モノクローム・キス
――貴女が何時私の前から消えてしまわないか。
私はトゥルーデでキスを交わす度にそんな事ばかり考えてしまう。
私は貴女を愛してる。
貴女も私を愛してる。
それは確認しなくたって、分かりきっている事。
それなのに、私は、貴女からの言葉が、愛がもっと、もっと欲しい。
――モノクローム・キス――
「ねえ、トゥルーデ。私の事、愛してる?」
「…何を言っている。好きじゃない人とはこんな事はしない」
私は隣で寝ているトゥルーデに思い切って聞いてみた。
トゥルーデから返ってきた答えは、至極当然なものだったけど。
そりゃそうだ。嫌いな人とはキスなんてしないし、ましてやその先になんか進まない。
「しかし、なんで今更そんな事を聞くんだ」
「いや、なんかちょっと心配だったんだ。トゥルーデって少し気が多いからさ」
「あのなあ…」
「でも安心したよ。トゥルーデが私の事、愛してくれてるって分かって」
思えば、私が最初にトゥルーデにキスをしたのは半ば強制的な乱暴なキス。
トゥルーデへの想いが強くなりすぎて、私は間違いを起こしてしまった。
…でも、トゥルーデはそれでも私を優しく受け入れてくれた。
「ねえ、トゥルーデ」
「今度はなんだ、エーリカ」
「…トゥルーデは私の前からいなくならないよね?」
「…分からないな。私達は命を賭けてネウロイと戦っている。
いつ私達の命が散るか分からない状況にいるんだ。お前の言う“いなくならない”という保証は無い」
「…うん」
「…だが、少なくとも私は、お前の前からいなくなるつもりは無い。
…それともお前は私の前からいなくなるつもりか?」
予想外のトゥルーデの優しい言葉に私は涙が込み上げて来た。
「…あれ、トゥルーデってそんなに優しかったっけ…?」
「私は十分優しいつもりだが?」
そう言うと、トゥルーデは私を抱き寄せて囁いた。
「…私達はずっと一緒だ…エーリカ…」
「うん、トゥルーデ」
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長い片想いはとても辛くて、苦しくて。
たとえ想いが通じ合っても、不安は消えなくて。
でも、それは貴女のキスで少しだけ、和らぐ様な気がするんだ。
貴女の優しいキスは、私の独りよがりなモノクロームの世界から、助け出してくれる。
そして私は今日も貴女と交わる。
貴女といる世界を強く、強く幸せに感じながら。
END