無題


はっと気が付くと、周りは焼け野原だった。

故郷のカールスラントなのか、ウィッチーズ基地のあるブリタニアなのか、全く違う国なのか…
それすらもわからないくらいに、広がるのは焼けた大地と瓦礫の山、燃える炎だけだった。

がしゃん、と遠くで音が聞こえ、私はそっちに向かって走った。
しばらく進むと、瓦礫が少し高く積み上げられている場所があった。
その上部から、人間の脚がぶらりと突き出ている。

その脚に見覚えがあった。
あれは…あのストライカーは、まさか…

「エーリカ!!」

私は急いで駆け寄った。
瓦礫をどけて、体を抱き起こす。
泥と血で汚れたエーリカは、ぐったりとしていて

半分開いた目は、何も映していなかった。

「エーリカ!しっかりしろ、エーリカ!」

必死に揺さぶっても、エーリカは動かない。

いやだ、一体どうして…
なんで動かないんだ、エーリカ…!

「エーリカぁぁぁ!!」



―――――――


「エーリカっ…!」

私はがばっと体を起こした。
見回すと、見慣れた自分の部屋。全身にびっしょりと汗をかいていた。

「……夢か…」

外は夜が明け始めて、うっすらと明るくなっている。

なんて酷い夢だ…
大きくため息をついて、胸を撫で下ろした。

しかし、どうしてあんな夢を見たのだろう。
まさか、エーリカに何かあったんじゃないだろうか。そう思ったら、さっと血の気が引いた。

私はベッドから飛び降り、急いでエーリカの部屋へ向かった。

「エーリカ…!!?」

ばん、とエーリカの部屋のドアを開けた私は…目を疑った。

夢の中のような瓦礫……ではなく、ゴミの山。
あちらこちらに服やら紙くずやら酒のビンやらが転がっていて、床が見えないくらいだ。

その部屋の真ん中、ベッドがあるはずの場所に…
一段と積み上がった荷物、そこからぶらりと突き出た脚。

……夢とよく似ているが…これは…

「エーリカ」

近づいて、ぐい、と体を抱き起こす。
ずるっと現れたエーリカは、汚れてこそいないが口回りは涎で濡れていた。

「こら、エーリカ。起きろ」

ゆさゆさと揺すると、むにゃむにゃと言いながら目を開けた。

「はれ…?おはよ、トゥルーデ…」
「おはようじゃない!なんだこの部屋の状態は!」

エーリカは目を擦りながらゆっくりと部屋を見回した。

「まだ明け方じゃん…おやすみ…」
「寝るなっ!」

あぁもう、私がどれだけ心配したと思っているんだ!

