Who is she?


今日もツいてない…。
昨日もツいてなかったけど…
それでも今日はやっぱり一番ツいてない…

あぁ、イッル…その娘は一体誰なんだ?


ブリタニアの義勇軍に参加していたイッルがガリア解放を期にスオムスに帰って
きた。
イッルは私のことなんてほっておいていきなりブリタニアに行ってしまったんだ
った…
あの日もツいてなかったっけ。
私にも言いたいことが色々あったんだぞ!
だからイッルが帰ってきたら絶対にこの気持ちをぶつけてやろうと思っていたの
に…

ーーーーーーーー

「おかえり、イッル。」
列車から降りてくる待ちに待った人影に声をかける。

イッルがブリタニアから帰ってくると知った私はイッルを迎えに駅までいったん
だ。
実は予定日を間違えていて昨日も待ちぼうけたんだけど…本当にツいてない。

「ようニパ、相変わらずツいてないのか?」
「久しぶりに会った相棒への第一声がそれなのか、イッル?」

早速軽口を叩き合う。
私たちの間に恐れていた距離は感じられなかった。
なんだ、今日はツいてるじゃないか。

でも私がツいてるなんておかしいって気付くべきだったんだ…

「ん?」

妙な違和感を感じてイッルを眺める。

「なんだこれ…腕か?」

イッルの腰あたりに腕が見える。
誰かが後ろからイッルを抱きしめてる?
ははっ、まさか…きっと幻覚だ。
朝に食べたキノコが悪かったに違いない。
なんてったって私はツいてないカタヤイネンだからな。

私はイッルの後ろに回り込み現実を確かめる。

「…………………。」
「…………………。」

OK、イッル、知り合いに有名なゴーストバスターがいるんだ、さあ行こう。
イッルの腰にはなんだか小さくて可愛らしい女の子が眠そうに抱きついていた。
私の視線とその娘の視線が交差する。

「なぁイッル?多分私の幻覚なんだがイッルの腰に女の子が抱きついてるんだ。な
にかとりつかれるようなことしたのか?」
「なに言ってんダ、ニパ?撃墜されすぎてどっかヤラレタカ?」

やっぱりイッルは気付いてないんだ。
そうに決まってる。
ヘタレで純情なイッルがこんな可愛い娘に抱きつかれて平気なはずがないからな


「この娘はサーニャって言うんダ。あっちの部隊で私とロッテを組んでたんダゾ
。」

どうしよう、現実だった。
あれ?でも…

「その娘の服、オラーシャの軍服だよな?そのサーニャ…ちゃん?はなんでここに
いるんだ?」

遊びに来たんだ…
遊びに来たんだと言え!
なぁイッル、すぐに私のとこに帰ってくるんだろ?

「それはダナ…」

おいイッル、どうしてそこで顔を赤くする!
風邪か?風邪だろ?スオムスはブリタニアより寒いからな。

「エイラ…」
「なんだサーニャ、起きてたノカ?」
「ちょっと前から。」
「あぁ、こいつはカタヤイネン、スオムスでの同僚ダゾ。」

同僚?相棒って言ってくれよイッル!

「サーニャのことも今から、しょ、紹介するからナ!仲良くするんダゾ?」
「うん。ありがとうエイラ。」

サーニャちゃんがイッルの胸によりかかる。
おい、そこは私だって未踏のサンクチュアリだ!

「ニ、ニパ?こここっ、この娘はササ、サーニャって言うんダ。」

それはさっき聞いた。
それよりなんでそんなに動揺してるんだ?
サーニャちゃんが起きたからなのか?
いや、久しぶりの私に緊張してるんだろ?
お願いだからそう言えよ!

「ササ、サササ、サ、サーニャは私のよよ、嫁なンダ!!」

目の前が真っ白になる。
あれ?今なんて言った?
嫁?よめ?ヨメ?…夜目だ、夜目に違いない。
サーニャちゃんは夜間哨戒のパートナーでイッルの夜目なんだろ!?
泣いてない!私は泣いてないぞ!

「サーニャとは1週間前に式をあげたんだ。ホントはスオムスのみんなも呼びたか
ったんだけど。」

そうだよな。私たちもスオムスで戦ってるんだ。呼べないよな。
でも私のことも覚えててくれたんだなイッル?嬉しいよ。
で、式ってなんだ?
あぁ、あれだろ?ガリア解散記念パーティーだろ?

「だからサーニャは私の嫁としてスオムスに転属になったンダ。」

夜目は必要だよな。スオムスには探知能力のある魔女が少ないからな。
えっ、現実を見ろって?
うるさい!私はツいてないカタヤイネン。
プラス思考でいかないと死んじゃうんだよ!

「そうだ、エル姉のとこにも挨拶に行かナキャ。」
「エル、姉?」
「エルマ少佐ダ。私の先輩で大事な家族ナンダ。」

ちょっと待てイッル!
どうして私が同僚であのドジっ娘エルマ少佐が大事な家族なんだ!

「お義母様?」
「いや、血の繋がりはないんダ。どっちかって言うとお姉様かな?」
「お、お姉様…?」

サーニャちゃんが怪訝な顔でイッルを見ている。
私たちはエルマ少佐を知ってるからその冗談が通じるんだ!
アホネンのお姉様隊は悪い意味で有名なんだぞ!
イッルはそういうとこ無頓着だ。

「じゃあエル姉のとこ行こうカ。」
「私が連れてってやるよイッル!」
「そうか、ありがとナ、ニパ。」

イッルがニッと笑う。

あぁ、やっぱり可愛いな…

ーーーーーーーー

「エル姉っ!いるカ?」

イッルがエルマ少佐の部屋にノックもせずに入る。
あれ?私のときよりも嬉しそうなのはなんで?

