I want to shout " "


こんな想いを抱く自分が心底いやだった。

  I want to shout " "

「サーニャをそんな目で見ンナー!!」

相も変わらずサーニャの胸を(いや、何もサーニャだけじゃなく隊全員ではあるけれど)
ターゲットに狙っている宮藤に叱咤を飛ばしてその間にはいりこむ。
グルルルと云いそうな勢いで威嚇してやると宮藤撃墜に成功。してやったりと自分を
褒めてサーニャに向き直るとその案外近い彼女との距離に心臓が口から飛び出そう
になった。
はたと口に手をやる。
危ナイ。とびでてはなさそうダ。

「どうしたの?」
「な、なにがだヨ!」

さらに顔を近づけてふいにつ、と頬へ触れたサーニャの綺麗な手の感触に今度こそ
でた、と思った。
なにがって心臓が!!!
しかしでていないところを認めるとどうやら心臓というものは眼にみえないらしい。
そうったらそうなのだ。
それ以外認めない。もう認めないったら認めない。

……落ち着ケ、私。

「熱?」

……無理ダロ、私。

だって今、おでこっ…!
おでこぴたーって!!

「ーーー~っ!」

訳のわからない擬音語を発しながら、気づいたら私は走り出していた。

  ○

自室のベッドにばふんと沈みこむ。
今朝もここで寝ていたサーニャの香りが刹那して、それを肺にいっぱい吸い込んで
から私は変態かと頭を抱えて自己嫌悪をした。

ここ最近私はおかしい。
どこかネジが飛んでしまったとしか思えなかった。
サーニャといると何故かしどろもどろになる。
サーニャに触れられると、そこから熱が広がって、燃えて、灰になってしまいそうだ
った。
昨日だって、そうだ。
寝ているサーニャの白い肌にいやでも目が吸い寄せられた。
そんなの嘘だ。
そんな綺麗なものじゃあない。
魅いられていた。目が離せなかった。わかりやすくいうとガン見だ、ガン見!

サーニャをそんな目でみるなと豪語しておきながら一番不純な目でみているのは
私に相違ないのだ。
そのことに心底嫌気が差す。
わたしは、最低だ。
気持ちの正体を知っている
この焦がれるような想いの正体を。
それでも見てみぬフリを決め込んで結果サーニャとまともに接せなくなった私はや
はり最低なのだ。
さっき走り出す寸前にみたサーニャの目の色の意味を知っている。みえた。ちゃん
とみえたよ。寂しいって色だった。気づいていながら声なんてかけられなかった。

「サイテー、ダナ…」

枕に顔を押しつけながらうぁあああと妙な呻き声をあげる。
つまるところ私は叫びたいのだ。
サーニャのことが好きで好きで、好きで好きで好きで仕様がないんダ!!と。
誰もいない部屋でもましてや枕に顔を埋めているから声がくぐもっていようともそん
なことは叫べそうになかった。

弱虫は罪デスカ

わからないけれど私に限ってはとっても罪である。
だから変わりに自分を責めた。

「サーイテーーだーー~ぁあーーー」

うっすら自分の不甲斐なさに涙さえ浮かでくる。
泣いたってきっと楽にはならないけれど、少しだけ泣いてみようか
そんなことを思っていたらガチャリと扉の開く音がして、続く足音と纏うその空気だ
けで誰かわかる自分が恨めしい。
いま一番、会いたくなかった

顔も上げずに名前を呼ぶとうんと返ってくる。
デスヨネー!冷や汗いっぱいに心の中で叫んで
ちょっと、ひとりになりたいなー…なんて…とこんな時でも力なくそう弱々しくしか言
えない私の腰抜けさ具合に挫折しそうになっていると近い場所からイヤという声を
きいて次の瞬間にはサーニャのやけに軽い心地のいい重さを腰の辺りに感じてい
た。
うつ伏せのままマウントポジションをとられたので無論彼女の表情は窺い知れない。
どんな顔をしてそこに陣取っているのか
けれど知りたくもなかった。
ごめんねサーニャごめんごめんなさいマジでごめん
喉からでることもない言葉をされど心の中で唱えながら本格的に泣きそうになってい
た。

