platinum 第2話「混乱」


ブリタニアに大きな風と強い雨が打ち付ける。
そしてそこには、混乱する少女が一人。

その少女の涙は、雨となって降り注ぐ。


―――platinum 第2話「混乱」―――


「シャーリー!!シャーリー!!」
「ルッキーニさん、危ないわ!だから…」
「だって、シャーリーがぁっ!シャーリーがぁっ…!死んじゃうよ!シャーリー!!」

取り乱す少女とその少女を押さえる女性。
そして、二人の後ろに佇む少女達は黙ったまま俯いていた。

「シャーリー…!死んじゃうよぉっ!シャーリー!シャーリー!」
「ルッキーニさん!落ち着きなさい!」
「うっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!シャーリーが…、シャーリーが死んじゃうよ…っ!!」

赤毛の女性、ミーナは、その少女、ルッキーニを優しく抱き締める。

「…すまない。
私がリベリアンから目を離したせいだ」
「…誰のせいでもないわ…
…きっと、きっとシャーリーさんは無事よ。
あの程度で亡くなるような人じゃないもの」
「シャーリー…ッ…!」
「風が強くなってきたな…」

遠くを見ていたルッキーニは、やがて意を決したように、ミーナに話しかける。

「ミーナ隊長…」
「…なに?ルッキーニさん」
「あたし、やっぱり行く」
「おっ、おいルッキーニ…!」
「…だってこのままここで、指をくわえて待ってるだけだなんて…あたし…」
「ミーナ、ミーナからも何か…!」

ミーナは暫くの間、黙る。
そして、ゆっくりと口を開く。

「………本気なの?」
「…うん」
「ミーナ、ちょっ」
「バルクホルン大尉は少し黙っていて。
…私はこの隊の隊長として、隊員の考えを尊重する責務があります。
こと貴女達に関しては、いろいろと問題もあるから」
「………」
「……私には、貴女達の考えを止める権利は無いと思ってます」
「ミーナ隊長…」
「フランチェスカ・ルッキーニ少尉!
貴女にシャーロット・E・イェーガー大尉の救出を命じます!
そして補佐としてゲルトルート・バルクホルン大尉、貴女もついて行きなさい!」
「ミーナ、本気なのか…?」
「本気も何も、隊員命令よ」
「ミーナ隊長…」
「…ルッキーニさん、必ず、シャーリーさんを見つけ出して助けてあげて。そして」
「……」
「……必ず、無事に帰って来て頂戴」
「……はい!!」

そう言うが早いか、ルッキーニは既に飛び立っていた。

「おっ、おい、ちょっと待て!」

そしてルッキーニの後を追う様に、バルクホルンも飛び立つ。

「ミーナ」
「何?美緒」
「お前なら、どうしたかな」
「どう言う事かしら」
「私が波にのまれて消えたとして、お前はどういう行動を取っていたかな」
「…さあ、分からないわ…。
それはその時の状況によると思うわ…
…でもルッキーニさんの想いは本物よ」
「ミーナ…」
「ルッキーニさんなら、必ず、シャーリーさんを助け出してくれるわ。…ルッキーニさんの想いが強ければ大丈夫よ。
それにトゥルーデもいるしね」
「ミーナ、お前は強いな」
「フフ、ありがとう」
「…どうする、雨風も強いし、基地の中に入るか?」
「いえ、もう少し、このまま」
「…そうか、なら私も付き合おう」
「貴女まで風邪ひくわよ」
「構わない。
私はこの目でシャーリー達が帰って来るのを見届ける」
「それはみんなも同じみたいよ、美緒」

美緒とミーナの後ろには、芳佳達が立っていた。

「私達、ここから動きません!」
「お前ら…」
「結局みんな同じね…誰も諦めてなんかいないもの」
「…フフ…アッハッハッ!お前ら全員確実に風邪ひくなあ!」
「それは覚悟の上ですわ!」
「どーせ戻ったってやる事ないしねー」


ミーナは空を仰ぎ見る。

「止まない雨はないわ。
…みんなここへ帰って来るわ…必ず…!」


そしてミーナは手を翳す。

来るべき、希望のその先を掴む様に。

いつまでも、いつまでも。



コメントを書く・見る

戻る

ストライクウィッチーズ 百合SSまとめ