

『歓迎!ヘルマ・レンナルツ曹長』と書いた垂れ幕を持っている2人組が…;;
その垂れ幕の方へ行くと、右側の人が話しかけてきたであります。

「ヘルマ・レンナルツ曹長ですか?」
「いかにも私が…そうであります」
「私、カールスラント陸軍のシャーロット軍曹です。お迎えにあがりました」
「どっ、どうもであります!!!」

と、出迎えてくれたシャーロット軍曹と握手をしたであります。
むっ!?ニコニコと見ている左の人…どっかで見たような…

「あ…あっ!!」
「っ?!ど、どうかなさいましたか?!」
「アナタ!『マルセイユ合衆国』の!?」
「『マルセイユ合衆国』?えと…扶桑の稲垣真美ですがぁ…」

思い出した!『マルセイユ合衆国』のガイド役だった、あの『扶桑人形』のお方であります!!

「知り合い…ですか?」
「いえ…初対面です;;」
「…もしかして…あれは、予知夢?!」




そしてその後無事に7日間の、砂漠での実験を終了した私。
残念ながらもちろん『マルセイユ合衆国』はなく、そもそもマルセイユ大尉とは会えませんでしたが…

「えと…大尉の写真付きポストカード、プロマイド写真、缶バッチ、タオル、Tシャツ、クッキー、大尉プロデュースのCDに漬物…」

基地周辺のお土産屋で、クリスへのお土産に最適なグッズを購入。
やはり、お土産になるくらい有名なお方だから…私はまだまだ会えないのでありますかねえ…?

「ふう…」

そんな、ため息をついて本国へ帰った私であります…。




【おわれ】

191 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/17(日) 22:27:55 ID:WTaQN8lI
>>183 アキゴジ様
GJです。なんかある意味で壮絶なバトルですね……いわゆる修羅場的な。

>>190 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJ! ヘルマの夢オチワロタw でもアフリカ部隊は元々ああ言うノリですからね……。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
資料集を見ていて思い付いたネタをひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

192 名前:like no other 01/02:2011/07/17(日) 22:28:51 ID:WTaQN8lI
「こーらーハルトマン!」
 今日も食卓で怒号が飛ぶ。行く手を遮るトゥルーデの手をひらりひらりとかわし、隙を突いて彼女の皿から最後の芋を奪うと
ぽいと口に放り込み、鼻歌混じりに食堂から出て行くエーリカ。
 怒りも虚しく結果的に食事を分捕られただけに終わったトゥルーデは、はあ、と溜め息を付いて席に戻った。
「バルクホルンさん、せめてお味噌汁でも」
 気を遣う芳佳に、ひとつ頷くトゥルーデ。
「すまないな宮藤。軽く頼む」
「はい」
 半分程に注がれた扶桑の味噌スープをぐいと飲むと、トゥルーデは立ち上がった。
「何処へ行くの?」
 ミーナの問い掛けに、ぶっきらぼうに答えるトゥルーデ。
「訓練だ」
「あら、貴方今日は非番でしょ?」
「非番だからこそ、技術に磨きを掛けないと」
「それにしては、さっきハルトマンにやられっぱなしだったけどな」
「ウジャー」
 シャーリーとルッキーニに笑われ、尚更腹が立ったのか、トゥルーデはぎろりと一睨みすると、つかつかと食堂から出て行った。
「相変わらずだねえ、堅物は」
 肩をすくめておどけてみせる楽天的リベリアン。
「まあ、今日はハルトマンが訓練でもあるからな。ちょうど相手には良いんじゃないか?」
「そっか。ハルトマン、今日訓練だったっけ。まあ確かに彼女に立ち向かえるのは……」
 スプーンをくわえたまま、天井を見、後ろ手に腕を組むシャーリー。ルッキーニも同じ格好をするも仰け反りすぎて椅子事転倒する。
「おぉい、大丈夫かルッキーニ」
「頭打ったぁ。痛ぁい……」
「馬鹿だなあ。ほら、痛いの痛いのとんでけーってな」
「ありがとシャーリー」
「全く。お前達も、二人の訓練を見ておくと良い。色々参考になるんじゃないか?」
 美緒がたしなめつつ二人に提案する。
「いや、あの二人は……」
 言い淀むシャーリー。
 どうした? と聞き返す美緒に、シャーリーは半ば諦めが混じる笑いを見せて、言った。
「もうね、何か違うんですよ」

「いっただきっ!」
 エーリカの見越し射撃もトゥルーデにはお見通しだったのか、軽くスライドされて避けられる。
 代わりに飛んで来たのは両腕に抱えられたMG42の、雨あられと降り注ぐ弾丸。勿論模擬演習用の銃、そしてペイント弾だから死にはしない。
 だが鬼人と化した形相でひたひたと背後に迫るトゥルーデを見、エーリカはやれやれと首を振って見せた。
「どうしたハルトマン、まだまだだぞ!」
「トゥルーデ、本気になり過ぎ。私がカバーするポジション、がら空きじゃん」
「なっ! そんな訳……」
「今日は一対一でやってるから無理だけど、私がもう一人居たら今ので確実にトゥルーデ仕留めてるよ」
「それはハルトマンも同じだぞ!」
 言われて、やっぱり、と気付くエーリカ。
 怒ってるのか何なのか、妙に突っかかってくるトゥルーデを前に考えあぐねる。
 でも、トゥルーデに最初に(朝食の席で)仕掛けたのは私だっけ、と気付くエーリカ。理由は自分にも分からない。
 とりあえず、迫るトゥルーデをロー・ヨー・ヨーでかわすとハイGバレルロールで追い掛けながら仕掛ける。
 突き放されヘッドオンになりかけたところでスライスバックで眼下に逃げる。なおも追いすがるトゥルーデ。

「なんか二人共、随分と熱が入っているな」
 司令所から様子を見る美緒が、魔眼で時折二人の様子を眺め、呟く。
「あの子達、何かの切欠で火が付いたのかもね」
 同じく、様子を見るミーナは心配そうだ。
「訓練だからと、かえってやり過ぎて問題を起こされても困るな……おっと、今のは危ない」
「そうね。そろそろね……バルクホルン大尉、ハルトマン中尉、今日の模擬戦は終了、そこまでです。帰投しなさい」
 無線越しに二人に伝える。特に威圧感は出さなかったつもりだったのだが、二人は突然戦意を失ったかの様に、
大人しく滑走路に着陸し、ハンガーに向かった。
「あら珍しい。もうちょっと続くかと思ったのだけど」
「ミーナのその言い方じゃなあ」
 笑う美緒に、何か変だった? と聞くミーナ。
「流石は501の“母”だな。さしずめ私は……」
「もう、美緒ったら茶化さないで」
 苦笑せざるを得ないミーナだった。

193 名前:like no other 02/02:2011/07/17(日) 22:29:21 ID:WTaQN8lI
 帰還するなり手短に報告を済ませ、気分転換代わりに揃ってシャワーを浴びるトゥルーデとエーリカ。
 結局二人は互いに被弾無し、“戦果”も無しと言う訓練結果に終わった。
 二人の間には沈黙が漂う。
 シャワーの勢いの良い水音だけが辺りに響く。石壁に弾かれる飛沫もまた、訓練で火照った身体をクールダウンさせるにはちょうど良い。
 かいた汗を流すべく、石けんで身体を洗う。
 ぽつりと、トゥルーデが言う。
「手を抜いたのか」
 聞き逃さなかったエーリカは、即座に答えた。
「まさか」
「じゃあさっきの機動は何だ。本来なら」
「やめようよ、トゥルーデ」
「何っ?」
「今更泡まみれのままで、もう一度空に昇って決着でも付ける気?」
「そ、それは流石に」
「じゃあ、もうやめようよ」
 エーリカに二度止められ、言いかけた事を呑み込む。
 トゥルーデは少しうつむき、派手に飛び散る水飛沫も構わず、髪を洗う。
 突如として、背中に小さな膨らみを感じる。素肌と素肌が、石けんという極薄い皮膜ひとつ隔てて密着する。
 鼓動が、聞こえる。
「今朝はごめんね」
 そっと呟かれたその言葉。そんな事でこの私が……、との思いとは裏腹に、しっかりと彼女を正面から抱きしめている自分に気付く。
「もう良い。もう良いんだ、エーリカ」
「本当?」
 ふっと笑みをこぼしたトゥルーデ。
「私もつくづく大人げないと思う」
「何でも本気。それがトゥルーデの良い所」
「悪い所でもあるんじゃないのか?」
「自覚してるならよ〜し」
「エラソウに」
「トゥルーデにだけだもんね」
「まったく……」
 絶え間なく流れるシャワーの中、そっと抱き寄せ、唇を重ねる。
 石けんもあらかた流れ落ち、二人の髪はべったりと張り付いている。
 素肌の触れ合い。ぬるい温度のシャワーの中で、お互いの鼓動を感じ、もう一度、気持ちを確かめ合う。
「今度は、どうする?」
 悪戯っぽく笑ったエーリカに、トゥルーデは答えた。
「言うまでもないな」
 二人は目を合わせ、笑った。そしてもう一度、キスをした。

 唯一無二の存在。
 お互いにとっての、愛しの人を表現する言葉。
 良きライバルであり、喧嘩友達でもあり、背中を任せられる仲間、そして……。

end

194 名前:名無しさん:2011/07/17(日) 22:30:20 ID:WTaQN8lI
以上です。
お風呂場(シャワー)でいちゃいちゃ、
と言うのは今後も考えてみたいと思います。

ではまた〜。

195 名前:名無しさん:2011/07/21(木) 23:24:17 ID:62igiZdY
はじめまして。
初めてスト魔女SSを書いてみたので投稿させて頂きたく、
1レスほどお借りします。

エイラ&芳佳であまり百合ではないかもしれませんが、
読んでいただけると幸いです。

196 名前:未来の先にあるもの:2011/07/21(木) 23:25:46 ID:62igiZdY
「エイラさん、エイラさんってすごいですよねー」
 いつもの間延びしたような口調で唐突にそんなことを言い出した宮藤に対して私は困惑しつつもいつもの横柄な態度でもって応じた。
「んー、なに言ってんダ、オマエ。それだけ言われてもなんのことかさっぱりダゾ」
 あぁ、そっか、ごめんなさい、と少しだけ顔を赤らめた宮藤に私は毎度の如く溜息を吐く。こいつはどこまでが本気なんだろうか。真面目なのは間違いないんだけど。
「で、私のどこがなんだって? そんなことよりもサーニャのすごいところをもっとダナ……」
「エイラさんの未来視の固有魔法ですよ。あれ、ホントにすごいなぁ、って」
 こいつ、サーニャのことは全力でスルーかよ。あとでお仕置きダカンナ。
 と、頭の中で愚痴を零すのは宮藤の曇りなき真っ直ぐな視線に少しの気恥ずかしさを感じていたからだ。こいつはお世辞でもなくちょっとした世間話の種にでもなく、本心からそう言っている。そういう奴だって知っていても、私は動揺する心を隠せていないだろう。私もまたそういう奴だから、嬉しさをほんの一握りだけ滲ませたしかめっ面で宮藤を見やった。
「べ、別にそんなんじゃネーヨ。魔法は人それぞれなんだし、ミヤフジだって治癒魔法とかシールドとか、誰にも負けない魔法が」
 そこでまたこいつも慌てて、いやいや私なんてまだまだで、って言うのだろう。と思ったところで予想外の反応が返ってきた。
「いえ、そういうことじゃなくって……。その、なんて言ったらいいのか自分でもよくわからないんですけど。エイラさんには、その魔法を使うときに、何が視えてるんですか?」
 期待と不安と好奇心と猜疑心と、いろんな感情が入り混じった瞳に射抜かれた私は言葉を失った。
 たまに宮藤はこういう表情をする。言ってしまえば何を考えているのか判らない表情だ。そして宮藤は私の解に何を求めているのだろうか。
 未来視って言っても別に明日や明後日のことが判るわけじゃねーぞ、とか、訓練したってオマエが身につけられる代物じゃねーんだぞ、とか、そういう当たり障りの無いものではないのだろう。
 しばらく逡巡してから、私が出した解は否定の言葉だった。
「別に私は未来を視ているわけじゃないんダゾ」
 それを受け取って宮藤はどう反応したらよいものかというように口をポカーンと開けた状態で固まった。
「あの、えと、それはどういう……」
「だから、私が視るのは未来じゃない。逆に言えば、無数の未来が視えている、ってとこダナ」
 さっきまでの無表情とは打って変わって、あからさまに頭上にクエスチョンマークを展開させている宮藤はほっておいて私は言葉を続ける。
「私が視るのは決まり切った未来なんかじゃないし、可能性の一つや二つなんかでもない。そんなハッキリしたもんじゃないんダ。ミヤフジ、オマエが何を考えてんのかは知んないけどサ、未来に正解なんかないんダ。不正解もない。いや、もっと言えば不正解しかない。だから私は、最悪の結果にならないように全力で対処してるだけなんだ。それで、何が視えてるか、だったっけ? 言葉にできるもんじゃないんだけどナ、強いて言うなら小さな結晶みたいなもんかな。水晶みたいに透き通った小さな小さなカケラ。それを通して私は視るんだ。無数に分散していく光をナ。そんでそのカケラに辿り着いたらな、ソレは粉々に砕けてハジけるんダ。それじゃ未来は視えないじゃないかって? そうだ、そうなんだよ。未来はこの掌の中でな、一度壊れるんだ。そして、壊れた未来を再構成して、私の思ったように描くんだ。私は未来に沿って動いているわけじゃない、未来は私が決めているんダ」
 少しばかり長くなってしまったがとりあえず言いたいことを言いたいだけ吐き出した。相変わらず宮藤は解せぬといった表情を崩していないが、何か思うところもあるのだろう、ぶつぶつと独りごちてそしてまた私に向き直った。
「えっと、じゃあ、エイラさんがネウロイのビームとかを全部避けれるのは……」
「そう難しく考えんな。たいしたことじゃない。ただ他の人より、そういう感覚が鋭くて頭の回転が速いだけサ」
 ナンテコトナイッテ、と戯けてみせた私に対して宮藤は、やっぱりすごいじゃないですかー、とまた照れるようなことを言い出した。そして私はまた適当にあしらっての繰り返し。結局、宮藤の問いの真意は解らなかったが、私もいい加減な解答をしたんだから何も言わなかった。
 未来は視えるもんじゃないゾ、自分で創り出せばいいんダナ。

197 名前:アキゴジ:2011/07/22(金) 21:24:42 ID:HQQQ.cn.
>Hwd8/SPp様
ヘルマ曹長、まさかの夢オチwドンマイでありますw
ハッピーエンドVerですか・・・すいません無理です。さすがに芳佳ちゃんが妹に堕ちてしまった状態ではさすがにハッピーエンドは難しいです・・・。

>mxTTnzhm様
お風呂でいちゃいちゃ・・・ゴクリ、期待していますw
まあ、自分の部下があぁされてしまえば、そりゃ坂本少佐も怒って修羅場状態でしょうしね・・・もしミーナ中佐まで加わってしまったらとんでもない事に・・・(汗)

>名無し様
エイ芳キタ−!何というか、お互いを認め合っているって感じが良かったです!

えぇ〜どうもアキゴジです。「いやす なおす ぷにぷにする」をプレイしてたら思いついたネタです。とりあえずどうぞ!

198 名前:お姉ちゃんって呼んで!:2011/07/22(金) 21:59:57 ID:HQQQ.cn.
 ここは501統合戦闘航空団ストライクウィッチーズの基地。何やら台所が賑やかです。中にいるのはバルクホルン大尉、ハルトマン中尉、シャーリー大尉のようです。

ハルトマン「へぇ〜トゥルーデ、宮藤に“お姉ちゃん”って言われてそんな反応してたんだ・・・」(ニヤニヤ)
シャーリー「そうなんだよ、そしたらあいつの嬉しそうな顔ときたらさ・・・!プッ・・・ククク・・・」
バルクホルン「お、おい!その話はやめろと何度言ったらわかるんだ!」
ハルトマン「そう言って、本当はすごく嬉しいんでしょ、トゥルーデ?」
バルクホルン「べ、別に嬉しくなどない!ただ宮藤が強引に言ってきただけで・・・」
シャーリー「ふ〜ん・・・そう思ってるんだ・・・それを聞いたら、宮藤きっと泣いちゃうかもしれないぞ?」
バルクホルン「なっ・・・!?」
ハルトマン「だよね〜せっかくトゥルーデを励ましてあげようと思ってくれてる宮藤の純粋な気持ちを、トゥルーデは踏みにじっちゃうつもりなんだね・・・」
バルクホルン「ち、違うぞ!私は決して宮藤の気持ちをわかっていないわけではない!」
シャーリー「でも今の発言からして、そういう風には聞こえなかったよな?」
ハルトマン「うん、明らかにそういう風には聞こえない」
バルクホルン「くっ・・・貴様ら・・・!」

ガチャッ

芳佳「あの〜どうかしたんですか?」
バルクホルン「なっ!み、宮藤!?」
芳佳「へ?バルクホルンさん、何ですか?」
バルクホルン「い、いや!なんでもない!」
ハルトマン「お、宮藤だ!ちょうど良かった!実はさ・・・」
バルクホルン「おい!ハルトマン!言うな!絶対に言うな!」
ハルトマン「え〜?何で〜?言っても良いじゃ〜ん」
バルクホルン「ダメだ!絶対にダメだ!!」
シャーリー「まぁまぁ、かわいい妹の前だからってそうムキになるなよ、お姉ちゃん♪」
バルクホルン「黙れリベリアン!!貴様になど言われたくもないわ!!」
シャーリー「じゃあ宮藤に言われたらどうなのさ?」
バルクホルン「なっ・・・!?」
芳佳「え・・・?あぁ、ひょっとしてバルクホルンさん」
バルクホルン「ま、待て宮藤!言うな!言わないでくれ!!(本当は言われたいがこいつらの前では・・・!!)」
芳佳「お姉ちゃん♪」
バルクホルン「!!!!」

カァ――――・・・

ハルトマン「アハハハハハハハ!!トゥルーデ、顔真っ赤だ〜!!」
シャーリー「ダ−ハッハッハッハッハッハッ!!ダ、ダメだ、息が・・・ククククク・・・!」
バルクホルン「くっ・・・貴様ら〜〜〜!!!!」

199 名前:お姉ちゃんって呼んで!2:2011/07/22(金) 22:51:17 ID:HQQQ.cn.
ハルトマン「わっ!トゥルーデが怒った!」
シャーリー「宮藤!もう一回言ってやれ!」
芳佳「へ?じゃあ・・・お姉ちゃん!怒っちゃやだよ!」
バルクホルン「うぐっ・・・!」
シャーリー「お〜、止まった」
ハルトマン「トゥルーデはホントにクリスに弱いな〜、あ、宮藤に弱いって言った方が正しいかな?」
シャーリー「アッハハハハハハハハ!!そりゃ言えてるな!アハハハハハハ!!」
バルクホルン「くっ・・・貴様らさっきから調子に乗りおって・・・!」
芳佳「でもバルクホルンさん、そんなに困る事でもないんじゃないですか?」
バルクホルン「お前は困らないかもしれないが、私は困るんだ!!」
芳佳「そう、ですか・・・」
バルクホルン「うっ・・・なんだ宮藤・・・そんな、悲しむ事はないだろう?」
芳佳「だって・・・バルクホルンさんがクリスさんに会えなくて寂しそうだから、私、言ってあげてるのに・・・」
バルクホルン「そ、それは・・・」
芳佳「うっ・・・グスッ・・・」
バルクホルン「なっ!?お、おい!宮藤!?」
ハルトマン「あ〜あ〜、トゥルーデが宮藤泣かしちゃった」
シャーリー「ハルトマンと同じカールスラントのエースのくせに、妹にそっくりの女の子を泣かせちゃうなんて、やっぱりカタブツはカタブツだな〜」
バルクホルン「も、元はと言えば貴様らが調子に乗ったのが悪いのだろうが!」
ハルトマン「でも宮藤泣かしたのはトゥルーデじゃん」
バルクホルン「うっ・・・!」
芳佳「うっ・・・あうぅ・・・」
シャーリー「お〜、よしよし宮藤、泣くな泣くな、良い子だから笑ってくれよ、な?」
バルクホルン「おいリベリアン!どさくさにまぎれて宮藤に抱きつくな!」
シャーリー「うっさいな〜、宮藤を泣かした本人にとやかく言われる筋合いは無いんだよ、カタブツは黙ってろよ」
バルクホルン「くっ・・・さっきからカタブツカタブツと・・・!」
シャーリー「じゃあ、お前から宮藤に謝れよ」
バルクホルン「い、言われなくてもそのつもりだ!」
シャーリー「だってさ、ほら、宮藤」
芳佳「はい・・・」
バルクホルン「み、宮藤・・・その・・・すまない・・・別に私は嬉しくないわけではないんだ」
芳佳「・・・本当ですか?」
バルクホルン「ほ、本当だ、ただ・・・他人の前ではあまりやらないでほしいんだ・・・」
芳佳「・・・はい!」
ハルトマン(お、笑ってくれた)
バルクホルン「・・・!!(ダメだ・・・やはりクリスに似ている・・・!)」
ハルトマン「うんうん、一件落着、だね」
シャーリー「みたいだな」
ハルトマン「それじゃあ・・・宮藤」
芳佳「はい、何ですか?ハルトマンさん」
ハルトマン「トゥルーデが人前で言われるのは恥ずかしいみたいだからさ・・・私の事お姉ちゃんって呼んでよ!」
バルクホルン「なっ!?」
芳佳「え〜?何でそうなるんですか?」
ハルトマン「何だよ〜?私だって妹いるんだよ〜?」
芳佳「それは知ってますけど、ウルスラさんはウィッチだし、大丈夫じゃないですか?」
ハルトマン「心外だな〜、私はあの子がウィッチだから心配なんだよ だから宮藤、言ってよ♪私の事お姉ちゃんって♪」
芳佳「でもハルトマンさんってあんまり心配性じゃなさそうですし・・・」
ハルトマン「そんな事無いよ〜 これでも誰よりも心配性なんだよ〜?ね〜言ってよ〜宮藤〜」
芳佳「い、言えないです・・・」
ハルトマン「え〜?何でだよ〜?」

200 名前:お姉ちゃんって呼んで!3:2011/07/23(土) 00:13:52 ID:HBC3wHnI
芳佳「バルクホルンさんじゃないと言えません・・・」
バルクホルン(み、宮藤・・・!)ジ〜ン
ハルトマン「む〜、トゥルーデは良くて、何で私じゃダメなんだよ〜?」
芳佳「そんな膨れっ面になっても困ります・・・」
ハルトマン「む〜・・・宮藤のケチ」
芳佳「ケチって言われても・・・」
シャーリー「アハハハハハ、まぁ、ハルトマンってお姉ちゃんって感じはあんまりしないもんな〜」
ハルトマン「む〜、シャーリーまでそういう事を・・・」
シャーリー「ならさ宮藤、私に言ってくれよ、お姉ちゃんってさ」
芳佳「え?でもシャーリーさんならルッキーニちゃんに言ってもらえば良いじゃないですか」
シャーリー「今は宮藤に言ってほしいんだよ、な?良いだろ?」
芳佳「う〜・・・理由が無いから言えません」
シャーリー「何だよ〜?強情だなぁ宮藤は」
芳佳「そ、そう言われても・・・」
バルクホルン「いい加減にしろ、二人とも 宮藤が困ってるだろ」
ハルトマン「邪魔しないでよトゥルーデ、取り込み中なんだからさ〜」
シャーリー「そうだぞ、大体、お前だけお姉ちゃん呼ばわりされるのなんてちょっとずるいぞ」
バルクホルン「宮藤が言えないと困ってるんだ いちいちそういう事を気にする理由があるのか?」
ハルトマン「トゥルーデは人前で言われるのが恥ずかしいんでしょ?私達は別に気にしないもん」
バルクホルン「宮藤は言えないと困っているんだ かわいそうだと思わないのか?」
ハルトマン「ふっふ〜ん、なら、私達のどっちかに言ってくれるまでやめないもんね〜♪」
バルクホルン「あのな・・・」

ガチャッ

ミーナ「あら?どうしたのみんな?」
坂本「ずいぶんと賑やかだな、何かあったのか?」
シャーリー「お、坂本少佐にミーナ中佐」
ハルトマン「ふふふ・・・実はね・・・」

説明中・・・

坂本「ほお・・・そうだったのか、バルクホルンが宮藤に・・・」
シャーリー「そうそう、もうゆでダコみたいに顔真っ赤にしてさ・・・」
ミーナ「でも優しいわね、宮藤さんは いつもクリスを心配しているトゥルーデのためにそんな事をしてくれるなんて」

ナデナデ・・・

芳佳「えへへ、ありがとうございます」
バルクホルン(ミーナ・・・!宮藤の頭を撫でるとは・・・!私なんか一度もやった事ないのに!)
ハルトマン「でもさ〜、トゥルーデだけ良いなんてずるいよ〜」
バルクホルン「どうでもいいだろう、そんな事ぐらい」
ハルトマン「どうでもよくないよ〜!」
シャーリー「とにかく、宮藤が私達の内の誰かに言ってくれるまではやめるつもりはない!あ、カタブツは抜きな」
バルクホルン「何故私は抜きなんだ!?」
シャーリー「だってお前さっき言われてたじゃん」
ハルトマン「だからトゥルーデは抜きだよ〜♪」
バルクホルン「ふ、ふざけるな!」

201 名前:お姉ちゃんって呼んで!4:2011/07/23(土) 01:03:16 ID:HBC3wHnI
坂本「まぁ落ち着けバルクホルン、とにかく宮藤が言ってくれればそれで済むのだろう?」
ハルトマン「うん、そうだよ」
芳佳(なんだか疲れてきちゃったな〜・・・それにさっきから私、振り回されっぱなしだよ・・・)
ミーナ「宮藤さん、大丈夫?何だか疲れているみたいだけど・・・」
芳佳「あ、いえ、大丈夫です、気にしないでください」
坂本「宮藤、ハルトマンとシャーリーには言えないのだろう?なら、私はどうだ?」
芳佳「え?坂本さんですか?」
坂本「あぁ」
芳佳「う〜ん・・・」
ハルトマン(ねえねえ、坂本少佐ならどうなんだろうね?宮藤は)
シャーリー(う〜ん・・・あの宮藤の様子からして・・・)
芳佳「・・・ごめんなさい坂本さん、無理です・・・」
坂本「む・・・そうか・・・」
シャーリー(やっぱり・・・)
ハルトマン(ダメか・・・)
ミーナ「この際、宮藤さんにお姉さんって呼んでいいのはトゥルーデ限定でも良いんじゃないかしら?その方が・・・」
ハルトマン「ちょっと待った!」
ミーナ「どうかしたの?エーリカ」
ハルトマン「まだミーナが終わってないよ」
ミーナ「え?私は・・・」
シャーリー「確かに、少佐もやったんだし、中佐だけやらずに終わるのは納得いかないね」
坂本「うむ、そこは私も同感だな」
ミーナ「み、美緒まで・・・」
ハルトマン「とにかく!ほら、ミーナ!宮藤の前に立って!」
ミーナ「きゃっ!ちょ、ちょっとエーリカ!」
芳佳(あぁ・・・ミーナ中佐まで・・・どうしようかな・・・)
ハルトマン「さ、宮藤!言えるか言えないか、はっきり答えて!」
シャーリー「さすがに宮藤も疲れてきてるだろうし、中佐で最後にしてもらおうか」
芳佳(・・・もういいや)
ミーナ「あの、宮藤さん・・・」
芳佳「・・・お・・・」
バルクホルン(!!)
ハルトマン(おっ!?)
シャーリー(宮藤が初めて・・・!)
坂本(む・・・)
芳佳「お・・・お・・・」
ミーナ「・・・」
芳佳「お、おね・・・」
バルクホルン(み、宮藤!言うな!言ったらダメだ!!)
シャーリー(言うのか!?言うのか!?)
ハルトマン(言え!言っちゃえ宮藤!)
坂本(・・・)
芳佳「お・・・お・・・お・・・」
ミーナ(宮藤さん、顔が真っ赤に・・・無理して言う必要は・・・)
芳佳「・・・お・・・ん」
バルクホルン(!?)
ハルトマン(今言った!)
シャーリー(宮藤!聞こえるように!聞こえるように言ってくれ!)
坂本(・・・まさか・・・)
芳佳「・・・・・・お母・・・・・・さん」
ミーナ「!」
ハルトマン&シャーリー「・・・え?」
坂本(やはりな・・・)
バルクホルン(なん・・・だと?)
芳佳「お、お母・・・さん」
ハルトマン&シャーリー(また言った!)
ミーナ「宮藤さん・・・」
芳佳「あ・・・あ、あの、ミーナ中佐・・・」
ミーナ「何?」
芳佳「ご・・・ご、ごめんなさい!」

ガチャッ!タッタッタッタッタッタ・・・

ハルトマン「あ!宮藤!待ってよ!」
シャーリー「お〜い!宮藤〜!!」
バルクホルン「あ、こら!待て!二人とも!」

ガチャッ!ダダダダダダダダダダダ・・・

坂本「行ってしまったな・・・」
ミーナ「・・・」
坂本「・・・ミーナ?」
ミーナ「お母さん、かぁ・・・ウフフ」
坂本(宮藤・・・私ではダメだったのか?)

 台所に残ったのは、芳佳ちゃんにお姉ちゃんと言われず残念そうに思う坂本少佐と、お母さんと言われて嬉しそうに笑顔を浮かべるミーナ中佐でありました。

終わり

202 名前:アキゴジ:2011/07/23(土) 01:15:45 ID:HBC3wHnI
はい、以上です。前よりもスムーズにできたかな?と思います(少佐の扱いが前回同様なのは勘弁してくだせえ・・・)

203 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/23(土) 23:46:57 ID:Gm31Zd4I
>名無し様
王道のエイラーニャ小説ですが、王道とあってハードルは高いハズ…!!けど、そのハードルをいとも簡単に乗り越えられてる感じが!!
読んでて、とても癒されました〜!

>アキゴジさま
前作と違い、楽な気分で読めました!

芳佳「へ?じゃあ・・・お姉ちゃん!怒っちゃやだよ!」
バルクホルン「うぐっ・・・!」
シャーリー「お〜、止まった」

のやりとりが一番好きですw


さて、この間生放送のラジオを聞いてたら一般のリスナーさんに電話をする…というコーナーがあって、ガチガチに緊張されてた方が居たんですね。
それを思い出し、深夜に突発的に書いてみました!

204 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/23(土) 23:48:15 ID:Gm31Zd4I
【Belastung】

「…ではみんな、良い…?」

とても風の強い深夜…基地の窓はガタガタと音を立てている。

そんな中、501部隊の皆は基地の談話スペースに集まっていた…。
一番前にミーナが皆に声をかける。次に、

「覚悟して聞くようにな」
坂本が気合を入れる。

「リーネちゃん…」
「芳佳ちゃん…ドキドキが止まらないの」
「私も…」

「シャーリー…この空気、やだよお」
「がーまんだ、ルッキーニ」
「シャーリーも怖いの?」
「ああ、ものすごく怖いさ」

「サーニャ…怖いノカ?」
「エイラ、私…もう…」
「大丈夫だ、サーニャ…大尉は…きっとやってくれるサ」

「坂本少佐…」
「大丈夫、安心しろペリーヌ。バルクホルンなら…成し遂げてくれるに違いない!」
「そ、そうですわよね!大尉がヘマだなんて…!!」

談話室は、とても緊張した空気が流れる………。

「フラウ」
「………」
「フラウ?」
「…ミーナ、私…心配だよ…だってトゥルーデが…」
「…っ!!こんな、隊長の私が言うのもなんだけど…私も心配だわ」

ミーナは、隣で小刻みに震えていたエーリカを優しく抱きしめる...

