Sorrow White


―――終わった恋なのに。

私はまだあの子が好きで。

終わった恋なのに。

私はまだあの子を想い続けている。

終わった恋なのに。

私はまだ、諦めきれていない。

―――Sorrow White―――

「行こうか、宮藤」
「はい、坂本さん!」

…私は、数週間前、ずっと芳佳ちゃんに抱いていた想いを、芳佳ちゃんに打ち明けた。
でも、神は私に味方してくれなかった。

『ごめん、リーネちゃん、私、他に好きな人がいるんだ…』

その瞬間、私の世界は真っ暗になってしまった。

でも私はその場では

『そうなんだ…。うん、なんかごめんね』

…なんであの時、無理矢理にでも引き止めなかったんだろう。

今更になってそんな後悔が私の頭を巡る。

ここだ。この木の下で、私は芳佳ちゃんに想いを伝えた。
ここは芳佳ちゃんとよく来ていた場所で、私にとっては大切な場所だった。

ここから見る水平線がとても綺麗で、芳佳ちゃんとここにいるだけで、とても幸せだった。

――でも、今となっては、遠い思い出。

「リーネさん」

物思いに耽っていた私に、声がかかる。
…ミーナ中佐だ。

「隣、良いかしら」
「は、はい」

そう言うと、ミーナ中佐は私の隣に座る。

「ここ、良い風が吹くわね」
「好きなんです、この木の下。向こうに見える水平線がとても綺麗で、なんだか優しくなれるんです」
「そうね。とてもここからネウロイが襲撃してくるとは思えないわね」

ミーナ中佐はクスクス笑う。

「……ミーナ中佐」
「なに?」
「人を好きになるって……とても辛いですよね」
「…そうね。自分だけを見て欲しいと願うほど…その人はどんどん離れて行くのよ」
「……」
「…私ね、坂本少佐が好きだったの」
「…え…?」
「…でも、彼女は私とは違う誰かを見ていた。
…それは前から分かっていた事なのに、世界が終わったような気すらしたわ」
「…ミーナ中佐…」
「…見ちゃったのよ。…宮藤さんと坂本少佐が抱き合っている所を。…涙が溢れて止まらなかった」

……ミーナ中佐も私と同じ、思いをしていたんだ。
そう思うだけで、あの日の出来事が私の頭の中にフラッシュバックしてくる。

……あれ、おかしいな、涙が、溢れてくる…。
涙はあの日涸れきった筈なのに、視界が、夜空が歪んでいく。滲んでいく。

「ううっ…ううっ…」
「…リーネさん…」
「ううっ…うああああああっ…!!」
「……リーネさん」

大声をあげて泣きじゃくる私をミーナ中佐は優しく抱き締めてくれた。

「よしっ…かちゃ…っ…!…なんでっ…わたしじゃないのっ…!?…ううっ…なんっ…でっ…!?」
「リーネさん……リーネさん…」

私を抱き締めるミーナ中佐も泣いていた。それでも、私を優しく抱き締めてくれる。

「よしかちゃんっ…!」
「…………美緒……」

ミーナ中佐は小さく『美緒』と呟いた。

私達は、涙が枯れ果てるまで泣いた。
感情を抑える事も無く。ひたすら泣き続けた。

今夜の夜風は私達にはあまりにも、冷たすぎた。

《翌日

「あっ、おはよう、リーネちゃん!」
「芳佳ちゃん、おはよう」
「おはよう、二人とも」
「おはようございます、坂本少佐」
「おはようございます、坂本さん!」
「はっはっはっ、元気がいいなあ!」
「あ、そうだ、坂本さん、朝練に付き合わせてください!」
「そうか、良い心掛けだ!」
「じゃあまたね、リーネちゃん」
「うん、また後でね、芳佳ちゃん」

そう言うと芳佳ちゃんと坂本少佐は消えていった。…手を繋いで。

それだけでも苦しい。辛い。悲しい。

…でも、私はまだ芳佳ちゃんを諦めた訳じゃない。
きっと、それはミーナ中佐も同じ筈。

ごめんね、芳佳ちゃん。私、諦めの悪い女だから。

貴女をまだ、想う。

そして私は窓から空を見る。

「うん、今日も良い天気。洗濯物も良く乾くかな」


その空は淀みなく、綺麗だった。

そして空に誓う。


「私、もう泣かないからね、芳佳ちゃん」


END


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