アナタがくれたもの


暖かい。本当にアナタは暖かい。

アナタの優しさで私は満たされる。
そして溢れた優しさで、いつか誰かを満たせたらそれはどんなに幸せだろう。

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「もう、エイラさん!またニッカさんと喧嘩しましたね!」
「だってあれはニパが悪いンダ!」

そうだ私は悪くない。
だってニパが私のタロットはハズれるって言うんだもん。

「どっちが悪いかじゃないんです!いくらニッカさんが悪くても叩いたりしちゃダ
メなんですよ。」

ふん、エル姉はニパの味方なんだ!
悪いのはニパなのに、ニパなのに!

「エル姉のバカ!エル姉なんてニパのとこに行っちゃえ!」

エル姉なんて嫌いだ。
もう誰とも会いたくない。私は一人で生きるんだ。

エル姉のお部屋を飛び出して、私は自分の部屋に飛び込んだ。

私は一人でなんでもできる。訓練だって一番だ。
なにさ、エル姉なんて階級が高いだけのドジじゃないか!

布団に潜った私の頭に、浮かんでくるのは悪口ばかり。
胸が痛くなる。

注いでもらった優しさが、穴のあるバケツに入れたみたいにどんどん漏れていく。
一つ悪口が浮かぶ度、私の心はしぼんでいく。
漏れていった優しさの代わりに、胸にのこったのは痛みだけ。

それでも私は強がるんだ。

私は構わず文句を続ける。
出て行った優しさの代わりに私を満たすのは痛みと後悔。

「ホントにニパのとこに行っちゃったのカナ…?」

すっかりしぼんだ私の心が優しさを求めだす。
でもあんなこと言っちゃったんだ、私は一人になっちゃったんだ。

謝れば許してくれるかな?
でもダメだ。
あんなこと言っちゃったのに自分からは謝れない。

ちっぽけな自尊心にすがりついて謝ることもできない惨めな自分。
どうして私はこんなに情けないんだ。

コンコンとノックの音が部屋に響く。

「エイラさん、いますか?」

大好きなエル姉の声に、しぼんだ心が優しさを求める。
涙がでそうなくらい嬉しかったんだ。

それでも私の口は自尊心にすがりついて開くことをしない。

ここにいるよ。本当はそう言いたかった。
傍にいて。行っちゃやだよ。言いたいことはたくさんあった。
でもやっぱり口は閉じたまま。

「エイラさん、入りますよ。」

返事もしなかったのに、エル姉は私がいるのを分かってくれた。

「エイラさん、布団にくるまってないで出てきてくださいよ。」

ひょっこりと顔を出すと、ぽかぽかした太陽みたいに暖かいエル姉の笑顔が私を
迎えてくれた。

「反省、できたみたいですね。そんなに顔中ぐしゃぐしゃにしてしまって…」

そう言ってエル姉が私の顔をハンカチで拭いてくれる。
いつの間にか私、泣いてたみたいだ。
あまりにも胸の痛みが激しくて、
あまりにも優しさがこぼれた心は寂しくて、
自分が泣いていたことなんて気付かなかった。

そんな私をエル姉は黙って抱きしめてくれる。


暖かい。

それはもちろん人肌の温もりもあるけれど、
やっぱりエル姉の笑顔も心も暖かくて、触れた私の心まで優しさで満たしてくれる。

私はエル姉の腕の中で、必死に、ごめんなさい、ごめんなさいと言い続けた。

「ニッカさんにも謝れますか?」

そう諭すエル姉に私は、うん、と大きく頷いた。
エル姉がひときわ強くギュッとしてくれる。

どうしようもないほどエル姉は優しくて、
私を叱ることはあっても怒鳴ったりなんて一度たりともしなかった。

私も、もっとおっきくなったなら、
エル姉みたいな優しさを振りまく人間になりたいと思ったんだ。
いつか自分に大切な人ができたとき、
私はエル姉からもらった優しさで誰かの心を満たしたい。

私の魔法じゃそんなに遠くは見えないけれど、
未来の私の隣に、思いを注げる大事な人がいるならいいな。
エル姉の腕の中、そう思いながら私はまどろみに落ちていった。


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