「でも…仕方ないわ、あの娘が決めたことだもの…」
「でっ、でも…!!他のメンバーでも!!」
「トゥルーデが、断固として自分がやるって言ってたんだもの…私だって!代われるものだったら、代わってあげたかったわよ!!」
「ミーナ!落ち着け!」

感情的になったミーナを、坂本が止めた

「私だって…心配してるんだ」
「美緒も?」
「ああ…」

彼女が珍しく自信無さげな表情をし、気付いたら数分もの間沈黙の空気が流れる………。







「トゥルーデ…」
エーリカがボソッと名を呼ぶ。

「ねえトゥルーデ…なんで…無茶するの…?」
「フラウ、さっきも言った通りトゥルーデが決めた事なんだから」
「神様!お願い、何も…トラブルが起こらないようにしてください!」

そこにいた全員は口には出さないものの、エーリカと想いは一緒だった…。

そして、運命の時間がやって来た。

「おーい、そろそろ良いか?」
シャーリーが無理やり元気を出し、一番前に出る。
すると布を被った何やらを引き出してくるのであった

「ええ、お願いしますシャーリーさん」
「んじゃ、ほいっと」

布の中から出てきたのは…!?


***

205 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/07/23(土) 23:48:50 ID:Gm31Zd4I


ピッピッピッポーン♪

「こんばんは、ロマーニャ中央放送がお送りします『オールナイトロマーニャ』!深夜の水先案内人ことDJは私、フェデリカ・N・ドッリオが皆さまを眠れない夜に放送しちゃいまーす♪今夜のゲストは…現在ロマーニャの空を共に守ってくれるこの人!」
「………」
「…あれ?ゴホン、第501統合戦闘航空団のゲルトルート・バルクホルン大尉でーす」
「こっ、こんばんは!」
「はい、具体的に第501統合戦闘航空団はどのような任務に就いてるのーっ?」
「あ…はい!えーと…ネウロイをやっつけてます」
「…バルクホルン大尉は、どんな役割をしてるのかなー?」
「あ…はい!銃で撃ってます」
「…そうなんだあ、じゃあ第501統合戦闘航空団で好きな時間はどう過ごしてるのかなー?」
「あ…はい!クリスに手紙を書いてます!」
「…へえ!そもそも、どうして第501統合戦闘航空団が結成されたのー?」
「あ…はい!それはですね…」
「ごめんなさーい、時間来ちゃいましたー!今夜のゲストは第501統合戦闘航空団からゲルトルート・バルクホルン大尉でしたー」


***


後日この放送を、ミーナの居る執務室にて録音したものを再度聞くバルクホルン・エーリカ・ミーナの3人。

「「………」」
「…ふう、70点の出来だな」
「はあ?!どこが70点なのトゥルーデ!!0点だよ、0点!」
「そうねえ…まず、緊張し過ぎ」
「やっぱり生放送だと、私の実力が発揮できないな」
「そんなレベルじゃないよトゥルーデ!」

ソファーで寝そべっていたエーリカだが、ここぞとばかりと立ち上がる。

「これは放送事故だよ!?」
「何だと?!」
「戦闘航空団がネウロイをやっつけるのだなんて、大概はそうだよ!当たり前だよ!」
「いやあ…そのちょっとお茶目な所が、全世界の『いもうと』達の母性本能をくすぐるのではないかなと思ってな」
「はああ…」

ミーナは頭を抱えながら、

「ねえトゥルーデ、なんで…私やフラウ、もっと言えばシャーリーさんと交代しなかったの?」
「良いかミーナ、ラジオと言うのは聞いてる皆に戦局の情報やはたまたや安心させるための物だ。だからシャーリーのように、あんな浮いたヤツはダメだ!ここで冷静沈着でクールな現実主義者な私が…」
「何処が冷静沈着でクールなの!?全ての質問に『あ…はい!』って言葉が詰まってたじゃない!」
「いや、いざマイクの前に座るとだな…その…」
「はあ…だったらラジオ経験者のエイラさんとサーニャさんに頼めば良かった…」
「………スマン」
「最初っから謝れば良かったじゃん…」
「…スマン、2人とも…」
「皆に謝りなさいよ」

その後、『広報』の仕事を一切引き受けなかったバルクホルンであった…。


【おわれ】

206 名前:62igiZdY:2011/07/26(火) 21:30:35 ID:oBdTszHo
>>197 アキゴジ様
>>203 Hwd8/SPp様
感想ありがとうございます!
初投稿で緊張していたので嬉しく思います!

>アキゴジ様
トゥルーデ、シャーリー、ハルトマンに振り回される芳佳がかわいさに全力でニヤリとw
最後のミーナさんもかわいくてよかったです!

>Hwd8/SPp様
緊張して何も言えないトゥルーデがありありと目に浮かびました。
それとフェデリカさんのラジオがものすごく気になる!
続編を密かに楽しみにしていますw


前作『未来の先にあるもの』の続きのシチュエーションでちょっとしたものを書いてみましたので、よかったら!

207 名前:どっちがお好み? 1/2:2011/07/26(火) 21:33:25 ID:oBdTszHo

「ところでミヤフジ、さっきのはどういうことダ?」
 それから、すごいですよー、と、ソンナンジャネーヨ、を一頻り繰り返したところでエイラが宮藤に問うた。
「さっきのって、私何か言いましたっけ?」
 相変わらず察しが悪い宮藤に対して、エイラは一層ジトっとした目線を向けた。
「何か言ったのは私の方ダゾ。それに対してオマエは何も言わないでサラッと流したじゃないカ」
 それでもまだ存ぜぬといった風の宮藤に、痺れを切らしたエイラは毅然とした口調で命じた。
「とりあえず、サーニャのいいとこすごいとこ十個挙げてけ」
「ええぇ、十個も」
 思わず素で反応してしまったところで宮藤はハッと気付いた。気付いて口を押さえる仕草をするも時すでに遅し。目の前のエイラは更に睨みを効かせた視線で迫ってきた。
「も、ってナンダヨ、も、って。そんな失礼なこと言うようなヤツには、お仕置きが必要ダナ」
 指をワキワキさせながら、表情をニヤニヤさせながら、近づいてくるエイラに対してその身を庇う、というか胸を隠すような体勢を取る宮藤。
 こういうときに咄嗟に背を向けて逃げようものなら鷲掴みにされて格好の餌食となることを身を以て体験していた宮藤は、下手に逃げようとせずに対峙して隙を窺っていた。
 しかし相手はスオムスが誇るスーパーエース、傷を知らないダイヤモンド、エイラ・イルマタル・ユーティライネンその人だ。
 相手を逃がさんとする意思表示か、狐の耳と尻尾を現出させたエイラが不敵に笑う。宮藤が不覚を取るにはまだまだ早い。
 一瞬の視界に映ったものに、あっ、と言わんばかりの表情を作った宮藤の隙を、見逃さないエイラではなかった。
 サッと身を翻し、いとも簡単に宮藤の死線を横切ると背後を侵した。
 そして素早い動作でエイラは宮藤の、お尻を揉みしだいた。
「ひゃあ!」
 と情けない悲鳴を上げた宮藤だが、驚きの余りに逃げ出せない。
「お、おおぉ。オマエ、こっちもなかなか成長期じゃないカ?」
 揉む力を更に強めるエイラに宮藤はいじらしく声を上げる。
 それでも宮藤が動けないのは、物陰に隠れたもう一人の刺客のせいであった。
 そしてその影は踊るように飛び出し、華麗で大胆な機動を描きつつも、宮藤に逃げる隙を与えなかった。
 ヤツが仕掛けてきたときが好機と踏んで留まっていた宮藤だったが、このガッティーノもまたロマーニャの誇るスーパーエースであることを軽く失念していたのだ。
「よしかぁ〜、変な声出してな〜にしてんの?」
 俊敏な動きで懐に入り込んだルッキーニによって、宮藤の胸は敢え無く陥落した。
 つい先刻、宮藤の視界に入り、図らずも一瞬の隙を作り出したのがフランチェスカ・ルッキーニその人であった。そしてエイラとルッキーニ、おっぱい星人コンビの連携は見事な作戦成功を収めたのだ。

208 名前:どっちがお好み? 2/2:2011/07/26(火) 21:35:24 ID:oBdTszHo
 結局、二人に捕らえられて揉みくちゃにされた宮藤は、撃墜寸前のところでようやく解放された。
「もー! ひどいよー。エイラさん、ルッキーニちゃん!」
「へへ、ナンテコトナイッテ。それにしてもミヤフジ、胸の方も少しは成長してるんじゃないカ? なぁ、ガッティーノ」
「まだまだ残念賞だけどね〜。あ、でももう少〜し成長したら努力賞あげてもいいかも」
 二人のおっぱいマイスターによる勝手な品評会に、宮藤は大げさに溜息を吐いた。
「それにしても驚きましたよー。エイラさんがお尻を狙ってくるなんて……」
「不意打ちだったダロ? いつもいつも胸ばかり見てるからナンダナ」
 さりげない指摘に宮藤は反論が出来ない。やっぱり皆からもそういう風に思われているのだろうか。
「そういえば、エイラー、私がいるのよくわかったね」
「私の固有魔法を忘れたのか? それくらい朝飯前ナンダナ」
 相変わらず無駄なところでも能力を発揮するのは悪戯好きの本能だ。
「ときにミヤフジ。私の見立てによるとオマエ、胸よりお尻の方が大きいんじゃないカ?」
 唐突に問われた宮藤は一瞬ギクリと身を震わせた。それを見逃さないエイラはニヤリとすると畳み掛けるように言った。
「ま、オマエくらいのサイズだったら気にすることでもないけどナー」
 何気に気にしてることなのに! とこれには噴火せざるを得ない宮藤に、マジで気にしてたのかヨ、とエイラは面倒臭そうに応じる。
 そしてルッキーニの無邪気でさりげない一言が、事態を更なる混沌の渦へと叩き落とした。
「お尻と言えば、やっぱりミーナ中佐が一番だよね〜」
 刹那に悪寒を感じたエイラは神速の機動で物陰にその身を隠した。
 その様子をポカンと見つめていた二人は、その意味を数秒後に知ることとなる。
 談話室の入口付近から放たれる赤い閃光に、いち早く気付いたルッキーニは滝のような汗を流し出した。
 キュッ、と何か不穏な音が聞こえた気がした次の瞬間、ルッキーニの背後には無慈悲な笑みを湛えたその人が立っていた。
「誰の何が一番ですって? フランチェスカ・ルッキーニ少尉?」
 据わりきった瞳で見下ろされるルッキーニは、最早カタカタと震える石像と化していた。赤毛の司令官、スペードのエース、女公爵ミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐による先日の二百機目撃墜で、そのワードは隊内(豪放磊落で天然ジゴロな副官は除く)において暗黙のうちにタブーとなっていた。
 ルッキーニは今まさにその禁を犯したのである。
「うじゅぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
 奇妙な悲鳴を上げて連れ去られるルッキーニに宮藤は心の中で合掌した。と、不意に足を止めたミーナは談話室を振り返り、絶対零度の視線と声色で机の陰に隠れるもう一人の悪戯猫を射抜いた。
「そこに隠れてるエイラさんも、一緒に司令室に来てくれるかしら?」
 疑問形なのに命令に聞こえるその迫力は何処から湧いて出てくるのか。そんなんだからさんじゅうはっさ、ゲフンゲフン、とか言われるんだよ、と心の中で悪態をつくエイラ。口に出そうものなら軍法会議をすっ飛ばして銃殺刑だ。
 大人気なく固有魔法=三次元空間把握能力を発揮したミーナは、二人を引きずって談話室を後にした。
 残された宮藤は絶対にお尻には手を出さないようにしようと胸に誓い、また胸のことばかりを考え始めた。


   終わり

209 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/07/29(金) 21:32:17 ID:U8RwtutU
>>202 アキゴジ様
GJです。「いやぷに」のシーンが目に浮かぶようです。

>>205 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです。緊張して何も言えない、まさに「堅物」な大尉殿ですねw

>>196>>208 62igiZdY様
GJです。登場キャラがすごい魅力的です。エイラもミーナさん大人げないw


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

210 名前:lab=01 01/02:2011/07/29(金) 21:33:20 ID:U8RwtutU
「おい、どう言う事だ、これは?」
 トゥルーデが怒声を上げる。いつもの事かと思いきや、声色にどこか焦りが混じっている。
 皆が声の主の方へ振り向くと、慌てて介抱している彼女の姿があった。
「どうしたよ堅物」
 のんびりと箸をくわえたまま様子を見るシャーリー。
「どうしたもこうしたも有るか。夕食を食べた途端に……」
 トゥルーデが介抱しているのは、501へやって来たウルスラ。
 技術試験と称して様々な武器・ストライカーのテストに来た筈なのだが、夕食を半分位食べたところでぐてっと机上に突っ伏してしまったのだ。
「おい宮藤!」
 夕食を作った芳佳を呼びつける。
「大丈夫ですかね、ハルトマンさん」
「何か変な物を入れたりしてないか?」
 詰問するトゥルーデに、呑気に答える芳佳。
「まさかそんな事する訳ないじゃないですか。他の皆さんも普通ですよ」
 周りを見るトゥルーデ。確かに、ウルスラ以外の誰もが、いつも通りである。
「何か混入したとか」
「……あ」
「何か思い当たる事でも有ったのか?」
「今夜の夕食、天ぷら蕎麦なんですけど」
「この付け汁で食べるヌードルに、アレルギーになる様なものでも有ったのか?」
「いえ、そばつゆ作る時にみりんがなかったので、お酒と砂糖で代用しました」
「それだけ?」
「はい」
 トゥルーデはウルスラの蕎麦つゆが入った容器を観察する。そして、小指の先をつゆに浸し、ぺろりと舐めた。
「……これは、酒じゃないかっ!」
 驚いたのは芳佳。慌てて問題の蕎麦つゆを一口舐める。
「あれ、お酒ですね。ちゃんと煮てアルコール飛ばしたのに」
「!?」
 トゥルーデ、そして話を聞いていたシャーリーの二人が、一斉に美緒を見る。
 酒と言えば美緒。
 しかし彼女は……他の隊員同様、特に何処かおかしくなる様子もなく、とても美味そうに故郷の味を楽しんでいた。
「少佐は、何とも無いのか?」
「どうした、バルクホルンにシャーリー」
「少佐、ちょっと失礼」
 シャーリーは美緒が手にしていた蕎麦つゆを取り上げると、ぺろりと舐めた。
「ありゃ、普通だわ。酒も何も無いけど」
「……本当だ」
「どうしたんだ一体。蕎麦つゆに酒など……いや、有ったか」
「え?」
「扶桑では昔、修行僧がこっそり酒を飲む為に、蕎麦つゆに酒を混ぜて食する事が有ってな」
 笑う美緒。その横で、何故かちょっぴり不機嫌なミーナ。
「宮藤! お前一体何を!」
「私何もしてません! 本当です!」
「おいおい、宮藤を疑うのかよ」
「しかし……じゃあこの酒は一体」
「分かりません。……あ、そう言えばハルトマンさんが」
「ん? どのハルトマンだ」
「ええっと……」
「ハルトマンならついさっき夜間哨戒に出掛けた筈だが」
「そのハルトマンじゃなくて?」
「と、ともかく!」
 トゥルーデはぐったりしたウルスラを抱きかかえ、立ち上がる。
「介抱しなければ」

211 名前:lab=01 02/02:2011/07/29(金) 21:34:57 ID:U8RwtutU
 来客用の部屋に着くなり、ベッドにそっと寝かしつける。
 呼吸も落ち着き、顔色も少しずつ戻りつつある。
「やれやれ。扶桑の酒で酔っ払っただけか……いや、それはそれで問題だな」
 呟くトゥルーデ。横には申し訳なさそうな芳佳の姿が。
「すいません、私の不注意で」
「いや……。他の隊員は問題無かったのだから、宮藤が作った元々の食事は問題無かったんだろう」
「はあ」
「誰が酒を盛ったか、と言う事になるな。誰か心当たりはないか」
「ハルトマンさんが」
「どっちの」
「ええっと……」
 説明に困る芳佳を見、溜め息を付くトゥルーデ。
「分かった、もう良いぞ宮藤。後は私が面倒を見る。お前は厨房係としての責務を全うするんだ」
「分かりました。では、失礼します」
 芳佳は出て行った。
 眠るウルスラ、そして傍らで一人見守るトゥルーデ。

 だいぶ酒が抜けて来たのか、いつしか呼吸、胸の鼓動はいつもと変わらない感じに戻る。ぐっすりと眠るウルスラ。
 トゥルーデはほっと一安心する。
 しかし一体誰が? と訝る彼女の両目を、突然誰かが覆った。ひやっとした感覚を瞼に感じ、ぞくっとする。
「あー、上空の風ってやっぱり冷たいねえ」
 エーリカの声と即座に分かったトゥルーデは、さっと両手を掴むと向き直った。
「おかえり、と言いたい所だが……」
「ありゃ、もうバレた?」
 やっぱりお前のせいか! と怒鳴りかけたところで、手でしっかり口を塞がれる。
「静かに。ウーシュ起きちゃう」
 声のボリュームを下げて、ひそひそと話す二人。
「お前なぁ。妹に何て事するんだ」
「これは姉なりの優しさだと思って欲しいな」
「優しさ? どうして妹の食事にアルコールを混入させる必要が有る」
「そうでもしないと眠らないからだよ」
「何?」
「トゥルーデ気付かなかった? ウーシュ、多分最近殆ど寝てないんだよ。顔色見ればすぐ分かるよ」
 トゥルーデはウルスラの顔を見る。気付かなかったが、言われてみれば、確かに少々寝不足だった様に見えなくもない。
 そして酒が抜けても、深い眠りのままである事から、確かにエーリカの言う事がその通りなのかも知れない、と思う。
「流石は実の姉、と言う所か」
 トゥルーデはそう言うと、椅子に腰掛け、肘を付いて考えを巡らす。
「しかし、皆の居る前で彼女は突っ伏したからな……酒も入っていたし」
「こうでもしないとウーシュは寝ないよ。知ってるでしょトゥルーデも、ウーシュの性格は」
「それは、まあ……。だが、だからと言って……」
「もう、私のせいでいいじゃん」
「そう言う問題じゃない」
「違うの?」
「そうした所で、どうなる」
 困り顔のトゥルーデ。普通に考えれば懲罰モノだが、色々考えると情けも湧いてくる。そして立ち上がる。
「私がミーナに話してくる」
「それじゃあ余計に混乱するよ」
 肩を掴まれ座らされる。
「じゃあどうしろと。お前がまた謹慎だのトイレ掃除だのするのも……」
 頭を抱えるトゥルーデ。そんな彼女は、愛しの人にぐいと押され、ウルスラのベッドに寝かされる。
「おい、何の真似だ」
「たまには三人で寝ようよ」
「何で」
「私が寝たいから。あとウーシュも同じだと思うな」
「何なんだお前達は……」
 言いながらも、そっと優しく、二人をあやす様に寝かしつける。トゥルーデもいつしか浅い眠りに落ちた。

 翌朝、ミーナから昨夜の夕食の件について問われたウルスラは
「少々私が疲労していただけで問題有りません。何も」
 を繰り返し、(書類上)何も無かった事にした。ミーナも意図を察し、その様に扱った。

 執務室を出た後、待っていたトゥルーデ、エーリカと合流するウルスラ。
「自分の身もそんな風に扱うとは……さながら、生粋の研究員だな」
 半ば呆れ気味に言うトゥルーデ。
「理由は単純です。皆に迷惑を掛けたくなかっただけです」
 いつも通りのウルスラ。
「私達の前では、無理しなくていいんだよウーシュ?」
 エーリカが笑う。
 ウルスラも笑った。
「だから、こうしてたまに、来るんです」

end

212 名前:名無しさん:2011/07/29(金) 21:36:19 ID:U8RwtutU
以上です。
トゥルーデはみんなのお姉ちゃん、と言う事で。

ではまた〜。

213 名前:62igiZdY:2011/07/30(土) 02:42:17 ID:0Zcd6fCM
>mxTTnzhm様
感想ありがとうございます!
ringシリーズいつも楽しみにしています。エーリカ、トゥルーデ、ウルスラの三人組はすごく和みます。


少しばかり長いですが、シャーリーさんが501へ配属されるエピソードを想像してみました。
シャーゲルへと至る物語です。よかったらどうぞ。

214 名前:夢のかたち 1/6:2011/07/30(土) 02:45:37 ID:0Zcd6fCM
 この広い広い蒼穹に抱かれて、年頃の乙女に似つかわしくない重い重い鉄の塊を抱いて、
 彼女は、酷く独りだった――。



   『夢のかたち』



 第501統合戦闘航空団、通称ストライクウィッチーズ。
 欧州における対ネウロイ戦が激化の一途を辿る中で、全人類の希望として設立された連合国軍統合戦闘航空団。ネウロイへの反攻作戦を視野に入れた文字通りの少数精鋭部隊にして各国の誇る英雄たちの掃き溜め。その第一番目の数字を冠する部隊、ストライクウィッチーズは、同じ蒼空を駆る魔女たちならば知らない者はいないほどのエースの中のエース、その名を地平線の彼方までも轟かせる七人の魔女たちによって構成されていた。
 彼女たちの華々しいまでの活躍はまさに人類最後の砦。露と消えた欧州奪還の日も遠い未来ではないようにさえ思える。
 そのような大勢の中で、対ネウロイという旗の下、連合軍の、引いては全人類の結束を目指して各国は欧州各地に展開する統合戦闘航空団への惜しみない支援を行った。
 その一環として第501統合戦闘航空団、通称ストライクウィッチーズへの戦力拡充が決まったのだ。
 さて、名立たる英雄たちに連なる八人目の魔女は一体誰であるか。ダイヤのエースと同郷の極北のマルセイユか、はたまた侍、魔王と並び称されるリバウの貴婦人か、あるいは空飛ぶ要塞ワンマン・エアフォースか……。熱狂的な人々は日夜予想を並べ立て、ゴシップもまた様々な空論をでっち上げた。
 遥か海を隔てた異国の地の情勢など外の世界の出来事でしかなかった彼女、シャーロット・E・イェーガー少尉にブリタニア行きの辞令が下ったのは、そんな折のことであった。



「ストライクウィッチーズ?」
 最初にその命を聞いたときには俄には信じ難かった。
 ストライクウィッチーズの名を知らなかったわけではない。むしろその有名すぎるほどの部隊名が出て来たことに実感が湧かなかったのだ。それは、蒼空の守り神として歴戦の英雄たちと肩を並べられることへの歓喜や、欧州奪還の要となるであろう部隊へ配属されることへの不安や、人類の明日はこの手で救ってみせるといった意気込み、からなどではなかった。
「なんで、あたしなんかが?」
 それは率直な感想であり疑問であり、諦観であった。
 各国のエースが集うストライクウィッチーズへの転属。それはリベリオンを背負って立つという名誉であり、実質的な昇進の話でもある。だがシャーリーにとってはそんなことはどうでもいい話であった。501への配属、それは良くも悪くも、原隊からの追放という風にしかシャーリーには感じられなかったのだ。度重なるストライカーの無断改造と軍規違反。自由奔放な性格の彼女にとって、軍隊という世界は少々窮屈過ぎたきらいがあった。
 確かに、ストライカーを駆る魔女たちの姿に心を魅かれ入隊を志願したのは他でもない彼女自身である。ただ、このままでは彼女はその目標を達成することが出来ない、かもしれない。そういった焦燥と自らの選択に対する疑問がシャーリーを苛み悪循環の思考へと貶めていた。
 上層部のお偉方にどんな利害関係が築かれているのか。考えても仕方ないと決め込んだシャーリーは、それでもこの昇進は事実上の左遷に他ならないと結論した。
 それならもっとあたしのやりたいようにやらせてくれたらいいのに。
 と内心で悪態をついても今更だと気付き、その意識を遥か海の彼方へと投じた。

215 名前:夢のかたち 2/6:2011/07/30(土) 02:48:34 ID:0Zcd6fCM
 少尉任官後、欧州戦域を転々とした経緯を持っているシャーリーであったが、まだまだ軍に入って日は浅い。
 撃墜数も両の手で数えられるほどでしかなく、目立った戦果もあげられていない。
 何より欧州での悲惨な現状を目の当たりにし、戦場においての根本的な存在理由を模索するようになっていた。

「あたしはなんのために戦っているのだろう……」

 海の向こうで見た空は、かつての輝かしい青さを失い、灰色に閉ざされていた。どんなに快晴な空であっても、何処か濁っているように感じられてならなかった。
 人の気持ちがそうさせるのだろう。
 国を追われた人々。
 大切な誰かを失くした人々。
 欧州の空に上がる乙女たちの多くもまた、それぞれ心の何処かに同じ傷を負った者たちであり、同じ標を追う者たちであった。
 501に集う魔女たちもまた然り。
 祖国奪還を悲願とする者、戦いに全身全霊を捧げる者、家族との再開を夢見る者。
 ストライクウィッチーズの乙女たちが抱える傷の深さは、シャーリーが未だかつて触れたことのない、もちろん身を以て体験したこともない、ものであることは容易に想像出来た。
 その想像が故に、シャーリーは悩んだ。
 自らにストライクウィッチーズの仲間に入る資格があるのだろうか、と。
 規律に厳しいカールスラント人と生真面目と評される扶桑人が仕切る部隊だ。
 自身と馬が合うかも分からない。
 むしろ自分の望む環境とは程遠いかもしれない。
 戦う理由など特に考えもしなかった自分は、受け入れられないかもしれない……。
 良くない想像の螺旋を断ち切るように頭を振ったシャーリーは、それ以上深く思い悩むことを止めてブリタニアへと発つ日を待つことにした。



 それからの日々は音速で過ぎていった。
 リベリオンでの残された時間を戦う理由など小難しく考えるのではなく、シャーリーはそれまで以上に自分自身であろうと務めた。相変わらず人の目を盗んでのストライカーの改造は継続した。自らの目標が何であるかを再確認するかのように。それを上官に見つかることもあったがもう咎められることはなかった。そのことはより一層シャーリーに疎外感を与えたが、実際にリベリオンを出るのだからと深く考えないようにした。
 そして現在シャーリーは欧州へと向かう艦に揺られている。シャーリーの原隊は陸軍だが、今まさに乗っている艦は海軍の軍艦だ。
「見送りすらなしかよ」
 我が身一つと相棒であるストライカーのみで乗り込んだ艦は、こんなにも大きいのにとても狭苦しく感じられた。



 一週間の航海の後に辿り着いたブリタニアの空は、生憎の雨模様であった。
「ツイてないね、まったく……」
 ロンドンの古風な街並みを彩る雨も、戦時中とあってはより深い陰を落としている。
 シャーリーは諸々の手続きのため、まずはロンドンの連合軍総司令部へ赴き、その後単身でストライクウィッチーズ基地へ向かう手筈となっていた。だが予定以上にロンドンで時間を浪費してしまったシャーリーが基地へ辿り着いたのは、その日の夜遅くになってからであった。
「まさか、ロンドンで迷子になってて遅れました、なんてとても言えたもんじゃないなぁ」
 本来なら今日の午後には基地に着いて着任の挨拶を済ませることになっていたのだが、まさかの大遅刻である。
「心象は最悪だね……」
 どう言い繕ったものか、と考えながら基地に入ったシャーリーはまず司令室に通された。
「あなたが、シャーロット・E・イェーガー少尉ね。こちらに配属されてからは中尉に、ってことだったかしら」
 司令室には長い赤髪と温和な笑みが印象的な女性と、黒髪に眼帯の一見怖そうな女性が待ち構えていた。
(この二人が、かの有名な女公爵とサムライか……。確かに風格が違うな)
「私が、第501統合戦闘航空団、ストライクウィッチーズ司令のミーナ・ディートリンデ・ヴィルケ中佐です。こちらは副司令で戦闘隊長の坂本美緒少佐よ」
 二人分の軽い紹介を終えたミーナに対して、シャーリーは若干の拍子抜けしたような感じを覚えた。
(もっとこう、お堅い雰囲気を想像していたんだけど……)
「報告では、今日の午後には到着するとなっていたから、随分と心配したのよ。不測の事態にでも巻き込まれたんじゃないかって。でも無事に辿り着いてよかったわ。長旅、お疲れ様」
 遅れたことに対してお叱りを受けるだろうと身構えていたシャーリーであったが、杞憂に終わったようだ。それだけでなく労いの言葉まで掛けられてしまった。
 想像以上にここはやりやすいところなのかもしれない。
 ここに来るまでの悩みの全てが杞憂に終わればいいと期待を抱いてシャーリーは司令室を辞した。

216 名前:夢のかたち 3/6:2011/07/30(土) 02:51:24 ID:0Zcd6fCM
 
 
 結果から言えば、シャーリーの考えは甘かった。 しかし、着任早々の衝突が彼女たちの前進に大きく寄与するものとなったこともまた事実であった。


 ブリタニアに来てからのシャーリーの日々は、原隊にいた頃と大きく変わるものにはならなかった。
 ストライクウィッチーズ基地は、これだけの大きな基地であるにも関わらず詰めている人間はかなり少ない。ほとんど八人だけで使っていると言っても、過言ではない状況だった。そういった開放感からか、この基地には割と自由な風が吹いている気がした。
 ストライカーの改造も再開していた。こればかりは誰かに認められてはまずいと人目を憚ってではあったが。
 他の隊員との顔合わせも何事もなく終わり、やはり自らの勝手な想像と現実は違うものであると確認出来た。
 しかし、なかなかシャーリーが気楽に話しかけられる相手が居らず、まだまだ隊員個人のことはよく判らないのが現状である。
 そんな風にして二、三日が過ぎ、未だに出撃もなく束の間の平和な時間が基地を包み込んでいた、とある日の午後のこと。
 この日もまた、シャーリーはハンガーの片隅で隠れるようにしてストライカーいじりに精を出していた。
 そこを一人のカールスラント軍人が訪れたのだ。
「貴様が、シャーロット・E・イェーガー中尉か」
 威圧感を隠さないその人の言葉に一瞬ギクリとしながらも、シャーリーも毅然として応じた。
「ああ、それでそういうあんたは?」
 そう言って相手を視界に据えたところで、シャーリーは思い出した。
 全体での紹介が一日遅れた関係で、一人、まだ顔を合わせていない隊員がいたことを。
「横柄な物言いだな、リベリアン。一応、私は貴様の上官にあたる。ゲルトルート・バルクホルン大尉だ」
 不機嫌を貼り付けたような表情で自己紹介をするバルクホルン。
 シャーリーは直感的に、相容れない存在であろう、と思った。
「ミーナから聞いてはいたが……。一体何をしているんだ、リベリアン?」
(やっぱり、あたしが無断改造の常習犯だって抜けてるよな)
 ここへ配属されて以来、そのことについてはミーナからは何も言われなかったし、もちろん自分からも言い出すつもりもなかった。しかし、自身の前科は当然報告されているだろうから、シャーリーは見咎められるまで様子を見ることにしたのだ。
「ストライカーの改造です、大尉殿」
(知ってるくせに言わせるとは、感じ悪い奴だな)
 心の中で愚痴を吐きつつ、言い訳をするつもりもなかったシャーリーは正直に答えた。
「貴様、ここが何処だか分かって言っているのか? そんな身勝手なことが許されるわけがなかろう。だいたいミーナもミーナだ。分かっていたのなら何故咎めない」
 それからクドクドと小言を並べるバルクホルンにシャーリーは、想像していた通りの奴がここにいた、と溜息と吐いた。
「いいか! ここは最前線だぞ! 私たちは遊びでストライカーを履いているわけじゃ……」
 そこまで言われたところで基地内を警報の爆音が走り抜けた。
 それと同時に、敵襲! と叫ぶ大音声。
 ようやく初出撃か、とシャーリーは徐に腰を上げた。
「まさか、その機体で出るわけじゃないだろうな?」
 内蔵が剥き出しの戦闘脚を指してバルクホルンが呟いた。
「まさか、替えの機体がありますよ」
 本当は相棒たるP-51Dで出撃したいシャーリーであったが、さすがにこの状態からの復元は間に合わないので、不測の事態に備えて持ち込まれたもう一台のストライカーを履くことにした。
「グリッド東07地域、高度一万七千、大型ネウロイが一機出現。バルクホルン大尉の後衛にハルトマン中尉、イェーガー中尉はユーティライネン少尉の後衛に入ってちょうだい。いけるわね、シャーリーさん」
「もちろんです、中佐!」
「ふむ、お手並み拝見といこうか、リベリアン!」
 話の続きはこの戦闘が終わってからだ、と余計な一言を付け加えて空に上がったバルクホルンに軽く舌打ちをして、シャーリーも蒼空へと舞い上がった。

