シアワセ
「ごはんだぞー!おっきろ?♪」
ルッキーニの元気な声で私は目を覚ます。まだ半分眠っている体をなんとか起こして、
隣で気持ちよさそうに寝ているサーニャを優しく起こしてやる。
「サーニャ、昼ゴハンダゾ。起きロー」
昨日の雨が嘘のように空には雲ひとつなく、窓の外の太陽は既に高い位置にあり、
朝ゴハンを食べ損なったのは確実で、ルッキーニのゴハンというのは昼ゴハンを指しているのだろう。
昼ゴハンまで食べ損なえばサーニャは丸1日何も食べないことになってしまう。夕方から夜間哨戒の準備をして、
夕食の時間には既に居ないのだ。
そんなのダメダ。私は、なかなか起きないサーニャの肩を揺らしてみた。
「サーニャ。起きロッテー」
「んん…」
サーニャの小さくて瑞々しいピンクの唇から可愛い声が漏れた、そして気だるげに体をよじる。
しかし、まだ起きる気配は無く、私は再びサーニャの肩を揺らした。そのとき。
「ウワーーー///」
サーニャの胸元からまだ14歳の控えめな胸のふくらみがチラリと見え、私は思わず大声を上げてしまった。
サーニャは今、その白くて美しい素肌にシャツを一枚羽織っただけであり、
肩を揺らしたときにシャツが肌蹴てしまったのだ。
夜の雨の中夜間哨戒を終えたサーニャは、いつものように私の部屋に来てベッドに倒れ込んだのだが、
このまま寝かせたら風邪を引いてしまうと思い、まだ完全に寝付く前のサーニャを無理やり起こして、
私のシャツに着替えさせたのだ。
「ミ、見てシマッタ」
私は事故とはいえ不意に見えてしまったサーニャの胸のふくらみが頭から離れずアタフタしていた。
「エイラ、おはよう」
そんな時、さっきの大声のせいか、サーニャが起きてしまった。
「オ、オハヨウ、サーニャ」
「エイラ、何で顔赤いの?」
「エッ?コ、コレハダナ…」
「これは?」
「き、気のせいジャナイカ?赤くなんてナイゾ」
私は顔が赤い事も、その理由もはっきりわかっていたが、サーニャに言える訳がなく、
適当にごまかした。ごまかせたよな?
「そっか」
「ソウダヨー」
ふう、なんとかごまかせたようだ。
「ねぇ、エイラ」
「ン?ナンダ?」
「どうして私はエイラのシャツしか着てないの?」
「覚えてナイノカァ?」
「うん」
「サーニャが昨日ズブ濡れで帰って来たカラ、私がシャツを貸したんダ」
「エイラが着せてくれたの?」
「ソ、そんなわけアルカ!サーニャが自分で着たんダヨ」
私は再び顔が赤くなってくるのを感じて焦って顔を背けた。
「そんなことより、昼ゴハンの時間ダゾ。ルッキーニとシャーリーに全部食べられちゃう前に早行くゾ」
「うん」
私はサーニャに着替えを促し、自分自身も着替えを終わらせた。
「サーニャ、先に部屋の外で待ってるゾ」
「わかった」
そう言って私は部屋を出て、サーニャの着替えが終わるのを待っていた。部屋の中からはごそぞそと
サーニャの着替えの音が聞こえる。私はその様子をなるべく考えないように、昼ゴハンのメニューを予想していた。
「エイラ…」
不意に部屋の中からサーニャに声を掛けられた。
「ン?」
「ドウシタ?」
私の名前を呼んでから口ごもっているサーニャに続きを促すため、再び声を掛けた。なんだろうサーニャのやつ。
そして再びの沈黙の後、サーニャの小さくて、少し恥ずかしそうな声が聞こえた。
「エイラ…いつも私のこと気に掛けてくれて…その………ありがとう」
恥かしがり屋なサーニャの、精一杯の感謝の言葉。
たった一言の感謝の言葉が、少し照れくさくて、でも、とても嬉しくて。
私はまた、顔が赤くなっていくのを感じた。
「シ、シアワセダナ…///」