awakening march


芳佳ちゃんは何を考えているんだろう?
やっぱり……胸の事なのかな。
この前も「おっぱ、おっぱ……」って寝言呟いてたし。
どうして、芳佳ちゃん?
確かに私は胸以外に魅力が無いかも知れないけど……。
でも、シャーリーさんだって……はっ、いけないいけない。
人の悪口はいけないってお母さんに言われたんだった。
あ、芳佳ちゃん起きた。おはよう。
「おっぱ……。……く、苦しいよリーネちゃん」
思わず窒息させかけてた。ごめんね芳佳ちゃん。そんなつもりじゃなかったの。
「どうしたのリーネちゃん、いきなりおっ……胸に顔埋めさせて」
「だって……芳佳ちゃん、言うから」
「へ? 私何か言った?」
ついさっきの夢も覚えてないの? 呆れた。こう言うところも鈍いんだから。
そんなんだから、ペリーヌさんに侮られて、バルクホルンさんには怒られて、
少佐に稽古でしごかれるんだよ? 分かってる?
「え? 何が? いきなり分かってるって言われても」
あ、ゴメン。最後だけ言っても分からないよね。朝からごめんね。
「リーネちゃん、昨日の夜、その、嬉しかった」
「うん、私も。芳佳ちゃんと一緒で……色々、嬉しいよ」
芳佳ちゃんも私も顔が真っ赤。朝なのにこんなので私達大丈夫なのかな。
ちょうど今日は食事当番じゃないから大丈夫だけど、うろたえてたりしたら
他の皆さんに何て言われるか……。
……でも、エイラさんは何故かサーニャちゃんの事になると妙にうろたえるし、
バルクホルンさんも何だか最近ちょっと照れたり、時々意外な面が見られる。
この部隊って楽しいのかもしれないね。
何よりも、芳佳ちゃんと一緒に居ると、力を分けてもらえるよ。
芳佳ちゃんの元気もそうだし、魔力も……。
そのお陰で、この前もネウロイを倒したんだよ、私のボーイズで。
芳佳ちゃんと力を合わせると、遠くの見えない敵も見えるし、
不思議と、風も読める。弾丸も私の思う通りに飛んでいく。
芳佳ちゃんが来る前はそんな事考えも出来なかった。芳佳ちゃんのお陰だよ。
「リーネちゃんどうしたの……」
あ、また芳佳ちゃん抱きしめちゃった。抱きしめる癖でもついたのかな。
でも芳佳ちゃん喜んでるし、いいかな。
「芳佳ちゃん、今日は洗濯当番だね」
「うん。頑張らなきゃ。私、戦うのは苦手だけど、こう言う事なら慣れてるから」
「芳佳ちゃんも凄いよ。魔力が凄いんだから。もっと自分を誇っていいんだよ?」
「それはリーネちゃんだよ。この前なんて基地からネウロイ狙撃したし
ついこの前は一撃でネウロイをのしたんでしょ? 私には出来ないよ」
「芳佳ちゃんの、お陰なの」
「私? 何もしてないけど」
芳佳ちゃんの手を取る。あったかい。心も同じ様に、ほかほかなんだね。
私には分かるよ。他の人と違ってそんなに強くたくましくはないけど、
この華奢な腕で、みんなを守って、その気持ちも強くて。
羨ましいよ。そのちからと想い、少しでも分けて欲しいな。
「お願い、芳佳ちゃん」
「ほえ? 何が? お願いって?」
「ああ、ううん。何でもないの」
「リーネちゃんの願いなら、何でも聞くよ? 勿論、私に出来る事なら、の話だけど」
「芳佳ちゃんにしか、出来ない事」
「私に?」
芳佳ちゃんの手を、そっと私の胸に重ねる。
……何で揉むの、芳佳ちゃん。
「ぅわっ、ご、ゴメン、リーネちゃん。手が勝手に」
「もう、芳佳ちゃんたら!」
「ご、ゴメ……んがっふぐ」
芳佳ちゃんをもう一度、顔に埋めてみる。苦しむ芳佳ちゃんもそれはそれで面白くて
何だかなごむ気がする。

芳佳ちゃんはようやく私の胸から抜け出すと、顔を私に近付けてきた。
顔が赤い。息切れしてるのかな。それとも。
「リーネちゃん、やっぱり私ダメ。もう……」
言いたい事わかるよ、芳佳ちゃん。私も……。

長い、キス。何度したか分からないけど、もっと、何度でもしたい。
何度もお互いの名前を呼び合って、とってもキモチがよくなって……。

顔が離れる。少しでも芳佳ちゃんを感じていたくて、
ぎゅっと抱きしめる。芳佳ちゃんも私を同じくらい強いちからで抱きしめてくれる。
お互いの呼吸、肌の温もり、脈の速さが伝わってくる。
これだけでも、気持ちがあったかくなれる。
もうすぐ行かないと、朝の食事に間に合わない。
でも、たまにはこうして、時間を忘れて、ふたりで居るのも良いかも。
あとでまた中佐と少佐に怒られるんだろうな。
だけど、芳佳ちゃんとなら構わない。
一人で怒られるのは嫌。でも、芳佳ちゃんとなら。
怒られるだけじゃない。
どんな困難も、どんなに強いネウロイが来ても、芳佳ちゃんと一緒なら、
乗り越えられて、倒せそうな気がする。
きっと気のせいじゃない。間違いじゃない。
だって、その証拠に、芳佳ちゃんは私と息のリズムが一緒。
不思議だね。どんどんちからが沸いてくる。
「リーネちゃん、そろそろ食事行かないと……」
ダメ、芳佳ちゃん。
私は芳佳ちゃんの唇を塞いだ。それ以上は言わないで。
あと、もう少し、私とつきあって。
ううん、出来ればずっと一緒に。
私だけの芳佳ちゃん。

end


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