free bird


―――自由な彼女は、私をこんなにも簡単に虜にしてしまう。

自由というのは、罪だ。

―――free bird―――

今日も起床のラッパが鳴る。
全く、今日も寝坊か…。

「ハルトマン!何をしてる!寝坊だぞ!」
「んん~……あと5時間……」
「何を言っている!早く起きろ!」

私はハルトマンが被っている毛布を勢い良く剥ぎ取った。

「トゥルーデ…見逃してくれたら…」
「なんだ?」
「キスしてあげる」
「…キッ…///…バッ、バカ言ってないで早く起きろっ!!」

バタンッ

「あ~あ、怒っちゃった……本気…なんだけどなあ…」


《ドアの前

「…なっ…何を言っているんだアイツはっ…!」

それに…何だこのドキドキは…

『キスしてあげる』

…うっ…キッ、キスって…///

「バッ、バカらしいっ…!全く…!」

私はそう言いながらハルトマンの部屋を後にした。



《夜 トゥルーデの部屋



………んんっ……やけに寝苦しいな……。

「トゥルーデ」

…ん…今ハルトマンの声が聞こえたような…?

「ヤッホー♪トゥルーデ」
「ハッ、ハルトマンッ…!
何故ここにいるっ…!?」
「夜這いだっ!」
「だっ!じゃない!早く自分の部屋に帰れ!」
「冷たいなあ。私とトゥルーデの仲じゃん」
「お前なんか知らん」
「えー」

全く、朝のアレがあってから、まともに顔も見られないというのに…。

「……♪」
「なんだ、ニヤニヤして」
「トゥルーデ、私の事意識してるでしょ?」
「なっ…///」

私は自分で自分の顔が真っ赤になっていくのを感じる。

「…図星だね…?」
「ハルトマン…お前っ…」
「だから言ったじゃん…夜這いしに来たって」
「やめろ…ハルトマン…」

ハルトマンが迫る。

「…好き…トゥルーデ…」

私はハルトマンの肩を掴んで押し戻した。

「トゥルーデ…」
「…スマン、ハルトマン…」
「はあ…やっぱりトゥルーデはそう来ると思ったよ」
「ハルトマン…」
「私、ちょっと安心したよ。ここでトゥルーデが私の事を受け入れたら、私もちょっと戸惑うとこだったよ」
「…私は、ハルトマンの事が嫌いなワケじゃない。ただ…」
「ただ…?」
「今はその気になれないだけだ。すまない」
「アハハ、うん、トゥルーデらしいよ!…じゃあ、これ、忘れないように…薬指出して」

そう言うと、ハルトマンは私の左手の薬指に指輪をはめた。

「…指輪…?」
「そ、おもちゃだけどね。…それが、私とトゥルーデを結ぶ約束だからね」
「約束…」
「うん、いつか、トゥルーデが私をお嫁さんに貰ってくれる、約束♪」
「バッ、バカ言うなっ…///」
「照れてる照れてる♪」
「全く…///」
「…じゃあ、おやすみ、トゥルーデ」
「ああ、寝坊するなよ」
「余計なお世話だよ!…あっ、そうだ、トゥルーデ、最後にもう一つあるんだよ」
「…今度は何だ?」

私が半ば呆れ気味にそう言うとハルトマンは私の頬に軽くキスをした。

固まる私を尻目にハルトマンは、やってやったとでも言うかの様に

「ヘヘッ、お・や・す・み・♪」

バタン

私はそのままベッドに倒れ込んだ。

「……自由過ぎる、だろ…///」


私が、ハルトマンの下に落ちる日は、そう遠くなさそうだ…。



END


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