217 名前:夢のかたち 4/6:2011/07/30(土) 02:53:23 ID:0Zcd6fCM


 戦闘に関してはある程度の自信があるつもりだった。
 501へ配属されたのも、厄介払い的な要素が強いとはいえリベリオンだって恥をかくわけにはいかない、本当に使えない奴を最前線に送り込むわけがない。
 シャーリーには比類なき才能があり、それは他人も大いに認めるところであった。
 新人と呼ばれる期間もとうに過ぎ去り、欧州戦域の地獄も掻い潜ってきたシャーリーであったが、ここでの戦闘は余りにも次元が違い過ぎた。
 人類史上最高のウルトラエースのロッテに、北欧が誇る無被弾のダイヤモンド。
 その天才的な空戦技術の前に、シャーリーは何も出来なかった。
 相対したネウロイが、これまでに見てきたものとは比べ物にならないくらいの巨大さと、戦闘力を誇るものであったこともまたシャーリーの動きを縛り付けた。
 この日の戦闘はエイラの機転によってなんとかネウロイを撃墜して終了した。
 だが、激しい戦闘を繰り広げていた三人よりも疲労困憊を隠せないシャーリーの姿が、そこにはあった。
 這々の体で基地に帰還したシャーリーは、ハンガー内に倒れ込んだ。
「その程度でくたばっているようじゃ、ここでは使いもんにならんぞ、リベリアン」
 実力の差を、その圧倒的なまでの戦力の違いを、思い知らされた戦闘だった。
 ここでなら上手くやっていけるかもしれない。
 そう思ったシャーリーの淡い期待は粉々に砕け散り、またリベリオンを発つ前の後ろ暗い幻想が鎌首をもたげてきた。
「何度でも言おう、ここは最前線だ。ストライカーの改造などというお遊びに精を出しているようじゃ、この先の戦闘の邪魔にしかならん。使えない奴はここにはいらない。今すぐ国へ帰るがいい」
 言いたい放題言われたシャーリーだが、その全てが紛れもない事実であった。
 いや、一つだけ認めるわけにはいかないことがある。
 シャーリーはよろよろと立ち上がると、嫌味な上官に向かってその心を吐露した。
「遊びなんかじゃないさ……。ストライカーをいじるのは遊びでなんかじゃない。あいつはあたしの夢なんだ! あたしはそのためにここに居るんだ! いつかあいつで音速を超えてやる。そのためにウィッチになったんだ! お前にあたしの何がわかるってんだ!!!」
 戦う理由なんて分からない。だがシャーリーにはシャーリーなりの、戦う理由が確かに最初からあったのだ。
 その想いをこんなに感情的に吐き出すことは恐らく初めてのことであろう。
 それはスピードを求めるが故にウィッチになるという本来のウィッチとはかけ離れた理由に、少しの後ろめたさを抱いていたからに違いない。
 熱くなり過ぎたシャーリーの想いは、バルクホルンを爆発させるに充分であった。
「お前に何がわかるか、だと……。それはこちらの台詞だリベリアン! ここには夢を追われた少女たちも多く居る。それなのに夢を語るなど、貴様は軍隊をなんだと思っているんだ! ここはお前のためにある場所じゃないんだぞ!!!」
「トゥルーデ!」
 ハルトマンの一喝でその場に沈黙が立ち込める。
 お互いにどれだけ悲痛な叫びをあげたのか、シャーリーもバルクホルンも、今にも壊れそうな表情をしていた。
 それきりバルクホルンは何も言わずにその場を立ち去り、シャーリーは膝からその場に崩れ落ちた。
 バルクホルンの言ったことは、余りにも正しかった。
 ウィッチになってまで夢を追う。
 それは確かにシャーリーのエゴでしかないのかもしれない。
 軍隊はそのためにあるわけがなく、ストライクウィッチーズもまた然り。
 恐れていたことをそのまま告げられたシャーリーは、茫然自失の様相で自室へと向かった。

218 名前:夢のかたち 5/6:2011/07/30(土) 02:56:40 ID:0Zcd6fCM


 この空は広い。
 一人じゃ泣きそうなほどの、広い広い空。
 シャーリーもまたその魅力に囚われ、空へと墜ちていった一人であったのかもしれない。
 しかし、何処までも突き抜けるその青さは、ときに人を狂わせる。
 翼を授かった乙女たちは、決して独りでは飛べないのだ。

 果たして、シャーリーは独りであった。

 ストライカーを改造するときも、欧州戦域を転々としたときも、そしてブリタニアへ来てからも。
 何のために戦うのか。 その意識の違いを判然と自覚してしまった今となっては、シャーリーの翼はもう羽ばたけないだろう。
「シャーリー、いる?」
 不意に控え目なノックの音が木霊する。
 もう一度ノックが繰り返され、それでも返事をしないシャーリーであったが、部屋の扉は開かれた。
 今は誰にも会いたくない。
 そう思いつつも、鍵をかけたかどうかも定かではないほど憔悴しきったシャーリーは、ほんの僅かばかりの視線を扉の方へやることが精一杯だった。
 そこには、酷く寂しそうな表情をしたハルトマンが立っていた。
 何も言わないシャーリーに倣って、ハルトマンもまた何も言わずにシャーリーの隣に腰を下ろす。
 暫くの沈黙の後、シャーリーは自らが涙を流していることにようやく気付き、口を開いた。
「変なとこを、見せちゃったな……」
 消え入りそうな声音で呟かれた言葉は、それでも確かにハルトマンの心に届き少しの安堵をもたらした。
「私は、私たちはさ。シャーリーのこと、何も知らない」
 そう切り出した金髪の少女は努めて穏やかな口調で、それでいて胸に突き刺さる想いを語った。
(あたしはさ、皆とは違うんだ)
 戦う理由。
 空を飛ぶ理由。
 国を追われたわけでもなく、ネウロイの毒牙の届かないリベリオンは平和そのものだ、戦いの中で大切な仲間を失ったこともない。
 まともな戦果だってあげられない。
 あたしはここにいてはいけないんだ。
 そうとさえ思えてならなかった。
「私はね、この戦いが終わったら医者になるんだ。いつ終わるか分からない戦いだけどね。私たちの故郷はネウロイに占領されちゃってるし、奪還できても復興にどれだけ時間がかかるか分からない。もし戦争がなかったら、なんて無意味なことを言うのは好きじゃないけどさ、それでもそれが私の夢だから。だから、飛ぶんだ」
 夢のために飛ぶ。シャーリーと何が違うんだい?
 同い年の少女とは思えないほどの達観した表情で語るハルトマンに、シャーリーはそう言われた気がした。
「私の家族は無事だよ。父様も母様も。私には双子の妹がいてね、あいつは今も、何処かの空で戦っているんだ。妹は頭は良いんだけど、運動はからっきしでね。私はすごく心配なんだ。姉として、妹を守ってやらなきゃって。そのためにも、私は飛ぶんだ」
 誰かを守るために。
 しかしそれはシャーリーには、理解の及ばない範囲であった。
 守りたいものなんてあっただろうか。
 そんなシャーリーのことなど意に介さず、ハルトマンはこれまでの自分のこと、そして共に空を駆る戦友のこと、知らないのなら教えればいいと多くのことを話した。
 いつしかそこにシャーリー自身のことが加わり出す。
 自らが話さねば解り合えない。
 そういった無意識は、ハルトマンに促されるように、シャーリーの心をゆっくりと溶かした。
「ボンネビル・フラッツって知ってるかい?」
 そう切り出したシャーリーの表情にはもう涙はなく、夢を語るその瞳の蒼さは、彼女たちが目指した空の輝きを取り戻していた。

219 名前:夢のかたち 6/6:2011/07/30(土) 03:00:03 ID:0Zcd6fCM


「戦う理由なんてあるのかな」
 一通り語り終えたところで、ハルトマンはそう言った。
 シャーリーの心の雲量は随分と少なくなっていたが、それでも深く陰を落としている、最後の問題でもあった。
「誰かを守るためにとか、国を取り戻すためにとか、夢を追いかけるためにとか。そんなもの人の数だけ存在するし、同じようで違うもの。だからね、シャーリーは皆となんにも違わないよ。皆それぞれの理由を抱いて、探して、苦しんで、悩んで、戦っているんだ。共感できる出来事がないからって、自分は仲間になれないなんて大間違い。私は、私たちは、同情から背中を守り合っているわけじゃないんだよ」
 誰もが夢を抱えている。
 そこに降りかかる痛みは違えど、それはきっと同じ空の中に。
「だから、シャーリーだって全力で自分の夢を守ってあげなよ。大丈夫、私たちがついてるよ。シャーリーは独りじゃない。私たち八人は家族なんだから。家族が家族を想うのは当たり前でしょ?」
 
 ようこそ、ストライクウィッチーズへ!
 
 そう言って手を差し出したハルトマンの笑顔は、一陣の疾風となって、シャーリーの心にかかった最後の雲を吹き飛ばした。
 その手を躊躇いなく受け取ったシャーリーの瞳に、一雫の涙を残して……。



 翌日は雲一つない快晴だった。
 昨日の戦闘の痛みがまだ残った気怠い身体を起こして仰いだ蒼空は、晴々としたシャーリーの心を映しているかのようだった。
 朝食を終えた後でシャーリーはミーナに呼び出されていた。
 司令室に出頭したシャーリーは、ストライカーの改造のこと、上官に対して声を荒らげたこと、どんな懲罰が降ってくるやらと気が気でなかったが、覚悟を決めて向き合った。
 ミーナに対して完璧な敬礼を見せたシャーリーは、驚いた表情のミーナに不意を打たれ立ち尽くした。
「あらあら、そんなに畏まらなくていいのよ。別にあなたを叱るために呼んだわけじゃないのだから。それで、何から話せばいいのかしら。そうね。まずは、ストライカーの改造の件かしら」
 やっぱりそれか、と思わず苦笑いを浮かべたシャーリーであったが、続けたミーナの言葉には驚愕を声にせざるを得なかった。
「ストライカーは貴重なものよ。素人が簡単に扱える代物でもないわ。でも、報告によると、あなたは自らで改造したストライカーでそれなりの実績をあげていたみたいね。きちんと整備にも出して、問題がないことが確認されたら、改造したストライカーを履くことを許可します」
「えっと、それはつまり……」
「ストライカーの改造に関しては、ここではうるさく言うつもりはないということよ」
 それを聞いた瞬間、喜びを爆発させ今すぐにでも相棒のもとへ向かわんとするシャーリーを、引き留めるようにミーナは続けた。
「それから、昨日は随分とトゥルーデ……バルクホルン大尉と随分と揉めたみたいね。彼女のことも分かってあげて、なんてまだ来たばかりで何も知らないあなたに、言えたことじゃないのかもしれないけれど。私たちは家族だから。これから上手くやっていってほしいの」
 少し俯き、何処か悲愴な表情を浮かべるミーナに、シャーリーは言葉に出来ない何かを受け取った。
(その傷はきっと、今のあたしにはわからない、でも……)
 優しく微笑むことで答えたシャーリーに、ミーナもようやく穏やかな笑みを浮かべた。
「私にも夢があったわ。いえ、夢がある。それを諦めるのは本当に辛いことよ。だから、あなたにも諦めて欲しくないの。家族として、あなたの夢を応援したいのよ」
 その言葉に何も言えなくなって、シャーリーは揺らいだ瞳を隠すように、大きく頭を下げ感謝を伝えた。

220 名前:夢のかたち EP/6:2011/07/30(土) 03:02:26 ID:0Zcd6fCM


 司令室を辞したシャーリーを待ち構えていたのは、何処か落ち着きのない堅物大尉であった。
 シャーリーもいきなりの邂逅に不意に気不味く視線を落としてしまったが、すぐに持ち直してしっかりと向き合った。
「その……、昨日は、すまなかった。私もつい熱くなって、酷いことを口走ったと、思う。言い訳になるかもしれんが、真っ直ぐに夢を追いかけるお前の姿が眩しくて、辛いことをいろいろと思い出してしまったのだ。お前のことを、羨ましくも思う。私にはもう……」
 そこで言葉を切ったバルクホルンに対して、シャーリーは何も言わなかった。
 何も、言えるはずがなかった。
「正式な許可が下りたのなら、ストライカーの改造の件は何も言うまい。お前はお前の戦いをすればいいさ」
 そこで踵を返そうとするバルクホルンを、シャーリーは片手でもって制した。
「あたしはあたしのやりたいことをする。でも、あたしも大尉の戦いの中に入れてくれてもいいだろ? 独りじゃないって。あたしたちは家族、だろ?」
 羞恥に顔を赤らめたバルクホルンは、それでもその手を邪険にすることなく、静かに握り返した。
「あぁ、そうだな……」
 少しだけ、ほんの少しだけ、バルクホルンのその顔に、微笑みが宿ったように見えた。
 それを認めたシャーリーは屈託ない笑顔を見せるが、バルクホルンはそれきりで背を向けた。
 今はまだ解り合えないことも多いだろう。
 それぞれに抱えた痛みは深く、大きな隔たりは簡単には消えない。
 それでも一歩ずつ、歩幅を合わせて歩けるようになればいいと、シャーリーにもまた一つ、空へと帰る理由が増えた。
 その夢の果てを目指して――。


 シャーリーとバルクホルンが、肩を並べて笑い合える日が来るのは、もう少し先の話になる。



   fin...

221 名前:62igiZdY:2011/07/30(土) 03:05:45 ID:0Zcd6fCM
戦う理由と夢に関する物語でした。配分カウント見誤ったorz
以上です、長文失礼しました。

222 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/31(日) 21:22:57 ID:vQhU52.Y

>>197 アキゴジ様
GJです、お姉ちゃん可愛いですね。
個人的にはシャーリーやエーリカも結構芳佳のお姉さんしてると思います。

>>203 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです、お姉ちゃんとフェデリカ少佐のやりとりがシュールで面白いです。
特に、>「あ…はい!銃で撃ってます」がツボでしたw

>>206 62igiZdY様
おおー、エイ芳&ルキ芳キター!
芳佳関連のCPでは個人的に芳リーネの次に好きな組み合わせです。
芳佳ちゃんのお尻は本当素晴らしいですよね。
ミーナ中佐がエイラとルッキにお仕置きする話も見てみたいです。

>>209 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです、エーリカの気遣いとウルスラの最後の一言が素敵です。

>>213 62igiZdY様
GJです、芳佳と会う前の(鬱状態だった頃の)トゥルーデの心情が丁寧に描写されていて素晴らしいです。
エーリカマジ天使&シャーリーマジ女神!


こんばんは、IFエーゲルで思いついたネタを投下していきます。
ではどうぞ

223 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/31(日) 21:24:04 ID:vQhU52.Y

【愛妻弁当】

――1947年、カールスラント空軍JG52

「ハルトマン大尉、バルクホルン中佐がお見えになってますよ」
「え? トゥルーデが?」
ここはJG52の司令室、経費の削減だとか補給物資の明細だとか面倒くさい書類と睨めっこしてるところに、
この前ウィッチになったばかりの新米軍曹さんが、かつての戦友の来訪を知らせてくれた。
「はい。応接室で待って頂いてます」
「ありがと。それじゃ私はトゥルーデに逢ってくるから、訓練場のみんなには私が行くまで休憩するように言っといて」
「あ、はい。了解しました!」

――――――◆――――――

「久しぶり、トゥルーデ」
「エーリカ」
私が応接室に入るとそこには、髪を二つ結びにしたままのトゥルーデの姿があった。
一緒に飛んでいた時とほとんど変わらない――ううん、少し大人びたかな。
トゥルーデは私を見てほっとしたような表情を浮かべると、すぐに視線を逸らした。
「どうしたの? トゥルーデのほうから訪ねてくるなんて珍しいね」
私はトゥルーデの隣に腰掛けて、彼女の顔をじっと見つめながら話しかける。
「そ、その……今朝おかずを作り過ぎてしまってな、私とクリスでは全部食べきれないと思って、
お前に弁当を作ったんだ」
そう言ってトゥルーデは、お弁当箱を包んだ綺麗な布を私に差し出してくれた。
「へ? このお弁当をわざわざ私に届けにきてくれたの?」
「たまたまこの近くで会議があったからそのついでに……ほ、本当にたまたまだからな! それよりお前、
軍の仕事は真面目にやっているのか? お前の事だから面倒くさい書類は全部、部下に丸投げしてるんじゃないか?」
「失礼な、これでも毎日真剣に書類と向き合ってるよ。なーに? お小言を言うためにわざわざ来たの?」
「い、いや、すまん。そういうわけじゃ……とにかく、元気そうで良かった。それじゃ、私はこれで」
トゥルーデは頬を染めながらそう言うと、ほとんど逃げるように応接室を去って行った。
「……変なトゥルーデ」
あ、結局お礼言いそびれちゃった。まぁいっか、今日の夜にでも感想と一緒に電話で言えばいいよね。
おっと、みんなを待たせてるんだった。私も早く訓練場に行かないと……

――――――◆――――――

「はい、お疲れ様! 午前の訓練はこれでお終い! お昼にしよっか」
私が手を叩いて午前の訓練の終了を告げると、みんな安堵したようにその場に座りこんだ。
「あれ? みんなもう疲れちゃった? 午後も訓練はあるんだから、お昼食べて少し休んで、この調子で頑張ろう」
「は、はい!」
と、私の呼びかけに笑顔で答えてくれるウィッチ達。
うん、本当にみんな、素直ないいコ達だね。
「ふふっ、中々様になってるわね。ハルトマン大尉」
懐かしい声に呼ばれ、振り返るとそこには苦楽を共にしてきた戦友の姿があった。
「あっ、ミーナ! 来てたんだ!」
「ええ。ここの佐官の方々とちょっと打ち合わせをね」
と、2年前と変わらない笑顔でミーナは私に言う。
大佐となった今は各部隊の視察や指導で大変みたいだけど、それを感じさせない温かい笑顔だった。

「ヴィ、ヴィルケ大佐! お疲れ様です!」
座っていたみんなはミーナを見ると驚いたように一斉に立ち上がって、ミーナに向かって敬礼をする。
う〜ん、ミーナが怒ると怖いって認識はどの部隊でも共通なのかな。
さすがのミーナもこれには驚いたのか、少々戸惑いながらも私に向けたのと同じ笑顔でウィッチ一人一人に接する。
「そんなに畏まらなくていいのよ。私の事はミーナでいいわ」
「は、はい! ミーナ大佐」
「ねぇ、私たち今からお昼なんだけど、良かったらミーナも一緒に食べてかない?」
「あら、いいわね。それじゃあ、お言葉に甘えようかしら」
「よーし、決まり! じゃみんな、早く食堂に行こう」
「はい!」

224 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/07/31(日) 21:24:47 ID:vQhU52.Y

――――――◆――――――

「わぁ、美味しそう」
ここは基地の食堂、みんなが今日の食事当番のウィッチから昼食のトレーを受け取る中、
私はトゥルーデが持ってきてくれたお弁当箱を開け、その中のおかずを一つ口の中へ運ぶ。
うん、とっても美味しい。

「ハルトマン大尉、美味しそうなお弁当ですね」
「へへ、トゥルーデが今朝持ってきてくれたんだ」
「わぁ、愛妻弁当ですか。羨ましいです」
「え!? あ、愛妻って私たち結婚してるわけじゃないし……」
「ふふっ、ハルトマン大尉顔真っ赤ですよ。可愛い〜」
「こ、こら〜! 上官をからかうな〜」
隊のみんなにからかわれて、私はつい声を荒げてしまう。
う〜ん、今ならエイラやシャーリーにからかわれていたトゥルーデの気持ち、ちょっと分かるかも。

「あら、トゥルーデも今日ここに来たの?」
と、私の隣に腰掛けたミーナが訊ねてくる。
「うん、何かこの近くで会議があるみたいで、そのついでにって」
「変ねぇ。私がついこの間、トゥルーデに逢った時はあの娘、しばらく会議はないって言ってたけど……
ひょっとして、久しぶりにあなたの顔を見たくなったんじゃないかしら」
「え?」
ミーナのその言葉を聞いて、私は自分の中で合点がいく。
考えてみたら今朝のトゥルーデ、妙にうろたえていたような……それに、このお弁当だって余り物のおかずを詰め込んだって
言う割には、彩りも飾り付けもすごく凝ってある。
じゃあ、おかずを作り過ぎたっていうのも嘘で、本当は私に逢うためにわざわざお弁当を作ってきてくれたのかな。

「もう、逢いたかったなら、素直にそう言ってくれれば良かったのに」
「ふふっ、でもあなたはトゥルーデのそんな不器用なところも好きなんでしょ?」
「うん、まぁね。そっかー、トゥルーデ、私に逢うためにわざわざ来てくれたんだ」
「わぁ、ハルトマン大尉、バルクホルン中佐とアツアツですね〜」
「だ、だから! 上官をからかわないの〜」

――――――◆――――――

――その日の夜、溜まってた書類の記入を全部終えた私は、トゥルーデの家に電話をかけた。

「もしもしトゥルーデ?」
『どうしたエーリカ? こんな時間に』
「ごめんね。書類が中々片付かなくて、電話かけるのも遅くなっちゃった。もしかして、クリスに本の読み聞かせでもしてた?」
『……お前、私の家に盗聴器でも仕掛けてるのか?』
「へへ、トゥルーデならやってそうだなって思ったんだ。あんまり難しい本だとクリスも混乱しちゃうだろうから、程々にね。
あっ、そうそう。今日のトゥルーデのお弁当、すっごく美味しかったよ。ありがとね」
『そ、そうか。喜んでもらえて何よりだ』
「トゥルーデのお弁当、また食べたいなぁ……ねぇ、良かったら今度また、お弁当作ってくれる?」
『……か、考えておく』
しばらくの沈黙の後、トゥルーデがそう答えてくれた。
電話越しからでも顔を真っ赤にしているのが伝わってくる。
「うん、よろしくね。そうだ! 何だったら今度は一緒にお昼食べよ」
『そ、そうだな。それも悪くない』
「うん、絶対楽しいよ。それじゃ、お休みトゥルーデ。クリスにもよろしくね」
『ああ。お休み、エーリカ』

トゥルーデにお休みの挨拶を告げた後、私はベッドの上でごろんと寝転がった。
明日からまた、忙しい毎日が続くけど頑張らなくちゃ。
自分やみんなのためにも、近いうちにまた『愛妻弁当』を届けてきてくれるトゥルーデのためにもね。

〜Fin〜

―――――――――――


以上です。トゥルーデはこれ以降、週1くらいのペースでお弁当を届けに行ってたりしたら萌えます。
ではまた

225 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/01(月) 22:05:58 ID:ZoKoYD0Y
>>221 62igiZdY様
GJ! 豊かな表現力とシャーリーの心情描写が素晴らしいです!
実際こうだったんだろうなーと思います。

>>224 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! お姉ちゃんの愛妻弁当羨ましいです!
エーリカはやっぱり愛されガールですね。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
フミカネ先生のツイッターとイラストを見て閃いたネタをひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

226 名前:riverside hotel 01/03:2011/08/01(月) 22:06:30 ID:ZoKoYD0Y
 雨降りしきる夜、激しく逃げ回るネウロイの群れを追うカールスラントのコンビ。
 一機、また一機とネウロイを叩き落として行くも、ある時点で連絡が入る。
『追撃はそこまでだ。それ以上深追いはするな』
 無線のインカムから美緒の声が聞こえる。
「少佐か」
『ネウロイはこのままロマーニャ北方の巣に後退するものと思われる。これ以上の深追いは無用、お前達は帰投しろ』
「帰投か……基地から大分遠くまで来たが、どうする」
『そうだな……二人の現在位置は把握している。帰りの魔法力は持つか? ギリギリじゃないか?』
「恐らくは」
『無理しないで。この天候下では方位を見失う恐れがあるわ』
「ミーナか」
『よし。連絡をつけて、付近に仮の宿泊施設を手配する。今夜はそこに宿泊しろ』
「地元の軍基地じゃなくて?」
『あいにく、距離がな』
「了解した。方位と距離の指示を頼む」

 山をひとつ越え、言われた通りの場所にやって来たトゥルーデとエーリカ。
 川沿いにぽつりと、小さな村がある。小雨に紛れる様に、小さな明かりがぽつぽつと灯っている。
 村の端の方に、大きな民家らしき建物があった。軒先に何か小さな看板をぶら下げている。
「ロマーニャの言葉は分からないが……あれか?」
「どうだろうね。聞いてみればいいんじゃない?」
 ゆっくりとホバリングしながら近付き、確かめる。
 看板には何かが書かれているが、二人には読めない。
「はて」
 そうこうしているうちに、中から一人の老婦人が出てきた。
「ああ、あんた達かい、軍のお客と言うのは。ようこそようこそ」
 恰幅の良いその女将は笑って手招きした。

 ストライカー整備の為、納屋の隅を借りると、濡れたストライカーユニットを置き、簡単な点検を行う。
「トゥルーデ、タオルとスリッパ借りてきたよ」
「ああすまない。私達のストライカーは恐らく大丈夫だろう。明日も問題無く飛べる筈だ」
「ありがとトゥルーデ。私のも見てくれたの?」
「機械は苦手だが、簡単な点検位はな」
 エーリカからタオルを受け取り、顔を拭うトゥルーデ。雨中での作戦行動と言う事で、何気にびしょ濡れ。雫が滴る。
基地ならすぐに着替えてシャワーを浴びるべき状態だが、この状況ではそんな事も言ってられない。
「濡れてるからって、ついでに服も」
「随分気遣いが良いんだな。そこに置いといてくれ。点検が終わったら、シャワーを浴びたいところだが……」
「シャワーも用意してくれてるってさ〜」
 気楽に答えるエーリカ。
「なら、先に浴びてくるといい」
「了解。お先に〜」
 エーリカはさっさと何処かへ行ってしまった。
 黙々と作業を続ける。一通りの点検が終わった所で501基地への無線通信を試したが、地理的な条件か、連絡は付かなかった。
「まあ、宿泊施設は、ここで良いのか……?」
 宿屋の者は既に連絡を受けていた様だし、何とかなるか、と開き直る。取って食われる様な事は無いだろうと。

 十分程経ってエーリカが戻って来た。
「先にシャワー浴びたよ。トゥルーデも行ってきなよ」
 宿屋が用意してくれたのか、質素な寝間着……だぶだぶの大きさだが……を着ているエーリカ。
「ああ。エーリカ、そのパジャマは」
「借り物。トゥルーデのはそれ」
「ああ、これだな……」
 服を広げてぎょっとする。
「な、なんだこの服は」
「パジャマじゃないの?」
「パジャマ? これが? 妙に黒々しいというか、雰囲気がその……フリルにリボンに」
 顔を赤らめるトゥルーデ。まるで人形遊びで着せる様な服が、そのままサイズを大きくした感じだ。
「照れてる。かわいい」
 にやにやするエーリカ。
「ちがう、そう言う意味じゃない」
「とりあえずトゥルーデびしょ濡れじゃん。風邪ひいちゃうよ。早く早く」
「だだ大丈夫だ」
 服を前にたじろぐエーリカ。
「私達、また飛んで帰らないといけないんだよ?」
「ああもう、分かった分かった」
 エーリカに押され、小さな浴室に入る。

227 名前:riverside hotel 02/03:2011/08/01(月) 22:07:00 ID:ZoKoYD0Y
 熱いシャワーを浴びる。雨粒と汗にまみれた身体の嫌なコーティングが、うっすらと、ゆっくりと溶け落ちていく感覚。
 生き返る。
 ふう、と一息ついて脱衣篭に置かれた服を見る。
 いささか気が滅入るが、他に着替えは無いのだから、仕方無い。
 宿屋のセンスを疑いつつ、フリフリの衣装を身に纏い、エーリカの待つ部屋へと向かう。

 木製のドアを開けると、きい、と蝶番の音がし、中からほのかに食欲を刺激する香りが漂ってきた。
「似合ってるよトゥルーデ」
 いつの間に用意されたのか、簡単な夕食を前にエーリカが笑う。
「ふ、服の話は良い! と言うか、この食事は」
 椅子に腰掛ける。
「今夜のご飯だって。用意してくれた。ロマーニャ料理らしいよ」
「そりゃ、ここはロマーニャだからな」
「何のスープかな? よく分からないけど。あとパンに、何かの肉のソテーとサラダ」
「何の肉か分からないのか……まあ食べられれば何でも良い」
「はい、あーん」
「私に毒味させるのか」
「宿屋の人の親切を、ダメだよそんな風に扱っちゃ」
「エーリカの態度を言っているんだ」
「まあとりあえずはい、あーん」
「……」
 押されっぱなしのトゥルーデは、仕方なく一口、食べる。濃厚なソースに負けない、ガツンと強烈な“肉”の味。
「何だろう。牛肉か? 分からないけど、美味い事は美味い」
「じゃあ一緒に食べようよ」
「何か引っ掛かるが、……まあいい」
 二人でもくもくと食事を済ませる。

