蒼き遥か
――涙が溢れて、止まらない。
でも、わたくしはあの方の前では、そんな姿は見せない。
そう、決めている。
わたくしには、泣いている暇など、無いのだから。
―――蒼き遥か―――
月はこんなにも、綺麗なのに、どこか冷たく、悲しい。
わたくしのそんな気持ちを知ってか知らずか、月はなおも輝く。
ウィッチーズの解散が決まって、みんなそれぞれの道を行く事が決まった。
わたくしはもちろん、祖国、ガリア復興の為従事するつもり。
だけどそれは、坂本少佐と離れる事を意味する。
わたくしにはそれが耐え難い苦痛で。
でも祖国の為なら、わたくしはどんな悲しみも心の中に押し込める。
コンコン
「ペリーヌ、まだ起きてるか?」
坂本少佐の声。
「ええ、まだ起きてます」
「ちょっと入っていいか?」
「えっ、もっ、もちろん!」
ガチャ
「これから寝る所だったか?」
「いいえ、そんな…。ところで何か用ですの?」
「あ、ああ…」
急に坂本少佐の表情は暗くなって。
「…すまんな。私が不甲斐ないばかりにウィッチーズが解散という事になってしまった」
「いいえ、それは坂本少佐のせいではありませんわ!これは…」
これ以上は言葉が続かない。
いや、続けられない。
「ペリーヌ。お前はどうするんだ?」
「解散後…の事ですか?」
「ああ。私は宮藤と一緒に一度扶桑に戻ろうと思っている…少し自分の在り方を見つめ直したくなってな」
「そうですか…わたくしはガリアに戻ってガリア復興に貢献する事に決めましたわ」
「そうか。まあみんなそれぞれの道があるみたいだからな。みんなどこへ言ってもやって行けるだろう」
「……坂本少佐…」
「ん…なんだ?」
ここで言わなくては、もうっ…!
「…わたくしはっ…坂本少佐の事をっ…!」
そう言うと、坂本少佐は立ち上がって。
「…邪魔したな。今夜はゆっくり眠れよ」
「坂本…少佐…」
「じゃあおやすみ、ペリーヌ」
「……おやすみなさい」
ガチャ
そう言い残すと坂本少佐は部屋から出て行った。
わたくしは知らず知らずのうちにシーツを力強く掴んでいた。
そして、出るのは、涙だけ。
「坂本っ…少佐…っ…!…わたくしっ…はっ…ううっ……っ…!」
涙がシーツを濡らす。
涙は止めどなく溢れる。
涙は、止まらなくて。
それでも、月は冷たく輝く。
わたくしを嘲笑うかのように。
「…すまん…ペリーヌ…」
――涙が溢れて、止まらない。
でも、わたくしはあの方の前では、そんな姿は見せない。
そう、決めている。
でも今やその想いは、蒼き遥か。
END