熱暴走
今日はいつもよりも早く目が覚めてしまった
時計を見るとそろそろサーニャが夜間哨戒から帰ってくる頃だろう
「よしサーニャを迎えに行ってあげよう」
サーニャ驚くかな?
喜んでくれると嬉しいな
おかえりって言ってあげて
ただいまと返してもらおう
サーニャは嬉しいと顔を赤らめもじもじするのからなぁ
あれはいつ見ても可愛い
はっ!いかんいかん想像したら顔がにやけてきた
ビシッとした顔でサーニャを迎えねば
・・・しかし朝早いだけあって静かだなぁ
この時間起きてるのもしかして私だけじゃないだろうか?
なんだかいつもは騒がしい隊舎がこれだけ静かだと
いつもと違う場所のようだ
澄んだ空気が少し肌寒く感じる
なんだか隊舎で一人っきりのような気がしてきて無性にサーニャに会いたくなる
「・・・はやくハンガーに行こ」
早くサーニャに会いたいな
そんな事を考えていると無意識のうちに歩くの速くなっていた
さて到着っと、まだサーニャは帰ってきてないな
おっ?誰か居る
あれは・・・・坂本少佐?
なんでハンガーに居るんだろ?
そういえば少佐は毎朝早くから訓練をしているらしい
しかし飛行訓練をするわけでもないのになぜここに?
どうにも話しかけるタイミングを逃してしまい
少佐の後ろ姿を眺めていると、サーニャのエンジン音が聞こえてきた
「おっ帰ってきたか」
少佐はサーニャを待ってた?
ってなんで私は物陰に隠れてるんだろ
少佐と一緒に待ってばいいのに
「おかえりサーニャ」
「坂本少佐?・・・・ただいま戻りました」
「あぁご苦労だったな」
「・・・・いえ任務ですから・・・」
「ハッハッサーニャは真面目だな。しかしサーニャが居るおかげで私たちは安心して眠ることが出来る
本当にいつも助かっているぞ」
そういって坂本少佐はサーニャの頭をなでる
なっ!なんて事を!
サーニャのあの柔らかな髪を撫でるとはなんて羨ましい!
うっうしかし完全にここから出られなくなってしまった
「・・・いえ」
「そう謙遜するな、いつもありがとうなサーニャ」
「・・・・はい」
そう言って俯き加減に顔を赤らめているサーニャ
坂本少佐は笑いながら優しくサーニャを撫でている
なんだか嬉しそうなサーニャの顔を見てると
とてもじゃないが間には入れない
・・・しょうがない帰るか
なんだか邪魔をしては悪い気がして
気配を殺し、ハンガーから出た
あぁなんだか行きとは逆で帰りは足が重い
別にサーニャが少佐に感謝されて頭を撫でられただけなのに
その事が気になってしょうがない
・・・・思ってた以上に自分は独占欲が強いらしい
もしサーニャが私以外の人と・・・
そんな事を考えるとたまらなく胸が苦しいしくて
情けない自分にちょっと涙が滲んできた
こんな顔をサーニャに見られるのは恥ずかしい
必死にシーツに顔を擦りつけ涙を拭き、顔を見られないように俯せでサーニャを待つことにした
その頃サーニャ――
坂本少佐に頭を撫でられ感謝された
頭を撫でてもらうのなんていつ以来だろうか
そうだ昔家族と暮らしていた頃・・・
一生懸命ピアノの練習をしてお父様に褒めてもらった時だ
あの時は、お父様の大きな手で優しく撫でてもらい嬉しかった
当時はもっと褒めて貰おうと一生懸命練習したものだ
まさかこの年になって頭を撫でてもらうとは思っても見なかったな
やっぱりだれかの役に立てるのは嬉しいし、褒められのも嬉しい
そんな事を考えるとエイラの部屋の前に着ていた
実は着陸するとき見えた人影が坂本少佐では無くて迎えに来てくれたエイラだと勘違いした自分が恥ずかしい
・・・・・エイラに頭撫でてもらったらどんな気持ちだろ?