 食事が終われば次は就寝、と言う事になる。木製の大きめの寝床を前に、腕組みするトゥルーデ。
「で、ベッドは一つという訳か」
「トゥルーデ、床で寝る?」
「何故私が床に」
「じゃあ私?」
「どうしてそうなる」
「え、じゃあ二人で?」
「別に恥ずかしがる事も無いだろう……」
「顔赤いよトゥルーデ」
「エーリカこそ」
「トゥルーデ、そんな服着て、私を誘ってる?」
 頬を手で隠すエーリカ。
「エーリカ、さっきからにやついてると思ったら理由はそれか。私が好き好んで着ている訳じゃ……」
「なら、軍服着て寝る?」
 エーリカが指差すと、濡れた制服は揃って部屋の中に吊し干しされていた。明日の朝に乾くかどうか。
「参ったな」
「まあ、いいじゃん」
 言うなり、ベッドに押し倒す。
「うわ、エーリカ」
「何か、こんな感じなのかな」
「?」
「新婚旅行とかさ」
「いきなりな話だな」
「だって、いずれはするでしょ? したいでしょ?」
「それは、まあ……」
「予行演習だね。事前に勉強しておかないと」
「どんな勉強だ」
「トゥルーデの服、フワフワして面白い」
 胸に顔を埋めるエーリカ。ふんわりとした感触の奥に、熱い鼓動が脈打って聞こえる。
「こ、こらエーリカ」
「楽しいね」
「お前という奴は……」
 エーリカを抱きかかえると、そのままポジションを変えるトゥルーデ。押し倒す格好になる。
「いやん♪」
「いやん、じゃない」
 そこで、はたと気付く。ごろごろとベッドの中を動いているうちに、エーリカの寝間着がはだけ、脱げかけている。
肩は露わに、胸まで露出している。
「お、おい、エーリカ……」
「あ、やだトゥルーデ。私脱がせて欲情してるんでしょ」
「そ、そんな事……」
 エーリカに軽くキスされる。飛びかける理性を抑えつつ、ごくりと唾を飲み込み、“愛しの人”の顔を見る。
 トゥルーデの表情を見ての事か、小さな天使は少し頬を赤らめ、少し探る様な瞳の色を浮かべる。
「ねえ、トゥルーデ……」
「エーリカ、その、あの、」
「もう、何も言わなくて良いよ」
 彼女の方が上手だった。言うなりきゅっと抱きしめられ、もう一度濃厚な口吻を受ける。
 頭の片隅で何かが弾けた感触。
 トゥルーデはエーリカの名を呼び、応えさせる間も無く、自ら積極的に彼女の唇を奪い、身体を奪った。
 エーリカも負けじと“反撃”している間に……
 夜も更け、二人はぐちゃぐちゃに乱れた服を絡ませながら、ベッドの中で浅い眠りに堕ちた。

228 名前:riverside hotel 03/03:2011/08/01(月) 22:07:24 ID:ZoKoYD0Y
 窓から薄日が差し込む。どうやら雨は止み、晴れているらしい。
 ゆっくり起き、身体を見る。もはや服だか布きれだか分からない何かを着、昨夜の愛し合った痕が付いているのを見、
恥ずかしくなって窓の外に目をやる。
 昨夜の暗闇からは想像も出来ない、長閑で平和な、村の姿があった。
 宿のすぐ脇には、緩やかな川が流れていた。雨の濁りも次第に消えつつある。
「あ、トゥルーデおはよー」
 いつ起きたのか、先にエーリカが食事の準備をしていた。
「おはようエーリカ……ってなんて格好してるんだ!」
 一糸纏わぬ……いや、申し訳程度にエプロンを付けている程度で、他には何も着ていない。
「服着るの面倒だから」
「服を着ろ! はかんか!」
「扶桑の新妻はこう言う格好するんだって」
「はあ? なんでそこで扶桑の話が出てくる」
「トゥルーデ、そう言いながらじっと見てるし。スケベ」
「どうしてそうなる! だから、その……」
「抱きしめても良いんだよ。にしし」
 言いながらトゥルーデをそっと抱き寄せ、ぎゅっと唇を重ねる。
 昨日の余韻が残っているのか、トゥルーデは反射的にエーリカの身体を抱くと、続きに耽った。

「はい、あーん」
「だから服を着ろと言うに」
「いいじゃん、なんか新妻みたいで」
「宿屋の人に見られたら困るだろう」
「別に。トゥルーデだってその格好……」
「服が乾くまでの辛抱だ……て言うかなんでこんなフリルの服だのエプロンだの……」
「まあいいじゃん。あーん」
 リゾットをスプーンですくい、トゥルーデに食べさせるエーリカ。
「……うん。普通にうまい」
 口をもぐもぐさせながら呟くトゥルーデ。それを聞いて表情が明るくなるエーリカ。
「ロマーニャの料理ってなかなか美味しいよね。そう言えば、ルッキーニは滅多に作らないけど」
「あれは食べる方専門だからな」
 陽気でやんちゃなロマーニャ娘を思い出し、苦笑するふたり。そしてもう一口、食べる。
「なんか、こう言う素朴な料理、良いよね」
 エーリカは微笑みながらリゾットを食べて、一言。
「美味しい」
「ああ。美味いな」
 まるでゴシック調の服を着たドールの様なトゥルーデ。そしてエプロン一枚だけの、破廉恥な格好のエーリカ。
 二人はもうお互いの格好に慣れた様子で、いつもと変わらぬ様子で食事を済ます。

 帰り際、借り物を返し、宿屋の女将に大体の方角を聞くと、謝礼は後で寄越す旨を伝え、勢い良く二人は飛び立った。
 服も乾き、元通りの二人。昨夜超えた山をまたいだ辺りで、501基地との通信が回復した。
『二人共、大丈夫だったか』
「問題無い。なかなか……」
「貴重な体験だったよ。ねえトゥルーデ」
「馬鹿っ、そう言う事を……」
 無線の先で苦笑いしているミーナと美緒の感覚が伝わってくる。
「と、とりあえず。501基地への誘導を頼む」
 トゥルーデは声を張り上げた。
「無理しちゃって。お土産話も出来たし、帰ってからも楽しめそうだよ。皆行きたがるんじゃない?」
「そうか? 普通の宿……でもないか」
 何だったんだあれは一体、とトゥルーデは内心ひとりごちるも、結局分からず終い。
 エーリカも彼女の考えを察したのか「深く考えちゃだめ」とばかりに、首を振って、くすっと笑った。
 二人は揃って飛び、我が家へ……基地へと帰った。

end

229 名前:名無しさん:2011/08/01(月) 22:08:02 ID:ZoKoYD0Y
以上です。
お泊まりネタって色々有ると思いますが、
他のカプも妄想すると楽しいですね!

ではまた〜。

230 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/08/02(火) 00:25:16 ID:WT7saTSM
>>226 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
GJです。ゴスロリお姉ちゃんとはだエプエーリカの破壊力が凄いです。
お泊りシチュ、美味しく頂きました

さて、私もフミカネ先生Twitterの新妻エーリカを見てたら、いてもたっててもいられなくなったので
1本投下していきます。ではどうぞ

231 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/08/02(火) 00:25:52 ID:WT7saTSM

【新妻エーリカと裸エプロン】

――1947年、バルクホルン姉妹の家

「おはよ、トゥルーデ。ぐっすり眠れた?」
「な!?」
……あ、ありのまま今見た事を話そう。
『私が目を覚ましてすぐに水を飲みにキッチンに赴くと、裸エプロン姿のエーリカがキッチンで料理をしていた』
何を言ってるか分からないと思うが、私自身、今の状況を中々理解できずにいた。
とりあえず私は深く深呼吸をして、今言いたい事を全部エーリカにぶつける。
「な、何でお前が私の家にいるんだ!? 軍の仕事はどうした!? なぜ料理を作っている!? そもそも、その格好は何だ!?」
「質問が多いよ……簡潔に答えると、この前のお弁当のお礼にトゥルーデに朝食を作ってあげようと思ったんだ。
もちろん、軍からちゃんと休みは貰ってあるよ。あっ、この格好はトゥルーデを驚かせたくてやってみたの」
「……人の家に無断で侵入して、料理を作ってる時点で充分ビックリだ」
「無断とは人聞きの悪いなぁ。合鍵をくれたのトゥルーデじゃん。どう? このエプロン、似合ってるかな」
エーリカは悪戯っぽく微笑むと、エプロンを広げて私にウインクをしてくる。
(な!?)
エーリカがエプロンを広げた時に一瞬、彼女の大事な部分がチラリと見える。
さ、さすがに、朝から刺激が強すぎるぞ……
「へへ、どうトゥルーデ? ドキドキしてくれた?」
「ド、ドキドキしないわけがないだろう……馬鹿者」

「ふぁ〜あ、おはようお姉ちゃん……あっ、エーリカさん! おはよう」
と、キッチンにやってきたクリスが何気なくエーリカに挨拶をする。
いや、もう少しこの状況を驚いてもいいんじゃないか?
我が妹ながら少々天然だ。
「おはよ、クリス いいところに来たね。私特製のスープ、味見してみて」
エーリカが鍋の中のスープをすくって、それをクリスに飲ませようとする。
それを見た私は、思わず声を荒げた。
「や、やめろ!」
好意はありがたいが、こいつの料理の腕が壊滅的な事は他ならぬ私が一番よく知っている。
クリスの身に万が一、何かあったらどうするんだ!
私はエーリカからスプーンを奪い取り、それを自分の口の中へと運ぶ。
「まず……くない。いや、むしろ美味い」
エーリカのスープは驚くほど美味だった。
卵すら碌に割れなかったこいつに、こんな料理の才能があるなんて思ってもみなかった。
「へへ、でしょー? ほら、クリスも飲んでみて」
「あ、はい……わぁ、すごく美味しいです。エーリカさん」
「にしし〜、エーリカちゃん特製スープも完成した事だし、朝ごはんにしよ」
そう言ってエーリカは、テーブルの上に自分の作った料理を次々と並べていく。
朝食にしては少々豪勢すぎる気もするが、エーリカがせっかく作ってくれたのだから、残すわけにはいかない。
私とクリスは、椅子に腰かけエーリカ特製の料理に舌鼓を打った。

232 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/08/02(火) 00:26:36 ID:WT7saTSM

「エーリカさん、この芋料理すごく美味しいです」
「うむ。以前、宮藤が作ってくれた扶桑の『肉じゃが』とかいう料理に似てるな」
「へへ、扶桑の料理に詳しい後輩に作り方を教わったんだ。作り方をマスターするのに1ヶ月はかかったかな。
ねぇトゥルーデ、私料理上手くなったでしょ?」
「ああ。キッチンを爆発させかねなかったお前が、人並み以上の料理を作れるようになったんだからすごい進歩だと思うぞ」
「えへへー、これなら私、トゥルーデのお嫁さんになれるかな」
「な!?」
エーリカのあまりに唐突な発言に、私は思わず口に含んでいた芋を噴き出しそうになった。
「な、ななな何を言っているんだお前は!?」
私は何とか芋を飲み込んで、エーリカに言った。
自分の胸の鼓動が早くなるのを感じる。
エーリカが私の嫁……?
「あれ? 私が旦那さんのほうが良かった?」
「そ、そうじゃない! 何で嫁とか旦那とかそういう話になるんだ!」
「ほら、私たち出会って8年になるんだし、そろそろいいかなーって。ねぇ、クリスはどう思う?」
「私、エーリカさんがお姉ちゃんになってくれたらすっごい嬉しいです」
と、目をキラキラさせながらクリスが答える。
「お、おい、クリスまで何を……」
「決まりだね。それじゃ、改めてよろしくね。旦那様♪」
「……わ、私を『旦那様』と呼ぶな〜!」

――――――◆――――――

「ご馳走様」
途中、思わぬハプニングもあったが何とかエーリカ特製の料理を完食する事ができた。
さすがに少々腹がキツイ……
「わぁ、完食してくれたんだ。トゥルーデもクリスも美味しそうに食べてくれるから作り甲斐があったよ。
さてと、食事の後にはお片付けしないとね」
そう言って立ち上がったエーリカを、私は引きとめた。
「片付けなら私がやるぞ」
「いいよ。私が勝手に料理を作ったんだから、後片付けも私がやる。旦那様はゆっくりしてて」
「だ、だから! その呼び方はやめろ! 後片付けをやってくれるなら、せめてズボンは穿いてくれ」
「えっ、何で? あっ、もしかして穿いてたほうが興奮する?」
「そ、そういう問題じゃない! その……目のやり場に困る」
「あっ、そういう事……じゃあ今日はズボン穿いてあげるけど、早く慣れてよね」
「な、慣れるか! 馬鹿者!」

「ふんふふん、ふんふん♪ あっ、クリス、そこの洗剤とって」
「はーい」
鼻歌を歌いながら、慣れた手つきで食器を洗うエーリカの後ろ姿を見て、私は彼女のあの言葉を思い出す。
『私がしっかりしたら安心してくれる?』
エーリカにそう言われ、私は引退を決意した。
そして彼女はその言葉通り、見違えるほど頼もしくなった。
ウィッチとしても、生涯のパートナーとしても……
「……お前ならきっと良い嫁になれるよ」
私は食器を洗うエーリカの背中を見つめながら、彼女には聞こえないように小さくそう呟いた。

〜Fin〜

―――――――――
以上です。マルちゃんや伯爵を交えての花嫁争奪戦ってのも面白そうですが、
今回は平和に終わらせました。
ではまた

233 名前:62igiZdY:2011/08/02(火) 15:51:59 ID:yvQcdV/o
>>223 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
上官としてのエーリカの頼もしい姿にトゥルーデが涙したのがよく分かります。
相変わらず照れ屋さんなトゥルーデがかわいいw

>>226 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
ゴスゲルと裸エプエーリカでここまで描くとは、ご馳走様でした!
その不思議は宿屋の再登場を楽しみしていますw

>> 231 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
エーゲルマジ夫婦!
シャーゲル派の私ですが、最近エーゲルの魅力に囚われ気味です。
非常にニヤリとできましたw


ペリーヌ、エイラと、サウナにて。ちょっと思いついたものを書いてみました。
よかったらどうぞ。

234 名前:不器用な二人 1/2:2011/08/02(火) 15:54:13 ID:yvQcdV/o

「なんだ、珍しいヤツがいるじゃないか」
 サウナに入ったエイラは、蒸気で曇った視界の向こうに、先客を認め驚きの声を上げた。
「別に、私がサウナに入ってて何か可笑しいことでもありまして?」
「いや、充分オカシイって。ツンツンメガネが一人でサウナ……。あ、今はメガネかけてないか」
「だからその呼び方はおやめなさいとあれほど……」
 お約束のやり取りをここでも繰り広げた二人は、やれやれと言った風に肩を竦めた。
「オマエ、サウナ嫌いじゃなかったのかよ」
 ペリーヌの隣に腰掛けたエイラは白樺の葉で相手の身体をぺしぺし叩く。
「ちょ、ちょっと。それ、地味に痛いからやめてくださらない?」
「それがいいんじゃないか。ホレホレ」
 いつもの小悪魔的な笑みを湛えたエイラを見て、ペリーヌは諦観した様子だ。そして水気を含んでもさもさになった金髪を弄びながら、エイラに問うた。
「あなたこそ、今日は一人なんですのね。確かサーニャさんは、今夜は哨戒任務じゃなかったはずでは?」
 その言葉に白樺の葉を打つエイラの手が止まる。
 痛いところを突かれたとばかりに、ギクシャクと身を震わせ視線を反らせた。
(わかりやすい人ですこと……)
 それだけでだいたいの事情を察したペリーヌは、エイラの図星を容赦なく突き刺した。
「その様子ですと、またサーニャさんと一悶着あったんですのね」
「だ、だから……! なんでそこでサーニャが出てくるんダヨ! 私とサーニャは何も関係」
「関係ないはずないでしょう。だったらなぜ、そんなに慌てているんですの?」
「あ、慌ててなんか、いないんダナ。わ、私は別に、いつも通りダゾ!」
「はぁ……。そうですの……」
 これでは押し問答にしかならないと判断したペリーヌは全力で溜息を吐き出し、ふと思い至ってエイラに問いかけた。
「あなたも、私に何か訊きたいことがあるんじゃなくって?」
 そう口にしてからペリーヌは少しだけ後悔した。何を自ら墓穴を掘るような真似を。
「私がオマエに? 別にオマエのことなんか知りたくねーよ」
 予想通りの反応が返ってきたことに目眩を覚えつつも、ペリーヌも食い下がる。
「だから! 最初にあなたが言ったでしょ! 珍しいヤツがいるって!」
 やたらと食いつくペリーヌに、エイラは少しの憐れみを浮かべた表情で呟いた。
「オマエ、そんなに寂しかったのかヨ……」
 バチバチ。
 僅かばかりの電気の奔流に髪を逆立てたペリーヌの鬼気迫る様相に、トネールの一撃を恐れたエイラは大人しくペリーヌに従った。何よりこのままでは神聖なサウナが危ない。
「あぁ、もう。わかったよ! 落ち着けって! それで、ペリーヌはなんで一人でサウナに入ってたんダ?」
 ようやく話に乗った、というか無理やり乗せた、エイラにペリーヌはおずおずと語り出した。
「それは、その……。今日の訓練で少佐にきつく叱られてしまって。それで、先ほどお風呂に入ろうと思ったのですけど、少佐も入られているようで、その、顔を合わせづらくて……」
 いざ話してみるとなかなかに恥ずかしい。
 なんでこんなことに。
 と、自らの不器用さに辟易とした。
「なんだよ、割と思ったまんまじゃんか。ペリーヌは少佐のこととなるとアレだな、まったく。そんなの気にすることじゃねーぞ」
 あっけらかんと語るエイラに、ペリーヌはいよいよ顔を赤らめ爆発した。
「そんなのはどうでもいいんです! さぁ、私も話したんですから、あなたも一人でサウナに来た理由を素直におっしゃい!!!」
「うぇー。なんだよそれ。それこそ関係ないじゃんか」
 それでも話そうとしないエイラに対して、ペリーヌは低く唸りながら詰め寄る。そして根負けしたエイラはようやくその口を割った。
「わかった、わかったよ! 話せばいいんダロ。そうだよ、サーニャと、喧嘩したん、だよ……」
 やっとのことで認めたエイラに、お互いに不器用だとペリーヌは同情を覚えた。

235 名前:不器用な二人 2/2:2011/08/02(火) 15:56:25 ID:yvQcdV/o
「それで、喧嘩の原因はなんですの?」
「えっとだな……。今朝も、夜間哨戒から帰ってきたサーニャが部屋を間違えて私のところに来たんだ。それでベッドに入ってきて、そこまではまぁいつもと同じだったんだけど。今朝のサーニャは、なんていうか、私にピッタリ寄り添ってきたんだ。いつもはそんなんじゃないんだけどな。それで私は、こう、居づらくなって……」
「ベッドから逃げ出したんですのね」
「う……、まぁ、そういうことナンダナ……」
「相変わらずヘタレですこと」
「ヘタ……、ああそうだよ、ヘタレだよ、ヘタレで悪かったな!」
 気持ち良いほどの開き直りを見せるエイラだが、それではせっかくのイケメンが台無しである。
「でも、それだけだと喧嘩なんてことには」
「喧嘩というか……。ベッドから抜け出した後は床で寝てたんだけど、その後起きてきたサーニャに一言『エイラの、バカ』って」
 余りにも鮮明に浮かび上がったその光景にペリーヌは頭を抱えた。
「はぁ、エイラさん。それは全面的にあなたが悪いに決まってますわ」
 もちろんサーニャだって不器用なことには変わりはないのだが。
「うぅ、そう、だよなぁ……。でもさ、今朝のサーニャは、なんか妙に積極的だったっていうか。やっぱりどうしたらいいのかわかんなくなって」
「どうしたらなんて、そんなの決まってますでしょ? 優しく抱き締めてあげるだけ。それだけでしょ?」
 ここ一番の重要なところでヘタレるエイラと、気持ちを上手く言葉に出来ないサーニャ。
 二人の不器用さは度々すれ違い、それでも少しずつ近づいていっているのは明らかで、見守る周囲の人間にとってはもどかしい二人であった。
「優しく抱き締め……って、そんな恥ずかしいこと」
「出来ないはずないでしょ。本当に好きな相手なんだったら」
「す、好きな相手でも……。だったらオマエ、少佐がそんな風に寄り添ってきたら、抱き締められるのかよ!」
「それはもちろん、抱き締められるはず、ありませんわね……」
 冷静になって考えてみれば、そんな状況になったら嬉しさの余り昇天するか、逃げ出すかしかない。やはり同じように不器用な二人であった。
「なんだよ、オマエもヘタレじゃないか。あー、やっぱりツンツンメガネなんかに話すんじゃなかったよ」
「なっ!? 人がせっかく相談にのって差し上げたというのにその言い草はあんまりですわ!」
「相談って、オマエが無理やり言わせたんじゃないかよ」
「元はと言えばなかなか話さないあなたが悪いんじゃなくって!?」
 そしてまた、いつものように口論の繰り返し。一頻り言いたいことを言い合ったあと、どちらからともなく笑みを浮かべていた。
「結局のところ、お互いに不器用だったってことですわね」
「私とサーニャも、私とオマエも、な」
 不器用なら不器用なりに、それぞれに気持ちを伝えるやり方がある。たまにぶつかることがあっても、それもまた前進なのだ。
「それじゃ、私はお先に失礼しますわ。ちゃんとサーニャさんに謝るんですのよ」
「わかってるってば。それくらい言えるさ」
 サウナから出ていくペリーヌの背中に、アリガトナ、という言葉が投げられたことに、結局ペリーヌは気付かないままだった。


  fin...

236 名前:6Qn3fxtl:2011/08/06(土) 18:38:29 ID:DmchYHmI
>>235 62igiZdY様
不器用な二人、いい……。 結局のところ、二人とも大事なところでうまくいかないんですね。
その歯がゆさがまた魅力的です。

お久しぶりです。サーニャイラで1本投下していきます。

237 名前:怖い お話(1/2) @ 6Qn3fxtl:2011/08/06(土) 18:40:01 ID:DmchYHmI
「……ってなわけで、その日哨戒に出ていたメンバーは誰一人として、
基地には帰ってこなかったんだってさ」
「……ふーん」
「どうだ、怖いだろ?」
「……エイラの話なんて、全然怖くないもん……」
そんな強がりをいうルッキーニちゃんはシャーリーさんの軍服の裾を
きゅっとつかんだままで、本当はすごく怖がっていることぐらい、
誰の目にも明らかだった。


どうしてそういう流れになったのだったか、夕飯の後にみんなでお話していたら
みんなが知っている怖い話の話題になって。
お仕事のあるミーナ隊長と坂本少佐は作戦司令室に。
怖い話が苦手なリーネさんは芳佳ちゃんと一緒に自分の部屋に。
バルクホルン大尉とハルトマンさんは夜間哨戒にいってしまって、
残っているのは私とエイラ、シャーリーさん、ルッキーニちゃんの4人だけになっていた。
そして、ルッキーニちゃんが自分の話に怖がっていると気付いてからというもの、
エイラはずーっと、自分が知っている限りの怖い話を続けているのだった。


「シャーリーの影に隠れながらいっても説得力ないぞ。
ま、お子様にはちょっと刺激が強すぎたかな」
「……怖くないもん」
今にも泣きそうなのを唇をきゅっとかんで我慢しているルッキーニちゃんと
勝ち誇ったような顔をするエイラ。
エイラ、ちょっと大人げないよ。

「サーニャの前ではヘタレなくせに、偉そうにすんな、バカエイラ……」
「……なんでそこでサーニャが出てくんだよ」
ルッキーニちゃんの精一杯の反撃にちょっと顔がひきつるエイラ。
「だって本当じゃん、このヘタレダメダメスオムス人!」
「サーニャの前でそんなこというなぁ!」
「さーにゃー、さーにゃー」
「やーめーろー!!!」

「二人ともいい加減にしなよ! エイラも調子に乗りすぎ!」
「エイラ、やめなさい」
見るに見かねたシャーリーさんと私がついに仲裁に入る。
このまま放っておくと、子供の喧嘩になりそうだったし。

「だって、エイラが……!」
「はいはい、ヘタレエイラはほっといて、お風呂入って寝ような」
「うん……」
そうして、ルッキーニちゃんはシャーリーさんに抱きかかえられてお風呂へ。
ヘタレっていうなー!とエイラは抗議していたけれど、自業自得。というか真実。

「エイラも。小さい子いじめちゃだめでしょ」
「別に私はいじめてなんか……」
「反省しなさい」
「……ごめんなさい」
もう、本当に子供なんだから。少しは大人にならないとだめだよ、エイラ。
さぁ、私たちもそろそろ寝ましょう。

238 名前:怖い お話(2/2) @ 6Qn3fxtl:2011/08/06(土) 18:40:12 ID:DmchYHmI
「……エイラ、どうしたの?」
部屋に戻って、すっかり寝る準備を整えてしまった頃になっても、
エイラは部屋のなかを落ち着きなく行ったり来たり。
「いや……その……寝る、今寝るよ」
「そう……じゃ、こっちの明かり消すね」
「うわぁぁっ!!!」
枕元の小さな電球だけを灯して部屋の電気を消そうとすると、
エイラがものすごい勢いで飛んできた。
「だっ、大丈夫だから!私が消すから!サーニャは布団に入っててくれ、な!」
あまりにもいつもとは違うエイラの様子にピンときた私は、あえて何にも言わずにベッドに潜り込んだ。

お布団の中からエイラをみると、妙におどおどしながら戸締りを確認して、
ようやく電気を消す段になって、やっぱりもう一度戸締りを確認してと、ぜんぜん落ち着かない。
「エイラ……寝よう?」
「う、うん……」
「電気消してくれないと、眠れないよ?」
私が声をかけても、エイラはあいかわらず部屋を行ったり来たり。
「ねぇ、エイラ……?」
「ん?」
「もしかして……怖くなっちゃったの?」
エイラの動きが面白いくらいにぴたりと止まった。

「ばっ、バカッ!べっ、別に怖くなんて……!」
「じゃあ、早く電気消して?」
「いや、だからそれは……」
「怖いんだよね……?」
「うっ……」
困ったような顔で私の顔を見ているエイラと、見つめ返している私。
エイラがルッキーニちゃんに意地悪してた理由もなんとなくわかった気がする。

「……じゃあ、今夜だけ、だからね……?」
そういってお布団をめくり上げると、私の横をぽんぽんと叩いた。
「さっ、サーニャ……?」
「一緒に寝てあげる……」
「ええぇぇぇ!!!!」

いつも一緒に寝ているくせに、なんでそんなに驚くのだろう、この人は。
もしかして、本当に私がいつも寝ぼけてエイラのお布団に潜り込んでいるとでも思っているのだろうか。
だとしたら本当にヘタレダメダメスオムス人だ。
「でっ、でも……」
「じゃあ、一人で寝る?エイラちゃん?」
「うぅ……」
「エイラ、私もう眠いんだよ……?」
わざとらしくエイラを急かすと、今日だけだから、今日だけだかんな……と
お決まりのセリフを口の中でぶつぶつと呟きながら、それでもずいぶんと経ってから、
ようやく電気を消して、ベッドのふちにそっと腰掛けた。

「お、お邪魔、します……」
遠慮がちに入ってきたエイラにぎゅっと抱きついて、お布団のなかに引きずり込む。
エイラの顔がすぐ目の前にあって、なんだかこっちまでどきどきしてくる。
「エイラちゃん、今夜はずっと一緒にいてあげるからね」
「さ、さーにゃぁ……」
「ふふっ。いい子、いい子……」
エイラは口をぱくぱくして心臓が止まりそうな顔をしていた。
小さい子の頭を撫でるみたいにエイラのを撫でながら、こんなエイラだったら
子供のままでもいいなぁなんてことを考えながら、私は眠りに落ちていった。


さてさて。夜が明けて、手をつないだままだった私たちにエイラが大慌てをして
ベッドの柱に頭をぶつけて大きなたんこぶをつくったことや、
それ以来、リーネさんよりもずっと怖い話が苦手になったことなんかは、また、別のお話。

fin.

239 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/06(土) 22:35:43 ID:FctB5kzg
こんばんは〜!

>>226 mxTTnzhmさま
あの宿…何故にゴスロリ服があるんだ…?;;
そしてその流れからエーリカのエプロン姿に繋がるだなんて、スゴいです!勉強になります!

>>231 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2さま
早速フミカネさんのツイッターネタですね!
正直、あのイラストだけじゃエーリカの新婚生活的なのを想像出来なかったのですが…このSSで、イメージがだいぶ広がりましたw
へぇ、エーリカってこんな新婚生活を…!

>>234 62igiZdYさま
大好きです、エイラとペリーヌの組み合わせ!マイナーな組み合わせなために、あまり誰も書かれなくて…妄想の蓄えが無くなってきた頃に書いて頂けるとは!
お互いヘタレなコンビを見て、とても癒されます(*´Д`)

>>237 6Qn3fxtlさま
夏ですね!稲川淳二的な?…エイラってルッキーニをこうゆう風にからかってそうですね!あ、あとエーリカも!
てか、サーニャが菩薩みたいですね!エイラを注意したのに、最終的にはベッドに引きづり込むだなんて…まさに「魔性の女」です!


さて、自分もフミカネさんがツイッターにて描いていたヘルマの水着イラストを見てこの物語をひらめきました!
【ヘルマの発情】シリーズ最新作です、どうぞ!

240 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/06(土) 22:36:50 ID:FctB5kzg
【ヘルマの水泳訓練】

「水練に来たのに、ずっとひなたぼっこしてるじゃないですか」

どうも、最近暑いですね!ネットの通販でどこ製かわからないけど、扇風機を買いました!
第131先行実験隊「ハルプ」第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツであります!

お給料の積立金から慰安旅こ…ゲフンゲフン、訓練の一環としてカールスラントが誇るリゾート地・ワルネミュンデに来てるであります!

…が!皆さん、趣旨がわかっていない模様;;
だってこれは訓練の一つなんですよ?!なのに…なのに全員ダラけ過ぎです!!どこの訓練にオイルを塗ったり、ビーチパラソルの下でスポーツ新聞読む輩が居るでありますか!
これは断固、上官に抗議です!

「フフ、そういう生意気は浮き輪なしで泳げるようになってから言いたまえ曹長」
「ムキ〜!こっ、これはですね…浮き輪じゃありません!!!!」
「………は?」
「これは………」
「これは?」
「………すっ、水泳補助道具です!」
「…わかった、訓練して来い」
「…はい…であります…」

すると…急に、

「ヒャッ!!??」

誰かに脇腹を触られたであります!誰です?!こんなに堂々と猥褻行為を働く輩は!?

「ちょっと!!」

すぐさま後ろを向くと…

「ん?」

そこにはたぶん、扶桑の人間が…は?!扶桑?!
だってこれはカールスラント軍の慰安旅行…じゃない、水練じゃあ?!

「ちょっとアナタ!何をするんです、と言うか誰ですか?!」
「ああ、忘れてたな」

さっきまで寝ながらスポーツ新聞を読んでいた上官が起き上がって、

「紹介する。連合軍第502統合戦闘航空団の下原定子少尉だ」
「はじめまして〜」

なんですかぁ…このフワフワした雰囲気は!!