「…どうして最近わたしのこと避けるの」

怒っていますネ。そりゃそうだもっともだ怒らないほうがおかしいこんな理不尽な避け
方されちゃ誰だってたまったもんじゃないのだわかってるのに、わかってるのに。

「……ゴメン。」

依然枕に埋もれたままふごふごと声をだしていまの精一杯で謝った。

「…急に避けられて、泣きたいのは私なのに、どうしてエイラが泣きそうな声、だすの」

はたと顔をあげる。サーニャの声が震えていたからだ。細胞レベルで刻みつけられた
”守らなきゃ”という使命感のようなものがが重い重い頭を持ち上げさせた。
あげたところで背中に乗られていちゃ振り返ることもできない。顔もみれない。
泣いていなければいいのだけれど
なんていうのは私の勝手なエゴだ。やっぱり私は最低だ。
振り返ろうと思えば無理矢理にサーニャをどかすことだってできるのに、それでも顔をみ
たくないと思い身動きひとつできずにいる私はいま声の限りに叫びたい。好きダ。
 ごめんな、サーニャ
 サーニャを好きって気持ちがとまらないんダ

ついに一筋頬をしょっぱい水が伝った。

  
  
「……」
「………。」

もうなにも言えないでだんまりを決め込む私の背中を不意に猫よろしくサーニャがたした
しと何度もたたきだした。
とまったと思ったら途端にズルイよ、と声が降ってきて思わずへ?と間抜けな声をだす。
そのまま聞いてとサーニャにしては珍しく芯のよく通る声で命令されて思わずはいと敬
語で返事した。

「わたしね、エイラのこと好きなの」

「…………………はい?」

ずっとずっとずっとずっと私が思っていたことをさらりと言ってのけた彼女の言葉に私の脳
は働くことをやめてしまったようだ。処理能力が追いつかない。自分の辞書を引っ張りだし
ていま言われた単語の意味を必死に考える。
”すき”。”好き”?
好き、ダッテ?そんなバナナ。
痛くなってきた頭と格闘をはじめていたら斜め45度から右ストレート。

「最近ね、気づいたの。わたし、エイラのことが好き」

サウナにはいってると、頭ポワポワしてくるよな。
いま、そんな感じ。思考、ムリ。放棄。

「だからね、…せっかく、そうやって気づけたのにエイラが私のこと避けるから…。だから、
 エイラ、私のことキライになっちゃたのかなぁ、って」

サウナにはいってると、体熱くなってくるよな。じわじわじわじわ。
いま、そんな感じ。
私の否定速度といったら光より速かった。ぜったい。

「そっ、そんなことあるわけないダロ!!!!!!!!」

がばちょと起き上がるとその衝撃に耐え切れずサーニャの身体が私の上からころんとベ
ッドに落ちる。
その顔は笑っていた。

「……やっとこっちみたね。」
「…。」

ぽかんとしていると起き上がってきて真正面にきた目の強さに負けそうになる。
視線だけで溶けてしまいそうだった。

「エイラは、私のこと、キライになった?」
「そ、…んなわけ、ない、ダロ」
「じゃあ、なに?」
「…ー~っ」
「私は、言ったよ」

笑顔で問うサーニャに見惚れた。かわいい。かわいいかわいい。
全部が全部、好きだった。大好きだった。

嬉しそうな顔とかふいにみせる悲しそうな顔とか敵を倒そうとする強い顔だとか私にいま
向ける熱い眼差しだとかその後で知ることになる潤んだ瞳だとかたまに悪戯っぽく笑う顔
だとか名前を呼ぶときに満面に咲く、なによりもその、笑顔だとか。

何ものにも変えられないくらい、もう、大好きだった。

「わたし、は、」


I want to shout " "!!



Fin!


コメントを書く・見る

戻る

ストライクウィッチーズ 百合SSまとめ