キスの行方~where abouts~


あ――――――……
\n私達は偶然、芳佳とリーネがキスしているのを目撃してしまった。
横にいるルッキーニは真っ赤になって固まっている。

「リーネちゃん…んんっ…」
「…よっ…しかちゃっ…ん…」

二人は顔を紅潮させて、自分達の世界に入り込んでいる。
あの様子だと多分、私達にも気付いていないだろうな。

それからというものの、ルッキーニの様子がおかしくなった。
私とは普通に話せるし、魔力を使う分にも何ら影響は無い。
何が変っていうか、目が泳ぎっぱなしていうか。妙によそよそしい感じ。

そして私はまだ気付いて無かった。
この二人のキスが私達の関係を変える事を。

―――キスの行方~where abouts~―――

「ん―――…」
「どうしたんだ?リベリアン。お前らしくもないな」
「ん?ああ、ちょっと…ねぇ…」
「悩みがあるなら私が相談に乗るぞ」
「へぇ…」
「…どうした?
そんな驚いた顔して」
「相談に乗ってやる、なんて…熱でもあんの?」
「…失礼にも程があるな。私は本来優しい性格なんだ。お前らが私を怒りっぽくしてるだけだ」
「あーハイハイ」
「……で、悩みはなんだ?」
「うん、最近さ、ルッキーニの様子が変なんだよ」
「何かあったのか?」
「いやさ、芳佳とリーネがキスしてるのを見てからちょっと変なんだよ。なんか私に対して妙によそよそしいって言うかさ」
「…リベリアン、それは――」
「ああ、ワケ分かんねえ!もう何なんだよ!!あいつ一体なんだよ!!」

(…人の答えは聞かないのか…?)

「ん?なんか言った?」
「…いや、別に…」

やっぱりルッキーニの態度がよそよそしい原因がまるで分からない。
…私に原因があるのか?
…いや、私はルッキーニとキスをただ見ていただけだ。
そんな事をボンヤリ考えながら歩いていると、目の前からあの芳佳とリーネがやって来た。

「よっ、お二人さん」
「シャーリーさん、こんにちは」
「この前はお楽しみだったねえ」

私はニヤニヤしながら、二人に問いかける。

「みっ、見てたんですかっ…!?」
「もうそれはじっくり♪」
「うっ……//////」
「…でさ、二人のキスを見た後、ルッキーニの様子が変なんだよ。なんか変によそよそしいっていうか。ポーッとしちゃってさ。私を見る度になんか目が泳いじゃってるんだよ」

すると、リーネが真っ先に口火を切った。

「…それ、多分ですけど、シャーリーさんとキスしたいんじゃ…?」
「私と…?」
「私も芳佳ちゃんに片想いしてた時はそんな状態だったんですけど、好きな人とは目線もろくに合わせられないんです」
「すると、あれか、ルッキーニは私に恋してると?」
「多分ですけど」
「アハハハ!そりゃないだろうな!第一、アイツ私みたいのなんかタイプじゃないだろうし」

すると、リーネが少し怒ったように、言った。

「す、好きになったらタイプとか、関係ありません!…その人がすべてになっちゃうんです!!」

リーネ、いつにも増して熱いなあ。
で、横にいる芳佳はかなり赤面してるけど。

「でも恋してるルッキーニってこう、いまいちイメージしづらいよなあ…。色気より食い気っつーかさ…」
「あれ、でも最近、ルッキーニちゃんあんまり食べてませんよね?
それでバルクホルンさんが不思議な事もあるもんだって」

…そういやそうだった。最近のアイツは飯すらろくに食べない。
私も心配になったから声をかけたけど、ルッキーニはいつもの調子で「大丈夫!」だなんて言ってたから…。
…あれが恋する乙女のシグナルだとしたら、ルッキーニは間違いなく私に惚れてる。
だとしたら、私はルッキーニにどう接すりゃ良いんだ…?

ビーッビーッ

「警報っ!?」
「こんな時にネウロイかよっ!チクショウッ!」

考え事がある時に限って襲撃して来やがって…!
空気読めよ!ネウロイ!

ミーナ中佐からの指示で私とルッキーニはフォーメーションを組む事になった。

「よし行くか、ルッキーニ!」
「…うん…!」

今回のネウロイは追尾型のレーザーを撃ってくるタイプのネウロイ。こいつがまた厄介なんだよな。

「私とバルクホルン大尉は正面から、ペリーヌさんとハルトマン中尉は右から、宮藤さんとリーネさんは左、シャーリーさんとルッキーニさんは後ろからお願い。
坂本少佐、貴女はコアを探して頂戴」

ミーナ中佐の的確な指示が飛ぶ。

「くっ…なんだこいつの装甲はっ…!」
「硬いとかそういうレベルじゃありませんわっ…!」

ヤバい、想像以上にこのネウロイが手強い。
私達がいくら弾を撃ち込んでも、動じる様子すらまったく無い。

「ほら、ルッキーニもバンバン撃ち込め!」
「……えっ…?…ああ、うん…」

…こんな危機的状況なのに、ルッキーニは心ここにあらずと言った感じで。
そんなつもりは無いのに、つい語気を強めて言ってしまう。

「…ルッキーニ、お前死にたいのかよ!
訓練中ならともかく、今は戦闘中なんだぞ!」
「あっ……ごっ…ごめん…」

……んー、なんか、イライラするな……。

そしてやがてみんなに坂本少佐から報告が入る。

「みんな気を付けろ!もう一機いるぞ!シャーリー、ルッキーニ、お前らの後ろだ!」

なっ…!二機とか卑怯過ぎだろっ!
そう思った瞬間、ルッキーニの方に、もう一体のネウロイが放ったレーザーが…!

