無題


「トゥルーデ、ありがとうって、ちゃんと宮藤さんに伝えた?」
唐突に、隣のミーナが言った。

毎晩ではないが、ミーナは私の部屋にときどきやってくる。今晩もそうだった。彼女いわく、故郷の匂いが恋しくなるからとのこと。
私もカールスラントのことをいつも思っているから、その気持ちはわかる。
たとえ今はネウロイに占領されていても。

それはそうと、クリスの見舞いから帰って数日。
私は未だに新入り-宮藤にお礼を言えないでいた。
「あなたはいつもそう。恥ずかしがり屋なのよね」
「そんなんじゃ、ない」
「そう?」
ミーナの目が怪しく光った。まずい、暴走する。
ミーナは私のあごに手を添えて真っ直ぐ向かせると、目をじっと覗き込んできた。
「…っ」
私がみるみる顔が火照るのを感じ、耐えきれずに目をそらすと、
「トゥルーデのうそつき」
と耳元で小さくつぶやく。
どこか楽しそうな響き。
「うそつきには、お仕置きしないと」

「お仕置きって…トイレそうじか?」
私が言うと、ミーナは首筋をなでながら、
「トゥルーデがありがとうって言えるようになるための、訓練」
と答えた。
そして言うなり、私の唇を唇でふさぐ。唇を触れあわせるだけで、すぐはなれてしまう。
正直、私はキスが好きだ。頭の中がふやけたようになって、私はそのままベッドに押し倒された。
「ほら、トゥルーデ、ありがとうは?」
「そんな…こんなことで…ん…ふ…」
またミーナにキスされる。
気持ちいい。
「トゥルーデ、キス好きでしょう?」

「好きなんでしょ。ほら…キスしてくれてありがとうは?」
ミーナがくすくすと笑う。
私がただ押し黙っていると、今度は舌を入れてきた。
歯茎の裏側を舌でなぞられ、身震いする。
舌を丁寧に吸われ、私の思考は根こそぎ奪われていった。
腰が浮ついた。
「ほら、トゥルーデ」ミーナに促される。恥ずかしい感覚は、もうどこかに行ってしまっていた。
「みーな…」
「キス、好きでしょ?」
「ん…」
「嬉しいでしょ?」
「ん……(こくん)」
「じゃ、なんて言うの?」
「あ…ありがとう」
「よくできました」
ミーナは、にっこり笑ってキスを再開した。
「宮藤さんにも、ちゃんと言うのよ?」

後日。特訓の成果か、宮藤に「ありがとう」と言えるようになった。
やっぱり恥ずかしいが……ミーナにいちばんありがとうって言わなくちゃと思った。

【完】


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