「ごめんなさいね〜、可愛い物をみるとつい触ったり抱きしめたりしちゃうもので」
「うわあ…それ、私で良かったぁ;;街中で他の人にやったら明らかに不審者ですよ;;;」
「申し遅れました、扶桑の下原定子です」
「こ、こちらこそよろしくお願いします…あ!第131先行実験隊『ハルプ』第三中隊所属、ヘルマ・レンナルツです」
「いやあ…つるぺた幼女最高だわ〜!」
「っるさいですよ!余計な御世話です!」

何なんですか?!この人はぁ!!??
…ん?あそこにいるのはハインリーケ大尉?しかもその周りには…前屈みしている殿方がちらほらと…;;

「せっかく海に来て泳がんのか?全員前屈みでおかしな奴らじゃの」
「大尉…すいません、僕シャワー浴びてきます!」
「俺はトイレ行ってきます!」
「???」

あぁ…大尉、自らのミラクルボディの魅力がわからないんですねえ…;;;
で、でも…何を食べたらあんな大きく…(ゴクリ
…ん?さっきまで隣にいた下原少尉…あれ???

「んん〜…カールスラント最高ぉ」

えぇぇ!!??
なななななんで、なんでさっきまで私の横にいた下原少尉が大尉に抱きついてるんですかぁ?!

「レンナルツ!おい、レンナルツ!見てないで、コイツをどうにかしろ!」
「すいません…ってなんで、私が謝ってるんだろ;;」
「なんだ、お前は…ってなんだ、下原か」
「え?!ご存知なんですか?!」
「お互いナイトウィッチだからな」
「はい」
「へえぇ…」
「ヘルマちゃんヘルマちゃん」

241 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/06(土) 22:37:12 ID:FctB5kzg
「ヘルマちゃん?」
「いやあ…相変わらずプリンちゃんは良い体してるねぇ!」
「下原、妾をそんな名で呼ぶでない!」
「あ、あのう…」

こ、個人的に…プリンちゃん…じゃない、ハインリーケ大尉の体に興味が…(ゴクリ
えぇい、こればかりは下原さんに直接聞いちゃうであります!!そっと近付き…、

「何?ヘルマちゃん」
「どんな感じなんですか?大尉の体つきって」
「ん〜…ヘルマちゃんとはまた違うぷにぷに感だね〜」
「へ??」
「ヘルマちゃんが明るいぷにぷにだとしたら、プリンちゃんはエロスなぷにぷに」
「…え、じゃあデニーズとガストの違いみたいな物ですか?」
「ん〜…もっと明確な違いかな」
「じゃあスカイガールズとストライクウィッチーズとか?」
「ん〜、あながち間違いじゃないわね」
「千昌夫とコロッケとか?」
「残念、離れちゃったよヘルマちゃん!」
「美川憲一とコロッケとか?」
「コロッケから離れようよ」
「渡哲也と渡瀬恒彦?」
「ん〜、あながち兄弟ね」
「千葉妙子と世戸さおり?」
「ん〜、あながち坂本少佐ね」

2人でコソコソ盛り上がっていると…、

「やめんか2人とも!!」
「プリ…じゃない、ハインリーケ大尉?!聞こえてました?!」
「あぁ!レンナルツは主旨わかってないし、下原も『あながち』って単語が言いたいだけだろう!」
「プリンちゃん、ツッコミの腕上げたね〜!」
「うわあ…なんだか稽古してたくらい、綺麗なボケとツッコミですねえ;;」


***


ハインリーケ大尉と別れ、再び下原少尉と2人っきりになったであります。
人気のない海岸まで散歩をし………、

「ねえヘルマちゃん」
「はい、何でしょう?」
「水練に来たんじゃなかったの?;;私と油なんか売ってて良いの?」
「ハッ!!」

しまった!!つい下原少尉と一緒にいて、ずっとふざけてた気が;;
イカンであります!これもれっきとした訓練!今すぐ再開しなければ!;;

「そもそも、アナタが…」
「良いから良いから…ん?」
「どうしました?」
「そのさ…腰に付いてるのはなぁに?」
「…これくらい、扶桑にもあるでしょう!」
「ううん、わかってる。なんで水練に浮き輪なの?」
「ちっ、違うであります!これは水泳補助道具です!」
「…要するに浮き輪でしょ?」
「うっ…」

この女…なかなか鋭いであります;;;

「もしかして…」
「もしかして…?」
「ヘルマちゃんって、もしかして…」
「ああ〜っ!皆まで言うな!皆まで言うなであります!!!!」
「そっかそっか〜…へぇ…」
「………」
「………でも、そのままにしとく気?」
「いや、いずれかは…その…;;」
「その、ヘルマちゃんにとって『いずれか』はいつなの?」
「………;;」
「…よいしょっと!」

バシャーーーーンッ!!!!

すると、急に下原少尉が目の前の崖から海に飛び込んだであります;;

「しっ、下原少尉っ?!」
「おいでよ、ヘルマちゃん」
「でも…」
「良いこと教えてあげる。私ね、実は全然飛べなかったんだ」
「へ???」
「今では502部隊のエースって言われてるけどさあ」
「そんな事…自分で言います?!」
「まあまあまあ。最初、飛ぶのが怖くて怖くてしょうがなかった」

さっきまでの威勢は何処かへ行ったのか、急にしんみりした顔になったであります…。

「んで、どうゆうワケかリバウに転属させられて…とある鬼教官の部下になったんだ〜」
「…それで…?」
「続きは、下まで来たら教えてあげる」
「むっ、無理です!こんな高い所から飛び込みだなんて…っ」
「そんなに高くないよ?」
「…っ」
「さっさとしろぉ!!!!へっぽこ曹長!!!!」
「っ?!」
「…って、昔言われたよ。今、意を決するチャンスだよ!」

ここまで言われたら………あぁ、思い出が走馬灯のように…
ミーナ中佐…アレは嫌だったけど、テクは一流でした…

242 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/06(土) 22:37:32 ID:FctB5kzg
唯一、私が主人公のシリーズ物だったのに思わぬところで最終回とは…

「えぇい!」


バシャーーーーーンッ!!!!


あれ…?ここ、足がつくでありますよ?!

「あれ…?そんなに深くない?」
「でしょ?やれば出来る子じゃない」
「とっ、当然であります!」
「ここまで来たら…いってみよ〜!」
「………っ」

ハ…ハメられたぁ〜っ!!!!

「まずは10秒間、海に顔を付けてみようか」
「でも…」
「良いから良いから!」


***


「ふう…」

すっかり陽が傾きかけた頃、私は5m泳げるようになってたであります…。
もうヘトヘトで、砂浜に寝っ転がってます;;立つ気力もないという…;;

てかこの人、ほんわかしてる雰囲気なのに泳ぎの練習時は鬼ですよ!!??

「お疲れ、ヘルマちゃん」
「………」
「あれぇ、怒ってるぅ?」
「疲れてんです!」
「そうかぁ」
「ふう…」
「言いかけてた話の続き、話すね」
「どうぞ、ご勝手に」
「とある鬼教官…まあ坂本さんって名前なんだけど」
「501部隊の?」
「うん。出来ない事を後回しにしてたらね、こんな事言われたんだ」
「どんな事言われたんですか?」
「『明日やろうは、馬鹿やろうだ!わっはっは』って」
「………」
「まあ最後の笑いはどうでも良いとして、そうだよね…一度後回しにしちゃう癖が出来ちゃうと、この先ずっと逃げちゃう事になるんだよ?」

言ってる事は、一理ある…かも…

「その言葉で私は意識改革できたんだ〜。んで、今や502部隊のエースってワケ」
「一言余計です!」
「酷〜い!酷い。ヘルマちゃん!」

でも何だかんだ言って、下原少尉には感謝…してるでありますよ…?




***


「ただ今戻ってまいりました!」

2日後、私は基地へ戻って来たであります!
あ、ハルトマン中尉は低血圧な声(いつも?)で「私は…良い」って言って慰安旅こ…ゲフンゲフン、水練への参加を拒否したであります。

「おかえり、ヘルマ」
「あ、これお土産です。ワルネミュンデのタペストリーです」
「ありがとう…。どうだった?」
「はい…色々な事が学べました」
「そう」
「あの…」
「何?」
「お1つ聞いてもよろしいですか?」
「…構わない」
「ハルトマン中尉は数々の実験などをなさってますが、アイデアが思い立ったらすぐ行動に移すタイプですか?たとえ眠くても」
「ううん」

…へ??

「流石に私でも、睡眠欲や休憩したいって欲には勝てない」
「え…えぇぇ」
「私のモットーは『明日出来る事は、明日にでも出来る』だから」
「………;;;」

…まっ、まあ人によって考え方は様々ですね!;;
『明日やろうは、馬鹿やろうだ!』か『明日出来る事は、明日にでも出来る』でありますよ…ね?





【おわれ】

243 名前:62igiZdY:2011/08/07(日) 04:11:51 ID:OH44hhAk
>>237 6Qn3fxtl様
「じゃあ、一人で寝る?エイラちゃん?」
サーニャのこの台詞に全部もってかれましたw素晴らしい!
サーニャも苦労が絶えないですね。

>>240 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
ヘルマの発情シリーズキター!いつも楽しみにしております。ヘルにゃんぺろぺろ!
振り回されるヘルマさんはかわいいですね。


ストライクウィッチーズ2第6話「空より高く」の外伝的なものを書いてみました。
502を舞台に片想いニパさん視点で。それでは、よかったらどうぞ。

244 名前:願いのかたち 1/3:2011/08/07(日) 04:15:13 ID:OH44hhAk


 その日の昼間の流星は、赤と青の螺旋を描き、願い事が閃くよりも速く、ウラルの向こう側へと消えていった――。



   『願いのかたち』



「高度33333メートル?」
 最初にそれを聞いたときは、なんてキリのいい数字だろう、くらいにしか思わなかった。
「うん。そんなノッポなネウロイが出たんだって」
 ノッポなネウロイってどんなんだよ……。
 とりあえず私は、そのことを語った目の前のノッポな人を巨大化させて想像に置き換えた。
 そして不覚にも吹き出してしまった。
「あ、ニパくん。今、ボクで変な想像したでしょ。やだなぁ、想像だけじゃなくて目の前にいるんだから。さぁ……」
 ボクの胸に飛び込んでおいで! と、腕を広げて飛び込んで来た伯爵を、紙一重のところで躱した。
「飛び込んでおいでって言いながら飛び込んで来る人、初めて見たよ。それとあなたはエスパーか何かですか……」
 そう言っておいて気付く。エスパーじゃなくて、ただの変態だったな、と。
 頭の中はいつでも桃色。そんな人の前で隙を見せてしまった私も迂闊だったなと反省する。
 そして気になる例の数字の話題に戻そうと、伯爵の方に向き直り、盛大に溜息を吐いた。
「ジョゼちゃん、あったかいよ、ジョゼちゃん」
「ちょ、ちょっと。一体、なんなんですかあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!」
 私が躱した伯爵は、飛び込みの勢いはそのままに、たまたま通りかかったジョーゼットさんに抱きついていた。
(ごめん、ジョーゼットさん。半分、私のせい)
 心の中で手を合わせて、伯爵を引き剥がしにかかった。
「伯爵! ジョーゼットさんも困ってるじゃんか!」
「お、ニパくん。ようやくボクに飛び込まれる気になったのかい?」
「なってないし! そんな変な質問されたの初めてだよ!」
 まったく、この人は、サーシャさんでも連れてこようか。
 いや、そんなことしたらスーパー正座タイムが始まってしまう。
 むしろ見つかる前に話を戻そう。
「そんなことより、伯爵、さっきの話ってなんだったの?」
「あぁ、ノッポなネウロイのことかい? なんてことはない、文字通りのことさ。細長い棒状のネウロイで、そいつのコアの位置が……」
「高度33333メートル……」
 二度目にその数字を口にして、その途方もなさにようやく気付いた。
「そんなネウロイなんて、どうやって撃墜すれば……」
「聞いたところによると、ロマーニャ空軍が頑張ってたみたいだけど結局ダメで、501が引き継いだらしいよ」
 第501統合戦闘航空団。
 その名前が出た瞬間、どういうわけかアイツの顔が浮かんだ。
「いくら私たちウィッチでも、高度三万メートルなんて飛べるわけないじゃんか」
 ストライカーでの限界高度は精々高度一万メートル。その三倍もの高さなど、前代未聞、前人未踏の領域だ。
「それが、501は墜とす気満々らしい。あそこの戦闘隊長の座右の銘の通り、不可能はない、ってね」
 バカバカしい話だ。正直にそう思った。
 いくら魔法力があるとは言え、生きて帰れるとは思えない。特攻でもするつもりだろうか。
「この基地からでも、そのノッポさんは見えていたらしいけど。南下してるみたいで、今はもう見えないかな。あ、でもちょっと空に上がれば、見えるかもしれない」
 それほどの巨大なネウロイ。最早、全てが規格外だ。
 そんな奴が相手だと、確かに真正面から挑むのが、一番なのかもしれない。
それでも……。
「それでも、無茶だと思うけどなぁ」
 史上初の試みであろう任務に就かされる誰かに、少しの同情を抱いた。
 それと、何故かアイツのことが頭から離れなかった。
 アイツなら、こんな無茶もやりかねない。
 そう思えてならなかったのだ。
「ねぇ、伯爵。その、任務に就くウィッチって、もう決まってるの?」
 気付けば、伯爵にそんなことを訊いていた。それを知ったって、どうにもならないのに。
「あぁ。確か、リトヴャク中尉、っていうナイトウィッチだったかな」
 アイツじゃ、なかったんだ。
 そのことで少し安堵した自分に、酷い嫌悪を覚えた。
(私ってば、嫌なヤツだな。同じウィッチが危険な任務に就いてるってのに……)
 そこまで回想した私は、とても重要なことを思い出した。
「リトヴャク中尉……、ナイトウィッチ……。それって……」
 そうだ、私はその娘を知っている。
 アイツの手紙の中で。
 それだけじゃない。
 一度スオムスに帰ってきたアイツと一緒にいた……。

245 名前:願いのかたち 2/3:2011/08/07(日) 04:16:14 ID:OH44hhAk

「サーニャさん……」

 全身を、嫌な予感が駆け巡った。
 それだけならまだしも、それ以上に恐ろしい暗い暗い真っ黒な感情の発露に、全力で頭を振った。
(何を考えているんだ、私。嫌だ……。違う、そんなの違う……!)
「……くん、……パく……、ニパくん!」
 伯爵に肩を揺さぶられていることにようやく気付いた私は、正気を取り戻した。
「どうしたんだい? いきなり顔を真っ青にして」
 真面目な顔で心配してくれる伯爵。
 珍しいものが見れたなぁ。
 と、そういう思考が出来たことで、もう大丈夫だろうと思った私は、その場は適当に言い繕って自室へと向かった。


 いつからだろう、アイツのことを追い掛けるようになっていたのは……。


 柄にもなく在りし日のことを思い出していた私は、ベッドの上で幾度目かの溜息を吐き出した。

 アイツは憧憬の的であり、羨望の的でもあり、嫉妬の的だった。
 正反対の二人。
 周囲にはそう映っていただろう。
 かたや戦闘における被弾率ゼロパーセントの、無傷のダイヤモンド。
 かたやユニット壊しの、ツイてない私。
 それでも、何度となく撃墜されても必ず生還する私に対して、いつかのアイツはこう言った。

「私と、おんなじダロ」

 絶対に被弾しない無傷のアイツと、どんな傷を負ってもたちどころに治って、無傷になる私。
 嫌味でも皮肉でも気休めでもなく、曇りなき瞳でそう語ったアイツの言葉は、私の心に魔法でも癒せない、傷を残した。

 (イッルと、同じ……。)

 それからというもの、なにげないやり取りが、さりげない悪戯が、私の心を惑わせた。
 夜も眠れないくらいの狂おしい気持ちが私を支配し、一向に傷を回復させない。
 今までと同じはずなのに、何処か違った感覚。
 赤面することが多くなった私を、アイツは、変なやつだ、と言った。
 どうしてもいつも通りだったはずの距離感が保てない。
 思い悩む私を、良くも悪くも救ったのは、より一層茫漠とした『距離』だった。
 エイラ・イルマタル・ユーティライネン少尉の、ストライクウィッチーズへの転属。
 アイツは、ブリタニアへと旅立った。
 その旅立ちの日、私はボロボロで帰還して医務室のベッドの上にいた。
 アイツを見送ることが出来なかったのは少し寂しかったが、それ以上に冷静になっていく私がいた。
 もう、アイツと顔を合わせるたびに、胸を締め付けられる思いをしなくて済む。
 これでこの傷も癒えるかもしれない。
 それがどれだけ浅慮な考えだったか、すぐに気付くことになる。

 アイツがいなくなってから、私の傷は更に深くなった。


 それからの日々は、ただ我武者羅に大空を駆けた。
 撃墜数も順調に伸びて、エースと呼ばれるに相応しいだけの、戦果もあげた。
 私は、自分自身の空を飛んでいるつもりだった。
 でも気付けば、いつもアイツの背中を追っていた。
 アイツの幻を追っていた。
 それは、どんな障害でもヒラヒラと避けて飛び続けるのに、私は途中でついていけずに墜ちていく。
 どれだけ手を伸ばしても、決して届くことは叶わない。
 触れることも叶わない。
 墜ちていく私はアイツの名を呼ぶ。
 チラッとだけ振り向いたアイツは、私なんて見えていないとでも言うかのように飛び去った。
 その手を、私が掴むはずだった、その手を、黒い魔女と繋いで――。

246 名前:願いのかたち 3/3:2011/08/07(日) 04:20:52 ID:OH44hhAk


「イッル……!!!」
 自分の声が浸透していく中空を見つめて、いつの間にか眠ってしまっていたと気付いた。
 変な夢を見てしまった。
 じっとりとした汗を握った手は、小刻みに震えている。
 夢の中での私は何を思ったか。
 私が掴むはずだったその手をとった、あの娘のことを。

(■チレバイイ……)

 夢の記憶なんて、いつもはすぐに忘れるものなのに、どうしても頭から離れない。
 まるで、それが自分の願いであると囁かれているようで、恐ろしくて、悲しくて、気付けば涙を流していた。

 超高々度でのネウロイ殲滅作戦。
 サーニャさんにその責が任されるとなると、当然アイツもついていくと言い出すだろう。
 アイツはそういうヤツだし、それだけサーニャさんに惚れ込んでいる。
 命の保証などない危険な作戦であることは明白だ。
 それでもアイツは、例え命令違反を犯してでも、飛ぶのだろう。
 それが容易に想像出来たからこそ、怖くなった。
(何を心配しているんだ……)
 アイツは無傷のエースだ。
 それは私が一番よく知っている。
 それに、アイツ自身が言ったことだ。
 私と、同じだって。
 それは、どんなことがあっても、必ず生還するということ。
 そう、大丈夫。
 きっと、大丈夫。
 自分に言い聞かせるように、任務の成功と無事の帰還を祈った……。


 数日後、私は任務の空にいた。
 あれから件のノッポなネウロイがどうなったのか、私は何も訊かなかったし、考えないようにしていた。
 サーニャさんもアイツも、ずっと一流のウィッチだ。
 ツイてない私なんかがあれこれ考えたら、むしろ良くないことが起きるような気さえした。
 そのことを無理やりにでも忘れようと、ここ数日は危な気な戦闘が続いていたかもしれない。
 出現したネウロイを全て墜とし、今日は私も墜ちることなく、空の中にいた。
 作戦終了の報せにホッとした私は、なんとなく天を仰ぎ、目を細めた。
 そして大きく目を見開き、それが何であるか気付いた瞬間、私は隊列を離れ飛び出していた。
 空より高いその場所を流れる、一条の光を目指して。
 それでも私には決して届かない。
 限界高度より遥か上で描かれる赤と青の螺旋は、私の知らない世界の色を見せ、ウラルの彼方へと消えていった気がした……。


「おーい! ニパくん! 急に飛び出してどうしたんだい? 早く帰らないと、またクマさんに怒られちゃうよ」
 追ってきた伯爵の声に、それでも私は天を眺め続けた。
「ねぇ、伯爵。伯爵は、流れ星を見つけたら、何を願う?」
 唐突なその問いに、キョトンとした伯爵は、しかしいつもの笑顔で応えた。
「流れ星? こんな昼間にかい? まぁ、ボクが流れ星を見つけたらもちろん、世界中のかわいい女の子がボクのものになりますように、って願うさ」
 この人に訊いた私がバカだった。
 そして私は呆れるでもなく、溜息を吐くでもなく、少しだけ微笑んだ。
「なんか意味ありげな微笑だね。そんなニパくんもまた、なかなか……」
 一層紳士的な笑みを深めた伯爵が詰め寄ってくるが、私はヒラリと躱して基地へと急いだ。
「お、ニパくん。今の機動、いい線いってたよ。ホントに、どうして今日は絶好調じゃないか」
 少しだけ、アイツに近づけた気がした。
 気がしただけで、いつもの私なら、そろそろお約束のエンジントラブルに襲われそうだけど。
 今日の私なら、たぶん大丈夫。
「そう言えば、ニパくん。ニパくんは流れ星を見つけたら、何を願うんだい?」
 今はまだ届かないその光。
 それでも、いつか必ず。

「私の、願いは――」


   fin...

247 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/09(火) 20:49:40 ID:/yldXPzQ
>>232 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! いいですねグっときますね! やっぱりフミカネ先生のEMT破壊力はハンパ無いです。

>>235>>246 62igiZdY様
GJ! 不器用な二人良いですね! 二人共もっと素直になればともどかしいけど可愛いと言う。
ニパさんの話もせつなくて、けどとても素敵なお話しですね。

>>236 6Qn3fxtl様
GJ! どこか抜けてるエイラと、しっかりしてるサーニャが良いですね。改めて良いコンビです。

>>242 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJ! 定子さんが怖かったり可愛かったりで楽しいです。ヘルマは愛されてるのか不憫なのか……。


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.1573「count your mark」の続きを思い付きましたので
少々書いてみました。
ではどうぞ。

248 名前:count your mark!! 01/03:2011/08/09(火) 20:50:33 ID:/yldXPzQ
 午後三時きっかりに、再びその数字は現れた。
 頭の上にピコンと表示されたその「数」は、減る者こそ居なかったが、おしなべて皆増えていた。
増え方に多少の……多少とも言えないばらつきは有ったが、確実に増加していた。
 ……ただ一人のウィッチを除いて。

 再びの事態に混乱を来す501。先日の“首謀者”たるエーリカとルッキーニは「今度は何もやってない」と頑なに主張、
証拠らしいものも見つからなかった。しかしこうたびたびプライベートな事が露見するのは問題だと言う事になり、
501は暫く、(安全回避の意味合いも含め)他のウィッチ部隊との接触を禁じた。

「ひっつき過ぎですわよエイラさん」
「小さなサウナなんだからしょうがないダロ?」
 サウナの中、汗だくで“密会”する二人のウィッチ。
 相変わらず頭の上の数字がゼロのまま変動しないペリーヌ、そして幾らか増えてはいるが微妙な感じのエイラ。
「で、何で私がオマエにキスしなきゃならないんダヨ?」
 口を尖らせるエイラ。
「貴方この前言ってたじゃないですの! 『サーニャと数が違うゾ〜』って」
「私の真似スンナ!」
「だから、ここはひとつ共同作戦と言う事でいかがかしら?」
「ちょっと待テ。何が共同ナンダヨ。私一つも得しないゾ」
「どうして。サーニャさんと数を合わせるのにちょうど良いんじゃ無くて?」
「だって、キスってしたくもない相手とするもんか普通?」
「それは……で、でも、わたくしにもプライドというものがありましてよ。ゼロだなんて……」
「それはドウカナー?」
 エイラは一瞬にやりと口の端を歪めた後、不意に真面目な顔になって言葉を続けた。
「ツンツンメガネの家柄って、何だったっけ?」
「はあ? いきなり何ですの」
「確か貴族か何かだったよナ? そんな家柄のエラいウィッチが、結婚の前に実はしまくってましたとか知れたらどうするんダヨ」
「……なっ!」
「ほーれホレ、それでもキスしたいのカ?」
「ちょっ、何近付いて来るんですの! 嫌がらせですの?」
「今頃考え変わっても遅いゾ」
 壁際に身体を押しつける。
「あ、熱っ! エイラさん、貴方わざと」
「こうでもしないと逃げられるからナー。私は先読み出来るからナ。私からは逃げられないゾ」
「そ、そうかしら」

249 名前:count your mark!! 02/03:2011/08/09(火) 20:51:21 ID:/yldXPzQ
 ペリーヌの台詞と同時に、不意にサウナの扉が開いた。
「やっぱりここに居たんだ、エイラ」
 サーニャだった。途端に身体が固まり、異様に別種の汗をかくスオムス娘。ペリーヌの言う通り、ここまでの先読みは出来なかったらしい。
「さ、サーニャ!? これには訳が」
「どんな?」
「こここ、これはペリーヌから言って来た事で、その……」
「ちょっ、ちょっとお待ちなさい! 何でそこでわたくしを悪者に!」
「分かってます、ペリーヌさん」
 サーニャは微笑んだ。しかしエイラにとってその微笑みは獅子の咆哮よりも恐ろしく見えた。
「エイラ、私の数と合わせようとしたんでしょう?」
「な、何故それヲ!」
「エイラの考えそうな事だもの」
「じゃ、じゃあ聞くけド、サーニャは何で私より数が多いんだヨ!? おかしいじゃないカ!」
 サーニャはその言葉を待ってましたとばかりに、薄い笑みを浮かべた。
「知りたい?」
「だ、誰とダヨ? まさか、宮藤か? 宮藤なのカ!? アイツなのカ!?」
「知りたい?」
 繰り返される言葉。サーニャの底知れぬ恐ろしさに気圧され、エイラはごくりと唾を飲んだ。
「い……いや、知りたくナイ」
「エイラだって、501(ここ)に来る前に誰かとしてるかも知れないし……」
「そ、そんな事は……無いゾ……多分……」
「ほら、エイラだって」
「わあ、待ってサーニャ!」
「じゃあ、二人で数、増やす?」
「ふふ増やす! 増やしたい!」
 サーニャに手を引かれ、エイラはそそくさとサウナを出て行ってしまった。
 無情にもばたんと閉まる扉。
 一人ぽつねんとサウナに残されるペリーヌ。
「な、な……なんですの一体!」
 ペリーヌは一人立ち上がり、吠えた。

250 名前:count your mark!! 03/03:2011/08/09(火) 20:51:53 ID:/yldXPzQ
 唐突にサウナの扉が開いた。興味深そうに中をひょっこり覗き込んでいるのは……
「何だ、誰かの大声がしたかと思ったらペリーヌか」
「その声は、しょ、少佐!? 申し訳ありません」
「どうした、歌の練習か? ここは熱いんじゃないか?」
 冗談のつもりか、笑う美緒。そのままボディースーツも脱がずバスタオルも巻かずにサウナに入り込むと、ペリーヌの真横にどっかと腰掛けた。
「うむ。これがサウナか。扶桑の風呂とはまた違うな。こう、じりじりと灼ける熱さがまた良い」
 またも笑う美緒。ペリーヌは至近距離で見える美緒の顔がほのかに紅い事に気付く。まだ入って数分もしていないのに何故? と。
「どうしたペリーヌ、悩み事か?」
「え? いえ、その」
 美緒は眼帯をめくってペリーヌの身体を見た。そして微笑んだ。
 どきりとするペリーヌ。
「はっはっは。身体の部位の大きさだの、ナントカの回数だの、気にしすぎなんだ皆は!」
 大声で笑い飛ばす美緒。
「それに、操を守る事も大事なんだぞ。扶桑の言葉だったかは忘れたが」
 思い出す様に、美緒は言葉を続けた。
「は、はあ」
 頷くしかないペリーヌ。
「己の操を守れもしない者が、他人を守れるか、と言う事だ」
 真面目に語り、ひっくと詰まった息をする美緒。思わず聞き入るペリーヌ。
「まあ、そう言う訳で、深く考えるなペリーヌ。お前はいい子だからな。何でも考え過ぎなんだ」
 と言って、ペリーヌのおでこにちゅーをひとつする美緒。そして笑う。
 ペリーヌの頭上の数字は……
 その前に、純情なガリア娘は酔いどれ扶桑魔女の余りの突飛な行動について行けず……失神しかけた。

 よろけつつサウナから出た時、突如として“その数字”は霞と消えた。
 他の隊員も同じく、また消えていた。
 あの時のおでこのチューは数に入るのかしら……とぼんやり考えを巡らせるペリーヌ。

 美緒は酔ってそのままサウナで寝かけたところを、探していたミーナに見つかり“連行”された。
 ミーナは、ペリーヌの事こそ気遣っていたが、それ以上に何やら別の事で殺気めいたものを感じ……、ペリーヌは何も言わなかった。

 もう二度と現れない事を願いつつ……ミーナの再びの厳命により、全てが伏せられた。

 ペリーヌはサウナでの出来事が気になっていたが、どうする事も出来なかった。
 テラスで夜風に吹かれ、黄昏れるガリアの娘。
 夜空に輝く無数の星々、そして一筋の流星。
 ふう、とつく溜め息は、何度も繰り返された。

end

251 名前:名無しさん:2011/08/09(火) 20:52:05 ID:/yldXPzQ
以上です。
これ以上は更なる泥沼の予感が。

ではまた〜。

252 名前:アキゴジ:2011/08/10(水) 04:45:45 ID:lPCIYESI
どうも、アキゴジです。知らないうちにたくさん良作が出てきてますね!

ストライクウィッチーズIFで未登場の501部隊の残りがリーネちゃんと芳佳ちゃんの2人になりました。僕の予想では、リーネちゃんは恐らく故郷のブリタニアを守っていると思います。
で、今回は魔法力を失った後の芳佳ちゃんの話を書こうと思います。ただ、百合要素は無いかもしれません・・・(汗)

253 名前:ストライクウィッチーズIF 宮藤芳佳編 勇者は再び 1:2011/08/10(水) 05:32:09 ID:lPCIYESI
1947年 扶桑皇国。

芳佳「はい、これでもう大丈夫だよ」
女の子「わあ、お姉ちゃんありがとう!」
芳佳「どういたしまして、でも、また転ばないように気をつけてね」
女の子「うん!」

女の子「バイバ〜イ!」
芳佳「怪我したらいつでも来てね〜」

芳佳「ふぅ・・・」
清佳「お疲れ様、芳佳、お茶でも飲む?」
芳佳「うん、ありがとう、お母さん」

 私がロマーニャでの戦いを終えて、2年が経っていた。戦いで魔法力を全て失った私は、実家の診療所で働いている。
 何事も無く、ただ平凡な日々を送る毎日だった。でも・・・

芳佳「お母さん、おばあちゃんは?」
清佳「部屋で寝ているわ、今のところ大丈夫みたい」
芳佳「そっか」

 一年前、おばあちゃんは病気になってしまった。でも、安静にしていれば問題は無いようだ。私と違って魔法力はまだ健在であるにも関わらず、突然の病だった。こんな時、私に魔法力があったらと思うと、自分自身に腹が立つ。

芳佳(・・・今日も良い天気だな)

 あの青い空を見ていると、かつてストライカーユニットで空を飛んでいた頃を思い出す。あの時の事が、何もかも夢だったようにも感じた。でも、一緒に戦った仲間と過ごした時間は決して夢ではないとわかっている。

芳佳(みんな・・・どうしているかな・・・あの空を今でも守っているのかな・・・)

ウゥーーーーーーーーーーーーーーーーーッ・・・・・・

芳佳「!?」

 突然、どこからともなく警報が鳴り出した。

清佳「何かしら・・・?」
みっちゃん「芳佳ちゃん!」
芳佳「みっちゃん!?どうしたの!?何があったの!?」
みっちゃん「さっき軍隊の人から聞いたんだけどね・・・ネウロイがこっちに近づいているって!」
芳佳「え・・・!?」

 ネウロイ、私達が最も恐れる敵。世界を破壊し、人々の住む街を滅ぼす異形の敵。

芳佳「何で・・・何でネウロイが扶桑に!?」
みっちゃん「わからないけど、とにかく軍の人達が速やかに避難しなさいって言ってた!」
芳佳「でも、おばあちゃんが・・・」
芳子「私なら大丈夫だよ、芳佳・・・」
芳佳「あ、おばあちゃん!」
清佳「体は大丈夫なんですか?」
芳子「あぁ・・・これくらいなら大丈夫だよ」
芳佳「じゃあ、早く避難所に行かないと!みっちゃん、案内して!」
みっちゃん「うん!」

254 名前:ストライクウィッチーズIF 宮藤芳佳編 勇者は再び 2:2011/08/10(水) 06:12:13 ID:lPCIYESI
避難所

芳佳「本当にここで大丈夫なのかな・・・?」
みっちゃん「いざという時にはウィッチの人達が付いているから大丈夫だよ」
芳佳「だと良いんだけど・・・」


扶桑皇国海域

扶桑海軍兵1「ネウロイ発見!攻撃開始!」

ドンッ!!ドンッ!!ダダダダダダダダダダダダダッ!!

