lock! lock! lock!


「んー…」

あたしは指でフレームを作った。

そのフレームに入るのはもちろんルッキーニ。
あたしは長い間、ルッキーニに片想いしたまま。

エイラやサーニャ、芳佳やリーネ、周りがどんどん両想いになっていく中、あたしはルッキーニに想いを告げられずにいた。

告白の言葉はいくつか考えている。

『好き』『愛してる』『あたしと付き合って欲しい』

でもどの言葉もなぜだかしっくり来ない。
その前に、あたしにその言葉を告げられるだけの勇気が無いワケだけど。

あたしの指フレームに写るルッキーニは無邪気で、やっぱり可愛い。

あたしに勇気があったなら、あたしのフレームにこのまま、ルッキーニを閉じ込める事が出来るのに。

あたしは指フレームでルッキーニを囲ったまま、ルッキーニに聞こえないように、小さく叫んだ。

「Lock On!」


――lock! lock! lock!――


「シャーリーさーん」
「ん、なんだ宮藤」
「この前、皆で撮った写真が出来上がったんですよ!」
「お、本当か!どれどれ…」

それは、この前ウィッチーズ全員で撮った写真だった。

「お前とリーネ、いつも隣同士だな~♪」
「ちゃっ、茶化さないでくださいっ…!//////」

写真一枚でもそれぞれの個性が出ていて、見てるだけでも面白い。

宮藤とリーネは腕を組み合って見てるこっちが恥ずかしくなるほどラブラブ振りをアピールしてるし、ミーナ中佐は坂本少佐の肩にさりげなく手を置いている。

で、あたしとルッキーニはというと、あたしがルッキーニを後ろから抱きしめている形になっている。


周りから見れば、あたしのやっている事はいつもの“シャーロット・E・イェーガー”だ。

でも、やってる本人は心臓がバクバクしてて、よく写真を見ると、目が変な方向に向いている。

「………あぁ……」
「どうしたんですか、シャーリーさん」
「ん?あ、いやごめん…。…ね、この写真貰えるかな?」
「あ、はい、良いですよ」
「ん、サンキュー、宮藤!」

あたしは写真を眺めながら、廊下をトボトボ歩いていた。

「やっぱ、ルッキーニはずば抜けて可愛いなあ…」

などと言いながらボケーッとしてると、リーネとぶつかってしまった。

「あ痛っ!あ、ごめんリーネ、大丈夫?」
「あ、はい、私は大丈夫です」

あたしが悪いのに、ペコペコして謝るリーネ。
なるほど、これは宮藤もメロメロなワケだ。

「なあ、ちょっと話したい事があるから、食堂に行かないか?」

《食堂

「それで、話したい事って何ですか?」

紅茶を淹れながら、リーネが用件を訊ねてきた。

「…正直、宮藤とはどうなんだよ」
「なっ…!」

リーネが紅茶をこぼしかけた。

「なんですか、いきなりっ…!//////」
「いや、せっかくだから聞いとこうと思ってさ」

リーネは顔を真っ赤にして、話し始めた。


「…あの、まあ、順調です…//////」
「ま、だろうな。宮藤から貰ったこの写真見りゃだいたい分かるよ」
「~~~//////…な、なら聞かないでください…//////」
「で、あたしが本当に聞きたいのはさ…どうやって宮藤に想いを伝えたかって事なんだけど」
「どうやって告白したか、ですか?」

リーネはしばらく黙って。

「…告白までには時間はかなりかかりましたよ。
…なんというか、普通の恋じゃないので、芳佳ちゃんに嫌われないかって、悩みました」
「…そっか、やっぱ女同士って普通じゃないのかな」
「…世間一般の常識からすると、多分。
でも芳佳ちゃんは受け入れてくれました。私、芳佳ちゃんが私の想いを受け入れてくれたのが嬉しくて、その場で…」
「キス、したんだな?」
「………………はい……………////////」
リーネはさっきよりも真っ赤になりながら、答えた。

「ごめんな、変な事聞いて」
「あ、いえ…
…あの、失礼な事聞きますけど、シャーリーさんも誰か好きな人とかいるんですか?」
「まあ、あたしも一応16歳の乙女だしね。いる事はいるよ。相手は物凄い年下だけど」

リーネは少し黙ったあと、あたしにこんな言葉を投げかけた。

「あの、私がこんな事言うのもアレですけど、頑張ってください、シャーリーさん。想いは必ず届きますから」

リーネの口から飛び出したのは予想外の激励の言葉だった。
あたしはその言葉に軽く笑って言葉を返す。

「ん、ありがと。紅茶、美味かったよ」


リーネと話し終わったあと、あたしはまた廊下に戻ってボーッとしていた。

ふと窓の外を見ると、今日は良い天気だ。
雲一つ無い、澄み渡った空。

写真を見て思う。

「あたしも勇気、出さなきゃいけないのかな…」

…小さく呟く。

「お前はあたしの事、どう思ってくれてるのかな…」

仮に告白したとして、『気持ち悪い』だなんて思われたら、あたしは多分もう生きていけない。

そうなったらおそらく友達にも戻れない。
あたしはそれが怖くて、ルッキーニに告白出来ずにいる。

自分のチキンっぷりにますます腹が立つ。
リーネだってそれを覚悟で宮藤に告白したって言うのに。

「あたしが好きって言ったら、お前はどう思うかな、ルッキーニ…」

あたしが勇気を出すまでに時間はかかりそうだ。



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