Decision!
――朝。
起床のラッパがけたたましく鳴る。
いつもならダラダラ起きるところだけど、今日のあたしにそんな余裕は無い。
今日はあたしにとって、生きるか死ぬか。そんな大事な日なのだから。
――Decision!――
ぞろぞろみんな起きてくる。
その中にはもちろん、あたしの今日の“相手”であるルッキーニも。
「おはよ、ルッキーニ」
「ウニュ~…おはよー、シャーリー…」
ルッキーニはまだ目覚めていないらしく、眠たい目をこすりながら、あたしの隣の席に着く。
と、告白の前にルッキーニに謝っとかなきゃいけない事があるんだった。
「あのさ、ルッキーニ」
「ウニャ?」
「なんかごめんな…最近お前の事無視なんかして…」
「シャーリー…」
「ちょっと、まあ、いろいろあってさ…人と話すような状況じゃなかったんだ。
本当にごめん!」
「あっ、いや別に良いよ、そんなの!
別に気にしてないから!」
「…許してくれるのか…?」
「うん!あたしそんな暗い表情のシャーリーはイヤだから!
いつものシャーリーに戻って欲しいんだ」
「ルッキーニ…お前…」
あたしは嬉しくなって、みんながいるというのに、ルッキーニに抱きついていた。
「ありがとぉ~!ルッキーニィ~!あたし、お前の友達で良かったよぉ~!」
「ちょっ…シャーリー…!はっ、恥ずかしいよぉっ…!//////」
みんながビックリした表情であたし達を見る中、リーネとミーナ中佐だけがニコニコしてあたし達を見ていた。
まあ、何にせよ、ルッキーニと仲直り出来て良かった。
これでルッキーニに告白しやすい環境はひとつ、整ったワケで。
すると、ミーナ中佐が静かにあたしに近寄って来て。
あたしに囁いてきた。
「今日、告白するのかしら?」
「…はい、まあ…」
「告白する時は躊躇は禁物よ。こうと決めたら、一気に行くのよ」
「はい」
「頑張ってね♪」
「シャーリー、ミーナ中佐と何話してるの?」
「あっ、いや、ルッキーニには関係の無い事だよ!アッハハハハハ!」
「…?」
この会話をルッキーニに聞かれたらいろんな意味で終わりだ。
ミーナ中佐とリーネの会話には慎重にならないとな…。
そう思いながらあたしは宮藤が作った味噌汁を一口、口に含む。
―――――――――――――――――――
そして訓練中。
あたしはルッキーニの事ばかり意識し過ぎて、ちょっとミスった。
それは普段のあたしならまずやらかさない初歩的なミス。
フォーメーションの訓練をしていたのに、あたしがボケっとしていたせいで、フォーメーションが崩れたのだ。
「…はぁ、やっちまったな…」
「まあまあ、ドンマイ、シャーリー!」
「ルッキーニ…。まあ、しょうがないよな!うん、しょうがない!」
「ヘヘっ、やっぱりシャーリーには明るい笑顔が良く似合うよ!」
あたしはルッキーニの頭をグリグリ撫でる。
そう、ここで腐っていたら今日は乗り越えられない。
あたしは意を決して、ルッキーニに話しかけた。
「…なあ、ルッキーニ」
「なーに、シャーリー」
「今日の晩飯の後、ちょっと中庭に来てくんないか?
…最近話してなかったから、ちょっと二人で話がしたいんだ」
ルッキーニの「ル」を口にするだけで、緊張感があたしを支配する。
「うん、いいよ」
「よし、じゃあ待ってるからな」
よっし!ルッキーニに約束を取り付けた!
あとは、あたしの気持ちを正直にぶつけるだけだ!
お前にあたしの想い、伝えるからな!
―――――――――――――――――――
――晩飯を滞りなく終わらせて、遂にあたしの運命の時間はやって来た。
今夜の夜風はあたしに味方してくれているのか、昨日みたいに冷たい風では無い。
今なら、何でも出来そうな気さえする。
多分それはただの思い込みだけど、今のあたしにはそんな強がりさえ武器になる。
そんな事に浸っていると、あたしの視界にルッキーニが見えた。
「シャーリー」
「おっ、ルッキーニ、来たか」
あたしの“決戦”はこれからだ。