未来予想図
――自分の未来を考えた時、あたしの頭にはシャーリーが浮かんだ。
“シャーリーとずっと一緒にいる”
他の選択の余地は無かった。
あたしにはシャーリーしかいない。
あたしの運命の人は、シャーリーなのだから。
その事を隣で寝ていたシャーリーに話すと、小さく笑って、頭をグシャグシャ撫でて。
「アハハ、嬉しいなあ。それだけルッキーニの頭の中はあたしでいっぱいだって事だろ?
恋人冥利に尽きるなあ」
そう言うと、シャーリーはあたしのおでこに軽くキスをした。
あたしはまだ12歳。この先がどうなるかなんて分からない。
でもあたしはシャーリーとこれからも一緒。
そうだよね、シャーリー。
―――未来予想図―――
ある日、ネウロイの一撃を食らってシャーリーが重傷を負った。
意識はちゃんとあって、話す事は出来るけど、出撃するのは一カ月ほどかかるみたいで。
あたしは寝る間も惜しんでシャーリーのそばにいた。
正直眠いけど、シャーリーのそばにいたいから、眠気を殺してシャーリーの近くにいる。
すると、そんなあたしを心配したシャーリーが不安そうに話しかけてきた。
「なあ、ルッキーニ、しばらく寝てないだろ?
あたしは良いからちょっと寝てこいよ」
「あたしは大丈夫だよ。それよりシャーリーが心配だもん」
「だからあたしは大丈夫だって。
だってほら、お前が寝不足だと任務にも支障が出るだろ」
「ん…ウニャ…」
「ほら、ウトウトしてる。あたしは良いから寝てこい?」
「…やだ、あたしはシャーリーの恋人だもん。だからシャーリーに付き添うの」
「はあ、まったくしょうがないお姫様だなあ…。ほら」
そう言うとシャーリーはベッドにあたしを招き入れた。
「えへへ、シャーリー暖かい//////」
「あたし一応ケガしてるから、跳ねたりとかはやめてくれよな」
「うん、うん、分かってる」
シャーリーのぬくもりはあたしを、安心させる。
気持ちよくて、フワフワで。
「なあ、ルッキーニ」
「なに?シャーリー」
「…お前、あたしとこれからも一緒にいたいか?」
シャーリーがいきなり変な事を聞いてきた。
「そんなの当たり前だよ。だってあたし達恋人同士なんだよ」
すると、シャーリーの表情は少し暗くなって。
「…でも、それじゃ一緒にはいられないんだ。
…ただ好きだってだけじゃ」
「シャーリー…?」
「…あたし達だっていずれ別れる日が来るかもしれない。それがどんな形であっても」
「…どうしたの…?」
「……別れよう、ルッキーニ」
「……え……」
それは、いきなりだった。
その瞬間、あたし達の空気が凍った。
「あたし達の関係は決して許されるものじゃない。
…いずれ引き裂かれるかもしれない。
…あたしは嫌だ。他人の手であたし達の仲を否定されるのは嫌なんだ」
「シャーリー……」
「他人に引き裂かれるくらいなら、あたしはいっそ自分の手で幕を引く事を選ぶ」
「なに…いってんの…?…あたしシャーリーの言ってる意味がわからないよ…?」
「…………」
シャーリーは黙ったまま、言葉を繋げようとしない。
…涙が溢れる。止まらない。勝手に目から流れ出る。
「ねえっ、嘘って言ってよ!シャーリー!あたし嫌だ!
あたしの事嫌いになっちゃったの!?
あたしの何が悪かったの?直すから、シャーリー!」
「…ルッキーニは悪くないよ。…あたしのワガママだよ」
「シャーリー…!」
「…好きだから。ルッキーニが好きだから、あたしは…辛いんだ…」
シャーリーにも涙が。
蒼い綺麗な瞳が濁って行く。
「好きだから、別れるんだよ。
ルッキーニの未来を考えたら、ルッキーニはあたしとなんかじゃなくて、誰か別の人と一緒にいた方がいい」
「バカッ、バカバカバカ!シャーリーのバカ!
それくらい、あたし達なら乗り越えていけるよ!」
あたしはシャーリーに無理矢理キスした。
あたしの想いを込めた深いキス。
シャーリーはそれに反応するようにあたしを抱きしめる。
「んんっ、んむっ…ぷぁっ…シャーリー…んんっ…」
「ルッキーニ…んんっ、ぷはっ…んむっ…」
しばらくして、唇を離す。
「…やっぱりあたし別れたくない」
「ルッキーニ」
「たとえシャーリーがあたしと別れたいって言ってもあたしはシャーリーを追い続けるから。
…あたしはシャーリーを離さない」
「……ルッキーニ……」
シャーリーは優しくあたしに語りかける。
「……あたしといたら白い目で見られるぞ?…それでもいいのか?」
「そんなの覚悟の上だもん」
「一緒にいるって決めたら、あたし一生お前を離さないぞ?」
「あたしだって、シャーリーを離さない」
すると、シャーリーはいつものヘラヘラした笑顔に戻った。
その笑顔はいつもより数倍も魅力的に見えた。
「…そっか…そっかそっか!そんなにあたしの事が好きか!
お前本当一途だな、うん!」
シャーリーはあたしの耳たぶに噛み付いてきた。
「ニャッ…!シャッ、シャーリー…!?//////」
「ニャハハ、やっぱルッキーニは可愛いなあ!
少しでも引け目を感じたあたしがバカみたいだ!
…ごめんな、ルッキーニ…あたしちょっと心配だったんだ。
ルッキーニが本当にあたしの事愛してくれてるか」
「…そんなの確認しなくても」
「時々心配になるもんなんだよ。ルッキーニが好きすぎるからさ」
「シャーリー…//////」
するとシャーリーは紙とペンを取り出して来て。
「ルッキーニ、ここにあたし達の“未来予想図”を書こう」
「未来予想図?」
「そ。あたし達の未来をここに書くんだ。どんな事でも良い。あたし達の未来なら」
「ウニャ~、シャーリー、オシャレだね~♪」
あたしはシャーリーにペンを渡された。
「じゃ、書こうか!」
「うん!」
―――――――――――――――――――
月明かりがあたし達を照らす。
未来予想図を書き終えたらあたし達は、力が抜けた様に眠りに落ちた。
しっかり、シャーリーにしがみついて、もう二度と離れないように。
そしてあたし達のそばには一枚の紙、“未来予想図”が置いてある。
ねえ、シャーリー、あたし達、未来にはどうなってるのかな。
あたし達が望む未来になってると良いね。
ねえ、大好きなシャーリー。
『あたし達は、未来も、ずっとずっと一緒!! シャーリー ルッキーニ』
あたし達の未来予想図に願いを込めて。
朝起きたら、もう一回確認しよう。
誰にも邪魔出来ない、あたし達だけの未来を。
END