無題
あれからフラウが食堂に向かった後
すぐに食堂に向かう気になれず
ベットの上で
「あー」とか「うっー」
うめき声を上げもんもんとしていた
やっとの事で食堂に向かうとすでに全員が食事を取っていた
「あら?トゥルーデ遅かったわね」
「ああっ、少しトイレに行っていたからな」
「そうなら良いのだけど・・・・・なんだか顔が赤いみたいだから
・・・・もしかして風邪かしら?」
そう言っておでこに手を乗せようとするミーナを避けつつ
「だっ大丈夫だ、今日は少し暑いからな」
「そう?でも夏風邪には気をつけてね」
「あぁ」
内心をさとられてないだろうかとヒヤヒヤしつつ、何時もの通りフラウの隣に座った
「遅かったね」
「ちょっとな」
お前のせいだよと言いたいが、隊のみんなも居るのでここは堪えた
かわりに恨めしそうな目で視線を送ったが伝わらなかった
フラウは何時も通りに元気にご飯を食べていたが、
私はなんだか胸がモヤモヤとしているので、なかなか食べれなかった
「あっ!それ食べないの?いただき!」
そう言って私のジャガイモを一瞬で取った
「あっ」と言う間にもうフラウの口のなかに収まってしまった
「こら!人の物を取るな!」
「ごめんごめん、でもトゥルーデ食欲無さそうだったから」
「・・・・そんなことは無いぞ」
「そっかでも今は食欲より性よ」
「なに言ってるんだお前は!」
「むーむー!」
とっさにフラウの口を手で覆う
「ぷはっ!いきなり何するの」
「お前!みんなの前で何言おうとしてるんだ!」
「え?だからトゥルーデは食欲よりあれで胸がいっぱ」
また手で口を塞ぐ
「もういい頼むから黙ってくれ・・・」
「ぶはっ!しょうがないな~
さて、ごちそさま~!」
いつのまにかフラウは食べ終わっていて、食器を片付けに行った。
部屋に戻ろうとして何かを思い出したかのように私の元に戻ってきて
耳元で
「我慢できなくなったからって一人でしちゃダメだよ?」
「なっ!」
「じゃ私午後から訓練だから!ばいば~い」
「あっおい!待て!」
と言った時にはもうフラウは居なかった。
まったくなんて奴だ・・・
とにかく私も早く食べてしまおう
そうして食べていると
「おいおい随分良いように遊ばれてるな大尉殿」
「リベリアン・・・・」
「お前のそんな焦ってる姿初めて見たよ。やっぱ相手がハルトマン中尉だからか?」
「さぁな」
「しかしいくら仲が良いからって真っ昼間からするには、早くないか?」
こいつ、もしかして気づいてるのか・・・・・
いやそうとも限らない
これは罠だ
「なにを言ってるのか分からんが、私とハルトマンは昼は別々に居たぞ?」
「ふ~ん」
なんだこいつの目は
とにかく早めに撤退しよう
これは戦略的撤退だ。うん負けではない
「まっいいけどさ、でも一人ではするなとはハルトマン中尉も酷だねぇ」
「ぶっ!」
こっこいつ聞こえてたのか?
「ゲッホ・・・おいお前・・・」
「あぁ私は兎だからね、足も速いけど耳も良いよ」
そう言って手を頭に乗せ兎の耳のようにする
なんだかんだで似合ってるのが無性に腹が立つ
「でもさ一人がダメなら二人ならいいんだろ?」
「??」
「鈍いなぁ~だから私が相手をしてやろうかって聞いてんだよ」
「なっ!」
なにを言ってるんだこいつは!?
「どうだ?たまには違う相手とするのも悪くないかもしれないかもよ」
本気で言ってるのかこの兎は?
ニヤニヤとした顔で私を誘惑してくる
あぁしかしその誘惑に負けそうな自分が居る
この熱い疼きをどうにかしたいと・・・・
それに気づいて愕然とした
私はだれでもいいのか?
