貴女色人形


「トゥルーデ」
「エーリカ」

私は少し背を伸ばして、トゥルーデにキスを催促する。
と言っても、私達は別に恋人同士として付き合っているわけじゃない。

なんとなく、キスが習慣になってるだけ。多分、挨拶みたいもの。

おそらくトゥルーデもこのキスには何の意味も無いと思ってる。

…でもね、トゥルーデ。
トゥルーデが思ってるより私、結構意識しちゃってるんだよ……?


――貴女色人形――


食堂で芋を食べながら他愛も無い話をする。
これもいつもの、日常。

「なあ、堅物」
「なんだ」
「お前って恋人できそうに無いよな」
「何を言うかと思えば…失礼にも程がある」
「そういうシャーリーはどうなのさ」
「あたし?あたしにはルッキーニというハニーがいるから」
「自分より年下の少女に手を出すとは…」
「おい堅物、変な事言うな!あたし達は相思相愛なんだよ。
それに臆してちゃ恋愛なんて出来ないって」

…シャーリーのその言葉はまるで私に言っているようで。

「ん、もうこんな時間か」
「何か用があるのか」
「ああ、ルッキーニとデートの時間なんだ。じゃあ行ってくる」
「楽しんで来いよ」
「行ってらっしゃーい」

そう言うと、シャーリーは走ってどこかへと消えて行った。

「ちえ、良いなあ、シャーリー」
「なんだ、お前も恋人が欲しいのか?」
「まあね。私も女だし、人並みの幸せは掴みたいわけよ」
「フッ、お前の事を好きになってくれる奴なんているのか?」
「チッチッチッ、トゥルーデ。私は好きになったら押せ押せタイプなんだよ」
「要するに攻めるというわけか」
「そーいう事。だから…」

私はトゥルーデを押し倒した。
下は固い床だけど、そんなの今の私に関係無い。

「…何の冗談だ。エーリカ」
「冗談でこんな事出来る程、私ユーモアなんて無いよ」
「エーリカ…お前も知っているはずだ。私は…」
「知ってるよ。知ってるからこそだよ。…でもねトゥルーデ。
シャーリーはルッキーニのモノだよ。トゥルーデの恋が叶う事は無い。
…悲しいけどね」
「……からかっているのか」
「そんなつもりは無いよ。私はただ、トゥルーデが好きなだけだから」
「エーリカ」

「でもね、別に恋人になってとは言わないよ。トゥルーデが寂しい時は私の身体を好きにして良いって事だよ」
「……慰み者ってヤツか」
「そういう事だね」
「……お前はそれで良いのか?
お前が言う関係には、何の愛も無いし、感情も無い。お前は私が好きなんだろう?」
「…私は…トゥルーデと身体を重ね合えさえすれば、それで幸せだよ。
私はただ、トゥルーデの体温を感じてさえいれば、それだけで」
「エーリカ…お前…」

私は、更にトゥルーデに密着する。

トゥルーデの吐息は私を、壊す。乱す。

「ね、トゥルーデ。私をトゥルーデの好きにして?
トゥルーデが望むなら何でもしてあげる。私、トゥルーデの言う事には逆らわない。だって私、」

――トゥルーデの人形だもん――


キスをする。
深くて、熱いキス。


キスを終えると、黙っていたトゥルーデが口を開く。

「…本気なんだな?」
「うん…私は本気だよ」

トゥルーデは私を押し倒し返す。

「……ならば、この間だけは……物言わぬ人形になってくれ、エーリカ」
「うん…うん…私、トゥルーデの人形だから…」


私達は、身体を重ねた。


――私はトゥルーデの人形。

何をされても物言わない、トゥルーデの劣情を受け止めるだけの、人形。

そうだ、私が望んでいたのは、こういう関係なのかも知れない。

この関係から、恋人同士に進展する事は、多分無い。


でもそれでも構わない。トゥルーデと一緒にいる事が私の幸せ。


私の身体はトゥルーデ、貴女のモノだから。

END


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