ブリタニア1944 ブルプルミエ


「アッズーロウーノ!」
「ブルーワンだろ」
「あおのいちばん、かなぁ?」
「ブラウアインだねー」
「シーニネンユクシ」
「……ゴルボイアディーン」
「ブルプルミエですわっ!」
 なんなんですのっ! いきなり人のTACネームが呼びにくいなんて言って好き勝手にっ!
 誇り高く由緒あるガリア語のブルプルミエが読みにくいのでしたら、ご自分の方からガリア語に精通なさるのがスジってものでしょうに!
 それが何を勝手に自分たちの母国語で自分勝手にっ!
「もうっ! 勝手になさいっ!」
 こんな所には居られない。
 そんな思いで勢いよく席を立って、食堂を後にする。
 そんなに怒る事ないのに、等と無責任な言葉が背中に届く。
 冗談じゃありませんわっ! 今はここブリタニアで共同戦線を張る都合上教養として学んだブリタニア語を使っていますが、私はガリアの貴族の娘。
 祖国があのような状況でもなければこのような迎合など本来は認められない事ですわ。
 言葉とは国の誇り、それをあのような形で茶化されるなんて全く我慢なりません。
 今は一時的にとはいえ国を失った者同士であるハルトマン中尉までもあのような低俗な事に参加するとは……全く情けなくなりますわ。、
 怒りが収まらないまま歩いてるうちに格納庫へ着いた。
 同じく祖国の誇りの一つであるVG.39に触れ、思いを噛み締める。色々悔しくて、涙が出そう。

「ペリーヌさん」
 背後から声。リーネさんですわね。
「なんですの?」
 振り返らない。これしきの事で目に涙を溜めてるなんて事、知られたくありませんわ。
「その……みんな悪気があるわけじゃないんです」
 解っていますわ……だからこそ余計に始末が悪いんではありませんか。
「わたし、ガリア語好きですよ」
「そんな、今更取り繕われても返って腹立たしいだけですわ」
「違います。わたし、そんなつもりじゃありません」
「では、一体どういうおつもりですの?」
「わたし、その……ガリアの言葉の響きって昔から好きだったんです。それで、スクールで習うの楽しみにしてたんですけど……ウィッチとして戦闘訓練をしなければいけませんでしたから……」
 あら、リーネさんは嘘のつける子ではないですし、これは意外と本気?
 考えてみれば先程の騒ぎの中でもリーネさんは発言していませんでしたものね……。
 私とした事が、気が立っていたせいでよく考えもせずきつく当たってしまいましたわ。これは反省しなくては。
「あの……出来ればここに居る間だけでもいいんで、ガリア語を教えてくれませんか」
 用意した言葉を、先に言われてしまう。
 昔のリーネさんはここまで積極的ではありませんでしたわね。
 でも、うじうじしていた昔よりは今の方がとても好感が持てますわ。
 余り認めたくは無いですが、一応宮藤さんの功績といえなくもないですわね……。 
「で、ではその、私でよろしければ、ガリア語を教授して差し上げても宜しくってよ」
 そうやってリーネさんを受け入れる言葉をつむぎながらも、未だにそちらを振り向けずに居たのは、今度はちょっと嬉しくてウルッとしてしまったから。
「あ……」
 リーネさんが嬉しそうな声を上げる。
「食事後の自由時間に私の部屋でよろしくて?」
「はいっ」
「では準備をしておきますから、また後で」
「あの……ありがとうございます」
 そうやって終始背中で語った私は、内心ウキウキしながら授業のメニューを考えつつ自室へと戻ったのでした。


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