無題
神様お願い、私にピストルをくれよ。胸の中のうっとおしい青をぶち抜くから。
わかってるんだ、トゥルーデがミーナのことが好きなのも私がトゥルーデを振り向かせるのができないことも。
それでも、それでも私はトゥルーデが好きなんだ。どうしてもこの気持ちが変えられない。
普段皆に見せているような私がほんとの私だったらどれだけ楽か。ねえ、せめてこの気持ちに気付いてよ、いくらトゥルーデは鈍感だからってさ。
何時からだったっけかな?トゥルーデと話す事がが減ったのは……ああそうだ、ミヤフジが着てからだ。ミーナとミヤフジ、この二人に嫉妬できればどれだけ楽か。
でもできないんだ。ミーナは私が入隊してからずっとお世話になってるしミヤフジは努力家で皆と仲良くできて料理も上手で。
嫉妬なんてしようものならそれこそトゥルーデに嫌われる。そもそも嫉妬できればどれだけ楽かなんて考えてる時点でもう私はトゥルーデと結ばれることは無いのかな?
「トゥルーデのその芋いただきっ!」
「あ!こらハルトマン!その大きい芋は私のものだぞ!」
「へっへぇ~ん。電撃戦だよぉ~ってねぇ」
何時からだろうな、トゥルーデと話すことがつらくなったのは。少し前はいつも楽しみだったのに。トゥルーデがミーナが好きって知る前までかな?
じゃあ大分たってるや。最近はよくぼうっとしちゃうな、はは……
「なあ、エーリカ…最近様子がおかしいぞ?」
トゥルーデやめてよ…エーリカだなんて呼ばないで。勤務中はハルトマンって呼ぶって言ってたじゃん。ミーナとおんなじ様な扱いをするのはやめて。あきらめきれなくなるから…
「なんでもないよ、それよりトゥルーデこそ最近ミヤフジばっかり見てるじゃん。トゥルーデこそ戦闘中もミヤフジばかり見ちゃって撃墜されるかもよ?」
「な!?そ、そんなことは無いぞ!宮藤は確かに目で追ってしまうことはあるがそれは宮藤がちょっとだけクリスににているからでな!そもそも宮藤なんかよりクリスのほうが…」
「へぇ~…ミヤフジに言っちゃおうかな?」
「ばっ!やめろ!そんなこと言ったら…その、部隊の指揮にかかわるし…ミーナに怒られるだろう…」
少し照れた様子で最後の言葉を呟き顔を赤くするトゥルーデ。やっぱりトゥルーデはミーナのことが好きなんだね。
「ははっ!考えとくよぉ」
ひらひらと手を振りトゥルーデと別かれる。よかった、声が震えなかった。なんで泣いてるんだろうね私。
自分の部屋に着くと目にたまっていた涙が一気に溢れ出した。滝みたいな勢いだな。悲しみのフラウ滝ってか?はは、くだらないなぁ…
いっそこの基地から逃げてしまおうか?そしたらトゥルーデのことも忘れることができるかも。でも、こんなに苦しくてもトゥルーデのそばに居たいんだ。
なんでだろうね?馬鹿みたいだ。叶うはず無いって分かってるのに。
不意に私の部屋の扉があいた。
「エーリカ、ここに居たのか、もうすぐ訓練が始まるから準備しておけよ。大体お前はいつも時間にルーズすぎ」
ねえ、トゥルーデ。お願い、私に近づかないで
「出て行ってよ」
「え…」
「出ていけよ!バカッ!グス…」
「どうしたんだ?」
「もうほっといてよ!」
これ以上近づかれたら私もうだめなんだ。もう、抑え切れないんだ。
「私は…トゥルーデが好きなの!」
「そうか…だがすまない私には心にきめた
「そんなのしってるよ!ミーナのことが好きなんでしょ!?だから!だから…もう近づかないでよ…」
「……すまない」
申し訳なさそうにトゥルーデが謝る。ちがう、ちがうんだ、全部私が悪い。勝手に好きになって、トゥルーデに好きな人がいるって分かっても、あきらめないで
そりゃそうだ、私みたいなワガママな女にトゥルーデが振り向いてくれるはず無かったんだ。
いつも心で反復してる言葉が涙と一緒にあふれ出す。もうたまんないよ……
「エーリカ」
「何?」
「私はエーリカが言った様にミーナが好きだ。心から愛している。だからいまエーリカだけを見るというのはどうしてもできない。
だが、お前が望むならキス…まではできないが、何かお前に付き合おう。そう…たとえば買い物とか、デート…とか」
「そう、じゃあ少し出てってよ。一番好きな人にこんな私見せたくないよ…」
「すまない」
私が悪いのにトゥルーデが謝ってばっかりじゃん。本当は私が謝らないといけないのに。ごめんね、トゥルーデ。
今日は、気持ちが少し落ち着くまで泣いてみようか。そういやみんなの前で泣いたことなんてなかったな。