ネウロイ「オオオオオオォォォォォォォン・・・・・・」

バシュウッ!!ドオオォォォン・・・!!

扶桑海軍兵2「第一艦隊、大破!」
扶桑海軍兵3「くそ!化け物め・・・!」
海軍大佐「怯むな!何としても奴をこの場で仕留めるのだ!!」
全員「了解!」



芳佳「・・・・・・・・・」
みっちゃん「芳佳ちゃん、大丈夫?」
芳佳「うん、大丈夫・・・」

 あの時と同じだ。赤城に乗っていた時、ネウロイに襲われて、おびえていたあの時と同じだ。でも、もう私には魔法力は無い。戦う力は何一つ残っていない。こういう時くらい、魔法力がほんの少しでも良いから出てほしい。そんな思いが込みあがってくる。

芳佳(・・・私、もう誰も守れないのかな・・・誰も助けられないのかな・・・)

オオオォォォォォォォォォン・・・・・・

芳佳「!?」

 突然、聞き覚えのある音に私は震えた。ネウロイの咆哮が、扶桑に響きだした。

兵士1「ネウロイ出現!攻撃準備!」
兵士2「海軍の防衛は破られたのか・・・!くそ・・・!」

ネウロイ「オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ・・・・・・」

 外を見てみると、巨大なネウロイが黒い体をうねりながら空を飛んでいた。その姿に、私はあの時以上の恐怖を感じた。

カアアアァァァァ・・・・・・

芳佳(あ!あれは!)

 ネウロイの身体が赤く光りだした。そして・・・

バシュウッ!!ズドオオオォォォォォォォォォン・・・!!!

 赤い閃光が放たれ、地上を焼き尽くしていく・・・。私はただ、見ている事しかできなかった・・・軍と見習いのウィッチが、ネウロイの攻撃に苦戦している絶望的な光景をただ見ている事しかできなかった。

芳佳「・・・・・・」
みっちゃん「芳佳ちゃん!中に入って!危ないよ!芳佳ちゃん!」
芳佳「・・・・・・何で」
みっちゃん「・・・芳佳ちゃん?」
芳佳「何で・・・こんな事に・・・」

 私は悔しかった。ロマーニャのネウロイの巣を破壊しても、ネウロイは必ずまたどこかに現れる。それがよりにもよって、私の故郷だなんて・・・。私は自分の無力さに涙を流した。

芳佳「私・・・何も守りきれてない・・・私は・・・私は・・・」
みっちゃん「芳佳ちゃん・・・・・・」
芳佳「うっ・・・うっ・・・」

 何が守る事が出来ただ。何が願いが叶っただ。私はただ力を失ってしまっただけじゃないか。私は、何の為に力を使ったのか・・・。誰の為に使ったのか・・・。

255 名前:アキゴジ:2011/08/10(水) 06:13:56 ID:lPCIYESI
とりあえず、ここまでにしときます。芳佳ちゃんの2年後ってホントにどんなんだろ・・・気になって仕方がありません。
それでは失礼しました。

256 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/12(金) 22:53:22 ID:dHCB2zYQ
>>255 アキゴジ様
GJです。続き気になりますね。楽しみにしています。

こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

257 名前:snare 01/06:2011/08/12(金) 22:58:50 ID:dHCB2zYQ
 陽射しもようやく落ち着いてきた午後。
 誰も居ない食堂で、ジュース片手にお喋りに夢中になる二人。
 ブロンドの自称「天使ちゃん」は、オラーシャの娘を前に色々話を聞かせる。
 それに呼応して銀髪の「天使」は、くすくす笑ったり、言葉を返す。
 いわゆる「かしましい」状況がそこにあった。

 だが会話の途中不意に、顔色を曇らせるサーニャ。
「どしたのサーにゃん」
 首を傾げたエーリカはサーニャの顔を覗き込む。サーニャはエーリカの目をちらちらと見ながら躊躇いがちに言った。
「……エイラの事なんだけど」
「エイラねえ。またヘタれたとか?」
「違うの。私の為に、無理とか無茶し過ぎなんじゃないかって」
「無理に無茶、ねえ」
 エーリカは自分の髪の毛をくるっと巻いたりして遊んでいる。
 思い出すのは、高高度迎撃戦……エイラが無理矢理サーニャを護ったと言う、あの事。その他、色々。
「エイラって元々そう言うキャラじゃん」
「キャラって……」
「あーでも、分かるよ。好きな人の為に精一杯になる気持ちは」
「そう、ですよね。ハルトマンさんも、マルセイユ大尉と決闘した理由……」
「あー、あれね」
 いつぞやの“対決”を思い出し、照れ笑いするエーリカ。
「手強かったよ」
「マルセイユ大尉が?」
「勿論トゥルーデに決まってるよ」
 サーニャの質問に茶化すエーリカ。ふっと笑うサーニャ。しかし、胸に手を当て、呟いた。
「でも、私、たまに見ていて辛くなる事が有るんです」
「それはサーにゃんもエイラの事を大切に思ってることの裏返しじゃないの?」
「……」
 言葉に詰まるサーニャ。
「じゃあ、確かめてみる?」
「どうやって?」

 二十分程待っていると、埃まみれになったエーリカが部屋から出て来た。
「スーパーセクシーギャルの魔法の薬だよ」
 にやっと笑うエーリカ。
 化粧水の小瓶らしきものに入った謎の粉。
「それは一体?」
「前にウーシュから送られて来たんだ。何でも人の記憶を操作出来るって言う……」
「そんな物騒な」
「でしょ? それに冗談だと思って、何もしてなかったんだけど」
「で、それを?」
「お互い、使ってみようよ」
 エーリカは口の端を歪めた。

258 名前:snare 02/06:2011/08/12(金) 22:59:19 ID:dHCB2zYQ
 訓練の合間、椅子に腰掛けたままうたた寝をしているトゥルーデの脇にささっと忍び寄るエーリカ。
 小瓶の封を解き、粉をトゥルーデの鼻先にふっと吹きかける。
「トゥルーデは私の事を忘れる。トゥルーデは私の事を忘れる。エーリカ・ハルトマンなんて知らない」
 ぼそぼそと繰り返す。うなされた様に「う、うん、うーん……」と唸るトゥルーデ。
「使い方はこんな感じ。で、私隠れるからサーにゃん、トゥルーデ起こしてみてよ」
「は、はい……」
 言われた通り肩にそっと手を掛けると、トゥルーデは、かっと目を見開き、何事かと辺りを見回した。
「な、何だサーニャじゃないか。どうした、何か急用か?」
「いえ。あの、ちょっと聞きたい事が」
「ああ。何でも言ってみろ。相談に乗るぞ」
「ハルトマンさんの事なんですけど」
 “愛しの人”の名を聞いたトゥルーデは、一瞬溜め息を付いた後、きょとんとした顔をしている。
「?」
「あの、バルクホルンさん?」
「誰だ、それは?」
「えっ」
「そんな奴知らないぞ。有名な奴なのか? 軍人か? ……ん。私は何で指輪なんて付けているんだ」
 ふと、自分の手を見て、指に煌めく指輪を不審に思うトゥルーデ。
「誰だ、私にイタズラしたのは。……まあいい」
 トゥルーデは指輪をそっと外すと、大事そうに上着のポケットにしまった。
「バルクホルンさん、それ……」
「後で皆に聞いてみるか。誰かの大事なものだろうからな」
 そう言うとトゥルーデは立ち上がった。
「あの、どちらへ?」
「ストライカーの調整で、整備員に言い忘れていた事を思い出した。ちょっとハンガーに行ってくる。
そうだ、何か相談が有るならいつでも私に言ってくれ。何でも聞くからな。501は家族だ、だから私を姉だと思って良いんだぞ」
 トゥルーデはそう言って、部屋から出て行った。
 隠れていたエーリカは、こそこそと姿を現すとサーニャに言った。
「ね。私に関する一切の記憶を無くしてる」
「ねって、ハルトマンさんの事、まるで存在すら無いかの様に」
「そう言う薬だもん」
 説明するつもりが、少し強い口調で言ってしまうエーリカ。何故自分でもそんな気分になるのか分からない。
「あ、ゴメン、サーにゃん。サーにゃんに怒る事じゃなかったね。じゃ、エイラも試してみようか」
「う、うん……」

 エイラは自室でぐっすりと眠っていた。
「やり方は私のを見ての通り。やってみて……やっぱりやめる?」
「ううん。エイラにとって、それが良いなら」
「じゃあ、やって」
 サーニャは意を決して、エイラの枕元に立ち……小瓶から粉を少量出し、ふっとエイラの顔に吹きかける。
「エイラが私の事を忘れます様に」
 うーん、とエイラが唸る。それっきり、変わらぬ寝息を立てる。
「さ、行こう。後でどうなるか、見物だよ」
 エーリカは小瓶を受け取ると、ポケットにしまった。

259 名前:snare 03/06:2011/08/12(金) 22:59:47 ID:dHCB2zYQ
「おッ、見ない顔ダナ。新人カ? それともお客サン?」
 夕食時、食堂でばったり顔を合わせたエイラとサーニャ。エイラは初めて出会ったかの様に言った。
「エイラ……」
「えっ何で私の名前知ってるンダ? 気味の悪い奴ダナ」
 エイラは興味無い、と言った感じで自分の席に着いた。
「エイラ、お前新しいジョークでも思い付いたのか?」
 シャーリーが声を掛ける。
「何の話ダ?」
「全く、からかうのも大概にしておけよエイラ」
 トゥルーデも席に着き、エイラに小言を言う。
「何だヨ大尉二人して。私をからかおうってのカ?」
「はあ? どうしたエイラ」
「サーニャをあんまり虐めるのは良くないぞ」
「誰だソレ? 虐めるも何も、初めて会った奴にどうすれば良いんダヨ」
 それを聞いたシャーリーとトゥルーデは顔をひきつらせた。
「ちょっと、堅物……エイラ大丈夫か?」
「これは問題だなリベリアン。まさかケンカでもしたのか、それとも……」
「あれ、何か有ったの?」
 何食わぬ顔をしてエーリカが隣に座った。
「ああ、ハルトマン、聞いてくれよ。エイラ、またサーニャとケンカしたみたいなんだ」
 シャーリーがサラダをもしゃもしゃと食べながらエーリカに言う。
「へえ〜」
 あくまで平静を装うエーリカ。
「まったく、いつもは磁石でも付いてるかの様に仲が良いのに、喧嘩してどうするんだ……で、リベリアン」
「ん? どうした堅物」
「こいつは誰だ? 見た所カールスラント軍人に見えるが。501の来客か?」
 エーリカを指して真顔で聞くトゥルーデ。
「はあ!? お前は何を言ってるんだ」
 驚いてがたんと椅子から立ち上がるシャーリー。
「何をそんな大袈裟な。……有名人なのか?」
 平然と構え、料理を口にするトゥルーデ。
「堅物までおかしくなっちゃったのかよ!」
 シャーリーは頭を抱えた。
「大丈夫、シャーリー。理由は後で話すから」
 エーリカがシャーリーのすぐそばに近寄り、ひそひそ声で説明する。
「おい、また何かやらかしたのか」
「ちょっとした実験。大丈夫」
「ホントかよ」
「今、トゥルーデとエイラ、少し言動がおかしいけど気にしないで」
「しないでって言われてもなあ。あたしらが気にするよ」
 戸惑いを隠せないシャーリー。
「そこで何を喋っている? 食事の時間はきちんと食事に専念しろ。来客か誰かは知らないが、お前もだぞ」
 エーリカに言うトゥルーデ。言葉がきつい。

 エーリカとサーニャは、示し合わせて空き部屋に寝具を持ち込み、寝ることにした。
 ヘタに接触してしまっては「実験」が台無しになると言う理由。だが、それよりも……
 エイラもトゥルーデも、態度がきつい。それが妙に、心の隅にちくちくと刺さる。微かに見えるだけで抜けない棘の様に。
「みんな、何も言わなかったけど……」
 心配顔のサーニャに、エーリカは強がって見せた。
「大丈夫、ミーナも少佐も『程々に』って言う程度だし。明日には直ってるんじゃない?」
「だと良いんだけど」
「大丈夫だって。さ、寝よサーにゃん」

260 名前:snare 04/06:2011/08/12(金) 23:00:14 ID:dHCB2zYQ
 だが翌朝になっても、トゥルーデとエイラは変わらなかった。
「さて、今日も元気に訓練だ」
「あー、面倒ダナ」
 本人達は全く変わらない様子だが、周囲は心配していた。
 皆、何かを言おうとするも、エーリカとサーニャにそれとなく雰囲気で止められ、言うに言えない。
 エイラは一人気ままにさっさと食事を済ますと、他の隊員達には興味ないとばかりにさっさと席を立ち、食堂を去った。
 トゥルーデも普通に食事をしているが、その「普通」の感覚がより不気味に、そして奇異に映る。
「何だ、私に何か問題でも有るのか? リベリアン、言いたい事が有るならはっきり言ったらどうだ」
 そんな皆の態度を不審に思ったのか、シャーリーを名指しして問うトゥルーデ。
「いや、お前さ。何かすんごい大切な事、忘れてね?」
 朝食の蒸かし芋を一口食べながら、質問に質問で返すシャーリー。
「大切な事? ……はて、何か有ったか?」
 腕組みし、真面目に考え始めるトゥルーデ。
「訓練プログラムは問題無い。食事当番も確認済みだ。スケジュールも……」
 一通り考えを巡らせた後、トゥルーデは真顔で答えた。
「何も無いぞ」
「おい! ちょっと大丈夫かよ……」
「生憎だがお前に心配される程、私はまだ耄碌してないからな」
 シャーリーの不安を鼻で笑うと、シャーリーの後ろ、トゥルーデから見えない位置に座っていたエーリカに向き直って、厳しい言葉を投げかける。
「で、そこのカールスラント軍人。せめて名前位は名乗ったらどうだ。昨日からずっと私の事を見てる様だが。監視員か?」
 何か言おうとするも、咄嗟に言葉が出ない。ジョークを言える雰囲気ではなかった。
「何処の所属か知らないが、名前すら名乗らず、勝手につきまとうとは失礼じゃないか? 後で本国軍に照会するからな」
 そう言うと、不機嫌そうにトゥルーデは席を立ち、早足で去った。
「ハルトマン、大丈夫かよ……」
 シャーリーは呆れ気味にエーリカを見る。
 「うーん。流石にちょっとまずいかもね」
 言葉こそ余裕だが、困った表情をしている。事態は思ったよりも深刻だ。
 エーリカはサーニャを見た。エイラとの関係が「無」になったサーニャは、どうして良いか分からない表情をしている。
「なあ、ハルトマン。何をしたか知らないけど、これは流石にまずいんじゃないか? 他の奴等もおかしいって気付いてるし
余計にややこしくなったら……」
「大丈夫」
 とだけ言って、エーリカはサーニャの手を取り、食堂を後にする。
 残された隊員達は、微妙に気まずい空気の中、もそもそと食事を続けた。

「さすがに、まずいですよね……」
「ちょっと、薬がきつすぎたかな。予想以上だね」
 基地のテラスで、ぼんやりと呟くエーリカとサーニャ。
 ちょっとした悪戯心、そして漠然とした不安感から決行した今回の「実験」は、エーリカとサーニャに想像以上のダメージを与えていた。
 そよ風が二人の髪を撫でる。不意にやってきた一陣の風が、整えられた髪を掻き乱す。
 んもう、と愚痴りながら髪をかき上げるエーリカ。サーニャも両手でそっと髪を直す。
 ぽつりと、手摺に肘を付き、呟くサーニャ。
「本当に、私の事、わすれちゃったのかな……」
「サーにゃん、忘れて欲しいって言ってたじゃない」
「でも、実際、忘れられると……」
 エーリカは寂しげに笑った。
「サーにゃんらしいね」

261 名前:snare 05/06:2011/08/12(金) 23:00:59 ID:dHCB2zYQ
「あ、こんな所に居タ!」
 早足でやって来たのはエイラ。サーニャを無視してエーリカに詰め寄ると、いきなり怒り始めた。
「何か私にイタズラしたって本当カ? 一体何したんだヨ?」
「え、何の事?」
「シャーリーや皆に聞いたゾ。私に何のイタズラしたか言えヨ!」
「いやー、悪戯じゃなくて、簡単な実験?」
「勝手に人の身体で実験スンナ!」
「身体じゃないんだけどね」
「余計にタチが悪いゾ!」
「やめてエイラ。もう良いの」
「何だヨお前。……てか、この前からずっと気になってたけど、誰コレ?」
「エイラ……」
 赤の他人を見る様な……しかもまるで興味ないと言った風に自分を見るエイラ。サーニャはそんな彼女を見ていられなくなった。
「イヤマア、そりゃ、なかなかの美人だし気になるけド、コイツ何て言うか……アァモウ!」
 頭をかきむしるエイラ。
「もういい、エイラ」
 耐えられず、立ち去るオラーシャ娘。髪を靡かせ、背を向ける。
「まっ、待ってサーニャ!」
 ぽろっと、名前が出る。
「ん? サーニャ? ……そうだ、サーニャ。サーニャ!」
 久々に愛しの人から呼ばれる事が、こんなに嬉しい事とは思わず、サーニャは立ち止まったまま、服の袖で目を擦る。
「エイラ、分かるの? 私の事」
「何言ってるんだバカ。忘れる訳無いダロ?」
「良かった、エイラ……」
 涙ながらに抱きつくサーニャ。
「うわ、大丈夫カ。何が有ったんだサーニャ。もしかしてハルトマン中尉に悪戯されたのか?」
「それ、エイラ」
「えッ?」
 エイラが振り返ると、エーリカの姿は無かった。

 トゥルーデは自室でひとり報告書を書いていた。
 扉が開く。
「ノック位しろ」
「ここ、私の部屋だもん」
「だからお前は誰なんだと聞いている」
「思い出すまで教えない」
「思い出すも何も、初対面でそんな事無いだろう。私はエスパーか? 良いから私の邪魔はするな」
「トゥルーデ……」
 びくりと肩を震わせ、椅子から立ち上がる。
「!? 何で私の、その呼び方を知ってるんだ」
「やっぱり、本当にそっくり忘れちゃったんだね、トゥルーデ」
 悲しそうなエーリカの顔を見て、トゥルーデはペンを置き、立ち上がった。
「……もしかして、私の知り合いか?」
「そんなんじゃないよ!」
 怒るエーリカ。
「いや、でも、その顔を見ていると……待て!」
 部屋から出て行こうとするエーリカの腕を握る。
 エーリカの目に、うっすら涙がにじむのを見て、思わずトゥルーデは抱きしめた。
「お前が誰かは知らない。でも、過去に大切な関係であったなら」
「……」
「最初から、もう一度、お互いの事を知るのも良いんじゃないか? その、名前とか、そう言う……」
 エーリカが身をトゥルーデに寄せた。少しよろける。
 エーリカのがらくたに身体が当たり、どさどさっとモノがトゥルーデの「エリア」に侵入する。
「わ、私のジークフリート線が!」
 トゥルーデは仰天した。そしてエーリカに言った。
「ジークフリート線は何人たりともも超える事は出来んのだ、ハルトマン! ……ん? はると、まん?」
 自分の腕の中に居る、小柄な娘を見る。そして、頭の中の曇りが一気に晴れる。
「え……エーリカ。エーリカ」
 ぽつりと、名を呼ぶ。繰り返し、反芻する。
「その呼び方、聞きたかった、トゥルーデ」
 エーリカは涙を拭いて、そっとトゥルーデにキスをした。

262 名前:snare 06/06:2011/08/12(金) 23:01:24 ID:dHCB2zYQ
 事の顛末を聞かされたトゥルーデとエイラは、ベッドの上に正座するエーリカとサーニャを見、溜め息を付いた。
「そんな事をしていたとは……私達を一体何だと思ってるんだ」
「止めろヨ、こんな事。誰が得するンダヨ」
 口々に文句が出てくる。
 エーリカとサーニャは声を揃えて答えた。
「反省してます」
「してます」
「全く……このまま私達が忘れたままだったらどうするつもりだったんだ」
 呆れるトゥルーデ。エーリカは言った。
「それは、トゥルーデ言ってたじゃない。もう一度初めからって」
「わ、私はそんな事言ったか?」
 急に焦るトゥルーデ。エーリカはエイラに理由を聞いた。
「で、エイラはどうしてサーにゃんの事どうして思い出したんだい?」
「頭の中でずっとモヤモヤしてて、何も思い出せないケド、サーニャが立ち去るの見て、そのまま行かせたらダメだって、
頭の中で声がした。気付いたら思い出してタ」
「なるほどねえ。で、トゥルーデは?」
「エイラと似た様なものだ」
「でも大尉、指輪は外してもずっと大切に持ってたんだナ」
「これは……何か、大事に持っていないといけない気がしてだな……」
 エーリカがトゥルーデの指輪を手に取り、もう一度指にはめる。
「これで元通り。ね?」
「それで良いのか」
「良いの良いの」
 一瞬の間。トゥルーデとエイラは立ち上がり握り拳を作る。
「と言うか、良い訳無いだろう!」
「そうだゾ? こんな屈辱、と言うかアブナイ事しちゃダメじゃないカ!」
 怒るトゥルーデとエイラ。二人に向かって、エーリカがにやっと笑う。
「じゃあ、今度は私達が二人を忘れる?」
 聞いたトゥルーデとエイラは仰天した。
「絶対に許さん」
「それは勘弁してクレ」
 二人の言葉を聞いて、エーリカはにしし、と笑う。
「ね、サーにゃん」
 エーリカはサーニャにウインクして見せた。
「やっぱり、大事なんだよ。分かった?」
「うん。何かハルトマンさんに迷惑掛けちゃったみたいで……」
「いいのいいの。サーにゃんだし」
 くすっと笑い合う二人。
「とりあえず、お前は反省しろ、エーリカ」
「行こうサーニャ」
 トゥルーデとエイラは、それぞれ「愛しの人」の腕を取った。
「サーにゃん、ミヤフジが前に言ってた扶桑の諺。『雨が降って地面が固くなる』って話。こう言う事じゃないかな」
「なるほど」
 くすっと笑うサーニャ。エーリカとサーニャに嫉妬したのか、エイラはぐいと腕を引っ張り、部屋を出て行った。
 部屋に残されたエーリカとトゥルーデ。
「ごめん、トゥルーデ」
 溜め息をひとつついたトゥルーデは、苦笑した。
「分かった。もう良い。もう良いんだ、エーリカ」
 そっと抱きしめ、口吻を交わした。
 一日ぶりのキスが、とても愛おしく感じる。
 今頃はサーニャとエイラも、同じ気分であるに違いない。きっと。

end

263 名前:名無しさん:2011/08/12(金) 23:02:40 ID:dHCB2zYQ
以上です。
特定の人だけの記憶(思い出)がなくなるとどうなるのかなーとか
色々考えてみましたが難しいですね。

ではまた〜。

264 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/13(土) 21:34:18 ID:GH11Mb2c
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

265 名前:Le Tour de 501 01/03:2011/08/13(土) 21:35:08 ID:GH11Mb2c
 基地のハンガーの片隅に置かれた、フレームが煤けた一台の自転車。
 トゥルーデは今まで気付きもしなかったその乗り物に目をやり、こんなモノがあったのかと首を傾げる。
「どうしたのトゥルーデ?」
 エーリカがぽんと肩を叩いた。
「いや、あの自転車、どうしたんだろうな」
「基地の整備の人が使ってるとか?」
「それならあと数台は無いと不便だろう」
「ミーナに聞いてみたら?」

「ああ、あの自転車ね。確か何処かの軍からの補給品に混じっていたのだけど……」
 昼食の最中、ふと聞かれたミーナは子細までは思い出せないと言った感じで首を横に振った。
「そうか。すまないな、急に」
「いえ、悪いわね、力になれなくて。それでトゥルーデ、あの自転車がどうかしたの?」
「いや……ちょっと気になっただけだ」
「そう」
 自転車の事を聞きつけた美緒は芳佳に言った。
「ふむ、自転車か。よし、今度の訓練メニューに取り入れるか!」
「は、はい?」
 突然の事に驚く芳佳。
「自転車か。堅物は乗れるのかい?」
 ルッキーニをあやしていたシャーリーが興味深そうに聞いてくる。
「乗る位当たり前だ」
「でも話を聞くと、錆びてそうじゃないか。ここはひとつ、あたしに任せてみないか」
 ニヤリと笑うシャーリー。
「リベリアン、お前……」
「何だよ堅物」
「まさか、自転車にエンジン積んだりしないだろうな」
「あれ、何で分かったんだ?」
「それは自転車じゃなく、もはやバイクだろうが!」
「あー、そう言われればそうかも。そう言えば、確かカールスラントのストライカーにジェッ……」
「断る」
「せめて最後まで言わせろ」
 むっとするシャーリー、イラッとするトゥルーデ。
 エーリカはそんな空気を吹き飛ばすかの様に、二人の間に割って入った。
「改造とかやめようよ〜。ねえシャーリー、普通に直せない?」
「まあ、錆取って少し直して部品に潤滑油塗る程度だろ? オーバーホールならおやすい御用だ」
「じゃあお菓子一袋でよろしく」
「乗った」
 エーリカとシャーリーのやり取りを聞いて、やれやれと肩をすくめる堅物大尉。

266 名前:Le Tour de 501 02/03:2011/08/13(土) 21:35:58 ID:GH11Mb2c
 午後非番だったシャーリーは、いとも簡単に自転車を仕上げて見せた。
「ほれ、出来た。自転車は構造も割合単純だし、動力源が人力だからな。簡単なもんさ」
 見違える様に、美しくなった自転車。フレームは磨かれ銀色に輝き、タイヤやチェーンも万全だ。
「ニヒー さっすがシャーリー」
「ちょっと乗ってみるか」
 シャーリーはサドルに跨がり、よいしょっとペダルを漕いでみた。後ろの荷台にひょいと飛び乗るルッキーニ。
 均一に塗られたグリスのお陰か、滑り出しは悪くない。
 しかし、漕いでいるうちにみるみる速度が上がる。
 ルッキーニは、シャーリーが軽い試験運転でなく、とあるひとつの目的……スピードに傾倒しつつある事を、その加速で感じ取り恐怖した。
「しゃ、シャーリー怖い、はやすぎ! ウジャーシャーリー耳出てる耳! 耳!」
「何処まで加速出来るかなっ」
「こらーリベリアン、何をやっているんだ! ルッキーニを振り落とす気か!」
 様子を見ていたトゥルーデに怒鳴られ、後ろを見る。必死でしがみついているロマーニャ娘を見、はっと正気に返る。
 キキッとブレーキを掛け後輪を軽くスライドさせながら、惰性で皆の元へ戻って来るシャーリー。
「いやー悪い悪い、つい」
「お前は何でもかんでもスピード出そうとするからな……見ろ、ルッキーニが怖がってるじゃないか」
「ありゃ、ごめんなルッキーニ」
「グスン、シャーリーのばか! こわかった」
「ごめんよルッキーニ、この通りだ。気分転換におやつでも食べよう。ハルトマン、おかしひとつ貰うぞー」
「ひとつだよー」
 ルッキーニの手を引き、自転車と工具をそのままにハンガーから離れるシャーリー。
「おいリベリアン、この工具と自転車は」
「あー、堅物乗ってて良いよ。工具は後であたしが片付ける」
「まったく……」
 トゥルーデは仕方ないとばかりに、自転車に跨がった。
 エーリカはそんな同僚を見、声を掛ける。
「トゥルーデ、乗れるの?」
「当たり前だ。乗る位はな」
「じゃあ私後ろね」
 ひょいと荷台の部分に腰掛ける。
「足、スポークに巻き込まない様に気を付けろよ」
「大丈夫」
 ゆっくりとペダルに力を入れ、ゆっくり、ゆっくりと進んでいく。
「トゥルーデ」
「何だ、エーリカ」
「もしかして、すいすい〜っとは乗れない?」
「そんな事は無い。ただ」
「ただ?」
「乱暴に運転するのはな。慎重にだな」
「トゥルーデはそうだよね」
「それに、後ろにお前が乗っている。無理は」
「心配してくれるんだ」
「あ、当たり前だろう」
 その言葉を聞いたエーリカは、トゥルーデの背中に自分の身体を預けた。
 腰に回される腕を肌で確かめ、ペダルを漕ぐ力をセーブしつつ、ゆっくりとハンガーから出る。

267 名前:Le Tour de 501 03/03:2011/08/13(土) 21:36:22 ID:GH11Mb2c
 ハンガーを出ると、明るい陽射しが二人を包む。
「見ろ、エーリカ」
「どうかした?」
「こうやって自転車で基地の回りを巡ってみるのもいいものだな」
「そう言えばそうだね。ちょっと新鮮」
 歩いている時とも違う。ストライカーで飛んでいる時とも違う、緩やかな速度。そよ風にも似た心地良い風が身体を撫でる。
 景色も長閑に、ゆっくりと流れて行く。
 午後のひととき、基地をぐるりと巡る「小さな旅」。凪のアドリア海を望む基地は海風も爽やかで……
 いつしか、基地の端にまで来ていた。
「しまった。つい、遠くに」
「……うーん。どこ、ここ?」
「何っ? エーリカ寝てたのか?」
「ちょっと気持ち良くてウトウト」
「全く、お前という奴は」
「トゥルーデだもん。背中預けてるって言うかくっついてるから大丈夫だよ」
「あのなあ」
 ふあー、と大きなあくびをひとつしたエーリカは、辺りを見て、基地の端に居る事を察する。
「随分遠くまで来たね。前にトレーニングのジョギングで来た様な」
「自転車なら割とすぐだな」
「でも、風が気持ちいいよね」
「ああ」
「今度は、ミーナに許可貰って、基地の外行くの良くない? せっかくだから自転車も増やしてさ」
「それはつまり、私達二人でか?」
「うん。楽しいよ、きっと」
「……かもな」
 トゥルーデは笑顔を見せた。エーリカも共に微笑んだ。

end

268 名前:名無しさん:2011/08/13(土) 21:36:54 ID:GH11Mb2c
以上です。
ふたりでのんびり自転車でお散歩も良いかなと。

ではまた〜。

269 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/14(日) 19:52:53 ID:veyXaZ/o
こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編、並びに
>>365-267「Le Tour de 501」の続きとなります。
ではどうぞ。

