恋は雨空に謳う


病室の窓から空を見る。

私が今こうしてる間にも、お姉ちゃんは空を駆けている。

誇れる私の格好良いお姉ちゃん。
頼りになって、優しいお姉ちゃん。

私はそんなお姉ちゃんを愛してる。


――恋は雨空に謳う――


「クリス、具合はどうだ?」
「あっ、お姉ちゃん!
あれ、お姉ちゃん一人?」
「ああ、エーリカは一応起こしたんだが…。
いくら起こしても起きないから、置いてきたよ」
「アハハ、そうなんだ。…でも」

私はお姉ちゃんの手を取る。

「お姉ちゃんと二人きりになれたから、これでいいよ」
「クリス…嬉しい事を言ってくれるな」
「ねえ、お姉ちゃん」
「なんだ?」
「いつもの、して」
「ああ」

私達はキスをする。

私達は血が繋がっているのに、お互いを姉妹以上として見ていた。
このキスはその表れ。

と言っても、小鳥が啄むような触れるだけのキス。

「エヘヘ、またしちゃったね」
「まったく、毎回お前の誘惑には負けないようにしてるんだが…どうしても負けてしまうな」
「お姉ちゃん、私には甘いよね」
「そうか?」
「やっぱり、シスコンってヤツ?」
「何を言っている。私はただお前が愛しいだけだ」
「フフフ、それをシスコンって言うんだよ」



こんな他愛も無い話をしている時間は私にとって幸せで。
永遠に続けば良いのにって思えるほどに。


――翌日

「…雨か…」

私は雨が嫌いだ。
だって病室にお姉ちゃんが来てくれないから。
何より、お姉ちゃんの格好良い姿を思い描く事が出来ない。

だから雨は嫌いだ。
私とお姉ちゃんの間を裂くから。

雨音がやけに耳に入る。
その音は私にとって不愉快以外の何物でも無くて。

ああ、早くこんな雨なんか上がれば良いのに……
そうしたら、お姉ちゃんにまた逢える…

そんな事を考えてたら、いつの間にか私は眠りに落ちてしまった。

―――――――――――――――――――

「クリス、おいで」
「お姉ちゃん…」
「私はもう、お前とは姉妹でいたくない」
「えっ…お姉ちゃん…なんでっ…!?」

すると、お姉ちゃんは私をギュッと抱き締めて。

「私は…もう我慢が出来ない」

私はお姉ちゃんに押し倒される。

「お…姉ちゃん…//////」
「私は自分では自制の利く方だと思っていたが…どうやら違ったらしい」
「…//////」
「クリス……」

―――――――――――――――――――


……ん……

ああ、がっつり寝ちゃってたなあ。
…まだ雨降ってるや…ハァ…

「よく眠れたか?クリス」
「うん……ってお姉ちゃんっ!?」

私の目の前には、お姉ちゃん。
それだけで眠気が嘘のように全部吹き飛んだ。

「なななななんでっ…!?」
「なんでって、お見舞いに決まっているだろう?
クリスはおかしな事を聞くな」
「でも、雨の日はお見舞いに来れないんじゃ…?」
「ああ、それはたまたま雨の日が忙しくてな、お見舞いに行けなかっただけなんだ。…もしかすると寂しい思いをさせてしまったか…?」
「えっ、う、ううん、そんな事無いよ!そんな事無い!」
「そうか、なら良かった」

と、お姉ちゃんは柔らかく笑う。

実の姉に向かって“可愛い”って思ってしまった私はどうかしてるのかな…?

「それにしても、笑いながら寝ていたな。どんな夢を見ていたんだ?」
「えっ…//////」

まさかお姉ちゃんに押し倒される夢を見てた、なんて口が裂けても言えるワケ無いっ…//////

「な、なんの夢でもいいでしょ//////」
「ハハ、むくれるなむくれるな」

そう言ってお姉ちゃんは私の頭を撫でる。
お姉ちゃんの掌の温もりは、私の胸の鼓動を更に早める。
お姉ちゃんに「好き」だって伝える事が出来たらどんなに楽だろう。

そんな事を考えていたら。


「で、クリス…。度々申し訳ないんだが、これからまた少し忙しくなりそうなんだ。しばらくお見舞いには来れないかも知れない」
「そう、なんだ…」

分かってはいるけど、やっぱり寂しいな…

そんな私の気持ちをお姉ちゃんは表情から察したのか、お姉ちゃんは、

「クリス」
「なに、お姉ちゃ…んっ…」

無理矢理キスした。

キスだけならいつもしてるし、何て事は無い。

だけど、今日のキスは違う。
深くて、熱いちょっと乱暴なキス。

油断していた私は、すっかり茹で蛸みたいになっていて。

「お姉…ちゃん…//////」
「今はこれで勘弁してくれないか?
今お前と結ばれてしまうと仕事に支障が出てしまうからな。
お前への返事はまた後日、という事にしておくよ」
「フニャ…////////////」
「私はそろそろ帰るとするよ。
今日は雨も降っているし、冷えないようにな」
「う、うん…///」

そう言うと、お姉ちゃんは病室から出て行った。


キスの余韻で頭がグルグルしている私に、ふと疑問が降りてきた。

「……私、お姉ちゃんにいつ告白したっけ…?」

……………………………私、もしかしたら寝言で…言っちゃったっ…!?



ああああああああああああ――――――――――!!!!

はっ、恥ずかし過ぎるっ…!!//////
私バカだ!
そりゃそうだよ!寝顔見てたなら、寝言も聞いてるよ!
っていうか私、寝言で告白してたのっ…!?

「……もうダメだ…恥ずかし過ぎて死にそう…/////////」


私は赤くなったままかけ布団を被って、また眠りに落ちた。


それから数日間、私はお姉ちゃんといろいろする夢にうなされる事になる。

お姉ちゃんの…バカ…!//////

―――――――――――――――――――

「なあ、リベリアン」
「んあ?なんだよ、堅物」
「好きな相手を弄るというのは、意外と楽しいものだな」
「?????????……あ、ああ……」

END


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