姉のように


-この日は数人の同僚と、婦長と共に夜勤の当番だった。今のところは何事もないようでひとまずは安心だ。一旦見回りを終えた午前二時、紅茶でも淹れて一息入れようとしたその時だった。ナース室にナースコールのブザーが鳴り渡る。一瞬で緩んだ気を持ち直す。
「何号室?!」
遠くの方で婦長が問いかける。
「は、はい!」
私が慌てて部屋番号を確認してみると―――――――。


 -あの時・・・・ワタシ・・・・
どうやらあのあとワタシは病院に運ばれたらしい。おねえちゃんは今どうしているのだろう?
ナースコールをかけてから、そのようなことを思っていた。
ふと自分の身体を見てみる。違和感はない。何年も眠っていたわけではなかったようで一安心だ。
そのうち、病室の扉が軽くノックされ、若い看護婦がひとり入って来て部屋の電気を付ける。
「クリスちゃん、目を醒ましたのね!!」
半身を起しているワタシに、そう言いながら小走りで駆け寄ってくる。

―ワタシはどれくらい眠っていたの?ここは何処の病院なの?

そう訊ねようとしたのだが、自分の口から出た問いは別のモノだった。
「お姉ちゃんは無事なの?!」
と、そう訊いていた。看護婦は少し面喰ったような表情をするも、すぐにやさしく教えてくれた。
「ええ、お姉さんは無事よ。毎月アナタの為に治療費を振り込んでいてくれていたわ。
アナタが眠っている間ずっと・・・・。」
そう聞かされた瞬間、ワタシはとても怖くなった。もしワタシがこのまま目醒めなければどうなっていたか――――――


 -私は一通りの説明を終え、彼女も「体調は悪くない」との事だったので、一応夕方頃には検査をすると伝え、一度引き上げようとした時だった。
「待って・・!」
その言葉に呼び止められ、振り返る。クリスが今にも泣き出しそうな顔をこちらに向けながら喋りかけてくる。
「ワタシ本当に怖くなったの!もし私が目醒める前にお姉ちゃんになにかあったら、もしワタシがずっと目覚めなかったら・・・・って。ううん、そんなことにはならなかったのに・・・・。」
今にも泣き出しそうなクリスのそばへ再び赴き、そっと抱きしめる。
「大丈夫、今夜は私が付いていてあげるから―」
彼女はベッドの上で静かに泣いた。

 暫くこうしていると泣くのも落ち着いてきたようなので、彼女の体を丁寧に寝かせる。
「貴女もお姉さんも大丈夫だから・・・・」
・・と寝かせた彼女の耳に軽く口づけをする。少し困惑した表情を一瞬見せるも、わずかにほほを紅潮させながら「アリガトウ・・」と小さく呟く。
「明日、朝一番でお姉さんに連絡してあげるから、良い子にしててね?」
などとからかってみるとクリスは
「ワタシ、悪い子じゃないよぉ!」
と可愛くむくれてみせる。
―このコはもう心配ないわね・・・・


朝に連絡を差し上げたバルクホルンさんが、お昼前にとてつもない勢いで病室に入ってきた。
「わっ 病室ですよ、お静かに。」
「すみません、急いでいたもので。」
-よっぽど急いでらしたのね。自然と笑みが零れる。
クリスも笑ってお姉さんと抱き合う。

「お姉ちゃん私がいなくて大丈夫だった?」
「ん、何を言う!大丈夫に着合っているだろう!私を誰だと・・」
「あーもう全然ダメダメ。この間まではヒドイもんだったよー。
自棄っぱちになって無茶な戦いばっかしてさー」

――ふふっ、やっぱり姉妹ね・・。クリスもあなたがいないとダメみたいね・・いつまでも仲良くね・・・・
私はそっと、部屋を後にした。


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