何回君を愛したら chapter.5
私は彷徨っていた。
上も下も分からない真っ暗な空間で。
……なんだ、ここは……?
……そうか、思い出した。
私はエーリカをネウロイから庇ったのだったか。
エーリカは無事なのか?
ネウロイは倒したのか?
この空間では知る由も無い。
『トゥルーデ……』
…誰だ、私を呼ぶ声は…?
『ごめんね…トゥルーデ…ッ…!』
その声は…エーリカか…?
エーリカ!どこにいる!?
『私…トゥルーデを傷付けちゃった…。私…もうトゥルーデのそばにはいられないよ…』
…何を言ってる…?
お前の為に傷付くなんて、私にとっては本望だっ…!
『……さようなら、トゥルーデ……』
エーリカ…!おい、エーリカ!
悪い冗談はよせ!!
エーリカァァァァァァァ!!!!
――何回君を愛したら chapter.5――
「……エー……リカ……」
「バルクホルンさん!!
ペリーヌさん、バルクホルンさんが目を覚ましました!!」
「本当ですか!?リーネさん!」
「…リーネ、ペリーヌ……ここは…」
「医務室ですわ」
「バルクホルンさん、3日間も目を覚まさなかったんですよ」
「……そうか…」
3日間も…意識を失っていたのか…
「エーリカは…エーリカは今どうしてる?」
「ハルトマン中尉は今、出撃してますわ」
「ネウロイが…出たのか」
「…はい」
「そうか…」
私はベッドを降りる。
「ちょっと、どこ行くんですか、大尉!」
「どこって出撃するに決まってるだろ」
「そんなっ…無茶ですわっ…!そんな大怪我してますのにっ…!」
「止めないでくれ、ペリーヌ。
エーリカ達が必死で戦ってるのに私だけのうのうと寝ている訳には行かない」
「でも、そんな身体ではっ…!」
私はボロボロの身体を引きずり、ドアへ向かう。
しかし、ドアへの道のりは塞がれた。
「リーネ、そこを退け」
「バルクホルンさん、一つ聞いていいですか」
「なんだ」
「…バルクホルンさんは何の為に戦っているんですか?」
「…平和の為だ。ネウロイにこの世界を蹂躙させるわけには行かないからな」
「…嘘、ですね」
「なんだと…?」
「今のバルクホルンさんの瞳に映ってるのは…ハルトマン中尉です」
「……」
「バルクホルンさん、違いますか」
「……いや、違わない。…私は、エーリカの事しか考えてないな」
私は自嘲気味に笑う。
「バルクホルンさん」
「だが、だからこそなんだ。
だからこそ、私はエーリカの側に行きたいんだ。
…私はエーリカを守りたい」
「バルクホルンさん…」
「だからお前らがいくら止めようと、軍法会議にかけられようと…私はエーリカの元へ…空へ行く」
「バルクホルン大尉…そこまで……」
すると、今まで強張っていたリーネの表情はいつもの優しい表情に戻る。
「…格好良いです。バルクホルンさん」
「リーネ、お前」
「行って下さい、バルクホルンさん」
「…いいのか?」
「誰かを守りたいって言う気持ち、私にも分かります。…私も芳佳ちゃんを支えたい…。
そう、常に思ってます」
「わ、わたくしだって、坂本少佐をお守りしたいですわ!」
「…お前ら」
「早く行って、ハルトマン中尉のそばに行ってあげて下さい。
でも、無理はしないで下さいね」
「……ああ、すまんっ!」
私はドアを開け、ハンガーに向かう。
待ってろ、エーリカ!
お前には、悲しい思いはさせない!!
「リーネさん、意外と強引ですわね」
「そうかな」
「あの人に影響されたのかしらね?」
「エヘヘ、芳佳ちゃんに影響されるのは嬉しいな」
「…おノロケ、ですか…」
「…ペリーヌさん」
「何かしらリーネさん」
「想いって、強いですね」
「そう、ですわね」
空を見つめて、そう呟く。
To be Next chapter…