snow smile
――寒い。雪が降りそうなくらいに。
あたしは正直、この寒さってヤツが苦手で苦手でしょうがない。
空を飛ぶ気もなくなるし。
でもだ。好きな人が隣にいるとなれば、それはまた別の話だ。
その人の笑顔を見てるだけで、なんだか幸せになれるんだ。
――snow smile――
非番のあたしとルッキーニは、街に繰り出す事になった。
特別目的があるわけでは無く、ただ街をウロウロするだけだけど。
「ウニャ~寒ーい、シャーリー」
「もう冬だからなあ…。基地に戻ったら風邪ひかないように、手洗いとうがいだな」
「うん!」
あたしはふと、街の看板に目をやる。
「クリスマスか…」
「一年経つのって早いよねえ」
「っつーかお前もうすぐ誕生日じゃん」
「そういや。忘れてたよ」
「おいおい、自分の誕生日忘れんなって」
「アハハ」
「それでさ、なんか欲しいもんあるか?
そんなに高くなけりゃ、なんかやるけど」
「えー、いざ言われてみると、思い付かないなあ」
「まあ、なんか考えててよ。無理さえしなきゃ大丈夫だからさ」
「うん」
と、あたしの頬に冷たい何かが当たる。
「雨?」
「いや、これは…」
空から白いものが降ってくる。
「雪だ…!」
「おお、初雪だな、こりゃ」
「スゴいスゴい!ねえ、積もるかな?」
「ん~どうだろうな、一晩中降ればそれなりには積もるかもな」
「そうか…」
ルッキーニは空に手を合わせて。
「どうか、雪が積もりますように!」
「アハハ、神頼みってヤツか?
…ん?」
あたしはちょっとした違和感を覚える。
「おい、ルッキーニ」
「なに、シャーリー」
「お前、手袋はどうしたんだよ」
「ありゃ、バレちゃった」
ルッキーニは手袋をしていなかった。
バカだな、寒いだろうに…
「探したんだけど、見付からなくて…えへへ…♪」
「よく見りゃマフラーもねえし。
お前本当に風邪ひいちゃうぞ」
「大丈夫だよ。そんなやわな体してないもん」
ルッキーニはそう言いながら跳ね回る。
さすがにこんな寒い中、手袋もマフラーもしてないのではあたしだって、心配になる。
そう思ったあたしはルッキーニを招き寄せる。
「ちょっとルッキーニ、こっち来て」
「なぁに、シャーリー」
「やっぱりさすがにちょっと心配だよ」
あたしはマフラーを半分、ルッキーニにかけた。
要するにあたし達は今、繋がった状態というわけだ。
「ウニャ~ちょっと恥ずかしいよ、シャーリー…///」
「バカ、あたしだって恥ずかしいけど、お前が風邪ひいちゃうだろ。それとほら」
あたしは手袋を片方ルッキーニに貸す。
「えっ、でもこれじゃシャーリーも寒いんじゃ…」
「だからさ、こうするんだよ」
あたしは手袋をつけてない方の手同士を繋ぐ。
「シャ、シャーリー…!//////」
ルッキーニの掌の温もりが心地良い。
手袋をしていなかったというのに、あったかい。
「これなら良いだろ?」
「ウニャ~…//////」
ルッキーニは顔を茹で蛸みたいに真っ赤にして。
照れたルッキーニというのは、あたしにはとても魅力的に見えて。
正直言って可愛すぎる。
「…なんかあたし達、恋人同士みたいだね…//////」
「友達以上恋人未満なあたし達にはちょうど良いじゃん。それにさ」
「それに?」
あたしはルッキーニの唇に指を当てて。
「あたしは、もうお前とは恋人同士だと思ってるけどな」
「シャーリー…//////」
「さ、帰ろうか。あんまり遅くなるとみんな心配するしな」
「…うん…!」
お前を好きで本当に良かった。
いきなり降った初雪は、あたしの気持ちを再確認させてくれた。
いつか、この気持ちを形に出来るまで。
もうちょっとだけ待っててくれよ、ルッキーニ。