いっしょだよ
「サーニャは私のことどう思ってるのカナ?」
窓から月明かりが差し込む雲のない満月の夜、私は自分の部屋のベッドの上で
考え込んでいた。
サーニャはこの501戦闘航空団、通称ストライクウィッチーズで私と1番仲がいい友達で、
いつも一緒に居る。大人しくて、可愛くて、とても純情で歌もうまい。
サーニャと居ると楽しいし落ち着く。私はサーニャに対して恋心を抱いていると自覚していた。
とても幸せな時間でこんな時間がずっとずっと続いてくれると思ってた。
しかし、最近ちょっと気になるこたがある。少し前に坂本少佐が連れてきた新人の宮藤と3人で
夜間哨戒の任務でネウロイと戦った後からサーニャと宮藤の仲が親密になってきた気がする。
サーニャは恥ずかしがり屋だから以前は私以外の隊員とはあまり話さなかったし、
夜間哨戒の任務があるから寝不足でみんなと居る時もずっとウトウトしていて
私が支えてあげないとちゃんと立っていられなかった。
それが、あの夜以降は宮藤のお陰なのか、みんなとも話せるようになってきて、
恥ずかしがり屋も少しは直った。私は最初、それが素直に嬉しかった。
でも、最近サーニャがみんなと笑顔で話しをしてたり、宮藤と仲良くしてたりするのを見ると
胸の奥がチクチクして、私は少しずつみんなと話せるようになってきたサーニャを影から見ることしか出来なくなっていた。
私はみんなに、宮藤に嫉妬している。前はずっと私の隣に居たのに…。
今になって気付く。
「私はこんなにもサーニャのことが好きなんダナ。」
宮藤が来る前は私はサーニャの特別だという自信があった。
夜間哨戒中にミーナ隊長に内緒で二人でラジオを聴いたり、サウナに入ったり、
訓練中も非番の日も私とサーニャはずっと一緒だった。
特別だと思ってた…。
私はどうしても今のサーニャの気持ちが知りたくて、今日、
夜間哨戒に出かける前のサーニャに声を掛けていた。
前の戦闘でサーニャのストライカーが破損して、直るまでのここ一週間はシャーリーとルッキーニが
夜間哨戒の任務に就いていたが、今日からはストライカーの修理が終わったので今まで通り、
サーニャが夜間哨戒の任務に就くことになっていた。
「サーニャ。」
「ん、エイラ。どうしたの?」
サーニャはクリクリした翡翠色の瞳を大きく開き、首をコテッと傾げながら私を見る。
ヤバイ。めちゃくちゃ可愛いジャナイカー。
などと心のなかで思いつつ、 緊張しながらもなんとか私は話を切り出した。
「ジ、実は、サーニャに聞きたいことがあるンダ。」
「なに?」
「えっと…ソノ…サーニャは…」
「私が?」
「えっと…い、いや、久し振りの夜間哨戒1人で大丈夫カ?」
だめだ。聞きたいことがあるのに。言いたいことがあるのに聞けない。
私ってヘタレなんダナ…。
「別に大丈夫だよ。任務だから。」
「そ、そっか。じゃあ今日もガンバレヨ。」
「うん。エイラ、いってきます。」
「イッテラッシャイ。///」
サーニャは笑顔で私に手を振り、真っ暗な夜の空へ一人で夜間哨戒の任務に行ってしまった。私は
ガックリ肩を落として1人トボトボと部屋へ戻ったのだった。
「結局聞けなかったんダヨナ。」
サーニャとのさっきの会話を思い出してひとりごちる。本当に私はヘタレだ、と思いながらゴロンと寝返りを打つ。
宮藤の積極性を少し分けてもらいたいナ。
「コノー、宮藤メ。」
そんなことを1人考えながら悶々としていたらいつの間にか意識がぼんやりしてきた。体が眠いと言っている。
「サーニャァ……」
私はいつの間にか眠っていた。
バタンッ!
ん?今誰か入ってきたような気がするけど気のせいカナ?まだ眠い…。
ドスッ!
「……エッ!?」
ドアが開いた気がしたけど気のせいだと思い寝ていたら、ベッドに何かが落ちてきた。
突然過ぎて少し反応が遅れたけど、これは気のせいじゃない。慌てて起きて見てみると、
そこには窓から降り注ぐ朝日に照らされて、下着姿でスヤスヤと眠るサーニャの姿があった。
「サーニャ…」
そこで私はあることに気付く。 ソウダ。
サーニャはいつも夜間哨戒が終わったあとはいつも間違って私の部屋に来て、一緒に寝てるんだ。
思い出したときに私はこの一週間みんなに嫉妬していたことが心配しすぎだったことに気付いた。
サーニャが部屋を違ってやってくるのはいつも私のトコロ。
サーニャにとって私はたぶんまだ特別ナンダ。そう思ったら自然と笑顔になる。
そして気持ちよさそうに眠っているサーニャに聞こえていないとわかっていて声をかける。
「ッタクー、なに部屋間違ってンダヨー。ホント、今日ダケダカンナー。」
「フフッ♪」
嬉しいくせに素直になれない私は、そう言って脱ぎ散らかされたサーニャの服を綺麗にたたんでから
サーニャの眠るベッドへと戻る。
私はサーニャの隣に寝転がり、サーニャの真っ白な頬にそっと指先で触れてみた。
とてもスベスベして柔らかくて気持ちがいい。
「ん…」
サーニャは甘い吐息をもらし、くすぐったそうに、私の指先から逃げようと顔をベッドにうずめる。
久し振りの夜間哨戒でよっぽど疲れたのか起きる気配は全く無い。
「い、今ならサーニャにアンナことや、コンナことを…」
そうつぶやきながら私はさらにサーニャの体に手を伸ばす。
ドクンッ、ドクンッ。私の心臓は緊張と興奮で鼓動が大きく、早くなっている。
サーニャのうなじ、首筋、鎖骨…。
だめダ!触れナイ!
寸前のところで手が止まる。って、私ヘンタイじゃなカー。しかもヘタレ…。
でも触りたい、あぁ宮藤の積極性を少し分けてもらいたいナ。
「コノー、宮藤メ。」
ん?そんなことを昨日も思ってたようナー?まぁ、いいか。
今はこうしてサーニャといっしょに寝てるだけで幸せだ。
こうして、特別な時間をいっしょに過ごせる。それがとても嬉しくて…
起床時刻まではまだ少し時間がある。 私は気持ちよさそうに寝ているサーニャの横で再び目を閉じる。
「…おやすみ。サーニャ。」