Black Diamond


――なあ、ミーナ。私がどれだけお前を想っているかお前は知らないだろう。

お前には恋人がいる。それは知っている。それでも私はミーナを愛してるんだ。

ミーナ、お前にとって私は、どういう存在なんだ…?


―――Black Diamond―――

コンコン

「はい?誰かしら」
「私だ。ミーナ」
「トゥルーデね。良いわよ、入ってきて」
「…すまんな、こんな時間に」
「別にいいわ。それで何の用?」
「ああ、ちょっと眠れないんだ。それで少しミーナと話をしたくてな」
「珍しい事もあるものね」
「…私は意外と繊細だぞ?」
「フフッ、そうね。謝るわ」
「…月が綺麗だな」
「そうね。綺麗な満月ね」
「こんな夜は狼男か吸血鬼が現れるんじゃないか?ミーナは美人なんだから気をつけろよ」
「トゥルーデらしくないご忠告ありがとうございます」

月に照らされたミーナはいつも以上に綺麗で、それでいて妖艶で…。

「…なあ、ミーナ、坂本少佐とはどうなんだ?順調か?」
「なに?いきなり。…そうね。上手くいってるわ」
「そうか……」
「…トゥルーデ、話したい事って、この事?…私にはもっと別の事でこの部屋に来たように感じるんだけど」
「…さすがはミーナだな。私がいくら嘘をついていてもすぐ見抜くな」
「…褒められているのかしら」
「ああ、もちろん」
「それで話したい事って何かしら」

「…ミーナ、お前には坂本少佐がいる事は知っている。…だが、私にはそれが悔しくてしょうがない。
私の知らないミーナを坂本少佐だけが知っていると思うと、私の心の奥が焼け付くほど熱くなってくるんだ。……嫉妬でな」
「…そう」
「…一晩でいい。…私を抱いて…欲しいんだ…」

ミーナは途端に表情を暗くして。

「それは出来ないわ」
「…何故だ? 私が坂本少佐じゃないからか?…お前を好きな気持ちは、坂本少佐に負けてない…いや、坂本少佐以上だ!私ならお前を幸せにしてあげる事が出来る!」
「……私は」
「私はお前をこんなに愛してるんだぞ!坂本少佐よりお前を愛してあげられる自信があるんだ!だからっ…!」

パシンッ

部屋中に乾いた音が響いた。
私の頬をミーナが叩いた音だ。

「トゥルーデに美緒の何が分かるの?
美緒は私の汚い部分も含めてすべて愛してくれるわ。私は美緒が好きなの」
「………」

私達の間に重苦しい雰囲気が漂う。

「………私の事がそんなに好きなの?」
「…ああ」
「……来て、トゥルーデ」
「え?」
「いいから」

私はミーナに促されるままに、ミーナのベッドに座った。

「…トゥルーデ、貴女に一晩、一晩だけ夢を見せてあげる」
「ミーナ…」
「でも、美緒には内緒ね。あの人、意外に嫉妬深いから」
「…いいのか、ミーナ…。ミーナには坂本少佐が…」

私の言葉はミーナの唇で塞がれた。
ミーナの舌はより深く私の口内を犯し抜く。
そして数分…いや、数秒のキスは終わる。

「せっかく私を求めてくれてるんだもの。一度くらいは…ね」
「坂本少佐にバレたら二人とも殺されるかもな…」

私はミーナに押し倒された。
そして、私達は、重なり合った。

―――――――――――――――――――
バタンッ

私は一連の行為後、ミーナの部屋を出た。ぐっすり眠るミーナを起こさぬよう。

そして私は見てしまった。

坂本少佐と宮藤が重なり合っている所を。
ドクンッ

ダメだ。私の中の黒い部分が叫ぶ。

“今なら、奪える”と。

だが、私は実行に移せるほど大人じゃない。そんな勇気も無い。

今宵は、この綺麗な月でも見とくか。
この時だけは、仮面を外していられる。

今、私を支配するのはミーナを奪いたいという黒い感情だけ。


いつか、ミーナの前でも本当に仮面を外せる日が来るまで、私はミーナを想い続ける。

誰にも、ミーナは渡さない。


END


美緒視点:0135
リーネ視点:0138

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