――いいやそんなわけは無い
私の相手はただ一人だけ――
「ふざけすぎだリベリアン」
そう言った私の声は無意識のうちに怒気を孕んでいたのだろう
それを聞いてシャーリーは
「性格も堅いが身持ちも堅いとは
まさに堅物だな」
肩をすくめそう言った
「まぁここでホントに乗ってきたら
困ってたけどね
私だって身持ちは堅いんだよ」
にわかに信じられんな
「おいおいそんな疑うような目でみるなよ。
しかし面白かったよ大尉殿、いつもは堅いお前の顔が、赤くなったり驚いたりして
まるで百面相のようだったよ」
「っこの!」
「おいおいそんなに怒るなって、ほんの冗談だよ」
「質の悪い冗談だ」
「ははっ悪かったよ、んじゃ私も午後から訓練だから」
そう行ってシャーリーは出て行った
なんだか今日はいろんな奴に遊ばれてる気がする・・・・
今日は特に訓練の予定も入ってないので、特にやることは無い
本当なら自主的に訓練をしたり、ストライカーを見たりするのだが
どうにもそんな気分になれない
あぁ私はこんなにも欲望に弱い人間だったとは・・・・
いや多分弱くさせられたのだろう
でも不思議と嫌では無いのはなぜだろうか?
やはり心を許せる人間が居るというのは大きい
人間いつまでも張り詰めたままで居るのは無理なのだから
とにかく部屋にも戻ろう・・・・
それからフラウの部屋の掃除でもしてやろう
フラフラと部屋に向かって居ると
ミーナと坂本少佐が居た
「っ!」
物陰に隠れて居る二人だが、ここからだとちょうど見える
二人がそういう仲だとゆうことは知っていたが
いざ旧知がキスしてる所をみるとなんだか変な気分になる
まぁ忙しい二人だからな、こうい合間合間でしか会えないのだろう
ここは気配を消して消えるのが部下の勤めというものだ
――トゥルーデの部屋
ミーナと坂本少佐を見て余計変な気持ちになってしまった
力なくベットに倒れ込むとかすかに香る匂い
そういえば最近とくに一緒に寝ることが多かったらなぁ
いつのまにか自分の匂いだけでなく、他人の匂いの混じった布団
それがなんだか無性に嬉しくて、ついにやけてしまう。
それにハッと気づいてすぐに顔を引き締めた
・・・・なにを一人で百面相をしてるんだわたしは
自分一人しか居ないの無性に恥ずかしくなった
はぁ時間を無駄に過ごすのは性分に合わない
フラウの部屋の掃除をしよう
――エーリカの部屋
ちょっと前に掃除してやったのに・・・・
これはある意味才能だな
散らかった部屋を眺めつつそう思った
それでも慣れた物で片付けを始めた
基本的には要る物と要らないもに別ける
「あぁ十字章をまた床に置いて・・・・」
「あいつって意外に酒に強いなぁ」
などと言いつつ手は止めず
すぐに分別が終わった
「ふぅとりあえずこんな物か」
時間はそろそろ夕方に差し掛かろうとしていた
「やれやれ今日はなんだかんだで疲れた」
そう言って一息つくために横になったベットは
フラウの匂いがして
あぁやはりこの匂いは落ち着く・・・・・
などと思いながらトゥルーデは夢の中へと落ちていった
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「ーデ・・・トゥルーデ・・・起きてー」
「あぁ寝てしまったのか・・・ん?」
体が動かない・・・?
目を開けるとそこには見慣れたフラウの顔
そして私に覆い被さっている
まるで朝とは位置が逆だなぁ
と寝ぼけた頭で考えていると、首を吸われた
「んっ・・あっ!」
「目覚めた?」
「どういうことだ?」
「どういう事だじゃないよー
折角訓練終わってお風呂入って
トゥルーデの部屋行ったら居ないからさぁ
しょうがないからトゥルーデのベットでごろごろしてたけど
なかなか帰ってこないから、一端自分の部屋に帰ってみようと思ったら
トゥルーデが私の部屋にいるんだもん」
「それはお前の部屋が汚いから・・・・・」
「あぁ掃除してくれてたんだ、ありがと
でもさぁ、私の気持ちとしては、さぁ!と意気込んで行ったのに
なんだか肩すかしを食らった気分でよけいもんもんとしてたんだよ?」
「・・・・そんな事言われても・・・・・」
「むー実は私もあのときからずっと我慢してたんだよ?
トゥルーデみたいに顔には出さないけどさ」
「・・・そうなのか?」
「そりゃそうだよーあんは中途半端で止められちゃね。
だから・・・」
「だから?」
「昼の続きをしようか?」
「・・・・いまからか?」
「もちろん!――それに」
「んっ!」
「トゥルーデだってこんなに敏感に反応しちゃって
ずっと我慢してたんでしょ?」
「・・・・・」
分かっている
フラウには逆らえないという事は、
それに私自身も我慢の限界だった
ようやく覚醒してきた思考は、すでにフラウの事だけを考えていて
昼と同じように頬をくすぐるのは甘い吐息
言葉が無くても気持ちは同じ
二人はどちらともなく唇を近づけた――
終わり