The first one step


それは、風呂で起きた。

ルッキーニによる馬鹿なセクハラ(?)。
宮藤への全身タッチの後、何を思ったかリーネを追いかけ、半ばで隊No.1(胸的な意味で)のシャーリーの胸へ飛び込んだ。

それは、落ち込んでいる宮藤を元気付けようとの思いからの行動なのか、はたまた欲望に忠実なだけなのか。それは本人にしかわからない。

いや、そこまではいいんだ。よくある現象だしな…。
そう、問題はその後。騒ぎに便乗したエーリカが、あろうことか私の胸を触ってきたのだ。
否。
…あれは、つ…つかんでいた!

普通の精神状態でいられなくなった私は、風呂をあがってすぐ、エーリカを自室へと強制連行。
問いただそうと息を吸ったところで、今に至る。

「ハルトマン!」
「なに?」
「お前…みんなの前であんなこと…!」
「あんなことって?」
とぼけている、こいつ。わかってる癖に、言わせるんだ。
「…だから、その…胸を、だな…」
「あぁ。揉んだこと?」
「揉ん…っ!」
なぜサラリと返せる!
「あんなのみんなやってることじゃん」
何をそんなに慌てているの、という態度。
――くそ、なんで私はこいつに負けてるんだ。
「…いや、でもな」
「そんなに気にすることないでしょ。それともなに?なんか困ることでもあったわけ?」

そこだ。困るんだ私は。
なぜなら私はお前に対して普通じゃない感情を抱いているからな!
…なんて言えるわけがなく。
「人前でああいうことは…!」
「…もしかしてトゥルーデ、胸弱い!?」
「ち……そ、そういうことじゃなくてだな…」
「否定しないんだ?」
「――っうるさい!」
確かに私は、胸はちょっと苦手だ!
でもそこが問題なわけじゃない。

なんて言えばいい。
エーリカ、好きだ。――いや。それはシチュエーション的に違う。不自然すぎる。…しかしそれが一番答えに近いと思うんだ。
私はエーリカのことが好きだから、大切だから、…そう簡単に触れて欲しくない。
多分これが正解なんだろう。
そろそろ覚悟を決めるときか…私も。


―――――――――


お風呂をあがったら急にトゥルーデに引っ張られて、そのまま部屋へと連れ込まれた。
いろいろと期待してしまう私。
まあ思った通りさっきのことについてのお説教らしきものだったんだけど。

突然なにか思案しはじめたトゥルーデ。私は彼女の反応を確かめたくて、問う。
「…まさかあのとき感じちゃった?」
「っ違う!…っ…わかった率直に言おう。私は、その、お前…エーリカのことが…、…」
グワシと私の両肩を掴む。そのときのトゥルーデの表情に、並々ならぬ決意を感じた。

あ、私、告られる。

耳まで真っ赤にしながら…。少しうわずった声と、私を見ようと努力しつつも泳いでいる目。
「…お前、が……」
「…」
「…………」
続く言葉を紡げないであせっている唇。
そして何より、肩に置かれた手が、小刻みに震えているのがわかったから。

私はトゥルーデの両手をとって肩から降ろした。

…まったく、世話のかかる上官なんだから。

持ったままの彼女の右手を引っぱって、もどかしくも閉じられた唇に、そっとキスをする。

「?!」
驚いているトゥルーデをよそに、私は彼女の言葉の続き――またの名を私の本心ともいう――をぶちまけた。

「好き」

トゥルーデは、びっくりしすぎて心がどこかに飛んでいっちゃったみたい。
完全に固まってる。
こっちだってそれなりに覚悟きめてるんだよ?

「エーリカ…、」
まずいな、絶対顔赤くなってるよ私…。トゥルーデがあまりにも真っ赤だからこっちにまで伝染しちゃった。
ああ、ほっぺが熱い!
「…ねぇ、」
トゥルーデも、好きって言ってよ。
そんな思いが伝わったのか、トゥルーデは私を引き寄せた。ぎゅっと抱きしめ、お互いに顔が見えない位置で静止する。
すると耳元にあたたかさを感じた。
「好きだ…。エーリカ…」

わ…。
なんだこれ。なんだこの気持ち。…トゥルーデのことが、どうしようもなく…愛しい。
なんだか心臓がやけに高鳴っているけれど。このドキドキが私のものなのかトゥルーデのものなのか判断できないほど、二人は密着していた。

ゆっくりと身体を離して、見つめ合う。
「ね、キスしてもいい?」次の瞬間、トゥルーデの耳から湯気が出たようにみえた。
「そんなこと、聞くな!」
これはOKのサインだね?

私はちょっと強めに、かつたくさんの愛を込めて、トゥルーデの唇に自分のそれを一瞬、押し当てた。
そして彼女の胸に視線を移す。
「二人きりのときだったら、触ってもいい?」

たとえトゥルーデが了解しなくたって、今の私がやらないわけがない。
トゥルーデの気持ちがわかった今、遠慮する必要なんてどこにもないんだから!
…なんて、ある意味攻撃的に考えていた。
トゥルーデのこんな言葉を聞くまでは。

「優しく…なら…」
「……えっ!?」

うつむきながら小さく言って。
「エーリカなら、いい」


…待って。なんでこんなに可愛いの?この人。
普段なら絶対に見せない表情。ダメ、可愛すぎ。

もうそこからはトゥルーデの意見なんて聞いていられなくなった。

なぜなら、私の中の理性を、目の前の彼女自らが叩き壊してしまったから!


Fin.


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