Moon gold


神様、お願いします。サーニャを助けてください――。
どうしてこんなことになってしまったんだろう・・・。
ワタシはどうなっても良いから・・・この娘の命の灯は消さないでください―――!
ああ、神様、お願いします――。


いつの頃からか、サーニャは夜間の哨戒から明け方帰って来てはワタシの部屋で寝るようになっていた。
その日もいつものように、ワタシの部屋で寝ていた彼女は太陽も昇りきった頃に目を覚ました。
それからいつものように、他愛もない話をした。ワタシは彼女が好きだった。

「宮藤が来てからサーニャは変わった。」
確かに明るくなって、他の隊員とも話せるようになっていた。それは彼女にとって良い事だけど、
ワタシは少し妬いていた。サーニャを誰かに取られるんじゃないかと。・・・嫌な胸騒ぎがした。

少し間をおいてサーニャは「・・・この戦いが終わっても一緒にいてね。」と言った。
ああ、神様、お願いします――。ワタシたちの願いを聞いてください。


サーニャが夜間の任務に出かけた後、胸の辺りがザワザワした。さっきのヤキモチのせいかな?
居ても立ってもいられなくて、サーニャに貰った宝石箱に収められたタロットカードを取り出して、並べてみた。

「最悪だ。こんな並び始めてだ・・。駄目だ、早くサーニャを連れ戻さないと・・大変な事になる。
 さっきの胸騒ぎもワタシの未来予知の能力が反応していたんだ。それなのにヤキモチなんかと勘違いして・・。
 最悪だ―――。」

そのとき基地内にけたたましいサイレンの音が鳴り響いた。
遅かった――。それはスクランブルを告げる合図だった。

夜の空にサーニャを見つけた時、たくさんのネウロイに囲まれていた。何匹いたかなんか覚えてない。
頭に血がのぼるのが分かった。「なんで、もっと早く気づかなかったんだ。」後悔の念に後頭部を殴られた、
「今日はサボっちゃえよ。」ううん、ひとこと「今日の運勢は悪いから気をつけるんだぞ。」と言えば
こんな最悪な事態にはならなかった。我を失いそうだった・・。

赤い光の帯が、目の前で彼女の体を幾重にも貫いた――。
浮力を失ったサーニャは、地球の重力に惹かれていく――。

誰よりも先に飛び出していた。
受け止めたサーニャは羽のように軽かった。顔から血の気が引いていく。

神様、お願いします。サーニャを助けてください――。
ワタシのせいだ。ワタシのせいでサーニャは・・・。
ワタシはどうなっても良いから・・・この娘の命の灯は消さないでください―――!
ああ、神様、お願いします――。


タイセツナ人も守れないなんて、こんな“力”イラナイ。


3ヵ月後。
ワタシはウィッチーズに休暇願いを提出した。
サーニャは、一命を取り留めた。変わりに私は魔力を失った。
あの夜、医療施設に運ぶ間に宮藤が治癒の魔法をかけていた時、ワタシは神様に願った。
「ワタシはどうなっても良いから・・・この娘の命の灯は消さないでください―――!」と
きっと神様は、私の力と引き換えにサーニャの命を救ったんだろう。未来予知の力が未来を変えてしまった瞬間だ・・。

ん?「また一緒に空を飛びたい」って?ごめんな、サーニャ。もうワタシは魔法が使えないだ。
ううん、ちがうよ。サーニャのせいじゃない。魔法が使える使えないは関係ないんだ、
今サーニャとこうして一緒にいられるだけでワタシは幸せなんだぞ。
そんな顔すんな、泣きそうだよ、バカ・・・。

ワタシはサーニャを強く抱きしめた。
「何年経っても、何があっても、ずっと一緒にいような。」
ああ、神様、お願いします――。ワタシたちの願いを聞いてください。


元話:0274

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