「シールドを張れぇ、ルッキーニィィ!!」

坂本少佐がそう叫ぶも、突然の事でルッキーニはシールドを張る事が出来なかった。

あんのっ、アホルッキーニ…!!

「ルッキーニ―――――――!!!!!」

バシュゥン

「う…わぁぁぁぁあっ…!!」
「シャーリー―――――!!!!!!!」
シールドを張るのが間に合わなかった私はルッキーニを庇って、ネウロイに撃たれた。

「ペリーヌさん、宮藤さん、シャーリーさんをお願い! 残りのみんなは続けてネウロイ撃墜に専念して!」


……ああ、落ちていく。…胸が、痛い。
あ、ルッキーニ、メチャクチャ泣いてる。…何か言ってるけど、何も聞こえない…。

あ………意識が……遠のいて………………





――――ん…?…ここは…医務室か……?

……そうか、私、ルッキーニを庇ってネウロイに撃たれたんだっけ。
ああ、もうちょっとシールドを張るのが、早かったらなあ…。

「…ううっ…うっ…シャーリー…ッ…」

―――泣き声が聴こえる。これは……ルッキーニの声だ……。

「…ルッキーニ…」
「シャー…リー…!!」
「…なんで泣くんだよ…私は死んでないぞ…。『グラマラス・シャーリー』をナメんな…?」
「みっ、みんなを呼んでくるっ…」

私はルッキーニの裾を掴んだ。

「シャーリー…?」
「その前に聞きたい事が二、三あるんだ。いい?」
「う、うん…」

私はちょっと無理して、少し起き上がる。

「ちょっと、寝てないとダメだって!傷が…!」
「大丈夫だよ、こんくらい…。……で、ネウロイはどうなったんだ?」
「大丈夫、ちゃんと撃墜したよ。二機とも」
「そっか…。良かった。ちょっと安心した」
「聞きたい事ってそれ?」
「…いや、もう一つある」

私はルッキーニの手を軽く握って。

「この前さ、芳佳とリーネのキスを見ちゃったじゃん。その時から、ルッキーニの様子がおかしくなったよね」
「……っ……」

ルッキーニが途端に黙りだした。
ルッキーニの顔は心なしか赤くなっている様で。

「最近食欲が無いのも、私と話す時妙に目が泳いでるのも………今日の戦闘中も。最近のルッキーニ、変だよ」
「シャーリー…」
「……ルッキーニ…まさかとは思うけど、私の事……好き…なのか……?」

ルッキーニはやっと泣き止んだのに、また涙を浮かべ始めて。

「………ごめん…………気持ち悪いよね……」
「……誰も気持ち悪いとか言ってないじゃん…。ただ、私の事が好きかって聞いてんだよ」

すると、ルッキーニは顔を林檎みたいに真っ赤にして、頷いた。

途端にちょっと笑いが出た。

「…アッ…ハハハハ…!!」
「なっ…何がおかしいのっ…!?」
「いやいやごめん。ルッキーニがそんな乙女だとは思わなかったからさ」
「…私だって女だもん」
「…だからって、戦闘に私情を持ち込むなって、私があの堅物だったら、ルッキーニ、間違いなく怒られてるね」
「…そうだね」

しばらく二人で笑い合った後、私は再び本題へ話を移す。

「……で、ルッキーニ。詰まるところルッキーニは私とどうしたいんだ?」
「どっ…どうしたいって……//////」
「恋人として、お付き合いしたいのか?手繋ぎたいのか?ハグされたいのか?」

私はちょっと悪戯っぽくルッキーニに質問する。

「………シャーリー………分かってるクセに………//////」
「ハハハ、それはルッキーニの口からはっきり言って貰わないと、さ」

やや間があってから、ルッキーニは小さな声で話し始めた。

「…シャーリーと恋人になりたい…。それで、シャーリーと……」
「私と……?」
「…ちゅ……ちゅー……したい……//////」

……やっと言ってくれたか…。
私も胸のモヤモヤがやっと取れたよ。

「うん!上手く言えた!…ご褒美あげるよ」
「…ご褒美…?」

私はルッキーニを抱きしめて。

「シャッ、シャーリー…!//////」
「キス、あげる。私も初めてだから、よく味わえよ?」
「……はっ……初めて……!?//////…シャッ、シャーリー……そんな、私なんかに……っ」
「……それはお互い様だろ?」

私達の距離は徐々に近付く。
そして私はルッキーニの近くでとどめの殺し文句を吐く。

「…ルッキーニ、キスで壊してやるからな…?」




「ふんふふ~ん♪」
「やけに機嫌が良いな、リベリアン」
「ん?ああ、悩みはスッキリ解決したからね~♪」
「そうか。まあ、悩みでネウロイとの戦闘に支障をきたして貰っては困るからな。良い事だ」
「………なあ、初めてのキスってどんな感じだった?」
「……いきなりなんて事を聞くんだ」
「いやさ、昨日ルッキーニと初キスしちゃったんだけどさ、なんかこう変な感じだったんだよ。体が浮く感じって言うかな」
「そんな事知らん」
「知らんわけないだろ。ミーナとキスばっかしてるクセに」
「………お前は何を言っている…?」

明らかに動揺している。冗談で言ったのに、図星か、こりゃ。

「もうみんな知ってるよ」
「……ハァ」

ため息をつく堅物の後ろから、ルッキーニがやって来た。

「シャーリー!トランプしよー♪」
「おう!そうだな、しようしよう!」
「ちょっと待て、リベリアン」
「ん?なに?」
「……彼女は大事にしろよ」

…ビックリした…あの堅物からこんな言葉が出るとは思わなかった。

「ルッキーニ、ちょっと来い」
「ん?ってわあっ!」

そして私はルッキーニを抱き寄せて答えた。

「言われなくてもそうするつもりだ!!」

END


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