明日への想い


―――いかなる結果にも満足せずに、理想を追い求める彼女の姿は、私から見たらとても格好良くて、憧れだった。

それが気付いたら、恋心に変わっていた。

…でも、それは貴女も同じだったんだね。シャーリー…。

―――明日への想い―――


「シャーリー!好きっ!!」
「はいはい、可愛いなぁ、ルッキーニは」
「エヘヘー☆」

私はシャーリーに気持ちを悟られないように“本当の心”を隠していた。
胸の高鳴りを必死に抑えながら、“シャーリーの親友”を演じていた。

そんなある日突然、私達の関係に変化が生じる。

「これ、読んで」

私はシャーリーから、一枚の手紙を渡された。それは何の飾り付けもされていない殺風景な便箋だった。

「うにゃ?手紙?」
「あっ…ここでは読むなよ!…読むなら、自分の部屋に戻ってから。…あと、一人で読んで」
「うっ、うん…」

こんな焦ったシャーリー、珍しい…。
私はシャーリーの言いつけ通り、自分の部屋に戻ってから、その手紙を読む事にした。

その手紙を読んで私は愕然とした。

――ルッキーニへ

いきなりこんな手紙ごめん。
というのは、ちょっと言葉じゃ伝えられない事なんだ。だから、手紙でしか伝えられない私を許して欲しい。
…じゃあ、率直に言うからな。


…ルッキーニ、私、お前の事、好き、なんだ…。

やっぱりちょっと気持ち悪いかな…?
ハハハ、ごめん。
いやいや、ルッキーニがどうしても嫌って言うなら、私、ルッキーニに関わるのやめるから…。


…でも、もし、もし、私の想いを受け止めてくれるなら、明日の深夜1時、ハンガーに来て欲しい。

…ふぅ、想いを伝えられただけで、満足だよ。
じゃ、また明日ね。おやすみ、ルッキーニ。





…あれ、涙が…。おかしいな、別にこの手紙には泣くとこなんて無いじゃん…。

シャーリー…シャーリーも苦しかったんだね…。


《翌日

「あっ、シャーリー…」
「……」

あの手紙の事もあってか、シャーリーは私に声をかけるどころか、目さえ合わせてくれなかった。
別にケンカしたワケじゃないのに、気まずい。私はこんな空気が一番苦手なんだ。

……まさか、シャーリー、私にわざと嫌われる為にやってる…?

…シャーリーの、バカ…。



《深夜1時
ハンガーにて

「…はあ…私何やってんだろ…。ルッキーニが来てくれるハズなんて無いのに…」

(…あんなに昼間、ルッキーニに嫌な態度をとったのに。これでここに来たらルッキーニも相当な大バカだよ…)

「…シャーリー…」
「…ルッキーニ…!な、なんでここに来たのっ…!?」
「なんでって、シャーリーが呼び出したんじゃん」
「それは…そうだけど……ああ、そうか、断りに来たんだな…?…そりゃそうか、同じ女から好きだって言われたらそりゃ気持ち悪いもんな…。…ごめん、ルッキーニ、これから一切ルッキーニに近付かないから…」

そう言うと、シャーリーは立ち上がった。

「じゃ、おやすみ、ルッキーニ、また明日…」

私はシャーリーの服の裾を掴んだ。

「ルッキーニ…?」
「…自分だけで勝手に話を進めちゃダメ…私の答え聞いてないじゃん」
「…答えなんて……離して、私はルッキーニと一緒にいる価値も無いんだ」
「シャーリー…」
「勝手に恋心抱いて、勝手に告白して…。その挙げ句、昼間はルッキーニを無視したりして…。私、最低だよ」

そう言うシャーリーからは涙が零れていた。

私は衝動的にシャーリーを抱きしめていた。

「…ルッキーニ…離して…同情なんかいらない」
「…なんで私の答えを聞かないうちから諦めちゃうの?…そんなの私の好きなシャーリーじゃない」
「…私は…ルッキーニに好かれる様な人間じゃない…!!」
「…私の答え、教えてあげようか?」
「……」
「…シャーリー、私に嫌われようと昼間無視してたでしょ?でも、私は分かっていたよ。シャーリーは私を嫌いになったりしない」
「……ルッキーニ……」
「はい、コレ、あげる」
「…百合…?」
「そ、芳佳に聞いたんだけどね、百合の花言葉って日本ではさ、『あなたはわたしを騙せない』って言うらしいんだ」
「……ルッキーニ」
「…シャーリー、シャーリーは自分を騙していたみたいだけど、シャーリーは…」


…私を騙せないんだよ…?


「ル、ルッキーニ…///」

シャーリーの顔が一面、紅に染まる。

「…これで、分かってくれたかな…シャーリー?」

シャーリーはまだ涙が止まらない様子で、でも少し笑いながら。

「フフッ、ルッキーニのクセに何乙女チックな告白してんだよ…。そういうのルッキーニには似合わないって」
「にゃっ!?私だって恋する乙女だよ?そういうシャーリーも涙なんて似合わないよ!」

シャーリーは私の手を固く握って、少し照れくさそうに言った。

「私達、多分スゴい大バカなんだよ。もうとっくに両想いだったのに、それに気付けずにいたなんて。互いの想いに縛られて動けなかったんだ」
「でも、今は違うね…?」
「…ん…」
「…ね、ちゅーしよ♪」
「なっ、なんだよ、いきなりっ…///」
「せっかく恋人同士になったんだから、ちゅーくらいしようよ。私のファーストキスあげるからさ♪」
「…私もキスは初めてだよ。…ははっまさか初めてのお相手がルッキーニだなんてな」
「それを望んでいたんじゃん」
「…そう、だね…。確かにそうだ」

すると、シャーリーは私の頬に手を添えて私の目を真っ直ぐに見据える。
昼間全く目を合わせなかったから、余計ドキドキする…。

「…するね?」
「…うん…」

そして徐々に近付く二人。
唇が触れ合う直前に、シャーリーが呟く。

「……私はルッキーニになら、騙されても、いい」

シャーリー…


私達は誰もいないハンガーで、初めてのキスを交わした。


「なあ、今日はずっとここにいないか?」
「風邪引いちゃうよ」
「大丈夫だよ、こうすれば…」

シャーリーは、私に身を寄せて…

「こうすりゃ暖かいだろ?」
「う…うん…///…ちょっと恥ずかしいけど…///」
「いいじゃん、二人しかいないんだし♪」「…シャーリー」
「ん?なに?」


私はありったけの想いを込めてシャーリーに笑いかけた。


「大好きっ!!」

END


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