ブリタニア1944 format by LYNETTE
同時に多方面へと展開したネウロイ殲滅の為、501隊は夜間哨戒で消耗して待機するサーニャちゃんを除く全員がロッテ単位で出撃しました。
コアの位置をつかめないまま徒に魔力と弾薬を消費した私と芳佳ちゃんの二人は、最後に残った弾丸でコアに損傷を与えてネウロイを撤退に追い込婿とに何とか成功しました。
でも、私の射撃の集中時間を稼ぐ間に被弾した芳佳ちゃんは負傷し、ストライカーも損傷。海に墜落しました。
私自身も魔力は限界だったけど、芳佳ちゃんの為力を振り絞って何とか救助し、やっとの事で近所にある小さな島に辿りつきました。
島には元貴族の別荘だったのか、打ち捨てられた屋敷があったので、ひとまずそこに運び込んで濡れた服を脱がし、比較的綺麗なベッドを見つけてそこに寝かしつけました。
芳佳ちゃんの怪我はネウロイのビームで破壊された銃の破片や破裂した弾薬のせいで、腕や太ももの部分はひどい傷でしたが胴体や頭の致命的な部分はかすり傷程度でした。
シーツを千切り包帯代わりにして止血だけすると、何か使えそうな医療品が無いか屋敷の中を探してみる事にしました。
「ん……はぁっ…………と……ぁん」
傷で発熱して、苦しそうにうなされている芳佳ちゃんから離れるのは心苦しかったけど、きっとすぐに戻ってくるから、まっててね、芳佳ちゃん!
そこそこ大きい屋敷だったお陰で捜索は苦労したけど、まだ使えそうな消毒薬の類やちゃんとした包帯を見つけられたのでなにより。
途中で地下室への入り口らしきものも見つけたけど、あそこはまたあとで確認だね。
怪我をしたのが私なら、芳佳ちゃんにすぐ治してもらえるのにな……。
「んんっ…………さん……」
まだ、うなされてる。
ひどい汗。
ふき取っても、ふき取っても、また出て来る。
脱水症状が心配になったわたしは、水を汲んでくる。
幸いな事に真水の出る井戸があった。海水を沸かすとかそんな手間をかけなくて済んだので、水はすぐに用意できてよかった。
容器いっぱいの水を部屋に持ち込んでから気付いた。
どう飲ませよう……。
コップから口に流し込もうとしても、零れてしまう。
水を飲ませる、と思ったときから心の片隅にその方法は思いついていたんだけど、ま、まさか本当にそうしなきゃいけないのかな?
「ご、ゴメンね芳佳ちゃん。でも、これは必要な事だからっ!」
わたしは、まだ意識の無い芳佳ちゃんにそう言って謝ってから、口に水を含み、芳佳ちゃんに口付けた。
人工呼吸のやり方を思い出し、逆に気管の方に入らないように頭を起こしたりして調整する。
その間ずっと唇はつながったまま。
芳佳ちゃんの柔らかい唇の温かい感触に、何かに流されそうになりながらも何とか水を送り込む。
大分こぼれてしまったけれど、コップよりはマシな気がした。
そう、思うことにした私は何度も何度も水を口に含んでは、芳佳ちゃんの唇に吸い付いてその体温と感触を味わった。
芳佳ちゃんを助ける為だ、って思う心が私を大胆にして、心を酔わせていく。
そんな大胆なわたしは、口周りにこぼれた水を舌で拭き取るなんてすごい事も普通に出来てしまった。
唇以外の場所も、舌で味わう芳佳ちゃんの感触は心地いい。
いつの間にか、こぼれた水なんて関係なく芳佳ちゃんの身体に舌を這わせて、汗を味わってた。
お臍の下の方がきゅんとして、無意識にフトモモを擦り合わせる。
シャツを押し上げる、恥ずかしい大きさの胸の先端が硬くなって、布地との摩擦で甘い感覚を響かせ始める。
左手で芳佳ちゃんを支え、右手で水差しを持っていなければ、多分一人でヤラシイ事を始めてしまっていたかもしれない。
シーツがずれて、あらわになる芳佳ちゃんの胸。
