ブリタニアからの呼び声


これを残しても、誰の目にも触れないかも知れない。これは漆黒の限りなき深淵に沈みゆくだけの運命かも知れない。

しかし誰かに読まれる事を、荒野に放たれた子羊のような、ちっぽけな存在であるあたしが、ここに居た事を記す為にも、ここに書き残したい。

あなたがこれを読むとき、もはやあたしと言う存在は、世界から消えてなくなって居るかも知れない。

たった一つ望むのは、この日記があなたの役に立つ事を。

CHARLOTTE.E.YEAGER
リべリオン陸軍第363戦闘飛行隊

◆◇◆ブリタニアからの呼び声◆◇◆



それは偶然から始まった。夕食も終え、広間で談笑をしていたあたしにルッキーニが、基地の地下深くにある、今は使われて居ない倉庫から一冊の本を見つけたと。

「これだよー!」

そう言って、あたしに示した本の表紙にはこう書いてあった。

『無銘犯津書』

あたしは一目見ただけで、ルッキーニの犯した罪深さ、神々の祝福すら及ばぬ煉獄の所業を感じ取った。

「ばっ!それはアーカムのっ…!」
「なにシャーリー言ってるのー?もう乗り悪いなぁ^^」

あたしは母国のタブロイド紙で読んだことがある。世界の淵を覗いた魔術師が、自らの命と引き換えに書き残した書がある事を。その名を語る事さえ恐れられる書、『無銘犯津書』と…。

「じゃー私は、部屋で読んでるかな~。おやすみ~^^」
「まっ!待つんだルッキーニ!」

しかし、今思えばその時に既に"始まっていた"のだと思う。ルッキーニは私の声に反応を示さず、うつろな目とずり足で部屋に帰って行ったのだった。

私は心の底から恐怖が湧いてくるのを感じた。理屈では表現できない、原始的な恐怖。暗闇より暗い、静寂よりも静かな、ただただ、そこにあるだけの圧倒的な恐怖。

あたしは身体の震えを抑える事が出来ず、壁にもたれながら広間を出て自室へ向かう。確か、母国から持ってきた本の中に、もはや名を呼ぶ事すら叶わぬアレに関する資料があったはずだ。


廊下をゆっくりと歩く。基地は闇につつまれ、月すら輝かぬ夜に、禍々しい狼の鳴き声が響く。それはまるで、名状しがたき者たちの晩餐を告げる始まりの鐘のようだった。

その時、ブリタニア基地にひときわ大きな大きな悲鳴が響く。

「あっ!あんっ!芳佳ちゃ~ん!そんなに強く揉んだららめぇ~!!!」

リーネの悲鳴だ。ついに恐れていた事がが始まってしまった。ルッキーニが招いた災厄は芳佳を取り込み、この基地を包み込もうとしているのだ。

なんという事だ。あたしは自分の心臓が、戦災から逃げ出す馬車よりも早く打ち続けるのを感じる。リーネはもはや助かるまい、基地すべてに響くほどの勢いで揉まれたら。それは死刑宣告に等しいのだ。

いや、ルッキーニが本に手を伸ばした時点で、あたし達は始まって、そして終わっていたのかも知れない。すべての始まりとすべての終わりを統べる異形の神々の手によって。

あと50メートルであたしの部屋だ。恐怖に駆られ、足がもつれる。早く進もうとすればするほどドアが遠くへ逃げるように感じる。
あぁ、あたしがこれから行おうとしている事など、ルルイエの主からすれば児戯にも等しい、滝に向かう小舟を漕ぐがごとき愚かしい行為に違いない。その名を呼ぶ事すら狂気であり、姿を見るれば理を失う、おぉ!遥か星雲の神々よ!

その時、恐怖に怯え、もはや這いずる事しかできなくなったあたしの前に、一人のウィッチが立ちふさがった。全身から魚のような生臭い匂いを発しながら、粘り気のある体液に包まれたそのウィッチはバルクホルンだった。
変わり果てた姿のバルクホルンは私に手を伸ばす。指と指の間にうっすらと鰭が付いているのが闇夜でもわかる。澱み、如何な光さえ落ち続ける事しかできぬような暗闇を湛えた眼があたしを捉える。

「…シャーリー、芳佳と…ルッキーニが…呼ん…でいる…ぞ…」
「うあっぁぁぁぁ!!!!!!!あぁぁぁ!!!!!」

声は深い崖の底から這い上がってくる瘴気よりもおぞましく、もはやバルクホルンとは思えない、悪魔など比較にならぬ程、禍々しかった。
あたしは身体に残されたすべての力を振り絞り走った。右手と右足が同時に前に出る、転び、顔をしたたかに打ちつける。しかしそこに痛みなどありはしなかった。ただただ圧倒的な恐怖だけがあたしを支配した。

部屋の鍵を開けるのももどかしく滑り込み、閉めると同時に鍵を掛ける。
「はぁっ!はぁっ!!!」

あたしは破裂しそうな心臓を抑えながら、本棚へ歩み寄る。蝋燭の消えた部屋は闇に包まれ、本を探すことさえままならない。畜生!!

部屋の外からは何人かの足音、いや、もはやそれは足の立てる音ではないソレが、響いている。ひどく忌々しいあの水音、聞くだけで心の核を深淵へと引きずり込むような悪意に満ちた音。

「シャーリー…お姉ちゃんと…仲良くお姉ちゃんごっこをしようじゃないか…」
「ルッキーニさんが…首を長く…して…まって…いらしてよ…」

あたしの心は億に千切れ、絶望だけが支配した。
そして私は自分の日記を開き、覚悟を決めてペンを走らせ始めたのだ。

(この日記はここで途切れている)





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シャーリー「ってゆー本を書いてみたんだけどどうだろうか」
ルッキーニ「てか、私出番ほとんどないじゃん~!」

バルクホルン「それよりも私の扱いがひどすぎるじゃないか、リベリアン!」
ペリーヌ「バルクホルン大尉はまだいいですわよ!私は一体何なんですの!」

リーネ「(よ、芳佳ちゃんは揉むとき優しくしてくれるかなぁ…)」
芳佳「(おっぱいおっぱい)」


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