270 名前:Le Tour de 501 II 01/03:2011/08/14(日) 19:53:48 ID:veyXaZ/o
 基地のハンガーに置かれた自転車二台。
 一台は、この前シャーリーが整備し再生させた銀色の自転車。
 そしてもう一台は、同じフレームを使っている事こそ辛うじて判別できるものの、
他の部分はもはや原形を留めない程に改造された“自転車”。
 半ば呆れ返りつつ、二台の自転車を見比べる501の隊員達。
「で、どうするんだこれを」
 トゥルーデは、両方の“整備”を手掛けたシャーリーを呼んだ。
 シャーリーは二台の自転車に手を置き、自慢げに話し始めた。
「こっちは普通の自転車。誰でも乗れるよ。で、こっちなんだけど、余剰の魔導レシプロエンジンを積んで……」
 説明するシャーリーに口を挟むトゥルーデ。
「何故積んだ」
「そこにエンジンがあるから」
「載せるか普通」
「浪漫だからに決まってるだろう」
「リベリアン。確か、これとは別に普通の……サイドカーだったか、とにかくバイクを持っていたよな?」
「あれはあれ。これはこれで、あたしの力でどこまで限界に挑めるかチャレンジするんだ」
 きらきらと目を輝かせるシャーリーに、あえて問うトゥルーデ。
「それで、何がしたいんだ」
「競争」
「貴様は馬鹿か!? かたや人力、もう片方は魔導エンジンを積んでいたら勝てる勝てない以前の問題だ」
「それは分からないよ。あたしが魔導エンジン積んだ方に乗って固有魔法を……」
「自転車で空でも飛ぶつもりかリベリアン?」
「じゃあ分かったよ。あたしが普通の自転車乗るよ」
「待て。こっちの改造しまくりの方は、誰が乗るんだ」
「堅物頼む、あたしと競争してくれ」
「ばっ、馬鹿を言うな! こんな物騒な物、乗れるか!」
「物騒って酷いな。ちゃんとカリカリにチューンしてるから大丈夫だ。ちょっとピーキーに仕上げてるけど」
「余計に無理だ」
「ははーん、そう言えば堅物は機械類は苦手だったっけ」
「言わせておけば……良いだろう、相手になってやる。但し壊れても知らないぞ」
「あたしがスッピンの自転車で勝てばあたしの魔法力のおかげ、堅物が勝てばあたしの技術力のお陰って事で
どっちも楽しいんだけどな」
 それを聞いたトゥルーデは一歩退いて首を横に振った。
「……やっぱり止めておく」
「ちぇー、なんだよつまらない」
「なら、私が乗るよ」
 はーい、と手を挙げたのはエーリカ。ぎょっとしたのはトゥルーデ。
「ハルトマン? 何でまた」
「楽しそうだし」
 エーリカはにやっと笑ってシャーリーに言った。
「シャーリー、何だかんだで遊びたいんでしょ? 面白そうだしね、私もやるよ」
「そう来なくっちゃな」
 シャーリーも頷いた。

 スタートラインに二台の自転車が並ぶ。
 既に魔力を解放させ、耳をぴんと張りスタートの瞬間を心待ちにするシャーリー。
 スイッチやら動力やらを確かめ、自然体で望むエーリカ。
 釈然としない表情で、しかし内心二人が(特にエーリカが)怪我をしやしないかと心配で仕方ないトゥルーデ。
 芳佳が二人の間に立ち、指折りカウントする。
「行きます。五、四、三、二、一、スタート…うひゃあ!」
 点火されたロケットの様に、二台の自転車はラインを超えて突っ走っていった。

271 名前:Le Tour de 501 II 02/03:2011/08/14(日) 19:54:24 ID:veyXaZ/o
 シャーリーは魔力を解放してシャカシャカと軽快に自転車を漕いでいた。
 ほぼ真後ろに、エーリカの乗るエンジン付き自転車が位置している。
「もっとスピード出して良いんだぞー」
「とりあえず自転車の手応え確かめないとね〜」
「なっ……あたしを色々試そうとしてるな?」
「どうかなー」
 シャーリーは立こぎになり、固有魔法で自転車をかっ飛ばす。
 一方のエーリカの乗るエンジン付き自転車は、魔導エンジンがエーリカの魔力を受け、車軸に動力を伝達していた。
 速度は二人共拮抗し、平均して時速百二十キロ以上出ている。「普通の自転車」としては有り得ない速さだ。

 コースは基地の中をぐるりと巡る様に設定されていたが、コーナーや路面状態の悪い部分が大半で、滑走路周辺、及び外部への通路付近の二箇所が最も状態が良い。
 外部への通路付近に出た辺りで、シャーリーは一気に引き離しに掛かる。
 魔力を最大限引き出し、猛烈な勢いでペダルを漕ぐ。翼を付けていれば飛び上がりそうな速度だ。
 一方のエーリカも、引き離されぬ様、注意深く後を付けていた。
 シャーリーの様な超加速の固有魔法を持たないエーリカにとって、これが今出来る精一杯の事。

 双眼鏡片手に様子を見る一同。
「本当にあれ、自転車なんですの? ヘタなバイクよりも速いと思いますけど」
 ペリーヌが呆れ気味に言う。美緒は魔眼で二人の様子を見ると、速いな、とだけ呟いた。
「二人共、速い……」
「どうするんダあの二人」
 サーニャとエイラも呆気に取られた表情。
 予想以上の速さに、一同はただ見守るのみ。ミーナはもし何か有ったら……とやや渋めの表情。
 芳佳があっと声を上げた。
「シャーリーさんが少し離しました。でもハルトマンさんも頑張ってます! 真後ろに居ますよ」
 トゥルーデは心配そうに、土煙を上げながら爆走する二台の自転車を見、呟く。
「リベリアンの真後ろに付けて空気抵抗を減らす作戦か……」
 コースの先を見る。心配は尽きない。
「これからコーナーの多い部分か」
 ルッキーニは楽しそうに二人のレースを見ている。シャーリーを指差して言った。
「シャーリーの方が小回り効くから良いんじゃない?」
「どうかな」
 トゥルーデは腕組みしたままじっと見つめた。
「え、バルクホルンさん。ハルトマンさんに何か秘策でも?」
「ああ。恐らくは」
 それだけ言うと芳佳に双眼鏡を託し、一人席を外す。

 ラスト、ゴールへ続く滑走路周回に入る。路面状態も良く、ストレートで伸びを見せつけるシャーリー。
 エーリカも魔導エンジンを宥め賺してひたひたと迫る。
 折り返し地点を越えた所で、それは起きた。

 ごうっと、風の音がした。
 背後に迫る猛烈な空気の塊を感じたシャーリーは、殺気にも似た危険を感じ咄嗟に車体をスライドさせてかわす。
 その僅か上を文字通り「飛行」するエーリカ。シュトルムをまとい、直線を一気に加速……いや、飛翔し、シャーリーを抜いた。
 そのまま僅差で先にゴール。
 ゴール前で待っていた隊員達が風に煽られ、ふらつく。
 しかしエーリカの自転車はブレーキの制動力が追いつかず、止まらない。
 ハンガー脇の壁に突っ込みかける。
 誰もが息を呑んだ。
 刹那、壁に伝わる鈍い衝撃と立ち上る煙。幾つかの部品が辺りに撒き散らされた。
 ミーナと美緒は救護班の手配をと立ち上がったが、それは無用、と煙の中から声が聞こえる。
 立ちこめる煙の中から、人影が見えた。
 エーリカを抱きかかえたトゥルーデその人。
 エーリカのお尻にひっついていたサドルをぽいと投げ捨てると、ふん、と鼻息一つ鳴らした。

272 名前:Le Tour de 501 II 03/03:2011/08/14(日) 19:54:53 ID:veyXaZ/o
「バルクホルンさん、一体どうやったんですか」
 芳佳の問いに、トゥルーデは頭を掻きながら答えた。
「私の固有魔法を応用的に使っただけなんだが……」
「えっ、怪力で? どうやって」
「私の力をもってすれば、勢いの付いた物体から必要な部分を受けとめるなど容易いこと」
「おい! じゃああの自転車全部を抑えろって!」
 シャーリーがバラバラになった自転車を見て悲鳴にも近い言葉を上げる。
「すまない、エーリカだけで精一杯だった」
「嘘だッ!」
「とりあえず怪我が無くて何よりだったな、エーリカ」
「ありがとトゥルーデ。でも何でゴールで待ってたの?」
「エーリカなら最後に仕掛けると思っていた」
「なんだ、作戦ばれてたんだ」
 トゥルーデはふっと笑いエーリカを地面に下ろすと、辺りに散らばった部品を拾い始めた。
 堅物大尉の意外な行動を見、自転車にまたがったままの姿で驚くシャーリー。
「何やってるんだ堅物」
「改造品とは言え、お前にとって大切な物じゃないのか?」
「そりゃあ、まあ」
「空飛ぶ自転車を掴まえるのは難しかった。すまない」
「いや……いいよ」
 馬鹿正直に謝られても困る、と内心呟くシャーリー。トゥルーデはそんなお気楽大尉を後目に、部品を拾いながら言った。
「また作ってくれ。今度は、もう少し安全なものを頼む」
「分かったよ」
 苦笑いするシャーリー。

 夕食の席上、シャーリーはエーリカに聞いた。
「でも、途中よくあたしに付いてきてたよな。絶対無理だと思ってたわ」
「色々考えたんだけどね。私に出来る事ってあれ位だから」
「スリップストリームとか、最後の直線で固有魔法で飛ぶって事?」
「そう。シャーリー抜けるとしたらそこしかないじゃん」
「なるほど。あたしとしては最初にもっと先行逃げ切りモードでぶっちぎって離してないとダメだったって事か。作戦負けだなー」
 あーくそ、くやしい、とシャーリーは歯がみした。
 その姿を見て笑うエーリカとトゥルーデ。
「まあそう僻むなリベリアン。スピードで負けた訳じゃないんだから。スピードではお前の方が終始圧倒していたぞ」
「だから余計に悔しいんだよ!」
「まあまあ」
「慰めは要らないよ……」
「あれ、どっちが勝ってもシャーリー嬉しいんじゃなかったの?」
「ハルトマンが固有魔法使うのは想定外だった! あと壊れるのとか」
「それは……すまない」
「今度皆で組んでみようよ」
「ウジャーおもしろそう」
「まあ、部品は大体残ってるから、出来ない事はないけどさ……分かったよ。またやろう」
 楽しみがまた増えたね、とエーリカに言われる。トゥルーデも同じ言葉をシャーリーに投げてみる。
 苦笑いした501の“Speedstar”は、今度こそ、と決意を新たにする。
 そんな賑やかな夕餉。

end

273 名前:名無しさん:2011/08/14(日) 19:55:53 ID:veyXaZ/o
以上です。
シャーリーなら魔改造やりかねないなーとか思ったり。
お姉ちゃんの暴走自転車キャッチ、魔法能力的にどうなのとか
有りますけどまあその辺は「愛」と言う事でよしなに。

ではまた〜。

274 名前:名無しさん:2011/08/14(日) 20:05:38 ID:veyXaZ/o
× >>365-267「Le Tour de 501」の続き
○ >>265-267「Le Tour de 501」の続き

お詫びして訂正します。

275 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/14(日) 20:51:07 ID:veyXaZ/o
たびたびこんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

276 名前:stay awake:2011/08/14(日) 20:51:52 ID:veyXaZ/o
 深夜、ふと目覚めるトゥルーデ。
 横で一緒に寝ていた筈のエーリカが居ない。
 トイレにでも起きたのかと思ってぼんやり微睡んでいたが、暫く経っても戻って来ない。
「夢遊病か」
 毒づく口先とは裏腹に、愛しの人が心配で仕方ないトゥルーデは、パジャマ姿のまま部屋を出た。

 エーリカは基地のバルコニーにひとり、佇んでいた。
 手摺に両肘をつけ、ぼんやりと空を眺めている。
 月のない空は満天の星空で、星明かりが、僅かに辺りを照らす。
「トゥルーデ」
 エーリカは足音に気付いたのか、振り向いて笑顔を作った。
「エーリカ」
 名を呼び、顔をじっと見る。
「どうしたの? 私の顔に何か付いてる?」
「珍しいな。どうしていきなり起きたりしたんだ」
「ちょっとね」
 はぐらかすエーリカに、トゥルーデは手に腰を当てて呟いた。
「お前の事は、たまに分からなくなる。一体何を考えているのか、いきなり何処へ行くのか……」
 その言葉を聞いたエーリカは、ちょっとすねた口調で答える。
「私だって、少しは考えたりする時間有っても良いんじゃない?」
 そう言ったきり、エーリカは背を向け、夜空に視線を戻す。
「それは、そうだが……その」
 言い淀み、そっと近付くトゥルーデ。
 エーリカの表情は、いつもの天真爛漫なそれとは違い、何処か愁いを帯びた表情で……
 自分を抑えきれなくなったトゥルーデは、後ろからそっとエーリカを抱きしめる。優しく、ガラス細工を触る様な繊細さで。
 エーリカもそんな仕草に気付いたのか、ふうと息を一つ吐くと、トゥルーデに身体を預ける。
「心配なんだ、エーリカ。お前が」
 トゥルーデの偽らざる言葉を聞いたエーリカは、僅かのこそばゆさと、大きな安心感に包まれる。そして呟く。
「分かってる」
「何か有ったら、私に遠慮なく言え。今更遠慮する間柄でもないだろう」
「分かってる」
 繰り返すエーリカ。

 そう。
 エーリカは分かっている。

 ただ、エーリカには心配な事がひとつ。自分がトゥルーデに甘え過ぎたら、今度はトゥルーデが、その“重荷”をどこにぶつければ良いのか? と言う事。
「私を心配してくれているのか」
 何気ないトゥルーデの言葉にぴくりと身体を震わせるエーリカ。
 いつもは鈍いのに、こう言う時だけ妙に鋭いのは……
「ずるいよ、トゥルーデ」
 エーリカの小さな呟きを聞いたトゥルーデは、首を傾げた。
「どうしてそうなる」
「乙女心が分かってないな、トゥルーデ」
「何を言うエーリカ、私だって、その、一応女だし……」
「ごめん、ちょっと言い過ぎた」
「気にするな。お前が居てくれるからな。それだけでいいんだ」
 思いも寄らない、答えが返ってくる。
(私の掛けた重荷を私にって事? それって一体……)
 エーリカは少々混乱する。そんな軽い眩暈を覚えたエーリカを抱きしめたままのトゥルーデは、囁く。
「エーリカが居るから、私は私で居られる。エーリカだけでいい」
「そ、そう言う事じゃないよ、ばかばかトゥルーデ」
 耳を真っ赤にして抗うエーリカ。だが逃がすまいとトゥルーデはぎゅっと抱く力を強める。
「今までもそうであった様に、これからも、ずっと好きだ」
 ストレート過ぎる感情表現。思わず軽く吹き出してしまう。真面目な堅物が、どうしてこんな台詞を吐けるのかと。
「トゥルーデってば。酔ってる?」
「起き抜けだ」
「寝惚けてない?」
「エーリカと一緒さ」
 腕の中で、ぐるりと身をよじり、顔を突き合わせるエーリカ。
 いつになく真面目なトゥルーデを見る。吐息が混じり、潤む瞳が愛おしい。
 そっと、口吻を交わす。優しく、何度もお互いを確かめる様に。
 そっと唇を離したエーリカは、トゥルーデの胸に顔を埋め、呟く。
「ヤバイ。どんどんトゥルーデのこと好きになってる、かも」
「それは嬉しいな」
 優しく頭を撫でられる。素直に心地良い。お互いがお互いの寄り何処であり居場所であり、回帰する場所である証。

 二人は抱き合ったまま、空を見つめた。
 夜空に一筋の光が走ってすぐに消える。流れ星。
「部屋に戻りたくないって言ったら、どうする?」
「勿論、付き合うさ」
 たまには良いよね、とエーリカは微笑むと、トゥルーデの頬にそっと唇を当てた。
 返ってきたのは、トゥルーデの濃厚なキス。
 夜空の涼しさも、エーリカの憂鬱も蒸発する程の熱気を感じ、そのまま愛しの人に身を委ねた。

end

277 名前:名無しさん:2011/08/14(日) 20:52:32 ID:veyXaZ/o
以上です。
ストレートな愛情表現も良いかなと。

ではまた〜。

278 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/14(日) 22:26:34 ID:veyXaZ/o
三度こんばんは。mxTTnzhmでございます。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編となります。
ではどうぞ。

279 名前:destined soul mate 01/04:2011/08/14(日) 22:27:03 ID:veyXaZ/o
 一体どうしてそうなったのか、トゥルーデには全く分からなかった。
 ただ、目の前には、まるで子供の遊びの如く……いや、何か無造作とも言えるべき感覚で、
あらゆる方向から別の場所へと、“それ”が張り巡らされていた。

 運命の赤い糸、と扶桑などでは言うらしい。

 詳しい由来は私も良く知らないのだが、と美緒からその逸話を聞いたトゥルーデは、何故私にだけ糸が見えるのかと正直な気持ちを吐露した。
「それは私にも分からないな。強いて言うならば、お前がウィッチだからではないのか?」
 美緒の言葉に困惑するトゥルーデ。
「私の固有魔法ではないし、扶桑人でもない」
「まあ、確かにな」
 ちらりと美緒はミーナに目をやった。
「ねえトゥルーデ。この事は、言いふらすと皆が混乱するだろうから……貴方だけの秘密にしておいて欲しいのだけど」
「それが命令とあらば」
「何処までも真面目ね、トゥルーデは」
 苦笑するミーナ。
「私だって、好き好んで見たい訳じゃないぞ」
「それはそうよね。原因が分からないというのも困りものね」
 ミーナは真面目に相談してきたトゥルーデを見、どうしたものかと考えを巡らす。
「軍医に診て貰うのはどうかしら」
「何処も異常は無い。至って健康だが」
「困ったわね」
 ミーナはとりあえずメモ程度にトゥルーデの事を書き留めた後、はたと気付いたかの様にペンを置き、くすっと笑った。
「でも運命の赤い糸って、随分とロマンチックね、トゥルーデ」
「そうは言うがな、ミーナ。そこかしこに、まるで蜘蛛の巣みたいにぐちゃぐちゃに張り巡らされてる糸と言うのはどうも気味が悪い」
 うんざりしながら言うトゥルーデ。
「それをお前が物理的に干渉したりは出来ないのか」
 興味深そうに質問する美緒。
「ただ見えるだけだ、少佐。何も出来ない。……いや、大体、それに干渉してどうするつもりなんだ少佐?」
「引っ張って相手を連れてこられるなら、例えば訓練をサボる奴を……」
「美緒ってば、貴方訓練の事ばかりじゃないの」
 呆れるミーナを見、冗談だと笑い飛ばす扶桑の魔女。
 そう言えば……とトゥルーデは気付く。目の前の上官二人の小指にはしっかりと糸が結ばれて、互いに繋がっている。説明するまでもなかった。
 これは言えないな、と目を明後日の方向に向けるトゥルーデ。少しの空白を置いて、ミーナに告げた。
「分かったミーナ。これは私と、そしてミーナと少佐だけの秘密事項だ。私が見た事は一切口外しない。約束する」
「そうして貰えると助かるわ。お願いね、バルクホルン大尉」
 ミーナは満足げに頷いた。

280 名前:destined soul mate 02/04:2011/08/14(日) 22:27:50 ID:veyXaZ/o
 執務室を出たトゥルーデは平静を装いながら、とりあえず朝食の為に食堂へ向かった。
 嫌でも目に付く無数の糸は、まるで生き物の様にうねり、長さや張り具合を変えながら、そこかしこに張っている。
 ただ見えるだけ、物理的に避ける必要は無いのだが、見えている手前、ついつい不自然な動き……避けようとしてしまう。
「どうした堅物。身体の調子でも悪いのか」
 食堂に居たのはシャーリーだった。いつもと変わらずテーブルに頬杖をついて食事を待っている。
「別に何処も悪くない。至って普通だ」
 身体そのものは何処も悪くない、これは事実で嘘ではないと言い聞かせるトゥルーデ。
「じゃあ今の変な動きは何だよ。カールスラントの新しい健康体操か何かか」
「何だと」
 カチンと来たトゥルーデはまたも説教しようかと思ったが、ふと目に付いた“それ”を見、言葉を止める。
 シャーリーの小指の先から、何処かへと糸が伸びている。
 その糸はしなり、伸び縮みを繰り返している。糸と糸で結ばれた相手が近付いている証拠だ。
「オッハヨーシャーリー。ごはんまだー?」
 ルッキーニだった。糸は途端に短くなり、最短距離でシャーリーと繋がっていた。
「なるほどな」
 まあそうだろうな、と一人頷くトゥルーデ。
「何だよ、あたしとルッキーニ見て頷いて。気持ち悪い奴だな」
「キモキモー」
「やかましい! とりあえず食事だ。おい宮藤! 食事はまだか?」
「はい、ただいま!」
 芳佳とリーネが厨房でかいがいしく料理と配膳を頑張っている。
「どれ、私も少し手伝うか」
 シャーリーとルッキーニに変な目で見られているのに耐えられなくなったトゥルーデは、これ幸いとばかりに口実を作り席を離れた。
「あ、バルクホルンさん、良いですよ、私達の仕事ですから」
「いや、少しは手伝ってもいいだろ、う……」
 芳佳の小指を見て、トゥルーデは絶句した。
 おかしい。
 リーネ小指と繋がっている強固な赤い糸。そしてもう一本、細く切れそうだが糸が小指から伸び……それは窓の外へと伸びていた。その糸の張り具合から、相当遠くの土地に……恐らく彼女の故郷辺りへ……伸びているのが分かる。
 それは一体どう言う事だ?
 トゥルーデは解釈に苦しんだ。これはいわゆる……いや、宮藤に限ってそんな不埒な事をする筈が無い、と納得させる。
「宮藤お前……いや、何でもない」
「? どうしたんですかバルクホルンさん。私の顔に何か付いてますか?」
 きょとんとした表情でトゥルーデを見る芳佳。つられてリーネも顔を上げた。
「な、何でもない。何でもないんだ。すまなかった。本当にすまない」
 配膳を手伝う事も忘れ、トゥルーデは顔を真っ赤にして食堂から脱出した。勿論食事をも忘れていた。

 廊下で、眠そうなサーニャの手を引いて食堂に向かうエイラとすれ違う。
「あれ? 大尉どうしタ? 朝食もう済ませたのカ?」
 反射的に二人の小指を見る。
 “糸”と言うより既に縄に近い太さの赤い糸でがんじがらめに結ばれた二人の手を見る。
 ぽん、とエイラの肩に手をやり頷くトゥルーデ。
「お前達はそうだろうと思っていたよ。安心した」
「な、何だヨいきなり。意味わかんねーヨ」
「まあ、見なかったことにしてくれ」
 それだけ言うと、トゥルーデは早足で立ち去った。
「見なかったって、大尉の奇行をカ? 訳ワカンネ」
「エイラ、行こう?」
 サーニャに促され、エイラは食堂へと向かった。

 エイラとサーニャに遅れることワンテンポ、ペリーヌとすれ違う。
「あら大尉、朝食はもうお済みで?」
「いや、今日はちょっとな」
「? どうかなさったのですか? お身体の調子が悪いとか?」
 心配そうに聞いてくるガリア娘を見て、気付く。
 ああそう言えば、最近のペリーヌはカドも取れて少し優しくなって本来の彼女に戻りつつあるんだと改めて思うトゥルーデ。
 そして条件反射の様に小指を見る。
 無い。
 糸がない。
 そんな馬鹿な、とペリーヌの手を取り、目を凝らしてじーっと見る。
「なっ! いきなり……ど、どうされたのですか大尉?」
 突然の行為に思わず赤面するペリーヌ。
 実は見えない訳ではなかった。うっすらと、見える。その糸はどうやらこの基地の誰かと繋がっているのではない様で、窓の外、
何処か遠くへと伸びていた。
「強く生きろ」
 トゥルーデはペリーヌに告げると強く頷き、駆け足で去った。
「ちょ、ちょっと大尉! 一体どう言う事ですの!? 意味が分かりませんわ!」

281 名前:destined soul mate 03/04:2011/08/14(日) 22:28:23 ID:veyXaZ/o
 部屋に戻り、後ろ手に扉を閉めると、そのまま寄りかかり、呼吸を整える。
 見たくないものまで、見えてしまう。見てもどうしようもない事が、見えてしまう。
 こんなに「傍観者」というものが辛いのか、と天井を仰ぐトゥルーデ。
 ……いや、ある意味大体想像通りではあったが、実際に視覚で判明してしまうと如何ともし難い。
 そしてこれは機密事項に等しい。口外は無用。と言うよりミーナの約束、いや命令とあっては、何も出来やしない。
 苦悩するトゥルーデをよそに、ジークフリード線の向こう側のベッドの端が、もそもそと動いた。
「まだ寝ていたのかハルトマン! 起きろ! 朝食の時間だ!」
「あと三十分……」
「こら!」
 ずかずかとガラクタの山を分け入り、エーリカの毛布を剥ぐ。

 !?

 トゥルーデは目を疑った。エーリカの小指には、糸が無い。
 そして気付く。
 トゥルーデ自身も、糸がない。誰とも繋がっていない事に。周りのことばかりに気を取られ、自分の事に今更気付いたと言う
そんな自分の愚かしさにも、愕然とした。
「そんな、馬鹿な」
 ショックの余り、がくりと膝から崩れ落ちる。
「……どうしたのさトゥルーデ。貧血?」
 エーリカの心配も余所に、トゥルーデはどうしてこうなったのか意味を解釈しようと試みた。
 だがそれは出口のない迷路と同じで……答えが見えない。
 息が荒い。深呼吸しようとしても、浅い呼吸がまるで気の抜けたふいごの様に繰り返されるだけ。
「ちょっとトゥルーデ。大丈夫?」
 心配になったのか、エーリカがもそりと起き上がってトゥルーデの顔を見た。
「顔色、悪いよ」
「だ大丈夫だ、ももっ問題無い」
「ろれつも回ってないし。どうしたのさトゥルーデ」
「ちょっと、体調が……」
「トゥルーデらしくないよ。ほら、ベッドに」
 エーリカはよいしょと起きると、トゥルーデの肩を持ち、ゆっくりと彼女のベッドに寝かしつけた。
「ねえトゥルーデ、私を見るなりなんかおかしくなったよね? たまたま?」
「そうだと信じたい」
 らしくないトゥルーデの弱気ぶり。
「もう、ちゃんとしてよ。今、水持ってくるから」
「ま、待ってくれ」
 トゥルーデはエーリカの手を取った。
 そこでもうひとつの事に気付く。
 トゥルーデもエーリカも、指輪を付けていない。
「エーリカ、私達の」
「どうかした?」
「指輪は」
「ああ。トゥルーデが昨日、綺麗にするからって、拭いてくれたじゃない。仕舞ったままだよ。はめる?」
 エーリカは指輪ケースから指輪を取り出すと、はい、とゆっくりはめた。そして自分の指にもはめた。
 ……そう言えばそうだったな。糸などなくとも、せめて。
 ぼんやりとそんな考えをしていると、傍らに座るエーリカは指輪を見て、ふふっと笑った。
「どうした、エーリカ?」
「私とトゥルーデ、やっぱりこれが無いとね」
「エーリカ」
「なーんてね。ちょっと感傷的になっちゃった」
 頬を染めるエーリカ。トゥルーデの頬に手をやり、そっと唇を重ねた。

 刹那。

 物凄い勢いで……空気を裂くかの様に、二人の間に、太い、赤い糸が現れ、結ばれる。
 ぎゅっときつくかたく二人を繋ぐ糸は、他の誰よりも、強く、美しく。
 ……やはりそう言う事か。そう、それでいい。トゥルーデは内心思う。
 そして、糸を見届けたトゥルーデは満足そうな表情を浮かべた。
 エーリカが何か言っているが、最後まで聞く事はなかった。

282 名前:destined soul mate 04/04:2011/08/14(日) 22:28:50 ID:veyXaZ/o
 薄目を開ける。
「あ、起きた」
 エーリカの声。
 いつの間にか、トゥルーデのベッドの周りには501の隊員達が揃っていた。
 心配そうに、皆トゥルーデの顔を見ている。
「あ、あれ? 私は一体……」
 ふと思い出し、皆の手を、指を見る。しかし今はもう何も見えず……あれは幻覚だったのかと訳が分からなくなる。
「トゥルーデ大丈夫? 貴方疲れていたんでしょう」
 ミーナが言う。
「いや、大丈夫だが」
「顔色が悪いぞバルクホルン。暫く休んだ方が良いな」
 美緒も頷く。
「無理すんなって。お前が欠けたらどうするんだよ」
 シャーリーも気遣う。
「トゥルーデ、良いわね?」
 ミーナの声に圧されて、トゥルーデは了解、と応えるしかなかった。

「それでトゥルーデ倒れたの? だらしないなー」
 トゥルーデから事の顛末……僅かな部分のみだが……を聞いたエーリカは、苦笑いしておかゆをスプーンですくうと
トゥルーデにあーんと口を開けさせて食べさせた。
「ん。美味い」
「元気になってよ」
「もう元気なんだけどな」
「ちゃんと百パーセント元に戻るまで、ダメだからね。ミーナも言ってた」
「分かった」
 トゥルーデは約束した。
「で、トゥルーデ、もう糸とか何も見えないんだよね、今は」
 エーリカの質問。
「ああ」
「結局、何だったんだろうね」
「それは私が知りたい。……エーリカ、まさかお前」
「私は何もしてないよ……って、疑うフツー?」
「いや、そう言う訳では」
「ま、いっか」
 にしし、と意味ありげな笑みを浮かべたエーリカはおかゆをもう一口食べさせると、新たな質問。
「で、他の人のは見れたの? どんな感じだった?」
「それはミーナの命令で絶対に言えないな」
「ケチだなー。私はこう見えても口固いよ?」
「ミーナの命令だからな。隊員の結束を乱す訳にはいかない」
「何それトゥルーデ、糸に絡めたギャグのつもり? 微妙だね」
「そう言う意味じゃない! ともかく、言えないものは言えない」
「残念。……じゃあ、私とトゥルーデは?」
「それは言うまでもないな」
 トゥルーデは微笑んだ。彼女の穏やかな表情から全てを察したエーリカは、にこりと笑うとトゥルーデを抱きしめ、
そっと口吻した。

end

283 名前:名無しさん:2011/08/14(日) 22:29:35 ID:veyXaZ/o
以上です。
実際に赤い糸が見えたらどんな感じなのかなとか
色々妄想して書いてみました。
実際はもっと複雑に絡み合ってる予感もしますが。

ではまた〜。

284 名前:名無しさん:2011/08/17(水) 07:45:32 ID:svYvelTA
>>278

GJです

あなたのおかげで盆休みの出勤もがんばれる!