ぼうっとした頭では、その控え目な可愛らしいおっぱいにしゃぶりつくのは当然の行為に思えて、欲求の赴くままに唇をピンクの先端に寄せる。
唇や首もとの肌とはまた違った感触に誘われるまま、唇で噛んで強く吸った時、「はぁんっ」と芳佳ちゃんが一際大きな声を上げる。
そこで、我に返った。
わたし、何てことしてたんだろう……。
こんな、苦しんでる芳佳ちゃん相手に、自分の欲望をぶつけるような事……。
自己嫌悪に陥るけど、状況は落ち込む暇も与えてはくれなかった。
気がつくと日は落ちて、冷え込んできていた。
今度は体温を奪われないようにする為の方策が必要だった。
毛布やシーツを探してくるべきだ、これだけの屋敷ならきっとあるはずだ、ってどこか冷静な自分が囁いていたけど、私はもう一つの聞こえてきた声に耳を傾けることにした。
服を脱いで、一緒のシーツに包まる。
芳佳ちゃんをぎゅっと抱きしめ、その体温を全身で感じる。
硬くなった乳首を素肌に押し当てる。
フトモモの、付け根を、芳佳ちゃんのフトモモに密着させる。
横から抱きついた姿勢のまま、眠る芳佳ちゃんの耳元で喘ぎ声を噛み締める。
こんな非常時にエッチな事ばかり考えてる私の事を、芳佳ちゃんに知られたくない。
でも、こんなに芳佳ちゃんのことを思ってるんだってことを知ってほしい。
そんなギリギリの感情、恥ずかしさと思いの強さが私を追い詰めて、一際強くフトモモに腰を押し付けると、漏れ出る声を芳佳ちゃんの横に跳ねた髪を噛んで耐えながら、私は最後まで逝ってしまった。
「芳佳……ちゃぁん……」
甘えるようにして耳たぶにしゃぶりつつ、ふわふわした夢の中に落ちるとき聞いた一言は、私を絶望させるのに十分な一言だった。
「さかもと……さぁん……」
私がこんなにまでしてるのに。
ずっと一緒に居るのに。
こんなに愛してるのに。
無意識に芳佳ちゃんが呼ぶのは、私の名前じゃないんだね。
火照ったままの体と裏腹に、心が急激に冷えていく。
芳佳ちゃんを私のものにしたい。
私色に染めたい。
私だけの芳佳ちゃんが欲しい。
芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、芳佳ちゃん、芳佳ちゃんよしかちゃんよしかちゃんよしかちゃんよしかちゃんよしかよしかよしかよしかよしか……。
そして私の意識は、暗いけど、どこか安心できる深い深いところへと堕ちて行った。
朝、芳佳ちゃんはわたしの胸の中で目を覚ます。
赤い顔で可愛く慌てていたけれど、私はもっとカワイイ芳佳ちゃんを知ってる。
知っているから、いつもその芳佳ちゃんで居て欲しい。
おっぱいが好きなら、求めてくれればいいのにって思う。
もっと素直になっていいんだよ、って。
芳佳ちゃんが求めてくれるなら私どんな事だって出来るよ。
だから……だから遠慮なんてしないで、もっと私に欲望をぶつけてくれればいいのに。
わたし、芳佳ちゃんの欲望になら滅茶苦茶にされてもいいんだよ。
ううん、違う。
わたしは芳佳ちゃんに滅茶苦茶にされたいの。
でも芳佳ちゃん、こんなにかわいい芳佳ちゃんはわたしみたいな娘を滅茶苦茶にする方法なんて知らないよね。
ふふ、大丈夫。
知らなくても平気だよ。
わたしが教えてあげるから。
わたしが芳佳ちゃんを、わたしの芳佳ちゃんをわたしの欲望で滅茶苦茶にしてあげる。
芳佳ちゃんはただ自分がされた事を私にしてくれればいいようにしてあげる。
わたし、わたしすごくエッチだから、色んな事したいし、して欲しいよ。
きっと芳佳ちゃん途中で啼いたり叫んだりしちゃうかもしれないけど、二人には必要なコトだから大丈夫だよね。
うん、大丈夫。
だって芳佳ちゃんが感じたこと、思ったこと、考えたこと全部わたしにシテいいんだよ。
