無題


私は異常だ、たぶん。
ウォーロックを倒し扶桑に帰ってからは赤城の艦長さんからいただいた扶桑人形ばかり見ている。
別に引きこもっているわけでも友達が減ったわけでも勉強ができなくなったわけでもないが、
暇さえあればずっと扶桑人形を見ている。部屋に飾ってある扶桑人形の数も増えてきた。
最初こそお母さんやおばあちゃんは部屋に入るたびに目を大きくして口をパクパクとさせていたが、
最近は慣れたのか増え続ける扶桑人形に呆れたのか何も言わなくなった。
今ウィッチーズで連絡を取っているのはミーナさんだけ。
理由は私の趣味を理解してくれそうで実際に理解してくれた人だから。
たまに手紙(といっても最近カールスラントリオがカールスラントコンビ+1になってる。転属したいとかそんな感じのネガティブな内容だが)とカールスラントの人形を送ってくれる。
カールスラントの人形は扶桑人形とは違い本物の女の子みたいでこれも中々魅力がありとても気に入ってる。
今度扶桑に行きたいと手紙に書いてあったので家に招待しようと思う。

「芳佳、美智子ちゃんが着たわよ。」

そういえば今日はみっちゃんの所へ遊びに行くんだったな、時計の針は12時と30分をさしている。
まだちょっと早いけど、みっちゃんは部活の帰りかな?

「はーい。」
「こんにちわ芳佳ちゃん。」
「芳佳、寝癖が付いてるわよ。」
「え!?……え、えへへ……」

お母さんに言われるまで気付かなかった。扶桑人形や漫画が好きな人はよく身だしなみを整えられないって言うけど
私も徐々にそういう人になってきてる気がする。ちょっとショックだな…

「じゃあ、私ちょっと着替えてくるね」

自分の部屋にもどりパジャマを脱いで服を着る。今日はウィッチーズに居たころサーニャちゃんにもらった
パーカーを着ていこうかな、大事にしすぎてあまり着てなかったけど入るかな?
最初に来たときとほとんど着心地の変わらないパーカーと最近掛けだしたメガネをつけて玄関へ行く。
もちろん服を着る前に寝癖は直している。

(もうちょっと胸のところが苦しくなると思ったんだけどなぁ……)

すこしショックだったけどまあいっか。

「わあ、その服とっても可愛いね芳佳ちゃん!」
「本当? ありがとう!」

サーニャちゃんのことを疑ってた訳ではないが、みっちゃんに可愛いといわれて安心した。
サーニャちゃんやエイラさんみたいに綺麗な人だから何を着ても素敵だけど私が着れば変なんじゃないかと
思ってたので、みっちゃんの素直な感想はとてもうれしかった。
みっちゃんの家に着くまでかけっこをした。今まで勝てていたのに負けてしまった……
ずっと扶桑人形ばかり見ててあんまり運動してなかったからかな?
今日はショックを受けっぱなしな気がする。

「おじゃましまーす。」
「いらっしゃい、今日はお爺ちゃんもお兄ちゃんもいないからゆっくりしていってね。 かけっこして体が熱くなっちゃったし縁側で蜜柑でも食べようか。」
「うん!」

冬の冷たい風も、運動して汗をかいた後だととても気持ちいい。
私たちは縁側でいろいろな話をした。学校のこと、ウィッチーズのこと…ちょっとだけ、扶桑人形のこと。
やっぱりちょっとだけ気になる。扶桑人形が好きな人って普通の人に動思われてるのか。

「ねえ、やっぱりお人形が好きって言うのは変かな?」
「ううん、私は変じゃないと思うよ。……変な私が言うのもなんだけど。」
「え、みっちゃんが変?」
「うん……あのね私、実は好きな子が女の子なんだ。」

もじもじと告白するみっちゃんを見て、言いようの無い安堵感と少しだけの好奇心を覚えた。

「へえー、じゃあみっちゃん今好きな子っているの?」
「芳佳ちゃん。」

私が全部言い終わる前にみっちゃんは私に告白の言葉を放った。私は結構大きな声で話していたつもりだがその言葉は
はっきりと私の耳から頭へと届いた。

「みっちゃん……本当?」
「大好きだよ。」
「友達とかじゃなくて?」
「うん。」

短い言葉を交し合った後、みっちゃんの顔が近づいて着た。ああ、キス、するのかな。
でも、みっちゃんならいいかもしれない。
蜜柑の甘酸っぱくていい匂いのする唇が、私の唇と重なり、眼鏡が少しだけずれた。
それはたぶん一瞬だったんだろうけど、キスなんてした事の無い私にはとっても長い時間に思えた。

「私は芳佳ちゃんが扶桑のお人形が好きでもずっと芳佳ちゃんのことが好きだよ。
もしかしたら私に振り向いてくれるかも知れない、ずっとそんなこと考えて芳佳ちゃんのことが好きなまま。」

苦々しく話すみっちゃんは一度息をすうと

「ね?たとえ芳佳ちゃんが変だったとしてもお互い様だよ。」

ああ、やっぱり私は異常だ、絶対。こんなに想ってくれる人が居て、まだ扶桑人形が好きだなんて。


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