5話の後のおはなし
格納庫に行くと、今朝と変わらずシャーリーさんはストライカーユニットをいじっていた
私が来たのに気付いたのか、一定のリズムを保っていた金属音は鳴り止み、シャーリーさんの声が響く
「んあ?リーネか、なにか用かい?」
「シャーリーさん・・・今日は大丈夫でしたか?」
「大丈夫だよ。シールドのおかげで私はへっちゃら。お気に入りの水着は消し炭になっちゃったけどね~」
「そうですか・・・それなら・・・よかった・・」
それだけのやり取りが終わって、再び訪れる沈黙
私は意を決して口を開く
「あの時、シャーリーさんが凄いスピードで飛んで行っちゃったとき、シャーリーさんがそのままどこかに行ってしまうような気がしたんです」
「シャーリーさんがネウロイとぶつかった時、シャーリーさんがそのまま砕け散って無くなっちゃいそうな気がしたんです」
「あの時冷静に救助に迎えたのが、不思議だと思ってます」
「シャーリーさんがいなくなったら・・・シャーリーさんが死んでしまったら・・・そう思うと・・気が気じゃなかった・・・・・」
話しているうちに、私の目は涙を流していた
涙は冷たい格納庫の床にぶつかり、弾け飛んで染みを作る
「リーネ・・・」
「私の目の前で、大切な人の命がどこかに行ってしまったら、私は・・」
気が付けば私はシャーリーさんの胸の中だった
「だーいじょうぶ、私はどんなに速く飛んでも、そのままどっかに行っちゃうことは、無いからさ」
「ううっ・・・ううっ・・シャーリーさぁんっ・・・」
「ほーらほらよしよし、落ち着くまでずっとこうしてていいぞ~」
480 名前:名無しさん@秘密の花園[sage] 投稿日:2008/11/01(土) 21:41:18 ID:ONygsVdP
シャーリーさんの体から伝わる暖かさとその優しい声を受けて、沸き上がる感情の津波
とめどなく溢れる涙で、シャーリーさんの胸のあたりは雨に降られたあとのようだった
涙が止まるまで、ずっとずっと長い時間、シャーリーさんに抱きしめてもらっていた気がする
「すみませんでした・・・つい・・・」
「いーんだよ。そんなに心配してくれてたなんて、びっくりした。ごめんねリーネ」
「・・・それにしても・・リーネの泣き顔、可愛かったよ」
「へ?」
「今日の私はなかなか役得って感じだったな。リーネのかわいい泣き顔が見れて、リーネのかわいい水着姿が見れて」
「シャ、シャーリーさん~」
「ふふっ、お世辞じゃないよ?ホントだよ?」
「もう・・からかわないでくださ・・・ふむっ!?」
わたしの冷えた唇に、柔らかく暖かい唇が被さって、離れた
私はもう、何も話すことは出来なくなった。
顔を赤らめたシャーリーさんが言う
「・・・さて、リーネ。これから新しいストライカーユニットの試験運転と行こうと思うんだけど・・・一緒に飛ぶかい?」
わたしはぼんやりとしたまま頷く
「それはよかった、隊長にちょっとお願いを出してくるよ」
一人残ったわたしは、ぼんやりとした目つきで、格納庫の屋根を見上げる
とろけてしまいそうな脳で、さっきの一瞬、あの一瞬を思い出そうとした
唇を舐めるとあの暖かさと優しさが頭の中に流れ込んでくる
空の上で何を話そう、何から話そう
まともに話せるかな、わたし・・・