Paradise Lost
――私は雨の夜がどうも好きになれない。理由はまあいろいろある。
…早い話が、エーリカと喧嘩した。
理由はまあいろいろある。
私は気を紛らわすように雨がしとしと降る外を眺めていた。
「はぁ…」
「よお、何してんだよ、堅物」
「おっ、お前、いつ私の隣にっ…!」
「いやいやセンチメンタルだねぇ。何かあったのかい?」
「……お前には関係ない」
「なんだ大方エーリカと喧嘩したってとこか」
「…………」
「…図星かよ」
「…図星で悪いか」
「んにゃ。別に悪くない。
…あたしもルッキーニと喧嘩したから」
「…なんだ、浮気か」
「バカ言うな。あたしはこう見えても一途だよ。
ことルッキーニに関しては。
っていうかあたしの事詮索するなら、お前の喧嘩の理由聞かせろよ」
「……詮索か。断る」
「…まあいいよ」
ザーッ
「雨、止まないな」
「ああ」
「…このまま雨が降り続けて大洪水になったらどうするよ」
「まあ、とりあえず避難だろうな」
「何持って行くよ」
「クリスの写真だろうな、第一に。
お前はどうする」
「あたしはやっぱルッキーニを連れて行く!
なにせ恋人だからな」
「喧嘩中じゃないのか」
「喧嘩中でもルッキーニはあたしの恋人に変わりないよ」
「…それはそうか」
「さて、堅物くん。
あたし達が真に語るべき事は、いかに恋人と仲直りするか、だよ。
洪水云々語ってる場合じゃないんだ」
「…お前から話を振ったんだろ…」
ザーッ
「さて、どうしようか」
「素直に謝るのが一番だがな」
「それが出来りゃここにはいないって。
堅物もそうなんだろ?」
「……」
「…ま、別にそれはそれで良いけど」
ザーッ
「雨、小降りになってきたな」
「ああ」
そう言うと、リベリアンは背伸びをして。
「…謝るか」
「やはり喧嘩はお前が原因か」
「詮索すんなっつったのはお前だろ。だからあたしは黙秘する」
「フフッ、別に良い。
お前らの喧嘩の原因など知った所で私にはどうでもいい事だしな」
「その言葉、そっくりお前に返すよ」
私達は静かに笑い合う。
「じゃ、あたしはルッキーニと仲直りしてくるけど、お前はどうする?」
「もうちょっと此処にいるよ。少し気分を落ち着かせたい」
「そっか。まあ頑張れよ」
「お前にその言葉をそっくりそのまま返してやる」
「アハハ」
「明日報告しろよ」
「嫌だよ。それ言うならお前もあたしに報告しろよな」
「断る」
「アハハ!じゃあな」
「ああ」
そう言うと、リベリアンは闇の中に消えて行った。
「……行くか」
この雨が、止まない内に、エーリカに謝るとするか。
…ありがとう、リベリアン。
今回は少しだけお前に感謝するよ。
…だが、結果は報告しないからな、リベリアン。
END