だから、だからきっと、わたしたちきっとシアワセになれるよ。
芳佳ちゃんが起きる前に、わたしのストライカーを納屋の中に隠した。
芳佳ちゃんのストライカーは既に墜落時に失われていたから問題は無かった。
通信機も壊した。連絡を取ったり、場所を特定されたりしないよう。
食料は保存食で一ヶ月以上持ちそうなくらいの備蓄があったし、荒れているけど裏手に菜園もあって食べられそうな野菜類もあったんで、あんまり心配していなかった。
そして、少し気になっていた地下室を確認した。
ワイン倉にでもなっていれば、お酒で酔わした芳佳ちゃんと色々するのもいいな、って思って。
でも、わたしはそこで予想を上回るどころか天啓とも言うべき収穫を手にすることが出来た。
地下室には、勿論期待通りのワイン倉の部分もあったけど、それ以上にスペースを割いていたのが石造りの牢獄のような部屋だった。
半分が書斎、半分が拷問部屋のような奇妙なつくりの部屋には色々な物が残されていて、その大半が女の子を性的に倒錯した世界へと誘う物ばかりだった。
見ただけじゃ用途が解らないものや薬品類もあったけど、机の上にあったノートのようなものを開くと、その使用法から効果まで全てが羅列されていた。
それだけじゃなくて、別のノートには実際どの道具をどう使ってどういったことを行ったのかが、詳細なスケッチつきで残されていた。
わたしは気付いてしまった。
ここがどんな場所であるかという音に。
そう、ここはその昔に、魔女が魔女を責める為の秘密の地下室だったんだ。
わたしは運命に感謝した。
わたしの芳佳ちゃんとわたしがこんな素敵な場所に導かれたって言う事に。
ただ漠然と、芳佳ちゃんをわたし色に染めたいっていう思いだけが先走っていたのに、具体的に何をすればいいかが見えてきた。
先のことをちょっと想像するだけでワクワクしてくる。
ワクワクと同時にエッチな部分が熱を持って濡れて、もうズボンなんて穿いていられない程になってくる。
我慢しきれなくなって一人でしてしまいそうになるけど、意志力を動員して耐える。
だって、わたしは芳佳ちゃんの身体以外では最後まで逝かないって決めたから。
夕べ心に誓ったことを思い描くと、火照りはますます激しくなったけど我慢することが出来た。
わたしは濡れきってただ素肌に張り付くだけのズボンを脱ぎ捨てると、芳佳ちゃんの居る部屋へと急いだ。
もう一度眠る芳佳ちゃんの身体で気持ちよくなろうと考えながら。
「リ、リーネちゃん……その、なんで裸?」
焦ってどもりながらの第一声。
「おはよう芳佳ちゃん。夜は寒かったから、こうするのが一番あったかいと思ったの。だから、芳佳ちゃんもハダカだよ」
「え? くっ!」
慌てて身体を動かして確認しようとするけど、手足の傷が痛んだのか苦しそうな声を上げる芳佳ちゃん。
「あぁ……、手足、まだ動かさない方がいいよ」
芳佳ちゃんの傷は意外と深くて、暫くは両手両足を動かせそうに無かったから、これからの事には好都合。
「いたた……うん、そうみたいだね」
「わたしのせいで、ごめんね」
「リーネちゃんのせいなんかじゃないよ。悪いのはすぐにコアを見つけられなかった自分だから」
芳佳ちゃんはそういって自分を責め、力なく微笑む。
そんな表情もかわいい。
「芳佳ちゃん……」
「と、ところでリーネちゃん、なんだか顔赤いよ。もしかして付きっ切りで看病してくれて体調崩しちゃったりしたの?」
自分の身体が大変なのに、私の事を気遣ってくれる芳佳ちゃんは素敵。
「ううん、わたしは平気だよ」
わたしの顔が赤いのは、さっきまで芳佳ちゃんの身体でえっちな事してたからだよ。
そう伝えたら、芳佳ちゃんはどんな反応してくれるのかな?