きっと他のどんな人よりも幸せな気持ちになれるのは間違いない
いつものようにエイラの部屋に入る
ちゃんと服は畳まなくてはと分かってはいるのだけれど、ついついエイラに甘えてしまって
床に脱ぎ散らかしてしまう
ベットを見ると俯せでエイラが寝ていた
・・・・・苦しくないのかな?
そう思ってエイラに近づく
私の大切な人
いつもいつも迷惑を掛けてしまう
エイラが居なければ私はこの部隊ではやっていけられなかっただろう
いくら感謝しても足りないくらいエイラに頼ってばかりの私
でも内気な私は面と向かって彼女にお礼を言えれない
だからせめて彼女が寝ている時くらいは言葉にしよう
「エイラいつもありがとね」
ふと先程の出来事を思い出してエイラの頭を撫でるみる
さらさらの髪が気持ちいい
いつもいつもありがとう
そんな気持ちが通じるにように彼女の頭を撫でる
「大好きだよ」
エイラが寝ているからこそ口に出来る言葉
本人が起きてるときには恥ずかしくてとてもじゃないけど口には出来ない
でも・・・・きっといつか伝えられたらいいな
そんなことを考えているとそろそろ眠くなってきた
倒れ込んだベットは彼女の匂いに包まれていて幸せな気持ちですぐに眠りに落ちた
――数分後
「ぶはっ!」
苦しそうに息をするエイラの顔は息苦しさだけでは無く別の理由で赤く染まっていた
横を向くとすやすやとサーニャが寝ている
――大好きだよ
サーニャの台詞が頭をリフレインする
さっきまで胸につっかえていた出来事など嘘のように吹き飛んでしまった
だがそれほどまでに今の台詞は大きい
大好きだよっか・・・・・
さっきやられたみたいにサーニャの髪を撫でてみる
ふわふわの髪を撫でているととても幸せな気持ちになる
寝ている時にしかこんな事出来ない自分が情けない
それでも今はこの気持ちが彼女に届くように
「私も大好きだぞ」
つい想いが口からこぼれてしまった
サーニャは寝ているのに、なんだかものすごく恥ずかしい
これを起きてるときに面と向けって言うのは、いつになることやら
そんな恥ずかしさを振り払うように
床に散らばったサーニャの服を畳んでいった。
夢と現実との狭間に居るような不思議な感覚
まさに自分は今半分寝ている状態なのだろう
あぁでもそろそろホントに意識が落ちそう――
「ぶはっ!」
?
エイラの声だ
どうやら俯せで寝ていたエイラがいい加減息苦しくなって目が覚めたのだろう
エイラはいつも私と入れ替わるように起きて服を畳んでくれる
ダメだと思ってるのだが、朝エイラの畳んでくれた服を着ると
一日頑張れる気がしてついつい脱ぎっぱなしにしてしまうのは自分の悪い癖だ。
今日はいつもより寝ぼけているのかベットの上でぼーっとしている気配がする
たまに「えへへっ」と嬉しそうな声が聞こえるのはいい夢で見れたのだろうか?
そんな事を考えていると
やんわりとエイラが私の髪を触った
いきなりでビックリして声が出そうになったしまったのを我慢する
優しく私の髪の感触を確かめるようにエイラが撫でてくれる
あぁ気持ちいい
予想通りお父様や坂本少佐に撫でられたのとはまったく別だ
なんだか心の底から暖かくなって満たされていく感じ
これが幸せなのかな
「私も大好きだぞ」
えっ・・・
一瞬脳がフリーズした
ひょいっとベットからエイラが降りた気配がする
多分服を畳んでくれるのだろう
それよりもさっきのセリフが頭のなかをぐるぐる回る
聞き間違えでなければエイラは私を好きだと言ってくれた
・・・どうしよう嬉しくてたまらない
心臓がすごい早さで脈打ってる
おそらく今私の顔は自分でもわかるくらい真っ赤になっているだろう
この顔をエイラに見られるのはまずい
とりあえず俯せになって顔を隠しみる
少々息苦しいがオーバーヒートしそうな自分にはちょうどいい
――私も大好きだぞ
――大好き
――エイラが私を好き
嬉しい
ふふっ私も大好きだぞっか・・・
・・・・あれ?私も?
ここでようやく重大なことに気がついた
まさかエイラ起きてたの?