「エイラさん!お帰りなさい。よく頑張りましたね。」

エルマ少佐が嬉しそうにイッルを抱きしめた。
おい、それも私の未踏のサンクチュアリだ!

「あら、その娘がスオムスに転属するっていうサーニャさん?」
「そうダゾ、エル姉。わ、私の嫁ダ!」

イッルが太陽みたいに笑う。
そんなに嫁…いや、夜目が嬉しいのか!

「えええー!?そそ、それは私の将来の夢であるお嫁さんですか!?」

エルマ少佐が素っ頓狂な声をあげた。
エルマ少佐の将来の夢ってお嫁さんなんだ…らしいなぁ。
さぁイッル、夜間哨戒のパートナーだって言ってやるんだ!

「そうダゾ!サーニャは私のお嫁さんなんダ!」

YES?YESなのかイッル!?
夜間哨戒のパートナーじゃなくて夜のパートナーじゃないか!!
イッルの隣では色白のサーニャちゃんが茹でダコみたいに真っ赤になっている。
あれ、なにこれ?私失恋なのか?

「どどど、どうして私の周りの人はみんな女の子が好きなんですか!?」

エルマ少佐が狼狽して叫ぶ。
そうだ!イッルは女の子じゃないか!
だからイッルはちゃんと私のお嫁さんになるべきだ!

「いいジャナイカー!ほら見ろエル姉!サーニャはこんなに可愛いんだぞ。それに
優しいんだ。」

イッルが頬を赤らめてサーニャちゃんを誉める。
私はイッルに誉められたことないぞ。
いや、私だって誉められたことぐらいあった!

ーーーーーーーー

あれは何度目の被撃墜をくらったときだったか。
「ニパ、お前がいるとネウロイの攻撃がお前に集中するからすっごく楽ダ。でも
、絶対に死ぬんじゃないゾ!」

イッルはそう言って私に笑いかけたんだ。

ーーーーーーーー

うん、私も誉められたことある。
私の胸に鈍い痛みが走ったのは気のせいだろう。

思い出に耽っている間にイッルとエルマ少佐の話は進んだらしい。
どうやらサーニャちゃんの可愛さに少佐が撃墜されたようだ。

「本当に可愛いですね。ちっちゃいときのエイラさんもとっても可愛かったです
けど。」

エルマ少佐が目を輝かせてサーニャちゃんをなでなでしていた。
隣ではイッルが「サーニャをなでなでしていいのは私ダケダー!」と叫んでいる。
それなら私はイッルをなでなでする権利が欲しい!

「エイラ…」

サーニャちゃんがエルマ少佐のなでなでから逃げ出して再びイッルの腰にすがり
つく。

あぁやっぱりこの二人は夫婦なんだ…
なんで私ばかりこんな目に…本当にツいてない。

私も覚悟決めるかな。

「なぁ、イッル?話があるんだ。」
「どーしたンダ、ニパ?」
「いや、ここじゃできない話だから少し私の部屋に来てくれないか?」

私はイッルを連れ出すことに決めた。

「ん?それはサーニャも連れてっていーのカ?」
「いや、一人じゃだめか?」
「そうか。エル姉、サーニャを頼む。サーニャもしばらくエル姉と待っててくれ
るか?」
「…うん。」

サーニャちゃんが私を窺う。
ぼんやりと眠そうな目が私の心を透かして見ているんじゃないかと感じる。

イッルを少し借りるよ。
心のなかでそう呟く。
サーニャちゃんは全て分かっているかのように私に微笑んだ。

「じゃあイッル、行こうか。」

ーーーーーーーー

「ニパの部屋って相変わらず変わってるナ。」
「部屋に変な人面像があるやつに言われたくねーよ!」
「あれは占いグッズだ。変なものじゃない。」
「私のだって開運グッズだ。変なものじゃない。」

くだらない冗談を言い合う。
なんだ、私たちの間は何も変わってないじゃないか。
イッルが私をからかって私が負けじと言い返す。
そんな子供みたいなやりとりがどうしようもなく大切だった。

私たちは変わってないか?

「なぁイッル?お前の中に私はいるか?」
「はぁ!?いきなり何言ってンダ?」
「イッルは私を覚えているか?」
「どうしたニパ?やっぱり撃墜されすぎておかしくなったか?お前はカタヤイネン
。私の相棒で悪友だろ?」

心にかかる靄がスッと消えていく。
私にはその言葉だけで十分だった。

「行くかイッル?あんまりサーニャちゃんを待たせちゃ悪いしな。」
「おいニパ!話はどうしタ?」
「答えはもう貰ったさ。」

イッルが不満でもありげに私を見る。
この気持ちはやっぱ絶対教えてやらないことにしよう。
それにこんなこと伝えたらバカなイッルはバカみたいに悩むんだ。
新婚さんの邪魔してヘラジカに蹴られたくないしな。

「なにニヤニヤしてんダヨ?」
「イッルには秘密だ!」


そう言って私はイッルに笑いかける。

「なんだよソレー!?」
「さぁなんだろな?自分で考えてみろよ、その色惚けた頭を使ってさ!」
「ソンナンジャネーヨ!!」

ここは私だけの場所だ。
まぁ一番欲しかったイッルの隣はサーニャちゃんに持ってかれちゃったけど。
それでも私もいるならそれでいい。
ここをイッルの大切な場所にできればな!

「ほら行くぞ、イッル!」

Fin.


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