二重奏・スティールパニック
――無い。服が無い。
上着も、ズボンも無い。
朝起きたら、あたしの服が無くなっていた。
あたしの部屋はお世辞にもキレイじゃないけど、エーリカの部屋ほどじゃない(ハズ)から、服を脱ぎ散らかしたとしても、割合すぐに見つかるハズ。
…ヤバい、こいつは参った…
―――二重奏・スティールパニック―――
「―――というわけなんだよ」
「分かったわ、シャーリーさん。だけど」
「だけど?」
「下着姿で出歩くのは…その…みんながいる場だし…せめてタオルを巻いてくるとか…///」
「え?あ、ああ、忘れてた、アハハ!」
「……ハァ…」
深い溜め息を吐いたミーナ中佐に代わり、今度は坂本少佐が話しかけて来た。
「替えの服は無いのか?何着かあるだろう」
「いやぁ~、それが全部無くなってて…」
「うーむ、どうやら失くした、というワケではなさそうだな」
「誰かが盗っていったとか?」
「バカ言うな、ハルトマン。誰が好き好んでリベリアンの服なんか盗るか」
「…なんか微妙にカチンと来る言い方だな…」
「シャーリーさん」
「ん、なんだ宮藤」
「なんか身に覚えとか無いんですか?」
「身に覚え……?うーん…あっ、そう言えば」
「何か思い出したのか!?」
「なんかさ、あたしが寝てる時、あたしの部屋に誰かが入ってきたような気がしたんだよなあ」
「じゃあ、そいつが犯人か」
と、私達の会話を聞いていたルッキーニがこっそり部屋を出ようとするのをエーリカが見つけた。
「どこ行くの?ルッキーニ」
「ウニャッ…!…いや、もうお腹いっぱいだから…」
…なんかアイツ怪しいな…
アイツが飯をあんだけ残してる時は何かある時だ。
「…なあ、ルッキーニ。なんか知ってる事があったら、なんでも良いからあたしに教えてくれないか?」
「知らにゃい。あたし知らにゃい」
「…本当か?本当だよな?」
「ウニャッ…あたし知らにゃ~い!」
叫びながらルッキーニが逃走した!
…やっぱアイツか!
「ちょっと、ルッキーニ! ごめん宮藤、ついて来てくれ!」
「はっ、はい!」
ルッキーニ、逃げ足は速いんだよな…!
「ルッキーニ!止まれ!理由を聞かせろってば!」
「ルッキーニちゃーん、止まってー!」
「……っ!」
ああ、くそ、だんまりか。
…しゃあない、この手しか無い。
あたしはルッキーニに対して思い切り叫ぶ。
「止まってくれたら、あたしの胸好き放題だぞー!!」
「ウニャ!?」
「っ!?」
…あ、止まった。単純な奴だな、おい…
あ、いや宮藤、お前は止まんなくていいから。
《シャーリーの部屋 取り返した服を目の前に
「あたしの服、盗んだのルッキーニなんだろ?」
「…うん」
「なんでそんな事したんだよ。怒らないから言ってみな」
「………」
ルッキーニは顔を赤らめて。
「……シャーリーの私物が欲しかったの…//////」
「あ、あたしの私物?」
つまりこういう事らしい。
昨日、あたしの部屋に侵入したルッキーニは、本来の目的(あたしの顔にイタズラ書きするつもりだったらしい)をしようとしたら、あたしの服に目を奪われた。
で、あたしの私物が欲しかったルッキーニはタンスに入っていたあたしの服も全部盗んでいった、と。
「…で、その服で何したのさ」
「えっ…と…それは…//////」
―――――――――――――――――――と、盗って来ちゃった…///…シャーリー、怒るよね…
…でもこうして見てみると、シャーリーってやっぱり大きいな…
くんくん…ハァハァ……シャーリーの…匂いがする…//////
…着てみよう。
うわ、さすがにブカブカだ…
……でも、なんかシャーリーに包まれてるみたい……////////////
…シャーリー…//////…あたしだけ見てて欲しいよ…シャーリー…ッ!//////
…シャーリー…シャーリー…好きだよ……シャ…リィ…//////…ああっ……//////
―――――――――――――――――――
「…で、そのまま、一人エッチしちゃったワケか」
「…シャーリーに包まれていると思ったら…つい…//////」
…まあ、いいか。それだけあたしの事を好きでいてくれてるって事だよな。
…それにあたしからも謝らなきゃいけない事が一つあるし。
「もういいよ、ルッキーニ。許したげるからさ」
「…本当…?シャーリー…」
「うん、本当。…それにさ、あたしからも謝らなきゃいけない事があるんだ」
「なに?」
あたしはタンスから、ある物を取り出す。
「ごめん、ルッキーニ、コレ」
「あーっ、あたしの服!最近一着失くなったと思ったら…!…でもなんで?」
「……ルッキーニと同じだよ……//////」
―――――――――――――――――――…盗ってきちゃったよ……でもまああんだけあるんだから、一着くらい良い…よな…?
それにしても、本当にルッキーニちっちゃいなー。
…ルッキーニの匂いがする。……くんくん…良い匂いがする……//////
…ああ、ヤバい、これじゃあたしただの変態だよな…//////
ああ、でも止まらない…!//////
……ルッキーニ……好き…ルッキーニ……ルッキーニ……あたしだけの…ルッキーニ…ッ…!//////
ああっ…ルッキーニ…もうっ、ガマン出来ないっ…ルッキーニ……ッ!…好きだっ…好きだよ…っ…ルッキーニ……ッ!!//////
―――――――――――――――――――
あたし達はしばらく向かい合ったまましばらくして、笑い出した。
「アハハハハハ!結局二人とも同じだったんだな!」
「ニャハハハ!」
「…って事はさ、あたし達両想いって事だよな…?//////」
「そう…だね…//////」
あたしはルッキーニを引き寄せた。
そして、優しく、ベッドに押し倒す。
「ルッキーニ……良いよな…?」
「シャーリー……うん、シャーリーになら、何されても…//////」
あたし達はキスをする。
舌を絡め合って、熱い、熱いキスを交わす。
「…ずっと好きだった、ルッキーニ…ずっと、ずっと、見ていた…//////」
「あたしも、シャーリー…初めて見た時から…ずっと好き…//////」
あたし達はそのまま、深く重なり合う。
…もう、服なんて盗らなくてもいいよな…?…ルッキーニ…?
オマケ
後日、この事がバレたあたし達はミーナ中佐からこってり絞られた。
これも因果応報ってヤツか…?
…ハァ……
END