・・・・どうしようものすごく恥ずかしい
よりいっそう自分の顔が赤くなるのを感じた
あぁまさかこんな形で自分の気持ちがエイラに知られてしまうとは思いもしなかった。
「~~♪」
鼻歌交じりにエイラが服を畳んで足下に置いてくれた
そのままトイレにでも行ったのだろう
エイラは出て行った
エイラの気配が完全に消えるのを完全に確認して顔を上げた
「ぷっは!」
苦しかった
それにしても顔の赤みがまだ引かない。
これは息苦しさだけが原因では無いはずだ。
自分の頬に両手を当ててみると、ビックリするほど熱かった。
どうしようエイラに私の気持ちを知られてしまった
・・・でもエイラも私の事を好きだと言ってくれた。
両思い?
うん、両思いだ
エイラと私は両思い
あぁ嬉しくて眠気など吹き飛んでしまった。
あれ?でもエイラは私が起きていた事は知らないのではないだろうか?
どうしよう今更「実はあの時起きての」とは言えない気がする。
つまり私達は両思いではある事は、お互いに知っているけど
その事を相手は知らないと思っているというなんともややこしい状況にあるわけだ。
そんな事を考えているとカチャリと扉が開く音がした。
エイラが戻ってきたのだ
顔の火照りはまだ取れない
しょうがないので先ほどと同じように仰向けの体勢を取ることにした。
「あれ?サーニャ俯せなんかで寝てる。息苦しそうなのにそんな体勢でよく寝れるなー」
・・・寝てないよ
「えへへっーさて二度寝するかな」
エイラは随分上機嫌だ
まさか私が起きているとは思ってもいないのだろう
ベットに横たわるとすぐに寝息が聞こえてきた。
ふうっと顔を横に向けて一息つく
今後どうしよう?
今の自分はエイラと顔を合わせるだけで、沸騰してしまいそうだ
とにかく早く解決策を見つけないと・・・
あの後結局一睡も出来なかった
それでもテンションが上がっているせいかまったく眠くは無かった
特にすることもないのでぼっーとエイラの寝顔を眺めていた
綺麗な顔だな・・・
「・・・・ん」
どうやらお目覚めのようだ
「ふぁ・・・よく寝た・・・ん?サーニャもう起きてたのか?」
「・・・うん・・・ちょっと前にね」
「なら朝ご飯食べに行コ、おなか減っただろ?」
「・・・うん」
「・・・なぁなんでさっきから横向いたまま喋ってるんだ?」
やはり不自然だったかな
起きたエイラと面と向かって話すなんて恥ずかしくて顔を直視できない
「くっ・・・首をちょっとね・・」
「まさか寝違えたのか!」
「うっうん・・そうかも」
「たっ大変だ!どっどっどうしよう!寝違えた時ってどうすれば良いんだっけ?
逆に向ける?冷やす?暖める?どっどうしよう!?」
「えっエイラ落ちついて・・・」
「これが落ち着いてられるかー!あぁどうしようサーニャ痛く無いか?」
そう言ってエイラはは私の正面に回り込んだきた
医学の知識が無いので特になにも出来ないのが歯がゆいのだろう
ひたりと彼女の手が私の首を触る
心配そうに見つめる瞳
光彩の数まで数えれそうな距離・・・
距離・・・距離が近い!
「エイラダメ!」
「ごっゴメン!痛かったか?」
しまった折角心配してくれたのに・・・・私の馬鹿
エイラは耳が出ていたら垂れてるくらいしゅんとしてしまった。
でもさっきはエイラの息がかかるぐらい近かった
そうあと少し私が首を伸ばせばキス出来るくらい・・・・・
・・・エイラとキスか・・・・してみたいな
って!ダメだこんな事考えてる場合じゃない
「だっ大丈夫だよエイラ?」
「うっごめん私役に立てなくて・・・・・そうだ!宮藤だ宮藤ならなんとか出来るかも!」
「えっ!」
「私ちょっと宮藤呼んでくる!」
「えっエイラ!」
そう言った時にはもうエイラは部屋を飛び出していた
遠くで「ミヤフジー!」という声が聞こえる
なんだかどんどん事が大きくなっていってる気がする・・・・