その蒼に君を見る
「綺麗な青空だね、芳佳ちゃん」
「うん、久しぶりだよね、こんなに綺麗に晴れるなんて」
私の密かな楽しみ。
芳佳ちゃんといつもの場所で、空を眺める事。
ただそれだけ。芳佳ちゃんと一緒にいる事が出来れば、他には何もいらないから。
こうして、芳佳ちゃんと空を見ながらお喋りする事が私にとっての贅沢。
だって、芳佳ちゃんを独り占め出来るから。
芳佳ちゃんは人気があるから、なかなか二人きりでは話せない。
そんな芳佳ちゃんと二人きりになるのは、この僅かな時間だけ。
「…お母さんやおばあちゃん、みっちゃんは今頃どうしてるかなあ」
「元気だよ、きっと。だって芳佳ちゃんがこんなに元気なんだもん」
「えへへ、なんだか照れちゃうなあ///」
ほら、この照れたような笑顔。
この笑顔が見たくて、私はいつもわざと歯の浮くような言葉を芳佳ちゃんに言う。
私が芳佳ちゃんの事を好きな気持ちは、多分いくら言葉があっても言い表せないと思う。
今ある言葉では、とてもじゃないけど芳佳ちゃんにこの気持ちを伝えれそうには無いから。
今はまだ、この気持ちは閉じ込めておく事にする。
告白する時も芳佳ちゃんのビックリした顔が見られると良いなあ。
柔らかな風が吹く。
「気持ちいい風だね、芳佳ちゃん」
「うん、なんか心が落ち着くよ」
思えば、芳佳ちゃんが初めてこの基地に来た時。
こんなに芳佳ちゃんと仲良くなるなんて思わなかったな。
私は芳佳ちゃんのおかげで変われたんだ。今までの自分が嘘だったみたいに。
芳佳ちゃんがいなかったら、私はここにはいなかったかも知れない。
芳佳ちゃんには感謝してもしきれない程の想いがある。
「ねえ、芳佳ちゃん」
「なに、リーネちゃん?」
「本当に、ありがとう」
「なっ、なにいきなり」
「私本当に芳佳ちゃんに感謝してるんだ。私をここまで変えてくれたのは芳佳ちゃんなんだ」
「リーネちゃん…」
「本当に…ありがとう」
私はキョトンとする芳佳ちゃんの頬に優しく、口付けた。
「リーネちゃん…!//////」
「…ほら、行こう!」
私は赤面する芳佳ちゃんの手を引いて走り出す。
「また、明日も晴れるといいね!」
「…そうだね!」
青い空が徐々にオレンジ色に染まっていく。
今日はもう青空は見られないけど、私達の中にはあの青空が残ってる。
また、明日も綺麗な青空が見られますように。
芳佳ちゃんの手を握りながら、そう願った。
END