platinum 第10話「雪解」
ガチャッ
「…シャーリー、起きてる?」
「なんだよ、ルッキーニ」
「元気かなー…って」
「ま、ヘコんではいるよ」
二人の間に、妙な雰囲気が流れる。
その雰囲気に耐えられなくなったのか。
「「あ、あの!」」
二人同時に口を開いた。
―――platinum 第10話「雪解」―――
「あ」
「あ、シャ、シャーリーからいいよ」
「………ゴメンな、ルッキーニ」
「……シャーリー」
「あたし、ルッキーニの気持ちも考えずにあんな事言っちゃって…。
…お前、あたしの為に助けてくれたんだよな?」
「うん、シャーリーに死んで欲しくないから」
「……ゴメン…あたし本当にバカだったよ…。みんなの気持ちも知らずに…」
シャーリーの横顔は今にも泣き出しそうだった。
綺麗な目には涙が溜まっていた。
「ねえ、シャーリー。ウィッチ、辞めるの?」
「…………」
「もしそうなら、あたしもついて行く。だから…」
「…ルッキーニ…あたしはまだけじめをつけてない。
それまではウィッチを辞められない」
「シャーリー」
「あたし、海に浮かんでいる間、いろんな事を考えてたんだ。
このまま死んでしまえばどれほど楽なんだろうかとか…。
その間中、あたしは悔しかったんだ。ルッキーニを庇ったのに、あたしが助けられるなんて…だから…死にたかったのかもしれない」
「……」
「……でも…怖くなったんだ…。
…まだやり残した事があるって思ったら、死ぬのが怖くなったんだ…!
嫌だ、死にたくないって…!
もう一度ルッキーニに逢いたいって…!」
「シャーリー…」
すると、シャーリーの目からは涙が流れた。
「…ゴメン…あたし…ルッキーニの事…好き、なんだ…!」
「シャーリー…!」
「バカだよな…あんだけなんで助けたんだとか言ってたのに、今更掌返したようにお前の事が好きだなんて…!
身勝手にもほどがあるよな…!…ゴメン…ゴメン…ルッキーニ…あたし、嫌な女だよなぁ…!」
「…………」
「ううっ…うっ…」
部屋にはシャーリーの泣き声が響く。
「…バカ」
「うっ…ううっ…ルッキーニ…」
「本当に…バカ…シャーリーの…バカ…悪いのは…あたしだよぉっ…!」
「ちょっ、なんでお前まで泣くんだよ…。お前は何にも悪くないだろ…!」
「あたしの不注意でシャーリーに怪我させたんだ…だからあたしが悪いんだ…!」
「ルッキーニ…お前…」
「うっ、うっ、うわあぁぁぁぁぁぁぁん!ゴメン、ゴメン、シャーリー!」
「ルッキーニ…!」
「あたしも…シャーリーがあっ…好きなの…!だから、シャーリーを助けたかったんだっ…!」
「…バカ…バカバカバカバカ!
そんなに泣くなよ!お前に泣かれると…あたしまで…悲しく…なるだろ…!」
「シャーリー…!ゴメン…!」
「謝んなよ…!だってあたし達、両想いだって分かっただろ…?」
シャーリーはルッキーニを抱き締めた。
「ルッキーニ…もう泣くな…もう…」
「うわあぁぁぁん…!ううっ…うっ…!」
「好き、ルッキーニ、お前の事、好きだから…!もう、死にたいなんて言わないから…!」
「シャーリー…!シャーリー…!」
二人は泣き続けた。
涙が枯れ果てるまで、ずっと、ずっと。