私の事軽蔑して、蔑んだ目で見てくれるのかな、それとももっとしようって言ってくれるのかな。
でも、そういう楽しみはまた後で。
今は今出来る事をしないといけないね。
「平気ならいいんだけど……ところで、ここは?」
「うん、島みたい。人のいない屋敷があったから勝手に運び込んで使わせてもらってるの」
「そう、なんだ。速く帰らないと、皆心配するね……」
表情が曇る。
まだ、芳佳ちゃんには『みんな』が重要なんだね。
でも大丈夫。
すぐにわたしの事しか気にならなくなるよ。
「それがね、芳佳ちゃん、通信機もストライカーもなくなっちゃったから、ここで救助を待つしかないの」
「えええ! そうなんだ……私達大丈夫かな?」
本当はそこで、私達が二人きりでいることに喜んで欲しいな。
「うん、調べてみたんだけど、食べられそうな保存食とか自生してる野菜とかはあったから、暫くはここで生きていけると思うの」
「そっか」
「芳佳ちゃんの怪我も、一応薬や包帯を見つけてあるからきっと大丈夫だよ」
なるべく安心してもらう。芳佳ちゃんに元気がないとわたしも辛くなっちゃうから。
「うん、リーネちゃんが居てくれてよかった」
やっと笑顔になる。
もっとそう言って欲しいな。
わたしと一緒にいられる事がシアワセって、はやく心からその事だけを思って欲しいな。
「ところで芳佳ちゃん、おなかすいてない?」
「え、ああ、すごく減ってる~」
「うん、昨日から水しか飲んでないからね」
どういう風に飲んだかは、後でちゃんと聞かせてあげる。
「すぐに食事用意してあげるから、待っていてね」
「うん、本当にゴメ……って、裸だよ!」
芳佳ちゃんにわたしの事を見てもらいたくてわざと裸のまま部屋を出ようとする。
「私達二人以外に誰も居ないから」
そう言いながらも、乳首がカチカチになって尖っている事や、股間が湿り気を帯びてるどころかぐっしょりになっていることを指摘されないか、ドキドキしながらの行為だった。
部屋を後にしたわたしは、台所で素肌にエプロンだけつけて簡単に食事を用意する。
料理ではなく端に食材を切って食べやすくして、ちょっと味をつけるだけ。
そして、地下で発見した薬の幾つかをここで試してみる事にした。
「お待たせ様。時間かかっちゃって、ゴメンね」
「んーん、いいよ。わたしこそ何も出来なくて申し訳なくて……」
本当に申し訳なさそうな表情の芳佳ちゃん。
でもその視線が裸にエプロンをつけただけのわたしの姿を犯してるの、わたし知ってるよ。
それに、わたしはこうして芳佳ちゃんの看病できるだけでも嬉しいから、そんな顔しなくてもいいんだよ。
「干し肉と野菜類でこんな簡単なサラダしか用意できなくてごめんね」
「わたしが用意してもらってる立場なんだから、そんな事気にしないで。それに、サラダ美味しそうだよ」
「そう言ってもらえると嬉しいな」
でも、本当はそうして無邪気にしてる芳佳ちゃんが一番美味しそうなんだよ。
「はい、あーん」
「え?」
「腕、うごかせないでしょ。だから食べさせてあげる。あ~ん」
「あ、あは。なんだかこういうのって照れるね……あ~ん」
芳佳ちゃんが、食べる。
見慣れた光景のはずなのに、意識してその唇の動きを追っているだけでまた興奮してくる。
ピンクの唇が開いて閉じて、中で舌を絡め、飲み込む。
当たり前の動作がとても艶かしい。
「あ~ん」
「あ~ん」
笑顔で、甘えるように口を開く。
舌が覗く。
フォークを迎え入れる。
ただただ、それだけの事にドキドキが収まらない。