285 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/08/18(木) 23:14:02 ID:YCk7WrP6

>>233>>246 62igiZdY様
GJです。エイペリとニパがとても可愛らしいですね。

>>236 6Qn3fxtl様
GJ&お久しぶりです。ヘタレエイラ可愛すぎです。

>>239 Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA様
GJです。定ヘルとはまた斬新な組み合わせですね。
定ちゃんの無双ぶりが素敵です。

>>252 アキゴジ様
GJです。2年後芳佳とは・・・大作の匂いがします。

>>247>>256-283 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c様
連続投下GJです。甘々なエーゲル素晴らしいです。

こんばんは。今日は芳佳とサーニャの誕生日という事で短いですが、
サニャイラで芳リーネな話を書いてみました。ではどうぞ

286 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/08/18(木) 23:16:42 ID:YCk7WrP6
【誕生日のお願い】

「待ってよ、リーネちゃん」
「へへ、早くおいでよ芳佳ちゃん」
今日は8月18日、私とサーニャちゃんにとっては一年に一度の特別な日。
お父さん、私16歳になったよ。
去年と同じようにみんなが私たちを祝ってくれて、本当に幸せな気分。
誕生会も終わって今は、私とリーネちゃんの2人きりの時間。
「2人きりでお茶会をやろう」っていうリーネちゃんのお誘いに乗って、私は基地のバルコニーへと向かっていた。

「ま、待ってサーニャ……」
バルコニーへと向かう途中、エイラさんとサーニャちゃんの部屋から不意にエイラさんの声が聞こえてきた。
普段のエイラさんからは想像できないくらいにとても弱々しい声だった。
「照れてるの? エイラ、可愛い」
今度はサーニャちゃんの声。
エイラさんの声とは対照的に透き通ったはっきりとした声だ。
「どうしたの、芳佳ちゃん?」
エイラさん達の部屋の前で立ち止った私を不思議に思ったのか、リーネちゃんが私のもとに駆け寄ってきた。
「うん。なんだか2人の会話が気になって……」
私は2人に気付かれないように、部屋のドアをそーっと開けてみる。
「よ、芳佳ちゃん!? 覗きはダメだよぉ」
「分かってるけど好奇心には勝てなくて……わぁ、見てリーネちゃん。すごい事になってるよ」
「えっ……うわぁ、ホントすごい事になってるね」
私たちの目に映ったのは、ベッドの上で横になっているエイラさんとその上に跨るサーニャちゃんの姿。
えっと、これってどういう状況……?

「サーニャ、な、何でこんな事……」
と、さっきより一層、弱々しい声でサーニャちゃんに呟くエイラさん。
「何でって、『今日はサーニャの誕生日なんだから、サーニャの願い何でも叶えてやるぞ』って言ってきたのはエイラのほうでしょ? だから……」
エイラさんの声を真似ながらサーニャちゃんはそう答えると、エイラさんの唇にそっと自分の唇を重ねた。
うわぁ、他人のキスって何だかすごく色っぽいや。
「サ、サーニャ……あぅ」
「これが私のお願い。あなたを私だけのモノにしたいの……」
サーニャちゃんはエイラさんの白い肌を撫でながら言葉を続ける。
「ねぇエイラ、私のお願い、叶えてくれるよね……?」
「は、はい……」
エイラさんのその言葉を聞くと、サーニャちゃんは満足げに微笑んだ。
「イイコね、エイラ。だいすき」
そう言って、サーニャちゃんはさっきより深いキスをエイラさんと交わした。
「サー……ニャ……んんっ」

「ねぇ芳佳ちゃん、これ以上見るのはやめようよ……」
と、顔を真っ赤にしたリーネちゃんが言う。
「そ、そうだね……」
私は開けた時と同様、2人に気付かれないように部屋のドアをそーっと閉める。
サーニャちゃん、エイラさんと末永くお幸せにね。

「……芳佳ちゃんは、私に何かお願い事とかある?」
「え?」
エイラさん達の部屋のドアを閉めてから少しして、リーネちゃんが私にそう訊ねてきた。
「その……芳佳ちゃん、私の事好きにしてもいいよ」
頬を真っ赤に染め、もじもじしながらリーネちゃんが私に呟く。
もう、そんな表情で誘われたら私、ガマンできないよ。
「ごめんね、リーネちゃん。2人だけのお茶会はまた今度にしよう」
「ふぇ!? 芳佳……ちゃん?」
私は魔力を解放してリーネちゃんを抱き上げ、行き先をバルコニーからある場所へと変える。
その場所は……


「ここって……」
「えへへ、ここなら誰の邪魔も入らないでしょ?」
私たちがやって来たのは基地のゲストルーム。
以前、ハルトマンさんとマルセイユさんが共同で使っていた部屋だ。
私はドアを開けて、リーネちゃんを部屋のベッドに押し倒す。
「きゃっ!」
「私のお願いはサーニャちゃんと一緒。リーネちゃんを私だけのモノにしたい……んっ」
私が口付けを落とすと、リーネちゃんは元々真っ赤だった顔を更に真っ赤にさせる。
もう、本当にリーネちゃんは可愛いな。
「リーネちゃん、愛してるよ」
「芳佳ちゃん、私も……んっ」

私たちはそれからしばらくの間、お互いの唇を重ね合った。
お互いの愛を確かめ合うように何度も、何度も。

〜Fin〜

287 名前:5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2:2011/08/18(木) 23:17:24 ID:YCk7WrP6
以上です。Mなリーネちゃんとエイラが書きたかったんです。
芳佳&サーにゃん、誕生日おめでとう!
ではまた

288 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/19(金) 02:08:31 ID:YyBZ63eE
>>284
有り難う御座います。貴方の応援のお陰で私もSS頑張れます!

>>287 5uxL6QIl ◆x.rTSKEoE2様
GJ! サーニャイラも芳ーネもえろくて素敵過ぎます! MでSなコンビおいしいです。 芳佳&サーニャ誕生日おめです!


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ふと思い付いたネタ? をひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編、
>>279-282「destined soul mate」の続きとなります。
ではどうぞ。

289 名前:red line 01/02:2011/08/19(金) 02:09:08 ID:YyBZ63eE
 目覚めると、何かが変わっている事に気付いた。
「はて。……この糸は何だ」
 赤く染められた糸がそこかしこに張られている。伸びたり縮んだり、生き物の如く。
 何かの錯覚かと思い、試しに魔眼を使って辺りを見たが、さしてネウロイの痕跡も見えず……
「そう言えば、バルクホルンが前に言っていたな」
 思い出した美緒はさっさと着替えると、愛用の扶桑刀を手に取り、自室を出た。

「邪魔するぞ」
 ノック無しに扉を開けると、下着姿で抱き合ってすやすやと寝るカールスラント娘が二人。
 只ならぬ気配を感じたのか、間も無くトゥルーデがガバッとはね起き、毛布で身体を隠す。
「な、なんだ。少佐か……こんな早朝にどうした?」
「ああ、すまんな寝ている所を……」
 トゥルーデの言う通り、まだ夜も明けきっておらず、ようやく朝の薄日が差し始めたと言う時間帯。
 エーリカは二人のやり取りを聞いて、むっくりと身を起こした。
「こっこらエーリカ! 服を着ろ! せめて毛布で隠す位……」
 慌てて自分の毛布を掛けて、仲良くくるまる格好になるカールスラントのコンビ。
「あー、いや、今でなくても良いんだ」
 逆に気を遣う美緒。
「少佐。朝一に部屋に来ておいてそれはないだろう」
「ノックも無しでね〜ふわわぁぁ」
 トゥルーデと、あくび混じりのエーリカから言われ、頭をかいて苦笑いする美緒。
「いや、すまん……はは」

 着替えを済ませた二人は、美緒と共に部屋を出、とりあえず執務室で話をする事にした。
 部屋では誰が聞き耳を立てているか分からないし、もし聞かれでもしたら厄介だから、と言う理由だ。
 執務室のドアを開けると、机上に蹲る様に寝ているウィッチが一人。
「ミーナ……また徹夜したのか」
 トゥルーデが心配そうに、ブランケットをそっと肩に掛ける。疲れが溜まっているのか、起きる気配がない。
 エーリカは、眠る直前までミーナが使っていたであろう万年筆を机の脇から拾い上げると、キャップをしてペン立てに戻す。
「私も手伝ってやりたいのだが……ミーナが一人でやると聞かなくてな。生憎私も事務仕事は苦手で……」
 ミーナを見て、心配と困惑が少し混じった表情の美緒。トゥルーデは微笑むと言った。
「私から言うのも何だが、少佐も、たまにはミーナを手伝ってやって欲しい」
「そーそー。何かお茶淹れる位でも違うと思うよ?」
「そ、そうか。なら今度」
 エーリカの提案を受け、やる気を出す美緒。ぴくり、とミーナの耳が動いた気がしたが誰も気付かなかった。
 そんな501の隊長を寝かせたまま、三人は本題に入る。
「さて、ここなら安心だろう」
「そうだな」
 部屋のソファにそっと腰掛け、頷く美緒とトゥルーデ。そして何故かワクワクして話に参加しているエーリカ。
「ハルトマンは良いのか」
 美緒がエーリカを指差す。
「ん?」
「楽しそうだし、いいじゃん」
「お前は誰かに言いそうだからな……」
「こう見ても私、口カタイよ?」
 にやにやするエーリカを前にどうしたものかと悩むトゥルーデ。
 しかし美緒はお構いなしに話を切り出した。
「バルクホルン。話と言うのは他でもない。私にも見える様になったんだ」
「見える? 見えるって何が……ま、まさか」
 先日トゥルーデ自身が体験した“未知なる世界”を思い出し、戦慄する。
「ああ。この前、お前が言っていた赤い糸だ。私も見える様になった理由は分からない。これと言った原因や切欠が無いんだ。だが、実際に見える」
 美緒はそう言って頷いた。
「確かに、私も理由は思い当たらなかったな。気が付いたら目の前が糸だらけと言う感じだった……でもまあ、少佐だから」
「私だから、何だ?」
「少佐なら魔眼の延長線上の事かも知れないし」
「ふむ、なるほど。なら普通通りに……」
「ダメよ美緒!」
 突然の声にぎくりとする一同。いつの間に起きたのか、ミーナが美緒の手を握ってふるふると顔を振った。
「例え見えても人に言っちゃダメよ! トゥルーデだって約束は守ったんだから。ねえトゥルーデ?」
「あ、ああ」
「私には話してくれたよ」
 あっけらかんと言うエーリカ。
「なんですって?」
 冷気を纏ったミーナに、慌てて釈明するトゥルーデ。
「わ、私とエーリカの間の事だけだ。他は何も。本当だ」
「……ならいいわ」
 にっこりと笑うミーナ。寝起きなのに隙がない。

290 名前:red line 02/02:2011/08/19(金) 02:09:34 ID:YyBZ63eE
「しかしミーナ、見えてしまうものは仕方ないんじゃないか」
 困る美緒に、ミーナはすっと、とあるものを渡した。
「眼帯をもうひとつ用意したから、今日は」
「待て! 眼帯を両目に付けるって、見た目からして残念な姿になってしまうじゃないか! それは勘弁してくれ」
「なら、両目を目隠しで……」
「待て待て。私が何も言わなければ良いのだろう」
「美緒はつい何か言いそうだから怖いのよ!」
 泣きつくミーナ。
「そんな事は無いぞ。例えばバルクホルンとハルトマンはとても太い糸で……あれは紐に近い太さだがしっかりと」
「そういう所がね……」
 何故か自信たっぷりの美緒、呆れるミーナ。
「へえ、少佐にもそう見えるんだ。やったねトゥルーデ、私達本物だよ」
「だから、前に私が言った通りだろうエーリカ」
 喜ぶエーリカ、当然だと言う感じで答えるトゥルーデ。
「で、どうなの? 美緒と私は?」
「な、何ッ!?」
 言われて自分の小指を見る。自分の指に結ばれ、すっと伸びる赤い糸は、確かにミーナと繋がっている。
「う、うぉぅ」
 突然のフリに気持ちの整理が付かず……思わず手を引っ込める美緒。
「ちょ、ちょっと、今の動作は何!?」
「退けミーナ! こう言う関係はまずい!」
 すらりと扶桑刀を抜き放つと、ぶんと宙を一振り。
「危ない! ミーナを斬るつもりか少佐!」
 慌てて美緒の手元を握り動きを封じるトゥルーデ。
「いや、糸だけを……」
「私と美緒は繋がってるのね? と言うか何故斬ろうとするの!? そのままで良いじゃない!」
 意図を察したのか、美緒に詰め寄るミーナ。躊躇う美緒に、トゥルーデは言った。
「聞け少佐! 私も前言った通り、この赤い糸に物理的な干渉は一切通じない。例え少佐の扶桑刀でも……え、少佐?」
「私の魔力を込めた一撃なら!」
 ゴゴゴと音が出そうな雰囲気の妖気を纏う美緒を見、ミーナが一喝する。
「執務室で烈風斬は禁止よ美緒!」
「ぐっ……ミーナに止められた。一体私はどうすれば良いんだ」
「そもそも何で斬ろうとするの!? おかしいでしょ!? 斬って何が変わると言うの?」
「そ、そう言われれば……」
 気落ちしたのか、扶桑刀を鞘に戻すとへたり込む美緒。
「少佐」
 いつの間に用意したのか、トゥルーデとエーリカが美緒の前に立った。
「ん? どうした二人共……っておい、お前達何を」
「悪いがミーナの言う通りにさせて貰うぞ」
 がっしりとトゥルーデが美緒を押さえ込み、そのスキにエーリカが美緒の眼帯をさっと外し、目隠しで両目をきゅっと覆う。
「こ、こら……これじゃ囚人か罪人じゃないか」
「悪いけど坂本少佐、今日から暫くは貴方にそうして貰います」
「な、何故ッ!? 私が一体何をした!?」
「貴方が見てはいけないものがあるの。見えなくなるまで、そのまま執務室待機を命じます」
「な、何だそれは!?」
「これは命令です。貴方の目が元に戻るまで、バルクホルン大尉とハルトマン中尉に監視して貰います。良いですね?」
「了解した」
「りょうか〜い」
「ちょ、ちょっと待てお前達。その対応はおかしいんじゃないか?」
「これも隊を思ってのことなのよ……美緒」
 泣きそうな声で言うミーナに、美緒は汗を一筋垂らし、呟く。
「本当にそうか?」
「命令です」
 ミーナのきんと冷たく響く声を聞いて、ああ、これは私の負けだと悟る美緒。
「分かった。仰せのままに隊長殿」
「必要な時は私が介助しますから大丈夫よ」
 何故か嬉しそうなミーナ。

「はい、口を開けて」
「こ、こうか?」
 目隠しをされたまま、スプーンから食事を与えられる美緒。
「ちょっと、口の周りこぼれてるわよ?」
「す、すまん。見えないから」
「もう。拭いてあげる」
 くすっと笑い、ナプキンで美緒の口元をそっと拭くミーナ。そしてシチューをひとすくいして美緒に与えるミーナはとても幸せそうで……
「ねえトゥルーデ、これは」
 様子を見ているエーリカの問いに、トゥルーデはあっさりと答える。
「まあ、良いんじゃないか?」
「どうして?」
「少佐だし。こうでもしないとな」
「まあねー」
 やれやれ、と肩をすくめるトゥルーデ、同意するエーリカ。
 執務室で続く二人の奇妙な蜜月は、美緒の「目力」が元に戻るまで。
 それがいつまでかは……赤い糸だけが知る秘密。

end

291 名前:名無しさん:2011/08/19(金) 02:10:35 ID:YyBZ63eE
以上です。
もっさんが「赤い糸が見える」とか言い出したら
多分周りが全力でとめるだろうなーと……。

ではまた〜。

292 名前:名無しさん:2011/08/19(金) 23:04:14 ID:PFuddR6s
>>291

GJです

〜いっしょにできること〜

に収録の眼帯ネタを思い出して吹き出しました

293 名前:mxTTnzhm ◆di5X.rG9.c:2011/08/20(土) 22:06:46 ID:Qq8Znqd.
>>292
感想有り難う御座います。
確かに、両目に眼帯で……、と言うネタ有りましたねw


こんばんは。mxTTnzhmでございます。
ふと思い付いたネタ? をひとつ。
保管庫No.0450「ring」シリーズ続編、
>>289-290「red line」の続きとなります。
ではどうぞ。

294 名前:red line II 01/02:2011/08/20(土) 22:07:39 ID:Qq8Znqd.
 芳佳は、夜中にふと目覚めると、トイレに向かった。
 用を済ませ、ぼんやりと、うつらうつらとしていた目が冴えてくるうち……
 何かが変わっている事に気付いた。
「やだ。……何、この糸」
 赤く染められた糸がそこかしこに張られている。しかもまるで生き物の如く、動いたりしている。
「ま、まさか、ネウロイの仕業?」
 気味が悪くなった芳佳は、手近な部屋へ駆け込んで、助けを求めた。

「それで、ノックも無しに執務室へ飛び込んだと言う訳か」
 事情を聞いたトゥルーデから呆れられる。エーリカはソファーですやすやと眠る。
 ミーナは机の上で変わらず書類整理を進め……美緒はと言うと、眼帯を外し目隠しをした状態でソファーに座っている。
「坂本さん、一体どうしたんです? 目が悪いとか?」
「お前と一緒だ、宮藤」
「へっ?」
「お前も先程言っただろう。見えると。何が見えたのかもう一度言って見ろ」
「いえ、ですから、基地の中に赤い糸が沢山……」
「……貴方も見えるのね。流石、この師匠にしてこの弟子あり、ってところよね」
 ミーナも呆れ気味。
「そう言う言い方はちょっとな」
 むすっとした様子の美緒。
 意味が分からない芳佳は、えっ? っと辺りを見た。
 部屋の中も赤い糸が幾筋も伸びていたが、そのうち最短で結ばれたふたつの糸を見る。
 ミーナと美緒。
 トゥルーデとエーリカ。
 それぞれが結ばれている。
「あっ! 赤い糸!」
 結ばれている糸、そして対象者を思わず指差す芳佳。
「知っている」
「バルクホルンさん、何で知っているんですか」
「私も知っているがな」
「坂本さんもですか? どうしてです?」
 美緒の代わりにトゥルーデが説明し始める。
「私達も過去に同じ経験をしている。もっとも少佐はまだ見えるらしいが。私とエーリ……いや、ハルトマンはどうだ?」
「今話した通り、繋がってます」
「ミーナと少佐は」
「はい。同じく」
「では、お前の小指はどうなっている?」
「え、私?」
 トゥルーデに言われ、自分の小指を見る。
 二本有った。一本の太い糸は基地の何処かへと伸び……もう一本は窓の遥か彼方へと伸びていた。
「あ、あれ? あれれ?」
「私も前からその事を聞きたかった。何故、お前は二本有るんだ?」
「そ、そんなぁ。私知りませんよ〜」
「まさかミヤフジ、二股? それは相手が悲しむよ」
 いつ起きたのかエーリカにもニヤニヤ顔で言われる。
「宮藤に限ってそう言う事は無いと思っていたが……」
 無念そうな美緒。
「ごっ誤解です! 多分何かの間違いです!」
 大袈裟にぶんぶんと手を振る芳佳。美緒は目隠しを外し、芳佳の手を掴んでじっと見た。
「やっぱりな」
「や、やめて下さい! 私そんな……」
「お前にも見えるだろう?」
「見えますけど……でも、違うんです!」
「何が違うんだ」
「わ、私は、その……」
「一本はリーネと結ばれている。それは私も確認した」
「トゥルーデ、さらりと言わないの」
「この際だ。そしてもう一本は誰と、と言うのが知りたい」
「ぷ、プライベートな事は!」
「トゥルーデ、尋問になってるわよ」
 苦笑するミーナ。

295 名前:red line II 02/02:2011/08/20(土) 22:08:07 ID:Qq8Znqd.
「とりあえず、他の奴等に接触せずすぐ我々に報告したのは賢明な判断だった。それは誉めてやろう」
「だねー」
 言いながらトゥルーデは背後から芳佳をがっしりと掴み、エーリカは目隠しで芳佳の両目を塞いだ。
「えっ? ちょっ? これってどう言う……」
「命令です。その症状が直るまで……糸が見えなくなるまで、宮藤さんはゲストルームに謹慎して貰います」
「な、何でですか!? 私何も悪い事してません!」
「美緒もまだ元に戻らないと言う話だから、そうね。二人で一緒に暫く過ごして貰いましょう」
「何? 宮藤と一緒か?」
「外出の際は目隠し着用を義務付けます。これは命令です」
「あの、私が何か、迷惑を……」
「他の皆に掛けない様に、と言う意味だ。察しろ宮藤」
「えー」
「バルクホルン大尉とハルトマン中尉が監視と世話役をしてくれるそうよ。何か有ったら二人に言うといいわ」
「了解した。行こうか、少佐」
「さ、行こ〜ミヤフジ」
「ミーナ中佐、納得いきません!」
「諦めろ、宮藤」
 美緒がげっそりした表情で呟いた。
「色々見たかったなあ……」
「見ると後悔するぞ」
「あう……バルクホルンさん、一体何を見たんですか」
「ミーナに言うなと言われているのでな。残念だが」
「相談しに来ていきなり目隠しとかもっと残念ですよー」
「はいー歩いて歩いて」
 芳佳は美緒と一緒に、執務室から出て行った。監視役のトゥルーデとエーリカも一緒に部屋を出た。

 一人残されるミーナ。
「赤い糸、ねえ」
 ぽつりと呟く。
 まるで伝染病の様に広まる「不思議な視覚」。
 幾分ロマンチックではあるが、隊員同士の関係を暴き出す非道なものでもある。
 ミーナは、その危険性を排除する方向に決めた。
「今もきちんと繋がっているのかしら、美緒と」
 自分の小指を見、頬を赤らめるミーナ。

「部屋の中では目隠しを解いても良いそうだ……やれやれ、参ったな」
 美緒はうんざりした表情で呟いた。
「どうしましょう、坂本さん」
「私が知りたい。原因も分からぬ、いつ元に戻るかも分からぬ。まあネウロイの仕業ではないだろうが」
「そんなネウロイ居たら困りますよ」
「案外ネウロイかも知れないぞ。何しろ基地に忍び込んだのも居たからな」
「でも、実害は出てないです」
「今の所はな……。我々が色々喋ると、問題が起きるとミーナは考えたのだろう」
「バルクホルンさんも見えてたって言ってましたよね」
「もう見えないらしい」
「はあ……」
 殺伐とした……必要最低限のものしか無いゲストルームに閉じ込められ、二人は溜め息を付いた。
「どうしましょう坂本さん」
「ミーナの命令とあらば仕方ない……。とりあえず、部屋で出来るトレーニングでもするか?」
「いえ、こう言う時に訓練とか止めましょうよ」
「あー、二人共悪いが、もう少し静かにしてくれないか?」
 外からトゥルーデに諭され、更に落ち込む扶桑の魔女二人。

「どうしたもんかな」
 トゥルーデは扉の外で、後ろ手に腕を組んで天井を見た。
「元はと言えば、トゥルーデが最初に見たからじゃないの?」
 エーリカの指摘に、ぎくりとする。
「どう言う意味だそれは」
「見た者に伝染する、とかね」
「それじゃあ今頃、皆に赤い糸が見えて大変な騒ぎになっているぞ」
 ははは、と笑うトゥルーデ。汗が一筋垂れる。エーリカも笑みがひきつる。
「ま、まさかな」
「まさか、ねえ」
 二人は乾いた笑いで誤魔化した。

end

296 名前:名無しさん:2011/08/20(土) 22:08:38 ID:Qq8Znqd.
以上です。
このあと501がどうなったかはご想像にお任せします……。

ではまた〜。

297 名前:名無しさん:2011/08/24(水) 20:38:07 ID:rKJOLZg.
>>296

GJです

リーネが芳佳の糸をみたらwww

298 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/27(土) 23:48:44 ID:oGbLH.VU
>>294 mxTTnzhm ◆di5X.rG9.cさま
赤い糸って…本当にあるのかもしれませんね!
…ごめんなさい、ちょっとロマンチスト風に書いてみました。
けど、芳佳のもう一本の糸ってみっちゃn………?だったらリーネちゃんがハサミで何のためらいも無く切りそうですねw

こんばんは!今夜は隅田川花火大会でしたね!
さて、今回も『ヘルマの発情』シリーズです。今更ですが、フミカネ先生のツイッター見ててifシリーズに何故ヘルマがないんだ!と思い勢いだけで書いちゃいました;;
あと出向先ですが、ローソンで缶コーヒーのBOSSを2本買ったらルフトハンザ航空の模型が付いてきたんで、これもネタに使おう!と即座に思いましたw

それでは、張り切ってドウゾ!

299 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/27(土) 23:49:49 ID:oGbLH.VU
【ヘルマのif】
コンコン...

「失礼します!」
「入れ」

ガチャッ!!

おごそかな空気の中、ヘルマは執務室のドアを開ける。

ロマーニャ解放から5年後、バルクホルンは少佐へと昇進していた。
そして背や胸、顔つきなど年相応に成長したヘルマの姿がそこにあった。

彼女は現在、実験部隊で活躍する傍らバルクホルンの第二秘書を務めている。

「本日のスケジュールをお持ちしました!」
「済まない、今手が離せないんだ。読み上げてくれないか?」
「はい。この後10時より実験隊の方々と打ち合わせ、12時よりそのまま昼食を兼ねた意見交換会。15時より新人ウィッチへの講演です」
「ふむ」
「そして17時まで残った書類仕事、19時よりハルトマン中尉…ってもう軍人じゃないんですよね…」
「…ハルトマン?」
「ええ、1週間前に言いいましたが…もしかしてお忘れに…?」
「済まない、教えてくれないか」
「えと…」

ヘルマはスケジュール帳をめくる

「ハルトマン元中尉の医師免許取得記念パーティーです」
「そうかそうか…って今日か?!」
「…わかりました、少尉が意見交換会している最中に私が走って花を買いに行ってきます」
「それには…及ばないな」
「へ???」

バルクホルンはデスクの下から、フラワーショップで揃えてもらった綺麗な花々を出した。

「なんだ、覚えてらしたんですね」
「勿論だろう、済まないなヘルマ。からかってしまって」

300 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/27(土) 23:50:12 ID:oGbLH.VU
「いえいえ!…こんなに柔らかい少尉、久々です」
「は?」
「いや…最近、笑われてなかったので…」
「…そうだった…のか?」
「ええ…正直申しますと…」
「あはは…私だって冗談のやり取りだってするさ。でも最近…ちょっと私でも疲れたかなと思ってな…」
「少佐…」
「イカンイカン、私はカールスラント軍人だ。これくらいでへこたれちゃダメだな」
「でも少佐、やはり休暇を取られては…?」

すると、今までヘルマの方に向けていた椅子を急に窓の方へと方向を返る。

「なあレンナルツ」
「はい」
「お前は…この軍が好きか?」
「ええ、とてもやりがいを感じています」
「そうか…」
「あの…それが何か?」
「もし…異動命令があったらどうする?」
「ヘルマ・レンナルツ、命あればどこへでも赴任いたします!」
「そうか…」

しかし、この時何かおかしいと感じ取っていたヘルマであった…。

「あの…少佐、何か…?」
「実はな…お前に異動命令が出てるんだ」
「それは…遠い所なのですか?」

―――でも本心は…我儘を言うと、嫌だった。憧れのバルクホルン少佐の下でサポートする役職に就いたのに、異動だなんて…

「ロマーニャ…ですか?」

バルクホルンは首を横に振る

「ワイト島ですか?それとも、ア…アフリカとか?」

それでも首を横に振る。

「じゃあ…一体、どこですか…?」
「カールスラント・ルフトハンザ航空だ」
「…へ??」
「知ってるだろう?」
「ええ、民間の航空会社ですよ…ね?」
「そこへ…出向してくれ」
「…それって」

知らぬ間に、ヘルマは両手を握りしめていた...

「私が…私が戦力外って事ですか??!!」

―――なんてことだ、上官でもあり憧れの人に対し…大声を上げてしまった…

「………」
「私は…頑張って、この地位まで辿り着いたんです!なのに、なのに民間の航空会社に出向って…いくら上官命令だからと言っても酷いです!」
「これは上官命令だ、レンナルツ!」
「断固拒否します。だったら、私は軍を辞める覚悟であります!!!!」
「辞めたら意味がないだろう!!!!」

ヘルマに釣られ、ついバルクホルンも大声を上げてしまう…

「良いか、よく聞けレンナルツ。お前はこの5年以上、ずっとジェットストライカーの開発に携わり今では我が軍で実用化されたとても大切な物を作ってきた」
「………はい」

やや不満げに返事をする。

「でも…今度は、不特定多数の人々にその知識や技術を教える番だと私は思うんだ」
「…どうゆう事でしょうか?」
「現在、人々の足として使われている飛行機は遅い。けどお前たちの開発した技術を民間に転用すれば、より良い環境づくりが出来るとは思わないのか?」
「それは…その…」
「レンナルツ!…お前は今度から彼らの生活の『幸せのため』に技術を教えてやってくれないか?」
「少佐…っ」
「もちろん、過去のお前の実績を見通しての出向だ。決してお前を戦力外だからと言って飛ばす訳ではない、むしろ惜しいくらいだ」
「もっ…申し訳ございませんでしたっ!!!」

深々と頭を下げるヘルマ

「生意気な口を利いて申し訳ございませんでしたっ!!!」
「頭を上げろ、レンナルツ。私も誤解を招くような表現で悪かった」
「でっ、でも私…上官になんて酷い事を…」

301 名前:Hwd8/SPp ◆ozOtJW9BFA:2011/08/27(土) 23:50:30 ID:oGbLH.VU
「…悪いと思うんなら、一生懸命働け。そして人々を喜ばせろ。人々の喜びは、私の喜びだ」
「しょ、少佐…っ!!!!」


***






「しょうさぁ………」
「起きなさい…起きなさいってば!」
「はっ!!??」

場所は変わり、軍の食堂。

「あれ、シュナウファー大尉?!」
「珍しいわね、あなたが昼寝だなんて。ヨダレが出てるわよ?;;」
「へ?へ?へ?」
「何、寝ぼけてるの?」
「えと、私っていつから異動でありますか?」
「はあ?」

すると、

「あれっ!?胸が…ないであります!!」
「それはいつもの事じゃない」
「え…;;でっ、でも胸がこう…ばいんばい〜んって。パイオツカイデーなチャンネーでしたもん!」
「何言ってるの?ヘルマ;;医務室行く?」
「だって少佐が…」
「は?」

その日、ずっと支離滅裂な事を言っていたヘルマ。
バルクホルンとのやり取りが、実は夢であったと言う事を翌日に知ったヘルマであった。

「…二度目の夢オチでありますか?!」



【おわれ】

302 名前:管理人 ◆h6U6vDPq/A:2011/08/28(日) 11:28:35 ID:tHS5XxCA
皆様乙です
500KBに達しましたので次スレを立てました

ストライクウィッチーズでレズ百合萌え 避難所9
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