Joker


私は罪を犯した。

ルッキーニを無理矢理手込めにした罪を。
抑えられなかった。己の薄汚い欲望を。

でもルッキーニは笑って許してくれた。

その笑顔を見て安心した私は

汚い人間だ。


―――Joker―――

『シャーリー…ッ…ダメだよっ…!』
『私…もうダメなんだっ…ルッキーニ…あんたを…』

また、夢を見た。
あの日以来、こんな夢ばかり見る。
やはり、私の頭はルッキーニを犯した事を許してはくれないのだろう。

あの日以来、ルッキーニの顔をまともに見る事が出来ない。
また、ルッキーニに甘えてしまいそうな感じがしたから。

「どうした、リベリオン。いつもの元気が無いな」
「…ちょっと元気が出ない状況でね。ごめんけど、ちょっと放っといてくれない?」
「…そうか。分かった」

私はトゥルーデに心の中で謝りながら、これからの身の振り方について考えていた。

ルッキーニを犯してしまった私にはもう、ルッキーニに話しかけるどころか、ルッキーニの傍にいる資格すらもう無い。

…ごめん、ルッキーニ。私にはこれしか無いよ。




《数日後

私はミーナ隊長に呼び出しを食らった。
呼び出された原因は分かっていた。

「シャーリーさん、これは何かしら」

ミーナ隊長は私の前に一枚の封筒を差し出した。
この封筒には見覚えがある。
それもそのはず、これは私がミーナ隊長に提出した“辞表”だから。

「見ての通り辞表です」
「それは分かってるわ。…私が聞いてるのは、何故これをいきなり…という事です」
「…私は此処にいる価値が無い…。…それだけの事を私は…犯してしまったから」
「貴女が何をしたかは敢えて聞きません。…ですが、この辞表は受理出来ません」
「……そうですか」

私は部屋を出た。突き返された辞表を握り締めて。

バタンッ

「…良かったのか?ミーナ。隊員の気持ちを汲んでやるのも隊長の仕事じゃないのか」
「…私としては十分汲んだつもりだけど?シャーリーさんに何があったかは分からないけど、シャーリーさんの問題はシャーリーさんが解決するべきだわ。…例え逃げたってそれは、シャーリーさんに一生付きまとってくるわ」
「…厳しいな」


《シャーリーの部屋
「やっぱり…ダメか…。自分の問題は自分で解決しろ…って所かな…」

…もうこんな時間か…。
でも寝たって、多分またあの夢が私を襲う。

私は、もうこの罪からは逃げられない。

そんな事を考えていると、ドアがノックされた。

「はーい」
「…シャーリー…」

ルッキーニの声だった。

「…帰って」
「シャーリー…!私っ…!」
「帰って!」

私達の間に沈黙が流れる。
その沈黙をルッキーニが破る。

「私、帰らない。シャーリーの気持ちが聞きたい」
「私の気持ち?…お前を犯した私の気持ち?…私なんかがルッキーニの言葉を聞く価値なんて無いよ」
「…入るね」

ルッキーニが私の部屋に入ってきた。

「……」
「ねえ、シャーリー…私の事が好きって、本当?」
「……」
「シャーリー」
「…本当だよ。だから私はルッキーニを犯してしまった。ただそれだけの話だよ。
…もういいだろ。ほら、自分の部屋に帰れよ」
「…私を犯したと思ったなら責任は取ってよ」
「…私はもう、ルッキーニに触る事は出来ない。…私はルッキーニを想うにはあまりにも汚れ過ぎた…。
私はもうルッキーニを抱けない」
「私、気にしてないって言ったじゃん」
「ルッキーニがどんなに言ったって私は…」

私の言葉はルッキーニの唇で塞がれた。

「……なんでこんな事するの?」
「…私はシャーリーが好きだから。…犯されたって私、シャーリーが一番好き」
「バカだろ、お前…。自分を犯した相手に対して好きだなんて…。普通言えないだろ」
「私は普通じゃないもん」
「……」

すると、私の頬にルッキーニの手が伸びてきた。

「シャーリー、そんなに自分を責めないでよ。私、いつもの元気なシャーリーが好き」
「……ルッキーニ」

ルッキーニはまた私にキスをした。

「何回キスするんだよ」
「…シャーリーがその気になってくれるまで」
「…お前」
「私、シャーリーのすべてを受け止めたいんだ。ねえ、シャーリー、私だけにシャーリーのすべて見せてよ」

―――私、シャーリーの汚い所も愛してあげる―――


―――どうして。どうしてルッキーニはそんなに優しいんだ?
私はお前を犯したんだぞ?お前の身も心もズタズタに引き裂いたんだぞ?

どうして、お前は私にそんなに優しいんだ…?
私…ルッキーニに優しくされる価値なんて…無いのに…!

「うっ…ううっ…!」
「シャーリー…」
「うわぁぁぁぁっ!なんでっ、なんでルッキーニは私に優しくしてくれるんだ!?…私、お前を犯したんだぞ!?」

私は泣き崩れた。
そんな私をルッキーニは優しく抱き締めてくれる。

「可愛い。シャーリーの泣き顔って私好きだな」
「ううっ…ルッキーニ…お前…っ…」
「ね、シャーリー、私を抱いて…?…私ね、意外と無理矢理されるの好きかも♪」

そう言うと、ルッキーニは私の涙を舐めとって。

「好き。シャーリー」
「…ルッキーニ」
「さあ、シャーリーの本当の気持ち、聞かせて?」
「私は…」

ルッキーニ、お前は優し過ぎる。
私はいつかまた、お前の優しさに甘えてしまう。

「……ルッキーニ…お前の事が」

それでも良いなら、私を抱き締めてくれ。

私の罪が消える事は無い。
けど、お前と一緒にいる事が、この罪を償う事なら私は…


「…好き…だよ…」


ルッキーニ、お前と一緒に生きる事を、選ぶよ。



END


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