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今日何度目か忘れた、口吻。
んふっと艶めかしく息をつぎ、構わず唇を押しつける。
「り、リーネちゃん……どうしたの」
「芳佳ちゃん……」
食事当番の後片付けが終わり、リーネの部屋に誘い込まれた途端にベッドに押し倒され、
あとはされるがまま。
何を聞いても帰って来るのは芳佳の名前と、ディープなキスの嵐だけ。
服を脱がされ、ズボンまでおろされ、二人は産まれたての姿のまま、肌を重ね、唇を重ねていた。
「り、リーネ、ちゃん……」
リーネの“集中攻撃”に耐えきれず、芳佳はぼおっと、少しうっとりとした表情をする。
唇から雫が一筋、垂れる。
リーネは無意識に舌を舐めると、またしても芳佳の唇を奪った。
そこで芳佳の頭から耳が生え、リーネの身体を、ついでに自分の理性をぐいと押し留めた。
「ぁあん」
無理矢理身体を剥がされ、息を荒くつきながら、リーネは少しむくれた。
「芳佳ちゃん……私の事、嫌い?」
「ち、違うよ。なんかリーネちゃん、その……」
「どうしたの? いつもと一緒だよ?」
「いや、なんか。いつもより、少し……積極的過ぎるかなあって」
「そう?」
「何か、どうかしちゃったのかなって、少し心配しちゃって……ごめんね」
「私の事、心配してくれるんだ。ありがとう」
「私なら、こう言うこと幾らでも好きだからいいけど、リーネちゃん……」
「ちょっと、急に。……駄目?」
「ううん、全然。でもいきなりだから、少しびっくり」
「気にしないで……」
またしても唇を重ねるリーネ。
「もっとこうして、一緒に、ね」
子猫がじゃれるみたいに、リーネは芳佳に抱きついた。
だが、その先は猫科どころか獲物を狩る野獣宜しく、ひたすら芳佳の身体を貪った。
コツコツとドアがノックされる。リーネは一瞬視線を向けた。
芳佳にはリーネがどんな目をしていたかは分からない。
リーネはノックなど構わず無視して、ひたすら芳佳に没頭した。
芳佳はドアがノックされた事すら気付かず、目前のリーネの猛攻に耐えられず、あっけなく陥落した。
身体が絡まり、こころもきつく結ばれた。
ノックはやがて止み、足音も去り、外は静かになった。
部屋の中では、リーネと芳佳の甘い声だけがこだました。

結びが解け、緩いウェーブになったリーネの髪を左手で玩ぶ芳佳。
「ねえ、リーネちゃん」
「なあに、芳佳ちゃん?」
ベッドの上で乱れた呼吸を整えながら、芳佳はリーネに問い掛けた。と言うよりようやく質問の機会を得た。
リーネは芳佳の顔をふくよかな胸に埋めさせ、母親の如き慈愛の目で芳佳を見つめる。
胸に右手が伸びかけるも、すんでのところで自重する芳佳。
「リーネちゃん。食事当番のとき、坂本さんとミーナ中佐見て慌ててたけど、どうしたの?」
もごもごと恥ずかしそうに口ごもるリーネ。
「坂本さん酒臭かったし、ミーナ中佐機嫌良かったし……あ!」
「そ、そう。そうなの芳佳ちゃん」
「朝からあの二人お酒飲んでたんだ!」
じとっとしたリーネの視線に気圧されて、頭をかく芳佳。
「ち、違うのかな」
あはは、と乾いた笑いを出す芳佳を、ぎゅっと抱きしめる。ますます胸の谷間に顔が埋まる。
「芳佳ちゃん、鈍いんだから」
胸に挟まれ声にならない声を出す芳佳。
「少佐の身体……キスマークだらけだったんだよ? 中佐もそう」
「そ、そうなの? 私、坂本さんの服のボタンが欠けてるのしか分からなかった」
「ちょうど胸のところも無くなってたからね……って芳佳ちゃん、どうして胸ばっかり見てるの?」
「ち、違うよリーネちゃん! 誤解、誤解だから。ボタン取れてたのがたまたま胸だっただけで……
ほら、ミーナ中佐の胸のボタンは何ともなかったよ?」
「また胸!」
「ああん、違うよ! リーネちゃん誤解!」
「もういいもん」
ぎゅっと胸と腕で芳佳を窒息させる。苦しい苦しいともがくが、ちょっと嬉しそうにも見える。
暫く戯れた後、芳佳はリーネの上からゆるりと抱きしめた格好で、質問の続きをぶつけた。
「キスマーク……って事は、ミーナ中佐が?」
「やっと気付いた」
「私、そう言うのあんまり見ないから」
「芳佳ちゃんは胸さえあればいいの?」
「とと、とんでもない!」
ヤケになって否定する芳佳で遊んでいる風に見える。リーネは悪戯っぽく笑うと、言葉を続けた。
「私の推理だけど……きっと中佐、少佐とお酒飲んで、お昼まで……ずっとしてたんだと思う」
「えええ?」
「声が大きいよ、芳佳ちゃん」
「ご、ごめん。……二人はそんな事する様には見えないけど」
「芳佳ちゃん、鈍いんだから」
「ごめんね」
「でも、そう言う汚れの無い芳佳ちゃんが、私好き」
「ありがとう。私もリーネちゃんの事好きだよ」
「胸だけじゃなくて?」
「だけじゃないもん」
「じゃあ、証明して」
リーネは芳佳を抱きしめた。
芳佳はそっと、リーネに唇を合わせた。リーネは足りないとばかりに、芳佳の耳を片手でかき分け、
唇を這わせ、首筋をきゅっと吸った。
「リーネちゃん……」
「私も、つけちゃう。芳佳ちゃんもつけて」
笑顔で言うリーネ。少し困った顔をする芳佳に、リーネは言葉を続けた。
「そうすれば、お互い分かるよ。中佐と少佐みたいに」
芳佳はリーネを見つめた。瞳の奥、深く濃い情念が深淵となって芳佳を見つめ返す。
芳佳は言われた通り、リーネの首筋にひとつ、キスマークをつけた。リーネもお返しとばかりに、
鎖骨のまわり、乳房の周りと、次々にマーキングする。
芳佳も同じ事をして返した。
一通りつけたあと、二人して、微笑んだ。
気怠い昼下がり、夕食の準備まで自由時間はあと僅か。
時間を惜しむかの様に、二人は身体を重ね、心をひとつに合わせた。

end



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