「も~…なんだよ、こんな朝早くからぁ…」

エーリカは不機嫌そうに呟いた。

……言われて見れば、確かに。
部屋の汚さについつい怒ってしまったが、私が夢を気にしすぎただけであって、こんな早朝にエーリカを起こす理由はないのだ。

「…すまない、少し変な夢を見てしまってな…説教はまた後にする」

頭をくしゃっと撫で、私は部屋を出ようと立ち上がった。…しかし、

「待ってトゥルーデ」

ぐい、と腕を引っ張られ引き寄せられる。

「なに?夢ってどんな?」

…全くこいつは…
ついさっきまで半分寝ているような状態だったくせに、目をぱっちりと開いて楽しそうに聞いてくる。現金な奴だ。

「…別に、対した夢じゃない」
「うそ。トゥルーデ服も着てないじゃん」
「!!??」

そう言われて、私は初めて自分が全裸のままここへ来てしまった事に気付いた。

「服着るのも忘れるくらいびっくりする夢だったの?ねぇねぇ」
「う…うるさい、何か羽織る物を貸せ!」

熱くなった顔を隠すようにそっぽを向くと、エーリカはベッドの上をがさがさと漁り始めた。
要望通り、バスローブでも貸してくれるのかと思ったら…

「よし、空いた。トゥルーデ、こっち来て」

ベッドの上にできたスペースをぽんぽん叩くエーリカ。
…というか、下に物を落としただけじゃないか。

「全く、なんなん…うわっ!」

近づくと、引き倒されベッドの上に組み敷かれた。

「こら、エーリカ!」
「どんな夢か教えてくれたらどいたげる」

私の上に馬乗りになったエーリカは、にこっと笑って言った。
…言わなければ本当にどかないだろうな…

「……よく、わからないが…戦闘の夢だ」
「戦闘?戦ってたの?」
「もう戦いは終わった後で…どうやら、私たちの敗北だったらしい」

ふんふん、と頷くエーリカをちらりと見た。

「それで…撃墜されたお前を見つけたんだ。瓦礫の中で…」
「へぇ、私やられちゃったんだ」
「…怪我もひどくて、いくら揺すっても起きなくて…」

夢の中で見た光景を思い出してきてしまった。開いているのに、何も映していなかったエーリカの瞳。
…だからこそ、この部屋の状態に余計に拍子抜けしたのだが。

「そっか~」

何故かエーリカはにこにこしている。

「何を嬉しそうにしているんだ。夢の中とはいえ、やられていたんだぞ」
「だって~」

にこにこ顔のまま、ぎゅむっと抱きつかれた。

「私の事心配してきてくれたんでしょ?」
「ッ…悪いか、バカ…」
「へへ~っ、やぁだ私愛されてるぅ~」

全く、調子のいい奴だ…
そんな所が好きなのも、事実だがな。

「よし、じゃあトゥルーデが安心できるようにしてあげる」
「は?」

なんだそれは、と言いかけたが、エーリカの唇に阻まれた。

「んっ…」

いつもと同じキスだが、なんだか今日は凄く気持ちがいい。

「はっ…ん…」

啄むように何度も口付けられ、その間にもエーリカの手が私の体を撫でる。

「トゥルーデ、かわいい」

エーリカは銀の糸を引きながら口を離し、そのまま首筋から鎖骨へとゆっくり顔を下ろしていく。
舌が触れた部分が、いつもより熱い。気持ちいい。

「エー…リカぁ…」
「ふふ、今日のトゥルーデはいつもよりえっちだね」

エーリカの唇が胸に到達し、片方を揉みながらもう片方の先端をぴちゃぴちゃと舐め出した。

「あ…ぁ、…んんっ…」

エーリカに触られている、と思うだけで、胸の中がいっぱいになる。
初めてじゃないのに、なんだ、この気持ち。

「ん~…素直なのもいいけどやっぱりちょっと物足りないな」
「ん…なんだ、それは…」
「ほら、ちょっと嫌がったり恥ずかしがったりするトゥルーデをやりこめちゃうのが燃えるというか」
「ばっ…バカな事を言うな!」

唸っていたエーリカは、不意に思い付いたように私の体を反転させた。

なんだ、と思う前に、腰がひょいっと持ち上げられる。
膝を立たされ、エーリカに向けて腰だけを高く上げた格好になってしまった。

「え、エーリカ!?」
「この体勢は初めてだよね」

楽しそうな声が聞こえ、すぐに体に刺激が走った。

「ひあっ!や、ぁっ」

エーリカの舌だと思われる熱いものが、私の局部を舐め始めた。
臀部を柔らかい髪がふわふわとくすぐる。

「あっ、エーリカ…やだ、あん…」

中心の窪みをなぞられたかと思えば、上部の肉芽をつつかれたり、太股の付け根に口付けられたり…
不意に刺激され、それが見えない。いつもの何倍も恥ずかしくて、熱くなった。

「トゥルーデ、すごい…溢れてくるよ」

じゅる、と愛液を啜られ、その音がまた熱を上げる。

「やっ、だめ、もぅ…」
「ん、もう限界?」
「かぉ…顔、みたい…エーリカぁ…」

後ろに手を伸ばすと、エーリカはぎゅっと握ってくれた。
そのまま、また体をくるりと反転させられる。

「もう、そんな可愛い事言って…反則だよ」

エーリカは頬を染めて私を見つめた。

あぁ、その瞳には確かに私が映っていた。

「エーリカッ…ぁ、あぁ…!」

ぎゅっとしがみつきながら、私は達した。



―――――

「なんでそんな夢見たんだろうね?」

ベッドに沈んだ私の頭を撫でながら、エーリカが呟いた。

「予知夢、というのだけはごめんだな」
「大丈夫だよ、私負けないから」
「…当たり前だ。現実になってたまるか」

目を伏せると、エーリカはきゅっと体を密着させてきた。

「ねぇ、トゥルーデ」

また、私を映した瞳と視線がかち合った。

「私、トゥルーデを置いてったりしないから」

ちゅ、と鼻先にキスが降ってくる。

「ずっと側にいるよ」

それは、何よりも安心する言葉だった。
同時に私にも決意をさせる言葉だった。

私も、エーリカを置いていったりしない。
ずっと、こうして側にいる。

「じゃあ、一休みしたら片付けだな」
「えぇーっ!せっかくいいムードなのに」
「えぇーっじゃない!徹底的にやるぞ!」

窓からはきらきらした朝日が射し込んでいた。

それがエーリカの瞳みたいだなんて思った事は、内緒だ。


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