秋の放課後


「リーネさん、何をしているの?」

ビクリと跳ね上がるブレザーの肩。 下校のベルが流れ、もう校内に人はまばら。
ここは下駄箱。 高等科と中等科の下駄箱は隣り合っている。
けれど、中等科の彼女が高等科のブロックにいるのは、ちょっとおかしい。

「み、ミーナ先輩……。」

顔面蒼白で振り返った彼女。 手に持ったものを後ろ手に隠そうとするけれど、彼女はいつもドン臭い。
私はそれが画鋲を入れた箱だという事を見てとった。

彼女の肩越しに、ちらりと半開きの下駄箱の名札をチェックする。
坂本美緒。 なるほどね。

「リーネさん、あなた……」
「ご、ごめんなさいいぃぃぃぃぃっ!!」

可能な限り優しい声を出したつもりだったけど、開口一番、リーネさんは泣き出してしまった。
私は思わず苦笑する。 そうよね。 本当はこんな事できる子じゃないもの。

「えっくえっく……最近、芳佳ちゃんと坂本先輩が付き合い始めて……坂本先輩さえいなければ、って……。」
「いいのよ、リーネさん。 あなたのしようとした事は、あなたの器を小さいものにしてしまう。 もうこんな事をしては駄目よ?」

無心にうなずく少女。 しゃくりあげる彼女の頭を優しく撫でる。 どれくらいの時間が過ぎただろう。

「すっかり暗くなっちゃった。 それじゃ、一緒に帰りましょ。 ほら、靴を履いて。」

ようやく泣き止んだ彼女は、少し照れくさそうにはにかんで、自分の靴箱へと向かった。

私はそのおぼつかない後姿に、なんだか無性に暖かい気持ちが湧いてくるのを感じながら、
そっと宮藤さんの靴箱にダイナマイトを仕掛けて家路についたのだった。

                                                          Fin


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