私の最高の時間
私はカールスラント出身の19歳、501統合航空戦闘団でストライカー整備の仕事をしている。
生来気が弱く彼女どころか女性と手をつないだことさえない。
今日も先輩たちに仕事を押し付けられ一人ハンガーでストライクユニットの整備していた。
―私の最高の時間―
「おつかれーいつもありがとね」
!?そう言って声を掛けてきたのはエーリカ・ハルトマン中尉、カールスラントの英雄だ
「差し入れにお菓子作ったよーってあれ?一人?」
な…なにっ!こ…鼓動が止まらない…ハルトマン中尉は以前から頻繁に我々男性隊員に声を掛けて困らせているという噂だ…落ち着け…俺は誇り高きカールスラント軍人だ。
そうだこんな時は先輩に教えてもらった言葉をマニュアル通り正確に言えばいいんだ
「す…すすすみません!ひ!必要最低限以外はウィッチ隊との会話を禁じられてるので!」
「あははっ別にミーナの言ったことなんて気にしなくていいのにー」
「そ…そうは言われましても…」
「それともなに?わたしの作ったものは喉が通らないとでも言うの?」
「い…いえ!そんなことはありません!有り難く頂戴させて頂きます!」
正直言うと私はずっとハルトマン中尉に憧れていた。勘違いしないでいただきたいが
もちろん一人の軍人としてだ。決して中尉と恋仲になりたいなどという不埒な思いは微塵もない!……と思う…
「どうかな…わたし普段料理ってあまりしないんだけど…」
「と、とても美味しいです!ハルトマン中尉」
「へーよかった♪トゥルーデも喜んでくれるかなぁー」
反射的に美味しいと答えていた。しかしそれは本音だ。ってあれ?トゥルーデ?
「なんかミヤフジがきてからトゥルーデが変わっちゃてねー…あのちびっこのどこがいいんだか」
確かにバルクホルン大尉は宮藤軍曹がきてから人が変わった。いや変わったというかおかしくなったというか……どうやらハルトマン中尉は大尉のことを心配しているみたいだ
「トゥルーデもトゥルーデだけど他の連中も昼間っからイチャイチャイチャイチャと…」
そういえばさっきイェーガー大尉とルッキーニ少尉がハンガーでキスしているのを目撃してしまった。
確かに私の見る限りでも女色と思しき方が何人もいる。一部では501は女色の方だけを意識的に集めた特別編成部隊(ストライクユリッチーズ)ではないかという
根も葉もない噂まで立っている…いや根も葉もあるか。それに比べハルトマン中尉は正統的な美少女で…
「やっぱり好きな人に気持ちを伝えるのって難しいよねー…はぁ…トゥルーデ…」
「!?そ…そのハルトマン中尉はバルクホルン大尉のことが…」
「ん?好きだよ。意外だった?」
な…なんだって!私は心底驚いた。前々から仲がいいとは思っていたがまさか恋愛感情をもっていたとは…
「はぁまあ…しかしそんな大事なこと自分に言ってもよろしかったんですか?」
「ずっと誰かに話しを聞いてもらいたかったんだよねー…でもほら?お喋りな娘ばっかじゃん?ミーナにはこんなこと相談できないし…」
それからハルトマン中尉はバルクホルン大尉の好きなところを一つ一つ語った。
面倒見がいいこと、妹思いなこと、仲間のために命を懸ける無鉄砲さ、本当に大尉のことが大好きみたいだ
「話聞いてくれてありがとう♪なんかスッキリしたよ、ところで君は彼女とかいないの?」
な!?不意打ちだ
「こ…故郷のカールスラントに自分の帰りを待つ恋人がいます!(嘘)こっ…この戦争が終わったら結婚するつもりであります!(大嘘)」
「へーいいなぁーそういうの憧れ…ミーナ!?」
「こんなところで何をしてるんですか!?ハルトマン中尉?」
私はその後五日間の独房禁固を命ぜられる。独房を出た私の視界に映ったのは手をつないで中庭は歩くカールスラントの二人の英雄だった
おわり