「あ~ん」
「あ~ん」
こうしている間にも芳佳ちゃんは用意した薬を採りこんでいく。
その成分がどんな変化をもたらすかも知らずに、幸せそうに、餌をついばむ小鳥の様に、わたしの手から食べ続ける。
器のサラダがなくなって、楽しい食事の時間が終わってしまった。
本当はもっと食べさせて居たいのに、幸せな時間ほど過ぎるのが早い。
でも落ち込んだりはしない。次の幸せな時間はきっともっと幸せだから。
「ねぇ芳佳ちゃん、水、飲む?」
「あ、うん、欲しいかな」
「じゃ、お水も飲ましてあげるね」
「うんっ」
笑顔で頷く芳佳ちゃん。
わたしはその笑顔に向かって自分の口に水を含むと、わたしを誘惑し続けるその愛らしい唇に向かって口づけた。
「!」
緊張が伝わってくる。
無防備な時とはまた違う唇の感触。
色んな表情があるんだね。芳佳ちゃんらしくて、すごく素敵。
どうしていいのかわからないまま、わたしの舌に侵入されて水を注ぎ込まれる芳佳ちゃんのくち。
名残惜しいけど、目的はキスじゃなくてお水を飲んでもらうことだから、わたしの口の水がなくなったところで顔を離す。
「リッ、りーねちゃっ、ごほっ、げほっ、げほっ」
「あ、むせちゃったの? 大丈夫?」
「ひっひどいよっ! 突然っ! ……その、キスだなんて……」
ひとしきりむせてから、体勢を立て直して抗議の声を上げる芳佳ちゃん。
でも最後の方は消え入りそうな口調で、わたしから視線をそらして言う。
「ひどくなんてないよ。わたし、意識が無い芳佳ちゃんに何度もこうやって水を飲ませたの。水がこぼれないようにするのって、こうするしかなかったから」
「あ……、ご、ごめんねリーネちゃん。わたし、いきなりだったから驚いちゃったの……それに、キスって……」
初めてだったの。
声は聞こえなかったけど、唇はそう動いてた事をわたしは見逃さなかった。
何て素敵。わたし、始めてをもらえちゃった。
「わたし、芳佳ちゃんのファーストキスだったんだね。夢中だったから、そういう事に気が回ってなくて……ゴメンね、芳佳ちゃん」
「ううん、いいのっ! 一生懸命で、私の事いっぱい考えてリーネちゃんがしてくれた事なのに、怒ったりして、ごめん」
「わ、わたしの方こそっ」
「で、でもでもっ」
そこで、お互いに気付く。
「私達、お互いに謝ってばかりになってるね」
「そうだね。でも、やっぱりわたしの方が悪いと思ってるよ」
「もうっ、リーネちゃんってば変な所で譲らないんだから」
その後は自然に笑いが漏れてきて、ひとしきり笑ったあと、普通にコップから水を飲ませてあげた。
そして、薬が間違ったものでなければ、そろそろ効果を発揮する頃だった。
「あ、あのね、リーネちゃん……」
少し頬を染めて、恥ずかしそうに芳佳ちゃんが口を開く。
来た、と思った。
「どうしたの? 芳佳ちゃん」
「そ、その…………」
ごにょごにょと、芳佳ちゃんらしくないはっきりしない態度。
なんて言ってるかなんて聞き取れないけど、わたしは答えを知っていた。
でも、助け舟なんて出したら勿体無い。
芳佳ちゃんには自分で一線を越えて欲しかったから、わたしはなるべく声が意地悪にならないようにしながら言った。
「はっきり言ってくれないとわからないよ」
「……っこ」
聞こえた。だけどもう一押し。
「ね、お願い。もう一度はっきり、ね」
にっこりと笑顔で、顔を近付ける。
「おしっこ、したいの」
顔を真っ赤にして恥ずかしそうに呟くその芳佳ちゃんの表情は、わたしが今まで見た芳佳ちゃんの中で、一番魅力的だった。