幸せの方程式と継続戦争の始まり


どうやらエル姉のお説教を聞き流して思想に励んでいたことがマズかったらしい。
なにかエル姉がしきりに、教育に失敗してしまいました、と呟いていてとても怖かった。

そんなエル姉が、私に再教育を施すという理由で私をエル姉の部屋へと呼ぶのを断れるわけないじゃないか。
だって今日のエル姉はなんだか怖いんだもの。

「エイラさん、私は確かにアナタへトモコさんから学んだ戦う術を全て教え込んだと思っていました。
でも、なにやらトモコさんのダメな部分まで真似をさせてしまったようです…」

うー、私が一体なにをしたって言うんだよー。
どうしてサーニャにもニパにもエル姉にも怒られなくちゃいけないんだ…

「そう、エイラさんは少し女の子にだらしなさすぎます!本当にトモコさんみたいです…いつかエイラさんも獣に、獣になるんです…。」

なにかエル姉がトラウマでも思い出したかのごとくガクガクと震えながら述べる。
確かに伝説の中隊を率いたていう穴拭智子って人は女の子を落とすのも伝説的な腕前だったって聞くけど、でも…

「それは全然私と関係ないじゃないカー!」

私はただサーニャとニパの喧嘩に巻き込まれただけで…まぁ喧嘩の原因は私にあるみたいだけど。
それに第一私は女の子とふしだらなことなんてしたことないぞ。

そりゃあしたくないかと言われたら…私はソンナ目でサーニャを見てないぞ!絶対
に見てないぞ!

「なにを言ってるんですかエイラさん!関係大有りですよ!むしろどこからその自信が出てくるんですか!」

エル姉が可哀想なものを見るような目を私向けている。
私をソンナメデミンナー!!

「もう…エイラさんはもう少し女の子の気持ちを考えてあげるべきです!」

うー、そんなコト言われても。
それに…

「エル姉!私はそんなに鈍くないゾ!」

うん、そうだ。私は鈍くない。
鈍いっていうのはバルクホルン大尉みたいなことを言うんだ。

「本当ですか?信じられませんね…。」

さっきからエル姉にバカにされてるように思えるのは気のせいだろうか?
なにかものすごく悲しくなってきたぞ。

「本当ダッテ。予知の魔法やタロットを使う私に分からないことなんてないンダ!」

自信を持って答えたのにやはりエル姉は私に疑いの眼差しを向ける。
どうして信じてくれないんだよ。

「じゃあエイラさん、私が考えてること分かりますか?」

エル姉はやっぱり私をバカにしているのかもしれない。
だってあの単純なエル姉だよ。
エル姉は美味しいものを食べれば一日中ニコニコしてるし、叱られた後はずっと落ち込んでる。
誉められたときは廊下でスキップしちゃうし、悲しい話を聞いたら自分のことみたいに泣いてしまう。
そんなエル姉がなにを考えているかなんてそれこそ誰にでも分かることだ。
それともエル姉はそんな自分に気づいていないのだろうか?
私には正解を答えられて驚くエル姉の顔がありありと見える。

「そんなの簡単ダヨ。どうせエル姉は今日の晩御飯のことかペンギンの可愛さに
ついてでも考えてたんダロ?」

どうだ!正解だろ~、と私は自信満々だ。
エル姉の顔は私の予測通り驚愕の情を携えていた。

「ダメです…本当にダメな娘ですエイラさんは。これはやっぱり再教育が必要です。至急エイラさんに情操教育を施さなければ大変なことになります…」

あれ?でもなにかおかしい。
エル姉はまたぶつぶつと呟いていてやっぱりどこか怖い。

「私が…私がエイラさんに女の子の心というものを教えてあげます!!」

いきなりエル姉が叫ぶ。
その表情はいつものふわふわと優しい表情とは異なっており、頬は真っ赤に染まりなにやら緊張した様子だった。

「エイラさん…」

エル姉は私の名前を呼ぶと、私の右腕をつかんで自分の胸へと押し付けた。

えっ、押し付けた?
私の手のひらには小さいけれども確かに感じる柔らかさと暖かさ。
うん、まっ平らかと思ってたけどそんなことなかった。

「えええー!!ど、どうしたんだよエル姉っ!!!」
「ん、感じませんかエイラさん?」

たた、確かにとても現実のものとは思えないような柔らかさと暖かさを感じている真っ最中だけど…

ムニムニ。ムニムニ。

うん、私は今、確かに気持ちよさを感じております。

「んっ…どっ、どうして揉むんですかー!」
「えっ!違うのカ!?」

だってエル姉が私の手を胸に押しつけたんじゃないかー。
一体それ以外に私にどうしろって言うんだよー。

「胸じゃないんです!心臓です、心臓の鼓動が分かりませんか?」

あぁ、確かに感じる。
エル姉の心臓が強く高鳴っているのを感じる。
それにしてもすごくはやい。
それにまだはやくなっていく。
エル姉は心臓をあまりにもはやくならしているからなのか、頬はさらに赤く染まり、肩で息をしている。
その頬に触れるととても熱く、エル姉の感情の高まりを感じられた。

「どうしてなのか分かりますか?」

エル姉が私の耳にそっと囁く。

「どういう意味なんダ?」

囁かれた言葉の意図が分からず私は聞き返す。

「どうして私の心臓がこんなことになってるかが分かりますかって言ってるんですよ。」

エル姉は優しく私の疑問へと答えてくれた。
そんなエル姉に対して私は誠実に答えなくちゃいけないって思ったんだ。

「ううん、ゼンゼンわかんないヨ。」
「エイラさんのバカー!!!!!!!」

そしてやっぱり私は怒られたんだ。
結局エル姉も怒っている理由は教えてはくれなかった。
ヒドい話だと思うだろ?


その日の夜に私が部屋に帰ると、私のベッドの領地分割はさらに進んで3分割され
ていた。
それが私をさらに悩ませるんだ。

サーニャ、ニパ、エル姉。
どうして3人とも私の部屋にいるんだ?
そしてなぜそんなに怒りを私にぶつけるんだ?
私は今日も私に対する怒りに囲まれて寝ることとなった。

Fin.



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