無題
皆が寝静まった深夜、私はミーナの部屋に向かっている。
なぜこのような状況になってしまったのか。
事の発端は十日前に上る。
寝室へ向かうために廊下を歩いていると、ミーナの部屋から何か声が聞こえてくる。
不思議に思った私は、ためらいもなくドアを開けた。
「ミーナ、どうした?」
そこにはミーナに裸で尻を突き出すリネットというのがあった。
ミーナの様子もおかしい。
珍しく制帽を被っているが、なによりも手に持った鞭とろうそくが目に付く。
「なにをしている!?」
私は気が動転しそうだった。
「あ…バルクホルンさん」
「はぁはぁ、あら、トゥルーデじゃない。どうしたのかしら?」
二人とも激しい運動をした後のように息を切らしている。
「わ、私は何も見ていない!見ていないからな!」
私はドアを閉めて即座にその場を去った。
しかしそのままうやむやにできるはずもなく、翌日ミーナから出頭命令が出され、そこで私は深夜にミーナの部屋に来るように言われた。
そしてその日の深夜、私はミーナの部屋に向かった。
ただ部屋に来いと呼ばれただけで、何をするのかは聞いていない。
やはりあの鞭とろうそくで何かされるのだろうか?などと考えているうちにドアの前に来ていた。
軽くドアをノックする。
『入っていいわよ』という声が聞こえてきたので、私はドアを開けた。
「!?ミーナ、その格好は一体なんのつもりだ!?」
裸のミーナに私は慌てふためいた。
「慌てなくていいのよ、トゥルーデ。たっぷり可愛がってあげるから」
「ふざけているのか!?」
ミーナは手に持った鞭で床をバシッっと叩いた。
「ふざけてなんかないわ。これが私のストレス発散法なの。隊員を毎晩一人づつ呼び出し、私の言うとおりになってもらうのよ」
昨晩のリネットのことを思い出す。
「彼女にしたようなことを私にもするのか?」
ミーナは私に近寄ってくると、そっと頬を撫でた。
「あなたは旧知の仲ですもの。悪くはしないわ」
そう言ってミーナは私の胸元のリボンに手をかけ、服を脱がし始める。
ミーナの前でなぜか私は抵抗できなかった。
やがて服を全部脱がされ、下着だけにされる。
そんな私をうっとりとした表情で私の体を見つめるミーナ。
「そ、そんなに見ないでくれ」
「ふふ、トゥルーデったら本当に恥ずかしがりやさんなのね」
うふふ、と笑いながらミーナの手は私のパンツを下ろそうとしていた。
「待て!それは!」
「嫌なの?」
「そ、そこは…」
恥ずかしくて言葉が続かない。
「言うことを聞きなさい!トゥルーデ!」
急にさっきとは打って変わって、口調が荒っぽくなった。
さらに睨みつけるように私を見る。
「それと、私のことはミーナ様と呼びなさい」
「わ、わかった」
「返事は『はい』でしょ!」
「ひ!はい!」
いつもと全然違うミーナに私は驚きを隠せなかった。
そもそもこんなミーナを見るのは初めてだ。
「よろしい。では下着も脱ぎなさい、トゥルーデ」
「は、はい…ミーナ様」
私はしぶしぶ下着を脱いだ。
これで部屋に裸の女性が二人。
何をするかは想像もつかない。
裸の私を上から下までじっくりと見るミーナ。
「トゥルーデの体って綺麗でうらやましいわぁ」
ミーナが私の胸を触ってきた。
「ひぁ!」
恥ずかしさで私はもう爆発しそうだった。
「昨日ね、リーネさんが私の胸を垂れてるなんて言ってたの」
胸を触りながら、ミーナは一人語りだした。
「許せないわ!隊長である私を侮辱したんですもの!だから夜は激しくしちゃったわ」
「そ、そうだったのか」
「トゥルーデは私の胸のことどう思う?」
私はミーナの大きな二つの乳房を見た。
昨日偶然見えたリーネの胸もかなり大きかったが、ミーナもそれに匹敵するくらいの大きさだ。
「き、綺麗だと思うぞ」
「そう…でもどうせお世辞でしょ?」
途端ににこやかな笑顔が崩れる。
「そ、そんなことはないぞ!」
本心だった。
「嘘よ。みんな同じこと言うもの。あなただって同じよ」
「私が信用できないのか?ミーナ!いえ、ミーナ様」
『様』を付け忘れたので慌てて訂正する。
「無理をしなくていいのよトゥルーデ」
今のミーナには何を言っても無駄なようだ。
「すぐに私の虜にしてあげるわ」
私はベッドの上でリーネと同じようにミーナに尻を向けて四つん這いにするように命じられた。
「なにをするんだ?かなり恥ずかしいんだぞ」
「綺麗なお尻よ、トゥルーデ。鞭で叩くのがもったいないくらい…」
「鞭!?叩く!?」
「そうよ、こうやってね!」
ミーナは手に持った鞭を大きく振りかざすと、それを私の尻に思いきり打ち付けた。
「ひぁあ!」
バシン!と硬い皮が尻を叩く。
「どぉ?気持ちいいでしょう?」
「うぅ…痛いに決まってるじゃないか!」
「なら気持ちよくなるまでやってあげるわ!」
「ちょ、ちょっとまっ!あぁん!」
ミーナは幾度となく私の尻を鞭で打った。
「はぁはぁはぁ…どうかしら?まだ気持ちよくならない?」
「はぁはぁ…ミーナ…痛い…」
しばらく時間が経過して、私たち二人は体力を消耗しきっていた。
私の尻は赤く腫れており、まだ打たれた痛みが残る。
「はぁはぁ…ミーナ様でしょ!」
またもやミーナは鞭を振り上げる。
「あぅ!」
「さすがトゥルーデね。リーネさんとは違って調教しがいがあるわ」
ミーナは鞭を置いて、今度はろうそくを取り出した。
すでに準備してあったのだろうか、ろうが解け始めている。
「さぁトゥルーデ、これでもっと気持ちよくなるわよ」
ミーナは解けるろうを私の尻に垂らした。
「あ、あつい!」
「そんなに気持ちよかったの?ならもっとしてあげる」
さらに数滴ろうを垂らす。
「ひぃぁあ!あぅ!」
その時私は痛みや熱さの他に別の感情が湧き上がってくるのを感じていた。
「あら?トゥルーデ感じているの?」
「な!バカなことを言うな!」
「でもあそこはもう濡れてるわよ?」
口では誤魔化したが、体は正直なようだ。
戒められて感じてしまう自分が憎らしい。
「さあトゥルーデ。もっとおねだりしないの?」
「…」
「我慢しなくていいのよ」
「…って」
「声が小さいわよ」
「ぶってください、ミーナ様ぁ!」
私は恥ずかしいと思う感情を押し殺して言った。
「ふふ、はっきり言えたわね」
ミーナは再び鞭で私の尻を叩き始めた。
それが十日前のことだ。
あの日を境に私の体になにかの火がつき、毎晩のようにミーナの部屋へ通うことになった。
その度に私は戒められる快感に酔いしれ、ミーナは狂ったように鞭を振るい、お互いの欲を吐き出した。
そして私は今日もまたミーナの部屋に向かっている。
あの快楽を思い出すだけで狂いそうになるが、普段の私は冷静を装っているのでそんな姿は見せられない。
私がすべてをさらけ出すのはミーナ様の前だけだ。
完