platinum 最終話「明日」


《数日後

「リベリアン、ほれ」
「ん?なんだリンゴ一個かよ。あたし一応ケガ人なんだから、豪勢にフルーツバスケットくらい持って来いよ」
「バカ言うな。…それより」
「ん?」
「ウィッチの件、どうなったんだ?」

―――platinum 最終話「明日」―――

シャーリーはリンゴをかじりながら答える。

「ああそれね。…もうちょっと続けようかなって。そう思ってる」
「そうか」

バルクホルンは安堵の表情を浮かべる。

「それにあたしには、ここにいなきゃいけない理由が出来ちゃったし」
「ルッキーニか」
「またストレートな物言いなこった」
「外れてはいまい」
「ま、ね」
「…リベリアン」
「なんだよ」
「今回は誰も悪くない。お前はルッキーニを助けたくて庇った。ルッキーニはお前を助けたくて嵐の空を飛んだんだ。
ウィッチ…いや、人間として至極当然の行いだ」
「ほぉ~」
「…なんだその顔は」
「いや、珍しいと思ってね。あんたがあたしをフォローするなんて」
「バッ、バカ言うなっ…!」
「照れんな照れんな♪
…ま、でもあれだな、しばらくルッキーニには頭が上がんないなあ。迷惑かけちゃったし、泣かせちまったしな」
「フフッ、多分ルッキーニも同じ事思ってるはずだぞ」
「ならそれはそれで良いバランスだよ。節度のある付き合いが出来るじゃん」
「どうかな」
「なんだよ、どういう事だよ」
「どっちかが痺れを切らすかもしれない、という事だ」
「バカ、罪滅ぼしの為にしばらく禁欲生活だよ」


シャーリーはリンゴをかじりながら、ヘラヘラ笑う。

「リベリアン、私達はウィッチ、いや、人間である限り、死がつきまとって来る。
それは避けられない」
「ああ」
「それは過酷な事だ。…お前にそれを受け止める事が出来るか?」

シャーリーはリンゴをかじるのを止めて。

「残念だけど受け止める事は出来ない。
……堅物、これはあたしがレーサーの時に先輩から教えて貰った言葉なんだけどな、“人間、誰にでも死神が憑いている”って言う言葉、どう思う?」
「どう思うと言われても…」
「あたしはああ、その通りだな、って思う。まさに今回死にかけたワケだしね。でもな、堅物」
「…」
「この言葉って、元気付けられないか?」
「…どう言う事だ」
「ああもう鈍いなぁ!要するに」

シャーリーは笑顔で答えた。

「死神が憑いてるなら、その死神を跳ね除けるくらいの気力で生きてやれって。
そう言う事だよ」
「リベリアン…」
「今回の事で、それに気付いたんだ。正直あたしも今まではこの言葉の意味が分からなかったんだ。
ま、先輩がそう言いたかったかどうかは分かんないけどな」
「…お前」
「ん?」
「…呆れるほど楽天家だな、まったく」
「なんだと!?」
ピシッ
「痛っ!」

バルクホルンはシャーリーに軽いデコピンを一発。

「もうリンゴ食い終わったのか。もう一個持ってくるよ」

そう言うと、バルクホルンは部屋を出た。そのドアの前にはルッキーニが。

「ウニャッ…!」
「…盗み聞きか?良い趣味してるな」
「違うもん!」
「…ルッキーニ」
「なに?大尉」
「リベリアンにはやはり笑顔が似合うな」
「…うん!!」
「ほら盗み聞きしてないで、リベリアンに逢ってやれ。
それがアイツにとって何よりの見舞いだ」
「うん、ありがとう大尉!」

…そして、ルッキーニはドアを開ける。
その先には、愛しいその人が。

「シャーリー!!」

―――なあ、ルッキーニ。
あたしもう死にたいなんて言わないから。
だってあたしには、みんなが、そして何より大切な、お前が…
…いるから、さ。

END



コメントを書く・見る

戻る

ストライクウィッチーズ 百合SSまとめ