手錠にトリックスター


深夜。

腕に妙な違和感を覚えた私は、とてつもない汗と共に目を覚ました。

何か片手にジャラジャラという音。
よく分からないが、何かで繋がれているらしい。

ゆっくり目を開けると、私の横には何故かエーリカ、そしてお互いの腕には。

手錠がかけられていた。

―――手錠にトリックスター―――

「…何をしている、エーリカ」
「あ、起きた」
「起きた、じゃない!何をしていると聞いている!」
「ん、これ?私とトゥルーデを手錠で繋いだの」
「何故こんな事をしたんだ」

私は起き上がって、半ば呆れ気味でエーリカに問う。

「だってトゥルーデといつも繋がっていたいんだもん」
「バカ言うな。いいからさっさと鍵を使ってこれを外せ」

すると、エーリカがニヤリと笑みを浮かべた。

「な、なんだ」
「それは無理だよ~♪」

と、エーリカはポケットから鍵を取り出して。

「えいっ!」
「お、お前っ!!」

エーリカはその鍵を窓から勢いよく投げ捨てた。
ピューという音でもしそうなほど鍵は信じられない速度で向こうへ行ってしまった。


「エーリカ!なんて事をっ…!!」
「まーまー♪これでいいんだよ、これで♪」
「何を言って…」

私は反論を言い切らないうちにエーリカにキスされてしまった。
それは軽いものではなく、口内にまで侵入してくる様な深いキス。
一瞬にして、私の口内はエーリカに犯されていく。

「おっ…ま…っ」
「トゥルーデ…」

唇を離される。
これほど身勝手なキスを他に知らないというほど、自分一人で勝手に進んだキスだった。

「エーリカ…お前…何をしているか…分かっているのか…?」
「分かってるよ。トゥルーデにキス、でしょ?」
「でしょ?じゃない!お前、私の初めてを…!」
「え?初めてだったの?」
「!!」

しまった!つい口を滑らせてしまった!
慌てて口を押さえるも、もう時既に遅し。一度言ってしまった事はもう戻らない。

「ねえねえ、トゥルーデこれはファーストキスだったの?ねえねえ♪」

ニヤニヤに磨きをかけてエーリカが聞いてくる。

「ああ、そうだ!お前とのキスが初めてだ!なんだ、なんか悪いか!」
「おお、開き直りですか…ん?」

エーリカが何か閃いたらしい。



「って事はさ、トゥルーデってまだエッチもしてない?」
「そっ…そんな事を聞いてどうする…//////」
「じゃあさ、私がトゥルーデとエッチしていい?」
「なっ、なんでそんな結論になるんだ!おかしいだろ!」

すると、エーリカが私の上に被さってきた。

「おっ、おい、エーリカ…!」
「トゥルーデ」
「なっ、なんだ」
「いただきます」
「ちょっ…やっ、やめろぉぉぉぉぉ!!!」

―――――――――――――――――――
早朝。
私の隣には、スヤスヤと寝息をたてるエーリカ。
私達はまだ手錠で繋がれたままだ。
この手錠さえ無ければ、私はエーリカにキスされる事も無かったし、エーリカに無理矢理される事も無かっただろう。
この銀色の輝きが恨めしい。



「うーん、おはよ、トゥルーデ…」
「…おはようじゃない。お前、私に謝るべき事があるんじゃないか?」
「…昨日トゥルーデの分の芋食べた事?」
「違う!…まあ、それは後で別に問い詰めるが…。私の動きを奪った上にキス、更に私を犯した事だ」
「あれ同意だったじゃん」
「違う!あれはどう考えても無理矢理だっただろ!」
「…だって本当にイヤだったらジタバタして抗うんじゃない?」
「なに…?」
「あの時、トゥルーデ嫌がらなかったよ。もう好きにしてくれ、みたいな」
「…」
「それはつまり、同意の上での行為だから私は謝らない!」
「はあ……。じゃあもうそれはどうでもいい。問題はこれからだ」
「私達の関係?」
「違う!さっきから私に何度違うと言わせる気だ!今日の訓練だ!それにいつネウロイが出るとも限らないだろ」
「二人で出撃すればいいじゃん。私達を見たらみんな羨むよ~。お似合いのカップルだーって」
「だ、誰と誰がカップルだっ…!!//////」

私はエーリカの言葉につい顔を赤くする。

「と、いうわけで」
「なっ、何をしている…」
「何って、もう一回やるに決まってるじゃん。私達カップルだし」
「ちょっ…ふざけるな!誰がカップルかっ…!!おい、エーリカ、やっ、やめろぉぉぉぉぉ…!!」


…数時間後、基地内の草むらから、エーリカがブン投げた手錠の鍵が見つかった。

しかし、私はその間に、五回もエーリカの好きにされてしまった。

その後、ミーナの手によって手錠は解かれ、私の悪夢は終わった。

…しかしそれ以降、困った事に基地内で手錠プレイが流行りだしたのは、言うまでもない。

END


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