しんこんせいかつ
「出来た!」
出来立てほやほやの出汁巻き卵をお皿に盛り付け終わって、芳佳は満足げに頷いた。
うん。今日も美味しそうな朝ご飯が作れた。
ふっくらの卵焼きとカリカリに焼いたソーセージ。
お味噌汁もお母さんの味に近づけたと思うし。
お祖母ちゃんに教えてもらった浅漬けもいい塩加減。
竃で炊いたご飯もそろそろいい頃合だ。
ふふふ。これならきっとリーネちゃんも笑顔で、おいしいねって言ってくれるに違いない。
・・・おっと、いけない。
そろそろ起こしにいく時間だ。
手拭いで汗を拭いて、寝室へと向かう。
「リーネちゃん、朝だよ。起きて」
幼い寝顔で気持ち良さそうに寝ているリーネの身体を揺する。
けれども、彼女は中々起きてくれない。
「もぉー、リーネちゃんったら」
普段はしっかりしている癖に、ほんと、朝は弱いんだから。
まぁ、夜遅くまでイタズラをして寝かせなかった私も悪いんだけどね。
「おーきーて!」
耳元で、さっきよりも大きな声を出す。
だけれど・・・。
「うーん・・・やぁだー」
リーネはコロンと寝返りをうって、モソモソと布団の中に潜っていく。
その様子が幼くて、可愛くて。
・・・リーネちゃん、可愛すぎるよぉ・・・反則だよぉ・・・。
布団の脇で思わず悶絶してしまう。
このまま、この可愛い寝顔を見ていたい・・・。
でも、今日は診療の予約が沢山入っているし。
色々とやってもらわなきゃいけない事もあるし。
ごめんね。お礼に今晩も可愛がってあげるからね。
心を鬼にして、ばさりと勢い良く掛け布団を捲る。
冷たい外気に曝されて、顔を顰めながら、リーネは身体を丸める。
小柄な身体がますます小さくなる。
まるで、丸まった子猫の様みたい。
うわ~~~、な、何?何、このかわいい生き物?
目の前の光景に頭がクラクラする。
そして、ふと目に止まるのはパジャマの胸元から僅かに豊かな膨らみの谷間。
昨日の夜に堪能した柔らかくて温かいあの感触を思い出して、芳佳はその谷間に顔を埋める。
蕩けそうな感触と甘ったるい匂いに包まれて、芳佳の意識は桃色に染まっていった。
「
芳佳ちゃんのバカ!エッチ!スケベ!」
「だって、リーネちゃんが誘うから・・・」
「ふん!
芳佳ちゃんなんて知らないんだから!」
ぷいっとそっぽを向いて、リーネは冷めたお味噌汁に箸を付ける。
「・・・ねぇ、リーネちゃん。私が作ったご飯おいしいかな?」
おそるおそる尋ねる芳佳をチラリと見ながら、リーネは卵焼きを口に持っていく。
「・・・どうかな?」
「私、甘い卵焼きのほうが好きなんだけど」
不機嫌そうなリーネの言葉に芳佳はガックリと肩を落とした。
うぅ・・・好きな人の好みも知らないなんて・・・。
私ってお嫁さん、失格なのかな・・・。
「ふふふ。う~そ。私、芳佳ちゃんの作ったモノなら何でも好きだよ」
顔を上げると悪戯っぽい笑みを浮かべたリーネの顔。
「美味しい朝ご飯作ってくれたから、許してあげる」
「・・・もぉー、何それぇ」
そう呟いてはいるけど、顔は自然とにやけてしまって。
くずれた顔を誤魔化すように、負けじと芳佳も言い返した。
「今晩もリーネちゃんのこと、寝かせてあげないんだからね」